説明

非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法

【課題】 集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法において、活物質層用塗工組成物の分散性、安定性、塗工適性が良好であり、電極活物質層内の導電性に優れた非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 非水電解液二次電池用電極板は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記電極活物質層は、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加することにより形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池用電極板、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時におけるメモリー効果(完全に放電させる前に電池の充電を行なうと次第に電池容量が減少していく現象)が無いことから、携帯機器、大型機器など様々な分野で用いられている。
一般的な非水電解液二次電池の構成を単純化すると、正極板、負極板、セパレーター及び電解液からなり、該正極板及び負極板としては、金属箔等の集電体の上に、電極活物質層として塗工膜を形成したものが用いられている。
電極活物質層は通常、活物質、結着剤、必要に応じて導電剤、及びその他の材料を溶媒中で混練・分散してスラリー状の活物質用塗工組成物に調製し、該活物質用塗工組成物を集電体上に塗布・乾燥して形成される。
【0003】
近年では特に電気自動車、ハイブリッド自動車等のような高出力特性が必要とされる分野に向けての開発が進んでいるが、高出力を実現するためには電池のインピーダンスを減らす必要がある。インピーダンスが高い電池では高出力充放電時に、その容量を十分に生かすことができないからである。
電池のインピーダンスを下げる手段の1つとして、電極活物質層のインピーダンスを減らす方法がある。電極活物質層は、集電体を通して授受される電子と電解液を通して授受されるカチオンの存在下、活物質の化学反応によって充放電が起きる場所であるため、そのような電極活物質層のインピーダンスを下げるには、電極活物質層の導電性を上げる(電子の移動抵抗を下げる)又は電解液から供給されるカチオンの伝導性を上げる(カチオンの移動抵抗を下げる)事が効果的である。
一般に、電極活物質層の導電性を上げるために、グラファイトやアセチレンブラックなどの導電剤が、活物質、結着剤と共に活物質層用塗工組成物の構成材料として用いられている。特に正極の場合、用いられる活物質は通常、半導体ないし絶縁体の領域の材料であるため、導電剤の種類及び量の選択は特に重要である。
【0004】
従来、効率よく導電性を上げる方法として、導電剤の粒子の形状を規定したり、数種の形状からなる導電剤を複合させたり、また予め活物質の表面に導電剤を付着させてスラリーを作るなどの検討が行なわれているが、必ずしも充分な効果は得られていない。
理想的には、電極活物質層内において、導電剤同士が連鎖して導電性パスを形成し、この導電性パスによって各活物質粒子と集電体とがつながれ、そして活物質、結着剤および導電剤が存在しない空隙を電解液が満たしている状態であると、電極活物質層の導電性を好ましく上げることができる。
多量の導電剤を含有させた活物質層用塗工組成物を用いて電極活物質層を形成することによって、このような導電性パスを効果的に形成し、電極活物質層の導電性を上げることができる。
【0005】
しかしながら導電剤の量を増やすと、一般的に、電極塗工液の分散が難しい、必要な結着剤の量が増える、塗膜が脆くなる、集電体との密着が低下する、などの問題点が発生する。
すなわち、一般的に使用されるアセチレンブラック等の導電剤は、活物質の粒子よりも小さい一次粒子からなるため凝集しやすく、また、吸液性も高いため、活物質層用塗工組成物中の含有量が大きいと分散性、安定性、塗工適性等が悪くなる。また、導電剤の凝集がはなはだしい場合には、電極活物質の膜物性を低下させる原因にもなる。尚、一般に使用されているグラファイトなど比較的粒径の大きな導電剤については、比較的粒径の小さな活物質と共に用いる場合には、分散性や塗工適性はよいが、導電性パスが形成されにくい。
【0006】
また、これらの導電剤は、一般的にかさ高い(体積が大きい)二次粒子として存在するため、導電剤の量に合わせて結着剤を増やさないと、塗膜は著しく脆くなり、かつ集電体への密着性も低下する。
結着剤を増やした場合のさらなる問題として、活物質表面と導電剤表面の状態又は性質の違いにより、結着剤が活物質粒子、又は導電剤粒子のいずれかの表面に多く偏在して粒子を被覆してしまう場合がある。その結果、活物質と電子とカチオンの有効な接触が結着剤の被膜によってさえぎられ、導電性の発現が抑えられてしまう。
【0007】
他方、活物質層用塗工組成物の調製においては、活物質と導電剤の比重が異なるために沈澱が生じる、あるいは、導電剤の種類、調製ロット等の変更があった場合に活物質層用塗工組成物の粘度が大きく変化するなどの問題があり、様々な状況に柔軟に対応しながら活物質層用塗工組成物を安定した状態に調節することが難しかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、電極活物質層の導電性を上げるために活物質層用塗工組成物中に導電剤を多量に配合すると、電極塗工液の分散性、安定性、塗工適性が悪くなる、必要な結着剤の量が増える、塗膜が脆くなる、集電体との密着が低下するなどの問題点が発生する。
また、上述したような活物質の表面に導電剤を予め付着させてスラリーを調製する従来の試みは、個々の活物質粒子と、その表面に付着した導電剤との接触性は良好であるが、各活物質粒子と集電体とをつなぐ有効な導電性パスを形成するためには必ずしも充分でない。
【0009】
