説明

非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池

【課題】放電容量とサイクル寿命に優れた非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】コロイダルシリカと、リチウムイオンと、電解質として一般式(1)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機溶媒と、が含有されてなる非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池用電解液。コロイダルシリカを加えることで、放電容量と、サイクル寿命を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池を代表する非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有するため、電気自動車の電池として注目されている。対象となる電気自動車には、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車等が挙げられる。また、非水電解質二次電池は、電力を貯蔵し、電気系統が遮断された非常時に電力を供給する定置式電力貯蔵装置としての用途も期待されている。
【0003】
このような多様な用途に対して、リチウムイオン電池には高い放電容量とサイクル寿命が重要な要求性能となっている。
【0004】
特許文献1には、二次電池用電解液として、リチウム塩と有機物カチオンとを含有する電解質を用いた非水電解液二次電池は、有機溶媒のような可燃性の物質を電解液の主成分としないために安全性に優れた二次電池として開示されている。
【0005】
しかしながら、非水電解液二次電池においては、充放電サイクルを繰り返すことで負極活性物質が還元分解される現象が生じるため容量特性が劣り、電解液が液漏れしてしまうため、サイクル寿命が劣る問題点があった。
【0006】
特許文献2には、リチウムイオンと、有機カチオンとフッ化物アニオンからなる溶融塩に高分子が複合化されて固化された固体電解質と、を含む非水電解質二次電池が開示されている。しかしながら、ゲル化剤として高分子を複合化させて固化(ゲル化)した電解質は、液漏れを防ぐことができるが、放電容量に劣る問題点があった。
【0007】
以上より、放電容量とサイクル寿命に優れる非水電解質二次電池が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−349365号公報
【特許文献2】特開平11−86905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、放電容量とサイクル寿命に優れた非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、コロイダルシリカと、リチウムイオンと、電解質として一般式(1)〜(7)より表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機溶媒と、が含有されてなる非水電解質二次電池用電解液とそれを用いた非水電解質二次電池である。
【0011】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0012】
第一の発明は、コロイダルシリカと、リチウムイオンと、電解質として下記一般式(1)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機溶媒と、が含有されてなる非水電解質二次電池用電解液である。
【0013】
【化1】

(式(1)〜(7)中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接R同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、ハロゲン化物アニオンである。)
【0014】
第二の発明は、非水電解質二次電池用電解液中のコロイダルシリカの含有量が1〜60質量%であることを特徴とする第一の発明に記載の非水電解質二次電池用電解液である。
【0015】
第三の発明は、有機溶媒として、ニトリル、ラクトン、エーテル、環状カーボネート、スルホラン、下記一般式(8)で表される鎖状スルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含むことを特徴とする第一又は第二の発明に記載の非水電解質二次電池用電解液である。
【0016】
【化2】

(一般式(8)中、R31、R32は独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を表す。)
【0017】
第四の発明は、第一から第三の発明のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電解液を用いてなることを特徴とする非水電解液二次電池である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非水電解質二次電池用電解液にコロイダルシリカを含有させることで、放電容量を向上させ、さらに電解液がゲル状となるため、液漏れが生じず、優れたサイクル寿命が得られる非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池について説明する。
【0020】
<非水電解質二次電池用電解液>
本発明は、コロイダルシリカと、リチウムイオンと、電解質として一般式(1)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機溶媒と、が含有されてなる非水電解質二次電池用電解液である。
【0021】
(電解質塩)
本発明に用いる電解質塩は、下記一般式(1)〜(7)より表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。

