説明

非神経細胞からの分泌の阻害

【課題】細胞分泌プロセスの阻害による疾患の治療手段を提供すること。
【解決手段】内分泌細胞、外分泌細胞、免疫学的細胞、心臓血管系の細胞、および分泌により骨障害に至る細胞からなる群より選択される非神経細胞からの分泌の阻害における使用のための薬剤であって、該薬剤は第1、第2および第3のドメインを含み、該第1のドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、該第2のドメインが、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートし、そして該第3のドメインが、該薬剤を該非神経細胞にターゲティングする、薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分泌プロセスの阻害による疾患の治療、そのための薬剤および組成物、ならびにこれらの薬剤および組成物の製造に関する。本発明は、特に、内分泌細胞、外分泌細胞、炎症性細胞、免疫系の細胞、心臓血管系の細胞、および骨細胞のエキソサイトーシス活性に依存する疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
エキソサイトーシスは、形質膜と分泌小胞との融合であり、そして小胞内容物の排出−細胞分泌としても知られるプロセスを生じる。エキソサイトーシスは、構成性であり得るかまたは調節性であり得る。構成性エキソサイトーシスは、すべての細胞タイプで起こると考えられるが、調節性エキソサイトーシスは、特殊化した細胞で生じる。
【0003】
エキソサイトーシスに関するメカニズムの理解は急速に増加しており、SNARE仮説が提案されている(Rothman, 1994, Nature 372, 55-63)。この仮説は、ターゲット膜マーカーを認識する小胞上のタンパク質マーカーを説明している。これらのいわゆるコグネイトSNARE(小胞についてはv-SNARE、および標的に対してはt-SNAREで示す)は、小胞と正しい膜とのドッキングおよび融合を容易にし、そのため、小胞内容物を適切なコンパートメントに排出させる。このプロセスの理解に重要なことは、関連するタンパク質の同定であった。エキソサイトーシスについて3つのSNAREタンパク質ファミリーが同定されている:SNAP-25およびSNAP-23、そしてシンタキシンは、膜中のt-SNAREファミリーであり;そしてシナプトブレビンおよびセルブレビンを含むVAMP(小胞結合膜タンパク質)類は分泌小胞のv-SNAREファミリーである。SNARE類を含む融合機構の重要な成分は、調節性サイトーシスと構成性サイトーシスとの両方に関連する(De Camilli, 1993, Nature, 364, 387-388)。
【0004】
クロストリジウム菌神経毒素は、約150kDaの分子量を有するタンパク質である。これらは、クロストリジウム属の様々な種、最も重要には、C. tetaniおよびいくつかの株のC. botulinumにより産生される。現在、8つの異なるクラスの神経毒素が知られている:破傷風菌毒素ならびに血清型A、B、C、D、E、F、およびGのボツリヌス菌神経毒素。そして、これらはすべて類似の構造および作用様式を有する。クロストリジウム菌神経毒素は、一本鎖ポリペプチドとして細菌によって合成され、翻訳後改変されて、ジスルフィド結合により互いに結合した2本のポリペプチド鎖を形成する。2つの鎖は、約100kDaの分子量を有する重鎖(H)および約50kDaの分子量を有する軽鎖(LC)と呼ばれる。クロストリジウム菌神経毒素は、神経細胞に対して非常に選択性であり、高い親和性で結合する[Black, J.D.およびDolly, J.O. (1987) Selective location of acceptors for BoNT/A in the central and peripheral nervous systems., Neuroscience, 23, 767-779頁;Habermann, E.およびDreyer, F. (1986) Clostridial neurotoxins: handling and action at the cellular and molecular level., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 129, 93-179頁;およびSugiyama, H. (1980) Clostridium botulinum neurotoxin., Microbiol. Rev., 44, 419-448頁(および中で引用された文献)を参照のこと]。
【0005】
クロストリジウム菌神経毒素による神経中毒の機能的要求は、神経毒素の構造内の特異的ドメインに割り当てられ得る。クロストリジウム菌神経毒素は、神経筋接合部で運動神経の細胞膜上の受容体部位に結合し、次いで、非常に特異的なレセプターに結合し、エンドサイトーシスメカニズムによりインターナライズする。クロストリジウム菌神経毒素の特異的な神経筋接合部の結合活性は、Hとして知られる領域である二本鎖神経毒素分子の重鎖成分のカルボキシ末端部分に存在していることが知られている。インターナライズされたクロストリジウム菌神経毒素は、非常に特異的な亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性を有する。この亜鉛依存性エンドペプチダーゼは、神経分泌機構の重要な成分である3つのタンパク質ファミリーであるシナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP-25のうちの少なくとも1つにおいて特異的なペプチド結合を加水分解する。クロストリジウム菌神経毒素の亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性は、L鎖(LC)に存在することが見出されている。Hとして知られる領域である二本鎖神経毒素分子の重鎖成分のアミノ末端部分は、神経毒素またはその一部のエンドペプチダーゼ活性を含む部分を、エンドソーム膜を横切ってトランスロケーションし、次いでインターナリゼーションする。このようにしてHはエンドペプチダーゼを神経細胞サイトゾルおよびその1つまたは複数の基質タンパク質に接近させる。神経中毒の結果は、シナプス小胞内容物の放出の防止によるターゲットニューロンからの神経伝達物質の放出阻害である。
