説明

非水電解質二次電池および非水電解質二次電池用電極群の製造方法

【課題】正極または/および負極とセパレータとの間に多孔質耐熱層を配した捲回型の非水電解質二次電池において、巻きずれによる内部短絡を抑制し、初期不良の無い信頼性の高い非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極または/および負極とセパレータとの間に配した多孔質耐熱層とセパレータとが、接する領域の少なくとも幅方向の一端部が互いに異なる色調とし、積層工程時に画像処理による位置認識と位置補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、特にその信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、高電圧および高エネルギー密度を有する非水電解質二次電池の実用化が進んでいる。これらの小型民生用途のみならず、電力貯蔵用や電気自動車用など大容量の大型電池への技術展開も加速してきており、電極構造や集電構造の工夫により、電動工具やハイブリッド電気自動車(HEV)など高出力用途への展開も進んでいる。これら非水電解質二次電池は、合剤層と集電体とからなる帯状の正負極と、これらの極板を電気的に絶縁しつつ電解液を保持する役目をもつセパレータとを捲回して、電極群が構成される。ここでセパレータには主にポリエチレンからなる厚み数十μmの微多孔性薄膜シートが使われる。
【0003】
何らかの要因により、電池の内部で比較的低い抵抗の短絡が発生した場合、短絡点には大きな電流が集中して流れるため、電池が発熱して高温に至ることがある。このような現象が発生しないように、電池には様々な安全対策が講じられている。
【0004】
例えば短絡時の対策として、約135℃で細孔が閉塞し、イオン電流の遮断を行うシャットダウン機能が付与されたセパレータが用いられている。シャットダウン機能により、短絡電流がカットされ、発熱が停止するようになっている。しかし、高出力用途電池のように電池内部抵抗が非常に小さい場合、短絡時の電流値が非常に大きく電流集中による発熱での温度上昇がセパレータの溶融温度を超えてしまい、短絡点が拡大して電池が熱暴走状態に至る可能性がある。そこでシート状セパレータの表面に、無機フィラーを含む多孔膜を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、内部短絡を防止するための安全対策として、電極上に、不織布あるいは無機微粒子と樹脂結着剤からなり、厚さ0.1〜200μmの多孔膜を形成することも提案されている。このような多孔膜は、電池の製造工程中に電極から部分的に脱落する電極材料に起因する電池の内部短絡を抑制し、生産歩留まりを向上させることを目的としている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−319634号公報
【特許文献2】特開平7−220759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているシート状セパレータの表面に無機フィラーを含む多孔膜を形成する技術においては、セパレータが収縮すると、それに伴って多孔膜も収縮するという欠点がある。
【0007】
一方、電極群の構成方法として、長尺状の電極およびセパレータを、巻き出しロール、巻き取りロール、ガイドローラー等の走行系を用いて走行させ、それぞれを巻き軸に挿入して電極群を構成する。信頼性の高い電池を作製するために、電極群構成時の電極およびセパレータの配置は、負極合剤層の幅方向の位置が正極合剤層の幅方向の位置より外側であり、負極と正極間に配するセパレータの幅方向の位置が負極合剤層の幅方向の位置より外側になるように構成される必要がある。
【0008】
そこで、電極群構成の際巻きずれが生じないように、走行途中のセパレータおよび電極の位置をそれぞれ検知する方法が取られるが、より精度を向上させるためには、巻き軸挿入直前の積層工程時に、電極およびセパレータの位置関係を識別する方法が好ましい。
【0009】