【0022】
一般式(1)〜(7)中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接R同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、ハロゲン化物アニオンである。
【0023】
一般式(1)で表されるハロゲン化合物塩のカチオン部の具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシエチルアンモニウム、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウム、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウム、スピロ−(1,1’)−ビピペリジニウム、ジメチルピロリジニウム、メチルエチルピロリジニウム、メチルプロピルピロリジニウム、メチルブチルピロリジニウム、メトキシメチルピロリジニウム、メトキシエチルピロリジニウム等が挙げられる。
これらの中でも、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウム、ジメチルピロリジニウム、メチルエチルピロリジニウム、メチルプロピルピロリジニウム、メチルブチルピロリジニウム、メトキシメチルピロリジニウム、メトキシエチルピロリジニウムが特に好ましく挙げられる。
【0024】
一般式(2)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメトキシアミン、ジメチルメトキシアミン、ジメチルエトキシアミン、ジエチルエトキシアミン、メチルエチルメトキシアミン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−イソプロピルピロリジン、N−ブチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−イソプロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン等が挙げられる。
これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、N−メチルピロリジンが特に好ましく挙げられる。
【0025】
一般式(3)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン等が挙げられる。
これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミンが特に好ましく挙げられる。
【0026】
一般式(4)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,3−ジプロピルイミダゾリウム、1,3−ジイソプロピルイミダゾリウム、1,3−ジブチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムが特に好ましく挙げられる。
【0027】
一般式(5)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
これらの中でも特に、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムが好ましく挙げられる。
【0028】
一般式(6)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウム、1,2−ジプロピルピラゾリウム、1,2−ジブチルピラゾリウム、1−メチル−2−プロピルピラゾリウム、1−メチル−2−ブチルピラゾリウム、1−メチル−2−ヘキシルピラゾリウム、1−メチル−2−オクチルピラゾリウム、1−メチル−2−ドデシルピラゾリウム、1,2,3,5−テトラメチルピラゾリウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−エチル−3−メトキシ−2,5−ジメチルピラゾリウム、3−フェニル−1,2,5−トリメチルピラゾリウム、3−メトキシ−5−フェニル−1−エチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3,5−ジメチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3−フェニル−5−メチルピラゾリウム、1,2−テトラメチレン−3−メトキシ−5−メチルピラゾリウム等が挙げられる。
これらの中でも、1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1,2−ジエチルピラゾリウムが特に好ましく挙げられる。
【0029】
一般式(7)で表される化合物のカチオン部の具体例としては、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−プロピルピリジニウム、N−イソプロピルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−ヘキシルピリジニウム、N−オクチルピリジニウム、N−ドデシルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−3−メチルピリジニウム、N−プロピル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−メチルピリジニウム、N−ブチル−4−エチルピリジニウム等が挙げられる。
これらの中でも、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−メチル−3−メチルピリジニウム、N−エチル−3−メチルピリジニウム、N−ブチル−3−メチルピリジニウムが特に好ましく挙げられる。
【0030】
はハロゲン化物アニオンであり、例えば、BF、PF、C(CFSO、N(FSO、N(CFSO、N(SO、CFSO、ClO等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いるリチウムイオンとしては、リチウムイオンを有する化合物を用い、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)等が挙げられる。
【0032】
電解質塩中のリチウムイオンの含有量は、0.1〜1.5mol/kgが好ましく挙げられる。0.1mol/kg未満では、過電圧が大きくなるため充放電効率が低下する恐れがあり、1.5mol/kg超では、電解質塩の融点が上昇する問題がある。
【0033】
電解質塩の含有量は、1.0〜5.0mol/lが好ましく、1.0〜3.0mol/lがより好ましく、1.0〜2.0mol/lが特に好ましく挙げられる。
1.0mol/l未満の場合、十分な電気特性が得られない欠点があり、5.0mol/l超の場合、比抵抗が上昇する欠点がある。
【0034】
(コロイダルシリカ)
コロイダルシリカとは、SiO又はその水和物のコロイドで、粒径が4〜300nmで一定の構造をもたないものである。ケイ酸塩に希塩酸を作用させた後に、透析で得ることができる。
【0035】
コロイダルシリカは、有機溶媒にほとんど溶解せず、一般に適当な分散溶媒中に分散させたコロイド溶液として電解液に添加して用いることができる。
【0036】
コロイダルシリカを含有させることで、電解液がゾル又はゲルとなるため、放電容量とサイクル寿命を向上させることができる。
【0037】
非水電解質二次電池中におけるコロイダルシリカの含有量は、1〜60質量%、より好ましくは1〜40質量%が挙げられる。
【0038】
該コロイダルシリカは、粒径がいずれのものでもよく、好ましくは4〜50nmであり、より好ましくは6〜30nmである。
【0039】
(有機溶媒)
本発明に用いる有機溶媒について説明する。有機溶媒としては、電解質を溶解できれば特には限定されず、従来公知の有機溶媒を用いることができる。例えば、ジメトキシエタン等のエタン類、アセトニトリルやメトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の環状カーボネート類、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、ジメチルスルホキシド、また、スルホラン、メチルスルホラン等の環状スルホン類、また、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、鎖状スルホン等が挙げられ、これらは、単独でも複数を混合して使用してもよい。これらの中でも特に、ニトリル類、ラクトン類、環状カーボネート類、鎖状スルホンが好ましく挙げられる。
【0040】
上記鎖状スルホンとは、下記一般式(8)で表すことができる化合物である。
【0041】
【化3】