【0006】
ドメインが神経細胞サイトゾル内にエンドペプチダーゼをトランスロケーションさせるメカニズムは、十分には特徴付けられていないが、コンホメーション変化、エンドソーム膜への挿入、およびエンドペプチダーゼが神経細胞サイトゾルへ近づき得るチャンネルまたは孔のいくつかの形態の形成に関連すると考えられている。神経細胞表面での特異的なレセプターへの結合後、薬理学的および形態学的証拠は、クロストリジウム菌神経毒素がエンドサイトーシスにより細胞に入り[BlackおよびDolly (1986) J. Cell Biol. 103, 535-44]、次いで、神経中毒を起こすために低pH工程を通過させなければならないことを示している[Simpsonら (1994) J. Pharmacol Exp. Ther., 269, 256-62]。酸性pHは、構造変化を介して直接毒素を活性化させないが、神経細胞エンドソーム小胞の内腔から神経細胞サイトゾルへのLC膜トランスロケーションのプロセスを誘発すると考えられている[Montecuccoら (1994) FEBS Lett. 346, 92-98]。毒素決定チャンネルが、サイトゾルへのトランスロケーションプロセスに関連するという一般的なコンセンサスがある[SchiavoおよびMontecucco (1997) Bacterial Toxins (K. Aktories編)]。このモデルは、Hドメインが、酸性小胞膜を横切る膜貫通の疎水性の孔を形成して、部分的にフォールディングされていないLCをサイトゾルに通過させる必要がある。必須のコンホメーション変化は、神経毒素がインターナライズされる神経細胞エンドソームコンパートメントにおいて環境因子により誘発されると考えられ、そして、Hの結合ドメインの必要な特徴は、適切なエンドソームコンパートメントへのインターナリゼーションを可能にする結合部位をターゲティングすることである。したがって、クロストリジウム菌神経毒素は、この要求を満たす細胞表面部分をターゲティングするように進化した。
【0007】
ホルモンは、身体の内分泌腺により分泌される化学的メッセンジャーである。これらは、血液により運ばれ、他の器官で特異的な生理学的作用を発揮する。ホルモンにより調節されるプロセスの範囲としては、恒常性(例えば、インスリンは血中のグルコース濃度を調節する)、成長(例えば、成長ホルモンは、成長を促進し、そして脂肪、炭水化物、およびタンパク質の代謝を調節する)、および成熟(例えば、性ホルモンは、性的な成熟および生殖を促進する)の種々の局面が挙げられる。内分泌機能亢進の結果、血流中の1または複数のホルモンの過剰量によって引き起こされる疾患状態となる。機能亢進の原因は、腫瘍性、自己免疫性、医原性、および炎症性として分類される。内分泌機能亢進障害は、疾患の複合群であり、これは、病状を引き起こし得る腺(例えば、下垂体前葉、下垂体後葉、甲状腺、副甲状腺、副腎皮質、副腎髄質、膵臓、卵巣、精巣)が多数あるだけでなく、この多数の腺が1より多くのホルモンを産生する(例えば、下垂体前葉は、副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、濾胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、および性腺刺激ホルモンを産生する)からである。ホルモン過剰を引き起こす障害の大多数は、ホルモン産生細胞の腫瘍性増殖に起因する。しかし、非内分泌腺に由来する特定の腫瘍は、内分泌機能亢進疾患徴候を引き起こすホルモンを合成し得る。これらの条件下でのホルモン産生は、「異所性」と呼ばれる。これらの治療には、しばしば過剰分泌組織の一部またはすべての外科手術的な除去あるいは放射線による破壊が選択される。しかし、これらのアプローチは、必ずしも適用可能ではなく、ホルモン産生の完全な喪失を生じるか、または分泌組織の再生のために繰り返されなければならない。
【0008】
内分泌機能亢進障害のさらなるレベルの複雑性により、2以上の内分泌腺が関連する多発性内分泌腺腫瘍(MEN)と呼ばれる1群の症状が生じる。多発性内分泌腺腫瘍症候群(MEN1およびMEN2)は、家族性症状であり、遺伝の常染色体優性パターンを伴う。MEN1は、副甲状腺過形成、膵臓内分泌腺腫瘍、および脳下垂体腺腫の関連により特徴付けられ、そしてその有症率は約1/10000である。MEN2は、甲状腺の髄様細胞癌腫およびクロム親和性細胞腫の関連であるが、ある種の罹患者では、副甲状腺過形成も生じ得る。
【0009】
MEN1に関連する病的状態の多くは、膵臓内分泌腺腫瘍の影響によるものである。しばしば外科手術が不可能であり、そして治療目的はホルモン過剰を減少させることである。腫瘍塊の減少、時々は腫瘍塊の除去、は別として、ホルモン分泌の阻害は、作用の好ましい方針である。現行の手順としては、ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドの皮下適用が挙げられる。しかし、このアプローチは一時的にのみ有効であり、そしてその成果は、数ヶ月間で低下する。
【0010】
他の非内分泌腺非神経細胞からの分泌に関連する多くのさらなる疾患状態が知られている。したがって、これらの疾患症状を発生させるまたは発生に導く内分泌細胞の機能亢進のような、非神経細胞による分泌を治療し、減少させ、または予防することが所望される。
【0011】
