説明

非焼成色鉛筆芯

【課題】 書き味や着色性を損なうことなく、耐水性が格段に優れた非焼成色鉛筆芯を提供する。
【解決手段】 少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に、耐水性付与材を含有することを特徴とする非焼成色鉛筆芯。
好ましくは、耐水性付与材が、グリオキザール、エチレンジアミン、炭酸アンモニウムジルコニウム、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、Al(SOから選ばれる少なくとも1種であるものが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として色鉛筆用の芯に利用される非焼成色鉛筆芯に関し、更に詳しくは、耐水性が格段に優れた非焼成色鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非焼成色鉛筆芯は、結合材である有機高分子物質を水で溶解、膨潤させてワックス類、体質材、着色剤等と共に混練、押出成形した後に、水を乾燥除去する湿式法で製造されている。
しかしながら、この製法により得られる非焼成色鉛筆芯は、高湿度下において、芯が膨張することによって木軸の割れなどが生じたり、筆記描線が水に濡れると着色材の溶出が起こり、着色性が低下したりするばかりでなく、手や衣服などを汚してしまう可能性があった。
【0003】
この問題を解決する方法として、ワックス類の添加量を増やすことによって、または、水溶性粘結材を減らすことによって耐水性を向上させることができるが、これらの方法では、共に強度が弱くなる点に課題がある。
【0004】
一方、耐水性のある粘結材(結合材)として、ニトロセルロースの使用(例えば、特許文献1参照)や、カルボキシメチルセルロース酸の使用(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、上記ニトロセルロースを使用するものでは、乾燥状態ではきわめて燃えやすく、また、溶剤を含むと爆発性がなくなるため、運搬や貯蔵の際には20%以上の溶剤を含ませておくことが普通であり、使用性の点で不便であり、また、ニトロセルロースに酸が残っていると自然発火する危険性が少なからずある。
【0005】
また、上記カルボキシセルロース酸を使用するものでは、非焼成色鉛筆芯の原料組成物事態に直接配合させた場合、この物質は水不溶性であることから、非焼成色鉛筆芯における結合材として適切な機能を発揮しえないため、原料組成物中にカルボキシセルロースアンモニウム(=CMCアンモニウム)を配合せしめ、加熱することによって、CMCアンモニウムのアンモニア分子が離脱し、これによってカルボキシセルロース酸が得られるが、この際にアンモニアが発生するため、人体に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
更に、非焼成鉛筆芯において、結合材として用いるニトロセルロースやカルボキシメチルセルロース酸などの有機高分子物質は、焼成鉛筆芯の結合材である粘土、炭化物に較べて機械的強度が劣るという欠点を有している上に、滑らかな筆感と紙に対する付着性を得るために添加されるワックス類が非焼成色鉛筆芯の機械的強度を更に低下させるという課題がある。
【特許文献1】特開2001−200189号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−335617号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、製造時の取り扱いが簡便で、書き味や着色性を損なうことなく、耐水性に格段に優れた非焼成色鉛筆芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に特定の成分を含油せしめることにより、上記目的の非焼成色鉛筆芯が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) 少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に、耐水性付与材を含有することを特徴とする非焼成色鉛筆芯。
(2) 耐水性付与材が、グリオキザール、エチレンジアミン、炭酸アンモニウムジルコニウム、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、Al(SOから選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載の非焼成色鉛筆芯。
(3) 耐水性付与材の含有量が0.1〜25重量%である上記(1)又は(2)記載の非焼成色鉛筆芯。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時の取り扱いが簡便で、書き味や着色性を損なうことなく、耐水性に格段に優れた非焼成色鉛筆芯が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の非焼成色鉛筆芯は、少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に、耐水性付与材を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いる耐水性付与材は、水溶性粘結材を使用することによる耐水性の低下や膨潤を抑制するものであり、非焼成色鉛筆芯の機能を損なわないものであれば、耐水性付与材は特に限定されず、例えば、グリオキザール、エチレンジアミン、炭酸アンモニウムジルコニウム、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、Al(SOから選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物)が挙げられる。
更に好ましくは、更なる耐水性の向上の点から、グリオキザール、エチレンジアミン、メラミン樹脂が望ましい。
【0013】
これらの耐水性付与材の含有量は、原料組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜25重量%、更に好ましくは、0.5〜20重量%、特に好ましくは、1〜15重量%であることが望ましい。
この含有量が0.1重量%未満では、耐水性が悪くなり、高湿度下で芯が膨張したり、筆記描線が水に濡れると着色材の溶出が生じ好ましくなく、一方、25重量%を越えると、耐水性は向上するが、分散効率が悪くなり、均一に撹拌しづらくなるため、強度のバラツキが発生し、一定形状の色鉛筆芯を得ることが難しくなることがあり、好ましくない。
【0014】
本発明の非焼成色鉛筆芯において、上記耐水性付与材以外の成分、即ち、体質材、着色材、水溶性粘結材、その他の成分は本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されることなく、用いることができる。
