説明

非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法、及び非水電解質蓄電デバイスの製造方法

【課題】改良されたエポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを提供する。
【解決手段】カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物をエポキシ樹脂多孔質膜に接触させることにより、この多孔質膜に含まれる水酸基と上記化合物とを反応させてカルボン酸エステル結合を生成させる。この処理により、エポキシ樹脂多孔質膜中に存在する活性な水酸基の量が減少し、非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして適したものとなる。多孔化する前のエポキシ樹脂シートと上記化合物とを反応させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法及び非水電解質蓄電デバイスの製造方法に関する。本発明は、特に、エポキシ樹脂を用いたセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全、化石燃料の枯渇等の諸問題を背景に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタ等に代表される非水電解質蓄電デバイスの需要が年々増加している。非水電解質蓄電デバイスのセパレータとして、従来、ポリオレフィン多孔質膜が使用されている。ポリオレフィン多孔質膜は、以下に説明する方法で製造することができる。
【0003】
まず、溶媒とポリオレフィン樹脂とを混合及び加熱してポリオレフィン溶液を調製する。Tダイ等の金型を用い、ポリオレフィン溶液をシート形状に成形しながら吐出及び冷却し、シート状の成形体を得る。シート状の成形体を延伸するとともに、成形体から溶媒を除去する。これにより、ポリオレフィン多孔質膜が得られる。成形体から溶媒を除去する工程で、有機溶剤が使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−192487号公報
【特許文献2】特開2000−30683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記製造方法において、有機溶剤として、ジクロロメタンのようなハロゲン化有機化合物を使用することが多い。ハロゲン化有機化合物の使用は、環境に対する負荷が非常に大きいので問題となっている。
【0006】
他方、特許文献2に記載されている方法(いわゆる乾式法)によれば、環境に対する負荷が大きい溶剤を使用せずにポリオレフィン多孔質膜を製造することができる。しかし、この方法には、多孔質膜の孔径を制御するのが難しい問題がある。また、この方法で製造された多孔質膜をセパレータとして用いると、蓄電デバイスの内部でイオン透過の偏りが発生しやすい問題もある。
【0007】
エポキシ樹脂多孔質膜は、ハロゲンフリーの溶剤を用いてエポキシ樹脂シートからポロゲンを除去することにより製造することができる。また、ポロゲンの含有量及び種類によって、空孔率及び孔径等のパラメータも比較的容易に制御しうる。しかし、これまで、エポキシ樹脂多孔質膜は、非水電解質蓄電デバイス用セパレータとしては特性面においてポリオレフィン多孔質膜に劣るものとみなされてきた。
【0008】
本発明の目的は、エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを製造するための新たな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させることにより、前記エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又は前記エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる処理工程と、
を具備する、非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法、を提供する。
【0010】
別の側面から、本発明は、カソード、セパレータ及びアノードを積層してなる電極群と、イオン伝導性を有する電解質と、を備え、前記セパレータがエポキシ樹脂多孔質膜を具備する、非水電解質蓄電デバイスの製造方法であって、
カソード、セパレータ及びアノードを準備する工程と、
前記カソード、前記セパレータ及び前記アノードをこの順に積層して電極群を作製する工程と、を具備し、
前記セパレータを準備する工程が、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させることにより、前記エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又は前記エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる処理工程と、を具備する、
非水電解質蓄電デバイスの製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを、非水電解質蓄電デバイスの充放電特性の向上に適するように改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電デバイスの概略断面図
【図2A】処理剤(無水酢酸)による処理に伴うエポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの変化の一例を示す図
【図2B】図2Aの部分拡大図
【図2C】図2Aの部分拡大図
【図3】処理剤(無水酢酸)による処理に伴うエポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの変化の別の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を説明する。なお、以下において、常温とは、5℃〜35℃の温度範囲を意味する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る非水電解質蓄電デバイス100は、カソード2、アノード3、セパレータ4及びケース5を備えている。セパレータ4は、カソード2とアノード3との間に配置されている。カソード2、アノード3及びセパレータ4は、一体的に巻回されて発電要素としての電極群10を構成している。電極群10は、底部を有するケース5に収容されている。蓄電デバイス100は、典型的には、リチウムイオン二次電池である。
【0015】
本実施形態において、ケース5は円筒の形状を有している。すなわち、蓄電デバイス100は円筒の形状を有している。しかし、蓄電デバイス100の形状は特に限定されない。蓄電デバイス100は、例えば、扁平な角型の形状を有していてもよい。また、電極群10は巻回構造を必須としない。カソード2、セパレータ4及びアノード3が単に積層されることによって、板状の電極群が形成されていてもよい。ケース5は、ステンレス、アルミニウム等の金属で作られている。さらに、電極群10が可撓性を有する材料で作られたケースに入れられていてもよい。可撓性を有する材料は、例えば、アルミニウム箔と、アルミニウム箔の両面に貼り合わされた樹脂フィルムとで構成されている。
【0016】
