説明

非活性Wnt抑制ポリペプチド及びその製造方法

本発明は(a)細胞膜受容体なしで細胞膜を透過できるようにするPTD(protein transduction domain);及び(b)単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性になり、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWAD(Wnt antagonist domain)を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIPs)、その製造方法及び前記非活性WIPsを有効成分として含む医薬組成物に関するものである。
本発明による非活性WIPsは、実用的に組換え大腸菌のようなバクテリアの培養によって大量生産が可能で、投与する前には非活性状態であるので、従来から知られた類似の用途の活性タンパク質(sFRP類、DKK類など)に比べて、その生産コストが数十分の一に過ぎなく、分離・精製及び取り扱い・投薬過程が非常に簡単で便利である。本発明による非活性WIPsを生体内に投与する場合、従来から知られているsFRP類やDKK類とは異なる薬理機構によって、癌細胞の浸潤性成長と転移を抑制し、リウマチ性関節炎のような兔疫性疾患の治療効果を持つ。

【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は(a)細胞膜受容体なしに細胞膜を透過できるようにするPTD(protein transduction domain);及び(b)単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性化され、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWAD(Wnt antagonist domain)を含む、非活性Wnt抑制ポリペプチド(Wnt inhibition polypeptides: WIPs),その製造方法、及び前記非活性WIPsを有効成分として含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Wnt遺伝子は、Drosophilaの発生を調節する遺伝子(wingless)がマウスの癌発生遺伝子(Int-1)と同じものという事実から由来した(Cell, 50:649, 1987)。その後、Wnt信号伝達体系は約20個の類似遺伝子群からなり、これらは特定の受容体、すなわちFrizzled受容体(Fz)とLRP5/6補助受容体を介して細胞内で信号を伝達すると知られている。FzとLRPを介して伝達された信号はDvl(Dishevelled)、APC(adenomatous polyposis coli)、Axinを経って、最後にはGSK3−β(glycogen synthase kinase 3-β)によるβ-カテニン(β-catenin)の活性化を調節し、したがってβ-カテニンはWnt信号伝達体系の鍵となる調節因子である(Science, 303:1483, 2004;Genes Dev., 11:3286, 1997)。一方、β-カテニンはTCF(T-cell factor)/Lef(lymphoid enhancing factor)と結合して多様な遺伝子の転写と、β-カテニンを含むWnt信号伝逹構成要素の異相を調節し、最も代表的な癌発生因子である(Biochem. Biophy. Acta, 1653:1, 2003)。
【0003】
ヒトに発生する悪性腫瘍が、正常細胞または組織と異なる二つの特徴は、連続した細胞分裂と、他の臓器への転移である。特に、上皮由来の腫瘍(悪性腫瘍の95%)の他の部位への転移は、患者の生存に決定的な役目を担うようになる。しかし、癌細胞の細胞学的転移機構はよく知られていない。今まで上皮細胞の細胞間接合タンパク質は、E−cadherinが転移を調節する重要な因子として考えられたが、癌細胞のE−cadherin発現調節機構はほとんど知られていない。最近、ヒトのSnail遺伝子がE−cadherinのmRNA転写を直接的に抑制すると報告され(Nature Cell Biol., 2:84, 2000;Nature Cell Biol., 2:76, 2000;Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:155, 2002)、より最近は、Wnt信号伝達体系がGSK3−β活性化を抑制してβ-カテニンだけではなく、Snailのリン酸化と半減期を調節すると知られている(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)。これはWnt信号伝達体系が癌発生だけではなく、癌細胞の転移過程をもともに調節することを示唆することであり、したがってWnt信号伝達体系を遮断する場合、癌細胞の成長と転移の抑制の可能性を示唆するものである。
【0004】
一方、リウマチ性関節炎(Rheumatic Arthritis, RA)の一番代表的な発病機構は、活性化FLS(fibroblast-like synoviocytes)の増殖とこれによる関節の退行性変化であり、最近FLSの増殖がWntによって誘導され、Wntアンタゴニスト(antagonist)を使えば、FLSの活性化が力強く抑制されて、RAの新しい治療法としての可能性が提示されている(Rhuematol., 44:708, 2005)。また、肺線維症(pulmonary fibrosis)のような纎維症疾患でも、Wnt/β-カテニン信号伝逹の活性化が呼吸困難をもたらす肺纎維症をもたらすと知られて(Am. J. Pathol., 162:1495, 2003)、Wnt信号伝達体系は幹細胞分化だけではなく(Nature, 432:324, 2004)、多様な疾患の発病機構として把握されている。したがって、Wnt信号伝達体系を効果的に遮断できる方法が提示されたら、癌を含む多様な疾患の画期的な治療法が開発できるだろう。
【0005】
特に、ヒトを含む高等動物ではWnt信号を抑制できるタンパク質群が存在する。これらはWntタンパク質と同じように分泌されてFz受容体やLRP補助受容体に結合することで、Wnt信号に拮抗(antagonist)作用する(J. Cell Sci., 116:2627, 2003)。これらWntアンタゴニストは二つの群として分類することができる:(1)sFRP1−5、sizzled1−2、Crescent、WIF−1、CocoのようなsFRP(secreted Frizzled-related protein)群(J. Cell Sci., 116:2627, 2003);及び(2)DKK1−4、Soggy(Nature, 411:255, 2001)のようなDickkopf(DKK)群。
【0006】
したがって、これらWntアンタゴニストがSnail遺伝子のリン酸化を促進して、結果的にE−cadherin転写を増加させ、上皮由来癌細胞の浸潤性成長と転移を抑制できたら(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)、癌細胞の転移を抑制する画期的な治療法を提示して、さらにはWnt信号によって誘導される多様な疾患の効果的な治療法を開発できるだろう。
【0007】
しかし、タンパク質を効果的に細胞及び組織に伝達する方法はさまざまな技術的問題を起こす。最近、タンパク質を細胞内で効果的に伝達できるタンパク質導入ドメイン(protein transduction domain: PTD;Joliot、A.ら、Nature Cell Biol., 6:198, 2004;アメリカ特許2006/0222657A1)が発見されることによって、生物学的活性の期待できる多様なペプチドの細胞内への伝達が可能となった。
【0008】
PTDとしてはTAT(transactivator of transcription)、AntHD(Drosophilahomeoprotein atennapedia transcription protein)、VP22(virus protein22)ペプチド及びmph−1−btm(mouse transcription inhibitory facter-1-biomolecule transduction mortif)、Penetratin、Buforin II、Transportan、Ku70、Prion、pVEC、Pep−1、PTD−5、KALA(Joliot、A.ら、Nature Cell Biol., 6:198, 2004;Kabouridis, P.S., Trends Biotechnol., 21:498, 2003)などが知られている。前記PTDは、典型的には自然状態で陽イオンであり、細胞膜受容体なしにエンドソーム(endosome)にある脂質ラフト(lipid raft)へ入いることによって、細胞質に輸送され、細胞内でエンドソームの形態である運搬体を分離する。
