説明

非水性イオン液中での不飽和脂肪のホモメタセシスによって、オレフィンと、ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法

【課題】経済的に実行可能な不飽和脂肪のホモメタセシスのための方法を提供する。
【解決手段】12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性の不飽和結合を含む一塩基カルボン酸または該一塩基酸のモノエステルを含む少なくとも1種の脂肪について、触媒の存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下にホモメタセシス反応を行うことにより、オレフィンフラクションと、ジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる。オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油のエステルの混合物への特定の適用において、該方法は、オレフィンフラクションと、モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させ、一般に、その鎖の過半数は、不飽和C18鎖によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下における不飽和脂肪のホモメタセシスによる、オレフィンと、ジエステルまたは二酸との同時生成に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンメタセシス反応は、有機化学において周知の反応である。当該反応は、適切な触媒系の存在下に行われるものであり、下記式に従って2種のオレフィン間でアルキリデン基を交換することからなる。
【0003】
1)第1の場合−「交差メタセシス(cross metathesis)」(すなわち、2種の異なるオレフィン間のメタセシス):
【0004】
【化1】

【0005】
2)第2の場合−「自己メタセシス(self metathesis」または「ホモメタセシス(homometathesis)」(すなわち、オレフィンのある分子の、同一種オレフィンの別の分子上へのメタセシス):
【0006】
【化2】

【0007】
オレフィンメタセシス反応は平衡反応である。それは、均一相または不均一相のいずれかにおいて、広範な種類の触媒の存在下に起こり得るが、通常は、該触媒は、タングステン、モリブデン、レニウムおよびルテニウムを含む第IVA族〜第VIII族からの遷移金属をベースとする。多数の概説および科学的業績によってこの概念が扱われている。例えば、非特許文献1〜4が挙げられてよい。
【0008】
オレフィンが不飽和脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸メチルによって示されるものである場合には、反応によって、1種の不飽和オレフィンおよび1種の不飽和ジエステルが生成させられる。反応は、下記のように記述され得る。
【0009】
【化3】

【0010】
この反応が潜在的に非常に興味深いのは、本質的に植物または動物を起源とし、それ故に再生可能である材料から出発して、不飽和ジエステル、長鎖オレフィン等の生成物を生成させることが構想され得るからである。構想される特定の場合には、不飽和ジエステルは、オクタデカ−9−エン−1,18−二酸のメチルジエステルであり(これは、ある種のポリマー(ポリエステル、ポリアミド)の生成において可能性を有している)、長鎖オレフィンは、オクタデカ−9−エンである(これは、二量化および水素化されて、興味深い潤滑油特性を有する10,11−ジオクチルイコサンを生成させ得る)。
【0011】
脂肪酸エステルに適用されるこのホモメタセシス反応は、多くの出版物および科学概説において報告されている。挙げられ得る最近の例は、非特許文献5〜9である。
【0012】
種々のタイプの触媒が、この変換を行うために記載されている。第1の系は、均一であり、タングステンおよびテトラアルキルスズ、例えば、WCl/SnMeをベースとする。これに続くのが、テトラアルキルスズによって活性化されたレニウムをベースとする不均一系であった。しかしながら、このような系は、反応生成物を汚染するかもしれない、一般的にはスズをベースとする共触媒を用いているという不利な点を有している。より最近になって、共触媒を用いない、金属−カルベン(M=C)をベースとする均一な「より境界が限定された」系が記載されており、その金属は、タングステンまたはモリブデンである。しかしながら、これらの系の全てで遭遇される主要な困難性は、酸またはエステル等の官能基、例えば、植物油に存在する官能基とのそれらの適合性が乏しいままであることである。これは、一般的に、このような触媒系の活性が低くかつ不活化が迅速であることを意味する。
【0013】
広範囲の官能基への抵抗性のために、ルテニウムをベースとする錯体が非常に興味深いことが急速に分かった。当該性質は、高い場合がある活性に結び付けられるものであり、これにより、ポリマー合成および有機合成の分野におけるそれらの主要な開発が説明される。
【0014】
植物油のメタセシスを触媒するためのそれらの使用が広く研究されている。以下の参照が提供され得る。
【0015】
・特許文献1(R Grubbsら)には、タイプ1の錯体によるオレイン酸メチルおよびオレイン酸のホモメタセシスが記載されている(図1)。反応によって、オレフィンと、不飽和ジエステルまたは二酸とを含む平衡混合物が生成させられる。
【0016】
特許文献2(W Herrmannら)、特許文献3(Herrmannら)および特許文献4(Herrmannら)には、オレイン酸メチルのホモメタセシスおよびオレイン酸メチルの1−オクテンとのメタセシスを触媒するためにタイプ2に類似する錯体(図1)を使用することが記載されている。後者の錯体の活性がより高いかもしれないが、二重結合の異性化活性も示す。
【0017】
特許文献5(Newmanら)には、均一な媒体またはポリマー、例えば、ポリスチレンタイプ上に支持された媒体中、タイプ3のルテニウム錯体(図1)を使用することが記載されている。上記の錯体と比較したこのような錯体の特別な特徴は、それらがキレート配位子を有することである。明らかに、固体支持体上に錯体を固定すると、系の活性が相当低減する。
【0018】
ルテニウムをベースとするこのような系の主要な困難性の一つは、それらの耐用期間があまりにも短いことにある。均一相においてそれらを用いると、最も活性な錯体が生じさせられるが、反応生成物を分離することおよびそれらをリサイクルすることの問題が生じる。
【0019】
一つの興味深い試みは、蒸留するかデカントする(生成物がわずかにしか溶媒と混和することができない場合)ことのいずれかによって生成物が容易に分離され得る液相(溶媒)中に触媒を固定化することからなる。
【0020】
一般式Qを有する非水性イオン液が、この適用のための特に有利な溶媒であることが示された。それらの蒸気圧は非常に低く(蒸発しない)、かつ、その物理化学的性質は、それらの中のアニオンおよびカチオンに応じて改変され得る(例えば、非特許文献10を参照のこと)。
【特許文献1】国際公開第96/04289号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/51344号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6635768号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2004/0095792号明細書
【特許文献5】国際公開第02/076920号パンフレット
【非特許文献1】ケイ・ジェイ・イビン(K.J.Ivin)およびジェイ・シー・モル(J.C.Mol)著,「オレフィン・メタセシス・アンド・メタセシス・ポリメリゼーション(Olefin metathesis and metathesis polymerization)」,サンディエゴ(San Diego),アカデミック出版(Academic Press),1997年
