説明

非水電解質および非水電解質電池、ならびに非水電解質電池を用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム

【課題】非水電解質電池における電気化学的な反応による充電終止電圧抑制と、放電容量の均一化の双方の効果を提供する。
【解決手段】液状またはゲル状である非水電解質が、非水溶媒と、電解質塩とともに、所定の電位で酸化還元反応を生じる過充電制御剤と、下記の添加化合物(1)〜(4)から選択される少なくとも一種とを含む。




(式中、R21およびR23は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基であり、または、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基である。R22は、直鎖状または分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基、または、それらがハロゲン化された基である。)



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質およびそれを用いた非水電解質電池に関し、特に、電気化学的な反応による充電終止電圧抑制と、それによる放電容量の均一化が可能な非水電解質およびそれを用いた非水電解質電池に関する。また、このような非水電解質電池を用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話またはノートパソコン等のポータブル電子機器が広く普及しており、その小型化、軽量化および長寿命化が強く求められている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。
【0003】
中でも、充放電反応にリチウムイオンの吸蔵および放出を利用するリチウムイオン二次電池や、リチウム金属の析出および溶解を利用するリチウム金属二次電池等は、大いに期待されている。鉛電池やニッケルカドミウム電池よりも高いエネルギー密度が得られるからである。
【0004】
ところで、リチウムイオン二次電池、あるいは、リチウム金属二次電池は、単位体積あたりのエネルギー密度が非常に高く、また、非水電解質として可燃性の有機溶媒を使用している。有機溶媒を使用した非水電解質二次電池において、安全性確保は最も重要な課題のひとつであり、中でも過充電保護は重要である。例えば、ニッケル−カドミウム電池においては、過充電の際に充電電圧が上昇すると、電解液に含まれる水の化学反応による充電エネルギーの消費により過充電防止機構が働く。それに対し、非水系であるリチウム二次電池においては、水の化学反応による充電エネルギーの消費がないため、それに代わる別の機構が必要となる。
【0005】
非水電解質電池における過充電防止機構としては、化学反応を利用する方法と電子回路を利用する方法とが提案されており、実用的には後者が主に採用されている。しかしながら、電子回路による方法では、コスト高になるばかりか、商品設計上種々の制約が生ずることになる。
【0006】
そこで、非水電解質電池においては、化学反応を利用して過充電を防止する技術の開発が進められている。その中でも化学的過充電保護手段の一つとして、適当な酸化還元試薬を電解液に添加する方法が試みられている。この方法によれば、酸化還元試薬の反応の可逆性がよい場合には、電池内には、正負極間を往復して過充電電流を消費する保護機構が成立する。
【0007】
このような酸化還元試薬を用いた例としては、例えば下記の特許文献1が挙げられる。特許文献1にはフッ素エステル/エーテルとシリル基を有する芳香族化合物とを用いることが記載されている。特許文献2にはニトロキシド化合物を用いることが記載されている。特許文献3にはトリフェニルアミン化合物を用いることが記載されている。特許文献4には炭酸ビニレンやスルトンとアニソール系化合物とを組み合わせて用いることが記載されている。特許文献5にはN−オキシド化合物を用いることが記載されている。特許文献6には芳香族化合物を含む循環可能な化合物を用いることが記載されている。特許文献7には酸化還元試薬を含む電解質を各々含む複数の直列接続された再充電可能なリチウムイオン電池を含むバッテリーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許351201号公報
【特許文献2】特開2010−521050号公報
【特許文献3】特開2009−527096号公報
【特許文献4】特開2009−514149号公報
【特許文献5】特開2008−541041号公報
【特許文献6】特開2007−531972号公報
【特許文献7】特開2007−531970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者が上述の特許文献に記載された様な酸化還元試薬を実際のリチウムイオン電池に適用したところ、電気化学的な反応による充電終止電圧抑制と、それによる放電容量の均一化の効果が不十分であることがわかった。
【0010】
本技術は、上述の問題点を解消し、電気化学的な反応による充電終止電圧抑制と、放電容量の均一化の双方を実現可能な非水電解質および非水電解質電池、ならびに非水電解質電池を用いた電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の問題を解決するために、本技術の非水電解質は、非水溶媒と、電解質塩と、所定の電位で酸化還元反応を生じる過充電制御剤と、下記の添加化合物(1)〜添加化合物(4)から選択される少なくとも一種とを含む。
【化1】

(式中、R21およびR23は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基であり、または、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基である。R22は、直鎖状または分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基、または、それらがハロゲン化された基である。)
【化2】

(式中、R21およびR23、ならびにR22は上記添加化合物(1)と同様である。)
【化3】

【化4】

【0012】
また、本技術の非水電解質電池は、正極および負極を含む電極群と、上記非水電解質とを備える。
【0013】
本技術のように、添加化合物(1)〜添加化合物(4)の少なくとも1種と、所定の電位で生じる酸化還元反応により充電時の電圧上昇を電気化学的に抑制する過充電制御剤とがともに含有された非水電解質を用いることにより、過充電時に電圧上昇を電気化学的に抑制する化合物の電極間における移動度を確保することができる。このため、充電時の電流密度に対して、化合物の反応電流を充分に大きくすることができる。
【0014】
さらに、本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本技術の非水電解質は、非水電解質電池に適用することで、所定の電位で酸化還元反応を生じる化合物の電気化学的な反応による充電終止電圧抑制効果と、放電容量の均一化の双方を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本技術の第2の実施の形態にかかる非水電解質電池の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す非水電解質電池にかかる巻回電極体の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】本技術の第3の実施の形態にかかる非水電解質電池の構成を示す分解斜視図である。
【図4】図3に示す巻回電極体のI−I線に沿った断面構成を表す断面図である。
【図5】本技術の実施の形態による電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図6】本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図7】本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【図8】実施例2−1−1〜実施例2−1−29で得られたSnCoC含有材料をXPSで分析した分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(本技術の非水電解質の例)
2.第2の実施の形態(本技術の非水電解質を用いた円筒型非水電解質電池の例)
3.第3の実施の形態(本技術の非水電解質を用いたラミネートフィルム型非水電解質電池の例)
4.第4の実施の形態(本技術の非水電解質電池を用いた電池パックの例)
5.第5の実施の形態(本技術の非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
【0018】
1.第1の実施の形態
第1の実施の形態では、非水電解液およびゲル状の非水電解質(以下、ゲル電解質と適宜称する)の構成および製造方法について説明する。
【0019】
(1−1)非水電解液
第1の実施の形態は、非水電解質電池に用いる非水電解液である。非水電解液は、液体状の非水電解質である。
【0020】
本技術の非水電解液は、非水溶媒および電解質塩とともに、過充電時の電圧上昇を電気化学的に抑制する化合物(以下、過充電制御剤と適宜称する)を含む。また、本技術の非水電解液は、過充電制御剤の電気化学的反応による充電終止電圧の均一効果およびそれによる放電容量の均一効果を得るために、さらに本技術の化合物(以下、添加化合物と適宜称する)を含んでいる。
【0021】
[過充電制御剤]
本技術の非水電解液は、充電時の電圧上昇を電気化学的に抑制するために、過充電制御剤を必須の成分として含む。以下、過充電制御剤について説明する。
【0022】
過充電制御剤は、例えば、非水電解質電池の満充電時における正極電位よりもやや高い電位で酸化還元反応を生じる材料からなる。なお、過充電制御剤の酸化還元反応が生じる電位は上記電位に限ったものではなく、過充電制御剤として満充電時における正極電位よりも低い電位で酸化還元反応を生じる材料を用いてもよい。非水電解質電池の満充電状態とは、電池電圧が充電終止電圧として設定した電圧となった状態をいう。すなわち、過充電制御剤を含有する非水電解質電池は、所定の電位を超えて過充電された場合に、正極表面の酸化活性によって過充電制御剤が酸化還元反応を生じて、非水電解質電池の電圧(正極の電位)上昇を抑制することができる。過充電制御剤は、具体的には、所定の正極電位となった場合に酸化されて負極側に拡散されるとともに、負極側で還元されて正極側に再度拡散されることを繰り返すことにより、正極と負極との間で電荷を繰り返して輸送することができる酸化可能かつ還元可能な材料である。
【0023】
このような過充電制御剤を用いることにより、非水電解質電池の過充電に起因する放電容量のばらつきを抑制することができる。また、過充電によって正極電位が高くなりすぎることに起因する非水電解液の分解等が抑制されるため、電池内部でのガス発生を抑制できる。
【0024】
過充電制御剤としては、例えば下記の過充電制御剤(1)〜過充電制御剤(12)を用いることができる。過充電制御剤は、過充電制御剤(1)〜過充電制御剤(12)で示される化合物のうちの一種もしくは二種以上を混合したものである。
【0025】
【化5】

(式中、Raは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R5は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、ニトリル基もしくは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RaおよびR1〜R5が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RaおよびR1〜R5の連結は、R1〜R5すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【0026】
【化6】

(式中、Rbは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R7は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RbおよびR1〜R7が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RbおよびR1〜R7の連結は、R1〜R7すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【0027】
【化7】

(式中、RbおよびR1〜R7は、上記過充電制御剤(2)と同様である。)
【0028】
【化8】

(式中、Mは遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素もしくは15族元素である。Rcはアリール基あるいは複素環基であり、またはそれらが部分的にもしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。)
【0029】
【化9】

(式中、R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。R5およびR6はアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R5およびR6が互いに連結された基である。R5およびR6が互いに連結された基は、アルキレン基、部分的にまたはすべてがハロゲン化されたアルキレン基または下記一般式(A)で示される連結基である。
【化10】

一般式(A)中、l1およびl2はそれぞれ独立して0〜2の整数である。Aは炭素数0〜2のアルキレン基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化されたアルキレン基を示す。)
【0030】
【化11】

(式中、XはN−オキシドまたはN−オキソ基を示す。Yは酸素原子または硫黄原子である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、ニトリル基、複素環基、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【0031】
【化12】

(式中、X、YおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。なお、Yが酸素原子の場合R14、R15は非共有電子対を示し、Yが硫黄原子の場合、R14、R15は独立して非共有電子対またはオキソ基を示す。R13は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【0032】
【化13】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【0033】
【化14】

(式中、X、R8〜R11およびR12は、上記過充電制御剤(8)と同様である。R16およびR17は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R16とR17が互いに連結された基である。)
【0034】
【化15】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(8)と同様である。Zは、下記一般式(B1)〜一般式(B6)のいずれかである。
【化16】

(一般式(B1)〜一般式(B6)中、R12は上記過充電制御剤(8)と同様である。R18は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R18とR19が互いに連結された基である。R19は水素基、水酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基またはエーテル基である。R20は独立して水素基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基またはグリシジル基である。))
【0035】
【化17】

(式中、Xは上記過充電制御剤(8)と同様である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボン酸エステル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。)
【0036】
【化18】

(式中、sは平均で4以上12以下であり、Dが水素、塩素または臭素である。)
【0037】
過充電制御剤(1)の化合物としては、例えば、以下の過充電制御剤(1−1)〜過充電制御剤(1−81)が挙げられる。また、同様に、過充電制御剤(2)〜過充電制御剤(12)の化合物としては、例えば、過充電制御剤(2−1)〜過充電制御剤(2−2)、過充電制御剤(3−1)〜過充電制御剤(3−7)、過充電制御剤(4−1)〜過充電制御剤(4−75)、過充電制御剤(5−1)〜過充電制御剤(5−6)、過充電制御剤(6−1)〜過充電制御剤(6−13)、過充電制御剤(7−1)〜過充電制御剤(7−2)、過充電制御剤(8−1)〜過充電制御剤(8−5)、過充電制御剤(9−1)〜過充電制御剤(9−12)、過充電制御剤(10−1)〜過充電制御剤(10−7)、過充電制御剤(11−1)〜過充電制御剤(11−6)および過充電制御剤(12−1)〜過充電制御剤(12−2)のそれぞれが挙げられる。ただし、一般式(1)〜一般式(12)に示したいずれかの構造を有していれば、他の化合物でもよい。
【0038】
【化19】