ボツリヌス菌神経毒素の活性は、ニューロンからの神経伝達物質の放出阻害だけに限定される。これは、クロストリジウム菌神経毒素に対する高親和性結合部位が神経細胞上に独占的に発現されるためである[Daniels-Holgate, P.U.およびDolly, J.O. (1996) Productive and non-productive binding of botulinum neurotoxin to motor nerve endings are distinguished by its heavy chain., J. Neurosci. Res. 44, 263-271を参照のこと]。
【0012】
非神経細胞はクロストリジウム菌神経毒素に対する高親和性結合部位を有さず、したがって、外因的に付与される神経毒素の阻害効果をもたらさない。したがって、非神経細胞の表面へのクロストリジウム菌神経毒素の単純な適用は、分泌小胞のエキソサイトーシスの阻害を導かない。
【0013】
これにより、クロストリジウム菌神経毒素の生産的結合または生産的結合の欠損は、それぞれ神経細胞および非神経細胞を定義づける。
【0014】
クロストリジウム菌神経毒素に対する高親和性結合部位の欠損の他に、正確なインターナリゼーションおよび細胞内の経路づけメカニズムの不在、または未だ解明されていないその他の因子が、非神経細胞におけるクロストリジウム菌神経毒素作用を予防する。
【0015】
WO96/33273から、ハイブリッドクロストリジウム菌神経毒素エンドペプチダーゼが調製され得、そしてこれらのハイブリッドが、痛覚伝達ニューロンのようなターゲティングされる神経細胞からの神経伝達物質の放出を効果的に阻害することが知られている。WO96/33273は、インターナリゼーションおよび小胞経路づけの神経細胞メカニズムが操作される神経系のみにおけるハイブリッドの活性を記載している。
【0016】
しかし、非神経細胞の表面へのクロストリジウム菌神経毒素の単純な適用が、分泌小胞のエキソサイトーシスの阻害を導かないため、非神経細胞は、クロストリジウム菌神経毒素の効果をもたらさない。このクロストリジウム菌神経毒素に対する非神経細胞の非感受性は、必須のレセプターの不在、正確なインターナリゼーションおよび細胞内の経路づけメカニズムの不在、または未だ解明されていないさらなる因子によるものであり得る。
【0017】
WO95/17904は、過剰な発汗、流涙および粘液分泌、ならびに疼痛などの種々の障害の治療におけるC. botulinumホロ毒素の使用について記載している。WO95/17904は、神経細胞をターゲティングすることによる治療を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、非神経細胞からの分泌を阻害するための方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
優先権期間に公表されたWO00/10598は、粘液過剰分泌の治療について記載している。粘液過剰分泌により引き起こされるまたは悪化する特異的な疾患状態は、気道に局在化し、そして気道へまたは気道の選択された領域もしくは選択された部分への局所投与により治療可能である。本発明は先の発明を排除する。
【0020】
したがって、本発明は、神経細胞においてエキソサイトーシス機構を阻害し、そして驚くべきことに非神経細胞においてエキソサイトーシスプロセスを阻害することに効果的であることが見出されている組成物の使用に基づく。
【0021】
このように、本発明の第1の局面は、少なくとも第1および第2のドメインを含む薬剤を投与する工程を含む、非神経細胞からの分泌を阻害する方法を提供し、該第1のドメインは、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、そして該第2のドメインは、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートする。
【0022】
好都合には、本発明は、非神経分泌の阻害を提供し、そしてこのような分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療を可能にする。
【0023】
本発明で使用される薬剤は、クロストリジウム菌神経毒素の細胞結合Hドメインを非神経細胞の表面に結合し得るリガンドと置換することによって、適切に調製される。驚くべきことに、この薬剤は、非神経細胞からの種々の分泌された物質のエキソサイトーシスを阻害し得る。クロストリジウム菌神経毒素、あるいはH鎖のH領域が除去または改変されている2つのクロストリジウム菌神経毒素のハイブリッドを、新しい分子または部分であるターゲティング部分(TM)に共有結合することによって、関連の非神経分泌細胞の表面上の結合部位(BS)に結合する薬剤が作成される。本発明のさらに驚くべき局面は、クロストリジウム菌神経毒素のL鎖またはエンドペプチダーゼ活性を含むL鎖のフラグメント、改変体、もしくは誘導体が、非神経分泌細胞の細胞質へのL鎖またはエンドペプチダーゼ活性のフラグメントのインターナリゼーションも引き起こし得るTMに共有結合する場合、これもまた、分泌を阻害し得る薬剤を作成することである。したがって、本発明は、クロストリジウム菌神経毒素の阻害効果に対する非神経細胞の非感受性を克服する。
【0024】
本発明の薬剤の例は、第1および第2のドメインを含むポリペプチドであり、該第1のドメインは、神経細胞のエキソサイトーシスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し、そして該第2のドメインは、細胞にポリペプチドをトランスロケートするかまたは非神経細胞へのエキソサイトーシスの阻害に応答性の少なくともある部分をトランスロケートする。ポリペプチドは、神経毒素に由来し得、その場合、ポリペプチドは、代表的には、クロストリジウム菌神経毒素を含まずそしてタンパク質分解作用によって毒素に変換され得るあらゆるクロストリジウム菌神経毒素前駆体を含まず、したがって実質的に非毒性でありそして治療用途に適切である。したがって、本発明は、クロストリジウム菌毒素軽鎖と等価のドメインおよびクロストリジウム菌毒素重鎖のHのトランスロケーション機能を提供するドメインを含むが、クロストリジウム菌毒素Hドメインの機能的局面を欠くポリペプチドを、このように使用し得る。