本発明は、上記の実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法において、活物質層用塗工組成物の分散性、安定性、塗工適性が良好であり、電極活物質層内の導電性に優れた非水電解液二次電池用電極板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記電極活物質層は、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加することにより形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記活物質の少なくとも一部が粒子状であることが好ましい。
【0012】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記活物質層中間体が充填剤を含むことが好ましい。
【0013】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記充填剤が導電性をもつことが好ましい。
【0014】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性付与材料が液状の形態であることが好ましい。
【0015】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記液状の導電性付与材料が、少なくとも導電性成分を液状成分に溶解又は分散させたものであることが好ましい。
【0016】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記液状の導電性付与材料が前記導電性成分として導電性微粒子を含有することが好ましい。
【0017】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性微粒子がカーボン微粒子、金属酸化物微粒子、金属微粒子、及び導電性ポリマー微粒子からなる群のうち、少なくとも1つからなることが好ましい。
【0018】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性微粒子の平均粒径が前記活物質層中間体の空隙の平均細孔径の半分以下であることが好ましい。
【0019】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記液状の導電性付与材料が、さらに結着剤を含むことが好ましい。
【0020】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記活物質層中間体の空隙内に追加された前記導電性付与材料から形成された導電性材料からなる表面被膜が、前記活物質層中間体の細孔内面の少なくとも一部を被覆していることが好ましい。
【0021】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性付与材料からなる表面被膜が、前記活物質層中間体の結着剤とは異なる結着剤を含有することが好ましい。
【0022】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性付与材料が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料を含有し、該導電性付与材料を活物質層中間体に追加した後、加熱処理あるいは光照射処理によって該導電性付与材料を硬化させたことが好ましい。
【0023】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記液状の導電性付与材料を前記活物質層中間体の空隙内に追加してから乾燥又は変質させる工程を1回あるいは複数回行ない、電極活物質層を形成したことが好ましい。
【0024】
さらに、本発明に係る非水電解液二次電池用電極板は、電池用電極板において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、且つ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の細孔内面を構成している活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、導電性成分が高濃度に偏在していることを特徴とする。
【0025】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、前記導電性成分及び結着剤を含有する導電性材料からなる表面被膜が存在することが好ましい。
【0026】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記導電性成分が、導電性微粒子であることが好ましい。
【0027】
また、上記非水電解液二次電池用電極板においては、前記表面被膜が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料の硬化物を含有することが好ましい。
【0028】
本発明に係る非水電解液二次電池用電極板の製造方法は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板の製造方法において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、かつ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加して前記電極活物質層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0029】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、少なくとも活物質を含む活物質層用塗工組成物を前記集電体上に塗工して前記活物質層中間体を形成する工程を含むことが好ましい。
【0030】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記活物質の少なくとも一部が粒子状であることが好ましい。
【0031】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記活物質層中間体が充填剤を含むことを特徴とすることが好ましい。
【0032】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記導電性付与材料が液状の形態であり、該導電性付与材料を前記活物質層中間体に浸透させることが好ましい。
