説明

非正孔阻止バッファ層を有するOLED

有機電場発光デバイスは、アノードと、アノードの上に配置された正孔輸送層と、正孔輸送層の上に配置され、正孔−電子の再結合に応答して青色光を発生する発光層であって、少なくとも1つのホスト材料と少なくとも1つのドーパント材料とを含む発光層と、発光層に接触して形成された非正孔阻止バッファ層であって、実質上発光層中のホスト材料の1つと同じイオン化電位と同じ電子親和力とを有する非正孔阻止バッファ層と、非正孔阻止バッファ層の上に配置された電子輸送層と、電子輸送層の上に配置されたカソードとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電場発光(EL)デバイスの性能の改善に関する。特に、本発明は青色ELデバイスの性能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電場発光(EL)デバイスまたは有機発光デバイス(OLED)は、印加された電位に応答して光を放射する電子デバイスである。OLEDの構造は、順に、アノードと、有機EL媒体と、カソードとを備える。アノードとカソードとの間に配置された有機EL媒体は一般に、有機正孔輸送層(HTL)と有機電子輸送層(ETL)とから構成される。正孔と電子は再結合し、HTL/ETLの境界面の近くのETL中で光を放射する。タン(Tang)他は、「有機電場発光ダイオード(“Organic Electroluminescent Diodes”)」、応用物理通信(Applied Physics Letters)、51、913(1987)及び同じ譲受人に譲受された米国特許第4,769,292号で、こうした層構造を使用した効率の高いOLEDを実証した。それ以来、代替層構造を有する非常に多くのOLEDが開示されている。例えば、安達他、「3層構造を備えた有機膜における電場発光(“Electroluminescence in Organic Films with Three−Layer Structure”)」、日本応用物理学会紀要(Japanese Journal of Applied Physics)、27、L269(1988)、及びタン(Tang)他、「ドープ有機薄膜の電場発光(“Electroluminescence of Doped Organic Thin Films”)」、応用物理紀要(Journal of Applied Physics)、65、3610(1989)によって開示されたもののような、HTLとETLとの間の有機発光層(LEL)を含む3層OLEDが存在する。LELは一般に、ゲスト材料でドープしたホスト材料からなる。こうした3層構造をHTL/LEL/ETLとして示す。さらに、デバイス中に正孔注入層(HIL)、及び/または電子注入層(EIL)、及び/または電子阻止層(EBL)、及び/または正孔阻止層(HBL)といった追加の機能層を含む他の多層OLEDが存在する。同時に、多くの様々な種類のEL材料も合成され、OLEDで使用されている。こうした新しい構造及び新しい材料によって、デバイスの性能はさらに改善した。
【0003】
フルカラーOLEDディスプレイでは、少なくとも三原色の放射、すなわち赤色、緑色、及び青色の放射が存在する。現在、赤色及び緑色のOLEDは青色OLEDより良好な性能を有する。青色OLEDにおいて高い発光効率と良好な動作寿命の両方を達成するのは困難である。従って、青色OLEDの性能が改善されればフルカラーOLEDディスプレイの応用分野に大きな影響を与えるだろう。材料の選択、デバイス構造の修正等を通じて青色OLEDの性能を改善するいくつかの方法が存在する。例えば、シ(Shi)他、「安定な青色放射有機電場発光デバイスのためのアントラセン誘導体(“Anthracene Derivatives for Stable Blue−Emitting Organic Electroluminescence Devices”)、応用物理通信(Applied Physics Letters)、80、3201(2002)、及び細川他、米国特許出願公開第2003/0077480A1号はどちらも、適切な材料を選択することによって青色放射の安定動作を達成した。青色OLEDを改善する他の新しい方法が現在必要とされている。
【0004】
TBADN:TBPとして示す、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)でドープした2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−bis(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)をLELとして使用するもののような従来の青色OLEDを図1Aに示すが、そこでは、OLED100は、アノード120、HTL132、LEL134、ETL138、及びカソード140を含む。このデバイスは、導電体160を通じて外部で電源150に接続される。図1Bは、(フラットバンド条件で)図1AのOLED100の対応するエネルギーバンド図を示す。LEL134中の点線は、ドーパント材料の電子エネルギーレベルである。図1Bでは、ETL138のイオン化電位(Ip(ETL))はLEL134のイオン化電位(Ip(LEL))と等しいかそれより低く、ETL138の電子エネルギーバンドギャップ(Eg(ETL))は、LEL134中の放射性ドーパント材料の電子エネルギーバンドギャップ(Eg(dopant))より狭い。これはトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)をETL138として使用する場合である。この場合、Eg(ETL)はEg(dopant)より狭いので、LEL134中で形成された励起子の一部がETL138中に拡散してETL138から緑色の放射を生じ、デバイスからの色放射が不純になることがある。さらに、LEL/ETLの境界面ではETL138に移動する正孔を妨げるエネルギー障壁は存在しないので、LEL134における正孔−電子の再結合率は比較的低く、そのため発光効率は低くなる。
【0005】