【0025】
本発明の使用において、ポリペプチドは、インビボで患者に投与され、第1のドメインは、第2のドメインの作用によって非神経細胞にトランスロケートされ、そしてエキソサイトーシスの特異的な細胞プロセスに必須の1以上の小胞または形質膜結合タンパク質を切断し、そしてこれらのタンパク質の切断によりエキソサイトーシスを阻害し、これによって、代表的には非細胞傷害性様式で、分泌の阻害を生じる。
【0026】
本発明のポリペプチドは、組換え核酸、好ましくはDNAの発現によって得られ得、そして一本鎖ポリペプチドであり得、すなわち、別々の軽鎖および重鎖ドメイン、または、例えばジスルフィド結合によって連結した2本のポリペプチドに切断されるわけではない。
【0027】
第1のドメインは、好ましくは、クロストリジウム菌毒素軽鎖またはクロストリジウム菌毒素軽鎖の機能的フラグメントもしくは改変体を含む。このフラグメントは、エキソサイトーシスに必須の小胞または形質膜結合タンパク質を切断する能力を実質的に保持する限り、任意に、軽鎖のN末端またはC末端フラグメントであり、あるいは内部フラグメントである。クロストリジウム菌毒素の軽鎖の活性に必要な最小ドメインは、J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 1992年7月, 14721-14729頁に記載されている。改変体は、軽鎖またはフラグメントとは異なるペプチド配列を有するが、これもまた、小胞または形質膜結合タンパク質を切断し得る。これは、便利には、軽鎖またはそのフラグメントの挿入、欠失、および/または置換によって得られる。(i)クロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメントのN末端伸長、(ii)少なくとも1つのアミノ酸の変更によって改変されたクロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメント、(iii)クロストリジウム菌毒素軽鎖またはフラグメントのC末端伸長、あるいは(iv)(i)〜(iii)の2以上の組み合わせを含む、種々の改変体が可能である。本発明のさらなる実施態様では、改変体は、(a)ポリペプチドのLCとH成分との間にプロテアーゼ感受性領域がない、あるいは(b)プロテアーゼ感受性領域が特定のプロテアーゼに特異的であるように改変されたアミノ酸配列を含む。この後者の実施態様は、特定の環境または細胞において軽鎖のエンドペプチダーゼ活性を活性化することが所望される場合に使用されるが、一般的に、本発明のポリペプチドは、投与前に活性形態である。
【0028】
第1のドメインは、好ましくは、1以上のSNAP-25、シナプトブレビン/VAMP、およびシンタキシンから選択される基質に特異的なエンドペプチダーゼ活性を示す。このドメインが得られ得るまたは由来し得るクロストリジウム菌毒素は、好ましくは、ボツリヌス菌毒素または破傷風菌毒素である。このポリペプチドは、さらに、1つの毒素タイプの軽鎖またはフラグメントもしくは改変体および他の毒素タイプの重鎖またはフラグメントもしくは改変体を含む。
【0029】
第2のドメインは、好ましくは、クロストリジウム菌毒素重鎖H部分またはクロストリジウム菌毒素重鎖H部分のフラグメントもしくは改変体を含む。このフラグメントは、Hドメインの機能を保持する限り、任意に、N末端またはC末端または内部フラグメントである。その機能の要因であるH内の領域の教示は、例えば、Biochemistry, 1995, 34, 15175-15181頁およびEur. J. Biochem, 1989, 185, 197-203頁に提供される。改変体は、Hドメインまたはフラグメントとは異なる配列を有するが、これもまた、Hドメインの機能を保持する。これは、便利には、Hドメインまたはそのフラグメントの挿入、欠失、および/または置換によって得られ、そして改変体の例としては、(i)HドメインまたはフラグメントのN末端伸長、(ii)HドメインまたはフラグメントのC末端伸長、(iii)少なくとも1つのアミノ酸の変更によるHドメインまたはフラグメントに対する改変、あるいは(iv)(i)〜(iii)の2以上の組み合わせが挙げられる。クロストリジウム菌毒素は、好ましくは、ボツリヌス菌毒素または破傷風菌毒素である。
【0030】
組換え手段によるポリペプチドの調製において、融合タンパク質を用いる方法が用いられ得、例えば、融合タンパク質は、(a)上記の本発明のポリペプチドと(b)クロマトグラフィーマトリクスヘの結合に適合される第2のポリペプチドとの融合物を含み、そのため、クロマトグラフィーマトリクスを用いる融合タンパク質の精製を可能にする。第2のポリペプチドを、グルタチオンSepharoseのようなアフィニティーマトリクスに結合するように適合させることが便利であり、それによって、細胞抽出物または上清のような純粋でないソースからの融合タンパク質の迅速な分離および精製を可能にする。
【0031】
第2の精製ポリペプチドの1つは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)であり、そして他のポリペプチドは、従来の技法に従ってクロマトグラフィーカラムでの精製を可能にするように選択され得る。
【0032】
本発明の第2の局面では、本発明の薬剤を投与することによって、調節された分泌の原因である選択された非神経細胞からの分泌を阻害する方法が提供される。
【0033】
本発明の第3の局面では、非神経細胞からの分泌によって生じる、または引き起こされる、または維持される疾患の治療方法が提供され、この方法は、本発明の薬剤を投与する工程を含む。
【0034】
本発明のさらなる局面では、分泌の原因である非神経細胞にターゲティングされる本発明の薬剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】WGA−LHN/A精製スキームのSDS-PAGE分析を示す。
【図2】HIT-T15細胞からの伝達物質の放出に対するWGA−LHN/Aの活性を示す。