蓄電デバイス100は、さらに、カソードリード2a、アノードリード3a、蓋体6、パッキン9及び2つの絶縁板8を備えている。蓋体6は、パッキン9を介してケース5の開口部に固定されている。2つの絶縁板8は、電極群10の上部と下部とにそれぞれ配置されている。カソードリード2aは、カソード2に電気的に接続された一端と、蓋体6に電気的に接続された他端とを有する。アノードリード3aは、アノード3に電気的に接続された一端と、ケース5の底部に電気的に接続された他端とを有する。蓄電デバイス100の内部にはイオン伝導性を有する非水電解質(典型的には非水電解液)が充填されている。非水電解質は、電極群10に含浸されている。これにより、セパレータ4を通じて、カソード2とアノード3との間でイオン(典型的にはリチウムイオン)の移動が可能となっている。
【0017】
カソード2は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるカソード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。例えば、バインダーを含む溶液にカソード活物質を混合して合剤を調製し、この合剤をカソード集電体に塗布及び乾燥させることによってカソード2を作製できる。
【0018】
カソード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のカソード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化物、カルコゲン化合物等をカソード活物質として使用できる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、それらの遷移金属の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。リチウム含有遷移金属リン酸化物としては、LiFePO4、LiFePO4の遷移金属(Fe)の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。カルコゲン化合物としては、二硫化チタン、二硫化モリブデンが挙げられる。
【0019】
バインダーとしては、公知の樹脂を使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフロロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー等の炭化水素系樹脂、それらの混合物をバインダーとして使用できる。導電助剤として、カーボンブラック等の導電性粉末がカソード2に含まれていてもよい。
【0020】
カソード集電体としては、耐酸化性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムが好適に用いられる。
【0021】
アノード3は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるアノード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。アノード3も、カソード2と同様の方法で作製できる。カソード2で用いたバインダーと同様のものをアノード3に使用できる。
【0022】
アノード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のアノード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、炭素系活物質、リチウムと合金を形成しうる合金系活物質、リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti512)等をアノード活物質として使用できる。炭素系活物質としては、コークス、ピッチ、フェノール樹脂、ポリイミド、セルロース等の焼成体、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。合金系活物質としては、アルミニウム、スズ、スズ化合物、シリコン、シリコン化合物等が挙げられる。
【0023】
アノード集電体としては、例えば、還元安定性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工された銅又は銅合金が好適に用いられる。リチウムチタン複合酸化物等の高電位アノード活物質を用いる場合には、箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムもアノード集電体として使用できる。
【0024】
非水電解液は、典型的には、非水溶媒及び電解質を含んでいる。具体的には、例えば、リチウム塩(電解質)を非水溶媒に溶解させた電解液を好適に使用できる。また、非水電解液を含むゲル電解質、リチウム塩をポリエチレンオキシド等のポリマーに溶解及び分解させた固体電解質等も非水電解質として使用できる。リチウム塩としては、ホウ四フッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフロロスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)等が挙げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、これらの混合物等が挙げられる。
【0025】
次に、セパレータ4について詳しく説明する。
【0026】
本実施形態において、セパレータ4は、三次元網目状骨格と、空孔とを備えたエポキシ樹脂多孔質膜で構成されている。セパレータ4の表面と裏面との間でイオンが移動できるように、つまり、カソード2とアノード3との間をイオンが移動できるように、隣り合う空孔は互いに連通していてもよい。
【0027】
セパレータ4を構成するエポキシ樹脂多孔質膜は、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物を処理剤とする処理を受けている。この処理は、処理剤をエポキシ樹脂多孔質膜又は多孔化する前のエポキシ樹脂シートに接触させることにより、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又はエポキシ樹脂シートを構成するエポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と処理剤とを反応させてカルボン酸エステル結合を生成させるものである(以下、上記化合物による処理を「エステル化処理」と呼ぶことがある)。多孔化する前のエポキシ樹脂シートにエステル化処理を実施しても、多孔化後に得られる膜(エポキシ樹脂多孔質膜)には生成したカルボン酸エステル結合が残存する。
【0028】
エステル化処理により、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基(OH基)は減少する。この減少の程度は、赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定することにより確認することができる。
【0029】
図2A〜図2Cとして、エポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルの変化の一例を示す。また、図3として、エポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルの変化の別の一例を示す。これらの例は、無水酢酸による処理の変化を示すものであり、処理前後のスペクトルは、それぞれ後述する比較例及び実施例と同様の製法により作製したサンプルから得られたものである。IRスペクトルの1240cm-1付近における吸収ピークはC−O−C結合による吸収に由来し、1740cm-1付近における吸収ピークはC=O結合による吸収に由来する(図2B)。また、3300〜3500cm-1付近における吸収ピークはOH結合による吸収に由来する(図2C)。