【0039】
【化20】

【0040】
【化21】

【0041】
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
【化24】

【0044】
【化25】

【0045】
【化26】

【0046】
【化27】

【0047】
【化28】

【0048】
【化29】

【0049】
【化30】

【0050】
【化31】

【0051】
【化32】

【0052】
【化33】

【0053】
【化34】

【0054】
【化35】

【0055】
【化36】

【0056】
非水電解液中における過充電制御剤の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましい。充電時の電圧上昇抑制効果が充分に発揮されるからである。なお、上記した含有量は非水電解液が過充電制御剤を一種もしくは二種以上を含む場合のいずれについても適用される。
【0057】
[添加化合物]
添加化合物は、非水電解液に添加することで、過充電制御剤の電気化学的反応による充電終止電圧の均一効果およびそれによる放電容量の均一効果を得ることができる。以下、添加化合物について説明する。
【0058】
添加化合物としては、例えば下記の添加化合物(1)〜添加化合物(4)を用いることができる。添加化合物は、添加化合物(1)〜添加化合物(4)で示される化合物のうちの一種もしくは二種以上を混合して用いても良い。
【0059】
【化37】

(式中、R21およびR23は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基であり、または、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基である。R22は、直鎖状または分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基、または、それらがハロゲン化された基である。)
【0060】
【化38】

(式中、R21およびR23、ならびにR22は上記添加化合物(1)と同様である。)
【0061】
【化39】

【0062】
【化40】

【0063】
このような添加化合物を用いることにより、上述の過充電制御剤を非水電解液に添加することにより得られる効果をより高めることができる。すなわち、過充電制御剤を単体で非水電解液中に添加する場合に比べて、本技術の過充電制御剤と添加化合物とを併用した非水電解液では、過充電制御剤の電極間における移動度をより高くすることができる。このため、充電時の電流密度に対して化合物の反応電流を充分に大きくすることができ、正負極間を往復して過充電電流を消費する保護機構がより働きやすくなるため、過充電制御剤の過充電時における電圧上昇抑制効果が得られやすくなる。したがって、本技術の過充電制御剤と添加化合物とを併用することにより、放電容量のばらつきおよび非水電解液の分解等に起因するガス発生を抑制することができる。
【0064】
添加化合物の含有量は、非水電解液中の過充電制御剤の含有量に対して0質量%超20質量%未満であることが好ましい。含有量が上記範囲外に少ない場合には、充電終止電圧の均一効果およびそれによる放電容量の均一効果が小さくなってしまう。含有量が上記範囲外に多い場合には、溶媒の粘性が上昇し、充分なイオン伝導度が実現できないからである。
【0065】
なお、添加化合物(1)および添加化合物(2)の化合物の少なくとも一方を用いる場合には、添加化合物の含有量が非水電解液中の過充電制御剤の含有量に対して0質量%超6.0質量%未満であることが好ましい。また、添加化合物(3)および添加化合物(4)の化合物の少なくとも一方を用いる場合には、添加化合物の含有量が非水電解液中の過充電制御剤の含有量に対して0.001質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。添加化合物(1)および添加化合物(2)の化合物の少なくとも一方と添加化合物(3)および添加化合物(4)の化合物の少なくとも一方とを混合して用いる場合には、0.001質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。
【0066】
添加化合物(1)のR21およびR23のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n(ノルマル)−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基またはイソブチル基、sec(セカンダリ)−ブチル基、tert(ターシャリ)−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基またはn−ヘキシル基が挙げられる
【0067】
添加化合物(1)のR21およびR23のアルケニル基としては、例えば、n−ヘプチル基、ビニル基、2−メチルビニル基、2,2−ジメチルビニル基、ブテン−2,4−ジイル基またはアリル基が挙げられる。
【0068】
添加化合物(1)のR21およびR23のアルキニル基としては、例えば、エチニル基が挙げられる。
【0069】
上述のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基等の炭素数は特に限定されないが、中でも、1〜20が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0070】
添加化合物(1)のR21およびR23のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0071】
添加化合物(1)のR21およびR23の芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基等について、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。また、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基が挙げられる。このうち、フェニル基により置換されたアルキル基(アラルキル基)としては、例えば、ベンジル基または2−フェニルエチル基(フェネチル基)が挙げられる。
【0072】
添加化合物(1)のR21およびR23のハロゲン化されたアルキル基等について、そのハロゲンの種類は特に限定されないが、中でも、フッ素(F)、塩素(Cl)または臭素(Br)が好ましく、フッ素がより好ましい。ハロゲン化されたアルキル基としては、例えば、フッ素化アルキル基等が挙げられる。このフッ素化アルキル基は、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基またはペンタフルオロエチル基が挙げられる。なお、「ハロゲン化された基」とは、アルキル基等の一部、もしくはすべての水素基(−H)がハロゲン基(−F等)により置換された基である。
【0073】
中でも、ハロゲン化された基よりも、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されている基が好ましく、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されていない基がより好ましい。芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されている基において、その炭素数は特に限定されない。この炭素数としては、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の炭素数とアルキル基等の炭素数とを合計して20以下が好ましく、7以下がより好ましい。
【0074】
なお、R21およびR23は、上記したアルキル基等の誘導体でもよい。この誘導体とは、アルキル基等に1または2以上の置換基が導入された基であり、その置換基は、炭化水素基でもよいし、それ以外の基でもよい。
【0075】
添加化合物(1)のR22を構成する、直鎖状または分岐状のアルキレン基等の基の炭素数は特に限定されないが、中でも、2〜10が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。なお、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基は、1つのアリーレン基と1つのアルキレン基とが連結された基でもよいし、2つのアルキレン基がアリーレン基を介して連結された基(アラルキレン基)でもよい。
【0076】
このようなR22としては、添加化合物(R22−1)〜添加化合物(R22−7)で表される直鎖状のアルキレン基、または添加化合物(R22−8)〜添加化合物(R22−16)で表される分岐状のアルキレン基、添加化合物(R22−17)〜添加化合物(R22−19)で表されるアリーレン基、または添加化合物(R22−20)〜添加化合物(R22−22)で表されるアリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基(ベンジリデン基)が挙げられる。
【0077】
【化41】

【0078】
【化42】

【0079】
【化43】

【0080】
【化44】

【0081】
また、エーテル結合とアルキレン基とを含む炭素数=2〜12の2価の基としては、少なくとも2つのアルキレン基がエーテル結合を介して連結されていると共に両末端が炭素原子である基が好ましい。このような基の炭素数としては、4〜12が好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。エーテル結合の数、ならびにエーテル結合およびアルキレン基の連結順等は、任意である。
【0082】
このようなR2としては、例えば、添加化合物(R22−23)〜添加化合物(R22−25)で表される基等が挙げられる。また、添加化合物(R22−23)〜添加化合物(R22−25)に示した2価の基がフッ素化された場合には、例えば、添加化合物(R22−26)〜添加化合物(R22−28)で表される基等が挙げられる。中でも、添加化合物(R22−24)に示した基の炭素数m=1〜3の構成が好ましい。
【0083】
【化45】

(式中、炭素数mは1以上の整数であり、炭素数m=1〜5が好ましい。)
【0084】
【化46】

(式中、炭素数nは1以上の整数であり、炭素数n=1〜3が好ましい。)
【0085】
なお、R22は、R21およびR23について説明した場合と同様に、上述したアルキレン基等の誘導体でもよい。
【0086】
過充電制御剤(1)の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0087】
過充電制御剤(1)の具体例としては、過充電制御剤(1−1)〜過充電制御剤(1−12)で表される化合物等が挙げられる。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、過充電制御剤(1−1)〜過充電制御剤(1−12)に示した化合物以外の化合物でもよい。
【0088】
【化47】

【0089】
過充電制御剤(2)に示した化合物について、過充電制御剤(1)同様の基を有している。過充電制御剤の分子量は特に限定されないが、中でも、162〜1000が好ましく、162〜500がより好ましく、162〜300がさらに好ましい。優れた溶解および相溶性が得られるからである。
【0090】
過充電制御剤(2)に示した化合物の具体例としては、過充電制御剤(2−1)〜過充電制御剤(2−17)で表される化合物等が挙げられる。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、過充電制御剤(2−1)〜過充電制御剤(2−17)に示した化合物以外の化合物でもよい。
【0091】
【化48】

【0092】
【化49】

【0093】
[非水溶媒]
非水溶媒は、以下で説明する有機溶媒のうち少なくとも一種を含んでいる。なお、上述した添加化合物のうち添加化合物(1)および添加化合物(2)で示す材料は、以下で説明する非水溶媒から除かれることとする。
【0094】
非水溶媒としては、以下の化合物等が挙げられる。炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタンまたはテトラヒドロフランである。2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサンまたは1,4−ジオキサンである。酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルまたはトリメチル酢酸エチルである。N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはN−メチルオキサゾリジノンである。N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルまたはジメチルスルホキシドである。非水電解液を用いた非水電解質電池において、優れた電池容量、サイクル特性および保存特性等が得られるからである。
【0095】
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも一種が好ましい。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性等が得られるからである。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレン等の高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチル等の低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0096】
特に、非水溶媒は、式(1)〜式(3)で表される不飽和炭素結合環状炭酸エステルのうちの少なくとも一種を含んでいることが好ましい。非水電解質電池の充放電時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、非水電解液の分解反応が抑制されるからである。この不飽和炭素結合環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和炭素結合を有する環状炭酸エステルである。R31およびR32は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R33〜R36についても同様である。非水溶媒中における不飽和炭素結合環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01質量%以上10質量%以下である。ただし、不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、下記で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0097】
【化50】

(式中、R31およびR32は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基である。)
【0098】
【化51】

(式中、R33〜R36は、それぞれ独立して、水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であり、それらのうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
【0099】
【化52】

(式中、R37はアルキレン基である。)
【0100】
式(1)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物である。この炭酸ビニレン系化合物の一例としては、以下の化合物等が挙げられる。炭酸ビニレン、炭酸メチルビニレンまたは炭酸エチルビニレンである。4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オンまたは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0101】
式(2)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物である。この炭酸ビニルエチレン系化合物の一例としては、以下の化合物等が挙げられる。炭酸ビニルエチレン、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R33〜R36としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
【0102】
式(3)に示した不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、炭酸メチレンエチレン系化合物である。この炭酸メチレンエチレン系化合物の一例としては、以下の化合物等が挙げられる。4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンである。この炭酸メチレンエチレン系化合物としては、式(3)に示したように1つのメチレン基を有する化合物の他、2つのメチレン基を有する化合物でもよい。
【0103】
なお、不飽和炭素結合環状炭酸エステルは、式(1)〜式(3)に示した化合物の他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)でもよい。
【0104】
また、非水溶媒は、式(4)で表されるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよび式(5)で表されるハロゲン化環状炭酸エステルのうちの少なくとも一種を含んでいることが好ましい。非水電解質電池の充放電時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、非水電解液の分解反応が抑制されるからである。このハロゲン化鎖状炭酸エステルとは、ハロゲンを構成元素として含む鎖状炭酸エステルであり、ハロゲン化環状炭酸エステルとは、ハロゲンを構成元素として含む環状炭酸エステルである。なお、式(4)中のR41〜R46は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、式(5)中のR47〜R50についても、同様である。非水溶媒中におけるハロゲン化鎖状炭酸エステルおよびハロゲン化環状炭酸エステルの含有量は、例えば、0.01質量%以上50質量%以下である。ただし、ハロゲン化鎖状炭酸エステルまたはハロゲン化環状炭酸エステルは、下記で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0105】
【化53】