【0033】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記液状の導電性付与材料が、少なくとも導電性成分を液状成分に溶解又は分散させたものであることが好ましい。
【0034】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記導電性成分が導電性微粒子であることが好ましい。
【0035】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記導電性微粒子の平均粒径が前記活物質層中間体の空隙の平均細孔径の半分以下であることが好ましい。
【0036】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記液状の導電性付与材料が、さらに結着剤を含むことが好ましい。
【0037】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記導電性付与材料が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料を含有し、該導電性付与材料を活物質層中間体に追加した後、加熱処理あるいは光照射処理によって該導電性付与材料を硬化させることが好ましい。
【0038】
また、上記非水電解液二次電池用電極板の製造方法においては、前記液状の導電性付与材料を前記活物質層中間体の空隙内に追加してから乾燥又は変質させる工程を1回あるいは複数回行ない、電極活物質層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、活物質骨格形成と導電性付与を別の工程に分けることによって、導電性パス(電子伝導パス)をカチオン伝導性パス(電解液が浸透する空隙)に沿って、選択的に形成することができるため、優れた電極活物質層内の導電性が得られる。従って、電池のインピーダンスを効果的に低減することができ、電池の高出力特性の発現が容易となる。
また、本発明によれば、活物質層用塗工組成物に導電剤を多量に混合する必要がないため、活物質層用塗工組成物の分散性、安定性、塗工適性が良好である。従って、活物質層用塗工組成物を含む電極活物質層を形成するための材料の設計変更を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、活物質骨格形成と導電性付与を別の工程に分けて行うことを特徴とする。
具体的には、本発明において提供される第1の非水電解液二次電池用電極板は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記電極活物質層が、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加することにより形成されたものであることを特徴とする。
【0041】
本発明において提供される第2の非水電解液二次電池用電極板は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、且つ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の細孔を構成している活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、導電性成分が高濃度に偏在していることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の係る非水電解液二次電池用電極板の製造方法は、集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板の製造方法において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、かつ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加して前記電極活物質層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0043】
以下、本発明の態様を詳細に説明する。
本発明の非水電解液二次電池用電極板の製造方法を説明する。尚、本発明において提供される電極板は、正極であっても負極であってもよい。
まず、集電体を準備する。集電体の材質は特に限定されないが、正極板の集電体としては、通常、アルミニウム箔が好ましく用いられる。一方、負極板の集電体としては、電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔が好ましく用いられる。集電体の厚さは、5〜50μm程度とする。
そして、基体である上記集電体の一面又は両面に正極又は負極活物質層用塗工組成物を塗布、乾燥して正極又は負極用の活物質層中間体を形成する。ここで、活物質層中間体とは、集電体上に活物質層用塗工組成物を塗布して形成した塗膜であって、その後、導電性付与材料が追加されて電極活物質層となるものをいう。
【0044】
本発明における活物質層用塗工組成物には、少なくとも活物質が含まれ、該活物質の少なくとも一部が粒子状であることが好ましい。活物質としては、従来から非水電解液二次電池の正極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、LiMn24(マンガン酸リチウム)、LiCoO2(コバルト酸リチウム)若しくはLiNiO2(ニッケル酸リチウム)等のリチウム酸化物、またはTiS2、MnO2、MoO3もしくはV25等のカルコゲン化合物を例示することができる。
また、負極活物質としては、従来から非水電解質液二次電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、又は、これらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料が好んで用いられる。溶媒が有機系の場合には金属リチウム又はリチウム合金のようなリチウム含有金属が好適に用いられる。特に、LiCoOを正極用活物質として用い、炭素質材料を負極用活物質として用いることにより、4ボルト程度の高い放電電圧を有するリチウム系2次電池が得られる。
【0045】
正極活物質及び負極活物質は、塗工層中に均一に分散させるために、例えば、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が0.1〜50μmの粉体であることが好ましい。これらの正極活物質及び負極用活物質は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
