説明

非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池

【課題】 長期保存しても安定な電解液を得ると共に非水電解液二次電池のサイクル寿命を向上させ、抵抗上昇を抑制し、容量維持率を向上させる非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】 非プロトン性溶媒と、下記化1で示されるジスルホン酸エステルを含んだ非水電解液及びそれを用いた非水電解液二次電池において、水分含有量が300ppm未満のジスルホン酸エステルを用いる。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液及びそれを用いた非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
負極に炭素材料、酸化物、リチウム合金またはリチウム金属を用いた非水電解液リチウムイオンまたはリチウム二次電池は、高いエネルギー密度を実現できることから携帯電話ノートパソコン用などの電源として注目されている。この二次電池において、負極の表面には表面膜、保護膜、SEI(Solid Electrolyte Interface:固体電解質界面)または皮膜等と呼ばれる膜(以下、表面膜とも呼ぶ)が生成することが知られている。この表面膜は、充放電効率、サイクル寿命、安全性に大きな影響を及ぼすことから負極の高性能化には表面膜の制御が不可欠であることが知られている。炭素材料、酸化物材料についてはその不可逆容量の低減が必要であり、リチウム金属、合金負極においては充放電効率の低下とデンドライト(樹枝状結晶)生成による安全性の問題を解決する必要がある。
【0003】
負極に表面膜を形成させるために種々の電解液用添加剤が提案されてきた。例えば、特許文献1〜3に示すような環状モノスルホン酸エステルが電極表面の表面膜形成能に優れ、電池特性の改善が図れることでよく使われている。また、最近では環状モノスルホン酸エステルを用いたものよりもサイクル特性や保存特性(抵抗上昇の抑制や容量維持率)を向上できることから、特許文献4に示すような環状ジスルホン酸エステルを用いる提案がある。環状ジスルホン酸エステルは、例えば特許文献5に示されるような方法で合成することができる。
【0004】
【特許文献1】特許第2597091号公報
【特許文献2】特開2000−3724号公報
【特許文献3】特開平11−339850号公報
【特許文献4】特開2004−281368号公報
【特許文献5】特公平5−44946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環状ジスルホン酸エステル化合物の製造工程において、粗合成後最終的に再結晶や昇華精製等を行っているが、十分に乾燥処理を行わず水分含有量が多い場合、環状ジスルホン酸エステルが加水分解反応を起こして副生成物が生成し、電解液中の支持塩と反応することで電解液が劣化し、これを用いて作製した電池の特性も低下することを見出したものである。
【0006】
本発明の課題は、環状ジスルホン酸エステルを電解液添加剤として用いた場合の電解液において、長期保存しても安定な電解液を得ると共に非水電解液二次電池のサイクル寿命を向上させ、抵抗上昇を抑制し、容量維持率を向上させる非水電解液およびそれを用いた非水電解液二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ジスルホン酸エステルを含有する非水電解液において、ジスルホン酸エステルの含水量が所定濃度以下となる場合に上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明の非水電解液は、非プロトン性溶媒と、ジスルホン酸エステルとを含む非水電解液において、前記ジスルホン酸エステルの水分含有量が300ppm未満であることを特徴とする。
【0009】
また本発明の非水電解液は、化1で示されるジスルホン酸エステルを含んでいてもよい。
【0010】
【化1】

【0011】
但し、化1において、Qは酸素原子、メチレン基または単結合、Aは、分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルフィニル基、分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜5のパーフルオロアルキレン基、分岐していても良い炭素数2〜6の置換もしくは無置換のフルオロアルキレン基、エーテル結合を含み分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル結合を含み分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基又はエーテル結合を含み分岐していても良い炭素数2〜6の置換もしくは無置換のフルオロアルキレン基を示す。Bは分岐していても良い置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。
【0012】
また本発明の非水電解液は、化2で示されるジスルホン酸エステルを含んでいてもよい。
【0013】
【化2】

【0014】
但し、化2において、R1およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基、−SO21(X1は置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、−SY1(Y1は置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、−COZ( Z は水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、及びハロゲン原子、から選ばれる原子または基を示す。R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェノキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜5のポリフルオロアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、−NX23(X2及びX3は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基) 、及び−NY2CONY34(Y2〜Y4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、から選ばれる原子または基を示す。