(式中、R41〜R46は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【0106】
【化54】

(式中、R47〜R50は、それぞれ独立して、水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、それらのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
【0107】
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素または臭素が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。非水電解液を非水電解質電池に用いた場合に、電極反応時において、電極の表面に保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、非水電解液の分解反応がより抑制されるからである。
【0108】
ハロゲン化鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチル等が挙げられる。
【0109】
ハロゲン化環状炭酸エステルの一例としては、式(5−1)〜式(5−21)で表される化合物等が挙げられる。すなわち、式(5−1)の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(5−2)の4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−3)の4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−4)のテトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(5−5)の4−クロロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−6)の4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−7)のテトラクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(5−8)の4,5−ビストリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−9)の4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−10)の4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−11)の4,4−ジフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−12)の4−エチル−5,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(5−13)の4−フルオロ−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−14)の4−メチル−5−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−15)の4−フルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−16)の5−(1,1−ジフルオロエチル)−4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−17)の4,5−ジクロロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、式(5−18)の4−エチル−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−19)の4−エチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである。式(5−20)の4−エチル−4,5,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−21)の4−フルオロ−4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オンである。
【0110】
このハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(5−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(5−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。特に、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンでは、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0111】
【化55】

【0112】
また、非水溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。非水電解液の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンとしては、例えば、プロパンスルトンまたはプロペンスルトン等が挙げられる。非水溶媒中におけるスルトンの含有量は、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。ただし、スルトンは、上述した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0113】
さらに、非水溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。非水電解液の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物としては、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物、またはカルボン酸とスルホン酸との無水物等が挙げられる。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸等である。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸または無水プロパンジスルホン酸等である。カルボン酸とスルホン酸との無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸または無水スルホ酪酸等である。非水溶媒中における酸無水物の含有量は、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。ただし、酸無水物は、上述した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0114】
同様に、非水溶媒は、ニトリル化合物を含んでいることが好ましい。非水電解液の化学的安定性がより向上するからである。このニトリル化合物としては、例えば、スクシノニトリル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルが挙げられる。非水溶媒中におけるニトリル化合物の含有量は、例えば、0.5質量%以上5質量%以下である。ただし、ニトリル化合物は、上述した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0115】
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、以下で説明するリチウム塩のいずれか少なくとも一種を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の他の塩(例えばリチウム塩以外の軽金属塩)を含んでいてもよい。
【0116】
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)または六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)である。テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C654)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)またはテトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)である。六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SiF6)、塩化リチウム(LiCl)または臭化リチウム(LiBr)が挙げられる。電解液を用いた非水電解質電池において、優れた電池容量、サイクル特性および保存特性等が得られるからである。ただし、リチウム塩は、上記した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0117】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも一種が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下し、より高い電池特性向上効果が得られるからである。
【0118】
特に、電解質塩は、式(6)〜式(11)で表される化合物のうちの少なくとも一種を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、式(6)中のR61は、同一でもよいし、異なってもよい。このことは、式(7)中のR71〜R73および式(8)中のR81およびR82についても同様である。ただし、式(6)〜式(11)に示した化合物は、下記で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0119】
【化56】

(X61は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M61は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R61はハロゲン基である。Y61は−C(=O)−R62−C(=O)−、−C(=O)−C(R63)2−または−C(=O)−C(=O)−である。ただし、R62はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R63はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a6は1〜4の整数であり、b6は0、2または4であり、c6、d6、m6およびn6は1〜3の整数である。)
【0120】
【化57】

(X71は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M71は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y71は−C(=O)−(C(R71)2b7−C(=O)−、−(R73)2C−(C(R72)2c7−C(=O)−、−(R73)2C−(C(R72)2c7−C(R73)2−、−(R73)2C−(C(R72)2c7−S(=O)2−、−S(=O)2−(C(R72)2d7−S(=O)2−または−C(=O)−(C(R72)2d7−S(=O)2−である。ただし、R71およびR73は、それぞれ独立して、水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R72は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a7、e7およびn7は1または2であり、b7およびd7は1〜4の整数であり、c7は0〜4の整数であり、f7およびm7は1〜3の整数である。)
【0121】
【化58】

(X81は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M81は遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y81は−C(=O)−(C(R81)2d8−C(=O)−、−(R82)2C−(C(R81)2d8−C(=O)−、−(R82)2C−(C(R81)2d8−C(R82)2−、−(R82)2C−(C(R81)2d8−S(=O)2−、−S(=O)2−(C(R81)2e8−S(=O)2−または−C(=O)−(C(R81)2e8−S(=O)2−である。ただし、R81は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R82は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a8、f8およびn8は1または2であり、b8、c8およびe8は1〜4の整数であり、d8は0〜4の整数であり、g8およびm8は1〜3の整数である。)
【0122】
なお、長周期型周期表における1族元素とは、水素(H)、リチウム(Li)ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)およびフランシウム(Fr)である。2族元素とは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびラジウム(Ra)である。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびタリウム(Tl)である。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)および鉛(Pb)である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)およびビスマス(Bi)である。
【0123】
式(6)に示した化合物としては、例えば、式(6−1)〜式(6−6)で表される化合物等が挙げられる。式(7)に示した化合物としては、例えば、式(7−1)〜式(7−8)で表される化合物等が挙げられる。式(8)に示した化合物としては、例えば、式(8−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0124】
【化59】

【化60】

【化61】

【0125】
また、電解質塩は、式(9)〜式(11)で表される化合物のうちの少なくとも一種を含んでいることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0126】
LiN(Cm2m+1SO2)(Cn2n+1SO2) …式(9)
(式中、mおよびnは、それぞれ独立して1以上の整数である。)
【0127】
【化62】

(式中、R91は炭素数=2〜4の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
【0128】
LiC(Cp2p+1SO2)(Cq2q+1SO2)(Cr2r+1SO2) …式(11)
(式中、p、qおよびrは、それぞれ独立して1以上の整数である。)
【0129】
式(9)に示した化合物は、鎖状のイミド化合物である。この化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO22:LITFSI)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C25SO22)、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C25SO2))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C37SO2))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)(C49SO2))が挙げられる。
【0130】
式(10)に示した化合物は、環状のイミド化合物である。この化合物としては、例えば、式(10−1)〜式(10−4)で表される化合物等が挙げられる。すなわち、式(10−1)の1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミドリチウム、式(10−2)の1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドリチウム、式(10−3)の1,3−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムまたは式(10−4)の1,4−パーフルオロブタンジスルホニルイミドリチウムである。
【0131】
【化63】