【0009】
一番よく知られているTATの場合、TATタンパク質に存在する9つの塩基性アミノ酸(RKKRRQRRR)からなる部分が、細胞膜を通過するのに重要な役割を担うのが明かになった。しかし、TAT(RKKRRQRRR)は陽電荷を持つアミノ酸が高い頻度で存在するので透過率が低く、TAT−融合タンパク質は自然状態では細胞内に運ばれず、変性状態で細胞内へ運ばれた後、細胞内でタンパク質のリフォールディング(refolding)が起きて活性を持つので、TAT−融合タンパク質の安定性及び細胞内での保持性が、自然状態より効率的でないという問題があるだけではなく(Schwartze, S.R.ら、Trends in Cell Biology, 10:290, 2000)、TAT−融合タンパク質がエンドサイトーシス(endocytosis)を介して細胞内へ入ると、細胞内運搬体と結合した形態で残っているので後続過程として起きる細胞質(cytoplasm)、核(necleus)または細胞器官(organelle)への移動が効率的に起きないという問題がある。また、AntHD(Drosophila homeoprotein atennapedia transcription protein)の場合、100アミノ酸未満の長さのタンパク質だけを融合できるという問題がある。
【0010】
タンパク質を細胞内へ効果的に伝達できる、もう一つの物質として、インフルエンザ膜融合タンパク質(influenza membrane fusion protein)であるヘマグルチニン2(haemagglutinin2, HA2 domain;Skehel, J.J.ら、Biochem. Society Med., 10:310, 2004;Jehangir, S.W.ら、Nature Medicine, 10:310, 2004;Vaccaro, L.ら、Biophy. J., 88:25, 2005)が知られており、それは、マクロピノソーム(macropinosome)またはエンドソーム(endosome)による生物学的活性の減少を回避することができ、そして細胞透過率を向上することができる。
【0011】
インフルエンザのヘマグルチニン(HA)は、ウィルス外被(viral envelope)の成分である糖タンパク質(glycoprotein)の一種で、標的細胞にウィルスが附着するようにするか、標的細胞膜とウィルス外被膜(viral envelope membrane)が融合するようにすることによって介在する役目を担う。一般的なウィルス感染の場合、細胞表面に附着したウィルスは、エンドソームに入って相対的に低いpHに露出される。前記のようなpHの変化は、構造変化の引き金となり、この構造変化は、HAのアミノ末端がたくさん露出する形態的な変化だけではなく、ウィルス外被とエンドソーム膜間の融合を起こす。
【0012】
HAはHA1とHA2の2個のポリペプチド断片で構成され、HA1断片は、シアル酸(sialic acid)-結合部位を形成して宿主細胞表面に附着するように介在する役目を担う。HA2断片は膜−spanning anchorを形成して、前記アミノ-末端部位が融合反応機構で作用するようになる。
【0013】
ヘマグルチニン2(haemagglutinin2, HA2 domain)は一つ以上のT−ヘルパー細胞認識部位を持つが、B−細胞認識部位は持たないので、HA2ドメインに結合した抗原に対してT−依存性免疫学的反応を誘発するが、その自体に対しては抗体反応を誘導しない。HA2セグメントは、ウィルスの脂質外膜によって一般的に延長されたカルボキシ末端近くに疎水性アミノ酸配列を含むので、リポソームの脂質二重層との結合を促進して細胞内へタンパク質を効果的に伝達できるヘルパーペプチドとして適する。また、HA2とPTDを同時に利用する場合、エンドソーム(endosome)から細胞質(cytoplasm)、核(nucleus)または他の細胞内器官へ、ポリペプチド、タンパク質などの異種分子(heterologous molecules)を分泌する機能が向上して、細胞内への透過を促進すると報告されている(アメリカ特許2006/0222657A1)。
【0014】
HA2と類似の機能をするペプチドとしてはインフルエンザウィルス由来diINF−7ドメイン、B型肝炎ウィルス(Hepatitis B virus, HBV)由来TLM(translocation motif)、ヒトパピロマウィルス(Human Papilloma Virus, HPV)由来L2 domain、抗生物質として開発されたヒスタチン5(Histatin 5)ドメイン、合成ペプチドであるdhvar4ドメイン及びdhvar5ドメインなどが知られている(Stoeckl, L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci., 103:6730;2006;Kamper, N., J. Virol., 80:759, 2006;Mastrobattista, E.ら、J. Biol. Chem., 277:27135, 2002;den Hertog, A.L.ら、Biochem. J., 379:665, 2004)。これらは、細胞内へ導入されたウィルスやペプチドが、囲まれている脂質膜を通過し、細胞質に流離するように機能する(endosomal escape、endosomal rescue)。
【0015】
PTDを利用する場合、比較的大きいタンパク質も受容体なしに細胞内へ伝達できることが知られていて、HSPs(heat shock proteins)などによって生物学的活性を持ったタンパク質にリフォールディング(refolding)されることが期待できる(Nature Med., 4:1449, 1998;Science, 285:1569, 1999)。しかしながら、細胞及び組織にタンパク質を効果的に運搬する方法は、様々な技術的問題に直面している。最近、HIVに存在するタンパク質導入ドメイン(PTD)を用いて、細胞にタンパク質を効果的に運搬する方法が示唆された(Nature Med., 4:1449, 1998; Science, 285:1569, 1999)。しかし、sFRPやDKK群と同じように分泌するタンパク質の場合、タンパク質が細胞内へ効果的に伝達されると言っても、活性化アンタゴニストが分泌され、さらにはWnt信号を抑制する機能を遂行することができるかについては、全然知られておらず、これのためには次のような具体的な過程に対する実験的証明が必要である:(1)PTD融合タンパク質の細胞内導入とこれによる活性化したタンパク質の分泌;(2)生体で分泌するタンパク質は、細胞内でヒューリンのような前駆タンパク質転換酵素(proprotein convertase)などによる切断と、グリコシル化(glycosylation)のような活性化過程を伴うので、PTDを利用して導入したタンパク質の適切な細胞内活性化過程;及び(3)分泌されたタンパク質が適切な生物学的機能を示すかについての検証。
【0016】
Wntアンタゴニストを利用した臨床治療効果については、まだ本格的な研究が行われていない。現在市販中のWntアンタゴニストは研究用だけで使われているし、これらは前記の翻訳後修飾(post-translational modification)の問題から、大部分昆虫細胞(sf21)から誘導したDKK−1、動物細胞(NSO)から誘導したDKK−4、sFRP−4などである。しかし、これらは細胞を形質転換し、培地内へ分泌された活性タンパク質を分離・精製するため生産コストが非常に高く、また、抽出過程における活性の消失が避けられず大量生産には限界がある。
【0017】
したがって、当業界では前記sFRP類やDKK類と同等以上の生医学的効用性を持ち、従来から知られているタンパク質に比べて製造コストが非常に安く、分離・精製段階での非効率的な不便性と、保管、取り扱い及び投薬段階での不便性と活性の低下問題とを根源的に解決することができる、新しい生化学的物質の開発が要求されている。
【0018】
そこで、本発明者らは癌転移やリウマチ性関節炎のような、Wnt信号介在疾患を効果的に治療することができる、新しい製剤を開発するために鋭意努力した結果、細胞膜受容体なしに細胞膜を透過できるようにするPTD(protein transduction domain);及び単独では活性を持たないが、哺乳動物の細胞内で活性化され、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWAD(Wnt antagonist domain)を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIPs)に着目して、前記非活性WIPsが従来の活性タンパク質に比べて、その製造コストが非常に低く、保管及び取り扱いが容易なだけでなく、投与が非常に簡単に済むことを確認し、さらに前記非活性WIPsが受容体なしに細胞内へ透過されて細胞内でHSP(heat shock protein)などによって活性化され、活性タンパク質の多量分泌によって、Wnt信号伝逹を抑制するという新しい薬理機構を持つことを確認し、本発明を完成するようになった。
