説明

非破壊検査装置及び非破壊検査方法

【課題】部材の応力集中部から亀裂を検出しなくてもその応力集中部の応力拡大係数を更に高い精度で、更に簡便に測定でき、その応力集中部に亀裂が実際には生じていなくてもその応力集中部の疲労の程度を評価できる非破壊検査方法を提供する。
【解決手段】まず、試料の応力集中部で表面の磁束密度分布を測定する。次に、その応力集中部から亀裂の進展が予想される方向に沿って磁束密度分布が下に凸の曲線形状を示すことを検出する。その磁束密度分布がその曲線形状を示すときはその応力集中部からその曲線形状の頂点までの距離を求める。その距離とその応力集中部の応力拡大係数との間の線形関係に基づき、その距離からその応力拡大係数を決定する。上記の磁束密度分布が上記の曲線形状を示していないときは上記の応力集中部がまだ疲労を生じていないと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部材の非破壊検査に関し、特に、破壊力学に基づく部材の強度評価への非破壊検査の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の強度はその部材内の応力分布に基づいて評価される。ここで、部材が亀裂や欠陥を含む場合、その亀裂や欠陥の近傍では応力分布が特異的である。亀裂や欠陥以外にも、例えば部材の角や部材間の接合部等、応力が極めて集中しやすい部分、すなわち応力集中部では応力分布が実質的に特異的である。そのような特異的な応力分布、すなわち応力特異場は、応力拡大係数と呼ばれるパラメータで特徴づけられることが知られている。従って、亀裂や欠陥、及び応力集中部近傍の強度評価には応力拡大係数が一般に利用される。例えば、ある部材の欠陥の応力拡大係数がその部材の破壊靭性値以上であれば、その部材にはその欠陥を起点とする脆性破壊が生じると判定できる。その他に、繰り返し荷重に起因する疲労亀裂の進展速度は、その繰り返し荷重に伴う応力拡大係数の変動の幅、すなわち応力拡大係数幅(応力拡大係数範囲とも言う。)とパリス(Paris)則と呼ばれる関係を満たす。その関係を利用することで、応力拡大係数幅から亀裂の進展段階を評価でき、更に、その亀裂が部材の延性又は脆性破断に至るまでの寿命を予測できる。
【0003】
応力拡大係数を実際の部材から非破壊検査で求める従来の方法としては、例えば特許文献1に記載された方法が知られている。この方法では、金属の亀裂の先端近傍での自発磁化がその亀裂の応力拡大係数幅と線形関係にあることを利用する。具体的には、ホール素子顕微鏡を用いて亀裂の先端近傍で自発磁化を測定し、得られた自発磁化から上記の線形関係に基づいてその亀裂の応力拡大係数幅を算定する。その他に、部材を透過させたX線の半価幅分布から応力拡大係数を求める方法も知られている。
【特許文献1】特開2007−071657号公報
【特許文献2】特開2002−277442号公報
【特許文献3】特開2006−242701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来の方法では、応力拡大係数を十分に高い精度で求めるには亀裂の先端近傍での自発磁化を十分に高い精度で測定しなければならない。しかし、自発磁化は一般に、環境温度、外部磁場、又は強磁性の不純物から影響を受けやすいので、自発磁化を高精度に測定することは容易ではない。更に、上記の方法は、常磁性の金属が亀裂の近傍に生じた塑性域では強磁性に変化することを利用して自発磁化の測定精度を十分に高く維持している。従って、部材全体が強磁性を示す場合、自発磁化の測定精度を十分に高く維持することは困難である。上記の方法はまた、予め亀裂を検出するステップが必要であり、亀裂が生じていない部材には適用できない。
【0005】
X線の半価幅分布から応力拡大係数を求める方法では、応力拡大係数を十分に高い精度で求め得るほどX線の分解能を十分に向上させるのが容易ではない。更に、測定時間の更なる短縮が困難である。
【0006】
本発明の目的は、部材の応力集中部から亀裂を検出しなくても、その応力集中部の応力拡大係数を更に高い精度で、かつ更に簡便に測定でき、その応力集中部に亀裂が実際には生じていなくても、その応力集中部の疲労の程度を評価できる非破壊検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による非破壊検査方法は従来の方法とは異なり、本願の発明者によって発見された次の事実を利用する。
少なくとも応力が集中する領域では強磁性を示す材質から試料が形成されている場合、その試料の応力集中部及びその近傍では、疲労があまり進んでいない間、表面の磁束密度分布が不規則な形状を示す。ここで、応力集中部は、応力が特に集中して応力場が特異的になる部分であり、好ましくは部材の形状や組成等、部材の構造で決まる。上記の不規則な形状は試料ごとに異なるが、応力集中部の疲労がある程度進むまではほとんど変化しない。応力集中部の疲労がある程度に達すると、応力集中部及びその近傍では表面の磁束密度分布の形状がそれ以前の不規則な形状から急激に変化する。この急激な変化は応力集中部に亀裂が生じる時点より早い。応力集中部に亀裂が生じれば、その応力集中部からその亀裂の進展方向に沿って表面の磁束密度分布が下に凸の、又は上に凸の曲線形状を示す。この傾向は試料には依らない。尚、下に凸の曲線形状は、N極を上向きにして磁束密度分布をプロットしたときに現れ、上に凸の曲線形状はその逆である。応力集中部からその曲線形状の頂点、すなわち傾きが0に等しい点までの距離は亀裂の長さより大きい。その距離は応力集中部の応力拡大係数で決まり、特にその距離は応力集中部の応力拡大係数幅に比例する。
