説明

非水銀式アナログ血圧計

【課題】 圧力を測定するための水銀柱を全く使用しない血圧計であるものの、血圧測定操作は、従来の水銀血圧計と同様に容易であって、しかも、最高血圧値及び最低血圧値の読み取りが極めて容易である非水銀式アナログ血圧計を提供すること。
【解決手段】 各目盛位置においてそれぞれ点状又は線状に発光し得るように構成された圧力表示デバイス22を有するアナログ式血圧表示装置2を備え、またカフ内圧力の変化の反転を検知し、最高血圧信号及び最低血圧信号として出力する圧力反転検知デバイス10を備えた血圧計である。そして、圧力表示デバイス22においては、カフ内圧力に対応した長さの棒グラフとして発光させて圧力表示が行なわれる一方、血圧測定に際してのカフ内圧力の下降に伴なって消光を行なうときに、圧力反転検知デバイス10からの最高血圧信号及び最低血圧信号に対応した目盛位置における点状又は線状の発光のみが存在するように、制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水銀式アナログ血圧計に係り、特に水銀血圧計と同様な、手動による血圧測定操作を行ないつつ、水銀柱を血圧表示に用いることなく、最高血圧値や最低血圧値を表示し得るようにした、環境に優しいエコロジカルな血圧計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、血圧測定が、身体の健康状態を把握したり、病気の予防、診断、治療等を行なうに際して、広く採用されてきており、そのための装置としても、観血法や非観血法によるもの、或いは手動式のものや自動式のもの等、各種のタイプの血圧計が提案されて、実用化されるに至っている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0003】
そして、それら血圧計の中でも、水銀血圧計は、古くから用いられてきており、特に、医療現場において、医師が患者を診察するに際しては、現在においても、水銀血圧計は必須の器具とされ、そのような水銀血圧計と共に、聴診器を用いて、患者の血圧測定が行なわれているのである。具体的には、患者の上腕部に巻き付けられたカフ(腕帯)の圧力を水銀血圧計の水銀柱にて表示する一方、かかるカフの圧力が、徐々に減圧されることに伴なうコロトコフ音の出現と消滅を、医師が聴診器にて聴くことにより、コロトコフ音の出現時における水銀柱の高さを最高血圧値として読み取り、また、コロトコフ音の消滅時における水銀柱の高さを目盛より読み取って、最低血圧値として認識することにより、血圧測定が行なわれている。
【0004】
ところで、そのような医療現場で用いられている水銀血圧計は、カフ内の圧力を水銀柱の高さとして示すものであるために、水銀の使用が必須の条件となるものであるが、かかる水銀は、有毒金属であるために、その使用は避けることが望ましく、特に、医療現場においては、尚更である。けだし、水銀血圧計の破損等の損傷により、万一、水銀が漏洩した場合にあっては、水銀蒸気として空気中に飛散して、医療現場を汚染する恐れが生じるからであり、また、そのような水銀血圧計を廃棄処分する際にも、困難な問題を惹起し、環境を汚染する等の社会問題を惹起する恐れを内在している。
【0005】
このため、特許文献1においては、圧力を測定するための水銀柱を全く使用しない血圧計が明らかにされており、そこでは、LEDの列でカフの圧力を表示する一方、収縮期圧と拡張期圧を示すコロトコフ音を医師が聴いて、スイッチを入れることにより、赤外線信号又は高周波信号を出力させて、LEDディスプレイに表示を行なうようになっているが、そこで用いられている機器自体、必要以上に複雑で高価であり、また操作が面倒であると共に、LEDディスプレイは、水銀柱のように容易に読み取り得るかたちにおいて圧力を表示することが困難なものであった。
【0006】
