説明

非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体とその医療用途

本発明は、非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体とその医療用途に関する。具体的には、本発明は、B型肝炎ウイルスのようなウイルスに対する強力な活性と低い細胞傷害性を有する式I(式中、Rは、H又はメチルであり;それぞれのRは、独立して、−R又は−ORであり;それぞれのRは、独立して、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキルである)の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物に関する。さらに本発明は、式Iの化合物を製造するための方法、該化合物を含んでなる医薬組成物、及び該化合物の医療用途に関する。本発明の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体は、B型肝炎ウイルスのようなウイルスに対する活性と、良好な in vivo 挙動特性を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎ウイルスのようなウイルスに対する強力な活性と低い細胞傷害性を有する非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、それを製造するための方法、及びB型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染症のようなウイルス感染症の治療用医薬品製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎のようなウイルス性肝炎は、人々の生命及び健康の脅威となる重要で重大な疾患であり、B型肝炎の治療の基本アプローチは、抗ウイルス治療薬である。現在、B型肝炎ウイルスに対して臨床的に有効な薬物は、主にインターフェロンとラミブジンである。しかしながら、インターフェロン治療薬の有効率は、30〜50%にすぎず、用量依存性の毒性及び副作用がある。ラミブジンは、B型肝炎ウイルスに対して顕著な活性を有するものの、長期投与の間に薬剤耐性をもたらす場合がある。2年間の連続投与の後で、薬剤耐性の発生率は40〜50%までになり、それにより、肝炎の急性発症のような深刻な結果を招く。
【0003】
ヌクレオチド類似体は、細胞中でリン酸化されないので、ラミブジンの薬剤耐性を克服することができて、それ自体では薬剤耐性を生じない。アデホビル・ジピボキシルは、代表的な薬物の1つとして、欧州及び米国での販売がすでに承認された。しかしながら、アデホビル・ジピボキシルもある種の細胞傷害性を有して、臨床使用の間に腎毒性をもたらす場合がある。加えて、ラミブジンと同様に、アデホビル・ジピボキシルの休薬の後では、B型肝炎ウイルスの複製リバウンドが生じて、B型肝炎の再発を引き起こす場合がある。
【0004】
抗HIV薬の研究における成功経験により、複数の薬物を組み合わせて使用するカクテル(COCKTAIL)治療は、効果的に、薬剤耐性を克服してウイルスのクリアランスを促進することができる。B型肝炎の感染者数は、HIV感染者数の10倍以上であるが、B型肝炎ウイルスに対して臨床的に有効な薬物は、ほとんどない。
【0005】
欧州特許EP0785208は、以下の式:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、Rは、1回の出現につき、アルコキシ及びアルキルのような置換基を表し;Rは、水素又はアルキルを表し、RとRは、水素、及びアルキル、等を表す]
の一連の非環式ヌクレオシドホスホネート化合物を開示する。その中でも、化合物:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−[2−[ビス(2,2,2−トリフルオロエチルオキシ)ホスホノメトキシ]プロピル]−プリン(MCC−478,アラミフォビル)は、臨床的に研究されてきた。
【0008】
【化2】

【0009】
MCC−478は、新たな構造のヌクレオチドであって、B型肝炎ウイルスに対する新たな薬物である。化学構造において、それは、抗B型肝炎薬として知られているヌクレオシドと異なる。MCC−478分子は、修飾されたグリコシルを有して、ヌクレオシド塩基母核の6位がフェニルチオでさらに置換されている。薬剤特性でも、MCC−478は、他の抗HBV薬とは異なる特徴を明示するが、即ちそれは、タンパク合成の開始反応及び組立て反応を阻害することによって、ウイルスの複製を阻害する(Clark Chan, et al. Clinical Pharmacokinetics of Alamifovir and Its Metabolites[アラミフォビルとその代謝産物の臨床薬物動態], Antivicrob Agents Chemother, 2005, 49(5): 1813-1822)ので、それは、HBVに対して高い選択性と阻害効果を有し、その in vitro 活性は、ラミブジンのそれの20〜80倍で、アデフォビルのそれの10〜20倍である。しかしながら、それは、HIV及びHSVのような他のレトロウイルスに対して活性を有さない(Kamiya N, et al. Antiviral activities of MCC-478, a novel and specific inhibitor of hepatitis B Virus[B型肝炎ウイルスの特異的な新規阻害剤、MCC−478の抗ウイルス活性], Antimicrob Agents Chemother 2002; 46(9): 2872)ので、独自の薬理学的特性を明示し;MCC−478はまた、ラミブジンへの耐性があるHBV株に対して阻害効果を有する(Suzane Kioko Ono-Nita, Ono-Nita SK, et al. Novel Nucleoside analogue MCC-478 (LY582563) is effective against wild-type or lamivudine-resistant hepatitis B virus[新規ヌクレオシド類似体、MCC−478(LY582563)は、野生型又はラミブジン耐性型のB型肝炎ウイルスに対して有効である], Antimicrob Agents Chemother 2002; 46: 2602-2605)。
【0010】
ヌクレオチド類似体のプロドラッグとして、MCC−478は、身体に入って加水分解された後で、遊離酸(602076)を放出してウイルスに対する効果をもたらすが、薬物動態の結果は、MCC−478の人体中での主要な代謝産物がヌクレオチドモノエステル(602074)であって、遊離酸:602076の血中濃度は、このモノエステル:602074の1/10にすぎない(Clark Chan, et al. Clinical Pharmacokinetics of Alamifovir and Its Metabolites[アラミフォビルとその代謝産物の臨床薬物動態], Antivicrob Agents Chemother, 2005, 49(5): 1813-1822)が、その一方で、このモノエステル:602074の細胞傷害性(CC50=548μM)は、MCC−478や602076のそれ(いずれも1000μMより高いCC50を有する)より有意に高い(Kamiya N, et al. Antiviral activities of MCC-478, a novel and specific inhibitor of hepatitis B Virus[B型肝炎ウイルスの特異的な新規阻害剤、MCC−478の抗ウイルス活性], Antimicrob Agents Chemother 2002; 46(9): 2872)ことを示した。
【0011】
現在、依然として、B型肝炎ウイルスのようなウイルスに対して有効であって、特に、高いバイオアベイラビリティを有する、臨床使用のための新規薬物を見出すニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許EP0785208
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Clark Chan, et al., Antivicrob Agents Chemother, 2005, 49(5): 1813-1822
【非特許文献2】Kamiya N, et al., Antimicrob Agents Chemother 2002; 46(9): 2872
【非特許文献3】Suzane Kioko Ono-Nita, Ono-Nita SK, et al., Antimicrob Agents Chemother 2002; 46: 2602-2605
【非特許文献4】Clark Chan, et al., Antivicrob Agents Chemother, 2005, 49(5): 1813-1822
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、抗ウイルス活性、そして特に、高いバイオアベイラビリティを有する新規で強力な化合物を提供することである。本発明者は、構造的に新規な化合物の群を見出して、この化合物は、良好な抗ウイルス活性だけでなく、予想外の良好な in vivo 性能を有する。本発明は、上記の知見に基づいて達成された。
【0015】
本発明の第一の側面は、式I:
【0016】
【化3】