【0030】
エステル化処理により、C−O−C結合及びC=O結合による吸収ピークは大きくなり、OH結合による吸収ピークは小さくなる。これは、エポキシ樹脂多孔質膜中に存在するアルコール性の水酸基(C−OH)と処理剤(無水酢酸;(CH3COO)2O)とが反応し、カルボン酸エステル結合(酢酸エステル:C−O−C(=O)−CH3)が生成したことを意味している。カルボン酸エステル結合は、一般式:C−O−C(=O)−Rにより示される。Rは処理剤に由来する有機残基であり(以下において同様)、式左端のCはエポキシ樹脂多孔質膜を構成する炭素原子である。
【0031】
エステル化処理により、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基の量が減少する。処理剤と反応する水酸基は、反応に関与しうる状態でエポキシ樹脂多孔質膜に含まれていたものである。以下、反応に関与しうる状態にある水酸基等の官能基を「活性水酸基」等ということがある。この意味において、例えば樹脂中に埋もれていて反応種と接触できない水酸基は不活性である。
【0032】
アミン系の硬化剤を用いた場合、硬化反応が十分に進行すると、硬化剤は、3級アミンとしてエポキシ樹脂の分子鎖中に取り込まれる。しかし、硬化反応が十分に進行しないと、アミン系の硬化剤は、典型的には2級アミンとしてエポキシ樹脂多孔質膜に残存する。この2級アミンも、活性水酸基と同様、エポキシ樹脂多孔質膜内に活性な反応点を形成し得る。しかし、上記のように処理剤を用いた処理を実施すると、2級アミン(−NH−)は、処理剤と反応して3級アミン(−NM−;ここで、Mは−C(=O)R)へと変化し、カルボン酸アミド結合が生成する。カルボン酸アミド結合は、一般式:N−C(=O)−Rにより示される。処理剤を用いた処理は、基本的には活性水酸基の量を減少させるためのものであるが、エポキシ樹脂の硬化反応が不十分であって2級アミンが相当量存在するエポキシ樹脂多孔質膜については、反応に関与しうる2級アミン(活性2級アミン)の量も併せて減少させるものとして利用できる。
【0033】
実験の結果、処理剤を用いた処理により活性水酸基等の活性な官能基の量を低減させたエポキシ樹脂多孔質膜を非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして使用すると、処理前のエポキシ樹脂多孔質膜をセパレータとして用いた場合よりも、非水電解質蓄電デバイスの特性が向上することが見出された。
【0034】
なお、硬化剤がすべて3級アミンに変化したとしても、エポキシ基の開環により生成した水酸基はエポキシ樹脂多孔質膜に残存し得る。従って、処理剤による処理は、通常、少なくともカルボン酸エステル結合を生成させるものとなり、活性2級アミンが残存するエポキシ樹脂多孔質膜についてはカルボン酸エステル結合とともにカルボン酸アミド結合を生成させるものとなる。
【0035】
上記のカルボン酸アミド結合に含まれるC−N結合は、1240cm-1近傍に吸収を有する。従って、1240cm-1に存在する吸収ピークの増大は、基本的にはC−O−C結合の生成に伴うものであるが、エポキシ樹脂の硬化反応が不十分であって2級アミンが相当量存在するエポキシ樹脂多孔質膜については、カルボン酸アミド結合の生成を反映するものともなる。なお、上記では、エポキシ樹脂に取り込まれた硬化剤に残る活性なアミンが2級アミンである典型的な例を示したが、膜に取り込まれた硬化剤に1級アミンが残存する場合もある。従って、より正確に述べると、カルボン酸アミド結合は、膜に残存する活性1級アミン又は活性2級アミンと処理剤とが反応して生成する。
【0036】
処理剤との接触により生成するカルボン酸エステル結合は、その生成過程から明らかなように、エポキシ樹脂を構成する主鎖から分岐した分岐鎖(−O−C(=O)−R)を構成し、エポキシ樹脂の主鎖中の炭素原子と同原子からの分岐鎖とから構成される。また、処理剤との接触により生成するカルボン酸アミド結合は、エポキシ樹脂を構成する主鎖から分岐した分岐鎖(−C(=O)−R)を構成し、エポキシ樹脂の主鎖中の窒素原子と同原子からの分岐鎖とから構成される。
【0037】
以下、好ましい処理剤を列挙する。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、トリル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等の脂肪族又は芳香族のジカルボン酸を例示できる。カルボン酸塩としては、上記に例示したカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩を挙げることができる。カルボン酸無水物としては、上記に例示したカルボン酸の無水物、例えば無水酢酸、無水フタル酸、を挙げることができる。カルボン酸ハライドとしては、上記に例示したカルボン酸のハロゲン化物、具体的にはカルボン酸フッ化物、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物を挙げることができる。
【0038】
セパレータ4は、例えば、5〜50μmの範囲の厚さを有する。セパレータ4が厚すぎると、カソード2とアノード3との間のイオンの移動が困難となる。5μm未満の厚さのセパレータ4を製造することは不可能ではないが、蓄電デバイス100の信頼性を確保するうえで、5μm以上、特に10μm以上の厚さが好ましい。
【0039】
セパレータ4は、例えば、20〜80%の範囲の空孔率を有し、0.02〜1μmの範囲の平均孔径を有する。空孔率及び平均孔径がこのような範囲に調節されていると、セパレータ4は、必要とされる機能を十分に発揮しうる。
【0040】
空孔率は、以下の方法で測定できる。まず、測定対象を一定の寸法(例えば、直径6cmの円形)に切断し、その体積及び重量を求める。得られた結果を次式に代入して空孔率を算出する。
空孔率(%)=100×(V−(W/D))/V
V:体積(cm3
W:重量(g)
D:構成成分の平均密度(g/cm3
【0041】
平均孔径は、走査型電子顕微鏡でセパレータ4の断面を観察して求めることができる。具体的には、視野幅60μm、かつ表面から所定の深さ(例えば、セパレータ4の厚さの1/5〜1/100)までの範囲内に存在する空孔のそれぞれについて、画像処理を行って孔径を求め、それらの平均値を平均孔径として求めることができる。画像処理は、例えば、フリーソフト「Image J」又はAdobe社製「Photoshop」を使用して行える。
【0042】
また、セパレータ4は、例えば1〜1000秒/100cm3、特に10〜1000秒/100cm3の範囲の通気度(ガーレー値)を有していてもよい。セパレータ4がこのような範囲に通気度を有していることにより、カソード2とアノード3との間をイオンが容易に移動しうる。通気度は、日本工業規格(JIS)P8117に規定された方法に従って測定できる。
【0043】
エポキシ樹脂多孔質膜は、例えば、下記(a)(b)及び(c)のいずれかの方法で製造することができる。方法(a)及び(b)は、エポキシ樹脂組成物をシート状に成形した後で硬化工程を実施する点で共通している。方法(c)は、エポキシ樹脂のブロック状の硬化体を作り、その硬化体をシート状に成形することを特徴としている。
【0044】
方法(a)
エポキシ樹脂組成物のシート状成形体が得られるように、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に限定されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。
【0045】