また、特許文献2においては、水銀血圧計と電子装置との利点を備えるハイブリッド血圧計として、膨脹可能な空気袋を備えたカフと、該空気袋を膨脹させるためのポンプ装置(ゴム球)と、該空気袋から空気を抜くための空気排出弁と、該空気袋中の圧力を受け取り、該圧力を示す電気的信号を発生させる機能を有する空気圧力変換機と、収縮と拡張の割り込み信号を発生させるための手動操作スイッチと、該空気袋の中の一瞬の圧力の測定値を、棒グラフとして表示するための第一の電子的ディスプレイと、収縮期圧及び拡張期圧を表示するための第二の電子的ディスプレイと、該圧力変換機及び該スイッチにつながれた第一及び第二のディスプレイを制御するための電気回路とを含んで、構成される血圧計が、明らかにされているが、そこにおいては、聴診器によるコロトコフ音の聴取と、カフ内圧力の低下(下降)操作と共に、収縮/拡張スイッチの瞬間的な操作を並行して行なう必要があり、そのために、操作遅れが生じて、測定精度が低下したり、血圧測定操作に熟練を要する等の問題を内在するものであった。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5464017号明細書
【特許文献2】特開2000−70231号公報
【非特許文献1】久保田博南著「バイタルサインモニタ入門」−心電計からパルスオキシメータまで−(2000年7月1日、株式会社秀潤社発行)、第33〜43頁
【非特許文献2】木村雄治著「医用工学入門」(2003年9月10日、株式会社コロナ社発行)、第36〜41頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、圧力を測定するための水銀柱を全く使用しない血圧計であるものの、血圧測定操作は、従来の水銀血圧計と同様に簡単且つ容易であって、しかも、最高血圧値及び最低血圧値の読み取りが極めて容易である非水銀式アナログ血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、かくの如き課題の解決のために、(a)血圧表示目盛に沿って棒グラフ状の圧力表示を行なう圧力表示手段が設けられ、且つ該圧力表示手段が、各目盛位置においてそれぞれ点状又は線状に発光し得るように構成されているアナログ式血圧表示装置と、(b)血圧の測定されるべき患者の腕部に巻き付けられて、かかる腕部を締め付けるカフと、(c)該カフに空気を供給して、該カフ内の圧力を高め、前記腕部の締付けを行なう加圧用ゴム球と、(d)前記カフ内の変動する圧力を検出し、カフ内圧力信号として出力する圧力検出器と、(e)前記加圧用ゴム球がコロトコフ音の出現時及び消失時に対応してそれぞれ圧迫されることにより惹起される前記カフ内圧力の変化の反転を検知し、それぞれ最高血圧信号及び最低血圧信号として出力する圧力反転検知手段と、(f)前記圧力検出器からのカフ内圧力信号に従って、前記アナログ式血圧表示装置の圧力表示手段において、前記カフ内圧力に対応した長さの棒グラフとして発光させて圧力表示を行なう一方、血圧測定に際しての前記カフ内圧力の下降に伴なって該発光した棒グラフの長さが短くなるように、該圧力表示手段の消光を行なうに際して、前記圧力反転検知手段からの最高血圧信号及び最低血圧信号の入力によって、前記圧力表示手段において、それら信号に対応した目盛位置における点状又は線状の発光のみが存在するように制御する制御装置とを、含んでいることを特徴とする非水銀式アナログ血圧計を、その要旨とするものである。
【0010】
なお、このような本発明に従う非水銀式アナログ血圧計にあっては、有利には、前記圧力反転検知手段が、前記制御装置に一体的に組み込まれている態様において、実現されることとなる。
【0011】
また、本発明に従う非水銀式アナログ血圧計の望ましい態様の一つによれば、前記加圧用ゴム球の圧迫操作によって駆動せしめられ得る発電機を備え、該発電機の駆動によって生じた電力が、前記制御装置、前記アナログ式血圧表示装置、前記圧力検出器及び前記圧力反転検知手段のうちの少なくとも一つのものの作動に、有利に用いられることとなるのである。