位置関係を識別する方法としては光学反射式、光学透過式、超音波透過式などが用いられている。電極およびセパレータの位置関係を識別する方法としては色を判別する画像処理による識別が好ましいが、特許文献2に記載されているような電極上に不織布あるいは無機微粒子と樹脂結着剤からなる多孔膜を形成する技術においては、これらの多孔膜が一般に白色であり、同色である白色セパレータを介して電極群を構成する場合、色を判別する画像処理による識別ができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、正極または/および負極とセパレータとの間に多孔質耐熱層を配して捲回される極板群を有する非水電解質二次電池であって、前記セパレータと前記多孔質耐熱層とが接する領域の少なくとも幅方向の一端部が、互いに異なる色調であることを特徴とする。
【0011】
また、電極群の構成方法として、正極と負極とセパレータと多孔質耐熱層とを積層する工程と、前記セパレータと前記多孔質耐熱層との位置を識別する位置識別工程と、前記正極と前記負極と前記セパレータと前記多孔質耐熱層とを巻回する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、正極または/および負極とセパレータとの間に多孔質耐熱層を配することで、内部短絡時の発熱によりセパレータが溶融しても短絡点が拡大せず、熱暴走状態に至ることを回避でき、安全性を高めた非水電解質二次電池を提供することができる。そしてセパレータと多孔質耐熱層とが接する領域の少なくとも幅方向の一端部が、互いに異なる色調であることにより、積層工程時に画像処理による位置認識が可能となり、巻きずれによる内部短絡を抑制し、初期不良の無い信頼性の高い非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
まず、本発明に用いられる多孔質耐熱層を形成させる方法としては、直接正極合剤層上または/および負極合剤層上へ形成する方法または予めフィルムとして形成後に電池構成要素として組み込む方法等があり、予めフィルムとして形成後に電池構成要素として組み込む方法としては、正極とセパレータ間に挿入しても、負極とセパレータ間に挿入してもよい。
【0015】
また、多孔質耐熱層としてポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリフェニレンサルファイド、またはポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾールなどの耐熱樹脂を用いることができる。
【0016】
また、多孔質耐熱層としては、絶縁性フィラーを用いることができ、その中でも無機酸化物フィラーを主体とする多孔膜を用いると良く、無機酸化物は例えばアルミナ、ゼオライト、窒化珪素、炭化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛および二酸化ケイ素などの無機多孔質材料が、電池使用時の有機電解液による浸漬や酸化還元電位下においても電池特性に悪影響を及ぼす副反応を起こさず、化学的に安定で高
純度のものを選択するのが好ましい。
【0017】
無機酸化物フィラーを主体とする多孔膜には一種あるいは複数種の樹脂材料からなる複合結着剤が含まれており、結着剤としては、一般的に用いられているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を用いることできるが、結着剤の少なくとも1種は非結晶性で耐熱性が高いポリアクリロニトリル単位を含むゴム性状高分子であることが好ましい。
【0018】
セパレータは電解液の保持力が高く、正負極いずれの電位下においても安定な微多孔性フィルムを用いるのがよく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドなどを用いることができる。一般に微多孔性フィルムからなるセパレータは白色であるが、端部が透明色または半透明色であることが好ましい。端部を透明色または半透明色にする方法としては、熱処理、薬品処理などを施すとよい。
【0019】
セパレータと多孔質耐熱層とが接する領域の少なくとも幅方向の一端部が、互いに異なる色調にするために、多孔質耐熱層または/およびセパレータの少なくとも幅方向の一端部を着色剤により着色するとよい。着色剤としては、フタロシアニンを成分とする有機物、チタン金属、アルミニウム金属、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物からなる群より選択される少なくとも一種の顔料など、電池使用時の有機電解液による浸漬や酸化還元電位下においても電池特性に悪影響を及ぼす副反応を起こさない化学的に安定で高純度のものを選択するのが好ましい。着色する手段は、多孔質耐熱層または/およびセパレータ表面に着色剤を塗布する方法、多孔質耐熱層を作製する際の多孔膜ペーストに混合する方法等をとることができる。