方法(b)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、塗布したエポキシ樹脂組成物の上に別の基板を被せてサンドイッチ構造体を作製する。なお、基板と基板との間に一定の間隔を確保するために、基板の四隅にスペーサー(例えば、両面テープ)を設けてもよい。次に、サンドイッチ構造体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートを取り出し、ポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に制限されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。特に、ガラス基板を好適に使用できる。
【0046】
方法(c)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を所定形状の金型内に充填する。その後、エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、円筒状又は円柱状のエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、エポキシ樹脂組成物の硬化体を円筒軸又は円柱軸を中心に回転させながら、硬化体の表層部を所定の厚さに切削して長尺状のエポキシ樹脂シートを作製する。そして、エポキシ樹脂シートに含まれたポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
【0047】
以下、方法(c)を例として取り上げつつ、エポキシ樹脂多孔質膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。なお、エポキシ樹脂組成物を調製する工程、エポキシ樹脂を硬化させる工程、ポロゲンを除去する工程等は、各方法に共通している。また、使用できる材料も各方法に共通である。
【0048】
方法(c)によれば、エポキシ樹脂多孔質膜は、以下の主要な工程を経て製造される。(i)エポキシ樹脂組成物を調製する。
(ii)エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する。
(iii)エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去する。
【0049】
まず、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲン(細孔形成剤)を含むエポキシ樹脂組成物を調製する。具体的には、エポキシ樹脂及び硬化剤をポロゲンに溶解させて均一な溶液を調製する。
【0050】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び非芳香族エポキシ樹脂のいずれも使用可能である。芳香族エポキシ樹脂としては、ポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、複素芳香環(例えば、トリアジン環)を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。ポリフェニルベースエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースエポキシ樹脂等が挙げられる。非芳香族エポキシ樹脂としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好適であり、これらの中でも6000以下のエポキシ当量及び170℃以下の融点を有するものを好適に使用できる。これらのエポキシ樹脂を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐薬品性及び高い強度を付与できる。
【0052】
非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして用いるエポキシ樹脂としては、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0053】
硬化剤としては、芳香族硬化剤及び非芳香族硬化剤のいずれも使用可能である。芳香族硬化剤としては、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環を含むアミン(例えば、トリアジン環を含むアミン)等が挙げられる。非芳香族硬化剤としては、脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン)、脂環族アミン類(例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品)、ポリアミン類とダイマー酸とを含む脂肪族ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
これらの中でも、分子内に一級アミンを2つ以上有する硬化剤を好適に使用できる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリメチレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらの硬化剤を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に高い強度及び適切な弾性を付与できる。
【0055】
エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂肪族アミン硬化剤との組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤との組み合わせ、又は脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにより、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐熱性を付与できる。
【0056】
ポロゲンは、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができる溶剤でありうる。ポロゲンは、また、エポキシ樹脂と硬化剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることができる溶剤として使用される。具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類をポロゲンとして使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
これらの中でも、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、分子量600以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びポリオキシエチレンジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。特に、分子量200以下のポリエチレングリコール、分子量500以下のポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらのポロゲンを使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