活物質層用塗工組成物中の活物質の配合割合は、溶剤を除く配合成分を基準(固形分基準)とした時に、99〜80重量%とすることが好ましく、特に容量と塗膜強度のバランスを図る点からは、98〜85重量%とすることが好ましい。
【0046】
本発明における活物質層用塗工組成物には、空隙を効果的に確保するための充填剤を含むことができる。充填剤は、該活物質層用塗工組成物によって作製した電極板を用いて電池を組み立てた時に、該電池が電気化学的に安定するものであれば特に制限は無く、形状は粒子状、繊維状などから任意に選択できる。また、効果的に空隙を確保するために、複数の形状の充填剤を混合して用いてもよい。充填剤の材質は無機及び有機材料の中から選択できるが、電極活物質層の導電性を高めるという点から導電性を持つことが望ましい。導電性を持った充填剤としては、例えば、金属微粒子、金属酸化物粒子、炭素粒子、炭素繊維等が挙げられる。充填剤の粒径としては、空隙を充分に形成できる観点から、活物質層中間体の空隙の平均細孔径の半分以上、および/または活物質の粒径の約1/10以上であることが好ましい。
活物質層用塗工組成物中の充填材の配合割合は、例えば、固形分基準で通常、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%とする。
【0047】
本発明における活物質層用塗工組成物には、必要に応じて結着剤を含むことができる。結着剤としては、従来から用いられているもの、例えば、熱可塑性樹脂、より具体的にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、フッ素系樹脂又はポリイミド樹脂等を使用することができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマー又はオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。そのほかにも、ゴム系の樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー或いはそれらの混合物からなる電離放射線硬化性樹脂、上記各種の樹脂の混合物を使用することもできる。結着剤は、通常は溶液であるが、ゴム系材料のエマルジョン等も使用することができる。
活物質層用塗工組成物中の結着材の配合割合は、例えば、固形分基準で通常、1〜20重量%とするが、容量と塗膜強度のバランスを図る点からは、2〜15重量%が好ましい。
【0048】
また、本発明における活物質層用塗工組成物には、必要に応じて増粘剤や分散剤を添加しても良い。
【0049】
正極又は負極用活物質層用塗工組成物を調製する溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン或いはこれらの混合物のような有機溶剤、または水を用いることができる。塗工組成物中の溶剤の割合は、通常、30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%とし、塗工液をスラリー状に調製する。
正極又は負極活物質層用塗工組成物は、適宜選択した正極又は負極活物質、結着材、及び他の配合成分を適切な溶剤中にいれ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル又はプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、スラリー状に調製できる。
【0050】
正極又は負極活物質層用塗工組成物の塗布方法は、特に限定されないが、例えばスライドダイコート、コンマダイレクトコート、コンマリバースコート等のように、厚い塗工層を形成できる方法が適している。ただし、活物質層に求められる厚さが比較的薄い場合には、グラビアコートやグラビアリバースコート等により塗布してもよい。活物質層中間体は、複数回塗布、乾燥を繰り返すことにより形成してもよい。
乾燥工程における熱源としては、温風、熱風、赤外線、マイクロ波、高周波、或いはそれらを組み合わせて利用できる。材料の耐熱性、溶媒除去効率等を考慮して、温風乾燥、遠赤外線乾燥、接触乾燥、減圧乾燥、フリーズドライ乾燥などの手法の中から適宜選択若しくは組み合わせることもできる。乾燥工程において集電体をサポートする金属ローラーや金属シートを加熱して放出させた熱によって乾燥してもよい。また、乾燥後、電子線又は放射線を照射することにより、結着材を架橋反応させて活物質層中間体を得ることもできる。
【0051】
このようにして形成された活物質層中間体内には、活物質等の粒子が結着剤によって互いに結合し、且つ、細孔内の空隙を保って分散している。また、本発明のプロセス上、本発明における活物質層中間体には、導電剤が含有されていない又は含まれていても電極活物質層における導電剤の全含有量の一部のみである。
【0052】
次に、上述したような方法で形成された活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加する。導電性付与材料とは、導電性成分そのもの又は導電性成分を生成する成分を含有し、且つ、活物質層中間体の空隙内に侵入して、そこで乾燥又は変質(硬化)して導電性成分を残留又は生成させることによって、導電性成分を該空隙内に存在させることが可能な材料である。
尚、導電性付与材料の追加は、活物質層中間体の形成後に続けて行ってもよいし、活物質層中間体をプレス処理した後に実施してもよいが、活物質層中間体が未プレスの状態で導電性付与材料の追加を行う方が、活物質層中間体の空隙がつぶされていないため、導電性付与材料の追加が行いやすく好ましい。
【0053】
導電性付与材料を追加する方法としては、主に大きく分けて2種類の方法がある。
第1の方法は、液状の導電性付与材料を用いる方法である。具体的には、液状の導電性付与材料を活物質層中間体の空隙内に浸透させてから、必要に応じて乾燥及び/又は変質させる工程を1回あるいは複数回行ない、電極活物質層を形成する。