【図3】HIT-T15細胞へのWGA−LHN/Aの適用後の神経伝達物質放出の阻害とSNAP-25切断との相関を示す。
【図4】未分化PC12細胞からの[H]-ノルアドレナリンの放出に対するWGA−LHN/Aの活性を示す。
【図5】E. coliにおけるrecLHN/Bの発現を示すウエスタンブロットを示す。
【図6】recLHN/Bによる合成VAMPペプチドのインビトロ切断を示す。
【図7】ヒト臍静脈内皮細胞からの刺激されたフォン・ビルブラント因子(vWF)放出に対する低pHおよびBoNT/B処理の効果を示す。
【図8】LS180細胞からの[H]-グルコサミン標識された高分子量材料の放出を示す。
【図9】分化したHL60細胞からの刺激されたβ-グルクロニダーゼ放出に対する低pHおよびBoNT/B処理の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の1つの実施態様では、内分泌細胞の機能亢進から生じる症状、例えば、内分泌腺腫瘍の治療のための薬剤が提供される。
【0037】
したがって、本発明の薬剤は、内分泌機能亢進の治療において、内分泌細胞由来の化学的メッセンジャーの分泌を阻害するために使用される。本発明の利点は、内分泌機能亢進および関連疾患状態の効果的な治療がここで提供されることであり、このような利用可能な薬剤が全くなかった罹患者に対して緩和を提供する。
【0038】
本発明のさらなる利点は、その使用によって、単一の内分泌腺からの複数のホルモンの過剰分泌の阻害または減少を生じる薬剤を利用可能にすることである。したがって、1つの腺(例えば、下垂体前葉)の機能亢進から生じる複数の障害は、過剰分泌腺の機能の低下によって同時に治療される。
【0039】
薬剤は、好ましくは、内分泌細胞に結合するリガンドまたはターゲティングドメインを含み、したがってこれらの細胞タイプに特異的になる。適切なリガンドの例としては、ヨウ素;甲状腺刺激ホルモン(TSH);TSHレセプター抗体;島特異的モノシアロガングリオシドGM2-1に対する抗体;インスリン、インスリン様成長因子、ならびに両方のレセプターに対する抗体;TSH放出ホルモン(プロチレリン)およびそのレセプターに対する抗体;FSH/LH放出ホルモン(ゴナドレリン)およびそのレセプターに対する抗体;副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)およびそのレセプターに対する抗体;ならびにACTHおよびそのレセプターに対する抗体が挙げられる。本発明によれば、内分泌腺にターゲティングされた薬剤は、このように、以下から選択される疾患の治療に適切であり得る:MENを含む内分泌腺腫瘍;甲状腺亢進症および甲状腺からの過剰分泌に依存する他の疾患;先端巨大症、高プロラクチン血症、クッシング症、および下垂体前葉過剰分泌に依存する他の疾患;アンドロゲン過多症、慢性無排卵症、および多嚢胞性卵巣症候群に関連する他の疾患。
【0040】
さらなる実施態様において、本発明の薬剤は、炎症性細胞の分泌から生じる症状、例えば、アレルギーの治療に使用される。これらの細胞に薬剤をターゲティングするために適切なリガンドとしては、(i)肥満細胞については、一般的には、Fc IgEのC4ドメインを含む補体レセプター、およびC3a/C4a-R補体レセプターに対する抗体/リガンド;(ii)好酸球については、C3a/C4a-R補体レセプターに対する抗体/リガンド、抗VLA-4モノクローナル抗体、抗IL5レセプター、CR4補体レセプターに対して反応性の抗原または抗体;(iii)マクロファージおよび単球については、マクロファージ刺激因子;(iv)マクロファージ、単球、および好中球については、細菌LPS、およびCR3に結合する酵母B−グルカン;(v)好中球については、OX42に対する抗体、iC3b補体レセプターと結合した抗原、またはIL8;および(vi)線維芽細胞については、マンノース6−リン酸/インスリン様成長因子−β(M6P/IGF-II)レセプターおよびPA2.26、マウスにおける活性線維芽細胞についての細胞表面レセプターに対する抗体が挙げられる。本発明に従ってこのように治療可能な疾患としては、アレルギー(季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、血管運動性鼻炎、および食品アレルギー)、好酸球増加症、喘息、慢性関節リウマチ、全身エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、クローン病、痔、掻痒症、糸球体腎炎、肝炎、膵臓炎、胃炎、脈管炎、心筋炎、乾癬、湿疹、慢性放射線誘発線維症、肺の瘢痕化、および他の線維症障害から選択される疾患が挙げられる。
【0041】
VAMP発現は、Bリンパ球で証明されている[Olken, S.K.およびCorley, R.B., 1998, Mol. Biol. Cell., 9, 207aを参照のこと]。したがって、本発明の薬剤は、Bリンパ球にターゲティングされ、そしてその後インターナリゼーションおよび逆輸送される場合、このようなターゲット細胞上で阻害効果を発揮し得る。
【0042】
さらなる実施態様では、本発明の薬剤は、外分泌細胞の分泌から生じる症状、例えば、急性膵臓炎(Hansenら, 1999, J. Biol. Chem., 274, 22871-22876)の治療のために提供される。これらの細胞に薬剤をターゲティングするために適切なリガンドとしては、下垂体アデニルシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP-38)またはそのレセプターに対する抗体が挙げられる。本発明はまた、消化管に位置する、特に結腸に位置する、粘液分泌細胞からの粘液過剰分泌の治療に関する。
【0043】
Gaisano, H.Y.ら, (1994) J. Biol. Chem., 269, 17062-17066頁は、細胞侵入を可能にするインビトロでの膜浸透化の後、破傷風菌毒素軽鎖が、ラット膵臓チモーゲン顆粒において小胞結合膜タンパク質(VAMP)イソ形態2を切断し、そして酵素を阻害することを証明している。したがって、本発明の薬剤は、膵臓細胞にターゲティングされ、そしてその後インターナリゼーションおよび逆輸送される場合、このようなターゲット細胞における阻害効果を発揮し得る。