【非特許文献2】「ハンドブック・オフ・メタセシス(Handbook of metathesis)」,アール・エイチ・グラブス版(R.H.Grubbs(ed)),ウィリー−ブイシーエイチ(Wiley-VCH),ワインハイム(Weinheim),2003年
【非特許文献3】ジェイ・シー・モル(J.C.Mol)著,「インダストリアル・アプリケーションズ・オフ・オレフィン・メタセシス(Industrial application of olefin metathesis)」,ジェイ・モル・キャタル(J.Mol.Catal),第213巻,第39号,2004年
【非特許文献4】ディー・セミリ(D.Semeril)およびピー・エイチ・ディクスネウフ(P.H.Dixneuf)著,「ノベル・メタセシス・ケミストリ(Novel metathesis chemistry):ウェル・ディファインド・イニシエータ・システムズ・フォー・スペシャリティ・ケミカル・シンセシス(Well defined initiator systems for specialty chemical synthesis),テイラード・ポリマーズ・アンド・アドバンスド・マテリアル・アプリケーション(tailored polymers and advanced material applications)」,ワイ・イマモグル・アンド・エル・ベンスズ版(Y.Imamoglu and L.Bencze(Eds)),クルワー・アカデミック・パブリッシャー(Kluwer Academic Publishers),オランダ,2003年,p1−21
【非特許文献5】ジェイ・シー・モル(J.C.Mol)著,「アプリケーション・オフ・オレフィン・メタセシス・イン・オレオケミストリー(Application of olefin metathesis in oleochemistry):アン・イグザンプル・オフ・グリーン・ケミストリー(an example of green chemistry)」,グリーン・ケミストリー(Green Chemistry),2002年,第4号,p5−13
【非特許文献6】ビー・ビー・マーベイ(B.B.Marvey)ら著,「ザ・メタセシス・オフ・ポリアンサチュレイテッド・ファティ・エステルズ・ユージング・ザ・ホモジーニャス・W(O−2,6−C6H3X2)2Cl4/Me2Snキャタリティック・システムズ(The metathesis of polyunsaturated fatty esters using the homogeneous W(O-2,6-C6H3X2)2Cl4/Me4Sn catalytic systems)」,ジェイ・モル・キャタル(J.Mol.Catal),第213号,p151−157,2004年
【非特許文献7】エム・シベイジン(M.Sibeijn)ら著,「テクノロジカル・アンド・エコノミカル・アスペクト・オフ・ザ・メタセシス・オフ・アンサチュレイテッド・エステルズ(Technological and economical aspects of the metathesis of unsaturated esters)」,ジェイ・エイ・オー・シー・エス(JAOCS),第71巻,第6号,1994年
【非特許文献8】エス・ワーウェル(S.Warwel)ら著,「ポリマー・アンド・サーファクタンツ・オン・ザ・ベイシス・オフ・リニューアブル・リソーシズ(Polymer and surfactants on the basis of renewable resources)」,ケモスフィア(Chemosphere)、第43巻,p39−48,2001年
【非特許文献9】ジェイ・シー・モル(J.C.Mol)著,「キャタリシス・メタセシス・オフ・アンサチュレイテッド・ファティ・アシッド・エステル・アンド・オイルズ(Catalysis metathesis of unsaturated fatty acid esters and oils)」,トピックス・イン・キャタリシス(Topics in Catalysis),第27巻、第1号,2004年
【非特許文献10】エイチ・オリヴィア−ボウルビゴウ(H.Olivier-Bourbigou)、エル・マグナ(L.Magna)著,ジェイ・モル・キャタル・エイ・ケミ(J.Mol.Catal.A,Chem),2002年,第182号,p419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
イオン液中にルテニウムをベースとする触媒を固定化することが記載されているが、この領域において文献はほとんど存在しない。挙げられてよい例は、EP−B−1 035 093である。しかしながら、記載された適用は、閉環または開環メタセシス(RCMまたはROMP)の場合にのみ関する。
【0022】
さらに、このホモメタセシス反応の主要な問題の一つは転化収率にある。この反応は平衡反応であるので、得られる生成物の最大収率は50%である。それ故に、平衡をずらすことによって転化率を増加させることができる解決方法は、特に望ましいだろう。
【0023】
イオン液中の不飽和脂肪のホモメタセシスは記載されていない。この種の反応に関係するエンタルピーの変動は非常に小さいので、熱力学的平衡における結果は、アルキリデン基の統計分布に近い。それ故に、オレイン酸メチルのホモメタセシスについて、平衡時の混合物の組成は、ほぼ、50%が出発物、25%が長鎖C18オレフィン、25%がジエステルである。工業的な適用のために、反応生成物を分離した後に未転化試薬をリサイクルすることがそれ故に必要である。
【0024】
経済的に実行可能な不飽和脂肪のホモメタセシスのための方法を開発することは、それ故に、以下を包含する;
・大きな程度に二重結合を異性化しない安定な触媒を開発すること;
・長鎖オレフィンと、ジエステルまたは二酸との形成の方向に平衡をずらすように、反応の間に同時生成させられる長鎖オレフィンが反応媒体から選択的に抽出される方法;
・触媒がリサイクルおよび再使用され得る方法。
【0025】
本発明は、このような要件を満たし経済的に実行可能に、不飽和脂肪のホモメタセシス反応によって、オレフィンと、ジエステルまたは二酸とを同時生成させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、少なくとも1種のルテニウム化合物を含む触媒の存在下および例えば少なくとも1種の非水性イオン液の存在下での不飽和脂肪のホモメタセシスを包含する方法に関する。
【0027】
より詳細には、本発明は、オレインヒマワリ油およびオレインナタネ油のモノアルコールエステルおよび対応する酸の混合物から選択された脂肪のホモメタセシスのための方法に関する。
【0028】
この新規な方法において、触媒(例えば、ルテニウム錯体をベースとするもの)は、生成させられたオレフィンがわずかにのみ混和することができる非水性イオン液中に固定され、かつ、安定化される。それ故に、これらは反応の間およびそれらが形成された時に、第二相に抽出される。
【0029】
この新規な方法において、反応生成物は、蒸留(イオン液の不揮発性のため)またはデカンテーション(形成されたオレフィンがイオン液への溶解性が低いことに起因する)のいずれかによって、触媒を含有するイオン液から容易に分離され得る。触媒は、イオン液中に固定されかつ安定化されたままである。触媒を含有するこのイオン液は、リサイクルおよび再使用されてよい。
【0030】
この方法は、それぞれ異なる用途を有する相異なるフラクションに分離される生成物の特定の組成物を得るために用いられる。
【0031】
本発明は、オレフィンフラクションと、ジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる方法であって、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性の不飽和結合を含む一塩基カルボン酸または該一塩基酸のモノエステルを含む少なくとも1種の脂肪について、触媒の存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下にホモメタセシス反応を行う工程を包含するものである。