また、個々のエポキシ樹脂又は硬化剤と常温で不溶又は難溶であっても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物が可溶となる溶剤についてはポロゲンとして使用可能である。このようなポロゲンとしては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート5058」)が挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂多孔質膜の空孔率、平均孔径及び孔径分布は、原料の種類、原料の配合比率及び反応条件(例えば、反応誘起相分離時における加熱温度及び加熱時間)に応じて変化する。そのため、目的とする空孔率、平均孔径、孔径分布を得るために、最適な条件を選択することが好ましい。また、相分離時におけるエポキシ樹脂架橋体の分子量、分子量分布、溶液の粘度、架橋反応速度等を制御することにより、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの共連続構造を特定の状態で固定し、安定した多孔質構造を得ることができる。
【0060】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合比率は、例えば、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.5である。適切な硬化剤当量は、エポキシ樹脂多孔質膜の耐熱性、化学的耐久性、力学特性等の特性の向上に寄与する。
【0061】
硬化剤の他に、目的とする多孔質構造を得るために、溶液中に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの総重量に対して、一般には、40〜80重量%のポロゲンを使用することができる。適切な量のポロゲンを使用することにより、所望の空孔率、平均孔径及び通気度を有するエポキシ樹脂多孔質膜を形成しうる。
【0063】
エポキシ樹脂多孔質膜の平均孔径を所望の範囲に調節する方法の1つとして、エポキシ当量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。その際、エポキシ当量の差は100以上であることが好ましく、常温で液状のエポキシ樹脂と常温で固形のエポキシ樹脂とを混合して用いる場合もある。
【0064】
次に、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含む溶液からエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。具体的には、溶液を金型に充填し、必要に応じて加熱する。エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、所定の形状を有する硬化体が得られる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとが相分離することにより、共連続構造が形成される。
【0065】
硬化体の形状は特に限定されない。円柱状又は円筒状の金型を使用すれば、円筒又は円柱の形状を有する硬化体を得ることができる。硬化体が円筒又は円柱の形状を有していると切削工程を実施しやすい。
【0066】
硬化体の寸法は特に限定されない。硬化体が円筒又は円柱の形状を有している場合、エポキシ樹脂多孔質膜の製造効率の観点から、硬化体の直径は、例えば20cm以上であり、好ましくは30〜150cmである。硬化体の長さ(軸方向)も、得るべきエポキシ樹脂多孔質膜の寸法を考慮して適宜設定することができる。硬化体の長さは、例えば20〜200cmであり、取扱いやすさの観点から20〜150cmであることが好ましく、20〜120cmであることがより好ましい。
【0067】
次に、硬化体をシート状に成形する。円筒又は円柱の形状を有する硬化体は、以下の方法でシート状に成形されうる。具体的には、硬化体をシャフトに取り付け、長尺の形状を有するエポキシ樹脂シートが得られるように、切削刃(スライサー)を用いて、硬化体の側面の表層部を所定の厚さで切削(スライス)する。詳細には、硬化体の円筒軸O(又は円柱軸)を中心として、切削刃に対して硬化体を相対的に回転させながら硬化体の表層部を切削する。この方法によれば、効率的にエポキシ樹脂シートを作製することができる。
【0068】
硬化体を切削するときのライン速度は、例えば2〜70m/minの範囲にある。エポキシ樹脂シートの厚さは、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さ(5〜50μm、特に10〜50μm)に応じて決定される。ポロゲンを除去して乾燥させると厚さが若干減少するので、エポキシ樹脂シートは、通常、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さよりも若干厚い。エポキシ樹脂シートの長さは特に限定されないが、エポキシ樹脂シートの製造効率の観点から、例えば100m以上であり、好ましくは1000m以上である。
【0069】
さらに、エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出し、除去する(多孔化工程)。具体的には、ハロゲンフリーの溶剤にエポキシ樹脂シートを浸漬することによって、エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去することが好ましい。これにより、エポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
【0070】
エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去するためのハロゲンフリーの溶剤として、水、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びTHF(テトラヒドロフラン)からなる群より選ばれる少なくとも1つをポロゲンの種類に応じて使用できる。また、水、二酸化炭素等の超臨界流体もポロゲンを除去するための溶剤として使用できる。エポキシ樹脂シートからポロゲンを積極的に除去するために、超音波洗浄を行ってもよく、また、溶剤を加熱して用いてもよい。
【0071】
ポロゲンを除去するための洗浄装置も特に限定されず、公知の洗浄装置を使用できる。エポキシ樹脂シートを溶剤に浸漬することによってポロゲンを除去する場合には、洗浄槽を複数備えた多段洗浄装置を好適に使用できる。洗浄の段数としては、3段以上がより好ましい。また、カウンターフローを利用することによって、実質的に多段洗浄を行ってもよい。さらに、各段の洗浄で、溶剤の温度を変えたり、溶剤の種類を変えたりしてもよい。
【0072】
ポロゲンを除去した後、エポキシ樹脂多孔質膜の乾燥処理を行う。乾燥条件は特に限定されず、温度は通常40〜120℃程度であり、50〜100℃程度が好ましく、乾燥時間は10秒〜5分程度である。乾燥処理には、テンター方式、フローティング方式、ロール方式、ベルト方式等の公知のシート乾燥方法を採用した乾燥装置を使用できる。複数の乾燥方法を組み合わせてもよい。ただし、引き続き活性な官能基の処理を行う場合には、この乾燥工程は省略してもよい。
【0073】
カルボン酸エステル結合を生成させる処理工程では、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物が処理剤として使用される。処理工程は、ポロゲンを除去する多孔化工程の前後いずれに実施してもよい。処理工程は、多孔化工程との併合工程として実施することもできる。すなわち、処理工程と多孔化工程との関係は、以下の1)〜3)のとおりとなる。
【0074】
1)処理工程は多孔化工程の前に実施することができる。この場合は、多孔化される前のエポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートが処理の対象となり、エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と上記化合物とが反応して、カルボン酸エステル結合が生成する。
