説明

非機能性オリゴマーP2X7受容体に対する抗体

本発明は、プリン作動性受容体、前記受容体に結合する抗体およびその関連断片、前記抗体および断片の作製、および癌の検出および治療のための前記抗体および断片の使用に関する。特に、記載された抗体は生細胞により発現された非機能性P2X受容体に特異的に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリン作動性受容体、前記受容体に結合する抗体およびその関連断片、前記抗体および断片の作製、および癌の検出および治療のための前記抗体および断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書においていかなる従来技術を参照しても、その従来技術がオーストラリアもしくは任意の他の管轄区における共通の一般的知識の一部を形成するものである、またはその従来技術が、当業者によって関連性があると確認、理解、および考慮されると合理的に予想され得る、という認識も、いかなる形態の提案も示すものではなく、またそのように受け取られるべきものでもない。
【0003】
プリン作動性(P2X)受容体は、ATPゲート型陽イオン選択性チャネルである。各受容体は、3つのタンパク質サブユニットまたは単量体で構成されている。これまでに、P2X単量体をコードする7つの別々の遺伝子、すなわちP2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2Xが同定されている。
【0004】
P2X受容体は、これらの受容体の発現が、胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、および単球など、プログラム細胞死を起こす能力のある細胞に限られると理解されているため、特に関心がもたれている。赤血球などで、P2X受容体が正常な恒常性のもとで一部発現している。
【0005】
興味深いことに、Pro210(配列番号1による)がシス異性化している1つまたは複数の単量体を含有し、ATP結合機能が欠如しているP2X受容体が、前新生細胞および新生細胞など、プログラム細胞死を起こす能力がないと理解されている細胞上に見出されている。受容体のこのアイソフォームは、「非機能性」受容体と呼ばれている。
【0006】
シス形のPro210を含むペプチドによる免疫で生成する抗体は、非機能性P2X受容体に結合する。しかし、この抗体は、ATPを結合することができるP2X受容体には結合しない。したがって、この抗体は、多くの形態の癌腫および血液癌の選択的検出ならびにこれらの疾患の一部に対する処置に有用である。
【0007】
国際公開第02/057306A1号パンフレットおよび国際公開第03/020762A1号パンフレットは両方とも、機能性P2X受容体と非機能性P2X受容体とを識別する、モノクローナル抗体形態のプローブについて検討している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/057306A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/020762A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、生細胞上の非機能性P2X受容体に所望の親和性で結合する血清学的試薬を得ることは極めて困難であった。一般に、癌の検出および処置のための適用には高親和性試薬が望ましい。
【0010】
P2X受容体への結合が改良された試薬、特に、生細胞上のATP結合P2X受容体とATP非結合P2X受容体とを識別することができる新規抗体およびその断片に対する要求が存在する。P2X受容体が生細胞上に発現している場合はP2X受容体に優先的に結合し、いったん標的細胞が死滅するとP2X受容体に結合する能力が低下する抗体およびその断片に対する要求もまた存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式1:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(荷電性/極性/芳香族)(荷電性/芳香族)XXXY(芳香族/脂肪族)(荷電性/中性)(中性/脂肪族)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0012】
Xは、本明細書を通して任意のアミノ酸を表わす。
【0013】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式2:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、N(Y/F)XXXY(Y/F)EXのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0014】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式3:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、N(Y/F)(中性)(荷電性)(中性)Y(Y/F)E(中性)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0015】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式4:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、NFLESYFEAのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0016】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式5:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、N(Y/F)(荷電性)(中性)(荷電性)Y(Y/F)E(中性)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0017】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式6:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、NYRGDYYETのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0018】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式7:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、H(芳香族)XXXYYNIのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0019】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式8:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、H(Y/F)(中性)(荷電性)(荷電性)YYNIのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0020】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式9:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、H(Y/F)(中性)(荷電性)(中性)YYNIのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0021】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式10:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、HYSKEYYNIのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0022】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式11:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、HFQRGYYNIのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0023】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式12:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(Y/N)(芳香族)XXXYY(荷電性)(中性)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0024】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式13:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(Y/N)(芳香族)(中性)(中性)(中性)YYDVのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0025】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式14:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(Y/N)(芳香族)(中性)(中性)(中性)YYEVのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0026】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式15:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、YFPLVYYDVのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0027】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式16:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、NYLPMYYEVのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0028】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式17:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、Y(荷電性)XXXY(中性)(中性)(中性)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0029】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式18:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、YHVIQYLGPのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0030】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式19:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、HYSSRFFDV、NFKLMYYNV、NYRGDYYET、HFSRGYYDV、NFLESYFEA、NYLPMYYEV、HYIKVYYEA、HYSSRFFEV、NFRVMFFKA、HFQRGYYNI、HYSSRFFEV、YHVIQYLGP、HYSKEYYNI、YFPLVYYDV、DFTVPFYNA、NYDKKYFDV、YFPLVYYDVからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0031】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式20:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR1は、KASQNVGTNVAのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0032】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式21:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR1は、SYYMSのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0033】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式22:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR2は、SASFRYSのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0034】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式23:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR2は、AINSNGGSTYYPDTVKGのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0035】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式24:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR1は、KASQNVGTNVAのアミノ酸配列を有し、
CDR2は、SASFRYSのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0036】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式25:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR1は、SYYMSのアミノ酸配列を有し、
CDR2は、AINSNGGSTYYPDTVKGのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0037】
一実施形態では、FR1がMADIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTCまたはDVKLVESGGGLVKLGGSLKLSCAASGFTFSのいずれかである、前述の任意の実施形態に記載の抗原結合部位を提供する。
【0038】
一実施形態では、FR2がWYQQKPGQSPKALIYまたはWVRQTPEKRLELVAのいずれかである、前述の任意の実施形態に記載の抗原結合部位を提供する。
【0039】
一実施形態では、FR3がGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVQSEDLAEFFCまたはRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAFYYCTRのいずれかである、前述の任意の実施形態に記載の抗原結合部位を提供する。
【0040】
一実施形態では、FR4がFGSGTRLEIKまたはWGAGTTVTVSSのいずれかである、前述の任意の実施形態に記載の抗原結合部位を提供する。
【0041】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式26:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4−リンカー−FR1a−CDR1a−FR2a−CDR2a−FR3a−CDR3a−FR4a
(式中、
FR1、FR2、FR3、FR4、FR1a、FR2a、FR3a、およびFR4aは、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、CDR3、CDR1a、CDR2a、CDR3aは、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR1は、KASQNVGTNVAのアミノ酸配列を有し、
CDR2は、SASFRYSのアミノ酸配列を有し、
CDR3は、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列またはQQYNSYPFTを有し、
CDR1aは、SYYMSのアミノ酸配列を有し、
CDR2aは、AINSNGGSTYYPDTVKGのアミノ酸配列を有し、
CDR3aは、CDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列またはCDR3がCDR3配列を記載する前述の任意の実施形態のアミノ酸配列である場合にQQYNSYPFT(配列番号33)を有し、
FR1は、MADIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTC(配列番号25)のアミノ酸配列を有し、
FR2は、WYQQKPGQSPKALIY(配列番号26)のアミノ酸配列を有し、
FR3は、GVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVQSEDLAEFFC(配列番号27)のアミノ酸配列を有し、
FR4は、FGSGTRLEIK(配列番号28)のアミノ酸配列を有し、
FR1aは、DVKLVESGGGLVKLGGSLKLSCAASGFTFS(配列番号29)のアミノ酸配列を有し、
FR2aは、WVRQTPEKRLELVA(配列番号30)のアミノ酸配列を有し、
FR3aは、RFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAFYYCTR(配列番号31)のアミノ酸配列を有し、
FR4aは、WGAGTTVTVSS(配列番号32)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0042】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式27:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(荷電性/極性/芳香族)(芳香族)(荷電性/中性)(荷電性)(荷電性/中性)Y(芳香族)(荷電性)(中性)のアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0043】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式28:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(荷電性/極性/芳香族)(F/Y)(荷電性/中性)(R/K)(荷電性/中性)(Y)(Y/F)(E/D)Vのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0044】
一実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式30:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(H/N)(F/Y)(S/D)(R/K)(G/K)Y(Y/F)DVのアミノ酸配列を有する)によって定義される抗原結合部位を提供する。
【0045】
一実施形態では、一般式26のリンカーは、15個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する。典型的には、リンカーはグリシン残基およびセリン残基を主として含む。好ましくは、リンカーはGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0046】
一実施形態では、本発明の抗原結合部位は、HFSRGYYDVまたはNYDKKYFDVを含むCDR3アミノ酸配列を有する。
【0047】
一実施形態では、本発明の抗原結合部位は、HFSRGYYDVまたはNYDKKYFDVからなるCDR3アミノ酸配列を有する。
【0048】
他の実施形態では、本明細書に記載の配列を有するかまたは本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列を含み、かつP2X受容体に結合するための前記部位の親和性を増加させるための1つまたは複数の変異を含む抗原結合部位を提供する。
【0049】
別の実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4の1つまたは複数を形成するアミノ酸配列がヒト配列である、本明細書に記載の抗原結合部位を提供する。
【0050】
別の実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4の1つまたは複数を形成するアミノ酸配列がイヌまたはネコの配列である、本明細書に記載の抗原結合部位を提供する。
【0051】
抗原結合部位は特定の動物に由来する配列を有するように設計することができ、例えば、その抗原結合部位をキメラ(すなわち、抗体を投与される個体中に見出される配列を全部ではないが一部含有する)にすることが可能である。あるいは、その抗原結合部位を、同種異系または同系の配列からなるものにすることが可能である。後者の一例として、イヌの処置に使用するイヌ抗体がある。
【0052】
抗体の由来動物としては、イヌ、ネコ、雌ウシ、ブタ、ウマ、およびヒツジを含めた、家庭内動物、伴侶動物、または家畜が含まれ得る。
【0053】
別の実施形態では、本明細書に記載の配列を有する抗原結合部位を含むか、または本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列を含む、抗P2X受容体免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFvを提供する。
【0054】
別の実施形態では、本明細書に記載の配列を有する抗原結合部位を含むか、または本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列を含む、二重特異性抗体または三重特異性抗体を提供する。
【0055】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、または三重特異性抗体を含む融合タンパク質を提供する。
【0056】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または融合タンパク質に標識または細胞傷害性薬剤が結合した形態のコンジュゲートを提供する。
【0057】
別の実施形態では、本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲートの抗原結合部位に結合する抗体を提供する。
【0058】
別の実施形態では、抗原結合部位、または本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列、あるいは本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲートをコードする核酸を提供する。
【0059】
別の実施形態では、本明細書に記載の核酸を含むベクターを提供する。
【0060】
別の実施形態では、本明細書に記載のベクターまたは核酸を含む細胞を提供する。
【0061】
別の実施形態では、動物、または本明細書に記載の細胞を含め、その動物から由来する組織を提供する。
【0062】
別の実施形態では、抗原結合部位を含む、あるいは本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列、または本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、もしくはコンジュゲート、ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0063】
別の実施形態では、抗原結合部位を含む、あるいは本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列、または本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、もしくはコンジュゲート、希釈剤、ならびに場合によっては標識を含む診断用組成物を提供する。
【0064】
別の実施形態では、抗原結合部位を含む、あるいは本明細書に記載のCDRおよび/もしくはFR配列、または本明細書に記載の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、もしくはコンジュゲートを含むキットまたは製品を提供する。
【0065】
別の実施形態では、P2X受容体に結合するための抗原結合部位を作製するための、本明細書に記載のCDR1、CDR2、FR1、FR2、FR3、およびFR4の1つまたは複数に対する配列の使用を提供する。
【0066】
別の実施形態では、P2X受容体に対する親和性が増加している抗P2X受容体抗原結合部位を作製するための、本明細書に記載の抗原結合部位またはCDRおよび/もしくはFR配列の使用を提供する。
【0067】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合部位またはCDRおよび/もしくはFR配列の変異から作製された核酸分子のライブラリーを提供するが、前記ライブラリーの少なくとも1つの核酸分子は、P2X受容体結合に結合するための抗原結合部位をコードしている。
【0068】
別の実施形態では、本明細書に記載の細胞または動物において、本明細書に記載の核酸を発現させることを含む、本明細書に記載の抗P2X抗原結合部位を作製するための方法を提供する。
【0069】
別の実施形態では、個体において癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した症状もしくは疾患を処置するための方法であって、癌または前記症状または疾患の処置を必要とする個体に、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物を提供するステップを含む方法を提供する。
【0070】
別の実施形態では、癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した症状もしくは疾患を処置するための医薬品の製造における、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物の使用を提供する。
【0071】
別の実施形態では、癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した症状または疾患を処置するための、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物を提供する。
【0072】
別の実施形態では、癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した疾患もしくは症状を診断するための方法であって、癌の有無を判定される組織または細胞を、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または診断用組成物の形態の試薬と接触させ、試薬と組織または細胞との結合を検出するステップを含む方法。この方法は、in vivoまたはin vitroで操作することができる。
【0073】
典型的には、本発明による抗原結合部位は、非機能性P2X受容体、特にP2XのPro210がシス配座にある受容体に結合する。特定の実施形態では、本発明による抗原結合部位は、機能性P2X受容体、特にP2XのPro210がトランス配座にある受容体に結合しない。
【0074】
典型的には、本発明による抗原結合部位は、生細胞上の非機能性P2X受容体に結合する。一部の実施形態では、抗原結合部位は、死細胞または瀕死細胞上の非機能性受容体に結合しないか、または極めて低いかもしくは検出不可能な親和性で結合する。本発明の抗原結合部位がP2X受容体に結合するか否かは、当技術分野で公知の標準的方法を用いて決定することができる。
【0075】
一実施形態では、本発明による抗原結合部位は、約1pM〜約1uMの範囲内の親和性(K)で生細胞上のP2X受容体に結合する。典型的には、抗原結合部位がIgMの一部である場合は、生細胞上のP2X受容体に対する親和性は、約1pM〜約1nM、好ましくは約1pM〜約50pMである。典型的には、抗原結合部位がIgGの一部である場合は、生細胞上のP2X受容体に対する親和性は、約1pM〜約1nM、好ましくは約1pM〜約100pMである。典型的には、抗原結合部位がFabの一部である場合は、生細胞上のP2X受容体に対する親和性は、約100pM〜約100nM、好ましくは約1nM〜約100nMである。典型的には、抗原結合部位がscFVの一部である場合は、生細胞上のP2X受容体に対する親和性は、約10nM〜約1uM、好ましくは約10nM〜約100nMである。典型的には、抗原結合部位がdabの一部である場合は、生細胞上のP2X受容体に対する親和性は、約10nM〜約10uM、好ましくは約100nM〜約1uMである。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位および同部位を含む分子は、アポトーシスを誘導することができる。
【0077】
特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位および同部位を含む分子は、カスパーゼ活性化を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】完全長ヒトP2X受容体(配列番号1)を示す。
【図2】P2X受容体の細胞外ドメイン配列を示す。P2X受容体(47〜306)(配列番号2)(ECD2)は配列番号1のアミノ酸47〜306である。アミノ酸の取り消し線は、完全長P2X受容体配列から削除されるアミノ酸を示す。
