説明

非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池

【課題】高レート特性、サイクル特性、安全性に優れた非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池を提供する。
【解決手段】非水系二次電池用セパレータにおいて、多孔質支持体上にカチオンの一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトを配置し、バインダーとして質量平均分子量100,000以上のポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコールまたはポリフッ化ビニリデンのうち少なくとも1種類を主体であることを特徴とする非水系二次電池セパレータ及び該非水系二次電池用セパレータを用いてなる非水系二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池・リチウムイオンポリマー二次電池等の非水系二次電池における高レート特性・サイクル特性・安全性を向上させる非水系二次電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器の普及及びその高性能化に伴い、高エネルギー密度を有し、軽量な二次電池が望まれている。この種の電池として、有機電解液(非水電解液)を使用するリチウムイオン二次電池が注目され、これまで多く使用されてきた。近年では、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池は大型用途への展開や長時間駆動用途への使用も増加している。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、有機電解液を使用するため安全性の面での不安もあり、これまで微多孔膜に無機粒子を含有させたセパレータまたは、無機粒子層を積層させたセパレータの例が報告されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、耐熱性の向上やサイクル特性の向上は改善が見られるが、大型用途で必要とされる大電流時(高レート時)の容量維持率への改善については報告なされていない。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、LiPFなどを電解質として使用しているため、電池内部に水分が存在すると、フッ化水素(HF)といったガスを発生させ、電池を膨張させる、またはサイクル寿命を低下させる問題があり、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー電池内でゼオライトをセパレータに付与させて水分を吸着させ、ガス発生を抑制させることにより、サイクル特性を向上させるという方法が検討されてきた(例えば、特許文献5〜8参照)。また、特に電池反応性に寄与しない点や吸湿性に優れるといった点から、A型やX型やY型といった合成ゼオライトが検討されてきた(例えば、特許文献7または9参照)。しかし、これらの合成ゼオライトにおいて、水分の吸着による電池内部のガスの発生を抑えることで、サイクル寿命の低下を防ぐことは見られるが、高レート特性やサイクル特性については、何ら検討されていなかった。
【0005】
リチウムポリマー二次電池の正極・負極・電解質中へのリチウムイオン置換したゼオライトの添加は報告があるが、ゼオライトの構造については、十分な検討がなされていない(例えば、特許文献6及び10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−266808号公報
【特許文献2】特開2009−245922号公報
【特許文献3】特開2009−245918号公報
【特許文献4】特開2009−70797号公報
【特許文献5】特開2001−126766号公報
【特許文献6】特開2000−77103号公報
【特許文献7】特開2008−146963号公報
【特許文献8】特表2007−508670号公報
【特許文献9】特開平11−260416号公報
【特許文献10】特開2001−229976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高レート特性・サイクル特性・安全性を向上させた非水系二次電池用セパレータと、それを用いてなる非水系二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、
(1)多孔質支持体に、カチオンの少なくとも一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトと有機高分子バインダーとを配置してなる非水系二次電池用セパレータ、
(2)有機高分子バインダーとして、質量平均分子量が100,000以上であり、かつポリメタクリル酸メチル、ポリアルキレンオキシドまたはポリフッ化ビニリデン単位を含むポリマー化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種類を用いることを特徴とする(1)記載の非水系二次電池用セパレータ、
(3)上記(1)又は(2)記載の非水系二次電池用セパレータを用いてなる非水系二次電池、
を見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非水系二次電池用セパレータ(1)は、多孔質支持体にカチオンの少なくとも一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトを配置したことを特徴とする。無機粒子の中でもリチウムイオン置換したA型ゼオライトを使用すると、ゼオライト中のリチウム(Li)を核として、Liイオンの伝導性を向上させるため、高レート時にも高い容量維持率を示す。また、リチウムイオン置換により内部抵抗を低下させるだけでなく、サイクル時のLi損失も防ぐため、サイクル特性も向上させる。また、無機粒子を配置することで、機械的強度が向上した。
【0010】
また、有機高分子バインダーとして、質量平均分子量が100,000以上でかつ、ポリメタクリル酸メチル、ポリアルキレンオキシドまたはポリフッ化ビニリデン単位を含むポリマー化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種類を用いることで、Liイオン伝導性を向上させ、高レート試験時にも容量維持率を著しく低下させない。また、質量平均分子量が100,000以上の高分子を使用することで、電解液中にバインダーが溶解する、または粒子が脱落してショートするといった電池動作不良を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の非水系二次電池用セパレータについて詳細な説明を行う。本発明の非水系二次電池用セパレータは、多孔質支持体上にカチオンの少なくとも一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトを配置したことを特徴とする。
【0012】