第2の方法は、導電性付与材料から形成された導電性材料からなる表面被膜を、活物質層中間体の細孔内面(空隙を形成する界面)に物理的、化学的に直接形成する方法であり、活物質層の種類や構造、及び目的によって適したものを選択することができる。表面被膜を物理的、化学的に直接形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、PVD法、CVD法等が挙げられ、高温等による活物質への影響が大きくない範囲で用いることができる。
【0054】
以下、液状の導電性付与材料を用いる方法を例として、活物質層中間体の空隙内に導電性付与材料を追加する方法の詳細を説明する。
液状の導電性付与材料とは、少なくとも導電性成分を液状成分に分散又は溶解させたものである。
【0055】
導電性成分は、導電性付与材料を含む電極活物質層が形成された電極板を用いて電池を組み立てた時に、該電池が電気化学的に安定するものであれば特に制限はなく、炭素材料、有機材料、無機材料、金属材料などの中から1つ又は2つ以上を組み合わせて用いる。
溶媒に分散させる場合の導電性成分としては、カーボン微粒子、金属酸化物微粒子、金属微粒子、導電性ポリマー微粒子からなる群のうち、少なくとも1つからなる導電性微粒子が好ましい。該導電性微粒子の平均粒径は、活物質層中間体の空隙全体に染込むように、前記活物質層中間体に形成された空隙の平均細孔径の半分以下であることが好ましく、通常は1μm以下、好ましくは0.1μm以下のものが適している。ここで、平均細孔径とは、活物質層中間体内の細孔径の平均値をいい、水銀ポロシメータ等により測定することができる。
また、導電性成分は、溶媒に可溶なものを用いてもよい。溶媒に溶解させる場合の導電性成分としては、例えば、可溶性カーボンナノチューブ、導電性高分子、可溶性カーボンブラック等が例示される。
【0056】
本発明における導電性付与材料は、活物質層中間体の細孔内面に導電剤を強固に固定するために、さらに結着剤を含むことができる。
結着剤を用いる場合は、電極活物質層の形成に一般的に使用される結着剤から任意に選択できるほか、液状の導電性付与材料の活物質層中間体への浸透性を考慮して、従来の電極活物質層には用いられなかった材料を用いても良い。
また、結着剤を用いる場合は、活物質層中間体と同じ結着剤を用いる必要は無い。活物質層中間体に用いたものと異なる結着剤を導電性付与材料に用いることによって、導電性付与材料の溶剤として活物質層中間体の結着剤を溶解させにくい溶媒を選択することが容易になるので、活物質層中間体に導電性付与材料を浸透させる時に、活物質層中間体の骨格(多孔質構造)が導電性付与材料の溶媒により崩壊することを回避できる。
【0057】
結着剤の全部あるいは一部に熱硬化性、光硬化性などの硬化反応性材料を用いてもよい。導電性付与材料の結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料を用いた場合は、該導電性付与材料を活物質層中間体に追加した後、加熱処理あるいは光照射処理によって該導電性付与材料を硬化させることができる。このようにして得られる導電性材料は硬化反応性材料の硬化物を含んでおり、結着性や強度の向上、導電性向上、または耐電解液性の向上等を図ることができる。また、結着剤の全部あるいは一部に熱処理によって導電性を発現するタイプの材料を使用することができる。
本発明において、熱硬化性材料とは、加熱により硬化し得る材料であり、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、本発明において、光硬化性材料とは、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線のいずれかによって硬化し得る材料であり、例えば、光ラジカル重合性のモノマー、例えば、エチレン性不飽和結合を有するビニル系又はアクリル系のモノマーやオリゴマーを含有する感光性樹脂組成物が挙げられる。樹脂組成物の硬化には、主に、波長が2μm以下の電磁波、電子線、電離放射線等が使用される。特に、電極活物質層の色は一般的に黒く、電極活物質層にある程度の厚みがある場合は、電極活物質層の底部まで充分に照射するために、電子線を用いることが好ましい。
熱硬化性又は光硬化性のモノマーまたはオリゴマーの粘度が十分に小さく、溶媒なしでも用いることが可能な場合は、溶媒を使用しなくてもよい。
【0058】
液状の導電性付与材料を活物質層中間体に塗布又は浸透させる場合、密着性のよい被膜を形成できる範囲内である限り、結着剤の量は、むしろ少量の方が都合がよい。
かかる観点から、液状の導電性付与材料中の結着材の含有割合は、固形分基準で通常、0〜10重量%、好ましくは0〜7重量%とし、導電性付与材料中の導電性成分の配合割合は、固形分基準で通常、90〜100重量%、好ましくは93〜100重量%とする。
【0059】
本発明における導電性付与材料には、必要に応じて導電性微粒子の凝集を抑えるために分散剤を使用してもよく、導電性付与材料の活物質層中間体の空隙への浸透性を高めるために界面活性剤を添加しても良い。
【0060】
溶媒としては、特に限定されないが、活物質層中間体に染込むために、できるだけ活物質に対する濡れ性の良い溶媒が好ましい。また活物質と反応したり、結着剤の膨潤・劣化を引き起こす恐れがある溶媒はなるべく避けることが好ましい。また、導電性付与材料は、出来るだけ低い粘度であることが好ましい。例えば、トルエン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン或いはこれらの混合物のような有機溶剤を用いることができる。導電性付与材料中の液状成分の割合は、通常、99.9〜50重量%、好ましくは99〜90重量%である。
導電性付与材料は、適宜選択した導電性成分、結着材、及び他の配合成分を適切な溶剤中にいれ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル又はプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、インキ等の分散体又は配合成分が溶解した溶液の形態に調製できる。
【0061】
導電性付与材料を活物質層中間体に浸透させる方法としては、例えば、塗布、スプレー、ディップコート、グラビアコート、ダイコート等が挙げられ、粘度が低い場合はスプレー、ディップコート等が適しており、粘度がやや高い場合はグラビアコート、ダイコートが適している。