【0012】
そして、本発明に従う非水銀式アナログ血圧計の他の望ましい態様によれば、測定された最高血圧値及び最低血圧値と共に、脈拍数をデジタル表示するデジタル式表示装置が、更に設けられて、前記制御装置によって制御されるようになっている。
【0013】
加えて、本発明に従う非水銀式アナログ血圧計の更に異なる望ましい態様によれば、前記圧力表示手段が、前記血圧表示目盛の各目盛位置に対応するように、独立した発光体の多数が棒グラフ状に配列されて、構成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
従って、かくの如き本発明に係る非水銀式アナログ血圧計にあっては、血圧表示に水銀柱を用いることなく、血圧表示目盛の各目盛位置において、それぞれ点状又は線状に発光する棒グラフ状の圧力表示手段を有するアナログ式血圧表示装置が用いられているところから、従来の水銀血圧計の如き、水銀汚染の問題を全く顧慮する必要がなくなったのであり、以て、環境に優しい、エコロジカルな血圧計が実現され得ることとなったことに加えて、そのようなアナログ式血圧表示装置においては、最高血圧値及び最低血圧値が、それぞれ、それらに対応する目盛位置において、点状又は線状に発光した状態において、圧力表示手段にて表示されるようになっているところから、従来の水銀血圧計における如く、水銀柱の上端をコロトコフ音の出現時及び消失時に瞬間的に読み取り、記憶しなければならないような熟練した技術は、何等必要ではなく、カフ内の圧力を完全に低下せしめて、血圧測定操作が終了した後においても、圧力表示手段における点状又は線状の発光位置から、それぞれ最高血圧値及び最低血圧値を読み取ることが出来るために、血圧測定操作に慣れない医療従事者にあっても、血圧測定操作を容易に且つ正確に行なうことが出来るのである。
【0015】
しかも、本発明に従う非水銀式アナログ血圧計にあっては、カフに空気を供給する加圧用ゴム球が、聴診器によって観察(聴取)されるコロトコフ音の出現時及び消失時に対応して、それぞれ、圧迫されることにより、カフ内圧力の下降から上昇への変化が惹起されることに基づき、そのような圧力変化の反転を検知して、それぞれ、最高血圧信号及び最低血圧信号を取り出すようにしているところから、血圧測定を行なう医療従事者は、血圧測定のために、カフ内圧力を上昇させるべく、加圧用ゴム球を繰り返し圧迫する動作過程から、かかるゴム球を把握した状態において、漸次、カフ内圧力を下降せしめ、コロトコフ音の出現時及び消失時において、ゴム球を強く圧迫することにより、それぞれ最高血圧信号及び最低血圧信号を出力させることが出来るのであって、何等、特別なスイッチ操作をする必要がないために、血圧測定操作も、更に容易なものとなるのである。
【0016】
なお、本発明において、圧力反転検知手段は、有利には、圧力検出器から出力されるカフ内圧力信号を用いて、それにおける圧力変化の反転によって、最高血圧信号及び最低血圧信号をそれぞれ出力すれば足りるものであるところから、その検知・判断は、電子回路にて容易に実現することが出来るのであり、そのため、本発明の望ましい態様に従って、そのような圧力反転検知手段を、制御装置に一体的に組み込んでなる構成を採用するようにすれば、血圧計としての装置構成の簡略化、コンパクト化に大いに寄与することが可能となる。
【0017】
また、本発明の望ましい態様に従って、加圧用ゴム球の圧迫操作によって、発電機を駆動せしめ、それにより得られる電力を、本発明に従う血圧計の構成機器の電源として利用するようにすれば、本発明に係る血圧計を、究極のエコロジカルな装置に近付けることが可能となるのである。
【0018】
そして、本発明にあっては、前記したアナログ式血圧表示装置と共に、最高血圧値や最低血圧値、更には脈拍数をデジタル表示するデジタル式表示装置を、更に設けるようにすれば、血圧測定の精度がより一層高められ得ることとなることに加えて、医療従事者に対する情報として、有利に用いることが出来る利点がある。