【0044】
さらなる実施態様では、本発明の薬剤は、免疫学的細胞の分泌から生じる症状、例えば、Bリンパ球がターゲティングされる自己免疫障害(免疫抑制)の治療に用いられる。これらの細胞に薬剤をターゲティングするために適切なリガンドとしては、エプスタイン・バーウイルスのフラグメント/表面の特徴またはイディオタイプ抗体(Bリンパ球およびリンパ腺濾胞樹状細胞上のCR2レセプターに結合する)が挙げられる。治療可能な疾患としては、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、臓器移植、組織移植、体液移植、グレーブス病、甲状腺亢進症、自己免疫性糖尿病、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、好中球減少症、慢性自己免疫性肝炎、自己免疫性胃炎、悪性貧血、橋本甲状腺炎、アジソン病、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、硬皮症、全身性硬化症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、心筋炎、リウマチ性心臓炎、糸球体腎炎(グッドパスチャー型)、ブドウ膜炎、精巣炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、萎縮性胃炎、悪性貧血、1型真性糖尿病が挙げられる。
【0045】
細胞浸透化技法を使用することによって、BoNT/Cを好酸球にインターナライズすることが可能になっている[Pinxteren JAら, (2000) Biochimie, 4月; 82(4): 385-93, Thirty years of stimulus-secretion coupling: from Ca(2+) to GTP in the regulation of exocytosisを参照のこと]。インターナリゼーション後、BoNT/Cは、好酸球においてエキソサイトーシスに阻害効果を発揮した。したがって、本発明の薬剤は、好酸球にターゲティングされそしてその後インターナリゼーションおよび逆輸送される場合、このようなターゲット細胞において阻害効果を発揮し得る。
【0046】
本発明のさらなる実施態様において、心臓血管系の細胞の分泌から生じる症状の治療のための薬剤が提供される。不適切な血小板活性化および血栓形成に関連する疾患状態の治療のために血小板をターゲティングするために適切なリガンドとしては、トロンビンおよびTRAP(トロンビンレセプターアゴニストペプチド)、またはCD31/PECAM-1、CD24、もしくはCD106/VCAM-1に対する抗体が挙げられ、そして高血圧症の治療のために心臓血管内皮細胞をターゲティングするためのリガンドとしては、GP1b表面抗原認識抗体が挙げられる。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、骨障害の治療のための薬剤が提供される。大理石骨病および骨粗鬆症から選択される疾患の治療のために骨芽細胞をターゲティングするための適切なリガンドとしては、カルシトニンが挙げられ、そして破骨細胞に薬剤をターゲティングするためのリガンドとしては、破骨細胞分化因子(例えば、TRANCE、またはRANKLもしくはOPGL)、およびレセプターRANKに対する抗体が挙げられる。
【0048】
本発明の使用において、ターゲティング部分(TM)は、関連の非神経分泌細胞上のBSに対して特異性を提供する。薬剤のTM成分は、多くの細胞結合分子のうちを1つを含み得、抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント(Fab、F(ab)'2、Fv、ScFvなど)、レクチン、ホルモン、サイトカイン、成長因子、ペプチド、炭水化物、脂質、グリコン(glycon)、核酸、または補体成分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
TMは、本発明の薬剤がターゲティングされる所望の細胞タイプに従って選択され、そして好ましくは非神経ターゲット細胞に高い特異性および/または親和性を有する。好ましくは、TMは、シナプス前筋接合部の神経細胞に実質的に結合せず、したがって薬剤は、実質的に非毒性であり、そのため筋肉麻痺を引き起こし得ない。これは、シナプス前筋接合部をターゲティングしそして筋肉麻痺を引き起こすクロストリジウム菌ホロ毒素とは対照的である。さらに、好ましくは、TMは神経末梢感覚細胞に実質的に結合せず、したがって薬剤は、あらゆる実質的な鎮痛効果を発揮しない。好ましくは、TMは、神経細胞に実質的には結合せず、したがって薬剤に、神経細胞において分泌に対する阻害効果を発揮させない。
【0050】
神経毒素分子のH部分が、Hとして知られるH鎖の他の部分から除去され得、そのため、Hフラグメントが、LHとして知られるフラグメントを提供する神経毒素のL鎖にジスルフィド結合したままであることが知られている。したがって、本発明の1つの実施態様では、クロストリジウム菌神経毒素のLHフラグメントは、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、TMに共有結合される。
【0051】
本発明の他の実施態様では、クロストリジウム菌神経毒素のHドメインは、神経筋接合部で神経毒素をレセプターに結合する能力を減少させる、または好ましくは無能力にするために、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック化、または改変される。この改変されたクロストリジウム菌神経毒素は、次いで、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、TMに共有結合される。