【発明の要約】
【0019】
本発明の主な目的は、Wnt信号伝達体系を抑制することによって、上皮由来の癌細胞の成長と転移を抑制するか、リウマチ性関節炎のようにWnt信号で介在される疾患を治療するため、人体に直接投薬されるように設計され、従来から知られている活性タンパク質とは全然異なる構造と特性及び薬理機轉を持つ、非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIPs)及びその製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明の他の目的は、前記非活性WIPsを有効成分として含む医薬組成物を提供するものである。
【0021】
前記のような目的を果たすために、本発明は(a)細胞膜受容体なしで、細胞膜を透過できるようにするタンパク質導入ドメイン(PTD)(protein transduction domain);及び(b)単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性化され、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWntアンタゴニストドメイン(WAD)(Wnt antagonist domain)を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)を提供する。
【0022】
本発明による非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)はマクロピノソーム(macropinosome)またはエンドソーム(endosome)による生物学的活性の減少を回避することができるし、細胞導入率を向上するようにエンドソームエスケープドメイン(EED)(Endosomal Escape domain)をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
さらに本発明は、sFRP−1(FRP, SARP2, FrzA)、sFRP−2(SARP1)、sFRP−3(FzB, Fritz)、sFRP−4(FrzB-2)、sFRP−5(SARP3)、Sizzled、Sizzled2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1、DKK−2、DKK−3(REIC)、DKK−4、及びSoggy(DKKL2)からなる群から選ばれるWAD(Wnt antagonist domain)をコードするDNAと5'の上流にPTDの塩基配列、タギング(tagging)のための塩基配列及び分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列が挿入されている組換えベクター及び前記組換えベクターで形質転換されたバクテリアを提供する。
【0024】
本発明による組換えベクターは、マクロピノソーム(macropinosome)またはエンドソーム(endosome)による生物学的活性の減少を回避することができるし、細胞透過率を向上することができるEED(Endosomal Escape domain)をコードする塩基配列をさらに含むことを特徴とする。
【0025】
さらに本発明は、(a)前記形質転換されたバクテリアを培養してPTD−WAD融合ポリペプチドまたはPTD−EED−WAD融合ポリペプチドを発現させる段階;(b)前記培養液から細胞を回収した後、これに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの二次及び三次構造をとり除くか、一次線形構造に変形させる段階;及び(c)一次線形構造のPTD−WADポリペプチドまたはPTD−EED−WAD融合ポリペプチド(非活性WIP)を精製する段階を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)の製造方法を提供する。
【0026】
さらに本発明は、前記非活性WIPを有効成分として含む癌細胞の成長及び転移抑制用医薬組成物を提供する。さらに本発明は、前記非活性ポリペプチドを有効成分として含む免疫疾患及び炎症治療用医薬組成物を提供する。さらに本発明は、前記非活性ポリペプチドを有効成分として含む肺線維症抑制用医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明の他の特徴及び具体例は次の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からさらに明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ヒトDKK−1(hDKK-1)発現によってSnail発現が抑制されたのを示す図である。
【図2】形質転換された大腸菌BL21の培養の時、IPTGでタンパク質発現を誘導する以前と以後の、全体タンパク質の電気泳動写真である。
【図3】抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を利用して行ったTAT−DKK−1のウェスタンブロット(western blot)の結果である。
【図4】本発明によるTAT−DKK−1が、細胞内でE-カドヘリン(E-caherin)プロモーター活性を増加可能であるかを確認した結果である。
【図5】本発明のTAT−DKK−1による癌細胞浸潤抑制効果を示す図である。
【図6】本発明によるTAT−DKK−1とTAT−HA2−DKK−1を投与した後、細胞培地に分泌された活性化DKK−1を免疫沈降法によって確認した図である。
【発明の詳細な説明及び望ましい具体例】
【0029】
本発明は、(a)細胞膜受容体なしで、細胞膜を透過できるようにするPTD(protein transduction domain);及び(b)単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性化され、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWAD(Wnt antagonist domain)を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)に関する。
【0030】
従来の活性DKK類やsFRP類を製造するためには、生産性が顕著に低いsf21やNSOのように組換え動物細胞培養に依存しなければならない問題がある。R&D Systems社のDKK−1、DKK−4、sFRP−4のような組換えタンパク質は、上述の通り、分離・精製が複雑で高コストの問題がある。一般的に使われる安価の組換え大腸菌の培養によって一部組換えタンパク質を製造しているが、この場合にも製造しようとする、分泌タンパク質の生化学的構造と活性に多くの制約を受けるようになる。
【0031】
本発明ではこのように、Wntアンタゴニストを人体や哺乳類動物生体に投与する際に、第一に非効率性の問題となる生化学的活性、すなわち三次立体構造を持たない非活性ポリペプチドに着目した。本発明者は、細胞膜受容体なしに非活性ポリペプチドを細胞内へ透過させるために、TATのようなPTDに融合させて、細胞膜透過を試みた。その結果、本発明による非活性TAT−DKK−1は、細胞膜を透過して細胞内へ導入され、Wnt信号伝逹を抑制することによって、Snail遺伝子の発現を減少させ、結果的に癌細胞の浸潤を抑制した。
【0032】
本発明において、前記WADはsFRP−1(FRP, SARP2, FrzA)、sFRP−2(SARP1)、sFRP−3(FzB, Fritz)、sFRP−4(FrzB-2)、sFRP−5(SARP3)、Sizzled、Sizzled2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1、DKK−2、DKK−3(REIC)、DKK−4、Soggy(DKKL2)などのように、細胞内に透過されてHSPなどによって活性化し、分泌してWnt信号を抑制する限り、これらに限定されない。特に、これら遺伝子に大部分存在する、システインが豊富なドメイン(cystein-rich domain)との組変えは、特定信号伝逹を抑制するのに効果的であるだろう(Brott, B.K. & Sokol, S.Y., Mol. Cell Biol., 22:6100, 2002)。