【0032】
非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qは、第四ホスホニウム、第四アンモニウム、第四グアジニジニウムまたは第四スルホニウムを示し、Aは、90℃以下で液体塩を形成することが可能なあらゆるアニオンを示す)を有する液体塩によって形成される群から選択されることが好ましい。
【0033】
カチオンQである第四アンモニウムまたは第四ホスホニウムは、式:
NR4+およびPR4+
のうちの一方または式:
N=CR4+およびRP=CR4+
のうちの一方を有し、ここで、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、または、−COR、−C(O)R、−OR、−C(O)NRR’、−C(O)N(R)NR’R”、−NRR’、−SR、−S(O)R、−S(O)R、−SOR、−CN、−N(R)P(O)R’R’、−PRR’、−P(O)RR’、−P(OR)(OR’)および−P(O)(OR)(OR’)(式中、R、R’およびR”は、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素、または1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基を示す)から選択される1以上の官能基を有するヒドロカルビル基を示す(NRについてのカチオンNHを除く)ことが好ましい。
【0034】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンは、一般式:
【化4】

【0035】
(式中、環は、4〜10個の原子によって構成され、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記定義の通りである)
を有する、1、2または3個の窒素および/またはリン原子を含む窒素含有および/またはリン含有ヘテロ環から誘導されたものであることが好ましい。
【0036】
第四アンモニウムまたは第四ホスホニウムカチオンは、式:
2+N=CR−R−RC=Nおよび
2+P=CR−R−RC=P
のうちの一方を有し、ここで、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記定義の通りであり、Rは、アルキレンまたはフェニレン基を示すものであることが好ましい。
【0037】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンQは、N−ブチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、ピリジニウム、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ヘキシル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、ジエチルピラゾリウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルモルホリニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムおよびトリブチル−テトラデシルホスホニウムによって形成される群から選択されるものであることが好ましい。
【0038】
第四スルホニウムおよび第四グアニジニウムカチオンは、一般式:
SR3+またはC(NR)(NR)(NR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、上記にR、R、RおよびRについて定義したものを意味する)
のうちの一方を有するものであることが好ましい。
【0039】
アニオンAは、以下のアニオン:ハリド、ニトラート、スルファート、アルキルスルファート、ホスファート、アルキルホスファート、アセタート、ハロゲノアセタート、テトラフルオロボラート、テトラクロロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロ−トリス−(ペンタフルオロエチル)ホスファート、ヘキサフルオロアンチモナート、フルオロスルホナート、アルキルスルホナート、ペルフルオロアルキルスルホナート、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)アミド、式C(CFSOを有するトリス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、式HC(CFSOを有するビス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、アレーンスルホナート、ハロゲンまたはハロゲン化アルキル基により置換されたアレーンスルホナート、芳香環が置換されたテトラフェニルボラートの単数または複数のアニオン、テトラ−(トリフルオロアセトキシ)−ボラート、ビス−(オキサラト)−ボラート、ジシアナミド、トリシアノメチリドおよびテトラクロロアルミナートのアニオンまたはクロロジンカートのアニオンから選択されるものであることが好ましい。
【0040】
イオン液は、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロアンチモナート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセタート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム トリフラート、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドおよびN−ブチル−N−メチルモルホリニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドから選択されることが好ましい。
【0041】
ホモメタセシス反応を経る前記不飽和脂肪は、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含むモノカルボン酸と、1〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪族モノアルコールとの間で形成された少なくとも1種のエステルを含むことが好ましい。
【0042】
前記モノカルボン酸は、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸およびセレトイン酸、cis−バクセン酸、ペトロセリン酸、ハイポゲン酸、ゴンド酸、エルカ酸またはネルボン酸、バクセン酸、エライジン酸、ブラッシジン酸、ウンデシレン酸およびリシノール酸から選択されることが好ましい。
【0043】
オレインヒマワリ油およびオレインナタネ油のモノアルコールエステルのオレイン混合物から選択された不飽和脂肪がメタセシス反応を経て、オレフィンフラクションと、鎖の少なくとも一部が不飽和C18鎖によって構成されるモノアルコールジエステル組成物との両方を生成させることが好ましい。
【0044】
不飽和脂肪は、C18多価不飽和酸を含有する脂肪酸の選択的水素化によってオレインタイプの一価不飽和脂肪酸に富むことが好ましい。
【0045】
オレインヒマワリ油脂肪酸の組成物は、
・オレイン酸メチル(C18:1): 約83重量%;
・リノール酸メチル(C18:2): 約10重量%;
・パルミチン酸メチル(C16:0): 約3重量%;
・ステアリン酸メチル(C18:0): 約4重量%
の組成を有していることが好ましい。
【0046】
少なくとも1種のルテニウム化合物が触媒として用いられることが好ましい。
【0047】
触媒は、一般式:
(X(XRu(カルベンC)(L(L
(式中、
・a、b、c、dは整数であり、aおよびbは0、1または2に等しく、cおよびdは、0、1、2、3または4に等しく;