上記の電子エネルギーバンドギャップ(Eg)は、膜のイオン化電位(Ip)と電子親和力(Ea)との間のエネルギー差、または膜の最高占有分子軌道(HOMO)と最低非占有分子軌道(LUMO)との間のエネルギー差である。実際には、膜の光エネルギーバンドギャップを使用して有機薄膜のEgを採用してもよく、有機膜のIpからEgを減算することによって膜のEaを計算してもよい。有機薄膜のIpは紫外光電子分光法を使用して測定してもよく、有機膜のEgは紫外可視吸収分光計を使用して測定してもよい。
【0006】
図1Cは、図1AのOLEDの別の対応するエネルギーバンド図を示すが、そこではETL138のIp(ETL)はIp(LEL)より大きく、Eg(ETL)はEg(dopant)と等しいかまたはそれより広い。これは、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)または2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)といった広バンドギャップ材料をETL138として使用する場合である。この場合、純粋な青色放射が達成されることがある。しかし、LEL/ETLの境界面のエネルギー障壁はETL138に移動する正孔を妨げることができるが、この境界面に蓄積した正孔と電子は動作寿命を短縮することが判明した。純粋な青色放射を得るため、東口(Toguchi)他は、米国特許第6,565,993B2号で、LELとETLとの間に中間層、IMLを挿入し、Ip(LEL)<Ip(IML)<Ip(ETL)の関係を満たしている。この特許では寿命データは実証されていないが、LEL/IMLの境界面に存在するエネルギー障壁は寿命を減らすことになると考えられる。
【0007】
場合によっては、例えば、藤田(Fujita)他が米国特許第6,566,807B1号で開示したように、イオン化電位(Ip(HBL))がIp(LEL)より大きくかつ電子エネルギーバンドギャップ(Eg(HBL))がEg(dopant)より大きいHBLをLELとETLとの間に挿入し、正孔がETLに逃げるのを防止して正孔−電子の再結合率を向上してもよい(Ip(HBL)=Ip(LEL)ならば、顕著な正孔阻止作用が起こる見込みはない)。こうしたデバイス構造を図2Aに示すが、そこではOLED200は、図1AのOLED100より1つ多い層、すなわちHBL236を有する。図2Bに示すエネルギーバンド図によれば、正孔はLEL/HBLの境界面に蓄積して発光効率を向上することがある。この場合、Ip(ETL)がIp(LEL)より小さいか、等しいか、または大きいかにかかわらず、LEL中で形成されHBL中に拡散する励起子がHBL中で不純な色放射を発生することはない。しかし、図1Cのエネルギーバンド図を有するOLED100と同様、正孔阻止層を有する青色OLEDはやはり動作寿命が短くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、青色OLEDの性能を改善することである。
【0009】
本発明の別の目的は、フルカラーOLEDディスプレイの総合性能を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、有機電場発光デバイスであって、
a)アノードと、
b)アノードの上に配置された正孔輸送層と、
c)正孔輸送層の上に配置され、正孔−電子の再結合に応答して青色光を発生する発光層であって、少なくとも1つのホスト材料と少なくとも1つのドーパント材料とを含む発光層と、
d)発光層に接触して形成された非正孔阻止バッファ層であって、実質上発光層中のホスト材料の1つと同じイオン化電位と同じ電子親和力とを有する非正孔阻止バッファ層と、
e)非正孔阻止バッファ層の上に配置された電子輸送層と、
f)電子輸送層の上に配置されたカソードとを備える有機電場発光デバイスによって達成される。
【0011】
本発明は非正孔阻止バッファ層(NHBL)を利用し、非正孔阻止バッファ層は実質上、発光層中のホスト材料の1つと同じイオン化電位と同じ電子親和力とを有する。この配置によって、青色OLEDは、安定動作を損なうことなく、従来の青色OLEDと比較して、低い動作電圧、高い発光効率、及び改善された色度を有することができる。
【0012】
層の厚さといったデバイスの特徴的な寸法はマイクロメータ未満のものが多いため、図1A〜図3Cの図面の縮尺は寸法精度より視覚化の容易さを考慮したものになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記のように、代替層構造を備えた当業技術分野で周知の非常に多くのOLEDが存在する。本発明は、カソード側でLELに接触するバッファ層として非正孔阻止層(NHBL)336を含む任意の青色OLEDに適用可能である。図3Aは、本発明に係るOLED300を示す。OLED300はアノード120とカソード140とを有し、それらの少なくとも1つは透明である。アノードとカソードとの間には少なくともHTL132、LEL134、NHBL336、及びETL138が配置されている。このデバイスは導電体160を通じて外部で電圧/電流源150に接続される。
【0014】
図1Bから、ETL138がLEL134のドーパント材料より低い電子エネルギーバンドギャップを有するならば、OLED300の放射は純粋な青色になり得ないことが分かる。従って、ETL138が放射に寄与しない純粋な青色放射を達成するためには、ETLの電子親和力(Ea(ETL))の絶対値はドーパント材料の電子親和力(Ea(ドーパント))の絶対値より小さいべきであり、ETLのイオン化電位(Ip(ETL))の絶対値はドーパント材料のイオン化電位(Ip(ドーパント))の絶対値より大きいべきである。また、図1Cに示すような広バンドギャップETL138を有するか、または図2Bに示すようなHBL236を有するOLED300は、LEL/ETLまたはLEL/HBLの境界面で、正孔だけでなく電子に対してもエネルギー障壁を形成することが判明している。その結果、境界面は1つまたは2つの単層領域にかかる電界によって容易に損傷する。従って、動作寿命の悪化を防止するため、Ea(HBL)はEa(ホスト)と等しいかまたはそれより小さいべきであり、Ip(HBL)はIp(LEL)と等しいかまたはそれより小さいべきである。