【0033】
本発明による非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)は、PTDとWADのみを含んでも良いが、マクロピノソーム(macropinosome)またはエンドソーム(endosome)による生物学的活性の減少を回避することができ、細胞導入率を向上することができるHA2ドメインのようなEED(Endosomal Escape Domain)を含むのがさらに望ましい。すなわち、HA2ドメインのようなEEDを含む場合、非活性Wnt抑制ポリペプチドが細胞膜を透過して、エンドソーム(endosome)またはマクロピノソーム(macropinosome)内部に限局される問題を克服するのが可能である(Jehangir, S.W.ら、Nature Med., 10:310, 2004)。
【0034】
本発明では、EEDとしてインフルエンザウィルス由来のHA2ペプチドを用いたが、これに限られることではない。例えば、細胞透過性ペプチドが脂質二重層(lipid bilayer)に密封されていることを回避することができるクロロキン(chloroquine)またはスクロース(sucrose)のような薬物や、インフルエンザウィルス由来のdiINF−7ドメイン、B型肝炎ウィルス(Hepatitis B virus、HBV)由来のTLM(translocation motif)、ヒトパピロマウィルス(Human Papilloma Virus, HPV)由来のL2ドメイン、抗生物質で開発されたHistatin5ドメイン、合成ペプチドであるdhvar4ドメイン及びdhvar5ドメインなどのようなEEDを使うこともできる(Stoeckl, L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci., 103:6730;2006;Kamper, N., J. Virol., 80:759, 2006;Mastrobattista, E.ら、J. Biol. Chem., 277:27135, 2002;den Hertog, A.L.ら、Biochem. J., 379:665, 2004)
【0035】
より具体的には、配列番号4のアミノ酸配列(GLFGAIAGFIENGWEGMIDG)を有するHA2ドメイン;配列番号5のアミノ酸配列(GLFEAIAEFIEGGWEGLIEG)を有するHA2ドメイン類似体;配列番号6のアミノ酸配列(GLFEAIEGFIENGWEGMIDG)を有するdiINF−7ドメイン、配列番号7のアミノ酸配列(LLNQLAGRMIPK)を有するTLM1(translocation motif1);配列番号8のアミノ酸配列(TLDHVLDHVQTM)を有するTLM2;配列番号9のアミノ酸配列(SYFILRRRRKRFPY)を有するHPV3 3L2;配列番号10のアミノ酸配列(SYYMLRKRRRKRLPY)を有するHPV1 6L2;配列番号11のアミノ酸配列(LYYFIRKKRKRVPY)を有するHPV1 8L2;配列番号12のアミノ酸配列(DSHAKRHHGYKRKFHEKHHSHRGY)を有するHistatin5;配列番号13のアミノ酸配列(KRLFKKLLFSLRKY)を有するdhvar4;または配列番号14のアミノ酸配列(LLLFLLKKRKKRKY)を有するdhvar5と、これらが2つ以上結合されている結合体を用いることができる。
【0036】
本発明による非活性WIPsは、細胞膜受容体なしで、細胞膜が透過できるようにするPTDと、HSP(heat shock protein)などによって細胞内で活性化され、分泌されてWnt信号を抑制することができるWAD、及び選択的に、マクロピノソーム(macropinosome)またはエンドソーム(endosome)による生物学的活性の減少を回避することができ、細胞導入率を向上することができるEEDを含むポリペプチドであって、単独では活性を持たないが、生物体や細胞へ透過された後、前記タンパク質が活性化され、その活性化されたタンパク質が細胞外へ分泌されて効果を示すようになる。このような、本発明による非活性WIPsは製造コストが高く、保管及び取り扱いが容易でなく、受容体を必ず要する従来の活性タンパク質が持つ問題のすべてを解決できる。
【0037】
本発明は、他の観点として、sFRP−1(FRP、SARP2、FrzA)、sFRP−2(SARP1)、sFRP−3(FzB, Fritz)、sFRP−4(FrzB-2)、sFRP−5(SARP3)、Sizzled、Sizzled2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1、DKK−2、DKK−3(REIC)、DKK−4、及びSoggy(DKKL2)からなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上の組合せであるWAD(Wnt antagonist domain)をコードするDNAの5’の上流にPTDの塩基配列、タギング(tagging)のための塩基配列及び分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列が挿入されている組換えベクター及び前記組換えベクターで形質転換されたバクテリアに関する。
【0038】
まず、本発明では、DKK−1遺伝子の5’部位(5' region)の上流にタギング(tagging)のための塩基配列、分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列及び開始塩基配列であるATGを挿入して組換えベクターを製作した。本発明による組換えベクターは前述したEEDをコードする塩基配列をさらに含むのがさらに望ましい。
【0039】
本発明において、前記Wnt信号抑制遺伝子として、DKK−1をコードする遺伝子を用いたが、これに限られることではない。また、前記PTDとしてTAT(YGRKKRRQRRR)を用いたが、これに限られることではない。
【0040】
例えば、AntHD(Drosophila homeoprotein atennapedia transcription protein, RQIKIWFQNRRMKWKK, 配列番号15)、VP22ペプチド(Gene Therapy, 8:1, Blackbirch Press, 2001)、mph−1−btm(アメリカ特許2005/0147971)、poly−Arg(RRRRRRR, 配列番号16)、PTD−5(RRQRRTSKLMKR, 配列番号17)、transportan(GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL, 配列番号18)、penetratin(PQIKIWFQNRRMKWKK、配列番号19)、Buforin II(TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK、配列番号20)、Ku70(VPMLK-PMLKE, 配列番号21)、SynB1(RGGRLSYSTTTFSTSTGR, 配列番号22)、Pep-1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV, 配列番号23)、Pep−7(SDLWEMMMVSLACQY, 配列番号24)、HN−1(TSPLNIHNGQKL, 配列番号25)などのようなPTDを用いることもできる(Joliot, A. & Prochiantz, Nature Cell Biol., 6:198, 2004;Kabouridis, P.S., Trends Biotechnol., 21:498, 2003)。また、前記タギング塩基配列としてX−pressのタグ(tag)を用いたが、Flag、Myc、Ha、GSTなどを用いることもできる。
【0041】
前記組換えベクターを製作するために、本発明ではアンピシリン(ampicillin)抵抗性を持ち、商業的に販売されているpRSETを用いたが、これに限られることではない。例えば、選択的マーカーとしてカナマイシン(kanamycin)を持つバクテリアベクター、pcDNAのような哺乳類細胞発現用ベクター(mammarian cell expression vector)、pPGS、pBabeのようなウィルスベクターを用いることもできる。
【0042】
本発明は、他の観点として、(a)PTDの塩基配列及びWADをコードするDNAを含む組換えベクターで形質転換されたバクテリアを培養し、PTD−WAD融合ポリペプチドを発現させる段階;(b)前記培養液から細胞を回収した後、これに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの二次及び三次構造をとり除くか、一次線形構造に変形させる段階;及び(c)一次線形構造のPTD−WAD融合ポリペプチド(非活性WIP)を精製する段階を含む非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)の製造方法に関する。