【図3】P2X受容体の細胞外ドメイン配列を示す。P2X受容体(47〜332)(配列番号3)(ECD1)は配列番号1のアミノ酸47〜332である。アミノ酸の取り消し線は、完全長P2X受容体配列から削除されるアミノ酸を示す。
【図4】2F6 V用発現ベクターの構造を示す。
【図5】2F6 V用発現ベクターの構造を示す。
【図6】(a)検出のために付加されたHisタグを有する2F6 scFv配列(配列番号4)を示す。示した2F6 scFV配列は次の組織構造(N末端からC末端へ順番に)FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4−リンカー−FR1a−CDR1a−FR2a−CDR2a−FR3a−CDR3a−FR4a−AAA−Flag(登録商標)エピトープタグ(DYKDDDDK)−AAA−Hisタグを有する。(b)サイズ排除HPLCによる組換え2F6 IgG2aの精製を示す。組換えIgG2aをHPLCにより分離した場合のHPLCクロマトグラムの一例を示す。
【図7】2F6 mIgG2a精製のHP−SECを示す。
【図8】最終抗体産物の純度を示すSDS−PAGEを示す。
【図9a】in vitro細胞阻害アッセイを示す。癌細胞上で発現された三量体型非機能性P2X受容体に対するIgM型オリジナル抗体が細胞増殖を阻害することがCell Titer Blue Assayを用いて見出された。対照IgM抗体は、2.5〜40ug/mLの濃度範囲で細胞増殖に作用しないことがわかるが(左カラム)、一方、2F6は、3日間の増殖アッセイにおいて同じ用量範囲にわたり細胞増殖を阻害した(右カラム)例を示す。
【図9b】他の細胞タイプも、IgM型抗体とのインキュベーションにより同様に阻害された。5日間の増殖は3日間の増殖よりも顕著に阻害される。増殖データは、対照IgM抗体を用いて得られた対照増殖曲線と比較してプロットされている。COLO205の増殖は、3日間で顕著に阻害され、5日間では、2.5ug/mLの低用量でも細胞は死滅した。これにより、わずかに異なるレベルの受容体を発現する様々な細胞株が、抗体結合に多かれ少なかれ感受性を示すことがわかる。
【図9c】他の細胞タイプも、IgM型抗体とのインキュベーションにより同様に阻害された。5日間の増殖は3日間の増殖よりも顕著に阻害される。増殖データは、対照IgM抗体を用いて得られた対照増殖曲線と比較してプロットされている。COLO205の増殖は、3日間で顕著に阻害され、5日間では、2.5ug/mLの低用量でも細胞は死滅した。これにより、わずかに異なるレベルの受容体を発現する様々な細胞株が、抗体結合に多かれ少なかれ感受性を示すことがわかる。
【図9d】他の細胞タイプも、IgM型抗体とのインキュベーションにより同様に阻害された。5日間の増殖は3日間の増殖よりも顕著に阻害される。増殖データは、対照IgM抗体を用いて得られた対照増殖曲線と比較してプロットされている。COLO205の増殖は、3日間で顕著に阻害され、5日間では、2.5ug/mLの低用量でも細胞は死滅した。これにより、わずかに異なるレベルの受容体を発現する様々な細胞株が、抗体結合に多かれ少なかれ感受性を示すことがわかる。
【図9e】対照的に、組換えIgG2a型抗体は、次の図に示すとおり、3日間で得られた結果では、より弱い細胞阻害を示した。細胞増殖阻害アッセイ(Cell Titer Blue)により、10個ではなく2つの結合ドメインを実際のところ含有するIgGの結合親和性の低下と一致して、IgM型抗体を用いて誘発された阻害と比較して、IgG2a型抗体の腫瘍細胞増殖阻害は低下していることが示された。
【図10】細胞傷害アッセイにおける阻止反応を示す。Cell Titer Blue細胞増殖阻害アッセイを、MCF−7乳癌細胞株の3日間細胞増殖で用いる。右カラムの対照生細胞では抗体またはペプチドが存在していないことに留意されたい。左側カラムは、中心の3つのカラムのデータにより証明される細胞増殖阻害を阻止するのに十分な500ug/mLのペプチドエピトープ(図において200/300として記載のE200−300エピトープ)を含有する10ug/mLの2F6 IgM抗体と共に培養された細胞に由来するシグナルであり、中心の3つのカラムでは、それぞれ50ug/mL、5ug/mL、または0ug/mLのペプチドの存在により、増殖阻害は影響されない。細胞増殖の完全阻害は5日間の2F6暴露後に起こる。
【図11】アポトーシスの再活性化に関連したカスパーゼ3/7活性化を伴う、2F6により誘導される細胞死のメカニズムを示す。この実験では、COLO205癌細胞のアポトーシス誘導によってカスパーゼを活性化することが知られているゲムシチビン(Gemcitibine)対照薬剤の効果を左に示す。これに対して、薬剤も抗体もない場合は何の影響もない(細胞のみのカラム)。40ug/mLまでの用量で対照IgMが存在しても、同様にカスパーゼ活性化に影響がないが、一方、2F6抗体の量を増加させると、3日間にわたる実験において、抗体によるアポトーシス誘導に関連したカスパーゼ3/7活性化が着実に増加することが示される。
【図12】2F6 IgMによる直接的な細胞傷害を示す。対照IgM抗体(a)および2F6 IgM(b)の24時間存在下でのMCF−7細胞の共焦点顕微鏡像。
【図13】(a)一部膜への結合を示す、4T1腫瘍生細胞に結合した2−2−1hFcを示す(対物40倍)。(b)すでに死滅した細胞に由来する膜デブリに加え、瀕死細胞に結合した2−2−1hFcを示す。(c)明確に膜への結合を示す、LL腫瘍生細胞に結合した2−2−1hFcを示す。(d)すでに死滅した細胞に由来する膜デブリに結合した2−2−1hFcを示す。
【図14】(a)明確に膜への結合を示す、4T1腫瘍生細胞に結合した2F6 hIgG1を示す(対物40倍)。(b)瀕死細胞にのみ結合した2F6 hIgG1を示す。(c)明確に膜への結合を示す、LL腫瘍生細胞に結合した2F6 hIgG1を示す。(d)機能可能なP2X受容体を発現する隣接赤血球に結合せず、瀕死細胞に結合した2F6 hIgG1を示す。
【図15】4T1同系異種移植片モデルにおける14日目までの肺転移数の2F6hIgG1による阻害を示す。処置群のほとんどの転移は未処置群の転移より顕著に小さく、腫瘍体積の全体的な減少は89%であった。
【図16】ルイス肺(LL)同系異種移植片モデルにおける11日目までの肺転移数の阻害を示す。5つの群は、未処置対照(群1)、10mg/kgのヒツジポリクローナルE200−300(群2)、1mg/kgの2F6hIgG1(群3)、10mg/kgの2F6hIgG1(群4)、および連日5mL/kgのソラフェニブ(群5)である。ヒツジポリクローナルおよび2F6 hIgG1は両方とも、96%阻害のソラフェニブと同等の効力であった。
【図17】2F6に由来するCDR3配列の親和性成熟を示す。リスト最上位にある野生型(WT)2F6のCDR3配列と共に、親和性成熟scFv/Fab誘導体のアミノ酸配列を変異体クローンとしてリストした。
【図18】IgM、IgG2a、およびFabリードのELISAを示す。リード親和性成熟2F6誘導FabのELISA(目盛は、IgMおよびIgG2aに対しては0.01〜12.5ug/mL;Fabに対しては0.1〜100ug/mL)。オリジナルIgMおよび組換えIgG2aに対するEC50測定値は、それぞれ0.14および1.6ug/mLであった。WT Fabは極めて低いEC50を示したが、一方ScFvスクリーニング(#10、#21、#42、#66)から選択されたリード親和性成熟Fab種は、完全形態のIgG2a抗体の親和性と一致して、2〜4ug/mLの範囲内のEC50、すなわちWTより約125倍の強度で、かなり強固に結合した。
【図19】(a)COLO205大腸腫瘍生細胞への組換えFabの結合に関するフローサイトメトリーの結果を示す。Sigma抗FLAG二次抗体(#F4049)を用いて、一次抗体の結合を検出した。WT 2F6 Fabは、同じ濃度範囲で弱く結合した。4つのリードFabのEC50は、ELISA測定から得られた値に極めて類似している。(b)結合の改善を示す極めて類似した結果が、前立腺PC3細胞に対して得られた。
【図20】PC3細胞へのWT形態抗体の相対結合強度を親和性成熟Fabと比較して測定するために、組換え2F6 IgG2aの様々な調製物を用いて比較した結果を示す。Rockland IgG2a#010−001−332を対照として用いて、バックグラウンド(菱形)を測定した。完全形態のWT抗体の結合は、リードFabにより得られた結合に匹敵した。
【図21】リードFabがヒトリンパ球上の機能性P2X受容体に結合しないことをフローサイトメトリーにより確認したことを示す。Sigma抗FLAG抗体#F4049を二次抗体として用いた。AbcamHLA抗体を対照として用いた。二次抗体のみのシグナルで測定される、左側カラムのバックグラウンドを超える結合は検出されなかった。X軸に沿った左から右への一次抗体の順番は、凡例の上から下への順番と同じである。
【図22】WT 2F6 hIgG2aより顕著に強い結合を示す高親和性精製ヒツジポリクローナル抗体のPC3細胞への結合に関するフローサイトメトリーの結果を示す図であり、ひとたび二価IgGバインダーに変換された場合に、親和性成熟Fabの範囲から予測される改善が示される。
【発明を実施するための形態】
【0079】
次に、本発明の特定の実施形態について詳細に述べる。本発明を実施形態と関連させて説明するが、その意図は本発明をそれらの実施形態に限定することではないことを理解されたい。一方、本発明は、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含み得る、すべての代替物、修正物、および等価物を包含することを意図するものである。
【0080】
当業者であれば、本発明の実施において用いることができる、本明細書に記載のものに類似または等価な多くの方法および材料を認識するであろう。本発明は、記載の方法および材料に限定されるものでは全くない。
【0081】
本明細書に開示および定義された本発明は、本文または図面に記載されたかまたはそれから明白である個々の特徴の2つ以上のあらゆる代替組合せにまで及ぶことを理解されたい。これらの異なる組合せはすべて、本発明の様々な代替態様を構成する。
【0082】
文脈上別の解釈を必要とする場合を除いて、本明細書で使用する用語「含む(comprise)」、ならびに「含んでいる(comprising」、「含む(comprises)」、および「含んだ(comprised)」などのこの用語の変化形は、さらなる付加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
【0083】
本発明は、生細胞により発現される非機能性P2X受容体に結合することができる抗原結合部位を提供する。これらの受容体は高次オリゴマー型である。このオリゴマー型は、2つ以上のP2X受容体単量体が会合したものである。典型的には、オリゴマー型は3つのP2X受容体単量体からなる三量体である。高次オリゴマー型P2Xに結合する本発明の抗原結合部位の利点の1つは、溶解細胞またはアポトーシス細胞から遊離した単量体型P2X受容体による捕捉が、単量体P2X受容体にのみ結合する抗体に比較して、減少していることである。
【0084】
本明細書の解釈では、以下の定義を適用し、適切な場合には常に、単数形で使用される用語は複数形もまた含むものであり、その逆も同様である。明記した任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合、以下に明記した定義が優先するものとする。
【0085】
「プリン作動性受容体」とは、一般に、リガンドとしてプリン(ATPなど)を用いる受容体を指す。
【0086】
「P2X受容体」とは、一般に、3つのタンパク質サブユニットすなわち単量体から形成され、その単量体の少なくとも1つが、配列番号1(図1を参照)に示したアミノ酸配列を実質的に有するプリン受容体を指す。「P2X受容体」は、下記に記載の機能性受容体であっても非機能性受容体であってもよい。「P2X受容体」は、P2X受容体の自然起源の変異体、例えば、P2X単量体が、P2X受容体を形成する単量体の自然起源の切断型または分泌型(例えば、細胞外ドメイン配列からなる型またはその切断型)、自然起源の変異型(例えば、二者択一的にスプライスされた型)、および自然起源の対立遺伝子変異体を含めたスプライス変異体、対立遺伝子変異体、およびアイソフォームであるものを包含する。本発明の特定の実施形態では、本明細書に開示した天然配列のP2X単量体ポリペプチドは、配列番号1に示した完全長アミノ酸配列を含む成熟または完全長の天然配列ポリペプチドである。特定の実施形態では、P2X受容体は、改変されたアミノ酸配列を有することができ、例えば、配列番号1に示した配列内の種々のアミノ酸は置換、削除されてもよく、または残基が挿入されてもよい。
【0087】
「機能性P2X受容体」とは、一般に、ATPに結合するための結合部位または間隙を有するP2X受容体の型を指す。ATPに結合すると、受容体はサイトゾルへのカルシウムイオンの進入を可能にする孔様構造を形成し、その結果の1つとしてプログラム細胞死が起こり得る。正常な恒常性では、機能性P2X受容体の発現は、一般に、胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、および単球など、プログラム細胞死を起こす細胞に限定されている。赤血球上にも機能性P2X受容体が一部発現することがある。
【0088】
「非機能性P2X受容体」とは、一般に、P2X受容体単量体の1つまたは複数がPro210(配列番号1による)においてシス異性化を有するP2X受容体の型を指す。この異性化は、例えば、単量体一次配列の突然変異または異常な転写後プロセシングを含む、単量体にミスフォールディングをもたらす任意の分子事象から起こり得る。異性化の1つの結果は、受容体がATPに結合できなくなることである。この状況では、受容体は孔を形成することができず、そのため、サイトゾルに入ることができるカルシウムイオンの程度が限定される。非機能性P2X受容体は、広範囲の上皮癌および造血系癌で発現している。
【0089】
本明細書で使用する「細胞外ドメイン」(ECD)は、P2X受容体(47〜306)(配列番号2、図2を参照)(ECD2)およびP2X受容体(47〜332)(配列番号3)(ECD1)である。P2X受容体(47〜306)(配列番号2)は、配列番号1のアミノ酸47〜306である。P2X受容体(47〜332)(配列番号3、図3を参照)は、配列番号1のアミノ酸47〜332である。
【0090】
「抗体」または「免疫グロブリン」または「Ig」は、脊椎動物の血液中または他の体液中に見出されるガンマグロブリンタンパク質であり、免疫系で機能し、抗原に結合し、それゆえ異物を同定および中和する。
【0091】
抗体は、一般に、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパク質である。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合している。2つのH鎖は、H鎖のアイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに結合している。各H鎖および各L鎖はまた、規則的に間隔があいた鎖内ジスルフィド架橋を有する。
【0092】
H鎖およびL鎖は特異的なIgドメインを画定する。より具体的には、各H鎖は、N末端に可変ドメイン(V)を有し、続いて、α鎖およびγ鎖それぞれについては3つの定常ドメイン(C)、μおよびεのアイソタイプについては4つのCドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(V)、続いて他方の末端に定常ドメイン(C)を有する。VはVと並列しており、Cは重鎖の第1定常ドメイン(C1)と並列している。
【0093】
抗体は、異なるクラスまたはアイソタイプに帰属させることができる。免疫グロブリンにはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つのクラスがあり、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖を有する。γおよびαのクラスは、C配列および機能の比較的小さい相違に基づいてサブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトでは以下のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2が発現される。いずれの脊椎動物種からのL鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパおよびラムダと呼ばれる明らかに異なる2つのタイプのうちの1つに帰属させることができる。
【0094】
定常ドメインには、ジスルフィドによって一緒に保持される両H鎖のカルボキシ末端部分を含むFc部分が含まれる。ADCCなど抗体のエフェクター機能は、Fc領域内の配列によって決定され、その領域はまた、特定のタイプの細胞に見出されるFc受容体(FcR)によって認識される部分である。
【0095】
とVの対は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを含む「可変領域」または「可変ドメイン」を一緒に形成する。重鎖の可変ドメインは「VH」と称することができる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称することができる。Vドメインは、抗原結合に影響を及ぼし、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する抗原結合部位を含有する。V領域は、約110アミノ酸残基に及び、それぞれ9〜12アミノ酸長の「超可変領域」(一般に約3つ)と呼ばれる極めて可変性のある短い領域により分離された15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)(一般に約4つ)と呼ばれる比較的不変の一続きの配列からなる。FRは大部分がβシート配置を取り、超可変領域は連結ループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。
【0096】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」とは、配列が超可変的であり、かつ/または構造的に画定されたループを形成する抗体可変ドメイン領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)の6つの超可変領域を含む。本明細書では、いくつかの超可変領域表示を使用し、かつ包含する。Kabatの相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づいており、最も一般的に用いられている(Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。
【0097】
「フレームワーク」残基または「FR」残基は、本明細書で定義した超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0098】
「抗原結合部位を形成するためのペプチド」とは、一般に、抗原に対する抗原特異性を与える立体構造を形成することができるペプチドを指す。例としては、全体抗体もしくは全体抗体に関連した構造、軽鎖および重鎖を含めて、1つもしくは複数の可変ドメイン、およびそれらの断片を含む全体抗体断片、または超可変領域もしくは定常領域の全部ではなく一部を含む軽鎖および重鎖の断片が挙げられる。
【0099】
「インタクト」抗体または「全体」抗体は、抗原結合部位ならびにCと少なくとも重鎖定常領域、C1、C2およびC3を含む抗体である。定常領域は、天然配列の定常領域(例えばヒト天然配列定常領域)であってもそのアミノ酸変異配列であってもよい。
【0100】
「全体抗体に関連した構造」には、全体抗体の多量体型が含まれる。
【0101】
「可変ドメインを含む全体抗体断片」としては、抗体断片から形成されるFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、およびFv断片;二重特異性抗体;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに多重特異性抗体が挙げられる。
【0102】
Fab断片は、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(V)、および一方の重鎖の第1定常ドメイン(CI)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、抗原結合部位を1つのみ有する。
【0103】
Fab’断片は、CIドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む追加の数残基を有することでFab断片と異なる。Fab’−SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対する呼称である。
【0104】
F(ab’)断片は、二価の抗原結合活性を有する、2つのジスルフィドで結合したFab断片にほぼ相当し、依然として抗原を架橋することができる。
【0105】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインが非共有結合的に強固に会合した二量体からなる。
【0106】
単鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが可動性ペプチドリンカーによって共有結合的に連結することができ、その結果、軽鎖および重鎖は二本鎖Fv種の構造に類似した「二量体」構造で会合することができる。これらの2つのドメインのフォールディングから、6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3つのループ)が現れ、これらのループによって抗原結合のためのアミノ酸残基が提供され、抗体に抗原結合特異性が付与される。
【0107】
「単鎖Fv」は、「sFv」または「scFv」とも略されるが、連結されて単一ポリペプチド鎖を形成するV抗体ドメインおよびV抗体ドメインを含む抗体断片である。scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために望ましい構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーを、VドメインとVドメインとの間にさらに含むことが好ましい。
【0108】
「単一可変ドメイン」は、Fvの半分(抗原に特異的な3つのCDRのみを含む)であり、結合部位全体よりも親和性が低いが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0109】
「二重特異性抗体」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同一のポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。小さい抗体断片は、鎖間ではなく鎖内でのVドメインの対合が実現され、それによって二価の断片、すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が生じるように、VドメインとVドメインとの間に短いリンカー(約5〜10残基)を有するsFv断片(前述の段落を参照のこと)を構築することによって調製する。
【0110】
二重特異性抗体は、二価または二重特異性になり得る。二重特異性抗体は、2つの抗体のVドメインおよびVドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体である。三重特異性抗体および四重特異性抗体もまた、当技術分野で一般に知られている。
【0111】
「単離抗体」は、それが以前存在していた環境の構成要素から同定および分離および/または回収された抗体である。汚染成分は、抗体の治療的使用を妨害する可能性のある材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。
【0112】
「ヒト抗体」とは、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有し、かつ/または本明細書に開示されたヒト抗体作製のための手法のいずれかを用いて作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含めた当技術分野で公知の種々の手法を用いて作製することができる。抗原投与に応答してヒト抗体を産生するように改変されているが、内在性遺伝子座は使用不能にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによってヒト抗体を調製することができる。
【0113】
非ヒト(例えばげっ歯類)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト抗体由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レピシエントの超可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レピシエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レピシエント抗体内またはドナー抗体内には見出されない残基を含むことがある。これらの改変を行うことにより、抗体の性能がさらに洗練される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを実質的に全部含み、全部または実質的に全部の超可変ループが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当し、全部または実質的に全部のFRがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。
【0114】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る、自然起源の可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、抗原上の単一の抗原性部位または抗原決定基を対象とする。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに合成することができる点で有利である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法により調製することができ、または細菌、真核動物細胞もしくは真核植物細胞の中で組換えDNA法を用いて作製することができる。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0115】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同である一方、鎖の残部が、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同である「キメラ抗体」、ならびにそのような抗体の断片が、所望の生物活性を示す限り、含まれる。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界サル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0116】
用語「抗P2X受容体抗体」または「P2X受容体に結合する抗体」とは、その抗体がP2X受容体、典型的には非機能性P2X受容体を標的とする診断用薬剤および/または治療用薬剤として有用であるように、十分な親和性でP2X受容体に結合することができる抗体を指す。無関係の受容体タンパク質へのP2X受容体抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定される場合、P2X受容体へのこの抗体の結合の約10%未満であることが好ましい。特定の実施形態では、P2X受容体に結合する抗体の解離定数(Kd)は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、または<0.1nMである。抗非機能性P2X受容体抗体は、一般に、これらの血清学的特性の一部または全部を有し、かつ非機能性P2X受容体に結合するが機能性P2X受容体には結合しない抗体である。
【0117】
「親和性成熟」抗体は、1つまたは複数のHVRsに1つまたは複数の変化を有し、それによって、それらの変化を有さない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性が改善された抗体である。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルまでもの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手法によって作製する。
【0118】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を阻害または低減する抗体である。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0119】
本明細書で使用する「アゴニスト抗体」は、目的のポリペプチドが有する機能活性の少なくとも1つを模倣する抗体である。
【0120】
「結合親和性」とは、一般に、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の合計の強度を指す。一般に、「結合親和性」は、結合ペア(例えば抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載の方法を含めた、当技術分野で公知の一般的方法によって測定することができる。低親和性の抗体は、一般に、抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるが、一方高親和性の抗体は、一般に、抗原に迅速に結合し、結合を長く保つ傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法が当技術分野で公知であり、その方法はいずれも本発明の目的のために使用することができる。
【0121】
本明細書で使用する場合、アミノ酸の特性は下記の表で定義される。
【0122】
【表A−1】