多孔質支持体とは、微多孔フィルムや不織布といったシートで、材質としては、耐酸化性・耐還元性・耐電解液性を有していれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、芳香族ポリアミドなどが好適に使用できる。
【0013】
ゼオライトのカチオンに対するリチウム(Li)イオンの置換量は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。Liイオンの置換量が50%未満の場合、内部抵抗の低下に繋がるほどの、電池内部の電荷の均一性に寄与しないことから、高レート特性を向上させるに至らないという問題が発生する場合がある。ゼオライトの粒子径は二次粒子の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下が好ましく、さらに0.5μm以上7μm以下がより好ましく、0.8μm以上5μm以下がさらに好ましい。10μmよりも大きい場合には、粒子の脱落による電池のショートが見られる場合やセパレータ厚みの増加により内部抵抗を増加させる可能性がある。また、0.1μmよりも小さい場合には、多孔質支持体内に侵入し、セパレータの細孔径を小さくすることにより、電池特性が低下する場合がある。該二次粒子の平均粒子径(メジアン径(D50)、体積平均)は、レーザー回折散乱法を用いて測定できる。
【0014】
リチウムイオン置換したA型ゼオライト100質量部に対して、有機高分子バインダーは1〜20質量部であることが望ましい。有機高分子バインダーが1質量部未満の場合、粒子の脱落からショートする可能性があり、20質量部より多い場合、内部抵抗の増加から高レート特性やサイクル特性を低下させる可能性がある。より好ましくは1〜15質量部であり、さらに好ましくは1〜7質量部である。
【0015】
有機高分子バインダーとして、高い放電容量維持率を得るためには、ポリメタクリル酸メチル、ポリアルキレンオキシドまたはポリフッ化ビニリデン単位を含むポリマー化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種類を用いることが望ましい。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合物なども使用することができる。しかし、質量平均分子量が100,000未満の場合、充放電時に電池内部で電解液中へ有機高分子バインダーが分解・溶解が生じてしまう場合があるため、質量平均分子量としては100,000以上が好適である。より好ましくは200,000以上であり、さらに好ましくは500,000以上である。
【0016】
多孔質支持体としては、支持体にポリオレフィン微多孔膜や不織布や紙などの多孔質材料を適用することが可能である。特に、不織布としてはポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の合成繊維、またフィブリル化したリヨセル繊維からなるポリマー不織布であり、1種類だけでなく混合して使用することも可能である。
【0017】
多孔質支持体に、カチオンの少なくとも一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトと有機高分子バインダーとを配置させる方法は特に限定されないが、ナイフコーター法、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、含浸法などの塗工方法が挙げられる。また、用途に応じて、リチウムイオン置換したA型ゼオライト含有塗工液を多孔質支持体の片面だけに塗工を行ってもよいし、両面に塗工してもよい。多孔質支持体内部にリチウムイオン置換したA型ゼオライト含有塗工液を含むような形態でもよい。
【0018】
このようにして作製されたセパレータの坪量は8g/m以上80g/m以下が好ましく、より好ましくは10g/m以上60g/m以下が好ましく、さらに12g/m以上30g/m以下が好ましい。セパレータの坪量が8g/m未満の場合、セパレータ強度が弱く電池組み立て時に不具合が生じる問題や、細孔径が大きくショートが生じる問題が生じる可能性がある。また、セパレータの厚みは、5μm以上300μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上100μm以下が好ましく、さらに15μm以上60μm以下が好ましい。5μmよりも小さい場合は、電池作製時の負荷により切れてしまうことや異物混入時に突き破り電極間をセパレートできない可能性がある。また、300μmよりも大きい場合、厚みが厚いことにより抵抗を増加させ、また電池内活物質量が少なくなることから電池のエネルギー密度を低下させるという問題が生じる。
【0019】
また、上記セパレータ中のリチウムイオン置換したA型ゼオライトの含有率は、セパレータ質量の3質量%以上95質量%以下であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。リチウムイオン置換したA型ゼオライトの含有率が3質量%未満では、リチウム置換ゼオライトの効果が十分に得られないことやピンホールの抑制に十分に寄与しない可能性がある。また、リチウムイオン置換したA型ゼオライトの含有率が95質量%よりも多い場合、抵抗を増加させることや活物質量が減ることから電池のエネルギー密度の低下を生じる可能性、またセパレータ表面に凹凸を生じ、界面抵抗が増加する可能性がある。
【0020】
バブルポイント法により求めたセパレータの平均ポア径が50nm以上、かつ、最大ポア径が5μm以下であることが好ましい。また平均ポア径は50nm以上2μm以下、かつ最大ポア径が2μm以下がより好ましく、さらに平均ポア径が50nm以上1μm以下で、かつ最大ポア径が2μm以下がより好ましい。
【0021】
リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe、WO、Nb、Li4/3Ti5/3等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が用いられる。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムが用いられる。リン酸鉄リチウムは、さらに、マンガン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、ホウ素、ニオブから選ばれる1種以上の金属との複合物でもよい。
【0022】
リチウムイオン二次電池の電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)や過塩素酸リチウム(LiClO)や四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)等が挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は、断りのない限り、すべて質量によるものである。
【0024】
<セパレータの作製>
実施例1