【0020】
正極は活物質に複合リチウム酸化物を用いることができる。具体的には組成式LiMO2あるいはLiM24で示され、MとしてはCo、Mn、Ni、Fe等の遷移金属を少なくとも1種選択することができる。また上述した遷移金属の一部を、Al、Mg、Liなどの他元素置換タイプのものも使用することが可能であり、これら正極活物質はリチウムを吸蔵、放出可能であって、充放電反応が可能である活物質であれば上記に限定されるものではない。
【0021】
上述した正極活物質を、導電剤および結着剤と混練し、正極ペーストとして正極芯材に塗布乾燥し、所定厚に圧延した後、所定寸法に切断して正極とする。ここで導電剤としては、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)などのカーボンブラックや、黒鉛材料を用いることができる。また結着剤としては、正極電位下において安定な材料であるPVDFや変性アクリルゴム、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。さらにはペーストを安定化させる増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース樹脂を用いても良い。また、正極集電体としては、正極電位下において安定なアルミニウム箔等が用いられるが、これには限らない。
【0022】
負極は活物質にリチウムを吸蔵できる材料を用いることができ、具体的には黒鉛、シリサイド、チタン合金材料などから少なくとも1種を選択される。結着剤としては、負極電位下において安定なPVDFやスチレン−ブタジエンゴム共重合体(SBR)などを用いることができる。さらにはペーストを安定化させる増粘剤として、CMCなどのセルロース樹脂を用いても良い。さらに負極集電体としては、負極電位下において安定な銅箔等が用いられるが、これには限らない。
【0023】
正極板および負極板は、集電体の幅方向全面に合剤層を塗布してもよく、さらには集電体の少なくとも一方の長手方向に連続して集電体の露出部を設けてもよい。
【0024】
本発明では、正極と負極と、接する領域の少なくとも端部が互いに異なる色調であるセパレータと多孔質耐熱層とを巻回する電極群構成において、各電池構成要素が巻き軸に挿入される直前の積層工程時に、セパレータと多孔質耐熱層との位置を識別する位置識別工程を含む。位置識別工程は、画像処理を用いて識別する方法が好ましい。画像処理による位置識別工程は、カメラと、色抽出処理を含む前処理、特徴抽出、判定、出力機能を持つ画像装置とからなる。画像処理は識別する色により、2値化、グレー処理、カラー処理、カラー濃淡処理を用いるとよい。
【0025】
また本発明では、積層工程時にセパレータと多孔質耐熱層との位置を識別する位置識別後、さらに位置識別工程の情報に基づき多孔質耐熱層または/およびセパレータの位置を補正する位置補正工程を含む。位置認識の画像処理で得られた判定を電圧等に変換して出力し、出力値が規定値を超えた場合サーボモータ等を介して、多孔質耐熱層または/およびセパレータを保持している巻き出しロールの駆動軸位置を移動させ、セパレータと多孔質耐熱層との位置が規定値内におさまるようように多孔質耐熱層または/およびセパレータの走行位置を補正する。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の具体例を実施例を用いて説明する。
【0027】
(実施例1)
正極活物質には組成式LiNi0.7Co0.2Al0.12で表されるリチウムニッケル複合酸化物を用いた。NiSO4水溶液に、所定比率のCoおよびAlの硫酸塩を加え、飽和水溶液を調製した。この飽和水溶液を撹拌しながら水酸化ナトリウムを溶解したアルカリ溶液をゆっくりと滴下し中和することによって三元系の水酸化ニッケルNi0.7Co0.2Al0.1(OH)2の沈殿物を共沈法により生成させた。この沈殿物をろ過、水洗し、80℃で乾燥を行った。得られた水酸化ニッケルは平均粒径10μmであった。
【0028】