【0132】
式(11)に示した化合物は、鎖状のメチド化合物である。この化合物としては、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3SO23)等が挙げられる。
【0133】
電解質塩の含有量は、非水溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0134】
(1−2)ゲル電解質
他の構成として、上述の非水電解液を高分子化合物で保持させてゲル状としたゲル電解質とすることもできる。
【0135】
[高分子化合物]
高分子化合物は、溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレンオキサイドあるいはポリメチルメタクリレートを繰返し単位として含むものなどが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0136】
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、モノメチルマレイン酸エステルなどの不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化エチレン、炭酸ビニレンなどの不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマーなどを成分として含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
【0137】
なお、ゲル状の電解質層の形成方法については、後述する。
【0138】
〔効果〕
第1の実施の形態の非水電解質は、非水電解質電池に適用することにより、その非水電解質電池の充電時における電気化学的な反応に起因する充電終止電圧抑制と、放電容量の均一化の双方について高い効果を得ることができる。
【0139】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態では、第1の実施の形態における非水電解液もしくはゲル電解質を用いた円筒型非水電解質電池について説明する。
【0140】
(2−1)非水電解質電池の構成
図1は、第2の実施の形態にかかる非水電解質電池の断面構造を表すものである。この非水電解質電池は例えばリチウムイオン二次電池である。
【0141】
この非水電解質電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0142】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱等により電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0143】
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム等よりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル等よりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0144】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。第2の実施の形態において、正極活物質は、第1の実施の形態の正極活物質を用いることができる。以下、正極21、負極22、セパレータ23について、詳細に説明する。
【0145】
[正極]
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔等の金属箔により構成されている。
【0146】
正極活物質層21Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0147】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化I)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化II)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、(化III)、(化IV)もしくは(化V)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、(化VI)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または(化VII)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)またはLieFePO4(e≒1)などがある。
【0148】
(化I)
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0149】
(化II)
LiaM2bPO4
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0150】
(化III)
LifMn(1-g-h)NigM3h(2-j)k
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0151】
(化IV)
LimNi(1-n)M4n(2-p)q
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0152】
(化V)
LirCo(1-s)M5s(2-t)u
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0153】
(化VI)
LivMn(2-w)M6wxy
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0154】
(化VII)
LizM7PO4
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0155】
更にまた、より高い電極充填性とサイクル特性が得られるという観点から、上記リチウム含有化合物のいずれかより成る芯粒子の表面を、他のリチウム含有化合物のいずれかより成る微粒子で被覆した複合粒子としてもよい。
【0156】
この他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などが挙げられる。酸化物は、例えば、酸化バナジウム(V25)、二酸化チタン(TiO2)または二酸化マンガン(MnO2)などである。二硫化物は、例えば、二硫化鉄(FeS2)、二硫化チタン(TiS2)または二硫化モリブデン(MoS2)などである。カルコゲン化物は、特に層状化合物やスピネル型化合物が好ましく、例えば、セレン化ニオブ(NbSe2)などである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどである。もちろん、正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0157】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0158】
[負極]
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。
【0159】
負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔またはステンレス(SUS)等の金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法としては、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などが挙げられる。この電解処理とは、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に「電解銅箔」と呼ばれている。なお、負極集電体22Aの表面粗さは、任意に設定可能である。
【0160】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の導電剤および結着剤を含んで構成されている。
【0161】
なお、この非水電解質電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0162】
また、この非水電解質電池は、完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、例えば4.20V以上6.00V以下の範囲内になるように設計されている。また、例えば、満充電状態における開回路電圧が4.25V以上6.00V以下とされることが好ましい。満充電状態における開回路電圧が4.25V以上とされる場合は、4.20Vの電池と比較して、同じ正極活物質であっても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整される。これにより、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
【0163】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0164】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0165】
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0166】
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0167】
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0168】
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0169】
中でも、この負極材料としては、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0170】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0171】
なお、このSnCoC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)等が凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集あるいは結晶化を抑制することができるからである。
【0172】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0173】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0174】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレン等よりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0175】
セパレータ23には、液状の非水電解質である非水電解液が含浸されている。この非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0176】
セパレータ23は、ポリエチレン以外にポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のいずれかを含むようにてもよい。また、セラミック製の多孔質膜により構成されており、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうち数種を混合して多孔質膜としてもよい。さらに、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質膜の表面に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)ならびにアルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)等のセラミックスを塗布してもよい。また、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
【0177】
[非水電解液またはゲル電解質]
非水電解液は、第1の実施の形態の非水電解液を用いることができる。また、非水電解液をマトリクスポリマに保持させたゲル電解質を用いても良い。
【0178】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
[正極の製造方法]
正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。
【0179】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0180】
[非水電解液の調製]
非水電解液は、非水溶媒に対して電解質塩を溶解させて調製する。
【0181】
[非水電解質電池の組み立て]
正極集電体21Aに正極リード25を溶接等により取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接等により取り付ける。その後、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し巻回電極体20とする。正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接する。この後、巻回電極体20の巻回面を一対の絶縁板12,13で挟み、電池缶11の内部に収納する。巻回電極体20を電池缶11の内部に収納したのち、非水電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した非水電解質電池が形成される。
【0182】
この非水電解質電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、非水電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、非水電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0183】
〔効果〕
第2の実施の形態の非水電解質電池は、非水電解質電池の充電時における電気化学的な反応に起因する充電終止電圧抑制と、放電容量の均一化の双方について高い効果を得ることができる。
【0184】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、第1の実施の形態における非水電解質を用いたラミネートフィルム型非水電解質電池について説明する。第3の実施の形態では、ゲル電解質を用いた例について説明する。
【0185】
(3−1)非水電解質電池の構成
図3は、第3の実施の形態にかかる非水電解質電池の構成を表すものである。この非水電解質電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものである。
【0186】
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0187】
外装部材40は、例えば、金属層の両面に樹脂層が形成されたラミネートフィルムからなる。ラミネートフィルムは、金属層のうち電池外側に露出する面に外側樹脂層が形成され、巻回電極体30等の発電要素に対向する電池内側面に内側樹脂層が形成される。
【0188】
金属層は、水分、酸素、光の進入を防ぎ内容物を守る最も重要な役割を担っており、軽さ、伸び性、価格、加工のしやすさからアルミニウム(Al)が最もよく使われる。外側樹脂層は、外観の美しさや強靱さ、柔軟性等を有し、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料が用いられる。内側樹脂層は、熱や超音波で溶け、互いに融着する部分であるため、ポリオレフィンが適切であり、無延伸ポリプロピレン(CPP)が多用される。金属層と外側樹脂層および内側樹脂層との間には、必要に応じて接着剤層を設けてもよい。
【0189】
外装部材40は、例えば深絞りにより内側樹脂層側から外側樹脂層の方向に向けて形成された、巻回電極体30を収容する凹部が設けられており、内側樹脂層が巻回電極体30と対向するように配設されている。外装部材40の対向する内側樹脂層同士は、凹部の外縁部において融着等により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外装部材40の内側樹脂層と、金属材料からなる正極リード31および負極リード32との接着性を向上させるための密着フィルム41が配置されている。密着フィルム41は、金属材料との接着性の高い樹脂材料からなり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンや、これら材料が変性された変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0190】
なお、外装部材40は、金属層がアルミニウム(Al)からなるアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0191】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35およびゲル電解質からなる電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は必要に応じて保護テープ37により保護されている。
【0192】
[正極]
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。正極集電体33A、正極活物質層33Bの構成は、第2の実施の形態における正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bと同様である。
【0193】
[負極]
負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。負極集電体34A、負極活物質層34Bの構成は、第2の実施の形態における負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
【0194】
[セパレータ]
セパレータ35は、第2の実施の形態におけるセパレータ23と同様である。
【0195】
[非水電解質]
電解質層36は、第1の実施の形態に記載されたゲル電解質である。ゲル電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。また、第2の実施の形態に記載されたように、非水電解液を用いても良い。
【0196】
(3−2)非水電解質電池の製造方法
この非水電解質電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0197】
[正極および負極の製造方法]
正極33および負極34は、第2の実施の形態と同様の方法により作製することができる。
【0198】
[非水電解質電池の組み立て]
正極33および負極34のそれぞれに、非水電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。
【0199】
次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着等により密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3および図4に示した非水電解質電池が完成する。
【0200】
この非水電解質電池は、次のような方法で作製しても良い。非水電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。
【0201】
また、次のような方法で作製しても良い。セパレータ35の表面に高分子化合物を保持させ、外装部材40の内部に非水電解液を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えて高分子化合物に非水電解液を保持させることにより、ゲル状の電解質層36を形成する。
【0202】
〔効果〕
第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0203】
4.第4の実施の形態
第4の実施の形態では、第2の実施の形態および第3の実施の形態における非水電解質電池を用いた非水電解質電池が備えられた電池パックについて説明する。
【0204】
図5は、本技術の非水電解質電池を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303aとを備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。
【0205】
また、電池パックは、正極端子321および負極端子322を備え、充電時には正極端子321および負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321および負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0206】
組電池301は、複数の非水電解質電池301aを直列および/または並列に接続してなる。この非水電解質電池301aは本技術の非水電解質電池である。なお、図5では、6つの非水電解質電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0207】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302aおよびダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303aおよびダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けてもよい。
【0208】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0209】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0210】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301およびそれを構成する各非水電解質電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0211】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311および電流測定部313から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、非水電解質電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0212】
ここで、例えば、非水電解質電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0213】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302bおよび303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0214】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302aおよび放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0215】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各非水電解質電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、非水電解質電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0216】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0217】
5.第5の実施の形態
第5の実施の形態では、第2および第3の実施の形態にかかる非水電解質電池および第4の実施の形態にかかる電池パックを搭載した電子機器、電動車両および蓄電装置等の機器について説明する。第2〜第4の実施の形態で説明した非水電解質電池および電池パックは、電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に電力を供給するために使用することができる。
【0218】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0219】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源または補助用電源として用いられる。
【0220】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用または発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0221】
以下では、上述した適用例のうち、本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0222】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0223】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0224】
(5−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図6を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0225】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。
【0226】
蓄電装置103に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0227】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0228】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0229】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていてもよい。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信してもよいが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信してもよい。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されてもよい。
【0230】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、発電装置104、電力消費装置105、各種のセンサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていてもよい。
【0231】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0232】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されてもよいし、単独で構成されていてもよい。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0233】
(5−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図7を参照して説明する。図7に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0234】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0235】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0236】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0237】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両200が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0238】
バッテリー208は、ハイブリッド車両200の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0239】
図示しないが、非水電解質電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行う情報処理装置を備えていてもよい。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0240】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0241】
以下、実施例により本技術を詳細に説明する。なお、以下の各実施例および比較例で用いる化合物は下記の通りである。
【0242】
[過充電制御剤]
【化64】

【0243】
【化65】

【0244】
なお、上記各過充電制御剤のうち、後述する安全弁作動時間の測定を行った実施例に用いた過充電制御剤について、化合物反応時における正極電位(対Li/Li+)を下記表1に示す。
【表1】

【0245】
<実施例1−1−1>
[正極の作製]
炭酸リチウム(Li2CO3)と炭酸コバルト(CoCO3)とを0.5:1のモル比で混合した後、900℃空気中において5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を得た。続いて、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。最後に、厚さ12μmの帯状アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、コーティング装置を用いて正極合剤スラリーを均一に塗布および乾燥させた後、ロールプレス機を用いて圧縮成型して正極活物質層が形成された正極を作製した。
【0246】
[負極の作製]
負極活物質として平均粒径20μmの粒状黒鉛粉末96質量部と、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体のアクリル酸変性体1.5質量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1.5質量部と、適量の水とを攪拌し、負極合剤スラリーを調製した。次に、厚さ15μmの帯状銅箔からなる負極集電体の両面に、コーティング装置を用いて負極合剤スラリーを均一に塗布および乾燥させた後、ロールプレス機を用いて圧縮成型して負極活物質層が形成された負極を作製した。
【0247】
[非水電解液の調製]
炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を、質量比EC:DMC:EMC=30:40:30で混合して非水溶媒とした後、非水溶媒に電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/kgの濃度で溶解させた。続いて、電解質塩が溶解された非水溶媒に対して、過充電制御剤として上述の過充電制御剤(1−10)を、添加化合物として式(1−2)に示す化合物を溶解し、非水電解液を調製した。なお、過充電制御剤(1−10)は、非水電解液の全組成中における含有量が5.0質量%となるように混合させた。また、添加化合物は、非水電解液の全組成中における含有量が0.1質量%(過充電制御剤に対して2.0質量%)となるように混合させた。
【0248】
[円筒型非水電解質電池の組み立て]
正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リードを溶接した。また、負極集電体の一端にニッケル製の負極リードを溶接した。続いて、セパレータを介して正極と負極とを積層した後、長手方向に巻回し、粘着テープで巻き終わり部分を固定することにより、巻回電極体を作製した。セパレータとしては、厚さ25μmの微孔性ポリプロピレンフィルムを用いた。続いて、巻回電極体の巻回中心にセンターピンを挿入した後、一対の絶縁板で巻回電極体を挟みながら、ニッケルめっきされた鉄製の電池缶の内部に収納した。この際、正極リードを安全弁機構に溶接すると共に、負極リードを電池缶に溶接した。
【0249】
続いて、減圧方式により電池缶の内部に非水電解液を注入してセパレータに含浸させた。最後に、ガスケットを介して電池缶の開口端部に電池蓋、安全弁機構および熱感抵抗素子をかしめて、それらを固定した。これにより、円筒型非水電解質電池(試験用電池)が完成した。なお、この試験用電池を作製する場合には、正極活物質層の厚さを調節して、満充電時において負極にリチウム金属が析出しないようにした。
【0250】
<実施例1−1−2>〜<実施例1−1−29>
非水電解液に混合する過充電制御剤を、過充電制御剤(1−10)に変えて表2に示す各過充電制御剤を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして実施例1−1−2〜実施例1−1−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0251】
[電池の評価]
(a)平均放電容量
各実施例および各比較例の試験用電池を、23℃の雰囲気中で0.2Cの充電電流で電池電圧4.2Vまで定電流充電を行った後、4.2Vにて定電圧充電を行い、総充電時間が8時間となった時点で充電を終了した。その後、0.2Cの放電電流で電池電圧3.0Vまで定電流放電を行った。なお、「0.2C」とは、理論容量を5時間で放電しきる電流値である。この充放電サイクルを2サイクル行った後、3サイクル目に上限電圧を4.8Vとして定電流充電および定電圧充電を行った後、電池電圧3.0Vまで定電流放電を行ったときの放電容量を測定した。ここで、平均放電容量は、各実施例および各比較例の試験用電池を10本ずつ準備してそれぞれ放電容量を測定し、10本の試験用電池の放電容量から得た平均値とした。
【0252】
(b)放電容量の標準偏差
各実施例および各比較例について、(a)で測定した10本の試験用電池それぞれの電池容量の標準偏差を求めた。
【0253】
(c)安全弁作動時間
(a)と同様の充放電条件にて充放電を2サイクル行った後、3サイクル目に0.5Cの充電電流で電池電圧4.8Vまで定電流充電を行った後、4.8Vにて定電圧充電を行い、総充電時間が5時間となった時点で充電を終了した。このような充電状態の試験用電池を80℃の雰囲気中で保存し、試験用電池の安全弁が作動してガスが噴出するまでの時間を確認した。なお、安全弁作動時間の確認は、実施例1−1−1、実施例1−1−7実施例1−1−11、実施例1−1−14、実施例1−1−17、実施例1−1−19〜実施例1−1−22、実施例1−1−24〜実施例1−1−26、実施例1−1−28および実施例1−1−29についてのみ行った。
【0254】
下記の表2に、評価結果を示す。なお、表2では、「質量%」を「wt%」と示す。また、以下の各表においても同様に示す。
【0255】
【表2】