【表A−2】

【0123】
本発明者らは、非機能性P2X受容体に結合することを見出したいくつかの可変ドメインクローンのCDR配列を決定した。これらのCDR配列を以下の表1aに示す。
【0124】
一実施形態では、表1aまたはbに示す配列を有するペプチドを提供する。これらのペプチドは、抗原結合部位、可変ドメイン、抗体、および関連断片を構築するために特に有用である。
【0125】
【表1a−1】

【表1a−2】

【表1a−3】

【0126】
【表1b−1】

【表1b−2】

【0127】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、上記の抗原結合部位に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。
【0128】
特定の実施形態では、CDRは、表1aに示すCDRに対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。
【0129】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、表1bに示すV、V、またはscFv配列を含むかまたはそれらからなり、あるいは表1bに記載のV、V、またはscFV配列に対して、75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、より好ましくは96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を有する。
【0130】
他の実施形態では、上記の配列を有し、かつ抗P2X受容体に結合するための前記部位の親和性を高めるために1つまたは複数の変異を含む抗原結合部位またはCDRおよび/もしくはFRを提供する。この変異により、CDR1、CDR2、もしくはCDR3の1つ以上、またはFR1、FR2、FR3、もしくはFR4の1つ以上の中で、置換、挿入、または欠失が生じている可能性がある。
【0131】
特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位および同部位を含む分子は、ATP非結合性P2X受容体(他に「非機能性受容体」として知られている)上にのみ発現されるエピトープに結合する。エピトープおよびエピトープを形成するペプチドは、生細胞上に発現された非機能性P2X受容体に結合するモノクローナル抗体を生成させるのに有用であることが見出された。
【0132】
細胞内または細胞上の非機能性P2X受容体の発現が(例として上皮細胞がある)、上皮癌および他の疾患など多くの癌のバイオマーカーになると考えられるため、生細胞結合は重要になる。したがって、非機能性P2X受容体の発現により特徴づけられる広範囲の疾患に対して、生細胞に結合するモノクローナル抗体を用いて、抗体それ自体または抗体−細胞傷害性薬剤コンジュゲートのいずれかの形態で全身療法を提供することが可能になる。非機能性P2X受容体の発現により特徴づけられる疾患のin vivoイメージングおよび診断、またはモニタリングに備えることも可能になる。
【0133】
エピトープは、P2X受容体、すなわちP2X単量体から形成される三量体上でのみ見出される。より具体的には、エピトープは、三量体P2X受容体内の隣接するP2X単量体にまたがっている。したがって、非機能性三量体受容体内のようには配列していない個々のP2X単量体は、エピトープを含有しない。これにより、有利なことに腫瘍を分類することが可能になる。このことを単量体P2Xおよび三量体受容体の両方に結合する抗体を用いて行うのはより困難である。
【0134】
したがって、特定の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、P2X受容体のエピトープであって、
− P2X受容体の第1の単量体の一領域の形態である第1の領域、および
− 受容体の第2の単量体の一領域の形態である第2の領域
から形成され、第1および第2の領域が配列番号1に示す配列を有する受容体単量体の位置210にある残基のシス異性化により受容体内に形成され、第1および第2の領域が受容体内で互いに隣接して配列され、それによって抗P2X抗体の抗原結合部位がエピトープを形成する第1および第2の領域に結合することが可能になる、エピトープに結合する。
【0135】
典型的には、エピトープは立体構造エピトープである。これらの実施形態では、第1の領域および第2の領域は、それぞれが配列番号1の1つまたは複数の残基を含む分子空間をそれぞれ画定する。典型的には、第1の領域は、配列番号1に示す配列を有する単量体のPro210のシス異性化の結果として抗体の抗原結合部位への結合にさらされる、配列番号1の残基の1つまたは複数を含む分子空間を画定する領域である。これらの残基としては、Gly200、His201、Asn202、Tyr203、Thr204、Thr205、Arg206、Asn207、Ile208、Leu209、およびPro210が挙げられる。一実施形態では、第1の領域は、これらの残基の少なくとも1つを含む。典型的には、第1の領域は、これらの残基の少なくとも4つを含むが、第2の領域にいくつの残基が存在するかに応じて、例えば2つまたは3つと少なくなる可能性がある。一実施形態では、第1の領域は、下記の表2に示す残基対を少なくとも1つ含む。
【0136】
【表2】

【0137】
特定の実施形態では、第1の領域は、表2に示す残基対を2つ以上含む。
【0138】
第1の領域は、加えて、細胞外ドメインの2つの折り畳みのうち大きい方にあるATP結合部位の形成に密接に関与する1つまたは複数の周辺残基を含有することがある。これらは、Lys193、Phe275、およびArg294である。Arg125は、細胞外ドメインの2つの折り畳みのうち小さい方に位置する。したがって、特定の実施形態では、第1の領域は、配列番号1の以下の残基:Arg125、Lys193、Phe275、およびArg294の1つまたは複数をさらに含む。第1の領域は、これらの残基単独からなるのではないことは理解されよう。つまり、第1の領域は、上記で考察したように、配列番号1に示す配列を有する単量体のPro210のシス異性化の結果として、抗体の抗原結合部位への結合にさらされる、配列番号1の残基の1つまたは複数を含む分子空間を画定する。この状況では、Arg125、Lys193、Phe275、およびArg294は追加的にのみ与えられ、例えば、残基Gly200、His201、Asn202、Tyr203、Thr204、Thr205、Arg206、Asn207、Ile208、Leu209の1つまたは複数と交替することはない。
【0139】
典型的には、第2の領域は、配列番号1に示す配列を有する単量体のPro210のシス異性化の結果として、抗体の抗原結合部位への結合にさらされる、配列番号1の残基の1つまたは複数を含む分子空間を画定する領域である。これらの残基としては、Lys297、Tyr298、Tyr299、Lys300、Glu301、Asn302、Asn303、Val304、Glu305、およびLys306が挙げられる。一実施形態では、第2の領域は、これらの残基の少なくとも1つを含む。典型的には、第2の領域は、これらの残基の少なくとも4つを含むが、第1の領域にいくつの残基が存在するかに応じて、例えば2つまたは3つと少なくなる可能性がある。一実施形態では、第2の領域は、下記の表3に示す残基対を少なくとも1つ含む。
【0140】
【表3】

【0141】
特定の実施形態では、第2の領域は表3に示す残基対を2つ以上含む。
【0142】
第2の領域は、加えて、ATP結合部位の形成に密接に関与する1つまたは複数の周辺残基を含有することがある。これらは、Arg307およびLys311である。したがって、特定の実施形態では、第2の領域は、Arg307および/またはLys311をさらに含む。第2の領域は、これらの残基単独からなるのではないことは理解されよう。つまり、第2の領域は、上記で考察したように、配列番号1に示す配列を有する単量体のPro210のシス異性化の結果として、抗体の抗原結合部位への結合にさらされる、配列番号1の残基の1つまたは複数を含む分子空間を画定する。この状況では、Arg307およびLys311は追加的にのみ与えられ、例えば、残基Lys297、Tyr298、Tyr299、Lys300、Glu301、Asn302、Asn303、Val304、Glu305、およびLys306の1つまたは複数と交替することはない。
【0143】
特定の実施形態では、エピトープは、直鎖状エピトープであるか、または直鎖状エピトープを含む。例として、第1の領域が、表4にある配列番号1の下記の配列を1つ含む場合が挙げられる。
【0144】
【表4】