【0019】
さらに、本発明の他の望ましい態様に従って、アナログ式血圧表示装置における圧力表示手段を、独立した多数の発光体の棒グラフ状の配列によって構成するようにすれば、血圧表示目盛の各目盛位置に対応する発光体のみを発光させることが出来、以て、最高血圧値や最低血圧値をより一層有効に読み取ることが可能となるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、図1には、本発明に従う非水銀式、即ち水銀を用いない、アナログ血圧計の一例が示されている。そこにおいて、本発明に従う血圧計は、アナログ式血圧表示装置2と、カフ4と、加圧用ゴム球6と、圧力検出器8と、圧力反転検知デバイス10と、制御装置12と、デジタル式表示装置14とを含んで、構成されている。
【0022】
具体的には、アナログ式血圧表示装置2は、従来の水銀血圧計における水銀柱に代わって、最高血圧値と最低血圧値を、血圧測定する医師等の医療従事者が読み取るためのものであって、測定される範囲内の目盛、例えば0〜300mmHgの範囲内の目盛が付された血圧表示目盛20と、そのような血圧表示目盛20に沿って設けられた、棒グラフ状の圧力表示を行なう圧力表示デバイス22とを備えている。そして、かかる圧力表示デバイス22は、血圧表示目盛20における各目盛位置において、それぞれ点状或いは線状に発光(点灯)し得るように、LED(発光ダイオード)やLCD(液晶)等からなる、独立した発光体30の多数が、各目盛位置に対応して配列されて、棒グラフ状に構成されてなり、棒グラフ状に発光せしめられた高さ(長さ)によって、圧力表示が行なわれ得るようになっている一方、棒グラフ状に配列された発光体の、所定の目盛位置に位置する発光体のみを発光させることができるようにもなっているのである。
【0023】
また、カフ4は、従来と同様な構造のものであって、所定幅の帯状体の内側に空気袋(図示せず)が配設されて、血圧の被測定者(患者)の上腕部に巻き付けられて、固定せしめられ得るようになっており、その内側の空気袋が、供給される空気によって膨脹せしめられることによって、かかる腕部を締め付け、血管を圧迫することにより、コロトコフ音の出現や消失が実現され得るようになっている。
【0024】
そして、そのようなカフ4の空気袋に対して、加圧用ゴム球6が、空気チューブ24を介して連結され、かかるゴム球6の圧迫(圧縮)によるポンプ作用によって、大気中から導かれた空気が、バルブ26を介して、空気チューブ24によって、カフ4の空気袋に供給され、以て、かかるカフ4内の圧力を高めて、患者の腕部を締め付け、圧迫し得るようになっているのである。なお、空気チューブ24上に設けられたバルブ26は、従来からの血圧測定装置におけるゴム球に取り付けられる空気排出弁と同様なものであって、それら従来からのものが、そのまま利用され得るものであり、例えば、そのようなバルブ26によって、ゴム球6内の空気を空気チューブ24を通じてカフ4に供給する一方、そのようなバルブ26のノブ28やボタン等を、手動にて操作することによって、カフ4内の空気を、空気チューブ24を通じて、バルブ26から外部に排出し得るようになっている。
【0025】
また、圧力検出器8は、カフ4内の変動する圧力、具体的には内側に配設された空気袋内の圧力を検出し、カフ内圧力信号として出力する圧力トランスデューサーであって、一般に、集積化センサにて電気的に検出され、電気信号として、カフ内圧力信号が出力されるようになっている。なお、ここでは、圧力検出器8が、外部に取り出された形態において示されているが、それは、一般に、カフ4の内側に配設され得るものである。
【0026】