【0015】
上記の要因を考慮して、本発明では、Ea(NHBL)及びIp(NHBL)が、1)Ea(NHBL)≦Ea(ホスト)及び2)Ip(ドーパント)<Ip(NHBL)≦Ip(ホスト)という条件を満たすNHBL336を使用する。しかし、Ea(NHBL)が小さすぎるならば、NHBL/ETLの境界面で電子注入に対する大きな障壁を形成する。従って、Ea(NHBL)はEa(ホスト)とほぼ等しいべきである。Ip(ドーパント)とIp(ホスト)との間の差は普通小さいので、Ip(NHBL)はほぼIp(ホスト)と等しくなることができる。LEL中に1つより多いホスト材料が存在するならば、Eg(NHBL)がLEL134中の何れかのEg(ドーパント)より大きい限り、Ea(NHBL)は何れかのEa(ホスト)とほぼ等しくなることができ、Ip(NHBL)は何れかのIp(ホスト)とほぼ等しくなることができる。
【0016】
ETL138のIp(ETL)がIp(LEL)と等しいかまたはそれより小さく、Eg(ETL)がLEL134中のEg(ドーパント)より狭い場合を図3Bに示す。LEL134に接触するNHBL336を蒸着する。図1B及び図1CのETL138及び図2BのHBL236と異なって、図3BのこのNHBL336は、LEL134のホスト材料と本質的に同じEa及びIpを有する。NHBL336の電子エネルギーバンドギャップEg(NHBL)は2.9eVより大きい。このエネルギーバンド構造によってETL138からの不要な放射を除去することができる。NHBL336の厚さが普通5nm未満である励起子拡散距離より大きければ、LEL/NHBLの境界面で形成された励起子はETL138中に拡散することはできない。NHBL336中に低エネルギーバンドギャップ不純物が存在しないならば、NHBL336中に拡散する励起子は固有の光子を放出する。本発明では、NHBL336の厚さの範囲は5nm〜30nm、好適には、5nm〜20nmである。その上、NHBL336はLEL/NHBLの境界面で正孔及び電子を阻止しないので、LEL/NHBLの境界面の損傷を減らすことができる。Ip(ETL)がIp(LEL)より大きくEg(ETL)がEg(ドーパント)より広い場合を図3Cに示す。この場合、NHBL336の厚さが励起子拡散距離より小さい場合でも、純粋な色放射を達成することができ、LEL/NHBLの境界面での損傷も減らすことができる。
【0017】
NHBL336で使用される材料は、上記のエネルギーバンド仕様に合致できる限り、電子輸送材料または正孔輸送材料でよい。好適には、NHBL336で使用される材料は、LEL134で使用される同じホスト材料である。有用なNHBL材料は、2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)、及び米国特許第5,935,721号に記載の誘導体といったアントラセンの誘導体、米国特許第5,121,029号に記載のジスチリルアリレン誘導体、例えば2,2’,2”−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンジミダゾール]といったベンザゾール誘導体、及び、例えばビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(B−Alq)といった青色放射キレート化オキノイド化合物を含むが、これらに制限されない。
【0018】
本発明の青色OLEDは通常支持基板の上に提供され、そこではカソードまたはアノードの何れかが基板に接触してもよい。基板に接触する電極を従来ボトム電極と呼ぶ。従来、ボトム電極はアノードであるが、本発明はその構成に制限されない。基板は、光放射の目指す方向に応じて光透過性または不透明の何れかでよい。光透過特性は、基板を通じてEL放射を見るため望ましい。透明なガラスまたはプラスチックは一般にこうした場合に利用する。トップ電極を通じてEL放射を見る適用業務の場合、ボトム支持体の透過特性は重要でないので、光透過性、光吸収性または光反射性でよい。この場合使用する電極は、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス、及び回路基板材料を含むが、これらに制限されない。もちろん、こうしたデバイス構成では、光透過性トップ電極を提供することが必要である。
【0019】
EL放射をアノード120を通じて見る場合、アノードは対象放射に対して透明または実質上透明であるべきである。本発明で使用する一般的な透明アノード材料はインジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)及びスズ酸化物であるが、アルミニウムまたはインジウムでドープした亜鉛酸化物、マグネシウム−インジウム酸化物、及びニッケル−タングステン酸化物を含むがこれらに制限されない他の金属酸化物も使用できる。こうした酸化物に加えて、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物をアノードとして使用してもよい。EL放射をカソード電極だけを通じて見る適用業務では、アノードの透過特性は重要でないので、透明、不透明または反射性であるかにかかわらず、任意の導電性材料を使用してよい。この適用業務のための導体の例は、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及びプラチナを含むが、これらに制限されない。透過性または他の、通常のアノード材料は、4.0eVより高いエネルギーで機能する用途を有する。望ましいアノード材料は一般に、気化、スパッタリング、化学蒸着、または電気化学手段といった何らかの適切な手段によって蒸着する。アノードは周知のフォトリソグラフィ処理を使用してパターン化してもよい。必要に応じて、他の層を蒸着する前にアノードを研磨し、表面粗度を減らして電気的短絡を最小化し反射率を向上してもよい。
【0020】