その後、得られたNi0.7Co0.2Al0.1(OH)2を大気中900℃で10時間の熱処理を行い、酸化ニッケルNi0.7Co0.2Al0.1Oを得た。得られた酸化物は粉末X線回折により単一相の酸化ニッケルであることを確認した。そして、Ni、Co、Alの原子数の和とLiの原子数が等量になるように水酸化リチウム1水和物を加え、乾燥空気中800℃で10時間の熱処理を行うことにより、目的とするLiNi0.7Co0.2Al0.12を得た。得られたリチウムニッケル複合酸化物は粉末X線回折により単一相の六方晶層状構造であると共に、CoおよびAlが固溶していることを確認した。そして粉砕、分級の処理を経て正極活物質粉末とした。導電剤にはAB(電気化学工業(株)製、デンカブラック)、結着剤にはPVdF(呉羽化学工業株式会社製、KFポリマー♯1320)を用い、これら正極活物質、導電剤、結着剤とを固形分比率で90:5:6(重量%)の配合比で調整し、さらにn−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として混練し、正極合剤ペーストを作製した。合剤ペーストを厚み15μmアルミ箔正極集電体両面に長辺方向の一端に連続して10mm幅のアルミ箔露出部ができるように塗布し、乾燥した後、圧延、スリット加工を施し、厚み0.078mm、幅120mm(合剤幅110mm)、長さ3090mmの正極板を作製した。
【0029】
負極活物質に人造黒鉛(三菱化学(株)製、MPG)を用い、結着剤にはSBR水溶性ディスパージョン(日本ゼオン(株)製、BM400B)を用いた。増粘剤にはカルボキシメチルセルロース(CMC)を用い、負極活物質、結着剤、増粘剤とをそれぞれ固形分比率で96:3:1(重量%)の割合で調整し、さらに水を溶媒として上記固形分重量に対して100%配合し、混練して負極合剤ペーストを作製した。これを厚み10μmの銅箔の両面に長辺方向の一端に連続して10mm幅の銅箔露出部ができるように塗布し、乾
燥させた後、圧延、スリット加工を施し、厚み0.077mm、幅124mm(合剤幅114mm)、長さ3300mmの負極板を作製した。
【0030】
この負極上に無機酸化物フィラーを主体とした多孔質耐熱層を形成した。メディアン径0.3μmのアルミナと、日本ゼオン(株)製ポリアクリロニトリル変性ゴム結着剤BM−720H(固形分8重量%)とを重量比8:3、さらに適量のNMPとともにプラネタリーミキサーにて混練し、白色の耐熱多孔膜スラリーを作製した。さらに着色剤としてフタロシアニンブルー(大日精化工業株式会社シアニンブルー5026)を加えて混練し、青色の耐熱多孔膜スラリーを作製した。この多孔膜スラリーを長辺方向の一端に連続して6mm幅の銅箔露出部ができるように負極上に片面4μmずつ塗布乾燥し負極板とした。
【0031】
以上の正極および負極を残存水分の除去を目的として、それぞれ大気中で100℃10時間、80℃10時間乾燥炉で乾燥させた。その後セパレータとして厚み25μm、幅118mmのポリエチレン・ポリプロピレン複合フィルム(セルガード(株)製2300)を介して正極と負極を捲回した群を作製した。
【0032】
電極群構成は図1に示すように正極、負極、セパレータを各巻き出しロール5、8、11に設置し、ガイドローラー4に沿った負極電極走行ライン3、セパレータ走行ライン7、正極電極走行ライン10を通して電極群巻き軸1に挿入する。巻き軸挿入直前の走行ライン上に設置した走行ライン検出カメラ13で電極およびセパレータの位置関係を撮影した。位置検出画面における電極及びセパレータの位置関係を図2に示す。電極群構成の際巻きずれが生じないように、図3に示す工程図に沿って電極群を構成した。撮影した画像を画像装置(株式会社キーエンス製CV−700)により画像処理する。前処理としては、照明補正、色抽出処理を行った。
【0033】
本実施例において、負極およびセパレータ側の画像については、セパレータの白色、負極上に形成した多孔質耐熱層の青色、負極集電体である銅箔露出部の銅色を抽出し、また正極およびセパレータ側の画像については、セパレータの白色、正極集電体であるアルミ箔露出部のアルミ色を抽出し、カラー濃淡処理を行った。それぞれの位置が設定内に収まらない場合、電圧に変換した判定信号を各巻き出しロールの駆動部に送り、設定内に収まるまで巻き出しロール位置を補正する。
【0034】
このようにして作製された電極群の正極アルミ箔露出部に正極集電端子をレーザー溶接し、負極銅箔露出部に負極集電端子を抵抗溶接した。その群を電池ケースに挿入し、正極集電端子を封口板にレーザー溶接し、負極集電端子を電池ケース底部に抵抗溶接した。エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):ジメチルカーボネート(DMC)=20:40:40(重量%)の溶媒にLiPF6を1モル/リットル溶解させた電解液を加えた後、金属缶の開口部を封口し非水電解質二次電池を作製し実施例1の電池とした。