【0042】
一般式(8)中、R31、R32は独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を表す。
【0043】
具体的な鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、イソブチルイソプロピルスルホン、メトキシエチルイソプロピルスルホン、フルオロエチルイソプロピルスルホン等が挙げられる。これらの中でも、エチルイソプロピルスルホン、エチルイソブチルスルホン、イソブチルイソプロピルスルホン、メトキシエチルイソプロピルスルホン、フルオロエチルイソプロピルスルホン等のR31及びR32の炭素数の合計が5以上、好ましくは炭素数5〜10のアルキル基である化合物は、広範な温度で使用でき、耐久性に優れるため特に好適に使用できる。
【0044】
(添加剤)
本発明の非水電解質二次電池用電解液には、さらに添加剤を含有させても良い。
【0045】
前記添加剤としては、ジブチルリン酸又は亜リン酸のリン酸化合物、ホウ酸、ホウ酸とマンニット、ソルビット等の錯化合物やホウ酸とエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールとの錯化合物等のホウ素化合物、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール等のニトロ化合物が挙げられる。
電解液の放電容量を向上させる点からジブチルリン酸又は亜リン酸のリン酸化合物が特に好ましく挙げられる。
【0046】
添加剤の添加量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく挙げられる。0.1質量%未満の場合、十分な放電容量が得られない欠点があり、30質量%超の場合、サイクル特性が低下する欠点がある。
【0047】
<非水電解質二次電池>
(正極)
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面又は両面に形成される正極活物質含有層より構成される。
正極集電体としては、アルミニウム板、アルミニウムメッシュ材等が挙げられる。正極活物質としては、二酸化マンガン、二硫化モリブデン、LiCoO、LiNiO、LiMn等のカルコゲン化合物が挙げられる。これらのカルコゲン化合物は、2種以上の混合物で用いても良い。
【0048】
正極活物質含有層には結着剤を含有させることができる。結着剤としては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂のような熱可塑性エラストマー系樹脂、又はフッ素ゴムのようなゴム系樹脂を用いることができる。その一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
導電補助材としてアセチレンブラック、粉末状膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維粉砕物、黒鉛化炭素繊維粉砕物等をさらに含有することができる。
【0049】
(負極)
負極活性物質を用いることができる。負極活性物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質物を挙げることができる。この炭素物質を含む負極は、負極の充放電効率を向上させることができるとともに、充放電に伴う負極抵抗を小さくすることができるため、非水電解質二次電池のサイクル寿命を向上させることができる。
上記炭素質物としては、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素等挙げることができる。これらの中でも、メソフェーズピッチを原料とした炭素繊維や、球状炭素を含む負極は、充放電効率が高いためサイクル寿命を向上することができる。
【0050】
負極内部の電気抵抗を低減させるために、カーボンブラックやリチウムとの合金を形成しない金属粉体等を添加してもよい。
【0051】
さらに、ポリアセン、ポリパラフェン、ポリアニリン、ポリアセチレンからなる導電性高分子材料も、負極に用いることができる。これらの材料と黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素等のグラフェン構造を有する。
【0052】
また、上記負極活性物質は粉末であるため、それにバインダを混合して、粉末同士を結合させると同時に集電体へ接着させている。
【0053】
集極体には、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板等が用いられ、材質も銅の他に、ステンレス、チタン、ニッケル等も適用可能である。
【0054】
不活性物質、バインダ、有機溶媒を混合した負極スラリーをドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法等によって集極体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって負極を加圧成形することにより、負極を作製できる。
【0055】
(セパレータ)
正極と負極の間には、セパレータ、又は、ゲル状の電解質層を配置することができる。セパレータとしては、例えば20〜30μmの厚さを有するポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム等を用いることができる。
【0056】
本発明の非水電解質二次電池用電解液は、コロイダルシリカを含有しているためゲル状となっている。そのため、セパレータを含浸させず、ゲル状の電解液をシート化し、これを正極と負極の間に介在させて用いてもよい。