【0008】
本発明の一つの観点による非破壊検査方法は、好ましくは以下のステップを順に含む。まず、試料の応力集中部を含む所定の領域でその試料の表面の磁束密度分布を測定する。更に、所定の領域は、応力集中部に亀裂が生じたときにその亀裂の進展が予想される方向を含む。次に、測定された磁束密度分布が応力集中部から一定の方向に沿って下に凸の、又は上に凸の曲線形状を示すことを検出する。測定された磁束密度分布がそれらのいずれかの曲線形状を示すとき、応力集中部からその曲線形状の頂点までの距離を求める。その距離とその応力集中部の応力拡大係数幅との間の所定の関係、特に線形関係を利用することにより、その距離に基づいてその応力集中部の応力拡大係数を決定する。
【0009】
好ましくは、応力集中部から上記の曲線形状の頂点までの距離とその応力集中部の応力拡大係数との間の線形関係を示すデータを予めデータベースに保存する。その場合、応力集中部の応力拡大係数を決定するステップでその線形関係を示すデータをデータベースから読み出して利用する。
【0010】
本発明の別の観点による非破壊検査方法は、好ましくは以下のステップを順に含む。まず、試料の応力集中部がまだ疲労を生じていない初期状態にあるとき、その応力集中部の表面上の少なくとも一点での磁束密度、又はその応力集中部から試料の表面に沿って所定の方向に拡がっている領域での磁束密度分布を測定し、その測定結果を示すデータをデータベースに保存する。次に、同じ一点での磁束密度又は同じ領域での磁束密度分布を新たに測定する。更に、新たに測定されたその一点での磁束密度又はその領域での磁束密度分布とデータベースに保存された磁束密度又は磁束密度分布との間の変化量を所定の閾値と比較する。ここで、磁束密度分布の間の変化量としては好ましくは、上記の領域に含まれる各測定点における磁束密度の間の変化量の最大値を利用する。その変化量が閾値未満であれば応力集中部の疲労が所定の程度には達していないと判断し、その変化量が閾値を超えていれば応力集中部の疲労が所定の程度まで進んでいると判断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による非破壊検査方法は従来の方法とは異なり、応力集中部から亀裂を検出しなくても応力拡大係数を算定できる。従って、亀裂の検出操作が不要である。特に、表面の磁束密度分布が示す下又は上に凸の曲線形状の頂点は亀裂の先端より先に進展するので、亀裂が検出可能な長さまで進展していなくても上記の距離からその亀裂の先端部の応力拡大係数を決定できる。更に、試料表面の一点での磁束密度の絶対値とは異なり、磁束密度分布の全体の形状は外乱の影響を受けにくいので、上記の曲線形状の頂点を精度良く特定することは一般に、試料表面の一点で磁束密度の絶対値を精度良く測定することより容易である。試料全体が強磁性の金属から形成されていても、上記の距離は十分に高い精度で測定可能である。このように、本発明による上記の方法は従来の方法とは異なり、応力集中部から亀裂を実際には検出しなくても、その応力集中部の応力拡大係数を更に高い精度で更に簡便に測定できる。
【0012】
本発明による非破壊検査方法は更に、応力集中部に亀裂が生じていない期間中、応力集中部及びその近傍での表面の磁束密度分布の急激な変化を検出する。それにより、従来の方法とは異なり、その応力集中部に亀裂が実際に生じる前に、その応力集中部の疲労を検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の実施形態による非破壊検査装置のブロック図を示す。この検査装置は好ましくは磁束密度測定部1と疲労評価部2とを含む。図1に示されているように、磁束密度測定部1は好ましくは、プローブ11、ガウスメータ12、ステージ13A、13B、位置センサ14A、14B、及び位置制御部15を含む。疲労評価部2は好ましくは応力拡大係数算定部21とデータベース22とを含む。
【0014】
プローブ11は好ましくは細長い棒状であり、その先端に磁気センサ11Aを含む。磁気センサ11Aは好ましくはホール素子である。その他に磁気抵抗素子であっても良い。ガウスメータ12は磁気センサ11Aを駆動し、それに応じてその磁気センサ11Aから出力される信号を受け取る。ガウスメータ12は更にその信号から、磁気センサ11Aを所定の方向に貫く磁束密度を割り出す。例えば磁気センサ11Aがホール素子である場合、ガウスメータ12はホール素子に所定量の電流を与え、それに応じてホール素子に生じるホール電圧から、ホール素子を貫く磁束密度を割り出す。ホール素子は好ましくはGaAs素子であり、その感磁面積が好ましくは10μm×10μmである。更に、その場合でのガウスメータ12の分解能は好ましくは0.01mTである。
【0015】