・XおよびXは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、帯電または非帯電の単座または多座キレート配位子を示し;XまたはXは、LまたはLまたはカルベンCに結合して、ルテニウム上に二座配位子を形成してもよく;
およびLは、同一であっても異なっていてもよく、電子供与配位子である)
を有する帯電または非帯電の触媒から選択されることが好ましい。
【0048】
・オレフィンフラクション、および
・モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物
を分離する工程をさらに包含することが好ましい。
【0049】
好ましくは、分離によって得られたオレフィンフラクションにおける鎖の過半数が、不飽和C18鎖によって構成される。
【0050】
好ましくは、前記オレフィンフラクションは、少なくとも80%のオクタデカ−9−エンを含む。
【0051】
好ましくは、前記オレフィンフラクションは、ドデカ−6−エン、ペンタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9−ジエンおよびオクタデカ−6,9,12−トリエンをさらに含む。
【0052】
蒸留によって前記オレフィンフラクションからモノオレフィンおよびポリオレフィンを分離する工程をさらに包含することが好ましい。
【0053】
好ましくは、分離によって得られたモノアルコールジエステルまたは二酸の組成物において、鎖の過半数が不飽和C18鎖によって構成される。
【0054】
前記組成物において、前記モノアルコールは、1〜8個の炭素原子を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明の方法は、少なくとも1種の非水性イオン液の存在下に不飽和脂肪を用いてホモメタセシス反応を行うので、経済的に実行可能に、オレフィンフラクショと、モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させることができる。オレインヒマワリ種子油またはオレインナタネ油のエステルの混合物についての本発明の特定の適用において、該方法は、オレフィンフラクションと、モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させ、一般に、その鎖の過半数は、不飽和C18鎖によって構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
(供給材料)
本発明のメタセシス方法は、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性の不飽和結合を含む少なくとも1つのモノカルボン酸またはモノエステルを含むあらゆる脂肪に適用可能である。
【0057】
酸媒体中での油または脂肪の加水分解によって通常脂肪酸が得られることを当業者は知っているだろう。
【0058】
脂肪酸エステルは、メタノール、エタノール、プロパノールまたはより一般的には、1〜8個の炭素原子を含有するあらゆるモノアルコール等の一水酸基化された飽和脂肪族化合物による脂肪酸のエステル化または油(またはトリグリセリド)の直接的トランスエステル化のいずれかによって得られ得る。
【0059】
脂肪酸は、植物または動物起源の油の主要な成分である。それらは、天然の状態では純粋なかたちで得られることはめったになく、常時、複数種の脂肪酸の混合物によって構成される。
【0060】
油中に天然に遭遇される主要な一価不飽和脂肪酸は、通常、不飽和結合をcis体でΔ9位(カルボン酸基からカウントされる不飽和結合の位置)に有する。
【0061】
このファミリーからの例は、ラウロレイン酸(ドデカ−9c−エン酸)、ミリストレイン酸(テトラデカ−9c−エン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデカ−9c−エン酸)、オレイン酸(オクタデカ−9c−エン酸)、ガドレイン酸(イコサ−9c−エン酸)およびセレトイン酸(ドコサ−9c−エン酸)である。
【0062】
本発明者らはまた、オレイン酸の不飽和結合の位置異性体、例えば、cis−バクセン酸(オクタデカ−11c−エン酸)並びにペトロセリン酸(オクタデカ−6c−エン酸)、不飽和結合が(n−9)位[不飽和結合の位置は、脂肪鎖の末端のメチル基からカウントされる]にある他の脂肪酸、例えば、ハイポゲン酸(hypogeic acid)(ヘキサデカ−7c−エン酸)、ゴンド酸(イコサ−11c−エン酸)、エルカ酸(ドコサ−13c−エン酸)またはネルボン酸(テトラコサ−15c−エン酸)を天然状態において見出した。
【0063】
これらの酸の大部分は、所定油のマイナーな化合物であるか、または、培養が依然として機密であるか、または実際にあっても非常に制限される植物の種中により多い量で存在する。
【0064】
一価不飽和脂肪酸のtrans異性体も、天然状態において見出される。バクセン酸(オクタデカ−11t−エン酸)が挙げられてよい。
【0065】
多価不飽和脂肪の部分的水素化は、常時、cis−tran異性化を伴って起こされる。前記異性化はまた、存在するモノオレフィンの全てに影響を及ぼし得る。エライジン酸(9t)およびブラッシジン酸(13t)が特に挙げられ得、これらは、それぞれ、オレイン酸およびエルカ酸のtrans異性体である。
【0066】
末端二重結合を有する一価不飽和酸は天然に存在しない。しかしながら、ウンデシレン酸(undecyenlic acid)(ウンデカ−10−エン酸)は、ナイロン−11(Rilsan(登録商標))の合成において用いられる工業製品であるリシノール酸のクラッキングに由来するものであるが、これは、ホモメタセシスにおける興味深い中間体であり得る。非常に純粋であり、メチルエステル体で、C20一価不飽和ジエステルおよびエチレンを主として提供し得るからである。
【0067】
二次的な酸化された基、主としてアルコール基を有する脂肪酸を挙げることも可能であり、その主たるものの一つは、リシノール酸(12L−ヒドロキシオクタデカ−9c−エン酸)であり、これは、ヒマシ油の主成分である。
【0068】
この場合、ホモメタセシスの後、モノオレフィンは生成させられず、むしろC18オレフィンジオールが一価不飽和C20ジエステルと共に生成させられる。
【0069】
脂肪鎖がもっぱらオレイン鎖によって構成される天然の植物または動物起源の脂肪が存在しないので、それ故に、純粋なオレイン酸エステルを得るには、通常、困難な条件下での蒸留または結晶化を用いる分離および精製操作を用いることを必要とし、それ故に、高価である。
【0070】
現在、ヒマワリおよびナタネの品種に由来する「オレイン」と称される油に対する必要性がある。オレイン酸含有量はしばしば80%を超える。対照的に、リノール酸(オクタデカ−9c,12c−ジエン酸)含有量は、10〜12%に達し、大量の二酸異性体およびモノおよびポリオレフィン化合物を生じさせることによってホモメタセシス反応に由来する生成物の質に悪影響を及ぼし得る。
【0071】
一価不飽和オレインタイプの脂肪酸に富む出発材料を生成させるためのさらなる変形では、C18多価不飽和酸を含有する脂肪酸の混合物の選択的水素化が行われる。この場合、得られた生成物は、trans異性体および二重結合の位置異性体からなる。ジエン性の脂肪酸については、リノール酸(オクタデカ−9c,12c−ジエン酸)の場合において、制御された水素化工程の後、cisおよびtrans異性体および位置異性体の混合物が得られる(Δ9、10、11および12)。
【0072】
それ故に、所定の脂肪の選択的水素化は、脂肪酸の所定混合物のオレイン脂肪鎖含量に富み、したがって、ホモメタセシスのために用いられ得る出発材料の範囲を拡大し得る。
【0073】
例えば、パルミチン酸(5%)、ステアリン酸(2%)、オレイン酸(59%)、リノール酸(21%)、リノレン酸(9%)およびC20およびC22より大きい脂肪酸(3%)の脂肪酸分布を有するオレインヒマワリ油または非オレイン性のナタネ油の選択的水素化は、90%近くの一価不飽和脂肪酸の組成物を生成させ得、その他の成分は、主として、飽和鎖である。この場合、前記化学的に改変された出発材料から、ホモメタセシス反応によって、主として、2種の生成物であるオクタデカ−9−エンおよびジエステル(オクタデカ−9−エン−1,18−二酸のメチルエステル)が形成されることになる。