【0052】
本発明の他の実施態様では、神経筋接合部で神経毒素をレセプターに結合する能力を減少させるまたは好ましくは無能力にするために、Hドメインが、例えば、化学的改変によって、変異、ブロック化、または改変されているクロストリジウム菌神経毒素の重鎖は、異なるクロストリジウム菌神経毒素のL鎖と組み合わされる。このハイブリッドの改変されたクロストリジウム菌神経毒素は、次いで、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、TMに共有結合される。
【0053】
本発明の他の実施態様では、クロストリジウム菌神経毒素のHドメインは、異なるクロストリジウム菌神経毒素のL鎖と組み合わされる。このハイブリッドLHは、次いで、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、TMに共有結合される。
【0054】
本発明の他の実施態様では、クロストリジウム菌神経毒素の軽鎖またはエンドペプチダーゼ活性を含む軽鎖のフラグメントは、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、TMに共有結合される。このTMは、分泌の原因である関連の非神経細胞の細胞質へのL鎖またはエンドペプチダーゼ活性を含むL鎖のフラグメントのインターナリゼーションもまた引き起こし得る。
【0055】
本発明の他の実施態様では、クロストリジウム菌神経毒素の軽鎖またはエンドペプチダーゼ活性を含む軽鎖のフラグメントは、1以上のスペーサー領域を含み得る結合を使用して、エンドペプチダーゼフラグメントをサイトゾルへ輸送するためのトランスロケーションドメインに共有結合される。細菌神経毒素由来のトランスロケーションドメインの例は以下のとおりである:
ボツリヌス菌A型神経毒素−アミノ酸残基(449−871)
ボツリヌス菌B型神経毒素−アミノ酸残基(441−858)
ボツリヌス菌C型神経毒素−アミノ酸残基(442−866)
ボツリヌス菌D型神経毒素−アミノ酸残基(446−862)
ボツリヌス菌E型神経毒素−アミノ酸残基(423−845)
ボツリヌス菌F型神経毒素−アミノ酸残基(440−864)
ボツリヌス菌G型神経毒素−アミノ酸残基(442−863)
破傷風菌神経毒素 −アミノ酸残基(458−879)
他のクロストリジウム菌ソースとしては、C. butyricumおよびC. argentinenseが挙げられる[Clostridium botulinumおよびC. tetaniにおける毒素産生の遺伝学的根拠については、Hendersonら, (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressを参照のこと]。
【0056】
クロストリジウム菌ソース由来の上記トランスロケーションドメインの他に、他の非クロストリジウム菌ソースが、本発明の薬剤に用いられ得る。これらとしては、例えば、ジフテリア菌毒素[London, E., (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナスエキソトキシンA[Priorら, (1992) Biochem., 31, 3555-3559頁]、インフルエンザウイルス赤血球凝集素融合性ペプチド[Wagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および両親媒性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]が挙げられる。
【0057】
使用において、本発明の薬剤のドメインは、互いに結合される。1つの実施態様では、2以上のドメインが、直接的に(例えば、共有結合によって)またはリンカー分子を介してのいずれかでともに連結され得る。本発明における使用に適切な結合技法は、十分に文献に記載されている:
Chemistry of protein conjugation and cross-linking., Wong, S.S.編, 1993, CRC Press Inc., Florida;および
Bioconjugate techniques, Hermanson, G.T.編, 1996, Academic Press, London, UK。
【0058】
2以上のドメインの直接結合は、現在、クロストリジウム菌神経毒素について、ならびにクロストリジウム菌神経毒素ドメインの本願出願人らの命名、すなわち、ドメインB(結合ドメインを含む)、ドメインT(トランスロケーションドメインを含む)、およびドメインE(プロテアーゼドメインを含む)について記載されているが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の1つの実施態様では、ドメインEおよびTは、還元条件下で等モル量で一緒に混合され、そして還元剤の不在下で生理学的食塩溶液(例えば、攪拌しながら、4℃で)に対して繰り返し透析することによって共有結合され得る。この段階で、WO94/21300の実施例6とは対照的に、E−T複合体は、ヨードアセタミドによってブロックされず、したがって、残留しているすべての遊離のSH基が保持される。
【0060】
次いで、ドメインBが、例えば、SPDPでの誘導体化、次いでその後の還元によって、改変される。この反応において、SPDPは、スペーサー分子としてドメインBに結合したままではないが、単にこの還元反応の効率を上昇させる。
【0061】
還元されたドメインBとE−T複合体とは、次いで、非還元条件下で(例えば、4℃で)混合されて、ジスルフィド結合したE−T−B「薬剤」を形成し得る。
【0062】
他の実施態様では、カップリングしたE−T複合体は、WO94/21300の実施例6に従って、調製され得、遊離のスルフヒドリル基をブロックするためのヨードアセタミドの添加を含む。しかし、E−T複合体は、さらに誘導体化されず、そして残留する化学物質は、アミノ酸側鎖(例えば、リジン、およびアルギニンアミノ酸)上の遊離のアミノ基(-NH2)を使用する。