さらに、かかる圧力検出器8から出力されるカフ内圧力信号は、ここでは、圧力反転検知デバイス10及び制御装置12に、それぞれ入力せしめられるようになっている。そして、圧力反転検知デバイス10においては、かかる入力されるカフ内圧力信号に存在するカフ内圧力の変化の反転点、換言すれば、漸次、下降(低下)せしめられるカフ内圧力が急激に上昇に転ずる点を検知して、最高血圧信号又は最低血圧信号として、出力し得るようになっているのである。なお、そのようなカフ内圧力の変化の反転は、血圧測定に際してのカフ内圧力の下降(低下)に伴なって、聴診器によって聴取されるコロトコフ音が出現した時、及び消失した時に、それぞれ、加圧用ゴム球6を、血圧測定している医療従事者が圧迫することにより、カフ内圧力の下降が、急激に上昇に転じられることとなるのであり、このことによって、コロトコフ音の出現時のカフ内圧力の反転点においては、最高血圧信号として出力される一方、コロトコフ音の消失時におけるカフ内圧力の変化の反転点は、最低血圧信号として出力されることとなる。
【0027】
そして、制御装置12においては、圧力検出器8からのカフ内圧力信号に従って、アナログ式血圧表示装置2の圧力表示デバイス22においては、そのようなカフ内圧力に対応した長さの棒グラフとして、発光せしめられ、その発光した高さ(長さ)において、圧力表示を行なうようになっている。また、かかる制御装置12には、圧力反転検知デバイス10からの最高血圧信号と最低血圧信号とが入力せしめられるようになっており、それら信号の入力によって、前記圧力表示デバイス22における発光した棒グラフの長さが短くなるように、その消光を行なうときに、それら信号に対応した目盛位置における点状又は線状の発光のみが保持されるように、アナログ式血圧表示装置2(具体的には、圧力表示デバイス22)が、制御装置12によって制御されるようになっている。
【0028】
なお、制御装置12には、また、デジタル式表示装置14が接続されており、制御装置12において、圧力反転検知デバイス10から入力せしめられる最高血圧信号及び最低血圧信号に基づいて、得られる最高血圧値(SYS)及び最低血圧値(DIA)が、それぞれ表示されるようになっていると共に、カフ4内に設けた、図示しない検出器によって検出された脈拍数(Pulse )が、制御装置12による制御の下に、デジタル表示装置14において、デジタル表示されるようになっている。
【0029】
従って、かかる図1に示される血圧計を用いて、医師等の医療従事者が、患者の血圧を測定するに際しては、先ず、従来と同様にして、患者の手の上腕部にカフ4を巻き付けて、加圧用ゴム球6を繰り返し圧迫(圧縮)することにより、カフ4の空気袋内に空気を供給して、カフ内の圧力が血圧測定に充分な高さになるまで加圧を行ない、腕部の締め付けが行なわれる。その際、カフ内圧力は、圧力検出器8にて検出され、カフ内圧力信号として制御装置12に入力され、そして、制御装置12によって、アナログ式血圧表示装置2における圧力表示デバイス22の発光体30を、カフ内圧力に対応した血圧表示目盛20の位置まで発光せしめて、所定高さ(長さ)の棒グラフとして、圧力表示するようになっている。
【0030】
そして、そのようなカフ内圧力を高めた状態下において、バルブ26のノブ28等の操作によって、カフに供給された空気を外部に排出することにより、カフ内圧力が、図2に示される如く、漸次、下降(低下)せしめられる一方、患者の腕部には、従来と同様に、聴診器が当てられ、コロトコフ音が聴取されるか、どうか、継続して経時的に観察されるのである。そして、コロトコフ音の出現が、聴診器により把握されたとき、医師等の医療従事者は、その手に把握していたゴム球6を、直ちに圧迫(縮小)することにより、下降したいたカフ内圧力は、上昇に転じることとなるのであり、これが、カフ内圧力の変化の反転点として、圧力検出器8から出力されるカフ内圧力信号に基づいて、圧力反転検知デバイス10において検知され、かかる圧力反転検知デバイス10から、最高血圧信号として、制御装置12に対して出力せしめられるのである。なお、そのような最高血圧信号を出力するカフ内圧力の変化の反転点は、図2において、Aにて示される位置となる。