【0075】
2)処理工程は多孔化工程の後に実施することができる。この場合は、エポキシ樹脂多孔質膜が処理の対象となり、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基と上記化合物とが反応して、カルボン酸エステル結合が生成する。
【0076】
3)処理工程は多孔化工程との併合工程として実施することができる。この場合は、1つにまとめられた併合工程において、上記化合物とポロゲンを除去するための溶剤とを含む処理液が用いられ、エポキシ樹脂シートからポロゲンが除去されながらカルボン酸エステル結合が生成する。言い換えると、エポキシ樹脂シートからポロゲンが除去されることによる多孔化と多孔化により形成される表面におけるカルボン酸エステル結合の生成とが並行して進行する。
【0077】
実験により確認されたところによると、上記1)〜3)のいずれによっても、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基等の量は低下する。
【0078】
活性な官能基の処理は、処理剤を含む処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又は多孔化する前のエポキシ樹脂シートを接触させること、具体的には(ア)処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートを浸漬させる、又は(イ)処理液をエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに塗布又は噴霧する、ことにより実施することができる。処理液としては水溶液が好適であるが、これに限らず、処理剤の種類によっては、溶媒としてトルエン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、これらの混合溶媒等を用いてもよい。また、処理剤が処理温度で液体である場合は、その液体をそのまま処理液として用いることも可能である。即ち、処理液としては、液体である処理剤又は処理剤を含む溶液を用いることができる。
【0079】
処理液の塗布又は噴霧による官能基の処理は、処理液の蒸発を考慮する必要がないために処理液の濃度調整が不要であるとともに処理液の必要量を見積もりやすいこと、吐出口の温度を調整すれば容易に処理液の温度を制御できること等の理由から、量産に適している。
【0080】
活性な官能基の処理は、(ウ)処理液の蒸気をエポキシ樹脂多孔質膜に接触させることにより実施することもできる。例えば、巻き取った状態のエポキシ樹脂多孔質膜、すなわちエポキシ樹脂多孔質膜の巻回体を、処理液の蒸気を含む雰囲気に接した状態で静置しておくことにより、官能基を処理することが可能である。この処理は、例えばエポキシ樹脂多孔質膜の巻回体を内部に静置した容器や処理室に処理液の蒸気を供給することにより実施することができる。
【0081】
処理液は、常温でエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに接触させれば足りるが、必要に応じて、常温を超える温度にまで加熱してもよい。この場合の加熱温度は、例えば常温を超え80℃の範囲、特に常温を超え70℃以下の範囲である。また、処理時間は、エポキシ樹脂多孔質膜等の表面に処理剤が十分行き渡る時間とすればよいが、浸漬又は塗布による場合は、例えば常温では10秒間〜30分間、常温を超えた温度域では1秒間〜5分間が適切である。
【0082】
処理液との接触の後、必要に応じてエポキシ樹脂多孔質膜を加熱するとよい。加熱条件は、水酸基のエステル化等が十分進行するように適宜定めればよいが、一例を挙げると常温の範囲から80℃に至る温度範囲、特に常温の範囲から70℃に至る温度範囲、1秒間〜60分間、場合によっては5〜60分間の条件が適切である。また、加熱に先立って、エポキシ樹脂多孔質膜は、余分な溶液を除去するために乾燥させておいてもよい。この乾燥は、通常、常温で実施する風乾により行えば足りる。
【0083】
加熱した後には、膜中に残存するカルボン酸等の化合物を除去するために、エポキシ樹脂多孔質膜の洗浄が実施され、さらに乾燥処理が実施される。洗浄のための溶剤としては、水が適しているが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、これらの混合溶媒、これらと水との混合溶媒等を用いてもよい。洗浄及び乾燥のための装置ならびに温度については、ポロゲンの洗浄及び乾燥について上述した装置及び温度を適用することができる。
【0084】
上記1)によれば、ポロゲンを除去する多孔化工程においてポロゲンとともに処理剤として用いる上記化合物を除去することができる。このため、処理剤を除去するための洗浄を追加して実施する必要がない。また、上記3)によれば、処理剤による処理工程を多孔化工程と別の工程として実施する必要がない。従って、上記1)及び3)は製造効率上、上記2)よりも有利である。
【0085】
上記1)〜3)のいずれを採用する場合でも、本実施形態では、多孔化工程及び処理工程の前に、エポキシ樹脂シートを得るための工程として、
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
エポキシ樹脂シートが得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する又はエポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させる工程と、が実施されることは上述したとおりである。
【0086】
なお、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜のみで構成されていてもよいし、エポキシ樹脂多孔質膜と他の多孔質材料との積層体で構成されていてもよい。他の多孔質材料としては、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜等のポリオレフィン多孔質膜、セルロース多孔質膜、フッ素樹脂多孔質膜等が挙げられる。他の多孔質材料は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0087】
同様に、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜と補強材との積層体で構成されていてもよい。補強材としては、織布、不織布等が挙げられる。補強材は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、RO水は逆浸透膜を用いて処理して得た純水を、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを、v/vは体積比を、それぞれ意味する。特性の評価方法は以下のとおりとした。
【0089】
[空孔率]
各実施例及び比較例で用いたエポキシ樹脂とアミン(硬化剤)とを用いてエポキシ樹脂の無孔体を作製し、この無孔体の比重及び各エポキシ樹脂多孔質膜の比重から、空孔率を算出した。
【0090】
[通気度]
日本工業規格(JIS)P8117で規定された方法に従って、各エポキシ樹脂多孔質膜の通気度(ガーレー値)を測定した。
【0091】
[リチウムイオン二次電池の特性評価]
各セパレータについて、以下の方法によりリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