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、ポリエチレンテレフタレート(PET)不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃で乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0025】
実施例2
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、ポリプロピレン(PP)微多孔フィルム基材(坪量8g/m、厚み16μm、空隙率50%)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量20g/m、厚み24μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0026】
実施例3
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径0.8μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0027】
実施例4
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径0.8μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PP微多孔フィルム基材(坪量8g/m、厚み16μm、空隙率50%)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量20g/m、厚み24μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0028】
実施例5
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量1,000,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0029】
実施例6
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量1,000,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PP微多孔フィルム基材(坪量8g/m、厚み16μm、空隙率50%)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量20g/m、厚み24μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0030】
実施例7
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量80,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0031】
実施例8
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量80,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PP微多孔フィルム基材(坪量8g/m、厚み16μm、空隙率50%)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量20g/m、厚み24μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0032】
実施例9
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリエチレングリコール(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0033】
実施例10
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリフッ化ビニリデン(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0034】
実施例11
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行いセパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0035】
実施例12
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)3部、ポリフッ化ビニリデン(質量平均分子量120,000)2部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0036】
実施例13
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリアクリロニトリル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0037】
実施例14
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径11μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0038】
比較例1
リチウムイオン置換していないA型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行いセパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)の作製を行った。
【0039】
比較例2
リチウムイオン置換X型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行いセパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)の作製を行った。
【0040】
比較例3
リチウムイオン置換A型ゼオライト(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、鱗片状シリカ(旭硝子エスアイテック社製、サンラブリー(登録商標)LFS HN−050、平均粒子径0.5μm)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行いセパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)の作製を行った。
【0041】
比較例4
α−Al(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行いセパレータ(坪量22g/m、厚み23μm、塗工量12g/m)の作製を行った。
【0042】
比較例5
α−Al(水澤化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)100部、ポリメタクリル酸メチル(質量平均分子量120,000)5部、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル2部を固形分濃度20%になるようにメチルエチルケトン中に混合し、1時間ペイントコントローラーで分散を行い、塗工液の作製を行った。その後、PP微多孔フィルム基材(坪量8g/m、厚み16μm、空隙率50%)上にリバースロールコーター法で両面塗工を行い、80℃乾燥を行い、セパレータ(坪量20g/m、厚み24μm、塗工量12g/m)を作製した。