ステージは好ましくはXYステージ13AとZステージ13Bとを含む。XYステージ13Aは好ましくは上面が水平な台であり、水平面内で自動的に変位可能である。XYステージ13Aの上面には検査対象の試料4が固定される。Zステージ13Bは好ましくはプローブ11の末端を固定する台であり、鉛直方向に延びている支柱13Cによって支持されている。好ましくは、磁気センサ11Aの出力信号のレベルがその磁気センサ11Aを鉛直方向に貫く磁束の強さに対応するように、Zステージ13Bはプローブ11を支持している。Zステージ13Bはその支柱13Cに沿って自動的に摺動可能である。XYステージ13Aの変位によってXYステージ13Aの上面に対するプローブ11の先端の位置が変化し、Zステージ13Bの変位によってXYステージ13Aの上面からプローブ11の先端までの距離が変化する。
【0016】
位置センサは好ましくは水平レーザ変位計14Aと鉛直レーザ変位計14Bとを含む。水平レーザ変位計14AはXYステージ13Aの側面にレーザ光LAを照射し、その反射光からその側面までの距離を測定する。鉛直レーザ変位計14BはXYステージ13Aの上面に向かって好ましくは複数のレーザ光LBを照射し、試料4及びプローブ11の先端の各上面によって反射された光から各上面までの距離を測定する。
【0017】
位置制御部15は好ましくは、パソコン3が所定のプログラムを実行することによって実現される機能部である。位置制御部15は好ましくは、水平レーザ変位計14Aによって測定された距離とXYステージ13Aの変位の履歴とに基づいてXYステージ13Aの水平面内での位置を求め、更にその位置を監視しながらXYステージ13Aを変位させる。一方、位置制御部15は好ましくは、鉛直レーザ変位計14Bによって測定された距離とプローブ11の先端内での磁気センサ11Aの位置とに基づいて試料4の上面からの磁気センサ11Aの高さを求め、更にその高さを監視しながらZステージ13Bを変位させる。
【0018】
疲労評価部2は好ましくは、パソコン3が所定のプログラムを実行することによって実現される機能部である。特にデータベース22としては好ましくは、パソコン3に内蔵された半導体メモリやHDD等の記憶手段が利用される。その他に、パソコン3に外付けされ、又はネットワークを通して接続された外部記憶手段がデータベース22として利用されても良い。疲労評価部2、好ましくは応力拡大係数算定部21は磁束密度測定部1に、試料4の表面から鉛直方向に放出されている磁束密度の分布を測定させる。すなわち、位置制御部15に各ステージ13A、13Bを所定のパターンで変位させながら、ガウスメータ12に磁束密度の測定を所定の間隔で、好ましくは連続的に繰り返させる。それにより、特に試料4の応力集中部の周辺で磁束密度分布を測定させる。
【0019】
ここで、試料4は、少なくとも応力が集中する領域が強磁性を示す材質、好ましくは鋼から成る。試料4は特に、高炭素クロム軸受鋼SUJ2等、全体が強磁性を示す材質から形成されていても良い。試料4の応力集中部は、試料4の構造によって応力が集中して応力場が特異的になる部分である。試料4が例えば図2に示されているような長方形の平板であり、その長辺の中央付近にスリット4Aを含むとき、そのスリット4Aの先端部4B及びその近傍が応力集中部である。その他に、部材の角や異なる部材間の接合部等が応力集中部になり得る。
【0020】
応力拡大係数算定部21は好ましくは位置制御部15にXYステージ13Aを一定の方向に並進させることにより、磁束密度測定部1に試料4の応力集中部からその並進方向とは逆向きに磁束密度分布を測定させる。ここで、その逆方向は好ましくは、応力集中部に生じた亀裂が進展する方向である。試料4が例えば図2に示されているスリット4Aを含むとき、応力集中部であるそのスリット4Aの先端部4Bに亀裂が生じれば、その亀裂は一般に、図3に示されているその試料4の長辺に対して垂直な方向に進展する。従って、応力拡大係数算定部21は磁束密度測定部1に、そのスリット4Aの先端部4Bからその方向に所定の距離まで直線的に拡がっている領域4Cについて磁束密度分布を測定させる。
【0021】
応力拡大係数算定部21は好ましくは、XYステージ13Aの並進期間中、磁束密度測定部1に磁束密度を連続的に測定させる。そのとき、ガウスメータ12は一連の測定値をアナログ信号として応力拡大係数算定部21に連続的に出力する。応力拡大係数算定部21はそのアナログ信号を、XYステージ13Aの並進開始時点からの経過時間と共に記憶する。その経過時間とXYステージ13Aの移動速度とから、その経過時間にXYステージ13Aが移動した距離を算定することにより、応力拡大係数算定部21は上記のアナログ信号から磁束密度分布を求める。
【0022】
応力拡大係数算定部21は好ましくは、上記のようにして得られた磁束密度分布から、空間的な変動の周波数が所定の閾値以上である成分をノイズとして除去する。特に磁気センサ11Aとしてホール素子が利用される場合、ガウスメータ12はそのホール素子に与える電流の極性を周期的に反転させる。そのとき、ガウスメータ12から出力される上記のアナログ信号には、ホール素子に与える電流の極性反転と同じ周波数のノイズ、すなわちスイッチングノイズが生じる。それ故、応力拡大係数算定部21は好ましくはローパスフィルタ又はデジタルマルチメータを含み、それらを用いて上記のアナログ信号からスイッチングノイズの周波数以上の成分を除去する。
【0023】