【0256】
<実施例1−2−1>〜<実施例1−2−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物に変えて式(2−1)に示す化合物を用いた以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−2−1〜実施例1−2−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0257】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0258】
下記の表3に、評価結果を示す。
【0259】
【表3】

【0260】
<実施例1−3−1>〜<実施例1−3−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物に変えて式(3)に示す化合物を用いた以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−3−1〜実施例1−3−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0261】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0262】
下記の表4に、評価結果を示す。
【0263】
【表4】

【0264】
<実施例1−4−1>〜<実施例1−4−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物に変えて式(4)に示す化合物を用いた以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−4−1〜実施例1−4−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0265】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0266】
下記の表5に、評価結果を示す。
【0267】
【表5】

【0268】
<実施例1−5−1>〜<実施例1−5−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物(含有量0.1質量%)に加えて、式(4)に示す化合物を非水電解液の全組成中における含有量が0.1質量%となるように混合した以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−5−1〜実施例1−5−29の試験用電池をそれぞれ作製した。なお、添加化合物の合計は過充電制御剤に対して4.0質量%であった。
【0269】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0270】
下記の表6に、評価結果を示す。
【0271】
【表6】

【0272】
<実施例1−6−1>〜<実施例1−6−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物に変えて、式(2−1)に示す化合物と式(4)に示す化合物とを、非水電解液の全組成中における含有量がそれぞれ0.1質量%(合計0.2質量%)となるように混合した以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−6−1〜実施例1−6−29の試験用電池をそれぞれ作製した。なお、添加化合物の合計は過充電制御剤に対して4.0質量%であった。
【0273】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0274】
下記の表7に、評価結果を示す。
【0275】
【表7】

【0276】
<実施例1−7−1>〜<実施例1−7−29>
添加化合物として、式(1−2)に示す化合物に変えて、式(3)に示す化合物と式(4)に示す化合物を、非水電解液の全組成中における含有量がそれぞれ0.1質量%(合計0.2質量%)となるように混合した以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして実施例1−7−1〜実施例1−7−29の試験用電池をそれぞれ作製した。なお、添加化合物の合計は過充電制御剤に対して4.0質量%であった。
【0277】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0278】
下記の表8に、評価結果を示す。
【0279】
【表8】

【0280】
<比較例1−1−1>〜<比較例1−1−29>
添加化合物を混合しない以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして比較例1−7−1〜比較例1−7−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0281】
<比較例1−1−30>
過充電制御剤および添加化合物の双方を混合しない以外は実施例1−1−1と同様にして比較例1−7−30の試験用電池を作製した。
【0282】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0283】
下記の表9に、評価結果を示す。
【0284】
【表9】

【0285】
表9の比較例1−1−1〜比較例1−1−29と比較例1−1−30とから分かるように、過充電制御剤を添加した場合と添加しない場合では放電容量の標準偏差が小さく、放電容量のばらつきが小くなった。また、安全弁作動時間がやや長くなり、電池内部におけるガス発生を抑制できることが分かった。
【0286】
一方、表2〜表5および表9から分かるように、電圧の上昇を抑制する過充電制御剤とともに、本技術の添加化合物を非水電解液に混合した実施例1−1−1〜実施例1−4−29は、過充電制御剤のみを混合し、添加化合物を混合しなかった比較例1−1−1〜比較例1−1−29よりもさらに放電容量のばらつきが生じにくくなった。
【0287】
これは、実施例1−1−1〜実施例1−4−29の試験用電池は、非水電解液中に過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を含むため、本技術の添加化合物が含まれない上記比較例と比較して過充電制御剤の電極間における移動性が高くなり、過充電制御剤の添加効果をより十分に得ることができるためである。
【0288】
また、本技術の添加化合物を混合して用いても同様の効果が得られることが分かった。すなわち、式(1−2)と式(4)の添加化合物を混合して用いた実施例1−5−2〜実施例1−5−29、式(2−1)と式(4)の添加化合物を混合して用いた実施例1−6−2〜実施例1−6−29、式(3)と式(4)の添加化合物を混合して用いた実施例1−7−2〜実施例1−7−29についても、同じ過充電制御剤を用いた実施例1−1−1〜実施例1−4−29のうちのそれぞれと同等かそれ以上効果が得られ、特に、式(1−2)もしくは式(2−1)と、式(4)とを組み合わせることで放電容量のばらつきがより小さくなった。
【0289】
また、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を用いた各実施例では、対応する比較例に比べて安全弁作動時間が長くなった。このため、電池内部におけるガス発生を抑制できることが分かった。
【0290】
以下の実施例では、過充電制御剤の添加量を変えて効果を確認した。
【0291】
<実施例1−8−1>
非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が1.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が10.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0292】
<実施例1−8−2>
非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が10.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が1.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0293】
<実施例1−8−3>
非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が25.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が0.4質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0294】
<実施例1−8−4>〜<実施例1−8−6>
過充電制御剤として過充電制御剤(1−18)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0295】
<実施例1−8−7>〜<実施例1−8−9>
過充電制御剤として過充電制御剤(4−71)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0296】
<実施例1−8−10>〜<実施例1−8−12>
過充電制御剤として過充電制御剤(5−3)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0297】
<実施例1−8−13>〜<実施例1−8−15>
過充電制御剤として過充電制御剤(6−9)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0298】
<実施例1−8−16>〜<実施例1−8−18>
過充電制御剤として過充電制御剤(8−4)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0299】
<実施例1−8−19>〜<実施例1−8−21>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−1)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0300】
<実施例1−8−22>〜<実施例1−8−24>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−2)を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−3と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0301】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0302】
下記の表10に、評価結果を示す。
【0303】
【表10】

【0304】
表10から分かるように、過充電制御剤の添加量を変えた場合であっても、各比較例より標準偏差が顕著に小さく、放電容量ばらつき抑制効果が確認できた。また、実施例1−8−1〜実施例1−8−3および実施例1−1−1から、過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が少ない程放電容量が小さくなるが、放電容量のばら付きが少なくなる傾向にあることが分かった。
【0305】
以下の実施例では、非水溶媒の組成を変えて効果を確認した。
【0306】
<実施例1−9−1>
非水電解液の非水溶媒の組成を、炭酸エチレン(EC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を用いて質量比EC:FEC:DMC:EMC=20:10:40:30とした以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0307】
<実施例1−9−2>
非水溶媒の組成を、炭酸エチレン(EC)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を用いて質量比EC:FEC:DMC:EMC=20:10:40:30とし、非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が10.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が1.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0308】
<実施例1−9−3>〜<実施例1−9−4>
過充電制御剤として過充電制御剤(1−18)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0309】
<実施例1−9−5>〜<実施例1−9−6>
過充電制御剤として過充電制御剤(4−71)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0310】
<実施例1−9−7>〜<実施例1−9−8>
過充電制御剤として過充電制御剤(5−3)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0311】
<実施例1−9−9>〜<実施例1−9−10>
過充電制御剤として過充電制御剤(6−9)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0312】
<実施例1−9−11>〜<実施例1−9−12>
過充電制御剤として過充電制御剤(8−4)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池を作製した。
【0313】
<実施例1−9−13>〜<実施例1−9−14>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−1)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0314】
<実施例1−9−15>〜<実施例1−9−16>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−2)を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0315】
<実施例1−10−1>
非水電解液の非水溶媒の組成を、炭酸エチレン(EC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を用いて質量比EC:VC:DMC:EMC=29:1:40:30とした以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0316】
<実施例1−10−2>
非水溶媒の組成を、炭酸エチレン(EC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸エチルメチル(EMC)を用いて質量比EC:VC:DMC:EMC=29:1:40:30とし、非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が10.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が1.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0317】
<実施例1−10−3>〜<実施例1−10−4>
過充電制御剤として過充電制御剤(1−18)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0318】
<実施例1−10−5>〜<実施例1−10−6>
過充電制御剤として過充電制御剤(4−71)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0319】
<実施例1−10−7>〜<実施例1−10−8>
過充電制御剤として過充電制御剤(5−3)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0320】
<実施例1−10−9>〜<実施例1−10−10>
過充電制御剤として過充電制御剤(6−9)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0321】
<実施例1−10−11>〜<実施例1−10−12>
過充電制御剤として過充電制御剤(8−4)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0322】
<実施例1−10−13>〜<実施例1−10−14>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−1)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0323】
<実施例1−10−15>〜<実施例1−10−16>
過充電制御剤として過充電制御剤(12−2)を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−2と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0324】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0325】
下記の表11および表12に、評価結果を示す。
【0326】
【表11】

【0327】
【表12】

【0328】
表11および表12から分かるように、非水溶媒としてハロゲン化環状炭酸エステルであるFECを含む実施例1−9−1および実施例1−9−2は、過充電制御剤の添加条件が同じであり、FECを含まない実施例1−1−1および実施例1−8−2と比較して標準偏差が低く、全体的に放電容量のばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。また、他の過充電制御剤を用いた場合にも同様に、過充電制御剤の添加条件が同じであり、FECを含まない実施例と比較して標準偏差が同等もしくは低く、全体的に放電容量のばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。
【0329】
また、非水溶媒として不飽和炭素結合環状炭酸エステルであるVCを含む場合も同様であった。
【0330】
以下の実施例では、非水電解液に対してさらに添加物を添加して効果を確認した。
【0331】
<実施例1−11−1>
非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が10.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が1.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させるとともに、さらに環状炭酸エステルであるトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を1.0質量%の濃度で添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0332】
<実施例1−11−2>〜<実施例1−11−8>
過充電制御剤(1−10)の変わりに、過充電制御剤(1−18)、過充電制御剤(4−71)、過充電制御剤(5−3)、過充電制御剤(6−9)、過充電制御剤(8−4)、過充電制御剤(12−1)および過充電制御剤(12−2)をそれぞれ用いた以外は実施例1−11−1と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0333】
<実施例1−11−9>〜<実施例1−11−16>
DFECの代わりに、ジニトリル化合物であるスクシノニトリルを添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0334】
<実施例1−11−17>〜<実施例1−11−24>
DFECの代わりに、酸無水物である無水コハク酸を添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0335】
<実施例1−11−25>〜<実施例1−11−32>
DFECの代わりに、酸無水物である無水プロパンジスルホン酸を添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0336】
<実施例1−11−33>〜<実施例1−11−40>
DFECの代わりに、環状スルホン酸エステルであるプロペンスルトンを添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0337】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0338】
下記の表13および表14に、評価結果を示す。なお、表中、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンについては単にDFECと示す。
【0339】
【表13】