【0015】
さらに本発明の非水電解液は、前記非プロトン性溶媒が、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類及びそれらのフッ化誘導体からなる群より選択された少なくとも1種類の有機溶媒を含むことが好ましく、前記非水電解液は、更にリチウム塩としてLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、LiAlCl4、LiN(Ck2k+1SO22及びLiN(Cn2n+1SO2)(Cm2m+1SO2)(k、n、mは自然数)からなる群より選択された少なくとも1種類を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の非水電解液二次電池は、前記非水電解液と少なくとも正極と負極を備え、前記正極の正極活物質としてリチウム含有複合酸化物を含むことが好ましく、前記負極の負極活物質として、リチウムを吸蔵、放出できる材料、リチウム金属、リチウムと合金を形成することができる金属材料、および酸化物材料、からなる群から選択される一または二以上の物質を含むことが好ましく、前記負極活物質が炭素材料を含むことが好ましく、前記炭素材料が黒鉛であってもよいし、前記炭素材料が非晶質炭素であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、非プロトン性溶媒と水分含有量が300ppm以下のジスルホン酸エステルを含む非水電解液を用いることにより、非水電解液二次電池の電解液の分解を抑制することができる。また、本発明によれば、非水電解液二次電池の充放電効率、サイクル寿命を向上させることができる。また、本発明によれば、二次電池の抵抗上昇を抑制することができる。尚、本発明に係る非水電解液は、溶媒に対し水分含有量が300ppm以下のジスルホン酸エステルを溶解させる工程と、リチウム塩を溶解させる工程により簡便で安定的に製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の非水電解液の構成について説明する。非水電解液は、非プロトン性溶媒と、リチウム塩、及び水分含有量が300ppm以下のジスルホン酸エステルとを含む。上記ジスルホン酸エステルは下記化1または化2で示される化合物がよい。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
さらに、上記化1で示される化合物の代表例を表1に、化2で示される化合物の代表例を表2に具体的に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
上記化1または化2に示す化合物は、例えば特許文献5に記載される製造方法を用いて得ることができる。
【0025】
化1または化2に示す化合物の電解液に占める割合は特に限定されないが、電解液全体の0.005〜10質量%で含まれることが好ましい。化1または化2に示す化合物の濃度を0.005質量%以上とすることにより、十分な表面膜の効果を得ることができる。より好ましくは0.01質量%以上添加することにより、電池特性をさらに向上させることができる。また、10質量%以下とすることにより、電解液の粘性の上昇、およびそれに伴う抵抗の増加を抑制することができる。より好ましくは5質量%以下添加することにより、電池特性をさらに向上させることができる。
【0026】
電解液は、上記化1または化2で示される化合物に加え、さらにスルホニル基を有する一以上の化合物を含む構成とすることができる。たとえば、下記化3で示されるスルトン化合物を含んでもよい。
【0027】
【化3】

【0028】
但し、上記化3において、nは0以上2以下の整数である。また、R8〜R13は、水素原子、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数3以上6以下のシクロアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基から独立に選択される。
【0029】
化1または化2に示す化合物に加え、化3で示されるスルホニル基を有する化合物を加えることにより、電解液の粘度の調整が容易になる。また、スルホニル基を有する化合物を組み合わせて用いることにより相乗効果により、表面膜の安定性が向上する。また、溶媒分子の分解抑制を抑制することができる。また、電解液中の水分の除去効果が大きくなる。
【0030】
スルホニル基を有する化合物としては、具体的には、スルホラン(特開昭60−154478号公報)、1,3−プロパンスルトンや1,4−ブタンスルトン(特開昭62−100948号公報、特開昭63−102173号公報、特開平1 1−339850号公報、特開2000−3724号公報) 、アルカンスルホン酸無水物(特開平10−189041号公報)、γ−スルトン化合物(特開2000−235866号公報) 、スルホレン誘導体(特開2000−294278号公報)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記化1または化2に加え、さらにスルホニル化合物を電解液中に添加する場合、たとえば電解液中に0.005質量%以上10質量%以下となるよう添加することができる。0.005質量%以上とすることにより、負極表面において効果的に表面膜を形成することができる。より好ましくは0.01質量%以上とすることができる。また、10質量%以下とすることにより、スルホニル化合物の溶解性が維持され、また電解液の粘性上昇を抑制することができる。より好ましくは、5質量%以下とすることができる。
【0032】
電解液は、非プロトン性溶媒に化1または化2に示す化合物、および必要に応じてスルホニル基を有する化合物、リチウム塩や他の添加物を溶解または分散させることにより得られる。性質の異なる添加剤を混合させることにより、負極表面に性質の異なる表面膜を形成させるため、電池特性の向上に有効である。