【0043】
さらに本発明は、もう一つの観点として、(a)PTDの塩基配列、EEDをコードする塩基配列及びWADをコードするDNAを含む組換えベクターで形質転換されたバクテリアを培養して、PTD−EED−WAD融合ポリペプチドを発現させる段階;(b)前記培養液から細胞を回収した後、これに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの二次及び三次構造をとり除くか、一次線形構造に変形させる段階;及び(c)一次線形構造のPTD−EED−WAD融合ポリペプチド(非活性WIP)を精製する段階を含む非活性WIPの製造方法に関するものである。
【0044】
本発明による非活性WIPの製造方法において、前記精製段階は前記ポリペプチドをNi−Tiビーズに結合させ、これを尿素溶液で洗浄した後、イミダゾールと塩含有緩衝溶液を用いて溶出させることを特徴とするが、これに限ることではない。
【0045】
前記組換えベクターで形質転換された微生物を培養して本発明による非活性WIPsを発現させた後、前記発現されたタンパク質を分離・精製した。本発明で形質転換された大腸菌は通常使われる培地で培養できるし、融合ポリペプチドの過発現を誘導するためにIPTGを添加するのが望ましい。
【0046】
本発明では形質転換微生物として大腸菌(E. coli)を用いたが、他の種類のバクテリア、酵母、またはカビ(fungi)を使うことも可能であり、また微生物を利用せず、化学的方法で有効部位のみを合成して使うこともできる。
【0047】
前記形質転換微生物の培養によって発現された融合ポリペプチドはGST−融合タンパク質(GST-fusion protein)やその他の通常のタンパク質分離・精製方法を使って分離することができる。例えば、尿素(urea)や硫酸アンモニウムの濃度勾配を利用してタンパク質の沈澱を誘導させ、これを透析して塩(salt)をとり除くことで、本発明による非活性WIPsを精製することができる。また、本発明では、過発現されたポリペプチドの二次及び三次構造が必要ではないから、尿素を使って二次及び三次構造のタンパク質を非活性の一次線形構造に変更して用いるのが望ましいが、本発明に記述された機能ドメインを含むと、二次及び三次構造でも細胞内側に透過して類似の効果を示すことができる。本発明では分離・精製のためのHistidine tag、発現検証のためのX−press tag、細胞膜透過のためのPTD、エンドソーム(endosome)による活性減少を回避するためのEED(Endosomal Escape Domain)、Wnt信号を抑制するためのWADの順に構成されているが、それぞれの機能的ドメインが含まれたら、これらの他の形態の組換えも類似の効果が現れる。
【0048】
また、WO2006/104306A1の記述のように、プロプロテインコンベルターゼ(proprotein convertase)による切断とタンパク質の変形で分泌タンパク質の活性を持つので、生物学的活性の増加のために本来ヒューリン分裂部位(furin cleavage site)を有すか、または人為的にヒューリン分裂部位(furin cleavage site)が加えられたら、生理学的活性の増大が期待できる。特に、一部sFRP類とDKK類の場合、推定のヒューリン分裂部位(putative furin cleavage sites)が存在すると知られているが、まだヒューリン(furin)による活性化過程はほとんど知られていない(Kawano, Y. & Kypta, R., J. Cell Sci., 116:2627, 2003)。
【0049】
本発明による非活性WIPsは実用的に組換え大腸菌のようなバクテリアの培養によって大量生産が可能で、人体内へ投与される前には生化学的で非活性状態であるので、従来から知られている類似用途の活性タンパク質に比べて、生産コストが数十〜数百分の一に過ぎなく、分離・精製過程と取り扱い・投薬過程が非常に簡単なので便利である。
【0050】
本発明は、さらに他の観点から、前記非活性WIPを有効成分として含む癌細胞の成長及び転移抑制用医薬組成物に関する。本発明は、さらに他の観点から、前記非活性ポリペプチドを有効成分として含む免疫疾患治療用医薬組成物に関するものである。本発明において、前記免疫疾患は関節炎であることを特徴とする。また、本発明は他の観点から、前記非活性ポリペプチドを有効成分として含む肺線維症抑制用医薬組成物に関する。
【0051】
本発明による非活性WIPsは三次立体規則性を持たないで、それ単独では活性を持たないが、細胞内へ透過された後HSP(heat shock trotein)などによって活性化されて、前記活性化されたタンパク質が細胞外へ分泌して効果を示す。本発明による非活性WIPsは、上皮由来癌細胞の成長及び転移を抑制して、リウマチ性関節炎のような免疫疾患の進行を抑制して、さらに治療効果を持つ。
【0052】
本発明では、従来から知られている活性組換えタンパク質が共通に持っていた高コストの問題と、活性製品の分離・精製、保管及び投薬の非効率的特性を根源的に解決して、非活性ポリペプチドを人体や哺乳類動物生体に直接投薬しながらも、Wnt信号伝逹を抑制する効果を示すのを確認した。
【0053】
本発明の非活性WIPsを癌細胞、前駆細胞、活性化したFLS(fibroblast-like synoviocytes)、幹細胞などに投与する場合、前記非活性WIPsが、HSPなどによって再構成され、N−グリコシル化(N-glycosylation)のような活性化過程を通じて分泌されるようになる。この時、細胞へ透過された非活性WIPsは、細胞の種類と活性によって、3〜24時間の半減期を持ち、これは透過されたタンパク質が、細胞によって多様な活性化時間を持つということを意味する。
【0054】
本発明で精製された非活性WIPsを0.1nM以上細胞に投与する場合、前記非活性WIPsは濃度依存的に細胞内へ移動して、細胞内で活性化したDKKなどに転換された後、活性DKK形態で細胞外へ分泌される。本発明の非活性WIPsは、細胞膜に存在するFz受容体、またはLRP5/6補助受容体の存在とは無関係に、1時間以内に大部分細胞の細胞膜を直接透過し、細胞膜透過過程は受容体を介しない温度-非依存的(temperature independent)なものであった。
【0055】
つまり、本発明による非活性WIPsは、三次構造を維持する必要がなく、一次線形構造状態で細胞内へ透過して活性Wntアンタゴニストなどに転換された後、分泌される機構を示す。すなわち、従来のDKK、sFRPが直接的に効果(potency)を示す一方、本発明による非活性WIPsは間接的な活性で効果を示すようになる。したがって、三次構造維持のための追加的な装備やコストが必要なく、分離・精製が非常に容易で、生産工程が簡単で生産コストが低く、医学的な効率が増加し、従来組換えタンパク質が持つ問題すべてを解決することができる。本発明による非活性WIPsの特性を、従来組換えWntアンタゴニストタンパク質と比べて、表1に示した。表1は本発明による非活性WIPs製品を分離・精製、保管、投薬する過程と特徴を、従来から知られている活性DKK、sFRP類の場合と比べたものである。
【0056】
【表1】

【0057】
本発明による非活性WIPsは、上皮由来癌細胞の増殖を抑制し、さらには転移を抑制する場合や、リウマチ性関節炎の進行を抑制して治療する場合のように、Wnt信号伝達によって介在される疾患の治療や進行抑制のために使われることができる。また、幹細胞の分化を調節して応用するのに使われることができる。
【0058】
本発明による非活性WIPsは、そのまま使うか薬剤学的に許容できる酸付加塩または金属複合体、例えば、亜鉛、鉄などのような塩の状態で用いる。より具体的には、酸付加塩は塩化水素、臭化水素、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸、アスコルビン酸塩または酒石酸塩を用いるのが望ましい。
【0059】
本発明による非活性WIPsを有効成分として含む組成物は、通常の投与方法、投与形態及び治療目的によって前記有効成分を薬学的に許容可能な賦形剤またはマトリックスの担体とともに混合して希釈するか、容器形態の担体内に封入するのが望ましい。この時、目的のpH、等張性、安定性などを持つ、生理的に許容可能なタンパク質組成物の製法は、本発明の分野で関係する通常の技術範囲内にあるものを用いることができる。
【0060】