【0017】
[式中、
は、H又はメチルより選択され;
それぞれのRは、独立して、−R又は−ORより選択され;そして
それぞれのRは、独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される]
の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を提供する。
【0018】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、RがHである。
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、Rがメチルである。
【0019】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、2つのRが同じである。
【0020】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、2つのRが異なる。
【0021】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、Rが−Rである。
【0022】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、Rが−ORである。
【0023】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、一方のRが−Rであり、他方のRが−ORである。
【0024】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される。
【0025】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される。
【0026】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物において、アルキル(例、C−Cアルキル)は、指定数の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキル(例、1〜8の炭素原子を有するアルキル)である。
【0027】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物において、シクロアルキル(例、C−Cシクロアルキル)は、指定数の炭素を有するシクロアルキル又はシクロアルキルアルキル(例、3〜8の炭素原子を有するシクロアルキル;又は、例えば、3〜8の炭素原子を含有するシクロアルキルアルキル、例えば、シクロプロピルメチル又はシクロヘキシルメチル)である。
【0028】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又は−CH(CHCH、等より選択される。
【0029】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物では、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又は−CH(CHCH、等より選択される。
【0030】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもより、本発明は:
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(アセトキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(エチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(アセトキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ネオペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ペンチル−3−オキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;及び
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
からなる群より選択される非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を提供する。
【0031】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもより、本発明は:
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(エチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ネオペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I10);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ペンチル−3−オキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I11);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I12);
(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I13);及び
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I14);
からなる群より選択される非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を提供する。
【0032】
本発明の第一の側面のいずれの態様にもより、本発明は、本出願の実施例の化合物より選択される非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を提供する。
【0033】
本発明の第二の側面は、本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を製造するための方法を提供することであって、該方法は、以下の工程:
(i)式:
【0034】
【化4】

【0035】
の化合物を式:
【0036】
【化5】

【0037】
の化合物又は式:
【0038】
【化6】

【0039】
の化合物と、好適な溶媒(例、DMF)において、好適な試薬(例、DBU(即ち、二環式アミジン)、特に、Rが水素であるとき)又は炭酸カリウム(特に、Rがメチルであるとき)の存在下に、上昇温度(例、60〜140℃、例えば80〜120℃、又は例えば80〜100℃)で反応させて、以下の式II:
【0040】
【化7】

【0041】
の化合物を入手する工程;
ii)式IIの化合物を式:
【0042】
【化8】

【0043】
の化合物と、好適な溶媒(例、DMF)において、有機塩基(例、トリエチルアミン)の存在下に、上昇温度(例、50〜120℃、例えば60〜100℃)で反応させて、以下の式III:
【0044】
【化9】

【0045】
の化合物を入手する工程;
iii)式IIIの化合物をアルキルハロシラン(例、トリメチルブロモシラン)と10〜40℃の温度(例、室温)で反応させて、以下の式IV:
【0046】
【化10】

【0047】
の遊離酸化合物を入手する工程;
iv)式IVの化合物をハロゲン化アルカノイルオキシメチル又はハロゲン化アルキルオキシカルボニルオキシメチル(例、
【0048】
【化11】

【0049】
のような塩化物)と10〜40℃の温度(例、室温)で反応させて、式I:
【0050】
【化12】

【0051】
の化合物を入手する工程;及び、任意選択的に、
v)入手した式Iの化合物を分離、精製、又は医薬的に許容される塩、水和物、又は溶媒和物の製剤化の工程へ処す工程;
を含んでなる[上記の諸式中、R及びRは、本発明の第一の側面のいずれの態様でも定義される意味を有する]。
【0052】
本発明の第三の側面は、本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物の治療及び/又は予防有効量を含み、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでいてもよい医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、溶液剤、錠剤、カプセル剤、又は注射剤であってよく;そしてこれらの医薬組成物は、注射経路又は経口経路によって投与することができる。本発明の第三の側面の1つの態様において、本発明の式Iの化合物又はその医薬組成物は、好ましくは、経口経路によって投与される。
【0053】
本発明の第四の側面は、本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物、又は本発明の第三の側面のいずれの態様にもよる医薬組成物の、ウイルス感染症に関連した疾患の治療及び/又は予防用医薬品の製造における使用を提供する。本発明の第四の側面のいずれの態様の使用によれば、ウイルスは、B型肝炎ウイルスのような肝炎ウイルスである。本発明の第四の側面のいずれの態様の使用によれば、ウイルス感染症に関連した疾患は、B型肝炎のような肝炎である。
【0054】
本発明の第五の側面は、ウイルス感染症に関連した疾患の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物におけるその治療及び/又は予防のための方法を提供し、該方法は、本発明の第一の側面のいずれの態様にもよる非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物、又は本発明の第三の側面のいずれの態様にもよる医薬組成物の治療及び/又は予防有効量を、それを必要とする哺乳動物へ投与することを含んでなる。本発明の第五の側面による1つの態様において、ウイルス感染症に関連した疾患は、B型肝炎のような肝炎である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の様々な側面及び特徴について、以下のようにさらに例解する。
すべての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれて、この文献において表記される意味が本発明中のそれと一致しなければ、本発明の表記が優先されるべきである。加えて、本発明に使用される用語及び句は、その用語及び句が本発明においてさらに説明されて例解されなければ、当業者によってよく知られた一般的な意味を有する。言及される用語及び句が当該技術分野で知られたものと異なる意味を有するならば、本発明において定義される意味が優先されるべきである。
【0056】
本明細書に使用する「ハロ」、「ハロゲン」、「ハル(Hal)」又は「ハロゲン化」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素に関連する。
本明細書に使用する「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、当該技術分野でよく知られた一般的な意味を有し、即ち、それらは、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、例えば、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アリル、プロペニル、プロピニル、等であり、「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は、まとめて、「ヒドロカルボニル」又は「脂肪族ヒドロカルボニル」と呼ばれる場合がある。
【0057】
本明細書に使用する「C−Cアルキル」という用語は、所望数の炭素原子がある置換又は未置換アルキル基を意味し、その例には、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチルが含まれる。
【0058】
本明細書に使用する「C−Cシクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルのような、所望数の炭素原子がある置換又は未置換シクロアルキルを意味する。
【0059】
本発明の詳細な教示と当該技術分野での有機化合物の合成における一般的な知識に従って、当業者は、本発明の式Iの化合物を容易に合成することができる。
1つの態様において、R=Hであるとき、式Iの所望の化合物は、以下のように図解される例示の合成経路によって製造することができる:
【0060】
【化13】

【0061】
この図解の合成工程は、2−アミノ−6−クロロ−プリンと塩化ビス−(イソプロピル)−ホスホロエチルをDMFに溶かして、DBUの存在下に80℃〜100℃の温度で撹拌下に反応させて、中間体IIを入手する工程;IIとp−メトキシフェニルチオールをDMFに溶かして、トリエチルアミンの存在下に60℃〜100℃の温度で撹拌下に反応させて、p−メトキシフェニルチオ置換誘導体IIIを入手する工程;IIIをトリメチルブロモシランと室温で撹拌下に反応させてこのイソプロピルエステルを加水分解して、遊離酸IVを入手する工程、及びIVを塩化アルカノイルオキシメチル又は塩化アルキルオキシカルボニルオキシメチルと室温で反応させて、所望の化合物Iを入手する工程を含む。
【0062】
別の態様において、R=CHであるとき、式Iの所望の化合物は、以下のように図解される例示の合成経路によって製造することができる:
【0063】
【化14】