【0033】
また、電解液に、ビニレンカーボネート(VC)またはその誘導体を添加することにより、非水電解液二次電池のサイクル特性や抵抗上昇抑制効果の改善を図ることができる。ビニレンカーボネートまたはその誘導体は、例えば、特開平4−169075号公報、特開平7−122296号公報、特開平8−45545号公報、特開平5−82138号公報、特開平5−74486号公報、特開平6−52887号公報、特開平11−260401号公報、特開2000−208169号公報、特開2001−35530号公報、特開2000−138071号公報に示される化合物を適宜使用することができる。
【0034】
VCまたはその誘導体の添加量は、電解液全体の0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.01質量%以上とすることにより、サイクル特性を好適に発揮させることができ、さらに高温化での保存時の抵抗上昇を抑制することも可能となる。10質量%以下とすることにより、電解液の抵抗値を低くすることができる。
【0035】
電解液において、さらに電解質としてリチウム塩を含む構成とすることができる。こうすることにより、リチウムイオンを移動物質とすることができるため、電池特性を向上させることができる。リチウム塩としてたとえば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、LiAlCl4、LiN(Ck2k+1SO22及びLiN(Cn2n+1SO2)(Cm2m+1SO2)(k、n、mは自然数)の中から選択された一以上の物質を含む構成とすることができる。また、特にLiPF6またはLiBF4を用いることが好ましい。これらを用いることにより、リチウム塩の電気伝導率を高めることができ、非水電解液二次電池のサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0036】
非水電解液は、非プロトン性溶媒として、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類およびこれらのいずれかのフッ素誘導体、からなる群から選択された一または二以上の溶媒を含むことができる。
【0037】
具体的には、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル、メチル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、ジフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、モノフルオロエチレンカーボネートなどのうち、一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0038】
以下、本発明の非水電解液二次電池の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の非水電解液二次電池の概略構成図である。
【0039】
本発明に係る電池は、たとえば図1のような構造を有する。正極は、正極活物質を含有する層12が正極集電体11に成膜して成る。負極は、負極活物質を含有する層13が負極集電体14上に成膜して成る。これらの正極と負極は、非水電解液、および非水電解液の中の多孔質セパレータ16を介して対向配置されている。多孔質セパレータ16は、負極活物質を含有する層13に対して略平行に配置されている。
【0040】
図1の非水電解液二次電池において、負極活物質を含有する層13に用いる負極活物質には、たとえばリチウム金属、リチウム合金、およびリチウムを吸蔵、放出できる材料、からなる群から選択される一または二以上の物質を用いることができる。リチウムイオンを吸蔵、放出する材料としては、炭素材料または酸化物を用いることができる。
【0041】
炭素材料としては、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブなどを用いることができる。このうち、特に黒鉛材料または非晶質炭素であることが好ましい。特に、黒鉛材料は、電子伝導性が高く、銅などの金属からなる集電体との接着性と電圧平坦性が優れており、高い処理温度によって形成されるため含有不純物が少なく、負極性能の向上に有利であり、好ましい。
【0042】
また、酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、リン酸、ホウ酸のいずれか、あるいはこれらの複合物を用いてもよく、特に酸化シリコンを含むことが好ましい。構造としてはアモルファス状態であることが好ましい。これは、酸化シリコンが安定で他の化合物との反応を引き起こさないため、またアモルファス構造が結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化を導かないためである。成膜方法としては、蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの方法を用いることができる。
【0043】
リチウム合金は、リチウムおよびリチウムと合金形成可能な金属により構成される。例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元または3元以上の合金により構成される。リチウム金属やリチウム合金としては、特にアモルファス状のものが好ましい。これは、アモルファス構造により結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくいためである。
【0044】
リチウム金属またはリチウム合金は、融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、真空蒸着方式、スパッタリング方式、プラズマCVD方式、光CVD方式、熱CVD方式、ゾル−ゲル方式、などの適宜な方式で形成することができる。
【0045】
図1の非水電解液二次電池の負極において、遷移金属カチオンとイミドアニオンからなる錯体を電解液との界面に存在させると、負極は、金属、合金相の体積変化に対する柔軟性、イオン分布の均一性、物理的・化学的安定性に優れたものとなるので好ましい。その結果、デンドライト生成やリチウムの微粉化を効果的に防止することができ、サイクル効率と寿命が向上する。