必ずしも必要ではないが、アノード120に接触する正孔注入層(HIL)を提供するのが有用であることが多い。HILは、後続の有機層の膜形成特性を改善し、HTLへの正孔の注入を促進して、OLEDの駆動電圧を下げることができる。HILで使用する適切な材料は、米国特許第4,720,432号に記載のポルフィリン化合物、米国特許第6,208,075号に記載のプラズマ蒸着フルオロカーボンポリマー、及び、例えばm−MTDATA(4,4’、4”−トリス[(3−エチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン)のようないくつかの芳香族アミンを含むが、これらに制限されない。有機ELデバイスにおいて有用であると伝えられる代替正孔注入材料は、第EP 0 891 121 A1号及び第EP 1 029 909 A1号に記載されている。
【0021】
米国特許第6,423,429B2号に記載のように、p型ドープ有機層もHILのため有用である。p型ドープ有機層とは、層が導電性であり、電荷担体が主として正孔であることを意味する。ホスト材料からドーパント材料への電子移動の結果である電荷移動錯体の形成によって導電性が提供される。
【0022】
OLED中のHTL132は、芳香族第三級アミンのような少なくとも1つの正孔輸送化合物を含むが、ここで芳香族第三級アミンとは、少なくとも1つが芳香環の要素である炭素原子にだけ結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含む化合物であると理解されている。1つの形態では、芳香族第三級アミンは、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、またはポリマーアリールアミンといったアリールアミンでもよい。モノマートリアリールアミンの例は、米国特許第3,180,730号で、クリュプフェル(Klupfel)他によって例示されている。1つかそれ以上のビニル基によって置換され、かつ/または少なくとも1つの活性水素を含む基を備える他の適切なトリアリールアミンは、米国特許3,567,450号及び第3,658,520号でブラントリー(Brantly)他によって開示されている。
【0023】
芳香族第三級アミンのさらに好適な種類は、米国特許第4,720,432号及び第5,061,569号で開示されているような少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。HTLは単一の芳香族第三級アミン化合物またはその混合物から形成してもよい。有用な芳香族第三級アミンの例は以下である。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン
4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン
N,N,N−トリ(p−トリル)アミン
4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4(ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4−4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル
N−フェニルカルバゾール
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4”−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’−ビス[N−(9−アンスリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”−ビス[N−(1−アンスリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル
4,4’−ビス[N−(2−フェナンスリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’−ビス[N−(1−コロレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4−4”−ジアミノ−p−テルフェニル
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’−ビス「N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’,4”−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアニン
【0024】
有用な正孔輸送材料の別の種類は、第EP 1 009 041号に記載の多環式芳香族化合物を含む。オリゴマー材料を含む、2つより多いアミン基を有する第三級アミンを使用してもよい。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びPEDOT/PSSとも呼ばれるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)のような共重合体といったポリマー正孔輸送材料を使用してもよい。
【0025】
米国特許第4,769,292号及び第5,935,721号にさらに十分に記載されているように、有機ELユニットの発光層(LEL)は、この領域での電子−正孔の再結合の結果として電場発光が生じる発光または蛍光材料を含む。本発明では、LEL134は、少なくとも1つのドーパント材料でドープした少なくとも1つのホスト材料を含み、光放射は主としてドーパントから生じ青色でもよい。LEL中のホスト材料は、電子輸送材料、正孔輸送材料、または正孔−電子の再結合をサポートする別の材料または材料の組み合わせでもよい。ドーパントは普通高蛍光性染料から選択するが、例えば遷移金属複合体のような燐光材料も有用である。通常、ホスト材料中に0.01〜10質量%のドーパントをコーティングする。例えばポリ(p−フェニレンビニレン)、PPVのようなポリフルオレン及びポリビニルアリーレンといったポリマー材料をホスト材料として使用してもよい。この場合、分子の小さいドーパントをポリマーのホスト中に分子分散してもよく、また少ない方の成分をホストのポリマー中に共重合することによってドーパントを追加してもよい。