【0064】
2−アミノ−6−クロロ−プリンとジイソプロピル(R)−{1−メチル−2−[(1−メチルスルホニルオキシ)エトキシ]メチル}ホスホネートエステルをDMFに溶かし、炭酸カリウムの存在下に80℃〜120℃の温度で撹拌下に反応させて、中間体IIを入手してから、後続の手順は、R=Hである場合の式Iの化合物について上記に記載した合成手順に従って実施してよい。
【0065】
本発明の式Iの化合物の合成についての方法において、この反応に使用するすべての原材料は、当業者が当該技術分野の知識に従って製造及び入手しても、当該技術分野でよく知られた方法によって入手しても、市販品を入手してもよい。上記の反応スキームで使用される中間体、原材料、試薬、及び反応条件は、好適にも、当業者が当該技術分野の知識に従って変更してよい。あるいは、当業者はまた、具体的には本明細書に列挙されない他の式Iの化合物を本発明の第二の側面の方法に従って合成することができる。
【0066】
本発明の式Iの化合物は、それ自体の形態で又はその医薬的に許容される塩又は溶媒和物の形態で使用してよい。式Iの化合物の医薬的に許容される塩には、医薬的に許容される無機酸又は有機酸、又は無機アルカリ又は有機アルカリとともに生成される慣用の塩が含まれる。好適な酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、ヒドロキシ酢酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パモ酸、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフチル−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、タンニン酸、等とともに生成される塩が含まれる。医薬的に許容される塩には、その無機塩又は有機塩が含まれて、限定されないが、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、重リン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、トリメチル酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、ピクリン酸塩、アスパラギン酸塩、グルコン酸塩、エシレート、トシラート、パモ酸塩、ピルビン酸塩、グリコール酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p−アミノサリチル酸塩、パモ酸塩、及びアスコルビン酸塩、等が含まれる。好適なアルカリ付加塩の例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、等とともに生成される塩が含まれる。本発明の化合物について言及されるとき、それらには、式Iの化合物とその医薬的に許容される塩又は溶媒和物が含まれる。本発明の化合物の遊離塩基型は、その塩より、いくつかの物理特性(例、極性溶媒中の溶解性)においてやや異なる場合があるが、本発明の目的では、それらの酸塩とそれらの遊離塩基形態は、等価である(例えば、参照によりその本文が組み込まれる、S. M. Berge, et al., 「Pharmaceutical Salts(製薬塩)」 J. Pharm. Sci., 66: 1-19 (1977)を参照のこと)。本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩は、水和物、アルコール和物、等のような溶媒和物を生成することができる。
【0067】
本発明によれば、本発明の式Iの化合物は、肝炎ウイルス(B型肝炎ウイルスのような)によって引き起こされる感染症の治療用医薬品の製造に使用することができる。
本明細書に使用する「組成物」という用語は、指定成分を指定量で含んでなる製品、及び指定量の指定成分とともに直接的又は間接的に形成されるあらゆる製品を意味する。本発明によれば、「組成物」は、「医薬組成物」を意味する。
【0068】
本発明の式Iの化合物は、その異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、エナンチオマー濃縮生成品、溶媒和物、及びエステルをさらに含み、本発明の式Iの化合物とその異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、エナンチオマー濃縮生成品、溶媒和物、及びエステルは、水和物、アルコール溶媒和物、等のような溶媒和物をさらに生成することができる。さらに本化合物は、プロドラッグであっても、有効成分を in vivo 代謝後に放出することが可能な形態であってもよい。当業者には、好適なプロドラッグ誘導体を選択して製造することが通常の知識である。一般に、本発明の目的では、水及びエタノールのような医薬的に許容される溶媒の溶媒和物は、溶媒和物の形態でないものと等価である。
【0069】
本発明の医薬組成物における様々な有効成分の実際の用量レベルは、生じる活性化合物の量が特定の患者、剤形、及び投与経路において所望される治療応答をもたらすことができるように変動してよい。この用量レベルは、特定の化合物、投与経路、治療される疾患の重症度、並びに患者の状態と既往歴に従って決定されなければならない。しかしながら、当該技術分野での慣用法は、化合物の用量を所望の治療効果を達成するレベルより低いレベルから所望の治療効果を達成するのに十分なレベルまで徐々に高めることである。
【0070】
上記の、又は他の治療及び/又は予防において使用されるとき、治療及び/又は予防有効量での本発明の化合物は、純粋な化合物の形態で、又は医薬的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ(それらが存在するならば)の形態で使用してよい。あるいは、本化合物は、本化合物と1以上の医薬的に許容される賦形剤を含んでなる医薬組成物によって投与されてよい。「治療及び/又は予防有効量」での本発明の化合物という用語は、該化合物が予防及び/又は治療上妥当な効果/リスク比をもたらすのに十分な量であることを意味する。本発明の化合物又は組成物の1日あたりの総量は、医師によって、信頼し得る医療決定の範囲内で決定されなければならない。どの特定の患者に関しても、特定の治療有効量は、治療される疾患とその重症度、使用される特定化合物の活性、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、健康状態全般、性別、及び食事、使用される化合物の投与時間及び経路と排出速度、特定の化合物と組み合わせて、又は同時に投与される薬物(複数)、及び医療技術分野でよく知られた類似の要因が含まれる、様々な要因に基づいて決定されなければならない。例えば、当該技術分野では、化合物の用量を所望の治療効果を達成するレベルより低いレベルから所望の治療効果を達成するのに十分なレベルまで徐々に高めることが通例の方法である。一般に、哺乳動物、特にヒトに対する式Iの化合物の用量は、1日につき0.01〜100mg/kg(体重)、1日につき0.01〜10mg/kg(体重)のように、1日につき0.001〜1000mg/kg(体重)であり得る。
【0071】
本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩は、単独で又は医薬組成物の形態で投与してよい。本発明の医薬組成物は、投与経路に従って製剤化される、様々な好適な剤形であってよい。賦形剤及び添加剤が含まれる、1以上の生理学的に許容される担体の使用は、活性化合物を加工して医薬的に許容される調製物を生成するのに有利である。好適な調製物の形態は、選択される投与経路に依存して、当該技術分他の知識に従って調製してよい。
【0072】
従って、当業者によく知られた医薬的に許容される担体を使用することによって、本発明の化合物の有効量を含んでなる医薬組成物を調製することができる。さらに本発明は、1以上の無害な医薬的に許容される担体とともに製剤化される本発明の化合物を含んでなる医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、具体的には、経口投与、非経口注射、又は直腸投与用に、固体又は液体形態で製剤化してよい。
【0073】
投与の経路は、経口、非経口、又は局所投与、好ましくは、経口投与と注射投与であってよい。経口投与に適した医薬調製物は、カプセル剤と錠剤を含む。嚥下困難の患者では、舌下錠剤や他の非嚥下投与用の調製物を使用してよい。本発明の化合物は、非経口投与又は皮膚貫通投与又は経粘膜投与のために製剤化してよい。当業者は、本発明の化合物が好適な薬物送達系(DDS)を使用して、より有利な効果をもたらすことが可能であることを理解されよう。
【0074】
具体的には、本発明の医薬組成物は、ヒト又は他の哺乳動物へ経口、直腸、非経口、直腸、非経口、腔内、膣内、腹腔内、局所的(散剤、軟膏剤、又は滴剤によるように)、頬内に投与しても、経口スプレー又は経鼻スプレーとして投与してもよい。本文脈において、「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、皮下、及び関節内の注射又は輸注が含まれる投与方式に関連する。
【0075】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性又は非水性の溶媒、分散剤、懸濁剤、又は乳化剤、並びに無菌の注射可能な溶液剤又は分散液剤を再形成するための無菌分散剤を含むことができる。好適な水性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒、又は媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、等)、植物油(オリーブ油のような)、オレイン酸エチルのような注射可能な有機エステル、及びこれらの好適な混合物が含まれる。
【0076】
上記の組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤のような賦形剤をさらに含むことができる。様々な抗菌剤及び抗真菌剤(ニパギン、ナウチサン、フェノール、ソルビン酸、等のような)の使用は、微生物と戦う効果を確実にすることができる。また、糖類、塩化ナトリウム、等のような等張化剤を含むことが望まれる。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収遅延のための物質の使用は、注射可能な剤形の延長した吸収をもたらすことができる。
【0077】
活性化合物以外に、懸濁液剤は、エトキシル化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトール及びポリオキシエチレンソルビタン、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントガム、又はこれらの物質の混合物のような懸濁剤をさらに含むことができる。
【0078】
ある事例では、薬物の効果を延ばすために、皮下又は筋肉内に投与される薬物の吸収速度を抑えることが望まれる。このことは、水溶性が乏しい結晶型又は非結晶型の液体懸濁液剤を使用することによって達成され得る。従って、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存するが、その溶解速度は、結晶の大きさ及び形態に依存する。あるいは、薬物の非経口投与における遅延吸収は、その薬物を油性媒体に溶かすか又は分散させることによって達成され得る。
【0079】
薬物のマイクロカプセル基質をポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中で形成することによって、注射可能デポー剤の剤形を調製することができる。薬物の放出速度は、薬物のポリマーに対する比と具体的に使用されるポリマーの性質に従って制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)とポリ(無水物)を含む。注射可能デポー剤の剤形はまた、身体組織へ適合可能なリポソーム剤又はマイクロエマルジョン剤に薬物を埋め込むことによって製造することができる。
【0080】
注射可能な調製物は、細菌フィルターを使用する濾過によって、又は滅菌剤を無菌の固体組成物の形態で取り込むことによって滅菌してよく、この固体組成物は、臨床適用の前に、無菌水又は他の無菌の注射可能媒体に溶かすか又は分散させてよい。
【0081】
本発明の化合物又はその組成物は、経口又は非経口で投与してよい。経口投与用のものは、錠剤、カプセル剤、被覆剤形であってよく、非経口投与用の医薬調製物は、注射剤又は坐剤であってよい。これらの調製物は、当業者によく知られた方法に従って調製される。錠剤、カプセル剤、及び被覆剤形を製造するために、使用される賦形剤は、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、シリカ、ポリエチレングリコールのような通常使用される賦形剤であって、液体剤形に使用される溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、植物油(トウモロコシ油、落花生油、オリーブ油、等のような)である。本発明の化合物を含んでなる調製物は、界面活性剤、滑沢剤、崩壊剤、保存剤、調整剤(correctants)、及び着色剤、等のような他の賦形剤をさらに含むことができる。錠剤、カプセル剤、被覆剤形、注射剤、及び坐剤において、本発明の式Iの化合物の用量は、単位剤形中に存在する化合物の量で表される。単位剤形において、本発明の式Iの化合物の量は、通常1〜5000mgであり、好ましい単位剤形は、10〜500mgを含有し、より好ましい単位剤形は、20〜300mgを含有する。特に、本発明において提供されるような経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含む。このような固体剤形において、活性化合物は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの不活性な医薬的に許容される賦形剤又は担体、及び/又は以下の物質:a)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び珪酸のような充填剤又は増嵩剤;b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及びアラビアゴムのような結合剤;c)グリセロールのような保湿剤;d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はキャッサバデンプン、アルギン酸、いくらかの珪酸塩、及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;e)パラフィンワックスのような溶解ブロッキング剤;f)四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;g)セタノール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;h)カオリン及びベントナイトのような吸着剤;及びi)タルク粉末、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような滑沢剤とともに混合してよい。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、これらの剤形はまた、緩衝剤を含んでよい。
【0082】
似た種類の固体組成物は、軟カプセル剤及び硬カプセル剤の充填剤としても使用することができる、乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用する。
錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、医薬調製物の技術分野でよく知られた、腸溶コーティング材料や他のコーティング材料のようなコーティング剤及び外殻(shell)材料とともに調製してよい。これらの固体剤形は、遮光剤を含んでもよくて、その組成物は、遅延されたやり方であってもなくても、腸管のある部位で、有効成分を単に、又は選好的に放出することを可能にし得る。埋込み組成物の例は、高分子材料とワックスを含む。活性化合物は、適宜、1以上の上記賦形剤とともにマイクロカプセル剤の形態で製剤化してよい。
【0083】
経口投与用の液体剤形は、医薬的に許容される乳化剤、溶媒、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤を含む。活性化合物以外に、液体剤形は、水又は、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ジメチルホルムアミド、油剤(綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油のような)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物といった他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤のような、当該技術分野で通常使用される不活性希釈剤をさらに含んでよい。不活性希釈剤以外に、経口投与用の組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、調整剤、及びフレーバー剤のような賦形剤をさらに含むことができる。
【0084】
直腸又は膣投与用の組成物は、好ましくは、坐剤である。坐剤は、本発明の化合物を、ココア脂、ポリエチレングリコール、又は坐剤ワックスのような好適な非刺激性の賦形剤又は担体と混合することによって製造し得て、それらは、室温では固体であるが、体温では液体であり得るので、活性化合物を直腸管腔又は膣管において放出することができる。
【0085】
本発明の化合物を局所投与に使用することも望ましい。本発明の化合物の局所投与用の剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏剤、及び吸入剤を含む。活性化合物と医薬的に許容される担体は、無菌条件の下で、所望される保存剤、緩衝剤、又は推進剤と混合してよい。眼科用の調製物、眼軟膏剤、散剤、及び溶液剤は、いずれも本発明の範囲内にある。
【0086】
本発明の化合物は、リポソームの形態で投与してよい。当該技術分野では、リポソームが通常はリン脂質又は他の脂質を使用することによって調製されることがよく知られている。リポソームは、水性媒体に分散される、単層又は多重層の水和液晶で形成される。リポソームを形成することが可能などの無害な生理学的に許容されて代謝可能な脂質も、使用可能であり得る。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物以外に、安定化剤、保存剤、賦形剤を含むことができる。好ましい脂質は、天然及び合成のリン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)であり、それらは、単独で又は一緒に使用してよい。リポソームを形成するための方法は、当該技術分野でよく知られている。参考文献は、例えば、Prescott(監修)、「細胞生物学の方法(Methods in Cell Biology)」、XIV巻、アカデミックプレス、ニューヨーク州ニューヨーク(1976)、33 頁に見られる。
【0087】
本発明者は、驚くべきことに、式Iの非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体が肝炎ウイルス(特に、B型肝炎ウイルス)のようなウイルスに対する良好な活性と、予想外の in vivo 性能を有することを見出した。
【実施例】
【0088】
本発明を行うための実例モード
本発明を以下の実施例によりさらに例解するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。当業者は、本発明の精神及び範囲より逸脱することなく、本発明を変更又は修飾し得ることを理解されよう。
【0089】
以下の実験に使用する材料及び実験法は、本発明において一般的及び/又は具体的に記載される。本発明の目的を達成するための材料及び手順のほとんどは、当該技術分野でよく知られているが、それらについても、可能な限り詳しく記載する。
【0090】
実施例1:塩化2−(ジイソプロピル−ホスホノメトキシ)エチルの製造
合成スキームは、以下の通りである:
【0091】
【化15】