【0035】
(実施例2)
着色料を混合しない白色の耐熱多孔膜スラリーを負極上に塗布し、さらに着色剤としてフタロシアニンブルーを白色多孔質耐熱層の銅箔露出部側端部に10mm幅で塗布した負極板を用いたこと以外実施例1と同様にして実施例2の電池を作製した。
【0036】
(実施例3)
着色剤としてフタロシアニンブルーで青色に着色した耐熱多孔膜スラリーを長辺方向の一端に連続して6mm幅のアルミ箔露出部ができるように正極上に片面4μmずつ塗布乾燥した正極板を用いたこと以外実施例1と同様にして実施例3の電池を作製した。
【0037】
(実施例4)
負極上に多孔質耐熱層を形成しない負極板を用いたこと以外実施例3と同様にして電池を作製し、実施例4とした。
【0038】
(実施例5)
着色剤としてTi−Zn−Ni−Co系複合酸化物(大日精化工業株式会社製ダイピロキサイドグリーン#9320)で緑色に着色した耐熱多孔膜スラリーを用いたこと以外実施例4と同様にして実施例5の電池を作製した。
【0039】
(実施例6)
着色剤としてCo−Al系複合酸化物(大日精化工業株式会社製ダイピロキサイドブルー#9410)で青色に着色した耐熱多孔膜スラリーを用いたこと以外実施例4と同様にして実施例6の電池を作製した。
【0040】
(実施例7)
着色剤としてジスアゾイエロー(大日精化工業株式会社クロモファインエロー2700(L))で黄色に着色した耐熱多孔膜スラリーを用いたこと以外実施例4と同様にして実施例7の電池を作製した。
【0041】
(実施例8)
実施例1で作製した白色耐熱多孔膜スラリーを負極上に塗布し、セパレータ上に着色剤としてフタロシアニンブルーを塗布し、表面が青色のセパレータを用いたこと以外実施例1と同様にして実施例8の電池を作製した。
【0042】
(実施例9)
着色剤としてフタロシアニンブルーをセパレータの長辺方向の一端に連続して3mm幅に塗布し、全体は白色で端部のみ青色のセパレータを用いたこと以外実施例8と同様にして実施例9の電池を作製した。
【0043】
(実施例10)
白色耐熱多孔膜スラリーを負極上に塗布し、セパレータの端部に135℃の熱風を当てることにより端部のみシャットダウンさせ、長辺方向の一端に連続して3mm幅が透明色のセパレータを用いたこと以外実施例1と同様にして実施例10の電池を作製した。
【0044】
(実施例11)
実施例10に示される端部が透明色のセパレータを用いたこと以外実施例3と同様にして実施例11の電池を作製した。
【0045】
(比較例1)
白色耐熱多孔膜スラリーを負極上に塗布した負極板を用いたこと以外実施例1と同様にして比較例1の電池を作製した。
【0046】
(比較例2)
白色耐熱多孔膜スラリーを正極上に塗布した正極板を用いたこと以外実施例4と同様にして比較例2の電池を作製した。
【0047】
(比較例3)
白色耐熱多孔膜スラリーを負極上および正極上に塗布した負極板、正極板を用いたこと以外実施例1と同様にして比較例3の電池を作製した。
【0048】
以上の電池について充放電試験を行った。25℃環境下で充電は4.2Vまで、放電は2.5VまでC/5レート(0.2C(容量×0.2の電流値))で定電流充放電を行い、放電容量を初期容量とした。初期容量が3σから外れる電池を不良電池とし、各実施例について不良率を求めた。次に良品電池の充電状態、60℃環境下で20日間の高温保存試験を行い、保存前後の容量比から保存後の容量回復率を求めた。これらの結果を表1に示す。なお表1中において、「着色位置:全面」とは多孔質耐熱層が全て着色されていることを示し、「着色位置:端面」とは多孔質耐熱層の端部のみが着色されていることを示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例の各電池ではいずれも比較例の電池と比べて不良率が非常に小さい。不良電池を分解観察した結果、電極とセパレータの巻きずれが生じ、正極と負極の対向面積が減少したために容量が低下していることが分かった。比較例の電池においては、セパレータおよび電極上に形成している多孔質耐熱層の色がいずれも白色であるため、画像処理による色識別ができなかったためと考えられる。実施例においては、その構成形態はいずれの実施例の場合でも不良率が低いことから、セパレータと多孔質耐熱層とが接する領域の少なくとも端部が、互いに異なる色調であれば、画像処理による色識別が可能で、位置認識後の位置補正により巻きずれを回避し、信頼性の高い電池を作製できることが分かった。