【0074】
本発明の方法のための最も適切な出発材料は、それ故に、主としてオクタデカ−9−エン−1,18−二酸のジエステルおよびオクタデカ−9−エンに富む混合物であるものを得るために、オレイン酸またはその異性体に特に富み、脂肪鎖は、単一の不飽和結合を有しているべきである。
【0075】
【化5】

【0076】
オレフィンが二価不飽和脂肪酸のエステル、例えば、リノール酸のメチルエステルである場合、メタセシス反応により、モノまたはポリオレフィン、一価または多価不飽和モノエステル、および一価または多価不飽和ジエステルが生成するだろう。
【0077】
同一の反応は、全ての既知の不飽和脂肪酸鎖、例えば、リノールタイプの三価不飽和酸の鎖に適用され得る。潜在的に可能性のある生成物の数は、鎖中の不飽和結合の数がより多くなるに伴ってより多くなる。
【0078】
このメタセシス反応が、生成物が植物または動物起源である時の現実の場合のように、単一の脂肪酸の鎖、例えば、上記のオレインまたはリノール酸の鎖ではなく、前記脂肪酸鎖の混合物に適用される場合、含まれる脂肪鎖のそれぞれのホモメタセシスに由来する生成物の混合物が得られるだろう。
【0079】
全ての場合において、オレインヒマワリ油およびオレインナタネ油に由来する脂肪鎖の混合物中に存在する飽和脂肪酸エステルは、メタセシス反応に反応性ではなく、操作終了持に回収される。
【0080】
得られた生成物の性質およびそれらの量は、それ故に、用いられた脂肪出発材料の脂肪酸の組成(性質および豊富さ)に依存するだろう。
【0081】
(オレインヒマワリ油のメチルエステルについてのホモメタセシスによって生成させられた生成物の例)
オレインヒマワリ油のメチルエステルは、下記組成を有する:
・パルミチン酸メチル C16:0=3重量%;
・ステアリン酸メチル C18:0=4重量%;
・オレイン酸メチル C18:1=83重量%;
・リノール酸メチル C18:2=10重量%。
【0082】
第一の反応において形成された生成物は、4つの相異なるカテゴリーに分類され得る:
・モノオレフィン;
・ポリオレフィン;
・不飽和ジエステルおよびモノエステル;および
・飽和エステル。
【0083】
オクタデカ−9−エン、ドデカ−6−エン、ペンタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9−ジエンおよびオクタデカ−6,9,12−トリエンが、形成された最初のオレフィン分子である。それらは、次々に、それら自体および反応しなかった一価および二価不飽和メチルエステルと反応して、他のオレフィン分子、例えば、テトラコサ−6,9,12,15,18−ペンタエン、ウンエイコス−6,9,12,15−テトラエン(uneicos-6,9,12,15-tetraene)、ウンエイコス−9,12,15−トリエン等を生成させ得る。得られたオレフィンフラクションは、少なくとも80%のオクタデカ−9−エンを含む。
【0084】
本発明の方法は、蒸発によってオレフィンを分離する工程を包含してもよい。実際に、モノオレフィンおよびポリオレフィンは、蒸留によって反応媒体から容易に分離され得る(例えば、ドデカ−6−エン、オクタデカ−9−エン、ペンタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9,12−トリエン)。C18オレフィンの沸点は、未反応のオレイン酸のメチルエステルの沸点または生成させられたC18ジエステルの沸点よりも34℃より低いからである。
【0085】
本発明の方法において、前述の単離されたオレフィン混合物は、ドデカ−6−エン、オクタデカ−9−エン、ペンタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9−ジエンおよびオクタデカ−6,9,12−トリエンを分離するための選択的蒸留を経てもよい。
【0086】
18個を超える炭素原子を含有するオレフィンは、この技術によっては分離され得ない。それらの沸点が、オレイン酸エステル、飽和脂肪酸および生成させられたジエステルの沸点に近すぎるからである。
【0087】
分離によって得られたモノアルコールジエステルまたは二酸の組成物において、鎖の過半数は、不飽和C18鎖によって構成される。
【0088】
オレフィンフラクション(モノおよびジオレフィン)を留去した後、残った反応媒体は、ホモメタセシスによって反応可能なオレイン酸またはリノール酸エステルを転化するために再度反応させられてよい。飽和脂肪酸エステル構造がメタセシス反応に必要とされないことが想起されるだろう。
【0089】
(イオン液)
非水性イオン溶媒は、一般式Q(式中、Qは、第四アンモニウム、第四ホスホニウム、第四グアニジニウムおよび/または第四スルホニウムを示し、Aは、低温、すなわち90℃以下、有利には高くとも85℃、好ましくは50℃以下で液体塩を形成し得るあらゆるアニオンを示す)を有する液体塩によって形成される群から選択される。
【0090】
アニオンAは、好ましくは、ハリド、ニトラート、スルファート、アルキルスルファート、ホスファート、アルキルホスファート、アセタート、ハロゲノアセタート、テトラフルオロボラート、テトラクロロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロ−トリス−(ペンタフルオロエチル)ホスファート、ヘキサフルオロアンチモナート、フルオロスルホナート、アルキルスルホナート(例えば、メチルスルホナート)、ペルフルオロアルキルスルホナート(例えば、トリフルオロメチルスルホナート)、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)アミド(例えば、式:N(CFSOを有するビス−トリフルオロメチルスルホニル アミド)、式C(CFSOを有するトリス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、式HC(CFSOを有するビス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、ハロゲンまたはハロゲン化アルキル基により置換されてもよいアレーンスルホナート、芳香環が置換されたテトラフェニルボラートの単数または複数のアニオン、テトラ−(トリフルオロアセトキシ)−ボラート、ビス−(オキサラト)−ボラート、ジシアナミド、トリシアノメチリドおよびテトラクロロアルミナートのアニオンまたはクロロジンカートのアニオンから選択される。
【0091】
下記式において、R、R、R、R、RおよびRは、水素を示し(NR4+についてのNHカチオンを除く)、好ましくは、単一の置換基は、水素、1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基(例えば、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基または芳香族基)、アリールまたはアラルキル(置換されてもよく、1〜30個の炭素原子を含有する)を示す。
【0092】
、R、R、R、RおよびRはまた、1以上の官能基を有するヒドロカルビル基を示してもよく、該置換基は、−COR、−C(O)R、−OR、−C(O)NRR’、−C(O)N(R)NR’R”、−NRR’、−SR、−S(O)R、−S(O)R、−SOR、−CN、−N(R)P(O)R’R’、−PRR’、−P(O)RR’、−P(OR)(OR’)、−P(O)(OR)(OR’)(式中、R、R’、R”は、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素または1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基を示す)から選択される。