応力拡大係数算定部21は更に、ノイズを除去した後の磁束密度分布をプロットしたときにその分布が下又は上に凸の曲線形状を示すことを検出する。ここで、応力集中部での疲労がある程度より進んでいれば、上記の磁束密度分布は一般に、N極を上向きにしてプロットしたときには下に凸の曲線形状を示し、S極を上向きにしてプロットしたときは上に凸の曲線形状を示す。図4に、図3に示されている直線的な領域4Cに沿った磁束密度分布の一例を示す。図4の縦軸はN極を上向きにして磁束密度の大きさを示し、横軸はスリット4Aの基端部Oから磁束密度の測定点までの距離を示す。図4では、実線、破線、一点鎖線の順にスリット4Aの先端部4Bの周辺で疲労が進んでいる。先端部4Bの周辺があまり疲労を生じていない初期状態では、上記の磁束密度分布は図4の実線で示されているように不規則である。その不規則な形状は試料4ごとに異なる。しかし、先端部4Bの周辺で疲労がある程度に達すれば、上記の磁束密度分布は図4の破線及び一点鎖線で示されているような下に凸の曲線形状に変化する。更に、疲労が進み、亀裂が進展するにつれて、図4の破線、一点鎖線の順に曲線形状は変形し、特にその頂点が応力集中部から離れていく。この傾向は試料4には依らない。好ましくは、試料4の同じ応力集中部が疲労をまだ生じていない初期状態にあるときに測定された磁束密度分布のデータがデータベース22に予め保存されている。応力拡大係数算定部21はそのデータを利用し、新たに測定された磁束密度分布の曲線形状が初期状態での不規則な形状から下又は上に凸の曲線形状へと有意に変化したことを判別する。
【0024】
尚、応力拡大係数算定部21は上記の他に、磁束密度測定部1に応力集中部周辺の広い範囲で磁束密度分布を測定させ、応力集中部から一定方向に向かって下又は上に凸の曲線形状を示す部分を、得られた磁束密度分布の中から探しても良い。
【0025】
応力集中部から亀裂の進展方向に沿って磁束密度分布が下又は上に凸の曲線形状を示すとき、応力拡大係数算定部21は試料4の応力集中部からその曲線形状の頂点までの距離を算定し、その距離に基づいてその応力集中部の応力拡大係数幅を決定する。ここで、その距離は一般にその応力集中部の応力拡大係数幅と線形関係にある。図5にその線形関係の一例を示す。図5は特に図3に示されているスリット4Aの先端部4Bについて得られたものであり、縦軸はスリット4Aの基端部Oから上記の曲線形状の頂点までの距離を示し、横軸はスリット4Aの先端部4Bの応力拡大係数幅を示す。データベース22には好ましくは、図5に示されているような線形関係を示すデータが予め保存されている。そのデータは好ましくは、上記の距離とそれに対応する応力拡大係数幅との組み合わせのリストを表す。その他に、上記の距離とそれに対応する応力拡大係数幅とが満たすべき一次式の傾きと切片とを表していても良い。応力拡大係数算定部21はデータベース22に保存されているデータを利用し、上記の距離に対応する応力集中部の応力拡大係数幅を決定する。疲労評価部2は好ましくは、上記のように決定された応力拡大係数幅に基づき、応力集中部に生じた亀裂の進展速度をパリス則から評価し、更に好ましくは試料4の寿命を予測する。
【0026】
好ましくは、応力拡大係数算定部21は次の事実を利用し、新たに測定された磁束密度分布が初期状態での不規則な曲線形状から下又は上に凸の曲線形状へと変化したか否かを判別する。
【0027】
応力集中部の疲労がある程度に達すると、亀裂が生じる前に応力集中部及びその近傍では、応力集中に伴う表面の磁束密度分布の形状が初期状態での不規則な形状から急激に変化する。例えば試料4が図3に示されているスリット4Aを含む場合、その先端部4Bから亀裂の進展方向に沿って直線的に拡がっている領域4Cでの磁束密度分布に見られるその急激な変化を図6に示す。図6の(a)と(b)とではスリット4Aの先端部4Bの初期状態での応力拡大係数幅が異なる。疲労がある程度に達するまでは、直線的な領域4Cでの磁束密度分布は、図6に実線で示されている初期状態での不規則な曲線形状を保つ。特にその曲線の各点では磁束密度が初期状態での値から、大きくてもガウスメータ12では識別できない程度にしか変わらない。一方、疲労がある程度に達すると、直線的な領域4Cでの磁束密度分布は、図6に実線で示されている初期状態の曲線形状から破線で示されている曲線形状へと急激に変化する。特に、スリット4Aの基端部Oからの距離が同じ点では一般に、磁束密度がガウスメータ12で十分識別可能な程度に変化する。この段階ではスリット4Aの先端部4Bには亀裂は生じていない。また、図6に破線で示されている曲線形状を下に凸の曲線形状と見なしたとき、その頂点とスリット4Aの基端部Oとの間の距離はそのときのスリット4Aの先端部4Bの応力拡大係数幅と、図5に示されている線形関係を満たす。
【0028】
好ましくは、応力拡大係数算定部21はまず、新たに測定された磁束密度分布から外乱に起因するバイアス成分を除去する。ここで、バイアス成分は一般に応力集中部以外でも共通であるので、応力拡大係数算定部21は好ましくは、応力集中部から外れた点でも磁束密度を測定し、その測定値と初期状態での値との間の差からバイアス成分を割り出す。尚、その初期状態での値は好ましくはデータベース22に予め保存されている。応力拡大係数算定部21は次に、バイアス成分が除去された磁束密度分布の曲線形状をデータベース22に保存された初期状態の曲線形状と比較し、応力集中部に位置する少なくとも一つの測定点、好ましくは応力場の特異点での磁束密度の変化量、又は、応力集中部を含む同じ領域での磁束密度分布の変化量を求める。ここで、磁束密度分布の変化量としては好ましくは、上記の領域に含まれる各測定点における磁束密度の変化量の最大値を利用する。応力拡大係数算定部21は更に、求められた変化量を所定の閾値、好ましくはガウスメータ12の分解能と比較する。その変化量がその閾値未満であれば、応力拡大係数算定部21は応力集中部の疲労が、磁束密度分布の曲線形状から応力拡大係数を算定可能な程度にはまだ達していないと判断する。その変化量がその閾値を超えていれば、応力拡大係数算定部21は、応力集中部の疲労が上記の程度まで進んでいるので、測定された磁束密度分布は下に凸の曲線形状であると判断する。