【0051】
60℃20日保存後の容量回復率は、実施例の電池と比較例の電池とで差はほとんどなく、着色剤による電池性能への影響はほとんどないことが確認された。しかし、正極にジスアゾイエローを用いた実施例7のみ、容量回復率が他と比較して少し低くなっている。これは、充電状態の正極電位においてこの材料が分解反応を起こしたためと考えられ、着色剤としてはフタロシアニンを成分とする有機物、チタン金属、アルミニウム金属、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物からなる群より選択される少なくとも一種の顔料であることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、可燃性の有機系非水溶媒からなる電解液を用いる非水電解質二次電池において、その信頼性を高める技術として、その利用可能性および有用性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】電極群構成機の材料配置図
【図2】位置認識工程における検出位置図
【図3】電極群構成時の位置認識・位置補正工程図
【符号の説明】
【0054】
1 電極群巻き軸
2 電極群
3 負極電極走行ライン
4 ガイドローラー
5 負極電極巻き出しロール
6 負極電極フープ
7 セパレータ走行ライン
8 セパレータ巻き出しロール
9 セパレータフープ
10 正極電極走行ライン
11 正極電極巻き出しロール
12 正極電極フープ
13 走行ライン検出カメラ
14 位置検出画面
15 集電体
16 正極/負極合剤層
17 多孔質耐熱層
18 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極または/および負極とセパレータとの間に多孔質耐熱層を配して捲回される極板群を有する非水電解質二次電池であって、前記セパレータと前記多孔質耐熱層とが接する領域の少なくとも幅方向の一端部が、互いに異なる色調であることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記セパレータは、前記多孔質耐熱層と接する領域の少なくとも幅方向の一端部において透明色または半透明色であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記多孔質耐熱層または/および前記セパレータの少なくとも幅方向の一端部が着色剤により着色されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記着色剤は、フタロシアニンを成分とする有機物、チタン金属、アルミニウム金属、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物からなる群より選択される少なくとも一種の顔料であることを特徴とする請求項3記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
正極と、負極と、セパレータと、前記正極または/および前記負極と前記セパレータとの間に配した多孔質耐熱層とを有する非水電解質二次電池用電極群の構成方法であって、前記正極と前記負極と前記セパレータと前記多孔質耐熱層とを積層する工程と、前記セパレータと前記多孔質耐熱層との位置を識別する位置識別工程と、前記正極と前記負極と前記セパレータと前記多孔質耐熱層とを巻回する工程を有することを特徴とする非水電解質二次電池用電極群の製造方法。
【請求項6】
前記セパレータと前記多孔質耐熱層との位置を識別する位置識別工程後、前記位置識別工程の情報に基づき前記多孔質耐熱層または/および前記セパレータの位置を補正する位置補正工程を有することを特徴とする請求項5記載の非水電解質二次電池用電極群の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−141590(P2007−141590A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332366(P2005−332366)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】