【0093】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンQは、好ましくは、一般式NR4+およびPR4+のうちの一方、または、一般式RN=CR4+およびRP=CR4+のうちの一方を有する(式中、R、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、これらは、上記の定義の通りである)。
【0094】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンは、1、2または3個の窒素および/またはリン原子を含む窒素含有および/またはリン含有ヘテロ環から誘導され、一般式:
【0095】
【化6】

【0096】
(式中、環は、4〜10個の原子、好ましくは5〜6個の原子によって構成され、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記定義の通りである)
を有してもよい。
【0097】
第四アンモニウムまたは第四ホスホニウムカチオンはまた、式:
2+N=CR−R−RC=N
およびR2+P=CR−R−RC=P
(式中、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記の定義通りであり、Rは、アルキレンまたはフェニレン基を示す)
のうちの一方を有してもよい。
【0098】
挙げられてもよい特定の基R、R、RおよびRは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、フェニルまたはベンジル基であり、Rは、メチレン、エチレン、プロピレンまたはフェニレン基であってよい。
【0099】
好ましくは、第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンQは、N−ブチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、ピリジニウム、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ヘキシル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、ジエチルピラゾリウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルモルホリニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、テトラブチルホスホリウムおよびトリブチル−テトラデシルホスホニウムによって形成される群から選択される。
【0100】
第四スルホニウムおよび第四グアニジニウムカチオンは、好ましくは、一般式:
SR3+およびC(NR)(NR)(NR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、上記に定義された通りである)
のうちの一方を有する。
【0101】
挙げられ得る本発明において用いられてよい塩の例は、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロアンチモナート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセタート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム トリフラート、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドおよびN−ブチル−N−メチルモルホリニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドである。これらの塩は単独でまたは混合物として用いられてよい。
【0102】
(触媒)
本発明の方法において過剰のエチレンにより不飽和脂肪のメタセシスを行うために用いられる触媒は、あらゆる既知のメタセシス触媒からなってよいが、特には、少なくとも1種のルテニウム化合物を含む触媒である。
【0103】
ルテニウム触媒は、好ましくは、一般式:
(X(XRu(カルベンC)(L(L
を有する帯電または非帯電触媒から選択される。
【0104】
ここで、
・a、b、c、dは、整数であり、aおよびbは、0、1または2に等しく、cおよびdは、0、1、2、3または4に等しく;
・XおよびXは、同一であっても異なってもよく、それぞれ、単座または多座キレート配位子(帯電または非帯電)を示し;挙げられてよい例は、ハリド、スルファート、カルボナート、カルボキシラート、アルコラート、アルコラート、フェネート、アミド、トシラート、ヘキサフルオロホスホナート、テトラフルオロボラート、ビス−トリフリルアミド(bis-triflyamide)、テトラフェニルボラートおよびその誘導体であり;XまたはXは、LまたはLまたは「Cカルベン」と結合して、ルテニウム上に二座(またはキレート)配位子を形成してもよく;そして、
・LおよびLは、同一であっても異なってもよく、ホスフィン、ホスフィット、ホスホニット、ホスフィニット、アルシン、スチルビン、オレフィンまたは芳香族、カルボニル化合物、エーテル、アルコール、アミン、ピリジンまたはその誘導体、イミン、チオエステルまたはヘテロ環カルベン等の電子供与配位子であり、これは、例えば、図2の一般式の1つを有する;ここで、R、R、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素、または1〜12個の炭素原子を含有する飽和または不飽和または芳香性の脂肪族炭化水素基を示す。
【0105】
またはLは、「カルベンC」と結合して、図3の式に示されるような二座またはキレート配位子を形成してもよい。ここで、Zは、1〜12個の炭素原子を含有する飽和、不飽和または芳香族性の環状または非環状の脂肪族炭化水素の二価基を示し、Yは、酸素、窒素、硫黄、リン等のヘテロ原子である。
【0106】
「カルベンC」は、一般式:C(R)(R)によって表されてよい。ここで、RおよびRは、同一または異なって、例えば、水素またはあらゆる他の飽和または不飽和の、環状、線状または分枝状または芳香族性の炭化水素基である。挙げられてよい例は、アルキリデンルテニウム錯体またはクムレン錯体、例えば、ビニリデン、Ru=C=CHR、アレニリデン、Ru=C=C=CRまたはインデニリデンである。
【0107】
イオン液中でのルテニウム錯体の保持を向上させ得る官能基が、配位子X、X、L、Lの少なくとも1つ上またはカルベンC上に移植されてもよい。この官能基は、帯電していてもよいししていなくてもよく、好ましくは、エステル、エーテル、チオール、酸、アルコール、アミン、窒素含有へテロ環、ヘテロ環、スルホナート、カルボキシラート、第四アンモニウム、グアニジニウム、第四ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、モルホリニウムまたはスルホニウムである。
【0108】
官能基付与された錯体の例:官能基の適切な位置:
【0109】
【化7】

【0110】
これらのルテニウム誘導体の中で、下記例が挙げられてよい:
【0111】
【化8】

【0112】
【化9】

【0113】
これらの式において、Cyはシクロヘキシル基を示し、iPrはイソプロピル基を示す。Qは、有機カチオン(例えば、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウムまたはホスホニウム)または無機カチオン(例えば、Na、LiまたはK)を示す。
【0114】
(実施)
本発明の方法において、出発脂肪(例えば、オレインヒマワリ油またはオレインナタネ油のモノアルコールエステル)のメタセシスは、有機共溶媒の存在下または不存在下に行われてよい。溶媒または溶媒混合物が用いられた場合、その役割は、イオン液中への試薬および触媒の溶解性を向上させることであり得る。それはまた、第二相中への生成物の抽出を最適化するように作用し得る。
【0115】
挙げられ得る適切な溶媒の例は、クロロアルカン(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロ−またはトリクロロ−エタン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼン)または脂肪族溶媒(例えば、ヘプタンまたはシクロヘキサン)である。