89重量部のコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシードC−10)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)、5重量部のPVDF(呉羽化学工業社製、KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてカソード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのカソード活物質層を有するカソードを得た。
【0093】
80重量部のメソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル社製、MCMB6−28)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)、10重量部のPVDF(呉羽化学工業社製、KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてアノード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmの銅箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのアノード活物質層を有するアノードを得た。
【0094】
次に、カソード、アノード及びセパレータを用いて電極群を組み立てた。具体的には、カソード、エポキシ樹脂多孔質膜(セパレータ)及びアノードを積層し、電極群を得た。電極群をアルミニウムラミネートパッケージに入れた後、パッケージに電解液を注入した。電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:2の体積比で含む溶媒にLiPF6を1.4mol/リットルの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネートを1重量%含むものを用いた。最後に、パッケージを封口して、リチウムイオン二次電池を得た。
【0095】
以上により得た各リチウムイオン二次電池について、以下に従って、初期充放電容量、放電効率及び連続充電後の容量維持率を測定した。なお、各試験には、他の試験を受けていない新しい電池を使用した。
【0096】
[初期充放電容量]
25℃の温度、0.2CmAの電流で、各電池の充放電を3回繰り返した。充電は4.2Vまで定電流充電、そこからは定電圧充電とした。また、放電は定電流放電で、カットオフ電圧は2.75Vとした。このとき、1回目の放電容量を初期容量として測定した。
【0097】
[3rd/1st放電効率]
25℃の温度、0.2CmAの電流で、各電池を3回充放電させた。充電は4.2Vまで定電流充電、そこからは定電圧充電とした。また、放電は定電流放電で、カットオフ電圧は2.75Vとした。各電池において、1回目の放電量に対する3回目の放電量を%で算出した。
【0098】
[連続充電後の容量維持率(1C容量維持率)]
電池を温度60℃の恒温槽に入れ、電流0.2CmA、電圧4.25Vの定電流定電圧充電を40日間行った。2.75Vをカットオフ電圧とし、0.2CmAの電流で定電流放電した。
【0099】
上記試験を実施した電池について、25℃の温度、0.2CmA、4.2Vの定電流定電圧充電を1回行い、2.75Vをカットオフ電圧とし、0.2CmAの電流で定電流放電した。その後、0.2CmA、4.2Vの定電流定電圧充電を行い、2.75Vをカットオフ電圧とし、1CmAの定電流放電を行った。上記1CmAでの放電容量を初期容量(初期充放電容量を求める試験において得た初期容量)で除し、容量維持率とした。
【0100】
(比較例1)
3Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828、エポキシ当量184〜194g/eq.)1146.5gとジアミノヘキサン(1級、和光純薬製)94.2gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)1680gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記ジアミノヘキサン380gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転800rpmの比率で10分間撹拌する手順を2回繰り返した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には70.0℃に達した。
【0101】
その後、数日間自然冷却させ、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0102】
(実施例1)
比較例1で作製したエポキシ樹脂多孔質膜を、無水酢酸(特級、和光純薬製)に常温で10分間浸漬させた。その後、エポキシ樹脂多孔質膜を取り出し、エタノールに10分間浸漬させ、さらにRO水に10分間浸漬させ、残存無水酢酸を除去した。引き続き、50℃のオーブンで1時間乾燥させ、無水酢酸で処理したエポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0103】
(比較例2)
比較例1で作製したエポキシ樹脂多孔質膜を、5mMの硫酸溶液(溶媒はRO水とDMFとの体積比率50:50の混合溶媒)に10分間浸漬させた。その後、エポキシ樹脂多孔質膜を取り出し、エタノールに10分間浸漬させ、次にRO水に10分間浸漬させ、残存硫酸を除去した。引き続き、50℃のオーブンで1時間乾燥させ、硫酸で処理したエポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0104】
(参照例)
セルガード社製ポリプロピレン多孔質膜CG2400を用いた。
【0105】
実施例1及び比較例1〜2についての評価結果を参照例についての評価結果とともに表1及び表2にまとめて示す。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
表1に示すように、実施例1によるエポキシ樹脂多孔質膜は、リチウムイオン二次電池の充放電特性において、対応する比較例1のエポキシ樹脂多孔質膜から得られる特性を改善するものとなった。活性な官能基を処理することにより、エポキシ樹脂多孔質膜をセパレータとして適したものに改良できることが理解できる。硫酸を用いた処理によっても、リチウムイオン二次電池の3rd/1st放電効率は向上した(比較例2)。しかし、その向上の程度は限定的であり、無水酢酸による処理(実施例1)の効果には及ばなかった。
【0109】
(比較例3)
10Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)3126.9gと1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)94.6gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)5400gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記ジアミノヘキサン380gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転300rpmで10分間撹拌する手順を9回繰り返した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には48.2℃に達した。
【0110】