【0092】
150mlの3つ首ボトルにおいて、84.6g(70.5ml,1.05モル)の2−クロロエタノールと31.6g(1.09モル)の粉砕化パラホルムアルデヒドを加えて、この混合物に乾燥塩化水素ガスを撹拌下に24時間供給した。撹拌の終了後、この反応液体は2層へ分離して、下層を取り出して、塩化カルシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧での分留へ処して、80〜84℃/28〜30mmHgの沸点範囲の画分を採取して、74.3gのクロロメチル−2−クロロエチルエーテルを入手した。
【0093】
300mL反応ボトルにおいて、18g(0.3モル)のイソプロパノール、23.7g(0.3モル)のピリジン、及び100mlの石油エーテルを加えて、この混合物を氷浴に冷やした。激しい撹拌の下で、40ml石油エーテル中13.8g(0.1モル)の三塩化リンの溶液を滴下した。滴下の終了後、この反応を50℃の油浴において撹拌下に1時間実施してから、固形物を濾過して除き、濾液を減圧で蒸留して溶媒を除き、残渣を減圧で蒸留して、106〜108℃/60mmHgの画分を採取して、15.8gの亜リン酸トリイソプロピルを入手した。
【0094】
100mlの3つ首ボトルへ8.3g(0.064モル)のロロメチル−2−クロロエチルエーテルを加えて、この混合物を90℃の油浴において加熱して撹拌して、15.8g(0.076モル)の亜リン酸イソプロピルを滴下した。添加の終了後、この反応を125℃の油浴において撹拌下に4時間実施して、反応の完了をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(展開溶媒は、酢酸エチルであった、R=0.6)によって検出した。減圧での蒸留によって、118〜122℃/1.5mmHgの画分を採取して、13.5gの塩化2−(ジイソプロピル−ホスホノメトキシ)−エチルを入手した。
【0095】
実施例2:(R)−{1−メチル−2−[(1−メチルスルホニルオキシ)エチルオキシ]メチル}ホスホン酸ジイソプロピルの製造
合成スキームは、以下の通りである:
【0096】
【化16】