【0029】
以上の構成を利用し、上記の非破壊検査装置は試料4の応力集中部の疲労を好ましくは以下の手順で検査する。図7にその検査方法のフローチャートを示す。
【0030】
ステップS1:XYステージ13Aの上面の所定位置に試料4を固定し、プローブ11の先端を試料4の応力集中部の上方に配置する。好ましくは、磁気センサ11Aをその応力集中部の真上に配置する。更に、位置制御部15によってZステージ13Bを変位させ、磁気センサ11Aをその応力集中部から所定の高さ、好ましくは1mm程度まで接近させる。例えば試料4が図2に示されている長方形の平板であり、図3に示されているスリット4Aを含む場合、好ましくは磁気センサ11Aをそのスリット4Aの先端部4Bの真上に配置する。
【0031】
以下、説明の便宜上、スリット4Aは試料4の長辺に対して垂直であるとしてXYステージ13Aにxyz直交座標系を固定する。その座標系の原点Oはスリット4Aの基端とし、x軸は試料4の長辺方向とし、y軸はスリット4Aの長手方向に沿って基端Oから先端部4Bに向かう方向とし、z軸は鉛直方向、すなわちXYステージ13Aの上面に対して垂直な方向とする。
【0032】
ステップS2:応力拡大係数算定部21は、位置制御部15にXYステージ13Aを一定の方向に一定の速さで並進させる。すなわち、XY平面において磁気センサ11Aを応力集中部から上記の方向とは逆向きに一定の速さで移動させる。例えば図2に示されている試料4については、磁気センサ11Aをスリット4Aの先端部4Bから図3に示されている直線的な領域4Cの長手方向、すなわちy軸方向に移動させる。XYステージ13Aを並進させている間、応力拡大係数算定部21は磁束密度測定部1に磁束密度を連続的に測定させる。そのとき、ガウスメータ12は一連の測定値をアナログ信号として応力拡大係数算定部21に連続的に出力する。応力拡大係数算定部21はそのアナログ信号を、XYステージ13Aが移動を開始した時点からの経過時間と共に記憶する。応力拡大係数算定部21は好ましくは、そのアナログ信号を記憶する前にローパスフィルタ又はデジタルマルチメータに通し、所定の閾値以上の周波数成分をノイズとしてそのアナログ信号から除去する。
【0033】
ステップS3:XYステージ13Aを所定の距離又は時間だけ並進させたとき、すなわち、XY平面内で磁気センサ11Aを応力集中部から所定の距離まで移動させたとき、応力拡大係数算定部21は、位置制御部15にはXYステージ13Aを停止させ、磁束密度測定部1には測定を終了させる。そのタイミングは図3に示されている例では、磁気センサ11Aがスリット4Aの先端部4Bから直線的な領域4Cの全体を移動し終えたときに相当する。
【0034】
ステップS4:応力拡大係数算定部21は、応力集中部から外れた所定の点で磁束密度を測定し、得られた測定値と初期状態の同じ点での磁束密度との間の差に基づき、ステップS2〜S3で記憶された磁束密度分布からバイアス成分を除去する。応力拡大係数算定部21は更に、バイアス成分が除去されたアナログ信号の波形をデータベース22に保存された初期状態での波形と比較し、同じ一点での変化量、又は同じ領域内でのレベルの変化量の最大値を求める。
ステップS5:応力拡大係数算定部21は、ステップS4で求められた変化量を所定の閾値、好ましくはガウスメータ12の分解能、更に好ましくは0.01mTと比較する。その変化量がその閾値未満であれば処理をステップS6に進め、それ以外であれば処理をステップS7に分岐する。
ステップS6:応力拡大係数算定部21は、応力集中部の疲労が応力拡大係数を算定可能な程度には達していないと判断する。
【0035】
ステップS7:応力拡大係数算定部21は、応力集中部の疲労が応力拡大係数を算定可能な程度まで達していると判断する。応力拡大係数算定部21は更に、ステップS4でバイアス成分が除去されたアナログ信号の波形を下に凸の曲線形状と見なし、XYステージ13Aの移動開始時点から、記憶されたアナログ信号のレベルが下に凸の波形の頂点に達した時点までの経過時間を求める。更に、その経過時間とXYステージ13Aの移動速度とから、その経過時間に磁気センサ11Aが水平方向に移動した距離を求める。その距離は、図3に示されている例では、スリット4Aの先端部4Bからy軸方向に沿った磁束密度分布が示す下に凸の曲線形状の頂点とその先端部4Bとの間の水平距離に等しい。
【0036】
ステップS8:応力拡大係数算定部21は、ステップS7で求められた距離に対応する応力拡大係数幅をデータベース22から検索し、又はデータベース22に記憶された一次式に従って算定する。こうして得られた応力拡大係数幅を試料4の応力集中部の応力拡大係数幅として決定する。疲労評価部2は好ましくは、得られた応力拡大係数幅に基づき、試料4の応力集中部に生じた亀裂の進展速度を評価し、更に試料4の寿命を予測する。
