説明

非磁性・非着磁性ストレッチャー

【解決課題】本発明は、MRI等の磁気を発生する診断装置を有する施設内へも持ち込むことができる非磁性・非着磁性ストレッチャーを提供する。
【解決手段】上段のベッド部分46と下段の可動部分50がクロスバー48で連結された非磁性・非着磁性のフレームより構成されたストレッチャーに、非磁性・非着磁性のベアリングと、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性をよくした非磁性・非着磁性キャスター23と非磁性・非着磁性クランクハンドル32を着設した非磁性・非着磁性ストレッチャーとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
MRI等の診断装置を有する施設内で使用することができる非磁性・非着磁性ストレッチャー(非磁性かつ非着磁性ストレッチャー)に関する。より詳しくは、ストレッチャーの下部に着設するキャスターや高さを調節するハンドル等を非磁性体・非着磁性体として、非磁性体・非着磁性体のフレームで作製したストレッチャーに着設して、MRI等の診断装置を有する施設内に持ち込むことができる非磁性・非着磁性ストレッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
強力な磁気を発生するMRI(Magnetic Resonance Imaging)の診断装置等の近傍に磁性を有する器具を持ち込むと、MRI本体に向けてそれらの器具が移動し、患者に衝突する等の事故が発生している。近年、MRIの磁気出力の向上に伴い、MRIに関連する事故の発生を防止するために、非磁性・非着磁性のストレッチャー、非磁性・非着磁性の車椅子、非磁性・非着磁性の台車等の開発が望まれている。一般に使用されているストレッチャーは非磁性体・非着磁性体ではなく、MRI等の検査に際して、患者はストレッチャーに乗せたままで搬入、搬出することはできない。
【0003】
特許文献1の発明は、特許文献1の段落[0008]「本発明のストレッチャーは、キャスタが設けられた基台と、疾病者を乗せるマット部と、該基台と該マット部との間に設けられ、該基台に対して該マット部を昇降させるパンタグラフ式のリンク機構と、該基台又は該マット部に設けられ、該リンク機構を伸縮させる昇降機構とを備えたストレッチャーにおいて、前記昇降機構は、前記基台又は前記マット部に第1軸回りで回転可能に設けられた第1歯車と、該第1歯車の回転により前後に進退して前記リンク機構を上下に伸縮させるクランクと、該基台又は該マット部と該第1歯車との間に設けられ、該リンク機構を上方向に伸長させる該第1歯車の一方向の回転を許容し、該第1歯車の他方向の回転を制限する第1ラチェットと、該第1歯車より歯数が少なく、該第1歯車と噛合する第2歯車と、手動によって操作され、該第1歯車が前記一方向に回転するように該第2歯車を駆動する操作ハンドルとを有することを特徴とする。」と記載され、段落[0009]「本発明のストレッチャーにおいて、マット部を基台に対して上方に移動しようとする場合、操作ハンドルを手動によって操作して第2歯車を駆動し、第1歯車を第1軸回りで一方向に回転させる。この際、第2歯車は第1歯車より歯数が少ないため、第2歯車よりも第1歯車は減速され、操作ハンドルのトルクは小さくなっている。これにより、クランクが前後に進退してリンク機構が上方向に伸長する。また、第1ラチェットは、第1歯車の一方向の回転は許容するが、第1歯車の他方向の回転は制限するため、リンク機構は上方向に伸長のみすることとなる。こうして、このストレッチャーでは、マット部が基台に対して上方に移動することとなる。」と記載され、段落[0010]「そして、このストレッチャーは、非磁性体への変更が困難又は不可能な従来のボールねじやコイルバネを昇降装置の構成部品として採用しておらず、非磁性体への変更が容易な第1歯車、クランク、第1ラチェット及び第2歯車を昇降装置の構成部品として採用しているため、多くの構成部品が非磁性体とされ得る。」と記載されている。
【0004】
特許文献1のストレッチャーの基台は長尺と短尺の木材で長方形に組み付けられ、レール、軸受け部材はナイロン製で構成されており(段落[0021]参照)、強度や耐久性の面で問題があり、非磁性・非着磁性の材料を用いた頑強なストレッチャーの出現が望まれている。
【特許文献1】特開2008−259667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、病院内等で患者を搬送するために使用されるストレッチャーについて、MRI等の磁気を発生する診断装置を有する施設内へ持ち込むことができる非磁性・非着磁性ストレッチャー(非磁性かつ非着磁性ストレッチャー)を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の診断装置が進歩して強力な磁気を発生する診断装置が備えられるようになり、それらの診断装置が設置された施設内に、通常のストレッチャーを使用して患者を搬送することは磁気に引き寄せられ等思わぬ事故が発生し危険である。