【0031】
次いで、圧力反転検知デバイス10から、最高血圧信号が制御装置12に入力せしめられると、それによって制御されるアナログ式血圧表示装置2においては、カフ内圧力の下降に伴なって、図3(a)に示される如く、圧力表示デバイス22を構成するように棒グラフ状に配列された発光体30が、順次、消光(消灯)され、その発光した棒グラフ(図においてクロスハッチングした部分)の長さが短くなっていく中で、最高血圧信号が入力されたときに位置する、発光した棒グラフの最高位置の発光体30aが、図3(b)に示されるように、発光した状態において保持され、そして、そのような発光の保持されている発光体30aを残して、その下方の各発光体30は、ゴム球6の圧迫によるカフ内圧力の変化の反転を行った後、再び、カフ内圧力の下降が、漸次、実施されるに伴い、順次、消光せしめられていくのである。
【0032】
そして、更に、カフ4内における圧力が低下せしめられることにより、聴診器にて聴取されていたコロトコフ音が消失すると、再度、ゴム球6の圧迫が行なわれて、カフ内圧力の下降変化が、瞬間的に上昇に反転せしめられることとなるのであり、その反転点が、図2において、Bとして示されている。よく知られているように、このコロトコフ音の消失の時点におけるカフ内圧力が、最低血圧値として認識されているのである。
【0033】
さらに、そのような図2に示される如き最低血圧値に対応するカフ内圧力の変化の反転点:Bが、圧力検出器8から出力されるカフ内圧力信号に基づいて、圧力反転検知デバイス10において検知され、それに対応した最低血圧信号が出力されると、制御装置12においては、前記した最高血圧信号が入力せしめられた場合と同様にして、アナログ式血圧表示装置2の圧力表示デバイス22において、かかる最低血圧信号に対応した目盛位置における発光体30bの発光が、図3(b)に示される如く、保持されることとなる。また、そのような発光の保持された発光体30bよりも下方の発光体30は、カフ内圧力の下降に伴なって、順次、消光されて、図3(b)に示される状態とされ、カフ内圧力の下降に伴なう圧力表示デバイス22における消灯動作が、終了せしめられるのである。
【0034】
このように、血圧測定に際してのアナログ式血圧表示装置2における圧力表示デバイス22の発光・消光動作が終了すると、圧力表示デバイス22においては、最高血圧値及び最低血圧値にそれぞれ対応した血圧表示目盛20の位置において、発光体30a及び発光体30bのみが、それぞれ発光せしめられている状態において、それぞれの血圧値が、アナログ表示されていることになるのであって、それ故に、そのような状態にある発光体30a、30bより、それに対応する血圧表示目盛20を読み取ることによって、患者の最高血圧値及び最低血圧値を、容易に且つ正確に読み取ることが出来るのであり、従来の如く、水銀柱の最高点を瞬間的に読み取ることによって、最高血圧値や最低血圧値を認識する場合に内在する各種の問題点は、悉く解消されることとなるのである。
【0035】
また、カフ内圧力の上昇の過程から、最高血圧値や最低血圧値を検出するために、そのようなカフ内圧力を、漸次下降せしめる過程の間中、医師等の医療従事者は、加圧用ゴム球6を常に把握しておくことが出来、最高血圧値や最低血圧値の検出のために、他のスイッチ手段を作動させるために、ゴム球6を把握している手を放したり、或いは手をずらせて、スイッチングを行なうような動作をする必要がなく、単に、ゴム球6を把握している状態において、ゴム球6の圧迫(縮小)を行なうだけでよいところから、最高血圧値や最低血圧値の検出操作を、簡単に且つ容易に実施することが出来るのである。
【0036】
ところで、このような本発明に従う非水銀式アナログ血圧計にあっては、それを構成する機器の作動のために、適当な電源が必要となるものであるが、本発明にあっては、特に、図4に示される如き加圧用ゴム球6の圧迫操作によって、駆動せしめられ得る発電機にて生じる電力を利用することによって、より一層エコロジカルな血圧計とすることが可能となる。