【0043】
また、PP微多孔フィルム(厚み22μm、空孔率40%)を比較例6のセパレータ、PET不織布基材(坪量10g/m、厚み17μm、空隙率57%)を比較例7のセパレータとした。
【0044】
<リチウムイオン二次電池>
[負極1の作製]
天然黒鉛97質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製し、厚み15μmの銅箔の両面に塗布して圧延した後、150℃で12時間真空乾燥して、厚み100μmのリチウムイオン二次電池用負極を作製し、これを負極1とした。
【0045】
[正極1の作製]
LiMn95質量%、アセチレンブラック2質量%、ポリフッ化ビニリデン3 質量%を混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製し、厚み20μmのアルミニウム箔の両面に塗布して圧延した後、150℃で12時間真空乾燥して、厚み100μmのリチウムイオン二次電池用正極を作製し、これを正極1とした。
【0046】
[リチウムイオン二次電池の作製]
実施例及び比較例のセパレータ、正極1、負極1の順に張り合わせ、リード線を外部に引き出し、電池本体部を作製した。次に、電池本体部を80℃で24時間真空乾燥し、これを真空中で室温まで放冷した後、アルミニウムのラミネートフィルム中に挿入し、1M−LiPF/EC+DEC(3:7vol%)からなる電解液を適当量注液、真空含浸後、密閉してリチウムイオン二次電池を作製した(電池容量=30mAh相当)。
【0047】
実施例及び比較例のセパレータ及びリチウムイオン二次電池について、下記評価を行い、結果を表1に示した。
【0048】
[セパレータ強度]
先端に曲率1.6の丸みをつけた直径1mmの金属針を卓上型材料試験機(株式会社オリエンテック製、商品名STA−1150)に装着し、試料面に対して直角に1mm/sの一定速度で貫通するまで降ろした。
◎:最大荷重が400gよりも大きく、450g以下である。
○:最大荷重が350gよりも大きく、400g以下である。
△:最大荷重が350g以下である。
【0049】
[内部抵抗]
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池100個を1Cで30分間充電した後、交流1kHzで内部抵抗を測定し、各平均値を算出した。
【0050】
[電池不良率]
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池100個を用い、充放電電圧範囲2.8〜4.2V、充放電電流1Cで、定電流充放電を500サイクル繰り返した際の電池不良率を算出した。
【0051】
[Cレート放電試験(放電容量)]
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池を用い、1Cで3サイクルエイジングを行った後、1C、4.2Vで定電流定電圧充電(1/10Cカット)した後、0.2C、0.5C、1C、3C、5Cと電流値を変えて、定電流放電試験(2.8Vカット)を行い、0.2Cと5C時の放電容量の各平均値を算出した。
【0052】
[サイクル特性(100サイクル後の容量維持率)]
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池20個を用い、1C、4.2Vで定電流定電圧充電(1/10Cカット)した後、1Cの条件で定電流放電試験(2.8Vカット)を行い、100サイクル後での容量維持率(100サイクル後の容量/1サイクル容量)の平均値を算出した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1について、詳細に説明を行う。実施例1〜8と比較例1の比較から、粒子径の同一のA型ゼオライトを使用しても、リチウムイオン置換したゼオライトを使用した方が内部抵抗も低く、高レート・低レートの放電容量及び100サイクル試験時における容量維持率も高い値を示した。この結果から、リチウムイオン置換したA型ゼオライトの使用により、高レート特性やサイクル特性の向上の効果が確認された。しかし、リチウムイオン置換したゼオライトにおいても、X型を使用した場合には、このような特性は見られず(比較例2)、リチウムイオン置換をしたA型ゼオライトに効果があることが確認された。また、リチウムイオン置換したA型ゼオライト以外の無機粒子を使用した比較例4及び5では、無機粒子の担持によってセパレータ強度は良好な結果を示したが、内部抵抗が高く、特に、高レート特性の低下が確認された。
【0055】
実施例1、5、7、9〜13と比較例3を比較すると、無機バインダー(鱗片状シリカ)を使用した比較例3では、電池不良率が非常に悪かった。実施例1、5、7、9〜13では、有機高分子バインダーの使用によって、多孔質支持体からの無機粒子の脱落を防ぐことができ、その結果、ショートを防止し、電池不良率が向上した。
【0056】
実施例1、5、7の結果から有機高分子バインダーの質量平均分子量が100,000未満の場合、充放電の繰り返しにより、バインダーが溶融し、電池不良率が増加する傾向か見られた。有機高分子バインダーとしては、質量平均分子量100,000以上の有機高分子バインダーを使用することが好ましいことが確認された。
【0057】
比較例6に示すように、微多孔フィルム単体では、セパレータ強度、内部抵抗、放電容量、サイクル特性ともに、リチウムイオン置換A型ゼオライトを塗工したセパレータを使用した場合と比較して、悪い結果を示した。また、比較例7に示すように、不織布を単体でセパレータとして使用した場合、細孔径が大きいため、ショートを起こしてしまい、電池動作しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体に、カチオンの少なくとも一部を予めリチウムイオン置換したA型ゼオライトと有機高分子バインダーとを配置してなる非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
有機高分子バインダーが、質量平均分子量が100,000以上であり、かつポリメタクリル酸メチル、ポリアルキレンオキシドまたはポリフッ化ビニリデン単位を含むポリマー化合物及びその誘導体から選択される少なくとも1種類を用いることを特徴とする請求項1記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の非水系二次電池用セパレータを用いてなる非水系二次電池。

【公開番号】特開2012−221565(P2012−221565A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82633(P2011−82633)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】