【0026】
ドーパントとして染料を選択するための重要な関係は電子エネルギーバンドギャップの比較である。ホストからドーパント分子への効率的なエネルギー移動のためには、必要な条件は、ドーパントのバンドギャップがホスト材料のバンドギャップより小さいことである。また、燐光発光体の場合、ホストのトリプレットエネルギーレベルがホストからドーパントへのエネルギー移動を可能にするよう十分に高いことも重要である。これは青色OLEDであるので、LEL134中のホスト材料及びドーパント材料の両方の電子エネルギーバンドギャップは2.9eVより大きく、LEL134からの放射波長は確実に490nmより短い。LEL134の厚さは広い範囲を有してよいが、好適には5nm〜30nmの範囲である。
【0027】
有用なホスト材料は、2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)、及び米国特許第5,935,721号に記載の誘導体といったアントラセンの誘導体、米国特許第5,121,029号に記載のジスチリルアリーレン誘導体、例えば2,2’,2”−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンジミダゾール]といったベンザゾール誘導体、及び、例えばビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(B−Alq)といった青色放射キレート化オキノイド化合物を含むが、これらに制限されない。カルバゾール誘導体は燐光発光体のための特に有用なホストである。有用な蛍光ドーパントは、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、フルオレン誘導体、ビス(アジニル)アミンボロン化合物、ビス(アジニル)メタン化合物及びカルボスチリル化合物の誘導体を含むが、これらに制限されない。
【0028】
本発明のOLED中の電子輸送層(ETL)を形成する際使用する好適な薄膜形成材料は、一般に8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリンとも呼ばれる、オキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド化合物である。こうした化合物は電子の注入及び輸送を助け、高いレベルの性能を示し、容易に蒸着して薄膜を形成する。オキノイド化合物の例は以下である。
CO−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛(II)
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
CO−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
CO−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0029】
他の電子輸送材料は、米国特許第4,356,429号に記載の様々なブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号に記載の様々な複素環式蛍光増白剤を含む。ベンザゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジンチアジアゾール、トリアジン、及び一部のシロール誘導体も有用な電子輸送材料である。
【0030】
米国特許第6,013,384号に記載のように、n型ドープ有機層もETLのため有用である。n型ドープ有機層とは、層が導電性であり、電荷担体が主として電子であることを意味する。ドーパント材料からホスト材料への電子移動の結果である電荷移動錯体の形成によって導電性が提供される。
【0031】
光放射をアノードを通じてだけ見る場合、本発明で使用するカソード140はほぼあらゆる導電性材料を含んでもよい。望ましい材料は下にある有機層との良好な接触を保証する良好な膜形成特性を有し、低電圧での電子の注入を促進し、良好な安定性を有する。有用なカソード材料は低仕事関数金属(<4.0eV)または金属合金を含むことが多い。米国特許第4,885,221号に記載のように、1つの好適なカソード材料はMg:Ag合金から構成され、その際銀の割合は1〜20%の範囲内である。カソード材料の別の適切な種類は、導電性金属の厚い層で上部を覆った有機層(例えば、ETL)に接触する薄い無機EILを含む二重層を含む。ここでは、無機EILは好適には低仕事関数金属または金属塩を含むが、その場合、厚い方の覆いとなる層は低仕事関数を有する必要はない。1つのこうしたカソードは、米国特許5,677,572号に記載のような、LiFの薄い層にAlの厚い層が続くものを含む。他の有用なカソード材料の組み合わせは、米国特許第5,059,861号、第5,059,862号、及び第6,140,763号に記載のものを含むが、これらに制限されない。
【0032】
光放射をカソードを通じて見る場合、カソードは透明またはほぼ透明でなければならない。こうした適用業務の場合、金属は薄くなければならないか、また透明な導電性酸化物、またはそれらの材料の組み合わせを使用しなければならない。光学的に透明なカソードは、米国特許第4,885,211号、第5,247,190号、第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、第6,278,236号、第6,284,393号、日本国特許第JP3,234,963号、及び欧州特許第EP 1 076 368号にさらに詳細に記載されている。カソード材料は通常熱気化、電子ビーム気化、イオンスパッタリング、または化学蒸着によって蒸着する。必要な場合、スルーマスク蒸着、例えば米国特許第5,276,380号及び欧州特許第EP 0 732 868号に記載のもののような一体型シャドーマスキング、レーザーアブレーション、及び選択的化学蒸着を含むが、これらに制限されない多くの周知の方法を通じてパターン化を達成してもよい。
【0033】