その他の導電性付与材料の追加方法としては、ゾルゲル法を利用したものを用いることもできる。具体的には、液状の導電性付与材料を活物質層中間体の空隙内に浸透させた後、加水分解性縮合反応によって導電皮膜を形成する方法である。
【0062】
溶媒の除去方法としては、特に限定されないが、材料の耐熱性、溶媒除去効率、乾燥後の活物質層中での導電性付与材料の分布状態などを考慮して、温風乾燥、遠赤外線乾燥、接触乾燥、減圧乾燥、フリーズドライ乾燥などの一般的な手法の中から適宜選択、もしくは組み合わせることができる。
上記乾燥後、結着剤の性質に合わせて、加熱又は電子線等の光照射を行うか、脱水重縮合を行うか、或いは、その他の適切な変質を行うことによって、電極活物質層が得られる。該電極活物質層は、集電体に対する密着性を高めるために、適当な厚さにプレス加工される。
尚、導電性付与材料の粘度を下げるために、固形分量を下げた場合など、1回の染込み作業では追加する導電性付与材料の量が足りない場合がある。その場合には、導電性付与材料を浸透させてから必要に応じて乾燥及び/又は変質させる一連の工程を複数回繰り返しても良い。
乾燥後の活物質層に含有される各成分の配合割合は、通常、活物質が60〜98%、導電剤が0.1〜20%、結着剤が1〜30%である。
【0063】
以上のようにして作製された非水電解液二次電池用電極板においては、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の細孔を構成している活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、導電性成分が高濃度に偏在している。さらに、高濃度に偏在した導電性成分同士が連鎖して、表面被膜を形成し、該表面被膜が導電性パスとして各活物質粒子と集電体をつないでいる。
上記の活物質層中間体の空隙に表面被膜が形成されている状態では、表面被膜は、活物質粒子及び結着剤それぞれの細孔内の空隙との界面に沿って形成されているため、電解液が染み入るための空隙は確保されている。
【0064】
従来の方法では、活物質、結着剤、導電剤等の材料を溶媒中へ同時に混練・分散した活物質用塗工組成物を使用し、結着剤中に導電剤が均一に分布しており、導電剤が、活物質や結着剤が形成する空隙に沿って集中的に分布している訳ではなかった。
また、活物質粒子表面に導電剤を被覆する場合も、活物質表面に結着剤が付着している部分では、結着剤によって導電剤が空隙から遮られるため、導電性パスの形成には有効に機能しなかった。
【0065】
これに対して、本発明においては、活物質層形成プロセスと導電性パス形成プロセスを分けた結果として、非水電解液二次電池用電極板において、導電性付与材料の偏在により効率的な導電性パスが形成される。
また、上記導電性パス(電子伝導パス)は、カチオン導電性パスである活物質粒子間の空隙(電解液が浸透する空隙)に沿って位置選択的に形成されるので、活物質への電子およびカチオンの到達効率もよい。そのため、活物質粒子表面での電池反応が効率よく行なわれる。
【0066】
さらに、本発明においては、活物質層用塗工組成物に導電剤を多量に配合しなくてよいので、該活物質層用塗工組成物に結着剤及び分散剤の量を減らすことができる。その結果として、導電剤の追加が完了した電極活物質層に含まれる分散剤および結着剤の総使用量を減らすことができるので、単純に電極活物質層の単位体積当たりの活物質密度、導電剤密度を上げることができる。
【0067】
従って、本発明によれば、電極活物質層の導電性が上がり、電池のインピーダンスを効果的に低減することができ、電池の高出力特性の発現が容易となる。
特に、正極に用いられる活物質は通常、半導体ないし絶縁体の領域の材料であり、導電性により電極活物質層の導電性を向上させることが重要であるため、本発明は正極板に好適に適用される。
本発明による、その他の効果としては、活物質層用塗工液に導電剤を多量に配合しなくてよいので、活物質層用塗工組成物の分散性、安定性、塗工適性が向上するため、取り扱いやすく、塗工液の処方の設計変更も容易である。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
正極用活物質としてLiCoO粉末を90重量部、および、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4.7重量部を、溶媒であるN−メチルピロリドン中で分散して活物質層用塗工組成物を調製した。得られた活物質層用塗工組成物は良好な塗工適性を示した。該活物質層用塗工組成物を厚み15μmのアルミ箔に塗布し、乾燥工程を経て活物質層中間体を得た。乾燥後の活物質層中間体の塗膜重量は約189g/mであった(活物質量は約180g/m)。
該活物質層中間体に、導電性カーボンブラック分散液(カーボンブラック/ポリフッ化ビニリデンの重量比5/0.3、溶媒N−メチルピロリドン)をスプレーにより染込ませ、乾燥させ、電極活物質層を得た。乾燥後の塗膜重量は約200g/mであり、計算で求めた活物質/導電材/結着剤の重量比は90/5/5であった。
その後、所定の厚みに圧延し、充放電特性を評価したところ、定電流値0.2C(単位 アンペア(A)、Cはキャパシタンス)での放電容量に対する2Cでの放電容量における放電容量比は98%であった。充放電特性は、TOSCAT(商品名、東洋システム株式会社製)に2極式セルを用いて、対極に金属リチウムを設置し、定電流0.2C、および定電圧4.2Vで充電を行い、定電流0.2Cあるいは2C、および電圧は3Vカット(電圧が3Vに達したところで測定終了)で放電を行うことによって測定した。尚、1C(A)とは、所定の電池を1時間で放電することができる電流値であり、例えば、2Ah(2Aの容量の電池を1時間で放電)の容量の電池を1時間で放電するには2Aの電流が必要と考える場合、1C=2Aとする。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例2)
正極用活物質としてLiCoO粉末を90重量部、および、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4.7重量部を、溶媒であるN−メチルピロリドン中で分散して活物質層用塗工組成物を調製した。得られた活物質層用塗工組成物は良好な塗工適性を示した。この該活物質層用塗工組成物を厚み15μmのアルミ箔に塗布し、乾燥工程を経て活物質層中間体を得た。乾燥後の活物質層中間体の塗膜重量は約189g/mであった(活物質量は約180g/m)。