【0046】
また、負極として炭素材料や酸化物材料を用いたときにその表面に存在するダングリングボンドは化学的活性が高く、容易に溶媒を分解させることになる。この表面に、遷移金属カチオンとイミドアニオンからなる錯体を吸着させることによって、溶媒の分解が抑制され、不可逆容量が大きく減少するため、充放電効率を高く維持することができる。
【0047】
さらに、表面膜が機械的に壊れた際には、その壊れた箇所において、負極表面のリチウムと負極表面に吸着したイミドアニオンとの反応性生物であるフッ化リチウムが、表面膜を修復する機能を有しており、表面膜が破壊された後においても、安定な表面化合物の生成を導く効果を有している。
【0048】
図1の非水電解液二次電池において、正極活物質を含有する層12に用いる正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24などのリチウム含有複合酸化物があげられる。また、これらのリチウム含有複合酸化物の遷移金属部分を他元素で置き換えたものでもよい。
【0049】
また、金属リチウム対極電位で4.5V以上にプラトーを有するリチウム含有複合酸化物を用いることもできる。リチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が例示される。リチウム含有複合酸化物は、例えばLia(MxMn2-x)O4(ただし、0<x<2であり、また、0<a<1.2である。また、Mは、Ni、Co、Fe、CrおよびCuよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。)で表される化合物とすることができる。
【0050】
正極は、これらの活物質を、カーボンブラック等の導電性物質、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等の結着剤とともにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤中に分散混練し、これをアルミニウム箔等の基体上に塗布することにより得ることができる。
【0051】
図1の非水電解液二次電池は、乾燥空気または不活性ガス雰囲気において、負極および正極を、多孔質セパレータ16を介して積層、あるいは積層したものを捲回した後に、電池缶や、合成樹脂と金属箔との積層体からなる可とう性フィルム等の外装体に収容し、上記化1で示される化合物を含む電解液を含浸させる。そして、外装体を封止または封止後に、非水電解液二次電池の充電を行うことにより、負極上に表面膜を形成させることができる。なお、多孔質セパレータ16としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、フッ素樹脂等の多孔性フィルムが用いられる。
【0052】
本実施の形態に係る非水電解液二次電池の形状としては、特に制限はないが、例えば、円筒型、角型、ラミネート外装型、コイン型などがあげられる。
【実施例】
【0053】
(ジスルホン酸エステルの合成と乾燥)
化合物No.1は、特許文献5に記載の方法に従って合成した。粗成生物をヘキサン:酢酸エチル=1:1混合溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して得られた化合物No.1の水分量をカールフィッシャー法にて測定したところ、3000ppmであった。この化合物を40℃、減圧下で12時間乾燥後の水分量は500ppm、18時間乾燥後の水分量は300ppm、24時間乾燥後は250ppmとなった。
【0054】
(電池の作製)
本実施例の電池の作製について説明する。正極集電体として厚み20μm のアルミニウム箔を用い、正極活物質としてLiM n24を用いた。また、負極集電体として厚み10μmの銅箔を用い、この銅箔上に負極活物質として厚み20μmリチウム金属を蒸着したものを負極として用いた。また、電解液の溶媒としてECとDECの混合溶媒(体積比:30/70)を用い、支持電解質としてLiN(C25SO22(以下、LiBETIと略記する。)を1molL-1溶解し、さらに、上記表1に記載の化合物No.1において、減圧下での乾燥時間を24時間行って得られた化合物No.1を電解液中に1質量%含まれるように加えた。そして、負極と正極とをポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、本実施例の非水電解液二次電池を作製した。
【0055】
(電池特性評価試験)
得られた電池を一旦充電し、放電深度50%まで放電した状態で60℃の恒温槽に入れて1ヶ月放置し、放置後に室温に戻してから放電し、再度充放電を行い、2回目の放電容量を回復容量とし、初期の容量に対する割合を容量回復率とした。電池の抵抗は、初期の放電容量を1時間で放電した時の電流値を1Cとし、1C、3C、5C、7Cの各電流値で10秒間充放電した時の電流及び電圧の10秒値から算出した。サイクル容量維持率(%)は400サイクル後の放電容量(mAh) を、10サイクル目の放電容量(mAh)で割った値である。これらの結果を表3に示す。
【0056】
(比較例1)
減圧乾燥を18時間行って得られた化合物No.1を用いた電解液を用いた以外は実施例と同様に非水電解液二次電池を作製し同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0057】
(比較例2)
減圧乾燥を12時間行って得られた化合物No.1を用いた電解液を用いた以外は実施例と同様に非水電解液二次電池を作製し同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0058】
(比較例3)
減圧乾燥を行わずに得られた化合物No.1を用いた電解液を用いた以外は実施例と同様に非水電解液二次電池を作製し同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3に示されるように、水分含有量が300ppm以上である場合、容量回復率が90%以下と極端に減少し、抵抗上昇倍率やサイクル容量維持率も極端に悪化していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の非水電解液二次電池の概略構成図。