【0145】
これらの実施形態では、エピトープの第2の領域が、表5にある配列番号1の下記の配列を1つ含む。
【0146】
【表5】

【0147】
特定の実施形態では、第1の領域は、第2の領域よりも多くの残基を含有する。他の実施形態では、第2の領域は、第1の領域よりも多くの残基を含有する。
【0148】
第1の領域および第2の領域は、それぞれ約4〜約10残基、例えば5、6、7、8、または9残基を含有する。第2の領域の残基の方が多い場合、第1の領域の残基が少なくなり、すなわち4未満、例えば2または3となることがある。その逆も同様である。
【0149】
本明細書に記載の通り、第1の領域および第2の領域は、受容体内で互いに隣接して配置され、それによって抗P2X抗体の抗原結合部位が、エピトープを形成している第1の領域および第2の領域に結合することが可能になる。より詳細には、本発明者らは、別々の単量体上に位置しているにもかかわらず、第1の領域および第2の領域は共同して、抗体の単一の抗原結合部位が結合することができるエピトープを形成することを見出した。一般に、エピトープの第1の領域と第2の領域は、約40オングストローム以下離れている。この距離がこれよりも大きい場合、抗原結合部位が、受容体内の単量体を横切って長距離にわたる必要があり、その場合結合する残基が少なくなるので、抗体の結合親和性は減少する傾向になる。一般に、第1の領域と第2の領域は約10オングストローム離れているが、15、20、25、30、35オングストロームなど、40オングストローム未満の長距離も可能である。
【0150】
本明細書に記載のエピトープは、実質的に精製または単離された形態で、例えば、自然起源のP2X受容体の断片として、または合成もしくは組換えP2X受容体として提供することができる。
【0151】
VHドメインおよびVLドメインのシャフリングによる親和性成熟について記載するMarks et al.(1992)BioTechnology 10:779、超可変領域残基および/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発について記載するBarbas et al.(1994)Proc Nat.Acad.Sci.USA 9 1:3809;Schier et al.(1995)Gene 169:147−155;Yelton et al.(1995)J.Immunol.155:1994;Jackson et al(1995),J.Immunol.154(7):3310;およびHawkins et al,(1992)J.Mol.Biol.226:889は、抗原結合部位の親和性成熟について、当技術分野で公知の手法の例である。特定の実施形態では、表1aまたはbに示す配列の1つまたは複数をコードする核酸を突然変異誘発して、多様な配列ライブラリーを作製する。次いで、このライブラリーを、非機能性P2X受容体のエピトープを含む標的に対してスクリーニングする。代表的な方法を本明細書の実施例に示す。
【0152】
別の実施形態では、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4の1つまたは複数を形成するアミノ酸配列がヒト配列に由来するかまたはヒト配列型である、上記の抗原結合部位を提供する。
【0153】
抗原結合部位は、非ヒト(例えばマウス)およびヒトの免疫グロブリン配列を含むヒト化型で提示することができる。典型的には、抗原結合部位のCDR配列以外は、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種に由来する。一部の実例では、抗原結合部位のフレームワーク残基も非ヒトとすることができる。抗原結合部位が全体抗体型で提供される場合、典型的には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部はヒトで、それによって、種々のヒトエフェクター機能が可能になる。
【0154】
非ヒト抗原結合部位をヒト化する方法は、当技術分野で周知であり、適切な方法の例として、Jones et al.,(1986)Nature,321:522;Riechmann et al.,(1988)Nature,332:323;Verhoeyen et al.,(1988)Science,239:1534の方法が挙げられる。
【0155】
ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリーを用いる、本明細書に記載のファージディスプレー法は、ヒト抗原結合部位およびヒト抗体を生成するのに有用である。
【0156】
さらに、内在性の機能性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニック哺乳動物を使用することができる。これらのマウスは、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子を胚性幹細胞の中へランダム挿入または標的挿入することにより生成することができる。宿主重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、挿入によってまたは何らかの他の組換え事象、例えば宿主JH領域のホモ接合型欠失によって非機能性にすることができる。形質移入された胚性幹細胞を膨張させ、胚盤胞に微量注入してキメラマウスを作製し、次いでこのマウスを繁殖させてヒト抗原結合部位を発現するホモ接合型の子孫を作製する。P2Xエピトープによる免疫の後、ヒトモノクローナル抗体を得ることができる。トランスジェニック動物系の利点の1つは、トランスジェニックマウスの中で、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子が、B細胞分化の間に再配列し、次いでクラススイッチおよび体細胞突然変異を起こすため、治療上有用なアイソタイプを作製することができることである。
【0157】
本発明のCDRおよびFRを含む可変ドメインは、抗体を免疫系に自己として認識させるように表面露出残基を取り替えることで免疫原性を低下させることができた。Padlan,E.A.,1991,MoI.Immunol.28,489が代表的な方法を提供している。抗原結合部位近傍にあるアミノ酸残基の内部パッキングは不変であり、一般に、結合特性に影響を及ぼすCDR残基または隣接残基はこれらの方法では置換されることはないため、親和性が保持されるのが一般的である。
【0158】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位を含む抗P2X受容体免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、またはscFvを提供する。
【0159】
より低分子量の抗体断片は、全体抗体と比較すると、固形腫瘍への到達の改善、ならびに治療適用およびin vivo診断適用に特に有用となり得る、より迅速なクリアランスを得ることができる。
【0160】
インタクト抗体のタンパク質消化および宿主細胞内の組換え発現を含む、抗体断片を生成するための種々の手法が開発されている。後者の手法に関しては、下記に記載のように、Fab、Fv、およびscFvの抗体断片はすべて、大腸菌(E.coli)で発現および分泌させることができ、抗体断片は抗体ファージライブラリーから単離することができ、Fab’−SH断片は大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的に結合させて、F(ab’)2断片を形成させることができる。別のアプローチでは、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離する。
【0161】
特定の実施形態では、抗原結合部位は、単鎖Fvフラグメント(scFv)の形態で提供する。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有するので、in vivoでの使用で非特異的な結合を低減するのに適している。scFvを含む融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでエフェクタータンパク質を融合するように構築することができる。scFVは、VドメインがVドメインにリンカーにより融合した形態が好ましい。一実施形態では、リンカーの長さは少なくとも15個のアミノ酸である。典型的には、リンカーの長さは少なくとも10個のアミノ酸である。一実施形態では、リンカーは、概ねグリシン残基またはセリン残基で構成されている。典型的には、リンカーはGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0162】
一実施形態では、scFVは以下の配列を有する。
MADIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTCKASQNVGTNVAWYQQKPGQSPKALIYSASFRYSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVQSEDLAEFFCQQYNSYPFTFGSGTRLEIKGGGGSGGGGSGGGGSDVKLVESGGGLVKLGGSLKLSCAASGFTFSSYYMSWVRQTPEKRLELVAAINSNGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAFYYCTRHYSSRFFDVWGAGTTVTVSS
【0163】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位を含む二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体または他の多重特異性抗体を提供する。多重特異性抗体は、多量化を可能にするポリペプチドドメインを用いて組み立てることができる。例としては、FcのCH2およびCH3領域ならびにCH1およびCカッパ/ラムダ領域が挙げられる。ロイシンジッパードメイン(bZIP)、ヘリックス・ループ・ヘリックスモチーフ、Src相同性ドメイン(SH2、SH3)、EFハンド、ホスホチロシン結合(PTB)ドメイン、または当技術分野で公知の他のドメインを含めて、他の自然起源のタンパク質多量化ドメインも用いることができる。
【0164】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、または三重特異性抗体を含む融合ドメインまたは異種タンパク質を提供する。
【0165】
異種ポリペプチドは、本発明の抗原結合部位または同部位を含有する分子のN末端またはC末端に組換え的に融合または化学的に結合させることができる。
【0166】
抗体または抗原結合部位に融合された異種ポリペプチドは、P2X受容体発現細胞を標的化するために有用となり得、または精製などの他のある機能のために、もしくはポリペプチドのin vivo半減期を延長させるために、もしくは当技術分野で公知の免疫測定法で使用するために、有用となり得る。
【0167】
好ましい実施形態では、ヘキサヒスチジンペプチドなどのマーカーアミノ酸配列は、融合タンパク質の簡便な精製に有用である。他のものとしては、これらに限定されないが、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに相当する「HA」タグ、および「フラグ」タグが挙げられる。例えば、本発明のscFvは、以下の配列を用いて、フラグタグおよびHisタグの両方を付加することができる。
MADIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTCKASQNVGTNVAWYQQKPGQSPKALIYSASFRYSGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVQSEDLAEFFCQQYNSYPFTFGSGTRLEIKGGGGSGGGGSGGGGSDVKLVESGGGLVKLGGSLKLSCAASGFTFSSYYMSWVRQTPEKRLELVAAINSNGGSTYYPDTVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAFYYCTRHYSSRFFDVWGAGTTVTVSSAAADYKDDDDKAAAHHHHHH
【0168】
さらに、本発明の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、または三重特異性抗体は、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等により修飾することができる。
【0169】
本発明の抗原結合部位は、ペプチド結合または改変ペプチド結合、すなわちペプチドアイソスターにより互いに結合したアミノ酸から構成することができ、遺伝子にコードされた20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含有することもできる。本発明の抗原結合部位は、翻訳後プロセシングなどの自然過程により、または当技術分野で周知の化学修飾手法により修飾することができる。このような修飾については、基礎教科書および研究文献に十分な記載がある。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端もしくはカルボキシル末端、または炭水化物などの成分上を含む、抗原結合部位のいかなる場所にも起こり得る。同じタイプの修飾が、所与の抗原結合部位内のいくつかの部位で同程度または種々の程度で存在し得ることは認識されよう。さらに、所与の抗原結合部位は多くのタイプの修飾を含有することがある。抗原結合部位は、例えばユビキチン化の結果として分枝することも、分枝と共にまたは分枝せずに環化することもある。環状、分枝、および分枝環状抗原結合部位は、翻訳後自然過程から生じることも、または合成法により作製することもある。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスフォチジルイノシトール(phosphotidylinositol)の共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(アルギニル化など)、およびユビキチン化が挙げられる。
【0170】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFsv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または融合タンパク質が、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、菌類、植物、もしくは動物に由来する酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)などの細胞傷害性薬剤、あるいは放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの標識に結合した形態のコンジュゲートを提供する。別の態様では、本発明は、免疫コンジュゲートを用いる方法をさらに提供する。一態様では、免疫コンジュゲートは、細胞傷害性薬剤または検出可能な薬剤に共有結合した上記の可変ドメインのいずれかを含む。
【0171】
別の実施形態では、上記の免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲートの抗原結合部位に結合する抗体を提供する。
【0172】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲートをコードする核酸を提供する。
【0173】
上記の一般式の任意の1つに記載のCDRもしくはFR、または同じものから構成される抗原結合部位をコードするポリヌクレオチドは、任意の供給源からの核酸、例えば化学合成またはcDNAもしくはゲノムライブラリーからの単離による核酸から生成することができる。例えば、cDNAライブラリーは、B細胞、形質細胞、またはハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から生成することができ、関連する核酸は、目的の特定のクローンに向けられたオリゴヌクレオチドを用いて、PCR増幅により単離することができる。次いで、単離した核酸は、当技術分野で公知の任意の方法も用いて、ベクターにクローニングすることができる。次いで、関連するヌクレオチド配列を、当技術分野で公知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCR等(例えば、Sambrook et al.,1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.and Ausubel et al.,eds.,1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NYに記載の手法を参照のこと)を用いて突然変異誘発して、異なるアミノ酸配列を有する抗原結合部位の生成、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入の形成を行うことができる。
【0174】
別の実施形態では、上記の核酸を含むベクターを提供する。例えば、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、またはファージの形態とすることができる。適切な核酸配列を、種々の手法によりベクターに挿入することができる。一般に、DNAは、当技術分野で公知の手法を用いて、適切な制限酵素部位に挿入する。ベクター構成要素としては、一般に、これらに限定されないが、1つまたは複数のシグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列が挙げられる。これらの構成要素の1つまたは複数を含有する適切なベクターの構築には、当業者に公知の標準ライゲーション手法を使用する。
【0175】
抗原結合部位は、直接的だけでなく、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドとすることができる異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても、組換え型で作製することができる。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であっても、またはベクターに挿入される抗原結合部位をコードするDNAの一部であってもよい。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または耐熱性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物のシグナル配列とすることができる。酵母分泌の場合には、シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー、または酸性ホスファターゼリーダー、またはカンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダーとすることができる。哺乳類細胞発現では、同種または近縁種の分泌ポリペプチドからのシグナル配列などの哺乳類シグナル配列を、ウイルス分泌リーダーと同様に、タンパク質の直接分泌に用いることができる。
【0176】
本発明の抗原結合部位のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列は、上記の標準組換え手法を用いて得ることができる。ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成装置またはPCR手法を用いて合成することができる。ひとたび得られたならば、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。当技術分野で利用可能で公知の多くのベクターを本発明の目的に用いることができる。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸の大きさおよびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主として依存することになる。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはその両方)およびそれが存在する特定の宿主細胞との適合性に応じて種々の構成要素を含有する。
【0177】
一般に、宿主細胞と適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主に関して用いられる。発現ベクターおよびクローニングベクターは両方とも、ベクターが1つまたは複数の選択された宿主細胞内で複製可能になる核酸配列および形質転換細胞の表現型選択を行うことができるマーキング配列を含有する。そのような配列は種々の細菌、酵母、およびウイルスで周知である。アンピシリン(Amp)耐性およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、それゆえ形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供するプラスミドpBR322由来の複製起点はほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2μmプラスミド起点は酵母に適しており、種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)は哺乳類細胞におけるクローニングベクター用に有用である。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、内在性タンパク質の発現のために微生物が用いることができるプロモーターを含有すること、または含有するように改変されることがある。
【0178】
さらに、宿主微生物と適合するレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターは、これらの宿主に関して形質転換ベクターとして用いることができる。例えば、λGEM.TM.−11などのバクテリオファージは、大腸菌(E.coli)LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために用いることができる組換えベクターの作製に利用することができる。
【0179】
本発明の発現ベクターは2つ以上のプロモーター−シストロン(シストロンは単一ポリペプチド産生のための情報をすべて含有するDNAセグメントである)対を含むことができる。プロモーターは、シストロンの上流(5’)に位置し、その発現を調節する非翻訳調節配列である。原核生物のプロモーターは、典型的には、2つのクラス、誘導プロモーターおよび構成的プロモーターに分類される。誘導プロモーターは、培養条件の変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応じて、その制御下にあるシストロンの転写レベルの増加を開始させるプロモーターである。
【0180】
種々の潜在的な宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。供給源DNAから制限酵素消化によってプロモーターを取り出し、単離したプロモーター配列を本発明のベクターに挿入するにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに、選択したプロモーターを作動可能に連結することができる。本来のプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を、標的遺伝子の増幅および/または発現を指示するために用いることができる。一部の実施形態では、異種プロモーターが、一般に、本来の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、発現標的遺伝子のより高い転写およびより高い収率を可能にするので、異種プロモーターを利用する。
【0181】
種々の潜在的な宿主細胞により認識されるプロモーターが周知である。原核生物宿主による使用に適したプロモーターとしては、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼ(galactamase)およびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。細菌系で使用されるプロモーターには、本発明の抗原結合部位をコードするDNAに作動可能に連結されたShine−Dalgarno(S.D.)配列も含有されることになる。しかしながら、細菌で機能する他のプロモーター(他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーターなど)も同様に適している。それらのヌクレオチド配列は公表されており、そのため、当業者が、任意の必要な制限部位を付与するためにリンカーまたはアダプターを用いて、それらを標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンに作動可能に連結することは可能である。
【0182】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドが膜を横切って移動するよう指示する分泌シグナル配列構成要素を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素であっても、またはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。本発明の目的で選択されるシグナル配列は、宿主細胞により認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチターゼにより切断される)シグナル配列とすべきである。異種ポリペプチドにとって本来のシグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物宿主細胞の場合は、そのシグナル配列を、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または耐熱性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PeIB、OmpA、およびMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列に置換する。本発明の一実施形態では、発現系の両シストロン内で用いられるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異体である。
【0183】
別の態様では、本発明による免疫グロブリンの生成を宿主細胞の細胞質内で起こすことができ、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。この点で、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、細胞質内で発現され、折り畳まれ、組み立てられて機能性免疫グロブリンを形成する。特定の宿主菌株(例えば大腸菌(E.coli)trxB菌株)は、ジスルフィド結合形成に好都合な細胞質条件を提供するため、発現されたサブユニットタンパク質の適切な折り畳みおよび組み立てが可能になる。
【0184】