上記で言及した有機材料は熱気化のような気相法を通じて適切に蒸着されるが、膜形成を改善するため、例えば必要に応じてバインダを加えた溶剤のような流体から蒸着してもよい。材料がポリマーである場合、溶剤蒸着は有用であるが、スパッタリングまたはドナーシートからの熱転写といった他の方法を使用してもよい。熱気化によって蒸着される材料は、例えば米国特許第6,237,529号に記載のようなタンタル材料から構成されることの多い気化「ボート」から気化してもよく、またまずドナーシートにコーティングしてから基板の近くで昇華させてもよい。材料が混合物である層は別個の気化ボートを利用してもよく、また材料を予備混合して単一のボートまたはドナーシートからコーティングしてもよい。フルカラーディスプレイの場合、LELの画素化が必要なことがある。このLELの画素化蒸着は、シャドーマスク、一体型シャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間的に定義された熱染料転写(米国特許第5,688,551号、第5,851,709号、及び第6,066,357号)、及びインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を使用して達成してもよい。
【0034】
大部分のOLEDは湿気または酸素、またはそれらの両方の影響を受けやすいので、一般に、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫化物、または金属ハロゲン化物、及び過塩素酸塩といった乾燥剤と共に、窒素またはアルゴンといった不活性雰囲気中に密閉する。カプセル化及び乾燥の方法は、米国特許第6,226,890号に記載のものを含むが、これらに制限されない。さらに、カプセル化のためのSiOx、テフロン(登録商標)、及び交互の無機/ポリマー層といった障壁層も当業技術分野で周知である。
【0035】
本明細書中で引用した特許及び他の刊行物の全体を引用のため本明細書の記載に援用する。
【実施例】
【0036】
本発明及びその利点は、以下の本発明の例及び比較例によってよりよく認識できる。簡潔にするため、形成される材料及び層を以下のように略記する。
ITO:インジウム−スズ酸化物:ガラス基板上に透明なアノードを形成する際使用する。
CFx:ポリマー化フルオロカーボン層:ITOの上部に正孔注入層を形成する際使用する。
NPB:N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン:正孔輸送層を形成する際使用する。
TBADN:2−(1,1−ジメチエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン:発光層を形成する際ホスト材料として使用する。
TBP:2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン:発光層を形成する際ドーパント材料として使用する。
Alq:トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(III):電子輸送層を形成する際使用する。
Bphen:4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン:正孔阻止層を形成する際または電子輸送層を形成する際使用する。
TPBI:1,3,5−トリス(N−フェニルベンジミダゾール−2−イル)ベンゼン:正孔阻止層を形成する際または電子輸送層を形成する際使用する。
B−Alq:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム:非正孔阻止バッファ層を形成する際使用する。
Li:リチウム:n型ドープ電子輸送層を形成する際n型ドーパントとして使用する。
Mg:Ag:体積比10:0.5のマグネシウム:銀:カソードを形成する際使用する。
【0037】
以下の例では、有機層の厚さ及びドーピング濃度は、較正膜厚モニタ(INFICON IC/5蒸着制御装置)を使用して現場で制御及び測定した。製造した全てのデバイスの電場発光特性は、室温で定電流源(KEITHLEY 2400 SourceMeter)及び光度計(PHOTO RESEARCH SpectraScan PR 650)を使用して評価した。色は国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage,CIE)座標を使用して報告することになる。有機薄膜のイオン化電位(Ip)は、紫外光電子分光法システム(VG THERMAL ESCALAB−250)での光電子分光法を使用して測定した。有機薄膜の光エネルギーバンドギャップ(〜Eg)は、紫外可視吸収分光計(HP 8453紫外可視分光計)を使用して測定した。動作寿命試験の際、試験対象のデバイスは70℃のオーブン(VWR Scientific Products)内で20mA/cm2の電流密度で駆動した。
【0038】
例1(従来のOLED−比較例)
従来の青色OLEDの準備は以下の通りである。透明なITO導電層でコーティングした〜1.1mm厚のガラス基板を市販のガラス洗浄工具を使用して清掃及び乾燥した。ITOの厚さは約42nmであり、ITOのシート抵抗は約68Ω/スクエアである。次いで、ITOの表面を酸化性プラズマで処理し、表面をアノードとして調整した。RFプラズマ処理チャンバ内でCHF3ガスを分解することによって、1nm厚のCFxの層を、清掃したITOの表面にHILとして蒸着した。そして、基板を真空蒸着チャンバ(TROVATO MFG.INC)内に移動し、基板の上部に他の全ての層を蒸着した。約10-6トールの真空下で加熱したボートから気化することによって、以下の層を以下の順序で蒸着した。
(1)HTL、90nm厚、NPBからなる
(2)LEL、20nm厚、1.5容量%のTBPでドープしたTBADNホスト材料からなる
(3)ETL、35nm厚、Alqからなる
(4)カソード、約210nm厚、Mg:Agからなる
【0039】