該活物質層中間体に、導電性カーボンブラック分散液(カーボンブラック/アクリレート系オリゴマーの重量比5/0.3、溶媒 KT−11(MEK/トルエン=1/1))をスプレーにより染込ませ、乾燥させた。乾燥後の塗膜重量は約200g/mであり、計算で求めた活物質/導電材/結着剤の重量比は90/5/5であった。この乾燥した活物質層中間体に電子線照射装置にて10Mradの電子線を照射し、アクリレートオリゴマーの架橋を行ない、電極活物質層を得た。
その後、所定の厚みに圧延し、充放電特性を評価したところ、0.2C放電と2C放電における放電容量比は98%であった。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1)
正極用活物質としてLiCoO粉末を90重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5重量部、および、導電材として導電性カーボンブラック5重量部を、溶媒であるN−メチルピロリドン中で分散して活物質層用塗工組成物を調製した。得られた活物質層用塗工組成物はやや流動性に劣る塗工適性を示した。該活物質層用塗工組成物を厚み15μmのアルミ箔に塗布し、乾燥工程を経て電極活物質層を得た。乾燥後の塗膜重量は約200g/mであった。
その後、所定の厚みに圧延し、充放電特性を評価したところ、0.2C放電と2C放電における放電容量比は92%であった。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例2)
正極用活物質としてLiCoO粉末を90重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4.7重量部およびアクリレート系オリゴマーを0.3重量部、および、導電材として導電性カーボンブラック5重量部を、溶媒であるN−メチルピロリドン中で分散して活物質層用塗工組成物を調製した。得られた活物質層用塗工組成物はやや流動性に劣る塗工適性を示した。該活物質層用塗工組成物を厚み15μmのアルミ箔に塗布し、乾燥した。乾燥後の塗膜重量は約200g/mであった。これに電子線照射装置にて10Mradの電子線を照射し、アクリレートオリゴマーの架橋を行ない、電極活物質層を得た。
その後、所定の厚みにプレスし、充放電特性を評価したところ、0.2C放電と2C放電における放電容量比は90%であった。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
正極用活物質としてLiCoO粉末を90重量部、結着剤としてアクリレート系オリゴマーを5重量部、および、導電材として導電性カーボンブラック5重量部を、溶媒であるN−メチルピロリドン中で分散して活物質層用塗工組成物を調製したところ、著しく塗工適性が悪く、均一な塗膜を形成することができなかった。結果を表1に示す。
【0074】
(評価)
本発明に係る方法によって作成された実施例1の電極活物質層は、0.2C放電と2C放電における放電容量比が98%と良好で、且つ、活物質層用塗工組成物の塗工適性が良好であった。同様に、本発明に係る方法によって作成された光硬化性材料を含む実施例2の電極活物質層も、0.2C放電と2C放電における放電容量比が98%と良好で、且つ、活物質層用塗工組成物の塗工適性が良好であった。
一方、本発明とは異なり、導電剤と共に、活物質および結着剤を溶媒に分散させた活物質層用塗工組成物を用いた比較例1〜3については、実施例1および2よりも劣る結果となった。比較例1においては、電極活物質層の0.2C放電と2C放電における放電容量比は92%と減少し、且つ、活物質層用塗工組成物の塗工適性がやや流動性に劣った。光硬化性材料を含む比較例2の電極活物質層0.2C放電と2C放電における放電容量比は90%とさらに減少し、且つ、活物質層用塗工組成物の塗工適性がやや流動性に劣った。また、本来本発明における導電性付与材料に適するアクリレート系オリゴマーを、活物質層用塗工組成物の結着剤として用いた比較例3は、塗工適性が著しく悪く、電極活物質層を形成することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記電極活物質層は、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加することにより形成されたものであることを特徴とする、非水電解液二次電池用電極板。
【請求項2】
前記活物質の少なくとも一部が粒子状であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項3】
前記活物質層中間体が充填剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項4】
前記充填剤が導電性をもつことを特徴とする、請求項3に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項5】
前記導電性付与材料が液状の形態である、請求項1乃至4のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項6】
前記液状の導電性付与材料が、少なくとも導電性成分を液状成分に溶解又は分散させたものであることを特徴とする、請求項5に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項7】
前記液状の導電性付与材料が前記導電性成分として導電性微粒子を含有することを特徴とする、請求項6に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項8】
前記導電性微粒子がカーボン微粒子、金属酸化物微粒子、金属微粒子、及び導電性ポリマー微粒子からなる群のうち、少なくとも1つからなることを特徴とする、請求項7に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項9】
前記導電性微粒子の平均粒径が前記活物質層中間体の空隙の平均細孔径の半分以下であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項10】