本発明は、分泌され適切に組み立てられた本発明の抗原結合部位の収率を最大にするために、発現されたポリペプチド構成要素の量比を調節することができる発現系を提供する。このような調節は、ポリペプチド構成要素に対する翻訳強度を同時に調節することにより少なくとも部分的に達成される。
【0185】
真核生物宿主細胞における発現に関しては、ベクター構成要素には、一般に、これらに限定されないが、シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列の1つまたは複数が含まれる。
【0186】
真核生物宿主細胞で使用されるベクターはまた、目的の成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドを含有することができる。選択される異種シグナル配列は、宿主細胞により認識されプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチターゼにより切断される)シグナル配列であることが好ましい。哺乳類細胞の発現では、哺乳類シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルを利用可能である。
【0187】
このような前駆体領域のためのDNAは、抗体をコードするDNAに読み枠内で連結される。
【0188】
一般に、複製起点構成要素は哺乳類発現ベクターに必要とされない。例えば、SV40起点は、初期プロモーターを含有するという理由のみによって、典型的に用いることができる。
【0189】
発現およびクローニングベクターは、典型的には、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含有する。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性の欠失を補完するか、または(c)例えばバチルス(Bacilli)属のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子のように、複合培地から入手できない必須栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0190】
選択スキームの一例では、宿主細胞の増殖を停止させるために薬剤を利用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生し、それにより選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例では、ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびヒグロマイシンの薬剤を用いる。
【0191】
哺乳類細胞に適した選択マーカーの例は、抗原結合部位をコードする核酸を取り込む能力のある細胞を同定できるようにする選択マーカーであり、例えば、DHFRまたはチミジンキナーゼ、メタロチオネイン−IおよびII、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等である。野生型DHFRを用いる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠くCHO細胞株(例えばATCC CRL−9096)であり、調製し、増殖させる。例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtx)を含有する培地中で形質転換細胞をすべて培養することにより最初に同定される。あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質、および別の選択可能マーカー(アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)など)をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシン、またはG418など選択可能マーカーのための選択薬剤を含有する培地中で細胞増殖させることにより選択することができる。
【0192】
発現およびクローニングベクターは、通常、mRNA合成を指示するために、核酸配列をコードする抗原結合部位に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。種々の潜在的な宿主細胞により認識されるプロモーターが周知である。
【0193】
真核生物遺伝子は、一般に、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始点から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域である。ここでNは任意のヌクレオチドとすることができる。ほとんどの真核生物の遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリAテイルを追加するためのシグナルとなり得るAATAAA配列がある。これらの配列はすべて、真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0194】
酵母宿主による使用に適したプロモート配列の例としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフクルトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素に対するプロモーターが挙げられる。
【0195】
増殖条件により転写が制御されるというさらなる利点を有する誘導プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連した分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素群に対するプロモーター領域である。
【0196】
ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから得られるプロモーター、および熱ショックプロモーターから得られるプロモーターが宿主細胞系と適合する場合、哺乳類宿主細胞におけるベクターからの抗原結合部位の転写は、例えばこれらのプロモーターによって制御される。
【0197】
高等真核生物による、抗原結合部位をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加させることができる。エンハンサー配列としては、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)に由来する公知のものが挙げられる。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーが用いられる。例としては、複製起点の後方(bp100〜270)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後方にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0198】
真核生物宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)内で用いられる発現ベクターはまた、転写の終結に必要な配列およびmRNAの安定化に必要な配列を含有する。そのような配列は、真核生物もしくはウイルスのDNAまたはcDNAに属する5’、場合により3’の非翻訳領域から通常入手可能である。これらの領域は、抗原結合部位をコードするmRNAの非翻訳部分にあるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。
【0199】
別の実施形態では、上記のベクターまたは核酸を含む細胞を提供する。核酸分子またはベクターは、ゲノムの外側の独立した分子として、好ましくは複製可能な分子として、または宿主細胞もしくは宿主のゲノムに安定して組み込まれ得るものとしてのいずれかで、遺伝子改変宿主細胞または宿主の中に存在することができる。
【0200】
本発明の宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞とすることができる。
【0201】
原核細胞の例は、大腸菌(E.coli)またはバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のような、クローニング用に一般に用いられるものである。さらに、真核細胞は、例えば真菌または動物細胞を含む。
【0202】
適切な真菌細胞の例は、酵母細胞、好ましくサッカロミセス(Saccharomyces)属の細胞、最も好ましくはサッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)種の細胞である。
【0203】
動物細胞の例は、例えば、昆虫細胞、脊椎動物細胞、好ましくは哺乳類細胞、例えばHEK293、NSO、CHO、MDCK、U2−OS、Hela、NIH3T3、MOLT−4、Jurkat、PC−12、PC−3、IMR、NT2N、Sk−n−sh、CaSki、C33Aなどである。これらの宿主細胞、例えばCHO細胞は、リーダーペプチドの除去、H(重)鎖およびL(軽)鎖の折り畳みおよび組み立て、分子の適切な面でのグリコシル化、および機能分子の分泌を含めて、本発明の抗体分子に翻訳後修飾を施すことができる。
【0204】
さらに、当技術分野で公知の適切な細胞株は、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)のような細胞株保管所から入手可能である。
【0205】
別の実施形態では、上記の細胞を含めて動物を提供する。特定の実施形態では、導入遺伝子を含有する動物およびその組織が、本発明の抗原結合部位を作製するのに有用である。非ヒト宿主への導入遺伝子としての核酸分子の導入およびそれに続く発現は、抗原結合部位の作製のために使用することができ、例えば、トランスジェニック動物の乳中へのそのような導入遺伝子の発現は、定量的に抗原結合部位を得る手段を提供する。この点に関し有用な導入遺伝子は、本発明の核酸分子、例えば、カゼインまたはβラクトグロブリンのような乳腺特異的遺伝子に由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーの構造に作動可能に連結された、本明細書に記載の抗原結合部位のためのコード配列を含む。動物は、非ヒト哺乳類、最も好ましくはマウス、ラット、ヒツジ、雌ウシ、イヌ、サル、または類人猿とすることができる。
【0206】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲート、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0207】
それを必要とする被験対象に対して抗体結合部位を調製し投与する方法は、当業者に周知であるかまたは当業者により容易に決定される。抗原結合部位の投与ルートは、経口、非経口、吸入、または局所とすることができる。
【0208】
本明細書で使用する用語「非経口」には、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸内、または膣内の投与が含まれる。
【0209】
これらの投与形態はすべて、本発明の範囲内にあると明確に考えられるが、一方投与のための形態は、注射用溶液、特に静脈内もしくは動脈内の注射用または点滴用溶液になるであろう。通常、注射用に適した医薬組成物は、緩衝液(例えば酢酸、リン酸、またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、場合によっては安定化剤(例えばヒトアルブミン)等を含むことができる。
【0210】
非経口投与用の調製物としては、滅菌の水性溶液または非水性溶液、懸濁液、および乳剤が挙げられる。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブオイルなど)、および注射可能な有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性担体としては、生理食塩水および緩衝液を含めて、水、アルコール性溶液/水性溶液、乳剤、または懸濁液が挙げられる。本発明では、薬学的に許容される担体としては、これらに限定されないが、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%生理食塩水が挙げられる。他の一般的な非経口用ビヒクルとしては、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース(Ringer’s dextrose)、デキストロース、ならびに塩化ナトリウムおよび乳酸加リンゲル液、または不揮発性油が挙げられる。静脈投与用ビヒクルとしては、体液および栄養素の補液、電解質補液、例えばリンゲルデキストロースをベースとしたものが挙げられる。例えば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガス等の防腐剤および他の添加剤もまた入れることができる。
【0211】
とりわけ、注射使用に適した医薬組成物としては、滅菌の水溶液(水溶性の場合)または懸濁液、および滅菌注射用の溶液または懸濁液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられるが、このような場合、組成物は、滅菌でなければならず、また容易に注射可能(syringability)になる程度に流動性があるべきである。組成物は、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および菌類などの微生物の汚染作用から保護されることが好ましい。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒体とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの保持により、そして界面活性剤の使用により保持することができる。本明細書に開示の治療方法で使用される適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,16th ed.(1980)に記載されている。
【0212】
微生物作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成することができる。多くの場合に、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、(例えばマンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましいであろう。注射用組成物の長時間吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによりもたらすことができる。
【0213】
滅菌注射用溶液は、必要量の有効化合物(例えば抗原結合部位)を、必要に応じて本明細書に列挙した成分の1つまたはそれらの組合せと共に、適切な溶媒中に取り込み、次いで濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基本の分散媒および上記に列挙したものからの必要な他成分を含有する滅菌ビヒクルに有効化合物を取り込むことにより調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ濾過滅菌したその溶液から有効成分に任意の追加の所望の成分を加えた粉末が得られる、真空乾燥および凍結乾燥である。注射用調製物は、当技術分野で公知の方法に従って、加工し、アンプル、袋、瓶、注射器、またはバイアルなどの容器に充填し、無菌条件下で密閉する。さらに、調製物をパッケージ化してキットの形態で販売することができる。そのような製品には、含まれる組成物が、疾患に罹患しているかまたは罹患しやすい被験対象を処置するために有用であることを示すラベルまたは添付文書があることが好ましい。
【0214】
本明細書に記載の疾患を処置するための本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、他の投与医薬品、および治療が予防的であるか治療的であるかを含めた多くの異なる因子に応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック動物を含めた非ヒト哺乳動物も処置することができる。当業者に公知の常法を用いて治療用量を設定して安全性および有効性を最適化することができる。
【0215】
抗原結合部位を用いて特定の疾患を処置するために、用量は、宿主体重当たり、例えば約0.0001〜100mg/kg、通常は0.01〜5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、Img/kg、2mg/kg等)の範囲とすることができる。例えば、用量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgとすることができる。上記の範囲の中間の用量も、本発明の範囲内であることを意図する。このような用量を毎日、隔日に、週に1回、または経験的な分析によって決定される他の任意のスケジュールに従って、被験対象に投与することができる。代表的な処置では、長期間にわたって、例えば、少なくとも6ヶ月間、用量を複数回投与することが必要となる。さらなる代表的な処置レジメンでは、2週間おきに1回または1ヶ月に1回または3〜6ヶ月ごとに1回の投与が必要となる。代表的な投薬スケジュールとしては、連日1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、隔日に30mg/kg、または週に1回60mg/kgが挙げられる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上の抗原結合部位が同時に投与され、その場合、投与される各抗原結合部位の用量は、指定の範囲内に入る。
【0216】
本明細書に開示の抗原結合部位は、複数回にわたり投与することができる。1回ごとの投薬の間隔は、週に1回、月に1回、または年に1回とすることができる。患者における標的ポリペプチドまたは標的分子の血中レベルを測定することによって指示される間隔は、不規則になることがある。一部の方法では、血漿ポリペプチド濃度が1〜1000ug/mL、一部の方法では25〜300ug/mLになるように用量を調整する。あるいは、抗原結合部位を徐放性製剤として投与することができ、その場合、必要な投与は低頻度となる。用量および頻度は、患者における抗原結合部位の半減期に応じて変動する。抗原結合部位の半減期は、安定なポリペプチドまたは成分、例えば、アルブミンまたはPEGと融合させることによって延長することもできる。一般に、ヒト化抗体が最も長い半減期を示し、キメラ抗体および非ヒト抗体がそれに続く。一実施形態では、本発明の抗原結合部位を非コンジュゲート形態で投与することができる。別の実施形態では、本明細書に開示の方法で使用される抗原結合部位は、コンジュゲート形態で複数回投与することができる。さらに別の実施形態では、本発明の抗原結合部位は、非コンジュゲート形態、次いでコンジュゲート形態、またはその逆の順番で投与することができる。
【0217】
投与の用量および頻度は、処置が予防的であるか治療的であるかに応じて変動させることができる。予防的な適用では、抗体またはそのカクテルを含む組成物を、まだ疾患状態にないかまたは前疾患状態の患者に、患者の抵抗性を増強させるために投与する。そのような量を、「予防的有効用量」と定義する。この使用では、正確な量は、これも患者の健康状態および全身免疫によって左右されるが、一般に用量当たり0.1〜25mg、特に用量当たり0.5〜2.5mgの範囲である。長期間にわたって、比較的長い間隔をおいて比較的低用量を投与する。一部の患者は、残りの人生の間処置を受け続ける。
【0218】
治療的な適用において、疾患の進行が低減または終了するまで、好ましくは患者に疾患の症候の部分寛解または完全寛解が見られるまで、比較的短い間隔で比較的高用量(例えば、結合分子、例えば抗原結合部位について用量当たり約1〜400mg/kg、そして放射線免疫複合体の場合は5〜25mgの用量が通常使用され、細胞毒−薬剤コンジュゲート分子の場合はそれよりも高用量が使用される)が時に必要となる。その後、本特許では予防的レジメンでの投与が可能になる。
【0219】
一実施形態では、被験対象は抗原結合部位を(例えばベクター中に)コードする核酸分子で処置することができる。ポリペプチドをコードする核酸の用量は、患者当たり約10ng〜1g、100ng〜100mg、1ug〜10mg、または30〜300ugDNAの範囲である。感染性ウイルスベクターの用量は、用量当たり10〜100個、またはそれ以上になりうるウイルス粒子である。
【0220】
治療用薬剤は、予防的処置かつ/または治療的処置のために、非経口的、局所的、静脈内的、経口的、皮下的、動脈内的、頭蓋内的、腹腔内的、鼻腔内的、または筋肉内的な手段で投与することができ、一部の方法では、薬剤は、非機能性P2X受容体細胞が蓄積している特定の組織に直接注射、例えば頭蓋内注射される。抗体の投与には筋肉内注射または静脈内注入が好ましく、一部の方法では、特定の治療抗体を頭蓋に直接注射され、一部の方法では、抗体が徐放性組成物または徐放性デバイスとして投与される。
【0221】
本発明の抗原結合部位は、場合によっては、処置(例えば、予防的または治療的)を必要とする疾患または症状の処置に有効な他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0222】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲート、希釈剤、および場合によっては標識を含む医薬組成物を提供する。
【0223】
特定の実施形態では、抗原結合部位または同部位を含む分子は、検出可能に標識される。酵素、放射性同位元素、コロイド金属、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物を含めて多くの異なる標識を用いることができる。蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、Texas Red等)、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、放射性同位元素(32Pまたは125I)、ビオチン、ジゴキシゲニン(digoxygenin)、コロイド金属、化学発光化合物または生物発光化合物(ジオキセタン、ルミノール、またはアクリジニウム)が、一般に用いられる。
【0224】
検出方法は、使用されるラベルのタイプに依存し、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡法、直接酵素反応および間接酵素反応を含む。例としては、ウエスタンブロット法、オーバレイアッセイ、RIA(放射免疫測定法)およびIRMA(免疫ラジオイムノメトリックアッセイ)、EIA(酵素免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、FIA(蛍光免疫測定法)、およびCLIA(化学発光免疫測定法)が挙げられる。
【0225】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物を含むキットまたは製品を提供する。
【0226】
他の実施形態では、上記の治療用途に使用するキットであって、
− 抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物の形態の1つまたは複数を含む治療用組成物を収容する容器と、
− 使用説明書を含むラベルまたは添付文書と
を含むキットを提供する。
【0227】
特定の実施形態では、キットは、癌を処置するためにまたは上記の癌関連併発症もしくは非機能性P2X受容体発現に関連した症状または疾患を予防するために、1つまたは複数のさらなる有効要素または有効成分を含有することができる。
【0228】
キットまたは「製品」は、容器、およびその容器上のまたはそれに付随したラベルまたは添付文書を含むことができる。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど種々の材料から形成することができる。容器は、症状の処置に有効な治療用組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針が貫通可能な栓を有する静脈用注射液バッグまたはバイアルとすることができる)。ラベルまたは添付文書は、その治療用組成物が適応症状を処置するために用いられることを示す。一実施形態では、ラベルまたは添付文書は、使用説明書を含み、その治療用組成物が、癌を処置するためにまたは癌に起因する併発症を予防するために用いることができることを示す。
【0229】
キットは、(a)治療用組成物、および(b)第2の有効要素または有効成分を含有する第2の容器を含むことができる。本発明のこの実施形態におけるキットは、疾患を処置するためにまたは癌に起因する併発症を予防するためにその治療用組成物および他の有効要素を用いることができることを示す添付文書をさらに含むことができる。代替的にまたは追加的に、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第2(または第3)の容器をさらに含むことができる。キットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、および注射器を含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0230】
特定の実施形態では、治療用組成物は、治療用組成物を収容するための容器を含む、使い捨てまたは再使用可能なデバイスの形態で提供することができる。一実施形態では、デバイスは注射器である。このデバイスは、治療用組成物を1〜2mL収容することができる。治療用組成物は、そのまま使用できる状態でまたはさらなる構成要素を混合もしくは追加する必要がある状態で、このデバイス内に用意することができる。
【0231】
別の実施形態では、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または診断用組成物を含むキットまたは製品を提供する。
【0232】
他の実施形態では、上記の診断用途に使用するキットであって、
− 抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、またはコンジュゲートの形態の1つまたは複数を含む診断用組成物を収容する容器と、
− 使用説明書を含むラベルまたは添付文書と
を含むキットを提供する。
【0233】
キットまたは「製品」は、容器、およびその容器上のまたはそれに付随したラベルまたは添付文書を含むことができる。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、注射器、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど種々の材料から形成することができる。容器は、癌の検出に有効な診断用組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針が貫通可能な栓を有する静脈用注射液バッグまたはバイアルとすることができる)。ラベルまたは添付文書は、その診断用組成物が適応症状を検出するために用いられることを示す。一実施形態では、ラベルまたは添付文書は、使用説明書を含み、その診断用組成物が、癌または非機能性P2X受容体発現によって特徴付けられる疾患もしくは症状を検出するために用いることができることを示す。