【0097】
1000mlのボトルにおいて、24.0g(0.315モル)の(R)−1,2−プロピレングリコール、0.25gのN,N−ジメチルアミノピリジン、350mlのジクロロメタン、及び46.0g(0.45モル)のトリエチルアミンを加えて、この混合物を氷浴に冷やして、磁気撹拌子で撹拌した。88.7g(0.315モル)のトリフェニルクロロメタンを約1時間以内に少量ずつ加え、1.5時間後に氷浴を外して、温度を室温へ上昇させて、ここでこの反応を約15時間(トリフェニルクロロメタンがTLC検出によって消失するまで)実施した。蒸留水(100mL)を加えて、反応の間に生成した塩酸トリエチルアミンを溶かしてから、この混合物を層形成のために分液漏斗へ移した。油相を5%重炭酸ナトリウム(2x100ml)と蒸留水(100ml)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、濾液を減圧で蒸留して溶媒を除いて、96.6gの(R)−1−O−トリフェニルメチル−1,2−プロピレングリコールを入手して、これを次の反応工程に直接使用した。
【0098】
この96.6g(約0.30モル)の(R)−1−O−トリフェニルメチル−1,2−プロピレングリコール粗生成物を500mlの無水テトラヒドロフランへ加えて、この混合物を磁気撹拌子で撹拌して、氷浴に冷やした。11.3g(70%、0.33モル)の水素化ナトリウムを約40分以内に分量で加えた。0.5時間後、氷浴を外してから、温度を室温へ高めて、ここで反応を約2時間実施してから、わずかに還流させながら約3時間加熱すると、ガスが発生しなくなった。温度を5℃未満に下げたとき、無水テトラヒドロフラン(200ml)中106.2g(0.30モル)のp−トシルオキシメチルホスホン酸ジイソプロピルを約0.5時間以内に滴下し、1時間後に氷浴を外してから温度を室温へ高めて、ここで反応を約30時間実施した。反応の終了の後で、溶媒を回転式の蒸発によって除去してから、すべての残留固形物が溶けるまで、酢酸エチル(250ml)と蒸留水(200ml)を撹拌下に加えて、次いでこの混合物を層形成のために分液漏斗へ移した。水相を再び酢酸エチル(2x70ml)で抽出して、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液の溶媒を減圧での蒸留によって除去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー条件:シリカゲル200〜300メッシュ;溶出剤は、石油エーテル:酢酸エチル=10:1〜5:1であった)によって分離させて、(R)−[(2−トリフェニルメトキシ−1−メチルエチルオキシ)−メチル]ホスホン酸ジイソプロピル(90.6g)を透明な黄色のオイルとして入手した。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.22-7.48 (m, 15H), 4.51-4.67 (m, 2H), 3.62-3.88 (m, 3H), 2.99 (dd, 1H,), 2.92 (dd, 1H), 1.12-1.28 (m, 12H), 1.07 (d, 3H)。
【0099】
透明な黄色のオイルとしての90.6g(0.182モル)の(R)−[(2−トリフェニルメトキシ−1−メチルエチルオキシ)メチル]ホスホン酸ジイソプロピルと80%酢酸溶液(380mL)を撹拌して均質な溶液を生成して、これを85℃の油浴に入れて、加熱した。反応を撹拌下に20分間実施してから、氷浴に一晩入れて、副生成物のトリフェニルメタノールが十分に沈殿することを可能にした。濾過後、濾過ケークを80%酢酸溶液(3x15ml)で洗浄して濾液を合わせて、減圧で蒸留して、酢酸と水を除いた。残渣を酢酸エチル(250ml)へ加えて、この混合物を飽和塩水(2x50ml)で洗浄して油層を得て、これを無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過した。濾液を減圧で蒸留して溶媒を除去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー条件:シリカゲル200〜300メッシュ;溶出剤は、ジクロロメタン:メタノール=50:1〜10:1であった)によって分離させて、(R)−[(2−ヒドロキシ−1−メチルエチルオキシ)メチル]ホスホン酸ジイソプロピル(24.1g)を透明な淡黄色のオイル生成物として得た。
【0100】
22.9g(90ミリモル)の(R)−[(2−ヒドロキシ−1−メチルエチルオキシ)メチル]ホスホン酸ジイソプロピルを150mlのジクロロメタンへ加えて、この混合物に18.4g(180ミリモル)のトリエチルアミンを加え、磁気撹拌子で撹拌して、氷浴に冷やした。12.6g(0.108モル)の塩化スルホニルメチルを定圧漏斗で約1時間以内に滴下して、0.5時間後に氷浴を外し、温度を室温へ高めて、ここで反応を一晩実施した。蒸留水(70ml)を加えて、この反応の間に生成した塩酸トリエチルアミンを溶かして、この溶液を層形成のために分液漏斗へ移した。水相をジクロロメタン(70ml)で抽出して油相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過した。濾液を減圧で蒸留して溶媒を除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー条件:シリカゲル200〜300メッシュ;溶出剤は、ジクロロメタン:メタノール=60:1〜20:1であった)によって分離させて、(R)−{1−メチル−2−[(1−メチルスルホニルオキシ)エチルオキシ]メチル}−ホスホン酸ジイソプロピル(27.1g)を透明な淡橙色のオイルとして得た。1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ : 4.72-4.78 (m, 2H), 4.24 (dd, 1H), 4.18 (dd, 1H), 3.73-3.90 (m, 3H), 3.09 (s, 3H), 1.33-1.37 (m, 12H), 1.24 (d, 3H)。
【0101】
実施例3:2−アミノ−6−クロロ−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(II)の製造
120mlのDMFに29.3gのDBU、32.45g(0.191モル)の2−アミノ−6−クロロプリンを加えて、80℃で30分間撹拌してから、50g(0.193モル)の塩化2−(ジイソプロピルオキシ−ホスホノメトキシ)−エチルを加えて、反応を100℃で8時間実施し、冷やし、減圧で蒸留してDMFを除去し、水と酢酸エチルを加え、層形成させ、水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、MeOH:CHCl=1:30で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、46gのIIを得た。
【0102】
実施例4:(R)−2−アミノ−6−クロロ−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシ)−ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(II)の製造
500mLフラスコ(CaCl乾燥管を取り付けた)において、26.6g(80.0ミリモル)の(R)−{1−メチル−2−[(1−メチルスルホニルオキシ)エチルオキシ]メチル}ホスホン酸ジイソプロピル、200mlのジメチルホルムアミド、及び16.8g(96.0ミリモル)の2−アミノ−6−クロロプリン、及び16.8g(120ミリモル)の無水炭酸カリウムを加えて、磁気撹拌子で撹拌し、反応を95℃の油浴で実施した。この油浴を4時間後に外し、室温へ冷やした後で濾過を実施し、濾過ケークをジメチルホルムアミド(2x30ml)で洗浄し、濾液を合わせ、ロータリーエバポレーターによって減圧(45℃,2〜5mmHg)で蒸留して溶媒を除去し、残渣を冷やして、250mlの酢酸エチルと100mlの飽和塩水を加え、撹拌下に溶かし、層形成のために分液漏斗へ移してから、油層を飽和塩水(2x50ml)で洗浄し、この油層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液をロータリーエバポレーターにより減圧で蒸留して溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー条件:シリカゲル200〜300メッシュ;溶出剤は、ジクロロメタン:メタノール=100:1〜50:1〜15:1であった)によって分離させ、このカラムクロマトグラフィーによって入手した生成物を酢酸エチル−石油エーテルでさらに再結晶させ、濾過し、乾燥させて、白色の固体生成物を入手した。母液をロータリーエバポレーターにより減圧で蒸留して乾燥させて、粗生成物を精製するための上記の方法によって、生成物の第二バッチを入手した。入手した生成物は、全量27.1g、融点:130〜132℃,比旋光度:[α]23=−44.09(ジクロロメタン、c=1.002)であった。1H-NMR (CDCl3, 400MHz)δ: 7.95 (s, 1H), 5.21 (br s, 2H), 4.64-4.75 (m, 2H), 4.22 (dd, 1H), 4.07 (dd, 1H), 3.85-3.97 (m, 1H), 3.81 (dd, 1H), 3.78 (dd, 1H), 1.12-1.23 (m, 15H)。
【0103】
実施例5:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−(2−ホスホノメトキシエチル)−プリン−(IV)の製造
室温で、30mlのDMFに、5g(12.8ミリモル)のII、2.6g(25.6ミリモル)のトリエチルアミン、及び2.7g(19.2ミリモル)のp−メトキシチオフェノールを連続して加えて、反応を窒素ガスの防護下に70℃で4時間実施し、冷やし、減圧で蒸留してDMFを除去し、酢酸エチルと水を加え、撹拌し、層形成させ、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、MeOH:CHCl=1:30で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、3.98gの2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(III)を粘稠な液体として得た。
【0104】
3.98g(8ミリモル)のIIIを30mlのアセトニトリルに溶かし、7.25ml(48ミリモル)のトリメチルブロモシランを室温で加え、反応を一晩実施してから、5.5mlのエタノールを加え、2時間撹拌して淡黄色の固形物を沈殿させ、濾過し、真空下に乾燥させて、3.3gのIVを黄色の固形物として入手した。融点:81.5〜82.5℃。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz)δ: 8.51 (s, 1H), 7.54 (d, 2H), 7.06 (d, 2H), 4.265 (t, 2H), 3.86 (t, 2H), 3.84 (3, 3H), 3.62 (d, 2H)。
【0105】
実施例6:(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピル)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(IV)の製造
実施例5の方法を参照することによって、IIの代わりにIIを使用して、トリエチルアミンの存在下にメトキシチオフェノールと反応させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、R−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(III)を入手した(収率68%)。
【0106】
実施例5の方法を参照することによって、IIIをトリメチルブロモシランで脱保護化して、IVを入手した(収率73%)。融点:178℃(分解)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 8.08 (s, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 4.14 (dd, 1H), 4.05 (dd, 1H), 3.84-3.93 (m, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.50-3.64 (m, 2H), 1.05 (d, 3H)。
【0107】
実施例7:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
0.41g(1ミリモル)のIV、5.0mlの無水DMF、及び0.2g(2ミリモル)のトリエチルアミンをフラスコへ加え、窒素ガス防護下に室温で10分間撹拌し、0.46g(4ミリモル)のプロピオン酸クロロメチルを加え、この反応を窒素防護下に室温で35時間実施し、分液漏斗へ移し、水(60ml)を加え、酢酸エチル(3x40ml)で抽出し、有機層を合わせ、飽和塩水(3x40ml)で洗浄した。この油層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して乾燥剤を除去し、濾液をロータリーエバポレーターによって室温で真空濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー条件:シリカゲル200〜300メッシュ;溶出剤は、ジクロロメタン:メタノール=80:1〜40:1であった)によって分離させて、0.185gのIを得た。1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 7.78 (s, 1H), 7.54(dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 5.65-5.70 (m, 4H), 4.84 (br s, 2H), 4.28 (t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.92 (m, 2H), 2.37 (q, 4H), 1.12 (t, 6H)。
【0108】
実施例8:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノ−メトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例7の方法を参照することによって、プロピオン酸クロロメチルの代わりにイソ酪酸クロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率31%)。1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 7.78 (s, 1H), 7.54 (dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 5.65-5.70 (m, 4H), 4.84 (br s, 2H), 4.28(t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.92 (m, 2H), 2.53 (m, 2H), 1.13 (d, 12H)。
【0109】
実施例9:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例7の方法を参照することによって、プロピオン酸クロロメチルの代わりにピバル酸クロロメチル使用してIVと反応させ、反応生成物をカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率35%)。1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 7.78 (s, 1H), 7.54 (dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 5.65-5.70 (m, 4H), 4.84 (br s, 2H), 4.28(t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.92 (m, 2H), 1.23 (s, 9H), 1.22 (s, 9H)。
【0110】
実施例10:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例7の方法を参照することによって、プロピオン酸クロロメチルの代わりにシクロヘキシルギ酸クロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率35%)。1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δ: 7.78 (s, 1H), 7.54 (dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 5.65-5.70 (m, 4H), 4.84 (br s, 2H), 4.28 (t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.92 (m, 2H), 2.27 (m, 2H), 1.91 (m, 4H), 1.66 (m,4H); 1.39-1.47 (m, 12H)。
【0111】
実施例11:(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I)の製造
実施例7の方法を参照することによって、ピバル酸クロロメチルをIVと反応させて反応生成物をカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率36.5%)。1H-NMR (CDCl3, 400MHZ) δH: 7.78 (s, 1H), 7.54 (dd, 2H), 6.96 (dd, 2H), 5.65-5.70 (m, 4H), 4.84 (br s, 2H), 4.18 (dd, 1H), 4.01 (dd, 1H), 3.69-3.96 (m, 6H), 1.23 (s, 9H), 1.22 (s, 9H), 1.19 (d, 3H)。
【0112】
実施例12:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(エチルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
室温で、12mlのN−メチルピロリドンへ1.64g(4ミリモル)のIV、0.8g(8ミリモル)のトリエチルアミンを加えて、30分間撹拌してから、2.2g(16ミリモル)の炭酸エチルクロロメチルを加えて、反応を撹拌下に70℃で2時間実施し、冷やし、300mlの1%クエン酸水溶液と500mlのジエチルエーテルを加え、撹拌し、層形成させ、水層をジエチルエーテルで2回抽出し、有機層を合わせ、乾燥させ、MeOH:CHCl=1:30で溶出させるカラムクロマトグラフィーによって分離させて、0.92gのIを入手した。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (s, 2H, NH2), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.24 (m, 4H), 4.28 (t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 1.30 (m, 6H)。
【0113】
実施例13:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸プロピルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率32%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz)δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.28 (t, 2H), 4.22 (m, 4H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 1.62 (m, 4H), 0.98 (m, 6H)。
【0114】
実施例14:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸イソプロピルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率27%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (s, 2H, NH2), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.83 (m, 2H), 4.28 (t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m, 2H), 3.83 (s, 3H), 1.26 (s, 6H), 1.24 (s, 6H)。
【0115】
実施例15:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブチルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸イソブチルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、Iを入手した(収率20%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz)δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.28 (t, 2H), 4.11 (d, 4H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 1.87(m, 2H), 0.97(m, 12H)。
【0116】
実施例16:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ネオペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I10)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸イソプロピルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、I10を入手した(収率18%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.28 (t, 2H), 4.13 (s, 4H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 0.94 (s, 18H)。
【0117】
実施例17:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ペンチル−3−オキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I11)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸(3−ペンチル)クロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、I11を入手した(収率15%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.28 (t, 2H), 4.11 (m,2H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 1.52-1.62 (m, 8H), 0.92 (t, 12H)。
【0118】
実施例18:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I12)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸エチルクロロメチルの代わりに炭酸シクロヘキシルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、I12を入手した(収率24%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.52-4.61 (m, 2H), 4.28 (t, 2H), 4.09 (t, 2H), 3.95 (m,2H), 3.83 (s, 3H), 2.55 (m, 2H), 1.80 (m, 4H), 1.15-1.50 (m, 12H)。
【0119】
実施例19:(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I13)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸イソプロピルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、I13を入手した(収率16%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.86 (s, 1H), 7.50 (d, 2H), 7.02 (d, 2H), 6.30 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.83 (m, 2H), 4.18 (dd, 1H), 4.01 (dd, 1H), 3.85-4.06 (m, 3H), 3.81 (s, 3H), 1.26 (s, 6H), 1.24 (s, 6H), 1.07 (d, 3H)。
【0120】
実施例20:2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)−ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I14)の製造
実施例12の方法を参照することによって、炭酸シクロヘキシルクロロメチルを使用してIVと反応させ、反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分離させて、I14を入手した(収率21%)。1H-NMR (DMSO-d6, 400MHz) δ: 7.83 (s, 1H), 7.50 (dd, 2H), 7.02 (dd, 2H), 6 (br s, 2H), 5.47-5.78 (m, 4H), 4.52-4.61 (m, 2H), 3.82-4.15 (m, 5H), 3.80 (s, 3H), 1.80 (m, 4H), 1.63 (m, 4H), 1.15-1.50 (m, 12H), 1.05 (d, 3H)。
【0121】
本発明、特に上記実施例の方法の教示と当該技術分野での知識、及び参考文献に照らして、当業者は、例示されない式Iの化合物をさらに合成することができて、特に、本文で言及されるような特定の化合物と特許請求項に収載されるような特定の化合物を合成することができる。
【0122】
実験実施例1:HBVに対するin vitro 活性の試験
Hep G 2.2.15細胞を使用する in vitro 試験法によって、所望の化合物のHBV DNAに対する阻害効果と細胞傷害性を測定した。
【0123】
試験法
定量的でリアルタイムの蛍光PCR法を使用することによって、所望の化合物のHBV DNAに対する阻害効果を測定した:10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM培養基においてHep G 2.2.15細胞を培養し、5% COインキュベータ中でインキュベートしてから、この細胞を96ウェルプレートに細胞数:3x10で接種し、継続的に培養し、細胞密度が約80%に達したとき、使用した培養基を捨てて、様々な薬物濃度の新しい培養基を加えて、ここで3つの並列ウェルを設定した;培養基は、3日ごとに交換した。薬物を使用して10日目に、100μlの上清を取って、定量的PCR法によってHBV DNA含量を測定して決定して、50%阻害濃度、即ちIC50値を計算した。
【0124】
MTT法によって所望の化合物の細胞傷害性を測定した:10%ウシ胎仔血清を含有するDMEM培養基においてHep G細胞を培養し、5% COインキュベータ中でインキュベートしてから、この細胞を96ウェルプレートに細胞数:5x10で接種し、3日間継続的に培養し、様々な薬物濃度の新しい培養基を加えて、ここで3つの並列ウェルを設定した;薬物を加えて3日目にMTTを7.5mg/mlで加えて、培養をさらに2時間維持して、上清を捨て、10% Tween X−100含有イソプロパノールを120μl/ウェルで加えてから、再び0.4μl/ウェルを加え、酵素結合計器(enzyme-linked meter)を使用して540nmでの吸収を測定し、50%阻害濃度、即ちCC50値を計算した。この結果を表1に示す:
表1:本発明のいくつかの例示化合物のIC50値とCC50
【0125】
【表1】