【0340】
【表14】

【0341】
10.0質量%の過充電制御剤(1−10)が混合され、上述のDFEC等のさらなる添加物が混合されていない実施例1−8−2と、10.0質量%の過充電制御剤(1−10)と1.0質量%のDFECが混合された実施例1−11−1とを比較すると、実施例1−11−1は平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきが少なかった。
【0342】
また、過充電制御剤(1−10)の代わりに過充電制御剤(1−18)、過充電制御剤(4−71)、過充電制御剤(5−3)、過充電制御剤(6−9)、過充電制御剤(8−4)、過充電制御剤(12−1)および過充電制御剤(12−2)を用いた実施例1−11−2〜実施例1−11−8についても同様により高い効果が得られた。
【0343】
同様に、スクシノニトリル、無水コハク酸、無水プロパンジスルホン酸およびプロペンスルトンを添加した実施例1−11−9〜実施例1−11−16、実施例1−11−17〜実施例1−11−24、実施例1−11−25〜実施例1−11−32および実施例1−11−33〜実施例1−11−40のそれぞれも、実施例1−8−2より平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきが少なかった。
【0344】
これは、非水電解液に環状炭酸エステル、ニトリル化合物、酸無水物および環状スルホン酸エステルを含むことにより、非水電解液の化学的安定性がより向上し、本技術の添加化合物の効果が得られやすくなったためであると考えられる。
【0345】
また、各実施例において安全弁作動時間が長くなった。このため、電池内部におけるガス発生を抑制できることが分かった。
【0346】
以下の実施例では、非水電解液に対して六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とともにその他の電解質塩を添加して効果を確認した。
【0347】
<実施例1−12−1>
非水電解液の全組成中における過充電制御剤の含有量が10.0質量%(過充電制御剤に対する添加化合物の添加量が1.0質量%)となるように過充電制御剤(1−10)を混合させるとともに、さらに電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を0.9mol/kgと、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)0.1mol/kgを溶解させた非水電解液を用いた以外は実施例1−1−1と同様にして試験用電池を作製した。
【0348】
<実施例1−12−2>〜<実施例1−12−8>
過充電制御剤(1−10)の変わりに、過充電制御剤(1−18)、過充電制御剤(4−71)、過充電制御剤(5−3)、過充電制御剤(6−9)、過充電制御剤(8−4)、過充電制御剤(12−1)および過充電制御剤(12−2)をそれぞれ用いた以外は実施例1−12−1と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0349】
<実施例1−12−9>〜<実施例1−12−16>
四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)の代わりに、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−12−1〜実施例1−12−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0350】
<実施例1−12−17>〜<実施例1−12−24>
四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)の代わりに、式(14−6)に示すリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)を添加した非水電解液を用いた以外は実施例1−12−1〜実施例1−12−8と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0351】
[電池の評価]
各実施例について、実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0352】
下記の表15に、評価結果を示す。
【0353】
【表15】

【0354】
10.0質量%の過充電制御剤(1−10)が混合され、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムのみを使用した実施例1−8−2と、10.0質量%の過充電制御剤(1−10)が混合され、電解質塩として六フッ化リン酸リチウムの一部を四フッ化ホウ酸リチウムに置き換えた実施例1−12−1とを比較すると、実施例1−12−1は平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきが少なかった。また、過充電制御剤(1−10)の代わりに過充電制御剤(1−18)、過充電制御剤(4−71)、過充電制御剤(5−3)、過充電制御剤(6−9)、過充電制御剤(8−4)、過充電制御剤(12−1)および過充電制御剤(12−2)を用いた実施例1−12−2〜実施例1−12−8についても場合も同様により高い効果が得られた。
【0355】
同様に、四フッ化ホウ酸リチウムの代わりにリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)またはリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)を用いた実施例1−12−9〜実施例1−12−16および実施例1−12−17〜実施例1−12−24のそれぞれについても、本技術の添加化合物を混合することによる高い効果が得られた。
【0356】
以下の実施例では、負極活物質をスズ(Sn)とコバルト(Co)と炭素(C)とを構成元素として含むSnCoC含有材料に変えて効果を確認した。
【0357】
<実施例2−1−1>〜<実施例2−1−29>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりにスズ(Sn)とコバルト(Co)と炭素(C)とを構成元素として含むSnCoC含有材料を用いた。SnCoC含有材料の組成を分析したところ、スズの含有量は49.5質量%、コバルトの含有量は29.7質量%、炭素の含有量は19.8質量%、スズおよびコバルトの割合(Co/(Sn+Co))は37.5質量%であった。この際、スズおよびコバルトの含有量については誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分析で測定し、炭素の含有量については炭素・硫黄分析装置で測定した。また、X線回折法によりSnCoC含有材料を分析したところ、2θ=20°〜50°の範囲に半値幅を有する回折ピークが観察された。さらに、XPSでSnCoC含有材料を分析したところ、図8に示すようにピークP1が得られた。このピークP1を解析すると、284.8eVに現れた表面汚染炭素のピークP2とともに、それよりも低エネルギー側の領域(284.5eVよりも低い領域)にSnCoC含有材料中におけるC1sのピークP3が得られた。この結果から、SnCoC含有材料中の炭素は他の元素と結合していることが確認された。
【0358】
次に、負極活物質として、上述のSnCoC含有材料粉末80質量部と、導電剤として黒鉛12質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。最後に、厚さ15μmの帯状銅箔からなる負極集電体の両面に、コーティング装置を用いて負極合剤スラリーを均一に塗布および乾燥させた後、ロールプレス機を用いて圧縮成型して負極活物質層が形成された負極を作製した。これ以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0359】
[電池の評価]
各実施例について、放電終止電圧を2.5Vとした以外は実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0360】
下記の表16に、評価結果を示す。
【0361】
【表16】

【0362】
<実施例2−2−1>〜<実施例2−2−29>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−2−1〜実施例1−2−29と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0363】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0364】
下記の表17に、評価結果を示す。
【0365】
【表17】

【0366】
<実施例2−3−1>〜<実施例2−3−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−3−1〜実施例1−3−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0367】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0368】
下記の表18に、評価結果を示す。
【0369】
【表18】

【0370】
<実施例2−4−1>〜<実施例2−4−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−4−1〜実施例1−4−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0371】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0372】
下記の表19に、評価結果を示す。
【0373】
【表19】

【0374】
<実施例2−5−1>〜<実施例2−5−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−5−1〜実施例1−5−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0375】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0376】
下記の表20に、評価結果を示す。
【0377】
【表20】

【0378】
<実施例2−6−1>〜<実施例2−6−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−6−1〜実施例1−6−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0379】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0380】
下記の表21に、評価結果を示す。
【0381】
【表21】

【0382】
<実施例2−7−1>〜<実施例2−7−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−3−1〜実施例1−3−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0383】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0384】
下記の表22に、評価結果を示す。
【0385】
【表22】

【0386】
<比較例2−1−1>〜<比較例2−1−30>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は比較例1−1−1〜比較例1−1−30と同様にして試験用電池を作製した。
【0387】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0388】
下記の表23に、評価結果を示す。
【0389】
【表23】

【0390】
表16〜表22および表23から分かるように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合であっても、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を非水電解液に混合することにより、炭素系材料を用いた場合と同様に放電容量のばらつきを抑える効果を得ることができる。
【0391】
また、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を用いた各実施例では、対応する比較例に比べて安全弁作動時間が長くなった。このため、電池内部におけるガス発生を抑制できることが分かった。特に、SnCoC含有材料を負極活物質に用いた場合には、黒鉛を負極活物質として用いた場合と比較して電池内部におけるガス発生量が増加する。このため、SnCoC含有材料を負極活物質として用いた電池において、本技術の添加化合物を加えて安全弁作動時間を長く保つことは非常に好ましい構成である。
【0392】
以下の実施例では、負極活物質をSnCoC含有材料に変えるとともに、過充電制御剤の添加量を変えて効果を確認した。
【0393】
<実施例2−8−1>〜<実施例2−8−24>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−24と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0394】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0395】
下記の表24に、評価結果を示す。
【0396】
【表24】

【0397】
表24から分かるように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合であっても、過充電制御剤の添加量が一定の範囲内において各比較例より標準偏差が顕著に小さく、放電容量ばらつき抑制効果が確認できた。
【0398】
以下の実施例では、負極活物質をSnCoC含有材料に変えるとともに、非水溶媒の組成を変えて効果を確認した。
【0399】
<実施例2−9−1>〜<実施例2−9−16>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−16と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0400】
<実施例2−10−1>〜<実施例2−10−16>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−16と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0401】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0402】
下記の表25および表26に、評価結果を示す。
【0403】
【表25】

【0404】
【表26】

【0405】
表25および表26から分かるように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合であっても、非水電解液の非水溶媒にハロゲン化環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)または不飽和炭素結合環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)を混合した上述の各実施例は、同条件の実施例と比較して標準偏差が同等もしくは低く、全体的に放電容量のばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。
【0406】
以下の実施例では、負極活物質をSnCoC含有材料に変えるとともに、非水電解液に対してさらに添加物を添加して効果を確認した。
【0407】
<実施例2−11−1>〜<実施例2−11−40>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−40と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0408】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0409】
下記の表27および表28に、評価結果を示す。
【0410】
【表27】

【0411】
【表28】

【0412】
表27から分かるように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いた場合であっても、非水電解液に環状炭酸エステルであるトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)を混合することにより、これらを含まない実施例2−8−2、実施例2−8−5、実施例2−8−8、実施例2−8−11、実施例2−8−14、実施例2−8−17、実施例2−8−20および実施例2−8−23以上に平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さく、放電容量のばらつきが少なくなる傾向にあることが分かった。
【0413】
また、表27および表28から、ジニトリル化合物であるスクシノニトリル、酸無水物である無水コハク酸または無水プロパンジスルホン酸、ならびに環状スルホン酸エステルであるプロペンスルトンを混合した場合も同様に、平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さく、放電容量のばらつきが少なくなる傾向にあることが分かった。
【0414】
また、電圧上昇を抑制する過充電制御剤、本技術の添加化合物とともに、環状炭酸エステルを用いた各実施例では、対応する比較例に比べて安全弁作動時間が長くなった。
【0415】
以下の実施例では、負極活物質を金属合金系材料に変えるとともに、非水電解液に対して六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とともにその他の電解質塩を添加して効果を確認した。
【0416】
<実施例2−12−1>〜<実施例2−12−24>
負極活物質として、粒状黒鉛粉末の代わりに実施例2−1−1と同様のSnCoC含有材料を用いた以外は実施例1−12−1〜実施例1−12−24と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0417】
[電池の評価]
各実施例について、実施例2−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0418】
下記の表29に、評価結果を示す。
【0419】
【表29】

【0420】
表29から分かるように、負極活物質としてSnCoC含有材料を用いるとともに、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と他の化合物とを混合して用いた場合であっても、本技術の添加化合物により、平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきがより少なくなった。
【0421】
以下の実施例では、負極活物質をケイ素に変えて効果を確認した。
【0422】
<実施例3−1−1>〜<実施例3−1−29>
負極活物質として粒状黒鉛粉末の代わりにケイ素を用いた。負極活物質として平均粒径1μmのケイ素粉末95質量部と、結着剤としてポリイミド5質量部とを混合して負極合剤とし、負極合剤とN−メチル−2−ピロリドンとを混合して負極合剤スラリーを調製した。次に、厚さ15μmの帯状銅箔からなる負極集電体の両面に、コーティング装置を用いて負極合剤スラリーを均一に塗布および乾燥させ、ロールプレス機を用いて圧縮成型した後、真空雰囲気下において400℃で12時間加熱して負極活物質層を形成し、負極を作製した。これ以外は実施例1−1−1〜実施例1−1−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0423】
[電池の評価]
各実施例について、放電終止電圧を2.5Vとした以外は実施例1−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0424】
下記の表30に、評価結果を示す。
【0425】
【表30】

【0426】
<実施例3−2−1>〜<実施例3−2−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−2−1〜実施例1−2−29と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0427】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0428】
下記の表31に、評価結果を示す。
【0429】
【表31】

【0430】
<実施例3−3−1>〜<実施例3−3−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−3−1〜実施例1−3−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0431】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0432】
下記の表32に、評価結果を示す。
【0433】
【表32】

【0434】
<実施例3−4−1>〜<実施例3−4−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−4−1〜実施例1−4−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0435】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0436】
下記の表33に、評価結果を示す。
【0437】
【表33】