【0057】
コロイダルシリカを含有させてゲル状の電解液とすることで、放電容量が高く、サイクル寿命に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【実施例】
【0058】
以下、発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明は、実施例により、なんら限定されるものではない。実施例中の「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0059】
(実施例1)
正極活性物質として、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)を用い、これに導電剤として黒鉛粉末と、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを配合し、正極を作製した。
負極活性物質として、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維粉末を用い、これにバインダとしてポリフッ化ビニリデンを配合し、負極を作製した。
炭酸プロピレン1015部と、日産化学工業株式会社製20%コロイダルシリカ(スノーテックスN、シリカ粒径10〜20nm)60部とを混合し、80℃減圧蒸留にて、水を除去し、コロイダルシリカの炭酸プロピレン溶液を得た。その溶液に、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸21.2部と、LiPFを152部とを加え混合して、非水電解質を作製した。
得られた非水電解質はゲル状であるので、セパレータを用いず、正極と負極の間に挟みこんで、コイン型の非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
(実施例2〜9)
表1に記載のコロイダルシリカの含有量と電解質塩に代えた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0061】
(比較例1)
表1に記載のコロイダルシリカを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0062】
(比較例2)
実施例2に記載のコロイダルシリカの代わりに、ポリアクリロニトリルを用いた以外は、実施例2と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0063】
(比較例3)
実施例2に記載のコロイダルシリカの代わりに、ヒュームドシリカを用いた以外は、実施例2と同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0064】
(放電容量とサイクル寿命)
実施例1〜9及び比較例1〜3より得られた非水電解質二次電池の放電容量は、4mA/cmの低電流にて、放電容量を測定した。
また、4mA/cmの低電流で、4.2〜2.5Vの範囲にて充放電サイクル試験を行い、1サイクル目の放電容量及びサイクル寿命(放電容量が初期容量の80%以下となったサイクル数)を測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
表1より、比較例1〜3より、実施例1〜9の方が、放電容量とサイクル寿命に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の非水電解質二次電池用電解液及びそれを用いた非水電解質二次電池は、放電容量とサイクル寿命に優れるため、各種用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイダルシリカと、リチウムイオンと、電解質として下記一般式(1)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、有機溶媒と、が含有されてなる非水電解質二次電池用電解液。
【化1】

(式(1)〜(7)中、R〜R30は、それぞれ同一でも異なっても良い水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、水酸基であり、隣接R同士は連結し、炭素数2〜6のアルキレン基を形成しても良い。Xは、ハロゲン化物アニオンである。)
【請求項2】
非水電解質二次電池用電解液中のコロイダルシリカの含有量が1〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用電解液。
【請求項3】
有機溶媒として、ニトリル、ラクトン、環状カーボネート、エーテル、スルホラン、下記一般式(8)で表される鎖状スルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用電解液。
【化2】

(一般式(8)中、R31、R32は独立して、ハロゲン、アルコキシ基若しくは芳香環で一部置換されていても良い炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用電解液を用いてなることを特徴とする非水電解液二次電池。

【公開番号】特開2013−97908(P2013−97908A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237364(P2011−237364)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】