【0037】
具体的には、図4(a)においては、ゴム球6からカフ4への空気の供給路である空気チューブ24上に、空気の流通によって回転駆動せしめられる発電機32が配置されているのであり、また、図4(b)においては、ゴム球6の圧迫にて送り出された空気が、バルブ26によって導かれて、発電機32が回転駆動せしめられるようになっているものであり、更に、図4(c)においては、ゴム球6と共に、作動レバー34が、血圧測定する医療従事者の手にて把握されるようになっており、ゴム球の圧迫操作と同時に、作動レバー34を矢印の如く回転させることにより、発電機36の駆動軸38を回転させることによって、目的とする発電が行なわれ得るようになっている。なお、ここで用いられる発電機32、36は、何れも、公知の簡易な構造のものが、そのまま用いられ、必要な電力が発生せしめられることとなる。また、それら発電機32、36にて発生された電力は、必要な蓄電装置(図示せず)にて、蓄電されるようにすることも可能であり、予め血圧測定に先立って、発電機32、36にて発電を行ない、それを蓄電装置に蓄電して、本発明に係る血圧計の電気機器の作動に用いることも可能である。
【0038】
なお、本発明は、これまでに説明してきた代表的な実施態様のもののみに限定して解釈されるものでないことが、理解されるべきであって、例示の実施態様は、あくまでも文字通りの例示に過ぎないものである。
【0039】
例えば、例示の具体例においては、血圧表示目盛20における1mmHg毎に、発光体30が独立して配置されてなる構造が採用されているが、血圧の読み取りにおいて、不正確さは増すものの、2mmHg或いはそれ以上の範囲の圧力値を示すように、発光体(30)を配設することも可能である。また、発光体30としては、LEDやLCDに限られるものではなく、棒グラフ状に発光(点灯)され得るものであれば、何れをも採用可能であって、例えば、CRT(ブラウン管)或いは平面ディスプレイの如きディスプレイスクリーンによる棒グラフとすることも可能である。そして、圧力表示手段にあっても、例示の如き構成の圧力表示デバイス22の他、棒グラフ状に発光する第一の発光素子に加えて、点状又は線状に発光する第二の発光素子を有し、前記第一の素子を消光せしめる一方、最高血圧信号及び最低血圧信号に対応した目盛位置において、該第二の発光素子を、点状又は線状に発光せしめるようにすることも、可能である。
【0040】
また、圧力反転検知手段にあっても、例示の具体例においては、圧力反転検知デバイス10として、制御装置12とは、別個の構成とされていたが、カフ内圧力の変化の反転の検知は、圧力検出器8から出力されるカフ内圧力信号に基づいて電気回路による処理によって、実現され得るものであるところから、それを、制御装置に一体的に組み込んでなる構成も、有利に採用可能である。尤も、そのようなカフ内圧力の変化の反転の検知は、圧力検出器8のカフ内圧力信号を利用するのが最も望ましいものではあるが、また、別の独立したセンサを用いて検出し、最高血圧信号又は最低血圧信号を出力するようにすることも可能である。
【0041】
さらに、例示の具体例におけるカフ4、ゴム球6、更にはバルブ26や、空気を漸次排出するためのノブ28の構造等は、何れも、従来からのものを、そのまま、使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に従う非水銀式アナログ血圧計の一例を示す構成説明図である。
【図2】本発明に従う血圧計を用いて血圧測定された際のカフ内圧力と、血圧測定の経過時間との関係を示すグラフである。
【図3】図1に示される血圧計におけるアナログ式血圧表示装置の血圧測定の1工程を示す拡大部分説明図であって、(a)は、圧力表示デバイスにおいて発光体が棒グラフ状に発光せしめられている状態を示しており、また(b)は、最高血圧値と最低血圧値に相当する血圧表示目盛位置において、発光体が点状又は線状に発光せしめられている状態を示している。