【0126】
本発明の他の実施例の化合物、本発明において上記に言及した特定の化合物、及び付帯の特許請求項に収載されるような特定の化合物も、表1に示すような本発明の実施例の化合物のIC50値とCC50値と実質的に同一の結果をもたらすことができる。
【0127】
実験実施例2:経口投与のバイオアベイラビリティの比較
SD雄性ラット(体重180〜220g,各群3匹のラット)のすべての動物を12時間絶食させた後で、薬物を投与した。試験する試料は、1%ナトリウムカルボキシメチルセルロースの10mg/ml懸濁溶液へ製剤化して、2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−(2−ホスホノメトキシエチル)−プリン(IV,602076)に対して20mg/kgに等しい用量で胃内投与した。また、602076は、10mg/ml(生理食塩水溶液)となるように製剤化し、10mg/kgの用量で注射によって尾静脈より投与した。投与前と投与後0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、3.0、6.0、12.0、24.0時間で0.5ml量の血液試料をラットの眼底静脈叢より採取して、参考文献(Clark Chan, et al. Clinical Pharmaco-kinetics of Alamifovir and Its Metabolites[アラミフォビルとその代謝産物の臨床薬物動態], Antivicrob Agents Chemother, 2005, 49(5): 1813-1822)の方法を使用して、異なる時点で採取した血液試料中の602076の濃度を定量した。
【0128】
血中薬物濃度−時間のデータをコンピュータへ入力し、非空洞モデル(non-ventricle)法を使用することによって薬物動態の諸変数を計算し、台形法によってAUC0−\値を計算して、試験試料の経口投与と602076の静脈内投与へ別々に処した試験ラットで決定されるような、602076の平均的な血中薬物濃度−時間曲線の曲線下面積(AUC0−∞)を使用することによって、様々なプロドラッグ化合物のラットへの経口投与後の活性代謝産物:602076の絶対バイオアベイラビリティ(F)を計算した。
【0129】
F=AUC0−∞(経口投与)/AUC0−∞(静脈内注射)x100%x2
表2:本発明のいくつかの例示化合物の、ラットへの経口投与のバイオアベイラビリティ(602076で表す)の比較
【0130】
【表2】