これらの層を蒸着した後、カプセル化のためデバイスを蒸着チャンバからドライボックス(VAC Vacuum Atmosphere Company)内に移動した。完成したデバイス構造をITO/CFx/NPB(90)/TBADN:TBP(20)/Alq(35)/Mg:Agとして示す。Ip(TBADN)=5.8eV、Eg(TBP)>3.0eV、Ip(Alq)=5.8eV、及びEg(Alq)=2.7eVであるので、このデバイス構造は図1Bに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0040】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、7Vの駆動電圧、567cd/m2の輝度、2.83cd/Aの発光効率、0.144,0.214のCIEx,y、及び2.99W/Sr/m2の放射輝度を有する。初期輝度が20%低下する動作時間(T80(70℃)として示す)は約130時間である。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示し、ELスペクトルを図5に示す。
【0041】
例2(比較例)
青色OLEDを、35nmのAlq ETLが35nmのBphen ETLによって置き換えられるステップ3以外は例1に記載した方法で構成した。Ip(TBADN)=5.8eV、Eg(TBP)>3.0eV、Ip(Bphen)=6.5eV、及びEg(Bphen)=3.4eVであるので、このデバイス構造は図1Cに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0042】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、7.2Vの駆動電圧、667cd/m2の輝度、3.34cd/Aの発光効率、0.137,0.192のCIEx,y、及び3.84W/Sr/m2の放射輝度を有する。このデバイスの発光効率、放射輝度、及び色純度は例1のものよりはるかに良好だが、T80(70℃)は30分未満であるためデバイスの動作寿命は非常に短い。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示す。
【0043】
例3(比較例)
青色OLEDを、35nmのAlq ETLが35nmのTPBI ETLによって置き換えられるステップ3以外は例1に記載した方法で構成した。Ip(TBADN)=5.8eV、Eg(TBP)>3.0eV、Ip(TPBI)=6.2eV、及びEg(TPBI)=3.4eVであるので、このデバイス構造は図1Cに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0044】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、7.4Vの駆動電圧、622cd/m2の輝度、3.11cd/Aの発光効率、0.139,0.210のCIEx,y、及び3.35W/Sr/m2の放射輝度を有する。このデバイスの発光効率、放射輝度、及び色純度は例1のものよりはるかに良好だが、T80(70℃)は約8時間であるためデバイスの動作寿命は短い。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示す。
【0045】
例4(比較例)
青色OLEDを、35nmのAlq ETLがHBLとしての10nmのBphenプラス1.2容量%のLiでドープしたBphenを備える25nmのn型ドープETLによって置き換えられるステップ3以外は例1に記載した方法で構成した。Ip(TBADN)=5.8eV、Eg(TBP)>3.0eV、Ip(Bphen)=6.5eV、及びEg(Bphen)=3.4eVであるので、このデバイス構造は図2Bに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0046】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、5.1Vの駆動電圧、633cd/m2の輝度、3.17cd/Aの発光効率、0.135,0.187のCIEx,y、及び3.73W/Sr/m2の放射輝度を有する。このデバイスは高い色純度放射及び高い発光効率を有する。しかし、例2及び例3と同様、T80(70℃)は約26時間であるためデバイスの動作寿命は短い。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示す。
【0047】
例5(本発明の例)
青色OLEDを、35nmのAlq ETLが非正孔阻止バッファ層としての5nmのB−Alqプラス1.2容量%のLiでドープしたAlqを備える30nmのn型ドープETLによって置き換えられるステップ3以外は例1に記載した方法で構成した。Ip(TBADN)=5.8eV、Ea(TBADN)=2.6eV、Ip(B−Alq)=5.8eV、及びEa(B−Alq)=2.6eV、Ip(Alq)=5.8eV、及びEa(Alq)=3.1eVであるので、このデバイス構造は図3Bに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0048】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、5.9Vの駆動電圧、619cd/m2の輝度、3.09cd/Aの発光効率、0.134,0.177のCIEx,y、3.80W/Sr/m2の放射輝度、及び172時間のT80(70℃)を有する。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示し、ELスペクトルを図5に示す。従来のデバイス(例1)と比較して、デバイスのEL性能は改善されている。
【0049】
例6(本発明の例)
青色OLEDを、35nmのAlq ETLが非正孔阻止バッファ層としての10nmのTBADNプラス1.2容量%のLiでドープしたBphenを備える25nmのn型ドープETLによって置き換えられるステップ3以外は例1に記載した方法で構成した。Ip(TBADN)=5.8eV、Ea(TBADN)=2.6eV、Ip(Bphen)=6.5eV、及びEa(Bphen)=3.1eVであるので、このデバイス構造は図3Cに示すものと同じ電子エネルギー図を有する。
【0050】