【0234】
キットは、(a)診断用組成物、および(b)第2の診断薬または第2の標識を含有する第2の容器を含むことができる。キットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター等を含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0235】
別の実施形態では、本明細書に記載の細胞または非ヒト動物において、本明細書に記載の核酸を発現させることを含む、本明細書に記載の抗P2X抗原結合部位を作製するための方法を提供する。
【0236】
本発明の抗原結合部位の作製には、一般に、本発明の抗原結合部位をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターが必要である。本発明の抗原結合部位をコードするポリヌクレオチドを得て、本明細書に記載の手法を含む、当技術分野で周知の手法を用いた組換えDNA技術により、抗原結合部位の作製のためのベクターにサブクローン化することができる。多くの異なる発現系が、抗原結合部位の産生および分泌のためのヒト細胞を含む哺乳類細胞の使用を含めて考えられる。細胞の例としては、293F、CHO、およびNSO細胞株が挙げられる。
【0237】
タンパク質のコード配列ならびに転写および翻訳の適切な制御シグナルを含有する発現ベクターは、当技術分野で公知の方法を用いて構築することができる。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成手法、およびin vivo遺伝子組換えが含まれる。特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結された抗原結合部位をコードする核酸を有する複製可能なベクターを提供する。
【0238】
発現ベクターにより形質移入された細胞を、従来手法で培養して、抗原結合部位を産生させることができる。したがって、特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結された本発明の抗原結合部位をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞または細胞トランスフェクタントを提供する。このプロモーターは異種であってもよい。種々の宿主発現ベクター系を利用することができ、特定の系では、ベクター系の転写機構は、特に宿主細胞に適合する。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中初期遺伝子プロモーターエレメント(major intermediate early gene promoter element)を含むベクターにより形質移入され得る。追加的にまたは代替的に、挿入配列の発現を調節する、または種々の形態の翻訳後修飾を含め、必要に応じて遺伝子産物を修飾しプロセシングする宿主細胞を用いることができる。特定の翻訳後修飾プロセシングを有する哺乳類宿主細胞の例としては、CHO、VERY、BHK、HeIa、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O、およびT47D、NSO、CRL7O3O、およびHsS78Bst細胞が挙げられる。
【0239】
タンパク質分子の使用目的に応じて、いくつかの細菌発現ベクターを有利に選択することができる。一例では、精製が容易な融合タンパク質産物を高レベルで発現させる、大腸菌(E.coli)発現ベクターpUR278などのベクターを、大量の抗原結合部位を産生する場合に用いることができる。発現産物は、lacZとの融合タンパク質の形態で産生させることができる。他の細菌ベクターとしては、pINベクター等が挙げられる。pGEXベクターもまた、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するために用いることができる。これらの融合タンパク質は、一般に可溶性であり、グルタチオン−アガロース親和性マトリックスへの吸着および結合、それに続く遊離グルタチオンの存在下での溶出によって、溶解細胞から容易に精製することができる。トロンビンおよび/または第Xa因子プロテアーゼの切断部位を、発現ポリペプチド内に設けることができるため、クローニングされた標的遺伝子産物をGST成分から遊離させることができる。
【0240】
スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞を含めた昆虫系において外来遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)を用いることができる。使用される特定のプロモーターは、配列内に挿入されるタンパク質コードの場所に依存する。例えば、その配列が、ポリへドリン遺伝子内に別々にクローン化された場合、ポリへドリンプロモーターの制御下に置かれる可能性がある。
【0241】
目的のコード配列をアデノウイルスの後期プロモーターおよび3分節リーダー配列(tripartite leader sequence)に連結することができるアデノウイルスなどのウイルスをベースとした発現系を、哺乳類細胞で利用することができる。その際に、このキメラ遺伝子をアデノウイルスゲノムに挿入するために、in vitroまたはin vivo組換えを用いることができる。E1またはE3領域内に挿入すると、感染宿主細胞内に抗原結合部位を発現することができる、生存可能な組換えウイルスが生じることになる。ATG開始コドンおよびその隣接配列を含む特異的開始シグナルが、挿入された抗原結合部位コード配列を効率的に翻訳するために必要となることがある。開始および翻訳の制御シグナルおよびコドンは、天然および合成の両方を含む種々の起源から得ることができる。転写エンハンサーエレメントおよび転写ターミネーターを、ウイルスをベースとした系の発現効率を向上させるために用いることができる。
【0242】
組換えタンパク質の長期高収率産生が必要な場合は、安定な発現が好ましい。一般に、選択可能マーカー遺伝子を用いることができ、その場合、形質移入に続いて、細胞を栄養強化培地中で1〜2日間増殖させ、次いで、対応する選択可能マーカー、例えば抗生物質耐性を含有する細胞をスクリーニングすることができる選択培地を含有する培地に移す。その結果、プラスミドを染色体に安定して組み込んだ細胞が増殖して増殖巣を形成し、その後クローニングして細胞株へと展開することが可能になる。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼの遺伝子は、それぞれtk、hgprt、またはaprTの細胞で用いることによって、適切な選択系を実現することができる遺伝子の例である。以下の遺伝子:メトトレキセート耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸耐性を付与するgpt;アミノグリコシドG−418耐性を付与するneo;およびヒグロマイシン耐性を付与するhygroが、代謝拮抗剤選択系で用いることができる遺伝子の例である。
【0243】
本発明の抗原結合部位は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー(特に特異抗原プロテインAまたはプロテインGへの親和性)、およびゲル濾過カラムクロマトグラフイー)、遠心分離、示差溶解度を含めた公知の方法により、またはタンパク質の精製のための他の任意の標準手法により、組換え発現系において、精製することができる。精製は、融合タンパク質の形態で抗原結合部位を提供することにより容易にすることができる。
【0244】
大量の本発明の抗原結合部位を、分析的規模のバイオリアクター(典型的には5L〜約50Lのバイオリアクター)または生産規模のバイオリアクター(例えば、これらに限定されないが、75L、100L、150L、300L、または500L)までスケールアップされる、研究室のパイロット発現系で開始する拡張可能な方法により製造することができる。望ましい拡張可能な方法には、HPSECまたはrCGEにより測定される凝集が低レベルから検出不能なレベル、典型的にはタンパク質の5重量%以下の凝集からタンパク質の0.5重量%以下の凝集にまで低下する方法が含まれる。追加的にまたは代替的に、ピーク面積全体の少なくとも80%および99.5%以上がインタクトな抗原結合部位を表わすように、インタクトな抗原結合部位を表わすピーク面積全体から見て、測定される断片を検出不能なレベルにすることが、拡張可能な方法においては望ましいことがある。他の実施形態では、本発明の拡張可能な方法により、約10mg/L〜約300mg/L以上の生産効率で抗原結合部位が製造される。
【0245】
別の実施形態では、個体において非機能性P2X受容体発現によって特徴づけられる疾患または症状を処置するための方法であって、前記症状の処置を必要とする個体に、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物を提供するステップを含む方法を提供する。典型的には、この症状は癌、特に本明細書に記載の上皮癌である。特定の実施形態では、個体は転移癌を有しているか、または癌が転移する可能性がある。
【0246】
前新生物疾患および新生物疾患は、本発明の方法を適用することができる具体的な例である。幅広い例としては、乳腺腫瘍、結腸直腸腫瘍、腺癌、中皮腫、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、胚細胞腫瘍、肝細胞腫/コロンジオ(cholongio)、カルシノーマ、神経内分泌腫瘍、下垂体腫瘍、小20円形細胞腫瘍(small 20 round cell tumor)、扁平上皮癌、黒色腫、非定型的線維黄色腫、精上皮腫、非精上皮腫、間質ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫、皮膚腫瘍、腎腫瘍、精巣腫瘍、脳腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、口腔腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、頸部腫瘍、食道腫瘍、喉頭腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、膣腫瘍、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0247】
具体的な癌の例としては、これらに限定されないが、腺癌、腺腫、腺線維腫、腺リンパ腫、アドントーマ(adontoma)、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、原発性骨髄線維症、脱毛症、胞状軟部肉腫、エナメル上皮腫、角化血管腫、好酸球性血管リンパ球増殖症、硬化性血管腫、血管腫症、アプドーマ、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳及びCNS腫瘍、乳癌、鰓腫、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児期脳腫瘍、小児期癌、小児期白血病、小児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、癌腫(例えばウォーカー癌、基底細胞癌、基底扁平上皮細胞癌、ブラウン・ペアス癌、腺管癌、エーリッヒ腫瘍、クレブス2癌、メルケル細胞癌、ムチン様癌、非小細胞肺癌、燕麦細胞癌、乳頭様癌、硬性癌、細気管支癌、気管支原性癌、扁平上皮細胞癌、および移行性細胞癌)、癌肉腫、子宮頚部異形成、葉状嚢肉腫、セメント腫、脊索腫、分離腫、軟骨肉腫、軟骨芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、胆管細胞腫、コレステリン腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢腺腫、隆起性皮膚繊維肉腫、繊維形成性小円形細胞腫、腺管癌、未分化胚細胞腫、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコーニ貧血、繊維腫、繊維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科癌、巨細胞腫、神経節神経腫、神経膠腫、グロムス血管腫、顆粒層細胞腫、半陰陽性卵巣腫瘍、血液学的悪性疾患、毛様細胞性白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、過誤腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、血管肉腫、組織球障害、組織球増殖性悪性疾患、組織球腫、肝細胞腫、汗腺腫、ホンドロ肉腫(hondrosarcoma)、免疫増殖性小(immunoproliferative small)、オポーマ(opoma)、オントラオーキュラー黒色腫(ontraocular melanoma)、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リ・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ水腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、レイゴミオ肉腫(leigomyosarcoma)、白血病(例えばb細胞、混合細胞、ヌル細胞、t細胞、t細胞慢性、htlv−ii関連、リンパ管肉腫、リンパ球性急性、リンパ球性慢性、肥満細胞、および骨髄性)、白血肉腫、ライディッヒ細胞腫、脂肪肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、リンパ管腫、リンパ管細胞腫、リンパ管腫、リンパギオミオーマ(lymphagiomyoma)、リンパ管肉腫、男性乳癌、悪性腎横紋筋肉腫様腫瘍、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫症、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性障害、悪性カルチノイド症候群カルチノイド心疾患、髄芽細胞腫、髄膜腫、黒色腫、間葉細胞腫、中腎腫、中皮腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経繊維腫症、ナイメーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(nsclc)、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫症、神経繊維腫、神経腫、新生物(例えば骨、乳房、消化系、結腸直腸、肝臓)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、造瘻術卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性赤血球増加症、前立腺癌、骨腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、松果体腫、形質細胞腫、癌原遺伝子、稀な癌及び関連疾患、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムント・トムソン症候群、細網内皮症、横紋筋腫、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(sclc)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、肉腫(例えばユーイング実験的肉腫、カポジ肉腫、および肥満細胞肉腫)、セルトリ細胞腫、滑膜腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎盂/尿管)、栄養膜癌、奇形腫、卵胞膜細胞腫、胸腺腫、栄養膜腫瘍、尿道癌、尿路系癌、ウロプラキン(uroplakin)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0248】
他の疾患および症状は種々の炎症性症状を含む。例には増殖性要素が含まれる。具体的な例としては、座瘡、狭心症、関節炎、嚥下性肺炎、疾患、膿胸、胃腸炎、炎症、腸のインフルエンザ、ネイ(nee)、壊死性小腸大腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、骨盤内炎症性疾患(pid)、胸膜炎、咽喉炎症、潮紅、発赤、咽頭炎、胃インフルエンザおよび尿路感染、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、または慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーが挙げられる。
【0249】
別の実施形態では、癌を処置するための医薬品の製造における、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFsv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または医薬組成物の使用を提供する。
【0250】
投薬量、投薬回数、投与ルート等は、上記に詳細に記載されている。
【0251】
別の実施形態では、癌の診断のための方法であって、癌の有無を判定される組織または細胞を、上記の抗原結合部位、免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、Fab、dab、scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、融合タンパク質、コンジュゲート、または診断用組成物の形態の試薬と接触させ、試薬と組織または細胞との結合を検出するステップを含む方法を提供する。この方法は、in vivoまたはin vitroで操作することができる。
【0252】
in situでの診断の場合は、静脈内、鼻腔内、腹腔内、脳内、動脈内への注射または他のルートにより、抗原結合部位を診断すべき組織に投与することができるため、本発明による抗原結合部位と非機能性P2X受容体上のエピトープ(eptitopic)領域との間の特異的結合が起こり得る。抗体/抗原複合体は、抗原結合部位もしくはその機能性断片に結合した標識によって、または当技術分野で公知の他の任意の検出方法によって好都合に検出することができる。
【0253】
本発明による、本明細書に記載の診断用途で使用される免疫測定法は、典型的には、標識した抗原、抗体、または検出用二次試薬に依存する。これらのタンパク質または試薬は、酵素、放射線同位元素、ならびにコロイド金およびラテックスビーズなどの着色粒子を含むがこれらに限定されない蛍光性、発光性、および発色性物質を含めた当業者に一般的に知られている化合物を用いて標識することができる。このうち、放射性標識は、ほぼ全種のアッセイに使用することができ、最もバリエーションがある。放射能を回避しなければならない場合または迅速に結果が必要とされる場合、酵素コンジュゲート標識が特に有用である。蛍光色素は、その使用に高価な装置が必要であるが、極めて高感度な検出方法を提供する。これらのアッセイにおいて有用な抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および親和性精製ポリクローナル抗体が挙げられる。
【0254】
あるいは、抗原結合部位は、プロテインAもしくはプロテインGまたは第2抗体などの、免疫グロブリンに対して親和性を有する標識物質との反応によって間接的に標識することができる。抗原結合部位は、第2物質とコンジュゲートし、抗原結合部位にコンジュゲートした第2物質に対して親和性を有する標識した第3物質を用いて検出することができる。例えば、抗原結合部位をビオチンにコンジュゲートし、標識したアビジンまたはストレプトアビジンを用いて抗原結合部位−ビオチンコンジュゲートを検出することができる。同様に、抗原結合部位をハプテンにコンジュゲートし、標識した抗ハプテン抗体を用いて抗原結合部位−ハプテンコンジュゲートを検出することができる。
【0255】
特定の実施形態では、免疫測定法は、分析物の存在を検出するために、抗原結合部位が検出可能な標識で標識された第2抗体との反応性によって間接的に標識される二重抗体法を利用する。第2抗体は、抗原結合部位が由来した動物の抗体に結合するものであることが好ましい。換言すれば、抗原結合部位がマウス抗体である場合は、標識した第2抗体は抗マウス抗体である。本明細書に記載のアッセイで使用される抗原結合部位に対して、この標識は抗体でコーティングしたビーズ、特に磁気ビーズであることが好ましい。本明細書に記載の免疫測定法で使用される抗原結合部位に対して、この標識は放射性物質、蛍光物質、または電気化学発光物質などの検出可能な分子であることが好ましい。
【0256】
分析物の存在を迅速に決定することに適合しているため、高速型システムと称されることも多い代替の二重抗体システムも、本発明の範囲内で使用することができる。このシステムは、抗原結合部位と分析物との間に高い親和性を必要とする。本発明の一実施形態によると、非機能性P2X受容体の存在は、それぞれがP2X受容体タンパク質に特異的な抗原結合部位の対を用いて決定される。抗原結合部位の前記対の一方は、本明細書で「検出抗原結合部位」と称され、抗原結合部位の前記対の他方は、本明細書で「捕獲抗原結合部位」と称される。本発明の抗原結合部位は、捕獲抗原結合部位または検出抗原結合部位のいずれかとして用いることができる。本発明の抗原結合部位は、捕獲抗原結合部位および検出抗原結合部位の両方として、単一のアッセイにおいて一緒に用いることもできる。したがって、本発明の一実施形態では、体液試料中の非機能性P2X受容体を検出するために二重抗原結合部位サンドイッチ法を用いる。この方法では、分析物(非機能性P2X受容体タンパク質)を検出抗原結合部位と固体支持体上に不可逆的に固定化されている捕獲抗原結合部位との間にサンドイッチする。検出抗原結合部位は、抗原結合部位−分析物サンドイッチの存在、したがって分析物の存在を同定するために、検出可能な標識を含有することになる。
【0257】
代表的な固相物質としては、これらに限定されないが、放射免疫測定法および酵素免疫測定法の分野で周知のマイクロタイタープレート、ポリスチレン製試験管、ビーズ(磁気ビーズ、プラスチックビーズ、またはガラスビーズ)、およびスライドが挙げられる。抗原結合部位を固相に結合させる方法も当業者には周知である。つい最近では、ナイロン、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、および他の多孔質ポリマーなどのいくつかの多孔質材料が固体支持体として使用されている。
【0258】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであるが、本発明を限定することを意図するものでは全くない。
【実施例】
【0259】
実施例1−2F6抗体の生成および精製
目的:ここに記載する実験では、生細胞上に発現されたP2X受容体に結合する抗体の生成および精製を詳述する。具体的には、この実験では、配列番号4(2F6)に示した配列を有する抗体の生成および精製を説明する。
【0260】
背景:P2X受容体単量体に結合する抗原結合部位は知られているが、これまで、生細胞上に三量体型で発現されたP2X受容体上の立体構造エピトープに、隣接した単量体間の接触面を特異的にまたがって特異的に結合する抗体は知られていない。癌細胞で起こるように、受容体がATPを結合することができない場合、ATP結合部位は、一方の単量体上の残基200〜210および隣接した単量体上の残基296〜306が露出した状態で、単量体間で正確にパックされた接触面に形成される。
【0261】
材料および方法:E200およびE300ペプチドの生成。ジペプチドGAを追加して間隔をあけた、ペプチドE200(ヒトP2X受容体配列の残基200〜211)とペプチドE300(ヒトP2X受容体配列の残基295〜306)とから部分的に形成される複合体ペプチドエピトープE200−300を、Chiron Mimotopesの固相合成法により作製した。一連のコンジュゲートを合成して、スクリーニング目的に有用となる可能性が最もあるコンジュゲートを同定した。これらには、マレイミドカプロイル−N−ヒドロキシスクシンイミド(hydroxsuccinimide)(MCS)を介してE200−300ペプチド上のC末端システイン残基に連結されたBSA、DT、オボアルブミン、およびKLHのタンパク質コンジュゲートが含まれる。第4の変異体では、E200−300ペプチドがC末端でビオチン化されている。
【0262】
0、16、37、56、88、および162日目に25ug/用量で、ジフテリアトキソイド(E200−300DT)に結合したE200−300を用いてBALB−Cマウスを免疫した。0日目に、CpGアジュバント(ImmunoEasy、ロット#11547836、11235150、および11549008、Qiagen)と共に皮下に(sc)注射した。16、37、および88日目に、半分はsc、半分は筋肉内に(im)注射した。56および162日目に、静脈内に(iv)注射した。最終のiv追加免疫の4日後に、免疫したマウスを出血させ、その血清を抗P2XE200−300活性に対してELISAを用いてスクリーニングした。最も高い抗P2XE200−300力価を示した3匹の動物を屠殺し、それらの脾臓を取り出した。脾臓細胞を単離して、マウス骨髄腫細胞株Sp2/0の細胞と5:1の比率で融合した。融合細胞をRPMI1640培地中に播種した。ハイブリドーマを、マウスIL−6を補充した、HT、次いでHATの中で連続して選択した。適切なリードクローンを、固相および溶液相のスクリーニングの両方におけるELISA陽性として最初に同定した。低親和性バインダーを抽出し、次いで、リードクローン由来のDNAを配列決定した後、宿主細胞の生存に対するクローン抗体産物の効果によりサイレンシングを誘導した。
【0263】
結果:ウェル当たり0.3細胞まで稀釈して、融合細胞を8×96ウェルプレートに播種し、2ステップのクローニングをした後、ELISAでP2XE200−300ウシ血清アルブミン(BSA)コンジュゲートと反応する1つのクローンを残存させ、2F6と名付けた。このクローンをサブクローニングし、2F61〜2F24と名付けた24個の産物をそれぞれ配列決定した。抗体は、各ケースでκ軽鎖を有するIgMクラスであった。
【0264】
各サブクローンは、同一配列を有することを確認した。V鎖およびV鎖を抽出し、さらなる分子展開を目的としてマウスIgG2a配列(図2および3)にスプライスする一方、IgMはさらなる特徴づけのためにマウス腹水中で増殖させた。
【0265】
図6に、生化学的特徴づけのためにC末端FLAGおよびHISタグで標識した2F6 scFvの配列を示す。
【0266】
マウスIgG2a−2F6を、G418耐性を保持するpcDNA3.1−mIgG2a−2F6で形質移入されたHEK293親細胞内で増殖させた。この細胞をG418中で21日間選択して、耐性プールを作製した。
【0267】
Sartorius20LCultiBagを用いて、Waveバイオリアクター中で37℃にて7日間バッチ培養を行い、安定に発現させた。この発現は、pHを7.3と6.8との間に維持し、COを制御しながら、Invitrogen Freestyle 293発現培地中で行った。培養物を遠心分離して細胞を除去し、収集した上清を直ちに処理した。
【0268】
【表6】