【0037】
上記の実施形態から明らかなように、本発明では図4、図5、図6に示されている次の三つの事実が重要である。(1)試料の応力集中部の周辺で疲労が進めば、試料の種類や初期状態に依らず、その応力集中部から亀裂の進展方向に向かって表面の磁束密度分布が下に凸の曲線形状を示すこと。(2)応力集中部からその曲線形状の頂点までの距離はその応力集中部の応力拡大係数幅と線形関係にあること。(3)試料の応力集中部で疲労が初期状態からある程度進むまでは、その応力集中部から亀裂の進展方向に沿った表面の磁束密度分布は初期状態での不規則な形状からほとんど変化せず、疲労がある程度に達すると、その磁束密度分布は初期状態での形状から下に凸の曲線形状へと急激に変化すること。これら三つの事実は以下のような実験で検証されている。
【0038】
まず、図2に示されている試料4を試験片として高炭素クロム軸受鋼SUJ2で作成した。そのSUJ2は強磁性を示し、ビッカース硬さは156±5kgf/mm2である。この試験片4は長方形の平板であり、幅Wは25mmであり、長さLは125mmであり、厚さは8mmである。更に、この試験片4の一方の長辺の中央に予亀裂としてスリット4Aを、ワイヤー加工で作成した。スリット4Aの長さaは3.00mmであり、その先端部4Bの内面の曲率半径rが90μmである。
【0039】
次に、試験片4に対して4点曲げ疲労試験を行った。すなわち、図2に示されている試験片4の各長辺の中心に対して対称な二点4D、4E、4F、4Gを支点とし、各支点に対して試験片4の短辺方向に繰り返し荷重Pを加えた。ここで、一方の長辺では二つの支点4D、4Eの間隔dは50mmであり、他方の長辺では二つの支点4F、4Gの間隔Sは100mmである。繰り返し荷重Pは、応力比0.1で、かつ周波数20Hzで正弦波状に周期的に変動させた。但し、荷重Pの最大値は一定である。
【0040】
荷重Pの繰り返し数Nが所定数に達するごとにスリット4Aの先端部4Bを顕微鏡で観察し、そこに生じた亀裂の長さを測定した。図8に、そのときに観察されたスリット4Aの写真を示す。(a)は繰り返し数Nが4.47×105であるときのスリット4Aを示し、(b)は繰り返し数Nが7.08×105であるときのスリット4Aを示す。図8に示されているように、繰り返し数Nの増大に伴い、亀裂4Hがスリット4Aの先端部4Bからスリット4Aの延長方向に進展した。
【0041】
更に、試験片4を磁束密度測定部1のXYステージ13Aに設置し、図3に示されている先端部4Bからy軸方向に直線的に拡がっている領域4Cにおいて表面の磁束密度分布を上記と同様に測定した。ここで、直線的な領域4Cの先端はスリット4Aの基端0からy軸方向に12.5mm離れた点とした。また、測定された磁束密度分布に含まれるバイアス成分は、直線的な領域4Cから十分に離れた点(x,y)=(−9.0mm、12.5mm)で測定された磁束密度と初期状態での値との間の差から算定した。直線的な領域4Cで測定された磁束密度分布からバイアス成分と空間的変動の高周波成分とを除去したものが図4である。図4では、実線、破線、一点鎖線のそれぞれの示す磁束密度分布が得られたときの繰り返し数Nに加え、スリット4Aと亀裂4Hとの総延長aが示されている。
【0042】
試験片4についてはスリット4Aの先端部4Bの応力拡大係数KIを、試験片4の幅W、厚さt、スリット4Aとその先の亀裂4Hとの総延長a、各長辺上の支点間隔d、S、及び荷重Pの関数として次式(1)で表すことができる。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、係数FIPは実験方法で決まる定数であり、今回の実験では約1.02である。更に式(1)は、試験片4の幅Wに対する支点間隔dの比d/Wが十分に大きいとした場合の近似式である。
【0045】
図4に示されている磁束密度分布は、4点曲げ疲労試験の繰り返し数Nが0であるとき、すなわち、初期状態におけるスリット4Aの先端部4Bの応力拡大係数幅ΔKN=0を17.9MPa√mとした場合に測定されたものである。その他に、初期状態での応力拡大係数幅ΔKN=0を16.0MPa√mとした場合にも図4と同様な磁束密度分布が得られた。いずれの場合も、亀裂4Hがスリット4Aの先端部4Bから0.5mm進展するまでには磁束密度分布が下に凸の曲線形状を示すようになった。
【0046】
上記の磁束密度分布は下に凸の曲線形状を示すようになった後、その曲線形状の頂点とスリット4Aの先端部4Bとの間の距離Ybが、図4の破線及び一点鎖線で示されているように荷重Pの繰り返し数Nと共に増大した。図9に、荷重Pの繰り返し数Nと共に増大する上記の距離Yb及びスリット4Aと亀裂4Hとの総延長aを示す。図9には更に、スリット4Aの先端部4Bの周辺に生じる塑性域のy軸方向での大きさRも示している。ここで、その塑性域のy軸方向での大きさRはスリット4Aの基端Oからy軸方向に最も離れた塑性域の境界までの距離で定義され、解析的に求められる。図9からは、上記の距離Ybがスリット4Aと亀裂4Hとの総延長a及び塑性域のy軸方向での大きさRのいずれよりも常に大きいことが分かった。
【0047】