20mA/cm2の電流密度で測定する場合、デバイスは、5.3Vの駆動電圧、594cd/m2の輝度、2.97cd/Aの発光効率、0.135,0.167のCIEx,y、3.82W/Sr/m2の放射輝度、及び210時間のT80(70℃)を有する。正規化輝度と動作時間との関係を図4に示す。従来のデバイス(例1)と比較して、デバイスのEL性能は改善されている。
【0051】
表1に上記で論じた例のEL性能の概要を示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】先行技術のOLEDの断面図を示す。
【図1B】図1Aの先行技術のOLEDの対応するエネルギーバンド図を示す。
【図1C】図1Aの先行技術のOLEDの別の対応するエネルギーバンド図を示す。
【図2A】正孔阻止層を有する別の先行技術のOLEDの断面図を示す。
【図2B】図2Aの先行技術のOLEDの対応するエネルギーバンド図を示す。
【図3A】非正孔阻止バッファ層を有する本発明の断面図を示す。
【図3B】図3Aの本発明の対応するエネルギーバンド図を示す。
【図3C】図3Aの本発明の別の対応するエネルギーバンド図を示す。
【図4】本発明及び先行技術によって製造したOLEDの動作寿命を示す。
【図5】先行技術及び本発明によって製造したOLEDのELスペクトルを示す。
【符号の説明】
【0053】
100 OLED(先行技術)
200 正孔阻止層を有するOLED(先行技術)
300 OLED(本発明)
120 アノード
132 正孔輸送層、HTL
134 発光層、LEL
138 電子輸送層、ETL
140 カソード
226 正孔阻止層、HBL
336 非正孔阻止バッファ層、NHBL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電場発光デバイスであって、
a)アノードと、
b)前記アノードの上に配置された正孔輸送層と、
c)前記正孔輸送層の上に配置され、正孔−電子の再結合に応答して青色光を発生する発光層であって、少なくとも1つのホスト材料と少なくとも1つのドーパント材料とを含む発光層と、
d)前記発光層に接触して形成された非正孔阻止バッファ層であって、実質上前記発光層中の前記ホスト材料の1つと同じイオン化電位と同じ電子親和力とを有する非正孔阻止バッファ層と、
e)前記非正孔阻止バッファ層の上に配置された電子輸送層と、
f)前記電子輸送層の上に配置されたカソードとを備える有機電場発光デバイス。
【請求項2】
前記発光層中の前記ホスト材料の電子エネルギーバンドギャップが2.9eVより高い、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項3】
放射波長が490nmより短い、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項4】
前記非正孔阻止バッファ層の電子エネルギーバンドギャップが2.9eVより高い、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項5】
前記発光層の厚さの範囲が5nm〜30nmである、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項6】
前記非正孔阻止バッファ層の厚さの範囲が5nm〜30nmである、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項7】
前記非正孔阻止バッファ層の厚さの範囲が5nm〜20nmである、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項8】
前記発光層中の前記ホスト材料がアントラセン誘導体を含む、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項9】
前記アントラセン誘導体が2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)及び9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)を含む、請求項8に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項10】
前記非正孔阻止バッファ層が前記発光層中の前記ホスト材料の1つと同じ材料である、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項11】
前記非正孔阻止バッファ層がアントラセン誘導体から選択された材料を含む、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項12】
前記アントラセン誘導体が2−(1,1−ジメチルエチル)−9,10−ビス(2−ナフタレニル)アントラセン(TBADN)及び9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)を含む、請求項11に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項13】
前記非正孔阻止バッファ層が青色放射性金属キレート化オキシノイド化合物を含む、請求項1に記載の有機電場発光デバイス。
【請求項14】
前記青色放射性金属キレート化オキシノイド化合物がビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(B−Alq)を含む、請求項13に記載の有機電場発光デバイス。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−507107(P2007−507107A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528041(P2006−528041)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/029593
【国際公開番号】WO2005/038941
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】