【0438】
<実施例3−5−1>〜<実施例3−5−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−5−1〜実施例1−5−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0439】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0440】
下記の表34に、評価結果を示す。
【0441】
【表34】

【0442】
<実施例3−6−1>〜<実施例3−6−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−6−1〜実施例1−6−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0443】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0444】
下記の表35に、評価結果を示す。
【0445】
【表35】

【0446】
<実施例3−7−1>〜<実施例3−7−29>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−3−1〜実施例1−3−29と同様にして試験用電池を作製した。
【0447】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0448】
下記の表36に、評価結果を示す。
【0449】
【表36】

【0450】
<比較例3−1−1>〜<比較例3−1−30>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は比較例1−1−1〜比較例1−1−30と同様にして試験用電池を作製した。
【0451】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0452】
下記の表37に、評価結果を示す。
【0453】
【表37】

【0454】
表30〜表36および表37から分かるように、負極活物質としてケイ素を用いた場合であっても、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を非水電解液に混合することにより、炭素系材料を用いた場合と同様に放電容量のばらつきを抑える効果を得ることができる。
【0455】
また、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を用いた各実施例では、対応する比較例に比べて安全弁作動時間が長くなった。このため、電池内部におけるガス発生を抑制できることが分かった。
【0456】
以下の実施例では、負極活物質をケイ素に変えるとともに、過充電制御剤の添加量を変えて効果を確認した。
【0457】
<実施例3−8−1>〜<実施例3−8−24>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−8−1〜実施例1−8−24と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0458】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0459】
下記の表38に、評価結果を示す。
【0460】
【表38】

【0461】
表38から分かるように、負極活物質としてケイ素を用いた場合であっても、過充電制御剤の添加量が一定の範囲内において各比較例より標準偏差が顕著に小さく、放電容量ばらつき抑制効果が確認できた。
【0462】
以下の実施例では、負極活物質をケイ素に変えるとともに、非水溶媒の組成を変えて効果を確認した。
【0463】
<実施例3−9−1>〜<実施例3−9−16>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−9−1〜実施例1−9−16と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0464】
<実施例3−10−1>〜<実施例3−10−16>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−10−1〜実施例1−10−16と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0465】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0466】
下記の表39および表40に、評価結果を示す。
【0467】
【表39】

【0468】
【表40】

【0469】
表39および表40から分かるように、負極活物質としてケイ素を用いた場合であっても、非水電解液の非水溶媒にハロゲン化環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)または不飽和炭素結合環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)を混合した上述の各実施例は、これらを含まない実施例と比較して標準偏差が同等もしくは低く、全体的に放電容量のばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。
【0470】
以下の実施例では、負極活物質をケイ素に変えるとともに、非水電解液に対してさらに添加物を添加して効果を確認した。
【0471】
<実施例3−11−1>〜<実施例3−11−40>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−11−1〜実施例1−11−40と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0472】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めるとともに、(c)安全弁作動時間を確認した。
【0473】
下記の表41および表42に、評価結果を示す。
【0474】
【表41】

【0475】
【表42】

【0476】
表41から分かるように、負極活物質としてケイ素を用いた場合であっても、非水電解液に環状炭酸エステルであるトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)、ジニトリル化合物であるスクシノニトリル、酸無水物である無水コハク酸または無水プロパンジスルホン酸、ならびに環状スルホン酸エステルであるプロペンスルトンを混合することにより、これらを含まない実施例と比較して平均放電容量が大きく、放電容量のばらつきが少なくなる傾向にあり、安全弁作動時間が長くなった。
【0477】
以下の実施例では、負極活物質をケイ素に変えるとともに、非水電解液に対して六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とともにその他の電解質塩を添加して効果を確認した。
【0478】
<実施例3−12−1>〜<実施例3−12−24>
粒状黒鉛粉末の代わりに、実施例3−1−1と同様のケイ素を負極活物質として用いた負極とした以外は実施例1−12−1〜実施例1−12−24と同様にして試験用電池をそれぞれ作製した。
【0479】
[電池の評価]
各実施例について、実施例3−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0480】
下記の表43に、評価結果を示す。
【0481】
【表43】

【0482】
表43から分かるように、負極活物質としてケイ素を用い、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と他の化合物とを混合して用いた場合であっても、本技術の添加化合物により、平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきがより少なくなった。
【0483】
以下の実施例では、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いるとともに、ラミネートフィルムによって外装されたラミネート型電池を試験用電池として効果を確認した。
【0484】
<実施例4−1−1>
[正極の作製]
実施例1−1−1と同様にして得たリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を98質量部と、導電剤としてケッチェンブラック0.8質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.2質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、厚さ12μmの帯状アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、コーティング装置を用いて正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥させた。最後に、乾燥させた正極合剤をロールプレス機を用いて圧縮成型して正極活物質層が形成された正極を作製した。
【0485】
[負極の作製]
負極活物質としてチタン酸リチウム(Li4Ti512)85質量部と、導電剤として黒鉛10質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、N−メチル−2−ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、厚さ18μmの帯状銅箔からなる負極集電体の両面に、コーティング装置を用いて負極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥させた。最後に、乾燥させた負極合剤をロールプレス機を用いて圧縮成型して負極活物質層が形成された負極を作製した。
【0486】
[非水電解液の調製]
非水電解液は、実施例1−1−1と同様に、電亜上昇を抑制する過充電制御剤(1−10)とともに添加化合物として式(1−2)に示す化合物を溶解させたものとした。
【0487】
[ラミネート型非水電解質電池の組み立て]
正極集電体の一端にアルミニウム製の正極リードを溶接した。また、負極集電体の一端にニッケル製の負極リードを溶接した。続いて、セパレータを介して正極と負極とを積層した後、長手方向に扁平形状に巻回し、粘着テープで巻き終わり部分を固定することにより、巻回電極体を作製した。セパレータとしては、厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを用いた。
【0488】
続いて、巻回電極体を外装部材の間に挟み込んだのち、一辺を除いて外装部材の外縁部同士を熱融着することにより、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納した。外装部材としては、厚さ30μmのナイロンフィルムと、厚さ40μmのアルミニウム箔と、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとが順に積層された、総厚100μmで3層構造のアルミラミネートフィルムを用いた。続いて、外装部材の開口部から非水電解液を注入し、非水電解液をセパレータに含浸させることにより、巻回電極体を作製した。最後に、真空雰囲気中において外装部材の開口部を熱融着して封止した。これにより、ラミネートフィルム型非水電解質電池(試験用電池)が完成した。なお、この試験用電池を作製する場合には、正極活物質層の厚さを調節して、満充電時において負極にリチウム金属が析出しないようにした。
【0489】
<実施例4−1−2>〜<実施例4−1−29>
非水電解液を実施例1−1−2〜実施例1−1−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−1−2〜実施例4−1−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0490】
[電池の評価]
(a)平均放電容量
各実施例および各比較例の試験用電池を、23℃の雰囲気中で0.2Cの充電電流で電池電圧2.8Vまで定電流充電を行った後、2.8Vにて定電圧充電を行い、総充電時間が8時間となった時点で充電を終了した。その後、0.2Cの放電電流で電池電圧1.0Vまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを2サイクル行った後、3サイクル目に上限電圧を3.3Vとして定電流充電および定電圧充電を行った後、電池電圧1.0Vまで定電流放電を行ったときの放電容量を測定した。ここで、平均放電容量は、各実施例および各比較例の試験用電池を10本ずつ準備してそれぞれ放電容量を測定し、10本の試験用電池の放電容量から得た平均値とした。
【0491】
(b)放電容量の標準偏差
各実施例および各比較例について、(a)で測定した10本の試験用電池それぞれの電池容量の標準偏差を求めた。
【0492】
下記の表44に、評価結果を示す。
【0493】
【表44】

【0494】
<実施例4−2−1>〜<実施例4−2−29>
非水電解液を実施例1−2−1〜実施例1−2−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−2−1〜実施例4−2−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0495】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0496】
下記の表45に、評価結果を示す。
【0497】
【表45】

【0498】
<実施例4−3−1>〜<実施例4−3−29>
非水電解液を実施例1−3−1〜実施例1−3−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−3−1〜実施例4−3−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0499】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0500】
下記の表46に、評価結果を示す。
【0501】
【表46】

【0502】
<実施例4−4−1>〜<実施例4−4−29>
非水電解液を実施例1−4−1〜実施例1−4−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−4−1〜実施例4−4−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0503】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0504】
下記の表47に、評価結果を示す。
【0505】
【表47】

【0506】
<実施例4−5−1>〜<実施例4−5−29>
非水電解液を実施例1−5−1〜実施例1−5−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−5−1〜実施例4−5−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0507】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0508】
下記の表48に、評価結果を示す。
【0509】
【表48】

【0510】
<実施例4−6−1>〜<実施例4−6−29>
非水電解液を実施例1−6−1〜実施例1−6−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−6−1〜実施例4−6−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0511】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0512】
下記の表49に、評価結果を示す。
【0513】
【表49】

【0514】
<実施例4−7−1>〜<実施例4−7−29>
非水電解液を実施例1−6−1〜実施例1−6−29と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−6−1〜実施例4−6−29の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0515】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0516】
下記の表50に、評価結果を示す。
【0517】
【表50】

【0518】
<比較例4−1−1>〜<比較例4−1−30>
非水電解液を比較例1−2−1〜比較例1−2−30と同様の構成とし、添加化合物を混合しないようにした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として比較例4−1−1〜比較例4−1−30の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0519】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0520】
下記の表51に、評価結果を示す。
【0521】
【表51】

【0522】
表44〜表50および表51から分かるように、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いたラミネートフィルム型の試験用電池の場合にも、電圧上昇を抑制する過充電制御剤とともに本技術の添加化合物を非水電解液に混合することにより放電容量のばらつきを抑える効果を得ることができる。
【0523】
以下の実施例では、過充電制御剤の添加量を変えて効果を確認した。
【0524】
<実施例4−8−1>〜<実施例4−8−24>
非水電解液を実施例1−8−1〜実施例1−8−24と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−8−1〜実施例4−8−24の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0525】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0526】
下記の表52に、評価結果を示す。
【0527】
【表52】

【0528】
表52から分かるように、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いたラミネート型非水電解質電池の場合であっても、過充電制御剤の添加量が一定の範囲内において各比較例より標準偏差が顕著に小さく、放電容量ばらつき抑制効果が確認できた。
【0529】
以下の実施例では、非水溶媒の組成を変えて効果を確認した。
【0530】
<実施例4−9−1>〜<実施例4−9−16>
非水電解液を実施例1−9−1〜実施例1−9−16と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−9−1〜実施例4−9−16の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0531】
<実施例4−10−1>〜<実施例4−10−16>
非水電解液を実施例1−10−1〜実施例1−10−16と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−10−1〜実施例4−10−16の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0532】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0533】
下記の表53および表54に、評価結果を示す。
【0534】
【表53】

【0535】
【表54】

【0536】
表53および表54から分かるように、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いたラミネート型非水電解質電池の場合であっても、非水電解液の非水溶媒にハロゲン化環状炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)または不飽和炭素結合環状炭酸エステルである炭酸ビニレン(VC)を混合した上述の各実施例は、これらを含まない実施例と比較して標準偏差が同等もしくはより低く、全体的に放電容量のばらつきが小さくなる傾向にあることが分かった。
【0537】
以下の実施例では、非水電解液に対してさらに添加物を添加して効果を確認した。
【0538】
<実施例4−11−1>〜<実施例4−11−40>
非水電解液を実施例1−11−1〜実施例1−11−40と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−11−1〜実施例4−11−40の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0539】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0540】
下記の表55および表56に、評価結果を示す。
【0541】
【表55】