【0131】
本発明の他の実施例の化合物、本発明において上記に言及した特定の化合物、及び付帯の特許請求項に収載されるような特定の化合物も、表2に示すような本発明の実施例の化合物のバイオアベイラビリティ値と実質的に同一の結果をもたらすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
は、H又はメチルより選択され;
それぞれのRは、独立して、−R又は−ORより選択され;
それぞれのRは、独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される]
の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項2】
2つのRが同じである;又は2つのRが異なる、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項3】
以下:
i)Rが−Rである;
ii)Rが−ORである;
iii)一方のRが−Rであり、他方のRが−ORである;
のいずれか1つ以上を有する、請求項1又は2に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項4】
それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される;好ましくは、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、C−Cアルキル又はC−Cシクロアルキルより選択される、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項5】
それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又は−CH(CHCH、等より選択される;好ましくは、それぞれのRが、それぞれの出現につき独立して、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又は−CH(CHCH、等より選択される、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項6】
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(アセトキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(エチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(アセトキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ネオペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ペンチル−3−オキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン;
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;及び
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン;
からなる群より選択される、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項7】
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピオニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブタノイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルホルミルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ピバロイルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(エチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(プロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソブチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ネオペンチルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I10);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(ペンチル−3−オキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I11);
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−エチル}−プリン(I12);
(R)−2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(イソプロピルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I13);及び
2−アミノ−6−(4−メトキシフェニルチオ)−9−{2−[ビス(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメトキシ)ホスホノメトキシ]−プロピル}−プリン(I14);
からなる群より選択される、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体、又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物。
【請求項8】
請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)式:
【化2】