【0116】
本発明の方法のホモメタセシス反応は、閉鎖(バッチ)系、半開放系または1以上の反応工程を有する連続系において行われてよい。反応蒸留を用いて反応を行うことを想定することも可能である。
【0117】
激しい攪拌により、試薬と触媒混合物との間の良好な接触が確実に行われる。反応温度は、0〜150℃であってよいが、好ましくは20〜120℃である。
【0118】
操作は、媒体の溶融温度より上または下で行われてよく、分散させられた固体の状態が反応の制限にはならない。
【0119】
圧力は、例えば、大気圧〜50MPaであってよい。
【0120】
反応生成物は、デカンテーションによって分離されてよい。
【0121】
イオン液が十分に不揮発性であり熱的に安定であれば、蒸留によって生成物を分離することも可能である。
【0122】
下記実施例は、本発明の範囲を制限することなく本発明を例示する。
【0123】
(実施例1:イオン液中でのオレイン酸メチルの二相性のホモメタセシス)
ガラス製反応フラスコに、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(30mg,0.036mmol,0.004当量)、オレイン酸メチル(3mL、8.84mmol,1当量)、:1mLの式[BMPyrr][NTf]を有する1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2mLのヘプタンおよび0.1mLのドデカン(内部標準)が加えられた。混合物は二相性であった。混合物は攪拌され、55℃に加熱された。2時間の反応時間の後、少量の液状上側相がFID GC分析のために取り出された。GC分析は、メタセシス反応がきれいに進行し、9−オクタデカンおよびジメチルオクタデセン−1,18−二酸エステルの生成物を産出したことを示した。オレイン酸メチルのこれらの生成物への転化率は46重量%であった。
【0124】
(実施例2:リサイクル実験)
ガラス製反応フラスコに、(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン) ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(50mg,0.059mmol,0.01当量)、オレイン酸メチル(1.5mL,4.42mmol,1当量)、1mLの1−ブチル−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、2mLのヘプタンおよび0.1mLのドデカン(内部標準)が加えられた。混合物は二相性であった。混合物は、室温で攪拌された。2時間の反応時間の後、混合物はデカントされた。上相が取り出され、結果として得られたイオン液溶液は、2mLのヘプタンにより洗浄された。少量の合わされた有機液が、GCによって分析された(エントリー1)。各リサイクルおよび反応が、室温で再開始することをできるようにした後に、新鮮なオレイン酸メチル(1.5mL,4.42mmol,1当量)、2mLのヘプタンおよび0.1mLのドデカンがイオン液に加えられた。GC分析は、メタセシス反応が進行し、主として、9−オクタデセンおよびジメチルオクタデセン−1,18−二酸エステルの生成物を産出したことを示した。Ru触媒もイオン液も加えることなく3回連続してイオン相のリサイクルが行われた。オレイン酸メチルの9−オクタデセンおよびジメチルオクタデセン−1,18−二酸エステルの生成物への転化率は、表1に記載された。
【0125】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】タイプ1〜3の錯体を示す化学式である。
【図2】配位子LまたはLになり得るヘテロ環カルベンの一例を示す化学式である。
【図3】配位子LまたはLとして、「カルベンC」に結合されて二座またはキレート化された配位子を形成した場合を示す化学式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンフラクションと、ジエステルまたは二酸の組成物との両方を生成させる方法であって、
12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性の不飽和結合を含む一塩基カルボン酸または該一塩基酸のモノエステルを含む少なくとも1種の脂肪について、触媒の存在下および少なくとも1種の非水性イオン液の存在下にホモメタセシス反応を行う工程を包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
非水性イオン液は、一般式Q(式中、Qは、第四ホスホニウム、第四アンモニウム、第四グアジニジニウムまたは第四スルホニウムを示し、Aは、90℃以下で液体塩を形成することが可能なあらゆるアニオンを示す)を有する液体塩によって形成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カチオンQである第四アンモニウムまたは第四ホスホニウムは、式:
NR4+およびPR4+
のうちの一方または式:
N=CR4+およびRP=CR4+
のうちの一方を有し、ここで、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素、1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基、または、−COR、−C(O)R、−OR、−C(O)NRR’、−C(O)N(R)NR’R”、−NRR’、−SR、−S(O)R、−S(O)R、−SOR、−CN、−N(R)P(O)R’R’、−PRR’、−P(O)RR’、−P(OR)(OR’)および−P(O)(OR)(OR’)(式中、R、R’およびR”は、同一であっても異なってもよく、それぞれ、水素、または1〜30個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基を示す)から選択される1以上の官能基を有するヒドロカルビル基を示す(NRについてのカチオンNHを除く)ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンは、一般式:
【化1】

(式中、環は、4〜10個の原子によって構成され、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記定義の通りである)
を有する、1、2または3個の窒素および/またはリン原子を含む窒素含有および/またはリン含有ヘテロ環から誘導されてもよいことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第四アンモニウムまたは第四ホスホニウムカチオンは、式:
2+N=CR−R−RC=Nおよび
2+P=CR−R−RC=P
のうちの一方を有し、ここで、R、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、上記定義の通りであり、Rは、アルキレンまたはフェニレン基を示すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
第四アンモニウムおよび/または第四ホスホニウムカチオンQは、N−ブチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、ピリジニウム、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム、3−ヘキシル−1−メチルイミダゾリウム、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムカチオン、ジエチルピラゾリウム、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム、N−ブチル−N−メチルモルホリニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムおよびトリブチル−テトラデシルホスホニウムによって形成される群から選択されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