【0542】
【表56】

【0543】
表55から分かるように、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いたラミネート型非水電解質電池の場合であっても、非水電解液に環状炭酸エステルであるトランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFEC)、ジニトリル化合物であるスクシノニトリル、酸無水物である無水コハク酸または無水プロパンジスルホン酸、ならびに環状スルホン酸エステルであるプロペンスルトンを混合することにより、これらを含まない実施例と比較して平均放電容量が大きく、放電容量のばらつきが少なくなる傾向にあった。
【0544】
以下の実施例では、非水電解液に対して六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)とともにその他の電解質塩を添加して効果を確認した。
【0545】
<実施例4−12−1>〜<実施例4−12−24>
非水電解液を実施例1−12−1〜実施例1−12−24と同様の構成とした以外は実施例4−1−1と同様の電池構成として実施例4−12−1〜実施例4−12−24の試験用電池をそれぞれ作製した。
【0546】
[電池の評価]
各実施例について、実施例4−1−1と同様にして(a)平均放電容量および(b)電池容量の標準偏差を求めた。
【0547】
下記の表57に、評価結果を示す。
【0548】
【表57】

【0549】
表57から分かるように、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いたラミネート型非水電解質電池の場合であっても、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)と他の化合物とを混合して用いることにより、平均放電容量が大きく、また標準偏差が小さいことから放電容量のばらつきがより少なくなった。
【0550】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、巻回構造を有する二次電池について説明したが、本技術は、正極および負極を折り畳んだり、あるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン型、ボタン型あるいは角型の非水電解質電池についても適用することができる。
【0551】
また、上記実施の形態および実施例においては、非水電解液を用いる場合について説明したが、本技術は、いかなる形態の非水電解質を用いる場合についても適用することができる。他の形態の非水電解質としては、例えば、非水溶媒と電解質塩とを高分子化合物に保持させたいわゆるゲル状の非水電解質等が挙げられる。
【0552】
更に、上記実施の形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池について説明したが、本技術は、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池、または、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
【0553】
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)等の他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)等のアルカリ土類金属、またはアルミニウム等の他の軽金属を用いる場合についても、本技術を適用することができる。
【符号の説明】
【0554】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A,33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質層、37…保護テープ、40…外装部材、41…密着フィルム、100…蓄電システム、101…住宅、102a…火力発電、102b…原子力発電、102c…水力発電、102…集中型電力系統、103…蓄電装置、104…発電装置、105…電力消費装置、105a…冷蔵庫、105b…空調装置、105c…テレビジョン受信機、105d…風呂、106…電動車両、106a…電気自動車、106b…ハイブリッドカー、106c…電気バイク、107…スマートメータ、108…パワーハブ、109…電力網、110…制御装置、111…センサ、112…情報網、113…サーバ、200…ハイブリッド車両、201…エンジン、202…発電機、203…電力駆動力変換装置、204a、204b…駆動輪、205a、205b…車輪、208…バッテリー、209…車両制御装置、210…各種センサ、211…充電口、301…組電池、301a…二次電池、302a…充電制御スイッチ、302b…ダイオード、303a…放電制御スイッチ、303b…ダイオード、304…スイッチ部、307…電流検出抵抗、308…温度検出素子、310…制御部、311…電圧検出部、313…電流測定部、314…スイッチ制御部、317…メモリ、318…温度検出部、321…正極端子、322…負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と、
電解質塩と、
所定の電位で酸化還元反応を生じる過充電制御剤と、
下記の添加化合物(1)〜添加化合物(4)から選択される少なくとも一種
とを含む非水電解液を含む非水電解質。
【化1】

(式中、R21およびR23は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基であり、または、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基である。R22は、直鎖状または分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基、または、それらがハロゲン化された基である。)
【化2】

(式中、R21およびR23、ならびにR22は上記添加化合物(1)と同様である。)
【化3】

【化4】

【請求項2】
上記過充電制御剤が、下記の過充電制御剤(1)〜過充電制御剤(12)から選択される少なくとも一種である
請求項1に記載の非水電解質。
【化5】

(式中、Raは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R5は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、ニトリル基もしくは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RaおよびR1〜R5が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RaおよびR1〜R5の連結は、R1〜R5すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【化6】

(式中、Rbは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R7は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RbおよびR1〜R7が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RbおよびR1〜R7の連結は、R1〜R7すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【化7】

(式中、RbおよびR1〜R7は、上記過充電制御剤(2)と同様である。)
【化8】

(式中、Mは遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素もしくは15族元素である。Rcはアリール基あるいは複素環基であり、またはそれらが部分的にもしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。)
【化9】

(式中、R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。R5およびR6はアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R5およびR6が互いに連結された基である。R5およびR6が互いに連結された基は、アルキレン基、部分的にまたはすべてがハロゲン化されたアルキレン基または下記一般式(A)で示される連結基である。
【化10】

一般式(A)中、l1およびl2はそれぞれ独立して0〜2の整数である。Aは炭素数0〜2のアルキレン基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化されたアルキレン基を示す。)
【化11】

(式中、XはN−オキシドまたはN−オキソ基を示す。Yは酸素原子または硫黄原子である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、ニトリル基、複素環基、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化12】

(式中、X、YおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。なお、Yが酸素原子の場合R14、R15は非共有電子対を示し、Yが硫黄原子の場合、R14、R15は独立して非共有電子対またはオキソ基を示す。R13は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化13】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化14】

(式中、X、R8〜R11およびR12は、上記過充電制御剤(8)と同様である。R16およびR17は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R16とR17が互いに連結された基である。)
【化15】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(8)と同様である。Zは、下記一般式(B1)〜一般式(B6)のいずれかである。
【化16】

(一般式(B1)〜一般式(B6)中、R12は上記過充電制御剤(8)と同様である。R18は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R18とR19が互いに連結された基である。R19は水素基、水酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基またはエーテル基である。R20は独立して水素基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基またはグリシジルである。)
【化17】

(式中、Xは上記過充電制御剤(8)と同様である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボン酸エステル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。)
【化18】

(式中、sは平均で4以上12以下であり、Dが水素、塩素または臭素である。)
【請求項3】
上記過充電制御剤の混合量が、上記非水電解液に対して、0.1質量%以上30質量%以下である
請求項2に記載の非水電解質。
【請求項4】
上記添加化合物(1)〜上記添加化合物(4)から選択される少なくとも一種の混合量が、上記過充電制御剤に対して、0質量%超20質量%未満である
請求項3に記載の非水電解質。
【請求項5】
上記添加化合物(1)および上記添加化合物(2)から選択される少なくとも一種の混合量が、上記過充電制御剤に対して、0質量%超6.0質量%未満である
請求項4に記載の非水電解質。
【請求項6】
上記添加化合物(3)および上記添加化合物(4)から選択される少なくとも一種の混合量が、上記過充電制御剤に対して0.00.1質量%以上30質量%以下である
請求項4に記載の非水電解質。
【請求項7】
正極および負極を含む電極群と、
非水電解液を含む非水電解質と
を備え、
上記非水電解液が、
非水溶媒と、
電解質塩と、
所定の電位で酸化還元反応を生じる過充電制御剤と、
下記の添加化合物(1)〜添加化合物(4)から選択される少なくとも一種
とを含む非水電解質電池。
【化19】

(式中、R21およびR23は、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基であり、または、芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基である。R22は、直鎖状または分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基、または、それらがハロゲン化された基である。)
【化20】

(式中、R21およびR23、ならびにR22は上記添加化合物(1)と同様である。)
【化21】

【化22】

【請求項8】
上記過充電制御剤が、下記の過充電制御剤(1)〜過充電制御剤(12)から選択される少なくとも一種である
請求項7に記載の非水電解質電池。
【化23】

(式中、Raは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R5は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、ニトリル基もしくは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RaおよびR1〜R5が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RaおよびR1〜R5の連結は、R1〜R5すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【化24】

(式中、Rbは直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R7は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、RbおよびR1〜R7が隣り合う基と互いに連結された基である。ただし、RbおよびR1〜R7の連結は、R1〜R7すべてがアルコキシ基である場合を除く。)
【化25】

(式中、RbおよびR1〜R7は、上記過充電制御剤(2)と同様である。)
【化26】

(式中、Mは遷移金属元素、または長周期型周期表における13族元素、14族元素もしくは15族元素である。Rcはアリール基あるいは複素環基であり、またはそれらが部分的にもしくはすべてがハロゲン化された基である。R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。)
【化27】

(式中、R1〜R4は独立してアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R1〜R4が隣り合う基と互いに連結された基である。R5およびR6はアルコキシ基、ハロゲン基、または直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R5およびR6が互いに連結された基である。R5およびR6が互いに連結された基は、アルキレン基、部分的にまたはすべてがハロゲン化されたアルキレン基または下記一般式(A)で示される連結基である。
【化28】

一般式(A)中、l1およびl2はそれぞれ独立して0〜2の整数である。Aは炭素数0〜2のアルキレン基であり、またはそれらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化されたアルキレン基を示す。)
【化29】

(式中、XはN−オキシドまたはN−オキソ基を示す。Yは酸素原子または硫黄原子である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、ニトリル基、複素環基、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化30】

(式中、X、YおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。なお、Yが酸素原子の場合R14、R15は非共有電子対を示し、Yが硫黄原子の場合、R14、R15は独立して非共有電子対またはオキソ基を示す。R13は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化31】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(6)と同様である。R12は、水素基、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基もしくは複素環基であり、または、芳香族炭化水素基もしくは脂環式炭化水素基により置換されたアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基であり、または、それらがハロゲン化された基、エーテル基、アミド基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、チオエステル基、環状エーテルもしくは鎖状エーテルで置換されたアルキル基である。)
【化32】

(式中、X、R8〜R11およびR12は、上記過充電制御剤(8)と同様である。R16およびR17は、独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R16とR17が互いに連結された基である。)
【化33】

(式中、XおよびR8〜R11は、上記過充電制御剤(8)と同様である。Zは、下記一般式(B1)〜一般式(B6)のいずれかである。
【化34】

(一般式(B1)〜一般式(B6)中、R12は上記過充電制御剤(8)と同様である。R18は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R18とR19が互いに連結された基である。R19は水素基、水酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基またはエーテル基である。R20は独立して水素基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基またはグリシジルである。)
【化35】

(式中、Xは上記過充電制御剤(8)と同様である。R8〜R11は独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボン酸エステル基、それらが部分的に、もしくはすべてがハロゲン化された基であり、または、R8とR9、R10とR11が互いに連結された基である。)
【化36】

(式中、sは平均で4以上12以下であり、Dが水素、塩素または臭素である。)
【請求項9】
上記過充電制御剤の混合量が、0.1質量%以上30質量%以下である
請求項8に記載の非水電解質電池。
【請求項10】
上記添加化合物(1)〜上記添加化合物(4)から選択される少なくとも一種の混合量が、上記過充電制御剤に対して0質量%超20質量%未満である
請求項9に記載の非水電解質電池。
【請求項11】
請求項7に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する
電池パック。
【請求項12】
請求項7に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける
電子機器。
【請求項13】
請求項7に記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する
電動車両。
【請求項14】
請求項7に記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項15】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う
請求項14に記載の蓄電装置。
【請求項16】
請求項7に記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置もしくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される
電力システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−26042(P2013−26042A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160235(P2011−160235)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】