図9に示されているスリット4Aと亀裂4Hとの総延長aから式(1)を用いて応力拡大係数幅ΔKを求め、それらを図9に示されている距離Ybに対応づけてプロットする。こうして得られたグラフが図5である。図5に示されているように、初期状態での応力拡大係数幅ΔKN=0が異なっていても、距離Ybと応力拡大係数幅ΔKとの間には実質的に同じ線形関係が認められた。従って、本発明の上記の実施形態のように、距離Ybから応力拡大係数幅ΔKを決定できる。
【0048】
図6に実線で示されている磁束密度分布は、繰り返し数Nが0であるとき、すなわち、初期状態を維持しているときの直線的な領域4Cから測定されたものである。一方、破線で示されている磁束密度分布は、繰り返し数Nが1.58×104に達したときの直線的な領域4Cから測定されたものである。尚、図6の(a)では初期状態でのスリット4Aの先端部4Bの応力拡大係数幅ΔKN=0が16.0MPa√mであり、(b)では17.9MPa√mである。いずれの場合も、繰り返し数Nが1.58×104程度では亀裂4Hがまだ発生していないので、スリット4Aと亀裂4Hとの総延長aがスリット4Aの長さ3.00mmと等しい。繰り返し数Nが1.58×104程度に達するまでは、磁束密度分布は初期状態での曲線形状からガウスメータ12の分解能0.01mT以下しか変化しなかった。しかし、繰り返し数Nが1.58×104に達すると、磁束密度分布は初期状態の曲線形状から大きく変化した。以上のことから、上記の実施形態のように、測定された磁束密度分布の曲線形状と初期状態の曲線形状との間の変化量に応じ、応力集中部に亀裂が生じる前に、その応力集中部の疲労が応力拡大係数を算定可能な程度まで達していることを検知できる。
【0049】
上記の実施形態では、試料4の表面に対する磁気センサ11Aの位置を変えながら表面の磁束密度を測定する。その他に、試料の表面から所定の距離を隔てて、又は表面上に複数の磁気センサを所定の間隔で並べても良い。例えば図2に示されている試料4については、好ましくは図10に示されているように、スリット4Aの先端部4Bからy軸方向に所定の距離を隔ててプローブ41を設置する。プローブ41にはy軸方向に沿って複数の磁気センサ41Aが好ましくは等間隔で配置されている。各磁気センサ41Aは好ましくは、図1に示されている磁気センサ11Aと同様なホール素子である。ガウスメータ12は各磁気センサ41Aを個別に駆動し、それぞれから出力信号を個別に受け取る。ガウスメータ12は更に各出力信号から、各磁気センサ41Aを鉛直方向に貫く磁束密度を割り出す。応力拡大係数算定部21は、ガウスメータ12によって求められた複数の磁束密度から、y軸方向に沿った磁束密度分布が初期状態での曲線形状から所定の閾値を超えて変化していることを検出する。それにより、スリット4Aの先端部4Bでの疲労を、亀裂4Hが実際に生じる前に検知できる。応力拡大係数算定部21は更に、y軸方向に沿った磁束密度分布が初期状態での曲線形状から有意に変化して下に凸の曲線形状を示していることを検出する。応力拡大係数算定部21は続いて、その曲線形状の頂点とスリット4Aの先端部4Bとの間の距離から応力拡大係数幅を決定する。ここで、図9に示されているように、その曲線形状の頂点は、スリット4Aの先端部4Bからy軸方向に進展する亀裂4Hの先端より常に先行する。従って、図10に示されているプローブ41を利用した方法では、試料4の表面に貼られた歪みゲージを通して亀裂4Hの進展に伴う試料4の表面の歪みを検出する方法よりも早い段階で、亀裂4Hの進展を予知できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態による非破壊検査装置のブロック図
【図2】図1に示されている非破壊検査装置の測定対象である試料の一例を示す平面図
【図3】図2に示されている試料のスリット近傍の拡大平面図
【図4】図3に示されている直線的な領域4Cに沿った磁束密度分布の一例を示すグラフ
【図5】図4に示されている磁束密度分布が下に凸の曲線形状を示すとき、応力集中部からその曲線形状の頂点までの距離とその応力集中部の応力拡大係数幅との間の線形関係を示すグラフ
【図6】図3に示されているスリット4Aの先端部4Bに亀裂が生じる前における、直線的な領域4Cに沿った磁束密度分布を示すグラフ
【図7】図1に示されている非破壊検査装置による測定方法のフローチャート
【図8】図2に示されている試料に対して4点曲げ疲労試験を行ったときに撮影されたスリット4Aの近傍の顕微鏡写真
【図9】図3に示されているスリット4Aの先端部4Bから図4に示されている下に凸の曲線形状の頂点までの距離Yb、スリット4Aの先端部4Bに生じた塑性域のy軸方向での大きさR、及びスリット4Aと亀裂4Hとの総延長aを、4点曲げ疲労試験における荷重の繰り返し数に対してプロットしたグラフ
【図10】本発明の別の実施形態によるプローブの模式的平面図
【符号の説明】
【0051】
1 磁束密度測定部
11 プローブ
11A 磁気センサ
12 ガウスメータ
13A XYステージ
13B Zステージ
13C 支柱
14A 水平レーザ変位計
14B 鉛直レーザ変位計
15 位置制御部
2 疲労評価部
21 応力拡大係数算定部
22 データベース
3 パソコン
4 試料
LA、LB レーザ光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも応力が集中する領域では強磁性を示す材質から成る試料について、その表面の磁束密度を測定する磁束密度測定部、及び、