前記液状の導電性付与材料が、さらに結着剤を含むことを特徴とする、請求項5乃至9のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項11】
前記活物質層中間体の空隙内に追加された前記導電性付与材料から形成された導電性材料からなる表面被膜が、前記活物質層中間体の細孔内面の少なくとも一部を被覆していることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項12】
前記導電性付与材料からなる表面被膜が、前記活物質層中間体の結着剤とは異なる結着剤を含有することを特徴とする、請求項11に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項13】
前記導電性付与材料が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料を含有し、該導電性付与材料を活物質層中間体に追加した後、加熱処理あるいは光照射処理によって該導電性付与材料を硬化させたことを特徴とする、請求項5乃至12のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項14】
前記液状の導電性付与材料を前記活物質層中間体の空隙内に追加してから乾燥又は変質させる工程を1回あるいは複数回行ない、電極活物質層を形成したことを特徴とする、請求項5乃至13のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項15】
集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、且つ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の細孔内面を構成している活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、導電性成分が高濃度に偏在していることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板。
【請求項16】
前記活物質粒子及び結着剤それぞれの空隙との界面の少なくとも一部に、前記導電性成分及び結着剤を含有する導電性材料からなる表面被膜が存在することを特徴とする請求項15に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項17】
前記導電性成分が、導電性微粒子であることを特徴とする請求項15又は16に記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項18】
前記表面被膜が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料の硬化物を含有することを特徴とする、請求項15乃至17のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板。
【請求項19】
集電体と該集電体の少なくとも一面に電極活物質層を備える非水電解液二次電池用電極板の製造方法において、前記集電体の少なくとも一面に設けられ、かつ、少なくとも活物質を含有する活物質層中間体の空隙内に、導電性付与材料を追加して前記電極活物質層を形成する工程を含むことを特徴とする、非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項20】
少なくとも活物質を含む活物質層用塗工組成物を前記集電体上に塗工して前記活物質層中間体を形成する工程を含む、請求項19に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項21】
前記活物質の少なくとも一部が粒子状であることを特徴とする、請求項19又は20に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項22】
前記活物質層中間体が充填剤を含むことを特徴とする、請求項19乃至21のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項23】
前記導電性付与材料が液状の形態であり、該導電性付与材料を前記活物質層中間体に浸透させることを特徴とする、請求項19乃至22のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項24】
前記液状の導電性付与材料が、少なくとも導電性成分を液状成分に溶解又は分散させたものであることを特徴とする、請求項23に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項25】
前記導電性成分が導電性微粒子であることを特徴とする、請求項24に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項26】
前記導電性微粒子の平均粒径が前記活物質層中間体の空隙の平均細孔径の半分以下であることを特徴とする、請求項25に記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項27】
前記液状の導電性付与材料が、さらに結着剤を含むことを特徴とする、請求項23乃至26のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項28】
前記導電性付与材料が結着剤として熱硬化性材料及び/又は光硬化性材料を含有し、該導電性付与材料を活物質層中間体に追加した後、加熱処理あるいは光照射処理によって該導電性付与材料を硬化させることを特徴とする、請求項23乃至27のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。
【請求項29】
前記液状の導電性付与材料を前記活物質層中間体の空隙内に追加してから乾燥又は変質させる工程を1回あるいは複数回行ない、電極活物質層を形成することを特徴とする、請求項23乃至28のいずれかに記載の非水電解液二次電池用電極板の製造方法。

【公開番号】特開2006−179320(P2006−179320A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371684(P2004−371684)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】