使用される体質材としては、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、沈降性硫酸バリウム、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、マグネシウムオキシサルフェートウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等の公知の体質材をすべて用いることができる。その他に、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト等も併用して用いることができる。
この体質材の含有量としては、原料組成物全量に対して、好ましくは、10〜80重量%である。
【0015】
用いることができる着色材としては、公知の顔料、染料などが任意に使用できる。例えば顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒、弁柄、紺青、群青、ブロンズ粉、雲母チタン等の公知の無機顔料、及びパーマネントレッド4R、リソールレッド(Ba)、レーキレッドC、ピラゾロンオレンジ、ブリリアントボルドー10B、ブリリアントカーミン6B、ジスアゾイエローAAA、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ビクトリアルブルーレーキ、メチルバイオレットレーキ、合成樹脂固溶型昼光蛍光顔料等の公知の有機顔料をすべて用いることができる。
この着色材の含有量としては、原料組成物全量に対して、好ましくは、5〜40重量%である。
【0016】
また、本発明に用いる水溶性粘結材としては、例えば、プルラン、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、キトサン、トラガカントガム、アラビアガム、グアーガム、ダンマルガム、ローカストビーンガム等合成、天然の粘結材を単独あるいは混合して使用いることができる。
この水溶性粘結材の含有量としては、原料組成物全量に対して、好ましくは、1〜30重量%である。
【0017】
更に、その他の成分として、流動パラフィンやシリコーンオイル、硬化ひまし油、ワセリン等の公知の油脂類やワックス類;アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性の公知の界面活性剤;、エチレングリコール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、水等の溶媒;、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、防腐剤、防カビ剤等を適宜量含有することも可能である。
【0018】
本発明の非焼成鉛筆芯は、少なくとも、耐水性付与材、着色材、体質材、水溶性粘結材などの原料組成物を混練、成形した後、乾燥することなどにより製造することができる。
具体的には、上記原料組成物をヘンシェルミキサーで混合し、更に原料組成物と同重量に相当する水を加えてニーダーで混合、分散させた後に二本ロールで混練しながら水分調整し、この混練物をペレット化して単軸スクリュー型押出機にて押出成形した後、50℃で3日間乾燥して水分を除去することにより目的の非焼成鉛筆芯を得ることができる。
【0019】
このように構成される非焼成色鉛筆芯では、少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に、耐水性付与材を含有することより、水溶性粘結材が有する耐水性の低下作用や膨潤作用を抑制せしめて、書き味や着色性を損なうことなく、耐水性に格段に優れたものが得られるものとなる。
好ましくは、耐水性付与材として、グリオキザール、エチレンジアミン、炭酸アンモニウムジルコニウム、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、Al(SOから選ばれる少なくとも1種を用いると、製造時の取り扱いが簡便で、更に耐水性が良好となる非焼成色鉛筆芯が得られるものとなる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定うるものではない。
【0021】
〔実施例1〜6及び比較例1〜2〕
下記表1に示す配合組成となる原料組成物をヘンシェルミキサーで混合し、更に原料組成物と同重量に相当する水を加えてニーダーで混合、分散させた後に二本ロールで混練しながら水分調整し、この混練物をペレット化して単軸スクリュー型押出機にて押出成形した後、50℃で3日間乾燥して水分を除去すること各非焼成色鉛筆芯を製造した。
【0022】
得られた各非焼成色鉛筆芯について、下記各評価方法により、耐水性、膨潤性、書き味、着色性について評価した。
これらの結果を下記表2に示す。
【0023】
(耐水性の評価方法)
25℃、湿度65%環境下で、水中に各非焼成色鉛筆芯を入れ、1週間放置後の着色材の溶け具合を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:着色材の溶出なし
×:着色材の溶出あり
【0024】
(膨潤性の評価方法)
25℃、湿度65%環境下で、水中に各非焼成色鉛筆芯を入れ、1週間放置後の芯径の膨潤具合を水中に入れる前の初期と比較して下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:芯径の増加が5%以下
○:芯径の増加が10%未満
×:芯径の増加が10%以上
【0025】
(書き味の評価方法)
25℃、湿度65%環境下で、上質紙面に筆記して下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:大変良好
○:良好
×:悪い
【0026】
(着色性の評価方法)
JIS−S−6005−1992に準拠して筆記描線の濃度(単位:D)を測定した。
【0027】
【表1】

【0028】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜6は、本発明の範囲外となる比較例1〜2に較べて、膨潤もなく、しかも、書き味や着色性を損なうことなく、耐水性が格段に優れた非焼成色鉛筆芯が得られることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色材と、体質材と、水溶性粘結材を含有する非焼成色鉛筆芯において、更に、耐水性付与材を含有することを特徴とする非焼成色鉛筆芯。
【請求項2】
耐水性付与材が、グリオキザール、エチレンジアミン、炭酸アンモニウムジルコニウム、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、Al(SOから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の非焼成色鉛筆芯。
【請求項3】
耐水性付与材の含有量が0.1〜25重量%である請求項1又は2記載の非焼成色鉛筆芯。

【公開番号】特開2006−182969(P2006−182969A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380044(P2004−380044)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】