本発明で前記マトリックスは生物接合性、生物分解性、機械的特性、美的外観及び接触特性によって硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム(tricalcuimphosphate)、ハイドロキシ‐アパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物のような生物分解性を有する化学的物質や;真皮コラーゲン、その他純粋タンパク質または細胞のマトリックス成分のような生物分解性を有する生物学的物質;焼結されたハイドロキシ‐アパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックのような非生物分解性の化学的物質;ポリ乳酸、ハイドロキシ‐アパタイト、コラーゲン及びリン酸三カルシウムのような前記の物質の配合物を用いるのが望ましい。しかし、前記担体に、本発明が制限されるものではない。
【0061】
本発明で賦形剤はラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチル・セルロース、非晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、水、ヒドロキシ安息香酸メチル(methylhydroxybenzoate)、ヒドロキシ安息香酸プロピル(propylhydroxybensoate)、タルク、鉱油などが用いられる。
【0062】
一方、本発明による非活性WIPsを含む組成物は、治療効果を必要とする部位に粘稠液の形態にて注射するか、カプセルとして用いるのが望ましい。本発明による組成物の投与量は、使われる腑形剤やマトリックスなどの担体種類と、患者の状態、患者の年齢、性別及び食餌療法、感染の重篤度の程度、投与時間及び他の臨床的要因を考慮して調節されることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を具体的な実施例によってより詳しく説明する。しかし、本発明は下記実施例によって限定されることではなく、本発明の思想と範囲内でさまざまな変形または修正することができるのはこの分野の当業者に明らかである。
【0064】
特に、下記実施例では、非活性WIPsを構成するWADの遺伝子として、DKK−1だけを例示したが、sFRP−1、sFRP−2、sFRP−3、sFRP−4、sFRP−5、Sizzled、Sizzled-2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1、DKK−3、DKK−4、Soggyなどの遺伝子からなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上が結合された遺伝子など、細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制するタンパク質の遺伝子を用いることができることは当業者に明らかである。同時に、人間由来のWntアンタゴニストだけでなく、ラット、牛、豚などのような哺乳類及びその外の高等動物由来のWntアンタゴニストを用いることができることも当業者に明らかである。
【0065】
下記実施例では、PTDとしてTATだけを例示したが、AntHD(Drosophila homeoprotein atennapedia transcription protein)、VP22ペプチド、mph−1−btm、Penetratin、Buforin II、Transportan、Ku70、Prion、Pvec、Pep−1などからなる群から選ばれる遺伝子を用いることができることは当業者に明らかである。また、下記実施例では、EEDとしてHA2だけを例示したが、diINF−7ドメイン、TLM1ドメイン、TLM2ドメイン、HPV3 3L2ドメイン、HPV1 6L2ドメイン、HPV1 8L2ドメイン、Histatin5ドメイン、dhvar4ドメイン及びdhvar5ドメインからなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上が結合されている遺伝子を用いることができることは当業者に明らかである。
【0066】
《実施例1》DKK−1発現ベクターを利用したSnail発現抑制
Wnt signalingは、GSK3−βを抑制する機構を介してSnailの活性化を誘導する。一方、SnailはE−cadherinの転写抑制と上皮由来細胞の移動/転移を調節すると知られている(Nature Cell Biol., 2:84, 2000;Nature Cell Biol., 2:76, 2000;Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:155, 2002)。つまり、Wnt信号伝逹はSnailを経由してE−cadherin発現を抑制して、さらには癌細胞の浸潤性成長と転移を誘導するようになる。したがって、Wntによって調節されるSnailの発現を抑制することができたら、癌細胞の浸潤性成長と転移を抑制することができる。
【0067】
本実施例では、配列番号1及び配列番号2のプライマーを利用して293細胞(American Type Culture Collection, ATCC CRL-1573)のmRNAを鋳型として用いたRT−PCRによってhDKK−1をコードする遺伝子を増幅した。
配列番号1:5'-gct tgc aaa gtg acg gtc att-3'
配列番号2:5'-cta tcc aaa tgc agt gaa ctc-3'
【0068】
前記増幅された遺伝子をTAクローニングベクター(Invitrogen, Inc)に挿入して、GenBankの塩基配列(NCBI, NM_012242)と比べた結果、hDKK−1遺伝子と同じであることを確認した。前記クローニングされたhDKK−1遺伝子をpCR3.1発現ベクター(mammalian expression vector, Invitrogen, Inc)のBamH1、EcoRI部位にさらにクローニングし、前記hDKK−1遺伝子の停止コドンの前に発現検証のためのHAタグを挿入した。完成した発現ベクターをLipofectamine(Invitrogen)を利用して293細胞にSnail遺伝子とともに発現を誘導した。Snail遺伝子はflagでタギングし、Snailの発現とDKKの発現を、それぞれanti−flag antibody(Sigma)とanti−HA antibody(Roche)を利用してウェスタンブロットで検証した(図1)。
【0069】
その結果、図1に示したように、hDKK−1の発現を介するWnt信号伝達体系の抑制は、Snailの半減期を抑制することで、Snail遺伝子の発現を減少させることがわかり、この結果は先行文献の機構と一致することを確認することができた(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)。
【0070】
《実施例2》TAT−DKK−1を利用したWnt信号伝逹抑制及び癌細胞浸潤抑制
前記実施例1でクローニングしたhDKK−1遺伝子をバクテリア発現ベクターであるpRSET(Invtrogen)にさらにクローニングした。この時、前記hDKK−1遺伝子の5’部位(5' region)の上流にTAT(YGRKKRRQRRR:配列番号3)塩基配列を挿入した後、その前にX−press(Invitrogen, Inc)タグ(tag)と、分離・精製のための6つのヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列と開始塩基配列であるATGを挿入して、hDKK−1の発現のための組換え発現ベクター(expression vector)を製作した。
【0071】
前記製作された組換えベクターを熱ショック(heat shock)法で大腸菌BL21(E. coli BL21;Invitrogen Inc.)に導入し、37℃で2〜3時間培養した後、IPTG(isopropylthio-galactoside)1mMを添加し、2〜18時間追加培養し、TAT−DKK−1の発現を誘導した。
【0072】
前記培養物から大腸菌を遠心分離して、細胞ペレット(cell pellet)を取得して、前記細胞ペレットに8Mの尿素溶液を添加し、DKK−1の二次及び三次構造をとり除いた後、Ni−Tiビーズ(Qiagen)を添加してTAT−DKK−1をビーズに結合させた後、これを尿素溶液で3回洗浄し、イミダゾールと塩含有緩衝溶液を使って溶出し、精製されたTAT−DKK−1融合ポリペプチドを得た(図2)。
【0073】