前記試料の応力集中部を含む所定の領域で表面の磁束密度分布を前記磁束密度測定部によって測定し、前記応力集中部から一定の方向に沿って前記磁束密度分布が下に凸の、又は上に凸の曲線形状を示すことを検出し、前記応力集中部から前記曲線形状の頂点までの距離に基づいて前記応力集中部の応力拡大係数を決定する応力拡大係数算定部、
を有する非破壊検査装置。
【請求項2】
前記非破壊検査装置は、前記距離と前記応力集中部の応力拡大係数との間の線形関係を示すデータを保持したデータベースを更に有し、
前記応力拡大係数算定部は前記データを利用して前記距離から前記応力集中部の応力拡大係数を決定する、
請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
少なくとも応力が集中する領域では強磁性を示す材質から成る試料について、その表面の磁束密度を測定する磁束密度測定部、及び、
前記試料の応力集中部がまだ疲労を生じていない初期状態にあるとき、前記磁束密度測定部によって測定された前記応力集中部の表面上の少なくとも一点での磁束密度、又は前記応力集中部から前記試料の表面に沿って所定の方向に拡がっている領域での磁束密度分布を示すデータを保持したデータベースを含み、前記磁束密度測定部によって新たに測定された前記一点での磁束密度又は前記領域での磁束密度分布と前記データベースに保持された磁束密度又は磁束密度分布との間の変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記閾値未満であれば前記応力集中部の疲労が所定の程度には達していないと判断し、前記変化量が前記閾値を超えていれば前記応力集中部の疲労が前記程度まで進んでいると判断する疲労評価部、
を有する非破壊検査装置。
【請求項4】
前記磁束密度測定部は、
磁気センサを含むプローブ、
前記試料と前記プローブとを変位可能に支持するステージ、
前記磁気センサを駆動し、前記磁気センサの出力信号を磁束密度の測定値に変換するガウスメータ、及び、
前記ステージを変位させて前記試料に対する前記磁気センサの位置を制御する位置制御部、
を含む、請求項1又は請求項3に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記磁束密度測定部は、
前記試料の表面上に、又は前記表面から所定の高さに配置され、前記応力集中部から前記表面に沿って所定の方向に所定の間隔で並んでいる複数の磁気センサ、及び、
前記複数の磁気センサを駆動し、前記複数の磁気センサの各出力信号を磁束密度の測定値に変換するガウスメータ、
を含む、請求項1又は請求項3に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
少なくとも応力が集中する領域では強磁性を示す材質から成る試料について、その応力集中部を含む所定の領域で表面の磁束密度分布を測定するステップ、
前記応力集中部から一定の方向に沿って前記磁束密度分布が下に凸の、又は上に凸の曲線形状を示すことを検出するステップ、
前記磁束密度分布が前記曲線形状を示すとき、前記応力集中部から前記曲線形状の頂点までの距離を求めるステップ、及び、
前記距離に基づいて前記応力集中部の応力拡大係数を決定するステップ、
を有する非破壊検査方法。
【請求項7】
前記距離と前記応力集中部の応力拡大係数との間の線形関係を示すデータを予めデータベースに保存し、前記応力集中部の応力拡大係数を決定するステップで前記データを前記データベースから読み出して利用する、請求項6に記載の非破壊検査方法。
【請求項8】
少なくとも応力が集中する領域では強磁性を示す材質から成る試料について、その応力集中部がまだ疲労を生じていない初期状態にあるとき、前記応力集中部の表面上の少なくとも一点での磁束密度、又は前記応力集中部から前記試料の表面に沿って所定の方向に拡がっている領域での磁束密度分布を測定し、その測定結果をデータベースに保存するステップ、
前記一点での磁束密度又は前記領域での磁束密度分布を新たに測定するステップ、及び、
新たに測定された前記一点での磁束密度又は前記領域での磁束密度分布と前記データベースに保存された磁束密度又は磁束密度分布との間の変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記閾値未満であれば前記応力集中部の疲労が所定の程度には達していないと判断し、前記変化量が前記閾値を超えていれば前記応力集中部の疲労が前記程度まで進んでいると判断するステップ、
を有する非破壊検査方法。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−222425(P2009−222425A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64661(P2008−64661)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月19日 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻発行の「平成19年度修士論文概要集」に発表
【出願人】(598070348)
【Fターム(参考)】