第四スルホニウムおよび第四グアニジニウムカチオンは、一般式:
SR3+またはC(NR)(NR)(NR
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、上記にR、R、RおよびRについて定義したものを意味する)
のうちの一方を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
アニオンAは、以下のアニオン:ハリド、ニトラート、スルファート、アルキルスルファート、ホスファート、アルキルホスファート、アセタート、ハロゲノアセタート、テトラフルオロボラート、テトラクロロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロ−トリス−(ペンタフルオロエチル)ホスファート、ヘキサフルオロアンチモナート、フルオロスルホナート、アルキルスルホナート、ペルフルオロアルキルスルホナート、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)アミド、式C(CFSOを有するトリス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、式HC(CFSOを有するビス−トリフルオロメチルスルホニル メチリド、アレーンスルホナート、ハロゲンまたはハロゲン化アルキル基により置換されたアレーンスルホナート、芳香環が置換されたテトラフェニルボラートの単数または複数のアニオン、テトラ−(トリフルオロアセトキシ)−ボラート、ビス−(オキサラト)−ボラート、ジシアナミド、トリシアノメチリドおよびテトラクロロアルミナートのアニオンまたはクロロジンカートのアニオンから選択されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
イオン液は、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボラート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロアンチモナート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセタート、3−エチル−1−メチルイミダゾリウム トリフラート、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、1−(2−カルボキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドおよびN−ブチル−N−メチルモルホリニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドから選択されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ホモメタセシス反応を経る前記不飽和脂肪は、12〜22個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含むモノカルボン酸と、1〜8個の炭素原子を含有する少なくとも1種の脂肪族モノアルコールとの間で形成された少なくとも1種のエステルを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記モノカルボン酸は、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸およびセレトイン酸、cis−バクセン酸、ペトロセリン酸、ハイポゲン酸、ゴンド酸、エルカ酸またはネルボン酸、バクセン酸、エライジン酸、ブラッシジン酸、ウンデシレン酸およびリシノール酸から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
オレインヒマワリ油およびオレインナタネ油のモノアルコールエステルのオレイン混合物から選択された不飽和脂肪がメタセシス反応を経て、オレフィンフラクションと、鎖の少なくとも一部が不飽和C18鎖によって構成されるモノアルコールジエステル組成物との両方を生成させることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
不飽和脂肪は、C18多価不飽和酸を含有する脂肪酸の選択的水素化によってオレインタイプの一価不飽和脂肪酸に富むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オレインヒマワリ油脂肪酸の組成物は、
・オレイン酸メチル(C18:1): 約83重量%;
・リノール酸メチル(C18:2): 約10重量%;
・パルミチン酸メチル(C16:0): 約3重量%;
・ステアリン酸メチル(C18:0): 約4重量%
の組成を有していることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種のルテニウム化合物が触媒として用いられることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
触媒は、一般式:
(X(XRu(カルベンC)(L(L
(式中、
・a、b、c、dは整数であり、aおよびbは0、1または2に等しく、cおよびdは、0、1、2、3または4に等しく;
・XおよびXは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、帯電または非帯電の単座または多座キレート配位子を示し;XまたはXは、LまたはLまたはカルベンCに結合して、ルテニウム上に二座配位子を形成してもよく;
およびLは、同一であっても異なっていてもよく、電子供与配位子である)
を有する帯電または非帯電の触媒から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
・オレフィンフラクション、および
・モノアルコールジエステルまたは二酸の組成物
を分離する工程をさらに包含することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
分離によって得られたオレフィンフラクションにおける鎖の過半数が、不飽和C18鎖によって構成されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記オレフィンフラクションは、少なくとも80%のオクタデカ−9−エンを含むことを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記オレフィンフラクションは、ドデカ−6−エン、ペンタデカ−6,9−ジエン、オクタデカ−6,9−ジエンおよびオクタデカ−6,9,12−トリエンをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
蒸留によって前記オレフィンフラクションからモノオレフィンおよびポリオレフィンを分離する工程をさらに包含することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
分離によって得られたモノアルコールジエステルまたは二酸の組成物において、鎖の過半数が不飽和C18鎖によって構成されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記組成物において、前記モノアルコールは、1〜8個の炭素原子を含有することを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−197443(P2007−197443A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13344(P2007−13344)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】