【0269】
収集した上清をpH7.1に調整し、0.2μmで濾過した後、61mLのプロテインAカラム(GE Healthcare,rProtein A Sepharose FF)上に一晩ロードした。2カラム容積(CV)の0.1%TritonX−100を用いてカラムを洗浄した後、使用前に0.1M酢酸の20%エタノール溶液を用いて消毒した。0.1M酢酸への段階的グラジエントにより逆方向でカラムから抗体を溶出した。1M酢酸ナトリウムを用いて溶出ピークをpH5に中和した。
【0270】
【表7】

【0271】
陰イオン交換の前に、中和したピークを0.2μmで濾過して微粒子を除去した。濾過した中和ピークを、54mLの陰イオン交換カラム(GE Healthcare,Q Sepharose FF)上にロードした。このカラムを0.5M水酸化ナトリウムを用いて洗浄および消毒した後、高塩洗浄し、0.1M酢酸、pH5.0で平衡化した。ランニング緩衝液は、0.1M酢酸、pH5.0とした。陰イオン交換ステップのフロースルーを収集した。
【0272】
【表8】

【0273】
濃縮した陰イオン交換フロースルーを、140mLの脱塩カラム(GE Healthcare,Sephadex G−25 fine)上に直接ロードした。このカラムを0.2M水酸化ナトリウムを用いて洗浄および消毒した後、1×DPBSで平衡化した。ランニング緩衝液は1×DPBSとした。
【0274】
バイオセイフティーキャビネットの中で、脱塩した産物を0.2μmフィルターを通して滅菌容器の中に濾過した。最終産物試料を、濾過バルクから無菌的に取り出した。濾過バルクおよび最終産物試料を4℃に保存した。
【0275】
【表9】

【0276】
タンパク質濃度、エンドトキシン、DNA含量、純度、および凝集について、最終産物をアッセイした。この産物は、分析前に4℃で保存した。
【0277】
【表10】

【0278】
2F6に由来する同じマウスscFvをヒト型のタイプIgG1の中に融合し、HEK293細胞内で同様に発現させた。
【0279】
結論:生細胞上のP2X受容体に高親和性で結合する、リード形態の抗原結合部位を同定した。非機能性受容体立体構造において、内在するATP結合部位が露出される場合に、三量体受容体を形成する隣接単量体間の接触面をまたがる抗原結合部位を選択した。標的化合物のエピトープは、機能可能に組み立てられた受容体の単一立体構造上では、依然として接近不可能なままであり、P2X受容体を発現する正常細胞との交差反応性はすべて回避される。
【0280】
実施例2−2F6抗体形態の生化学的特徴づけ
目的:IgMおよびマウスIgG2aを含めた2F6抗体形態が生細胞の表面上の非機能性受容体に結合するか否かを決定すること。さらに、2F6抗体形態が非機能性P2X受容体を発現する細胞、例えば癌細胞の特性を阻害するか否かを決定すること。
【0281】
背景:癌細胞はP2X受容体単量体の三量体からなる非機能性受容体を発現することが知られている。機能性がある場合、細胞表面上に組み立てられたP2X受容体は、三量体に組み立てられた単量体間で形成されたチャネルを細胞の中へのカルシウムイオンの進入を大幅に亢進させることができる、より広い孔へ変化させる効果を有するATPに結合して、アポトーシスおよび細胞死をもたらすカスパーゼ活性を惹起する。たとえP2X受容体が細胞表面上に発現しても、不死になった癌細胞内では、アポトーシスは抑制または阻害されている。これらの受容体は、非機能性P2Xと名付けられ、多種多様な癌で見出されている。
【0282】
結果:2F6抗体形態は、IgM(図9a〜d)およびIgG2a(図9e)の両方とも、細胞増殖のCell Titer Blueアッセイで測定すると、前立腺癌PC3、結腸癌COLO205、乳癌MDAMB231、黒色腫A375、および乳癌MCF7を含む、一連の癌細胞株の細胞増殖を阻害した。細胞を適切な密度で播種して、対照抗体の存在下、および0〜40ug/mLの濃度範囲にわたる、2F6のIgM型またはIgG2a型のいずれかの試験抗体の存在下で、試験期間の終わりにコンフルエンスに近いレベルに到達するように、3日間または5日間にわたって増殖させた。細胞株増殖の試験は、100〜2000細胞/ウェルの範囲の播種密度で行った。種々の腫瘍細胞タイプの増殖に影響を及ぼさなかった対照抗体に比較して、2F6のIgM型またはIgG2a型はいずれも、濃度が増加すると細胞増殖を阻害した。
【0283】
図10に、10ug/mLの2F6 IgM抗体の存在下または非存在下におけるMCF7細胞の増殖データを示す。抗体の存在により、3日間にわたる細胞増殖が大幅に阻害されるが、5〜50ug/mLの可溶性ペプチドエピトープと共に抗体をプレインキュベートしても、この阻害は影響を受けなかった。しかしながら、500ug/mLのペプチドでは、ペプチドが効果的に利用可能な抗体を捕捉し、抗体が細胞表面上の受容体に結合することを妨げるので、抗体はもはや細胞増殖に影響を及ぼすことができない。
【0284】
2F6が細胞増殖を阻害することができる作用様式を、Cell Titer Blueアッセイによる細胞増殖と組み合わせてカスパーゼ3/7活性を測定するApoOneアポトーシスアッセイによって決定した。0〜40ug/mLの範囲の2F6を用いる3日間増殖アッセイにおいて、Colo205細胞を増殖させた。結合した抗体により誘発され得るアポトーシスの程度を明確にするために、ゲムシタビン陽性対照を加えた。図11に、高い抗体量の存在下でアポトーシスが惹起され、20〜40ug/mLが完全な活性を惹起するのに十分であることが明確に示されている。
【0285】
細胞に結合しない対照抗体と比較して、20ug/mLの2F6 IgM存在下で増殖させたMCF7の外観を共焦点像で図12に示しているが、多くの細胞が、ちょうど24時間の暴露の後ですでに死んでいる。
【0286】
結論:2F6抗体形態は、IgMおよびIgG2aの両方とも、癌細胞上の非機能性P2X受容体と相互作用することにより、細胞増殖の阻害ならびにアポトーシスおよび細胞死の誘導をもたらす。
【0287】
実施例3−生きている腫瘍組織への抗体の結合
目的:癌細胞表面上に発現されたP2X三量体内の隣接した単量体にまたがるユニークでアクセス可能な複合エピトープに向けられた抗体が、死癌細胞上に残存する標的と比較して、生癌細胞の表面上の標的に優先的に結合することができるか否かを明確にすること。
【0288】
背景:2F6抗体は癌細胞上に発現されたP2X受容体内の隣接した単量体にまたがって結合するが、白血球上および赤血球上のものなど機能性P2X受容体または機能可能なP2X受容体を発現する正常細胞上で発現される受容体には結合しない。受容体の単量体に限定されたエピトープを標的にすることにより、非機能性P2X受容体に特異的に結合することができる抗体は、死細胞の細胞質コンパートメントから放出される可能性のある単量体の標的にも結合することができ、したがって、この抗体は生細胞からのP2X受容体に加えて死細胞からのP2X受容体にも一部結合するようになり、有効用量の増加が必要になるため、治療能力は低減する。
【0289】
材料および方法:同所性同系4T1マウス乳腫瘍を第3乳房脂肪パッドに接種された雌BALB/cマウス、または同所性ヒトHep3b異種移植腫瘍を肝臓に接種されたNOD/SCID雌マウスを、単量体の標的(P2X上のエピトープE200)に向けられたヒトドメイン抗体(2−2−1 hFc)または複合エピトープE200−300に向けられた2F6−hIgG1のいずれかを用いて静脈内注射で処置した。すべての手続きは、Animal Ethics Committee at The University of Adelaide(M46−2008)により承認された。腫瘍内への抗体侵入は、抗体処置2日後にマウスから取り出した腫瘍部分についてJackson Immunosearchヤギ抗ヒト抗体を用いて測定した。腫瘍を10%中性緩衝ホルマリン中で48時間固定して、パラフィンに包埋し、5umの切片にして、脱パラフィンし、ヒト抗体に対して染色した。特異的ヤギ抗体プローブ、続いてHRPを有するポリマー、次いでDABによる染色を含む、Biocare Mach 4二次検出システムを用いた。
【0290】
結果:三量体内の単量体結合部位E200を標的にする抗体は、4T1腫瘍内の生細胞に結合するが(図13a)、細胞デブリに加え死細胞および瀕死細胞にも同様に結合する(図13b)。ルイス肺腫瘍の場合には、生細胞(図13c)への結合は、中程度で膜に対するものに見えるが、すでに破壊された細胞(図13d)もそのような抗体(2−2−1hFc)を捕捉し続けることができる。
【0291】
同じ腫瘍タイプに関し、2F6 hIgG1を用いて生細胞結合および死細胞結合の残留性について検討した。4T1の生細胞への結合は明確な膜への標識を示し(図14a)、2−2−1hFcの単量体バインダーと対照的に、単量体間の接触面に結合する抗体は、瀕死細胞には依然として結合しているが、細胞デブリへの結合が大幅に抑制されている(図14b)。同様に、ルイス肺腫瘍への結合は膜への強い結合を示した(図14c)。瀕死細胞は残留する抗体標識を示したが、細胞デブリは無標識のままであった(図14d)。この図はまた、たとえP2X受容体を発現しても、全く標識されない状態の赤血球を示す。ただし、この受容体はE200−300エピトープを抗体に露出しない、機能可能な立体構造になっている。
【0292】
結論:生細胞の死により生じた細胞デブリに結合することによって誤った方向に向けられた2F6抗体が極めて僅かであり、そのため必要とされる治療用量を低減できる点で、単量体間接触面にまたがる複合標的に向けられた2F6抗体が単量体上に結合部位が限定された抗体よりも優れているように、抗原結合部位は作製された。
【0293】
実施例4−2F6 hIgG1の治療効果
目的:マウス異種移植腫瘍における2F6 hIgG1の治療効果を決定し、同じ標的に対して産生され、親和性精製された高親和性ヒツジポリクローナル抗体と比較した。
【0294】
背景:癌細胞上に発現された非機能性P2Xにおける単量体エピトープ標的E200に向けられた抗体は、腫瘍細胞致死および腫瘍増殖阻害の治療効果を示している。サブナノモル範囲で結合するこれらの治療用抗体は、2F6 hIgG1より2対数高い結合定数を示す。親和性成熟により結合定数が改善した後の2F6形態の抗体の予想される効果を検討するために、同様に高い親和性のヒツジポリクローナル抗体を同じ複合E200−300エピトープに対して作製した。
【0295】
材料および方法:
4T1マウス乳腺腫瘍細胞を培養するための試薬は以下の供給業者から入手した。RPMI1640細胞培養培地、FCS、Glutamax、HBSS、およびペニシリン−ストレプトマイシンは、Invitrogen Australia(Mt Waverley,VIC,Australia)から、トリパンブルーは、Sigma−Aldrich(Castle Hill,NSW,Australia)から入手した。Matrigel(商標)は、BD Biosciences (North Ryde,NSW,Australia)から入手した。
【0296】
滅菌生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)は、Baxter Healthcare Australia(Old Toongabbie,NSW,Australia)から入手した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)は、Sigma−Aldrichから入手した。ホルマリン(10%中性緩衝ホルマリン)は、Australian Biostain(Traralgon,VIC,Australia)から入手した。
【0297】
腫瘍部分をヘマトキシリンおよびエオシンで染色するための材料は以下の供給業者から入手した。Superfrost Plusは、Menzel(Germany)から、ミョウバンヘマトキシリンおよびエオシンは、HD Scientific(NSW,Australia)から、エタノール、濃塩酸、および炭酸リチウムは、Sigma Aldrichから、DePex封入剤は、BDH(UK)から入手した。
【0298】
腫瘍細胞は、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)(Rockville,MD,USA)から供給を受けた。
【0299】
腫瘍細胞(通常保存から2継代)を、10%FCS、1%Glutamax、および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI1640細胞培養培地で培養した。細胞をトリプシン処理により収集して、HBSSで2回洗浄し、カウントした。次いで、最終濃度が5×10細胞/mLになるようにHBSS:Matrigel(商標)(1:1、v/v)の中に細胞を再懸濁した。
【0300】
ルイス肺モデルにおいて、1または10mg/kgの抗体濃度で、3日ごとのiv投与、または処置対照に対してPBS投与、陽性対照に対して毎日5mL/kgのソラフェニブ投与を行った。試験0日目の腫瘍体積に基づいて、10匹の等価群にマウスをランダムに振り分けた。
【0301】
腫瘍体積が2,000mmに到達した場合には、いずれの動物も試験から除外することにした。体重が試験登録時より85%未満に低下した場合には、いずれの動物も処理を中止することにした。処置に対する重度の有害反応が観察された場合にも、動物は除外されるとした。
【0302】
処置開始後11日目または14日目に、マウスを麻酔にかけて血液を収集し、最終投与48時間後に末端心臓出血による放血により安楽死させた。
【0303】
終了時に、全群の全マウスから全血液を心穿刺によって収集した。
【0304】
血液試料を室温で30分間、続いて4℃で2時間凝固させた後、4℃で15分間遠心分離(2000×g)した。血清成分を新しいクライオバイアル(cryovial)に収集し、−20℃で保存した。
【0305】
腫瘍を全群の全マウスから切除して秤量し、10%中性緩衝ホルマリン中に保存した。
【0306】
肺を全マウスから切除した。肺表面転移をカウントし、サイズに従って以下のように分類した。小(<1mm)、中(≧1mmおよび<3mm)、および大(≧3mm)。切除した肺を、10%中性緩衝ホルマリン中に保存した。
【0307】
統計計算はすべて、SigmaStat 3.0(SPSS Australasia,North Sydney,NSW,Australia)を用いて行った。
【0308】
対応のあるt検定を用いて、処置群内における0日目と最終測定日との間の体重変化の有意性を判定した。終了日まで生存したマウスのみをこの分析に含めた。
【0309】
全動物における腫瘍重量、組織学的腫瘍サイズ、ならびに肺および肝の転移数についてt検定を行った。
【0310】
試験終了日(4T1については14日目、ルイス肺については11日目)まで生存した全群について、腫瘍重量、組織学的腫瘍サイズ、ならびに肺および肝の転移数について、一元配置分散分析(ANOVA)を行った。
【0311】
一元配置ANOVAを用いて有意差が見出された場合には、多重比較対対照群法(Multiple Comparison versus Control Group Procedures)(Holm−Sidak法)を行った。免疫前対照(群2)を9日目の対照群として用いた。この群のマウスが死んだため、ビヒクル対照(群1)を14日目の対照群として用いた。一部のケースでは、データが正規性検定または等分散検定に合格しなかったが、絶対値を用いて統計分析を行った。
【0312】
0.05未満のp値が、有意であると見なした。
【0313】
結果:14日後に、4T1マウス肺をBALBcマウスから切除し、肺転移数を測定した。図15に示すように、マウス10匹の対照群は、6.4±1.0を示したが、2F6−hIgG1処置群は、3.4±0.7、すなわち対照群の53%を示した。さらに、2つの群において、平均転移体積は、5.77mmから1.28mm、すなわち22%まで減少し、合計転移体積は369mmから43mm、すなわち対照群の11.8%まで、88%減少した。
【0314】
同系ルイス肺モデルをさらなる対照群と共に用いた。マウス10匹のPBS対照群(群1)に加えて、ヒツジ親和性精製E200−300ポリクローナル抗体を10mg/kgの群(群2)、2F6−hIgG1を1mg/kgの群(群3)、および2F6−hIgG1を10mg/kgの群(群4)からなる抗体処置群と共に、ソラフェニブを毎日5mL/kg投与する陽性対照群を(群5)含めた。得られた結果は以下の通りであった。
【0315】
【表11】