その後、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液に30分間浸漬し、次にRO水のみで10分間浸漬を2回繰り返すことでポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0111】
(実施例2)
比較例3と同様にして30μmの厚みで連続的にスライスしたエポキシ樹脂シートについて、RO水でポロゲン(ポリプロピレングリコール)を除去する前に無水酢酸で処理した。この処理は、エポキシ樹脂シートを1分間無水酢酸と接触させることにより実施した。引き続き、60℃のRO水に5分間浸漬することにより、無水酢酸及びポリプロピレングリコールを除去した。その後、100℃での乾燥を1時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0112】
(実施例3)
比較例3と同様にして30μmの厚みで連続的にスライスしたエポキシ樹脂シートについて、RO水でポロゲン(ポリプロピレングリコール)を除去する前に無水酢酸で処理した。この処理は、エポキシ樹脂シートを10分間無水酢酸と接触させることにより実施した。引き続き、60℃のRO水に5分間浸漬することにより、無水酢酸及びポリプロピレングリコールを除去した。その後、100℃での乾燥を1時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0113】
実施例2〜3及び比較例3についての評価結果を参照例についての評価結果とともに表3及び表4にまとめて示す。なお、表4におけるガーレー値は、表2と同様、測定値×(20/d)の値である。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
表3に示すように、実施例2〜3によるエポキシ樹脂多孔質膜は、リチウムイオン二次電池の充放電特性において、対応する比較例のエポキシ樹脂多孔質膜から得られる特性を改善するものとなった。
【0117】
なお、上述の結果から類推できることであるが、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物又はカルボン酸ハライドに相当する無水酢酸以外の処理剤を用いた場合にも、リチウムイオン二次電池の充放電特性が改善することが別の実験により確認できている。一例を挙げると、未処理品をセパレータとした場合の3rd/1st放電効率が98.7%であるリチウムイオン二次電池について、セパレータにイソフタル酸クロライドを用いた処理を実施したところ、3rd/1st放電効率は99.2%に上昇した。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によって提供されるセパレータは、リチウムイオン二次電池等の非水電解質蓄電デバイスに好適に使用でき、特に、車両、オートバイ、船舶、建設機械、産業機械、住宅用蓄電システム等に必要とされる大容量の二次電池に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0119】
2 カソード
3 アノード
4 セパレータ
100 非水電解質電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法であって、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させることにより、前記エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又は前記エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる処理工程と、
を具備する、非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項2】
液体である前記化合物又は前記化合物を含む溶液に前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートを浸漬することにより、前記水酸基と前記化合物とを反応させる、請求項1に記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項3】
液体である前記化合物又は前記化合物を含む溶液を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに塗布又は噴霧することにより、前記水酸基と前記化合物とを反応させる、請求項1に記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項4】
前記処理工程を前記多孔化工程の前に実施し、前記エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項5】
前記処理工程を前記多孔化工程の後に実施し、前記エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項6】
前記化合物と前記溶剤とを含む処理液を用いて前記エポキシ樹脂シートから前記ポロゲンを除去しながら前記カルボン酸エステル結合を生成させることにより、前記処理工程と前記多孔化工程とを1つの併合工程として実施する、請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂シートを得るための工程として、
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を調製する工程と、
エポキシ樹脂シートが得られるように、前記エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する又は前記エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を硬化させる工程と、
をさらに具備する、請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータの製造方法。
【請求項8】
カソード、セパレータ及びアノードを積層してなる電極群と、イオン伝導性を有する電解質と、を備え、前記セパレータがエポキシ樹脂多孔質膜を具備する、非水電解質蓄電デバイスの製造方法であって、
カソード、セパレータ及びアノードを準備する工程と、
前記カソード、前記セパレータ及び前記アノードをこの順に積層して電極群を作製する工程と、を具備し、
前記セパレータを準備する工程が、
エポキシ樹脂多孔質膜が得られるように、エポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートから溶剤を用いて前記ポロゲンを除去して多孔化する多孔化工程と、
カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物を前記エポキシ樹脂多孔質膜又は前記エポキシ樹脂シートに接触させることにより、前記エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又は前記エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させて、カルボン酸エステル結合を生成させる処理工程と、を具備する、
非水電解質蓄電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20946(P2013−20946A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−116996(P2012−116996)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】