【0007】
本願発明はMRIを有する施設内で使用できる非磁性・非着磁性ストレッチャーを提供するために鋭意研究を重ねた。その結果、非磁性・非着磁性のキャスターと非磁性・非着磁性のクランクハンドルを非磁性・非着磁性のフレームで構成されたストレッチャーに着設して、非磁性・非着磁性ストレッチャーの創成に成功した。すなわち、非磁性・非着磁性のキャスターとして非磁性・非着磁性のベアリングと樹脂製、又はアルミニウム製のホイールにゴムタイヤを装着して非磁性・非着磁性としたキャスターを非磁性・非着磁性のフレームで構成されたストレッチャーに着設して、MRI等の磁気を発生する診断装置を有する施設内に患者を搬入、搬出することができる非磁性・非着磁性ストレッチャーを完成した。
【0008】
本願発明の特徴は、非磁性・非着磁性のフレームより構成されたストレッチャーに、非磁性・非着磁性のベアリングと、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性をよくした非磁性・非着磁性キャスターと非磁性・非着磁性クランクハンドルを着設したことを特徴とする非磁性・非着磁性ストレッチャーである。本願発明の非磁性・非着磁性ストレッチャーは磁気を発するMRI等の診断装置に引き寄せられることもなく、長時間MRI装置を有する施設内に放置しても磁気を帯びない特徴を有している。
【0009】
さらなる特徴は、非磁性・非着磁性のキャスターはアルミ製のホイールにゴムタイヤを装着した非磁性・非着磁性キャスターを着設したことを特徴とする非磁性・非着磁性ストレッチャーである。
【0010】
さらなる特徴は、非磁性・非着磁性キャスターは合成樹脂製のホイールにゴムタイヤを装着した非磁性・非着磁性キャスターを着設したことを特徴とする非磁性・非着磁性ストレッチャーである。
【0011】
さらに、本願発明の非磁性・非着磁性ストレッチャーは長時間MRIの施設内に放置しても磁気を帯びない特徴を有している。
【0012】
本願明細書中で「非磁性体」「非着磁性体」とは、非磁性・非着磁性ステンレス(例えば、SUS304)、アルミニウム、真鍮、チタン、合成樹脂等をいう。非磁性・非着磁性のベアリング、非磁性・非着磁性のボルト、非磁性・非着磁性のナット、非磁性・非着磁性のフレーム等は、例えば、非磁性・非着磁性ステンレス(例えば、SUS304)、アルミニウム、真鍮、チタン、合成樹脂等で製造されたものをいう。
【発明の効果】
【0013】
キャスターに非磁性・非着磁性のベアリングを用いると共に、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性の良い、静かな非磁性・非着磁性のキャスターとして、MRI等の磁気を発する装置を着設した近傍で使用できる非磁性・非着磁性のキャスターを着設した非磁性・非着磁性のストレッチャーが提供できる。さらに、非磁性・非着磁性のベアリングを用いると共に、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性の良いキャスターにアルミ製、又はアルミ製のホイールにゴムタイヤを装着したことによって、静かな非磁性・非着磁性キャスターを着設した非磁性・非着磁性ストレッチャーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】非磁性・非着磁性のキャスターの側面図である。
【図2】非磁性・非着磁性キャスターの正面図である。
【図3】フットブレーキを着設した非磁性・非着磁性のキャスターの側面図である。
【図4】フットブレーキを着設した非磁性・非着磁性のキャスターの正面である。
【図5】本発明の非磁性・非着磁性のクランクハンドルの部分側面図を示す。
【図6】本発明の非磁性・非着磁性のクランクハンドルのハンドル部分の側面図を示す。
【図7】本発明の非磁性・非着磁性のストレッチャーの上面図である。
【図8】本発明の非磁性・非着磁性のストレッチャーの側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の非磁性・非着磁性ストレッチャーの実施の態様についていくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0016】
非磁性・非着磁性キャスター