【符号の説明】
【0062】
11 正極集電体
12 正極活物質を含有する層
13 負極活物質を含有する層
14 負極集電体
15 非水電解液
16 多孔質セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非プロトン性溶媒と、ジスルホン酸エステルとを含む非水電解液において、前記ジスルホン酸エステルの水分含有量が300ppm未満であることを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
前記ジスルホン酸エステルが化1で示される請求項1に記載の非水電解液。
【化1】

但し、化1において、Qは酸素原子、メチレン基又は単結合、Aは、分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、カルボニル基、スルフィニル基、分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜5のパーフルオロアルキレン基、分岐していても良い炭素数2〜6の置換もしくは無置換のフルオロアルキレン基、エーテル結合を含み分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル結合を含み分岐していても良い置換もしくは無置換の炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基又はエーテル結合を含み分岐していても良い炭素数2〜6の置換もしくは無置換のフルオロアルキレン基を示す。Bは分岐していても良い置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。
【請求項3】
前記ジスルホン酸エステルが化2で示される請求項1に記載の非水電解液。
【化2】

但し、化2において、R1およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基、−SO21(X1は置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、−SY1(Y1は置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、−COZ(Zは水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、及びハロゲン原子、から選ばれる原子または基を示す。R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルコキシ基、置換もしくは無置換のフェノキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のポリフルオロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜5のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜5のポリフルオロアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、−NX23(X2及びX3は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、及び−NY2CONY34(Y2〜Y4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換の炭素数1〜5のアルキル基)、から選ばれる原子または基を示す。
【請求項4】
前記非プロトン性溶媒が、環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類及びそれらのフッ化誘導体からなる群より選択された少なくとも1種類の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記非水電解液が、リチウム塩としてLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、LiAlCl4、LiN(Ck2k+1SO22及びLiN(Cn2n+1SO2)(Cm2m+1SO2)(k、n、mは自然数) からなる群より選択された少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項6】
正極と、負極と、非水電解液とを備えた非水電解液二次電池において、前記非水電解液が請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解液であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記正極が、正極活物質としてリチウム含有複合酸化物を含むことを特徴とする請求項6に記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記負極が、負極活物質としてリチウムを吸蔵、放出できる材料、リチウム金属、リチウムと合金を形成することができる金属材料及び酸化物材料からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の非水電解液二次電池。
【請求項9】
前記負極が、負極活物質として炭素を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項10】
前記炭素が黒鉛であることを特徴とする請求項9に記載の非水電解液二次電池。
【請求項11】
前記炭素が非晶質炭素であることを特徴とする請求項9に記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−153118(P2008−153118A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341368(P2006−341368)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】