【図4】図1に示される血圧計に簡易型の発電機を組み込んでなる各種の例を示す説明図であって、(a)は、カフに空気を送り込む空気チューブ上に発電機が設けられた例を示しており、(b)は、バルブの切換えによって加圧用ゴム球からの空気が発電機に供給されて、発電が行なわれる例を示しており、(c)は、加圧用ゴム球の圧迫と同時に、発電機が機械的に駆動せしめられる例を示している。
【符号の説明】
【0043】
2 アナログ式血圧表示装置 4 カフ
6 加圧用ゴム球 8 圧力検出器
10 圧力反転検知デバイス 12 制御装置
14 デジタル式表示装置 20 血圧表示目盛
22 圧力表示デバイス 24 空気チューブ
26 バルブ 28 ノブ
30 発光体 32、36 発電機
34 作動レバー 38 駆動軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧表示目盛に沿って棒グラフ状の圧力表示を行なう圧力表示手段が設けられ、且つ該圧力表示手段が、各目盛位置においてそれぞれ点状又は線状に発光し得るように構成されているアナログ式血圧表示装置と、
血圧の測定されるべき患者の腕部に巻き付けられて、かかる腕部を締め付けるカフと、
該カフに空気を供給して、該カフ内の圧力を高め、前記腕部の締付けを行なう加圧用ゴム球と、
前記カフ内の変動する圧力を検出し、カフ内圧力信号として出力する圧力検出器と、
前記加圧用ゴム球がコロトコフ音の出現時及び消失時に対応してそれぞれ圧迫されることにより惹起される前記カフ内圧力の変化の反転を検知し、それぞれ最高血圧信号及び最低血圧信号として出力する圧力反転検知手段と、
前記圧力検出器からのカフ内圧力信号に従って、前記アナログ式血圧表示装置の圧力表示手段において、前記カフ内圧力に対応した長さの棒グラフとして発光させて圧力表示を行なう一方、血圧測定に際しての前記カフ内圧力の下降に伴なって該発光した棒グラフの長さが短くなるように、該圧力表示手段の消光を行なうに際して、前記圧力反転検知手段からの最高血圧信号及び最低血圧信号の入力によって、前記圧力表示手段において、それら信号に対応した目盛位置における点状又は線状の発光のみが存在するように制御する制御装置とを、
含んでいることを特徴とする非水銀式アナログ血圧計。
【請求項2】
前記圧力反転検知手段が、前記制御装置に一体的に組み込まれている請求項1に記載の非水銀式アナログ血圧計。
【請求項3】
前記加圧用ゴム球の圧迫操作によって駆動せしめられ得る発電機を備え、該発電機の駆動によって生じた電力が、前記制御装置、前記アナログ式血圧表示装置、前記圧力検出器及び前記圧力反転検知手段のうちの少なくとも一つのものの作動に用いられる請求項1又は請求項2に記載の非水銀式アナログ血圧計。
【請求項4】
測定された最高血圧値及び最低血圧値と共に、脈拍数をデジタル表示するデジタル式表示装置が、更に設けられて、前記制御装置によって制御されるようになっている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の非水銀式アナログ血圧計。
【請求項5】
前記圧力表示手段が、前記血圧表示目盛の各目盛位置に対応するように、独立した発光体の多数が棒グラフ状に配列されて、構成されている請求項1乃至請求項4の何れかに記載の非水銀式アナログ血圧計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−129893(P2006−129893A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318794(P2004−318794)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(504408373)有限会社GMパートナーズ (1)
【Fターム(参考)】