本発明で使用する非磁性・非着磁性キャスター10は図1の(1−1)に示すように、非磁性・非着磁性キャスターの車輪部分は、非磁性・非着磁性のホイール12にゴム製のタイヤ11を装着した車輪がヨーク13に軸着されている。ヨーク13の上部にはワッシャー14が挿嵌されたシャフトインナーゴム15が上下に装着され、非磁性・非着磁性の小判ナット16で固定されている。非磁性・非着磁性キャスター10の回動部分は円で囲ったA部分を図1の(1−2)に詳細に示している。図1の(1−2)に示すように、非磁性・非着磁性キャスター10の回動部分は、上部に非磁性・非着磁性のキャスターシャフト17が着設され、その下に非磁性・非着磁性のヨークキャップ18を冠着する。ヨークキャップ18の下に合成樹脂製のワッシャー14a、14b(本願発明では、14aに(商標)オイレス#80ワッシャー、14bに(商標)オイレス#83ワッシャーを使用した。)を装着して、樹脂製のベアリングカラー19を挟んで上下に非磁性・非着磁性のベアリング20(本願発明では(商標)シンチュウベアリングA5を使用した。)を挿着した。ベアリング20の下には、合成樹脂製のワッシャー14a、14bを装着した。ベアリング20の上下に合成樹脂製のワッシャー14a、14bを挿着することによって、非磁性・非着磁性のキャスター10の摺動性を良好にすることができた。
【0017】
図2の(2−1)は非磁性・非着磁性のキャスター10の正面図を示しており、円で囲ったB部分の詳細な図面を図2の(2−2)に示す。図2の(2−2)に示すように、キャスターのホイール12はヨーク13にラジアル軸21で軸着され、ホイール12とヨーク13の間にキャスターカラー22、22が挿着されている。ホイール12は非磁性・非着磁性ベアリング20a、20a(本願発明においては、シンチュウベアリング(ラジアル)を使用した。)で軸着されている。さらにヨーク13の外側にもベアリング20b(本願発明においては、シンチュウベアリングを使用した。)を着設し、車軸ナット29で固定した。
【実施例2】
【0018】
ブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター
図3はブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター23の側面図を示している。ブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター23の回動部分は、図3の(3−1)に示すように、ヨーク13の一端にブレーキレバー24と該ブレーキレバー24によって作動するバネ(25a)が付勢されたブレーキシュー25が着設されている。詳細には図3の(3−2)に示すように、スラスト軸26の下にキャスターキャップ27を冠着し、その下に合成樹脂製のワッシャー14a、14b(本願においては、14aにオイレス#83ワッシャー、14bにオイレス#80ワッシャーを使用した。)を着設し、ベアリング20、20を着設して、パーキングセレーション28を配設して、ナット29(本願においては、シンチュウ樹脂ナットを使用した。)で固定した。
【0019】
図4の(4−1)はブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター23の正面図を示している。図4の(4−2)の部分断面図に示すように、車輪はヨーク13にラジアル軸21で軸着され、その間にキャスターカラー22、22が装着されている。ホイール12には非磁性・非着磁性のベアリング20、20が着設されており、ワッシャー14(本願においては、シンチュウワッシャーを使用した。)とナット29(本願においては、シンチュウ樹脂ナットを使用した。)で軸着されている。
【0020】
図4の(4−3)はブレーキ部分の部分断面図を示している。ブレーキレバー24はキャップボルト30とフォーマナット31により回動可能に軸着されている。
【実施例3】
【0021】
非磁性・非着磁性クランクハンドル
図5に本願発明の非磁性・非着磁性クランクハンドル32の詳細図を示す。ハンドル33にハンドルレバー34が接続され、それにハンドルカラー35、ハンドルカバー36、ハンドルバネ37、ハンドル折れ部38、キャップボルト30がフォーマナット31で固定されている。クランクハンドル止めネジ39、39、ベアリングケースカバー40、ワッシャー14、14、ベアリングケース41にベアリング20が入っている。本体カバー42、ネジきり支柱メス43にハンドルネジシャフト44が螺合している。その外側にクランクハンドルアウターパイプ45が着設されている。
【0022】
図6の(6−1)は、本願発明の非磁性・非着磁性クランクハンドル32のハンドル33が下を向いている状態を示し、図6の(6−2)は、ハンドル33が側面を向いているが、非磁性・非着磁性クランクハンドル32のアウターパイプ45が短い状態を示している。aはボルト、bは抜け止めのためのかしめ位置、cはキャップを示す。図6の(6−3)はハンドル33を回動させて、アウターパイプ45が伸びた状態を示している。
【実施例4】
【0023】
非磁性・非着磁性ストレッチャー