【0316】
これらの結果の概要を図16に示す。対照群1と他のすべての群との間の腫瘍転移の減少は、p<0.001で有意である。高親和性ヒツジ抗体は、それより著しく低親和性のモノクローナル2F6の10mg/kgと同等によく腫瘍形成を阻害し、両方はソラフェニブ陽性対照に等しく、いずれもPBS対照に対して96%の阻害を示した。
【0317】
結論:標的複合単量体間エピトープ結合部位は、腫瘍細胞上で接近可能である。0.5nM(ヒツジ親和性精製ポリクローナル)から50nM(2F6−hIgG1)の範囲にあるKdを有する抗体は、同様の効果を示し、ヒト治療のために最適な結合定数は低目のnM範囲にあることが示唆された。
【0318】
実施例5−親和性成熟抗原結合部位の生成および精製
目的:ここに記載の実験は、結合定数の増大を示す抗体形態(すなわちscFv/Fab)を開発して、リンパ球などの任意の正常細胞上の機能性受容体への非結合および癌細胞上の非機能性P2X受容体への特異的結合の両方を改善すること、したがって、WT組換え2F6モノクローナルが達成する濃度より低い抗体濃度で癌細胞増殖の阻害を得ることにあった。
【0319】
背景:2F6抗体形態は、生癌細胞上のP2X受容体に対する特異的結合を示したが、診断用または治療用として使用するためには、抗体の親和性向上が必要になる可能性がある。
【0320】
治療試験モデルの試験目的のために調査することができる、親和性が増大した抗体リードを得る可能性が最も高いと思われたので、2F6のCDR3配列HYSSRFFDVをランダム化およびスクリーニングの反復ラウンドの出発点として用いた。
【0321】
材料および方法:2F6 VおよびV遺伝子断片を増幅し、大腸菌(E.coli)発現/分泌ベクターの中に組み入れた。2F6 scFvおよびFabの両方を、大腸菌(E.coli)に形質転換し、遺伝子構築物の発現を誘導した。大腸菌(E.coli)培養物を、誘導5時間後に収集し、ELISAおよびBiacoreを用いて、固定化された(immobilsed)抗原E200−300に対する結合についてscFvおよびFabを分析した。
【0322】
SDS−PAGEおよびN末端シークエンシングを含むスクリーニング法を、癌細胞に対するELISA、Biacore、およびフローサイトメトリーと組み合わせて、親和性成熟に先立って対照抗体結合ドメイン上の抗原結合部位の生物物理学的特徴を決定した。
【0323】
HCDR3のエラープローンPCR、NNKランダム化、および配列長変化を介して2F6 scFvの突然変異誘発を導入した。ファージミドベクターにおける変異ライブラリーは、1x10のオーダーであった。高親和性変異体に対するライブラリーのスクリーニングでは、ビオチン化E200−300抗原を用いるファージディスプレーとフィルター発現アッセイとの組合せを用いた。より高い親和性のscFvリードファージクローンは、ELISAおよびBiacoreを用いて測定される親和性を有する可溶性抗体断片の小規模発現を経て選択した。
【0324】
結果:2F6を上回る結合の増強を示した、親和性成熟から得られたscFv/Fab誘導体のHCDR3配列を図17に示す。
【0325】
結合定数を図18のELISAおよび要約表に示す。多価IgMは、エピトープ標的に対してIgG型より高いEC50を示す。2F6組換えFabは、選択された親和性成熟リードより顕著に低い(2−対数)結合を示す。
【0326】
結論:マウス抗原結合部位を作製した結果、Fab型では、組換え2F6モノクローナル抗体に比べて親和性が改善した。
【0327】
実施例6−親和性成熟Fabの生化学的特徴づけ
目的:親和性成熟Fabが生細胞上に発現された非機能性P2X受容体に対する特異性を示したか否かを決定すること。
【0328】
背景:親2F6抗体のIgM型およびIgG2a型のみが、単量体P2X受容体でも機能性P2X受容体でもなく、生細胞上に発現された非機能性P2X受容体に高親和性で結合した。この特異性が親和性成熟の間に失われなかったことを確認するために実験を行った。
【0329】
材料および方法:フローサイトメトリーを用いて、ヒトCOLO−205およびPC3細胞株において、出発2F6配列を上回る、選択された親和性成熟組換えFabの増強された結合を測定した。FLAGタグ付き組換えFabを細胞に結合させ、1:75の濃度で使用される、FITCが結合したSigmaF4049マウスモノクローナル抗FLAG抗体を用いて検出した。親和性精製ヒツジ200−300抗体を、2F6 mIgG2a WTとの直接比較のために、PC3細胞に対するフローにより検討した。
【0330】
結果:Fabは、2F6 WT Fabより高親和性で、生細胞のCOLO−205細胞(図19a)およびPC3細胞(図19b)上の非機能性受容体に選択的に結合した。WT配列を上回る高い親和性をさらに示す種々の2F6 mIgG2a型調製物を用いて、同様の親和性を観察した(図20)。対照的に、これらの同じ組換え親和性精製Fabを、機能性P2X受容体を発現するヒトリンパ球に対して試験すると、結合は無視できるものであった。陽性HLA対照を加えた(図21)。WT 2F6 mIgG2aと比較して、親和性精製ヒツジポリクローナルE200−300を用いる、フローによるPC3細胞への結合が、親和性成熟から期待された改善と一致して、極めて高い結合であることが示された(図22)。
【0331】
結論:マウス異種移植試験で示したように、それ自体が顕著な治療効果を発揮したポリクローナルヒツジ抗血清力価から得られたレベルと一致した、診断目的および治療目的に有用な高親和性で選択的なFabおよびscFvsが生成された。
【0332】
本明細書に開示し定義した本発明は、本文または図面で言及した、またはそこから明らかである2つ以上の個々の特徴の代替的組合せすべてに及ぶことを理解されたい。これらの異なる組合わせはすべて、本発明の種々の代替態様を構成する。
【図13a】

【図13b】

【図13c】

【図13d】

【図14a】

【図14b】

【図14c】

【図14d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
P2X受容体に結合するための抗原結合部位であって、一般式1:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(式中、
FR1、FR2、FR3、およびFR4は、それぞれフレームワーク領域であり;
CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり;
CDR3は、(荷電性/極性/芳香族)荷電性/芳香族)XXXY(芳香族/脂肪族)(荷電性/中性)(中性/脂肪族)のアミノ酸配列を有し、Xが任意のアミノ酸を表わす)によって定義される抗原結合部位。
【請求項2】
CDR3がN(Y/F)XXXY(Y/F)EXのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項3】
CDR3がN(Y/F)(中性)(荷電性)(中性)Y(Y/F)E(中性)のアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗原結合部位。
【請求項4】
CDR3がNFLESYFEAのアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の抗原結合部位。
【請求項5】
CDR3がN(Y/F)(荷電性)(中性)(荷電性)Y(Y/F)E(中性)のアミノ酸配列を有する、請求項2に記載の抗原結合部位。
【請求項6】
CDR3がNYRGDYYETのアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の抗原結合部位。
【請求項7】
CDR3がH(芳香族)XXXYYNIのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項8】
CDR3がH(Y/F)(中性)(荷電性)(荷電性)YYNIのアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の抗原結合部位。
【請求項9】
CDR3がH(Y/F)(中性)(荷電性)(中性)YYNIのアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の抗原結合部位。
【請求項10】
CDR3がHYSKEYYNIのアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の抗原結合部位。
【請求項11】
CDR3がHFQRGYYNIのアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の抗原結合部位。
【請求項12】
CDR3が(Y/N)(芳香族)XXXYY(荷電性)(中性)のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項13】
CDR3が(Y/N)(芳香族)(中性)(中性)(中性)YYDVのアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の抗原結合部位。
【請求項14】
CDR3が(Y/N)(芳香族)(中性)(中性)(中性)YYEVのアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の抗原結合部位。
【請求項15】
CDR3がYFPLVYYDVのアミノ酸配列を有する、請求項13に記載の抗原結合部位。
【請求項16】
CDR3がNYLPMYYEVのアミノ酸配列を有する、請求項14に記載の抗原結合部位。
【請求項17】
CDR3がY(荷電性)XXXY(中性)(中性)(中性)のアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項18】
CDR3がYHVIQYLGPのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項19】
CDR3が以下の配列:HYSSRFFDV、NFKLMYYNV、NYRGDYYET、HFSRGYYDV、NFLESYFEA、NYLPMYYEV、HYIKVYYEA、HYSSRFFEV、NFRVMFFKA、HFQRGYYNI、HYSSRFFEV、YHVIQYLGP、HYSKEYYNI、YFPLVYYDV、DFTVPFYNA、NYDKKYFDV、YFPLVYYDVのいずれか1つのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項20】
CDR3がHFSRGYYDVまたはNYDKKYFDVのアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の抗原結合部位。
【請求項21】
癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した症状もしくは疾患の処置のための医薬品の製造における、請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗原結合部位の使用。
【請求項22】
癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した症状もしくは疾患の処置のための、請求項1〜21のいずれか一項に記載の抗原結合部位。
【請求項23】
癌の有無が判定される組織または細胞を請求項1〜22のいずれか一項に記載の抗原結合部位の形態の試薬と接触させ、前記試薬と前記組織または細胞との結合を検出するステップを含む、癌または非機能性P2X受容体の発現に関連した疾患もしくは症状を診断するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2013−515013(P2013−515013A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545019(P2012−545019)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001741
【国際公開番号】WO2011/075789
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510069984)バイオセプター・インターナショナル・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】