図2は形質転換された大腸菌BL21の培養の時、IPTGでタンパク質発現を誘導して精製過程を電気泳動で確認したものである。ここで、矢印はIPTGによって誘導されたTAT−DKK−1融合タンパク質を示し、レーン1は誘導されなかったTAT−DKK−1(uninduced TAT-DKK-1)、レーン2はIPTGに誘導されたTAT−DKK−1、レーン3〜6はNi−TiビーズからTAT−DKK−1を分離する時、イミダゾール(imidazole)の濃度を徐々に増加させて溶出したのである。図2に示したように、IPTG添加によって融合タンパク質生成を誘導した場合、対照群に比べてTAT−DKK−1融合タンパク質がより多く生成したことを確認され、分離の時イミダゾールの濃度を増加させた場合、TAT−DKK−1融合タンパク質がより多く溶出されるということも確認された。
【0074】
一方、前記製造したTAT−DKK−1の細胞内への透過の可否を確認するために、MCF−7乳癌細胞株(ATCC, HTB-22)にTAT−DKK−1 4nMを2時間処理した後、細胞を取得し、抗X−press第一抗体(Invitrogen, Inc)を利用してウェスタンブロットを行った(図3)。
【0075】
その結果、図3に示したように、TAT−DKK−1は4時間以内に大部分が細胞内へ透過されたことが分かった。レーン1〜6は4nMのTAT−DKK−1を、それぞれ0時間、15分、30分、1時間、2時間、及び4時間処理して細胞に存在するTAT−DKK−1の発現を抗X−press抗体を利用してウェスタンブロットした結果である。
【0076】
細胞内へ導入したTAT−DKK−1が、生物学的活性を持つDKK−1に変換され、これらがWnt信号を抑制してSnail発現を抑制することで、究極的にE−cadherin発現増加を誘導するかを確認するために、E−cadherinproximalプロモーターをもっているルシフェラーゼリポーター遺伝子分析(luciferase reporter gene assay)を行った(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)。MCF−7細胞にFugene-6を利用して前記リポーター遺伝子をtransfectionし、24時間後、2nMのTAT−DKK−1を24時間投与し、ルシフェラーゼ活性を利用してE−カドヘリンプロモーター活性を測定した。この時、E−cadherinプロモーターのSnail結合部位を突然変異させたE−cad(-108)3XMutを負の対照群(negative control)として用いた(図4)。
【0077】
その結果、図4に示したように、本発明によるTAT−DKK−1が実施例1から分かった結果と同じように、Snailの発現を抑制し、これらがE−cadherinプロモーターを活性化させることでWnt信号伝達を効果的に抑制するということが分かった。
【0078】
《実施例3》TAT−DKK−1を利用したWnt信号伝逹の抑制及び癌細胞浸潤の抑制
本発明による非活性TAT−DKK−1が癌細胞の浸潤性成長を抑制して、さらには転移抑制剤としての使用の可能性を調べるために、MCF−7細胞にWnt−1発現を誘導した(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)。浸潤能がないMCF−7は、Wnt発現によって浸潤性成長をし、この過程で癌細胞の浸潤はSnail発現とE−cadherinプロモーター活性度に全面的に依存するようになる(J. Biol. Chem., 280:11740, 2005)。したがって、TAT−DKK−1がWnt信号を抑制したら、Wnt信号によって誘導される浸潤性成長を抑制することができるのであろう。これを検証するために、本実施例ではWnt発現MCF−7細胞株に5nMのTAT−DKK−1を処理して鶏卵の絨毛尿膜(chorioallantoic membrane)で48時間培養し、癌細胞浸潤を蛍光顕微鏡で観察した(図5)。
【0079】
その結果、図5に示したように、TAT−DKK−1はWnt信号によって誘導される癌細胞の浸潤性成長を完璧に遮断した。さらに本発明による非活性TAT−DKK−1は、E−cadherin発現がなくて浸潤能が非常に強いと知られているMDA−MB−231(ATCC HTB-26)細胞株でも浸潤性成長を強力に抑制した。この結果から、本発明による非活性TAT−DKK−1が癌細胞の成長と転移を強く抑制するということを確認することができた。
【0080】
《実施例4》HA2−TAT−DKK−1の製作
前記実施例2で製作した発現ベクターのTAT塩基配列後に、代表的なEEDとしてHA2ドメイン(配列番号4)をコードする塩基配列を挿入して組換えベクターを製作した後、実施例2と同じ方法で、形質転換大腸菌を製作、培養及び精製してTAT−HA2−DKK−1融合ポリペプチドを製造した。前記製造されたTAT−HA2−DKK−1融合ポリペプチドとTAT−DKK−1融合ポリペプチドを、293細胞株に10nMの濃度で2時間処理し、6時間追加培養した後、抗−HA免疫沈降法を利用して培地内へ分泌された活性化DKK−1を測定した。この時、TATコード配列がない組換えタンパク質を負の対照群(negative control, N/C)として用いた。
【0081】
その結果、TAT−DKK−1とTAT−HA2−DKK−1を投与した場合に、活性化したDKK−1が細胞培地内へ発現されるのを確認することができ、特に、EEDが含まれているTAT−HA2−DKK−1の場合、より多い活性化タンパク質が分泌されるのを確認することができた。免疫沈降法に用いられた抗体の兔疫グロブリン(immunoglobulin)の軽鎖を対照群として用いた(図6)。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上、上述したように、本発明は、細胞膜受容体なしで細胞膜を透過できるようにするPTD、単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性化し、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWADを含む非活性WIPs、その製造方法、及び前記非活性WIPsを有効成分として含む、癌細胞の成長及び転移抑制用組成物と免疫疾患治療用組成物を提供する効果がある。
【0083】
本発明によるWIPsは、細胞膜受容体と結合するための三次構造を維持する必要がなく、一次線形構造状態で細胞内へ透過して細胞内でHSPなどによって活性された後、分泌されて効果を示す。したがって、三次構造の維持のための追加的な装備やコストが必要なく、ヒスチジン配列を含み、分離・精製が非常に容易で、生産工程が簡単で、生産コストが低く、医学的な効率が増加して、新規治療用タンパク質として有用である。
【0084】
以上のように、本発明の内容の特定部分を詳しく記述したところ、当業界の通常の知識を持った者において、この具体的記述はただ望ましい実施様態であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されることではない点は明らかであるだろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付された特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)細胞膜受容体なしで、Wntが細胞膜を透過できるようにするタンパク質導入ドメイン(PTD);及び(b)単独では活性を持たないが哺乳動物の細胞内で活性化され、次いで細胞外へ分泌されてWnt信号伝逹を抑制する機能を持つWntアンタゴニストドメイン(WAD)を含む、非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)。
【請求項2】
前記ポリペプチドが(c)マクロピノソームまたはエンドソームによる生物学的活性の減少を回避することができ、そして細胞導入率を向上することができるエンドソームエスケープドメイン(EED)をさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記EEDは、HA2ドメイン、diINF−7ドメイン、TLM1ドメイン、TLM2ドメイン、HPV3 3L2ドメイン、HPV1 6L2ドメイン、HPV1 8L2ドメイン、Histatin5ドメイン、dhvar4ドメイン及びdhvar5ドメインからなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上が結合しているものであることを特徴とする、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記HA2ドメインは配列番号4または配列番号5で表されるアミノ酸配列を有し、前記diINF−7ドメインは配列番号6で表されるアミノ酸配列を有し、前記TLM1ドメインは配列番号7で表されるアミノ酸配列を有し、前記TLM2は配列番号8で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV3 3L2ドメインは配列番号9で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV1 