の化合物を式:
【化3】

の化合物又は式:
【化4】

の化合物と、好適な溶媒(例、DMF)において、好適な試薬(例、DBU(即ち、二環式アミジン)、特に、Rが水素であるとき)又は炭酸カリウム(特に、Rがメチルであるとき)の存在下に、上昇温度(例、60〜140℃、例えば80〜120℃、又は例えば80〜100℃)で反応させて、以下の式II:
【化5】

の化合物を入手する工程;
ii)式IIの化合物を式:
【化6】

の化合物と、好適な溶媒(例、DMF)において、有機塩基(例、トリエチルアミン)の存在下に、上昇温度(例、50〜120℃、例えば60〜100℃)で反応させて、以下の式III:
【化7】

の化合物を入手する工程;
iii)式IIIの化合物をアルキルハロシラン(例、トリメチルブロモシラン)と10〜40℃の温度(例、室温)で反応させて、以下の式IV:
【化8】

の遊離酸化合物を入手する工程;
iv)式IVの化合物をハロゲン化アルカノイルオキシメチル又はハロゲン化アルキルオキシカルボニルオキシメチル(例、
【化9】

のような塩化物)と10〜40℃の温度(例、室温)で反応させて、式I:
【化10】

の化合物を入手する工程;及び、任意選択的に、
v)入手した式Iの化合物を分離、精製、又は医薬的に許容される塩、水和物、又は溶媒和物の製剤化の工程へ処す工程;
を含む、前記方法[上記の諸式中、R及びRは、請求項1に引用した定義を有する]。
【請求項9】
請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物の治療及び/又は予防有効量を含み、1以上の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでいてもよい医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物、又は請求項9の医薬組成物の、ウイルスによって引き起こされる感染症に関連した疾患(好ましくは、該ウイルスは、B型肝炎ウイルスのような肝炎ウイルスであり;好ましくは、ウイルスによって引き起こされる感染症に関連した疾患は、B型肝炎のような肝炎である)の治療及び/又は予防用医薬品の製造における使用。
【請求項11】
ウイルス感染症に関連した疾患の治療及び/又は予防を必要とする哺乳動物におけるその治療及び/又は予防のための方法であって、請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物、又は請求項9に記載の医薬組成物の治療及び/又は予防有効量を、それを必要とする哺乳動物へ投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の非環式ヌクレオシドホスホネート誘導体又はその医薬的に許容される塩、異性体、水和物、又は溶媒和物である、ウイルス感染症に関連した疾患の治療及び/又は予防のための化合物。

【公表番号】特表2013−513552(P2013−513552A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542339(P2012−542339)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000902
【国際公開番号】WO2011/069322
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(504101061)インスティチュート オブ ファーマコロジー アンド トクシコロジー アカデミー オブ ミリタリー メディカル サイエンス、 ピー.エル.エー.チャイナ (3)
【Fターム(参考)】