図7は非磁性・非着磁性ストレッチャー100の上面図である。非磁性・非着磁性ストレッチャー100は上段46のフレーム(本願発明においては、アルミニウム製のフレームを用いた。)と前後に移動可能なように非磁性・非着磁性キャスター47が着設された下段50とはクロスバー48によって連結されている。この上下(46、50)に構成された非磁性・非着磁性ストレッチャー100に非磁性・非着磁性クランクハンドル32を着設し、クランクハンドル32を回動することによって、バネ49、49(本願発明においては、リン青銅のバネを用いた。)が前後に伸縮してクロスバー48の高さを調節することによって、クロスバー48の上段46に着設されたベッド部分の高さを調整することができる。
【0024】
図8は本発明の非磁性・非着磁性ストレッチャー100の側面図である。本願発明の非磁性・非着磁性ストレッチャー100は患者を載せる上段46のベッド部分と非磁性・非着磁性キャスター47を着設した下段50の可動部分からなり、上段46と下段50はバネ49が付勢されたクロスバー48で連結されている。クロスバー48はクランクハンドル32を回転させて、バネ49(本願においてはリン青銅製のバネを使用した。)の伸縮を調節することによって、クロスバー48の拡開を調節して、上段46のベッド部分の高さを調節する。
【0025】
図8に示した非磁性・非着磁性のストレッチャー100には、前後共にブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター23を着設している。しかし、非磁性・非着磁性のストレッチャー100に着設する非磁性・非着磁性のキャスターは、ブレーキのない非磁性・非着磁性キャスター10を着設することもでき、非磁性・非着磁性のストレッチャー100に着設する非磁性・非着磁性キャスターは、ブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター23に限定されるものではない。
【0026】
図8の(8−1)に示すように、非磁性・非着磁性ストレッチャー100の上段のフレームのA−A面におけるフレーム間の接続は、図8の(8−2)に示すようにチタン製六角ボルト51を用いて、シンチュウ合成樹脂製ナット52で固定した。
【符号の説明】
【0027】
100:本発明の非磁性・非着磁性ストレッチャー
10:非磁性・非着磁性キャスター
11:タイヤ
12:ホイール
13:ヨーク
14:ワッシャー
15:シャフトインナーゴム
16:小判ナット
17:キャスターシャフト
18:ヨークキャップ
19:ベアリングカラー
20:ベアリング
21:ラジアル軸
22:キャスターカラー
23:ブレーキを有する非磁性・非着磁性キャスター
24:ブレーキレバー
25:ブレーキシュ
26:スラスト軸
27:キャスターキャップ
28:パーキングセレーション
29:ナット
30:キャップボルト
31:フォーマナット
32:非磁性・非着磁性クランクハンドル
33:ハンドル
34:ハンドルレバー
35:ハンドルカラー
36:ハンドルカバー
37:ハンドルバネ
38:ハンドル折れ部
39:クランクハンドル止めネジ
40:ベアリングケースカバー
41:ベアリングケース
42:本体カバー
43:ネジ切り支柱めす
44:ハンドルシャフト
45:クランクハンドルアウターパイプ
46:ストレッチャーの上段
47:キャスター
48:クロスバー
49:バネ
50:ストレッチャーの下段
51:六角ボルト
52:合成樹脂製ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性・非着磁性のフレームより構成されたストレッチャーに、非磁性・非着磁性のベアリングと、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性をよくした非磁性・非着磁性キャスターと非磁性・非着磁性クランクハンドルを着設したことを特徴とする非磁性・非着磁性ストレッチャー。
【請求項2】
非磁性・非着磁性キャスターがアルミ製のホイールにゴムタイヤを装着した非磁性・非着磁性キャスターを着設したことを特徴とする請求項1記載の非磁性・非着磁性ストレッチャー。
【請求項3】
非磁性・非着磁性キャスターが合成樹脂製のホイールにゴムタイヤを装着した非磁性・非着磁性キャスターを着設したことを特徴とする請求項1記載の非磁性・非着磁性ストレッチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−70957(P2012−70957A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218212(P2010−218212)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000146113)株式会社松永製作所 (59)
【Fターム(参考)】