6L2は配列番号10で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV1 8L2は配列番号11で表されるアミノ酸配列を有し、前記Histatin5は配列番号12で表されるアミノ酸配列を有し、前記dhvar4は配列番号13で表されるアミノ酸配列を有し、前記dhvar5は配列番号14で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記WADはsFRP−1(secreted Frizzled-related protein-1, FRP, SARP2, FrzA)、sFRP−2(SARP1)、sFRP−3(FzB, Fritz)、sFRP−4(FrzB-2)、sFRP−5(SARP3)、Sizzled、Sizzled2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1(Dickkopf-1)、DKK−2、DKK−3(REIC)、DKK−4、及びSoggy(DKKL2)からなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上が結合されたことを特徴とする、請求項1に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)。
【請求項6】
前記PTDはTAT、AntHD、VP22ペプチド、mph−1−btm、Penetratin、Buforin II、Transportan、Ku70、Prion、pVEC及びPep-1からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)。
【請求項7】
PTDとWADが融合されている、請求項1に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)。
【請求項8】
sFRP−1(FRP, SARP2, FrzA)、sFRP−2(SARP1)、sFRP−3(FzB, Fritz)、sFRP−4(FrzB-2)、sFRP−5(SARP3)、Sizzled、Sizzled2、Crescent、WIF−1、Cerberus、Coco、DKK−1、DKK−2、DKK−3(REIC)、DKK−4、及びSoggy(DKKL2)からなる群から選ばれたWADをコードするDNAの5’の上流に、PTDの塩基配列、タギングのための塩基配列、及び分離・精製のための4つ以上のヒスチジンをコードする塩基配列が挿入されている組換えベクター。
【請求項9】
マクロピノソームまたはエンドソームによる生物学的活性の減少を回避することができ、細胞導入率を向上することができるEEDをコードする塩基配列をさらに含む、請求項8に記載の組換えベクター。
【請求項10】
前記EEDはHA2ドメイン、diINF−7ドメイン、TLM1(translocation motif1)ドメイン、TLM2ドメイン、HPV3 3L2ドメイン、HPV1 6L2ドメイン、HPV1 8L2ドメイン、Histatin5ドメイン、dhvar4ドメイン及びdhvar5ドメインからなる群から選ばれるいずれかの1つまたは2つ以上が結合されていることを特徴とする、請求項9に記載の組換えベクター。
【請求項11】
前記HA2ドメインは配列番号4または配列番号5で表されるアミノ酸配列を有し、前記diINF−7ドメインは配列番号6で表されるアミノ酸配列を有し、前記TLM1ドメインは配列番号7で表されるアミノ酸配列を有し、前記TLM2は配列番号8で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV3 3L2ドメインは配列番号9で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV16L2は配列番号10で表されるアミノ酸配列を有し、前記HPV1 8L2は配列番号11で表されるアミノ酸配列を有し、前記Histatin5は配列番号12で表されるアミノ酸配列を有し、前記dhvar4は配列番号13で表されるアミノ酸配列を有し、前記dhvar5は配列番号14で表されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項10に記載の組換えベクター。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれかの一項に記載の組換えベクターで形質転換されたバクテリア。
【請求項13】
次の段階を含む非活性WIPの製造方法:
(a)請求項8の組換えベクターで形質転換されたバクテリアを培養し、PTD−WAD融合ポリペプチドを発現させる段階;
(b)前記培養液から細胞を回収した後、これに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの二次及び三次構造をとり除くか、一次線形構造に変形させる段階;及び
(c)一次線形構造のPTD−WAD融合ポリペプチド(非活性WIP)を精製する段階。
【請求項14】
前記PTDはTAT、AntHD(Drosophila homeoprotein atennapedia transcription protein)、VP22ペプチド、mph−1−btm、Penetratin、Buforin II、Transportan、Ku70、Prion、pVEC及びPep-1からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記精製段階は前記融合ポリペプチドをNi−Tiビーズに結合させ、これを尿素溶液で洗浄した後、イミダゾールと塩含有緩衝溶液を使って溶出させることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
次の段階を含む非活性WIPの製造方法:
(a)請求項9〜11のいずれかの一項に記載の組換えベクターで形質転換されたバクテリアを培養し、PTD−EED−WAD融合ポリペプチドを発現させる段階;
(b)前記培養液から細胞を回収した後、これに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの二次及び三次構造をとり除くか、一次線形構造に変形させる段階;及び
(c)一次線形構造のPTD−EED−WAD融合ポリペプチド(非活性WIP)を精製する段階。
【請求項17】
前記PTDはTAT、AntHD(Drosophila homeoprotein atennapedia transcription protein)、VP22ペプチド、mph−1−btm、Penetratin、Buforin II、Transportan、Ku70、Prion、pVEC及びPep-1からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項16に記載の方法.
【請求項18】
前記精製段階は前記融合ポリペプチドをNi−Tiビーズに結合させ、これを尿素溶液で洗浄した後、イミダゾールと塩含有緩衝溶液を使って溶出させることを特徴とする、請求項16に記載の方法.
【請求項19】
請求項1〜7のいずれかの一項に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)を有効成分として含む、癌細胞の成長及び転移抑制用医薬組成物。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれかの一項に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)を有効成分として含む、免疫疾患治療用医薬組成物。
【請求項21】
前記免疫疾患は関節炎であることを特徴とする、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1〜7のいずれかの一項に記載の非活性Wnt抑制ポリペプチド(WIP)を有効成分として含む、肺線維症抑制用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−517080(P2009−517080A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543201(P2008−543201)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/KR2006/005134
【国際公開番号】WO2007/064163
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507325530)
【出願人】(507325552)
【出願人】(507325574)
【出願人】(507325600)
【Fターム(参考)】