【0063】
ドメインBは、カルボジイミド化学を使用して(例えば、EDCを使用して)誘導体化され得、アミノ酸側鎖(例えば、グルタミン酸、およびアスパラギン酸アミノ酸)上のカルボキシル基を活性化し、そしてE−T複合体は、誘導体化されたドメインBと混合され、共有結合した(アミド結合した)E−T−B複合体を生じる。
【0064】
このような薬剤の生成に適切な方法論は、例えば、以下のとおりである:
ドメインBを、MES緩衝液(0.1M MES、0.1M 塩化ナトリウム、pH5.0)に対して透析して、0.5mg/mlの最終濃度にした。EDAC(1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)を添加して、0.2mg/mlの最終濃度にし、そして室温にて30分間反応させた。過剰のEDACを、MES緩衝液で平衡化したPD-10カラム(Pharmacia)で脱塩することによって除去した。誘導体化したドメインBを、Millipore Biomax 10濃縮機を使用して(>2mg/mlまで)濃縮した。E−T複合体(1mg/ml)を4℃にて16時間混合し、そしてE−T−B複合体を、Superose 12 HR10/30カラム(Pharmacia)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって精製して、未反応のドメインBを除去した(カラム緩衝液:50mM リン酸ナトリウム pH6.5+20mM NaCl)。
【0065】
本発明の薬剤の種々のドメインの直接共有結合の代わりとして、適切なスペーサー分子が用いられ得る。リンカー分子という用語は、スペーサー分子と同義で使用される。スペーサー技法は、本出願前に容易に利用可能であった。
【0066】
例えば、1つの特定のカップリング薬剤(SPDP)は、WO94/21300の実施例6に記載されている(16頁3〜5行目を参照のこと)。実施例6において、SPDPは、E−T複合体に連結され、それによってリンカー分子を含むE−T複合体を提供する。この複合体は、次いで、ドメインBと反応し、これはリンカー分子を介してE−T複合体に結合する。この方法において、SPDPは、本発明の「薬剤」の異なるドメイン間に約6.8オングストロームのスペーシング領域を生じる。
【0067】
LC-SPDPとして知られるSPDPの改変体は、増大した鎖長を除いて、SPDPに関してすべて同一である。LC-SPDPは、これらのドメイン間に15.6オングストロームのスペーシングを生じる本発明の「薬剤」の2つのドメインを共有結合するために使用され得る。
【0068】
スペーサー分子の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(GGGGS)、Fabのエルボー領域 −[Anandら, (1991), J. Biol. Chem., 266, 21874-9を参照のこと];
(GGGGS) −[Brinkmannら, (1991), Proc. Natl. Acad. Sci., 88, 8616-20を参照のこと];
セルラーゼのドメイン間リンカー −[Takkinenら, (1991), Protein Eng, 4, 837-841を参照のこと];
PPPIEGR −[Kim, (1993), Protein Science, 2, 348-356を参照のこと];
コラーゲン様スペーサー −[Rock, (1992), Protein Engineering, 5巻, 6号, 583-591頁を参照のこと];および
トリプシン感受性ジフテリア菌毒素ペプチド −[O'Hare, (1990), FEBS, 273巻, 1,2号, 200-204頁を参照のこと]。
【0069】
本発明のさらなる実施態様では、構造E−X−T−X−Bを有する薬剤(ここで「X」は各ドメイン間のスペーサー分子である)は、例えば、以下のように調製され得る:
ドメインEを、SPDPで誘導体化するが、その後還元しない。これにより、SPDP誘導体化ドメインEを得る。
【0070】
ドメインTを、同様に調製するが、その後10mMジチオトレイトール(DTT)で還元する。QAEカラムからの溶出(WO94/21300の実施例6を参照のこと)後にドメインT調製物中に存在する10mM DTTは、PBSで平衡化したセファデックスG-25カラムにドメインTを通すことによって除去される。
【0071】
還元剤を含まないドメインTは、次いで、SPDP誘導体化ドメインEと、4℃にて攪拌しながら16時間混合される。E−T複合体は、遊離のドメインEからおよび遊離のドメインTから、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex G-150)によって単離される。その後、E−T複合体のSPDPでの再誘導体化については、WO94/21300の実施例6に記載と同じ手順が行われ得、そして続いてドメインB上の遊離のスルフヒドリルにカップリングされる。
【0072】
本発明の薬剤は、組換えにより調製され得る。
【0073】
1つの実施態様では、組換え薬剤の調製は、単一の遺伝子構築物中の選択されたTMおよびクロストリジウム菌神経毒素成分のコード配列のアレンジメントを含み得る。これらのコード配列は、それに続く転写および翻訳が両方のコード配列を通して連続的であり、そして融合タンパク質を生じるように、インフレームでアレンジされ得る。すべての構築物は、N末端メチオニンをコードする5'ATGコドンおよびC末端翻訳停止コドンを有する。
【0074】
したがって、クロストリジウム菌神経毒素の軽鎖(またはエンドペプチダーゼ活性を含む軽鎖のフラグメント)は、TMとの融合タンパク質として組換え発現され得る。このTMは、分泌の原因である関連の非神経細胞の細胞質にL鎖(またはそのフラグメント)のインターナリゼーションも引き起こし得る。発現した融合タンパク質はまた、1以上のスペーサー領域を含み得る。
【0075】
クロストリジウム菌神経毒素に基づく薬剤の場合、この薬剤を組換え産生するために、以下の情報が必要とされる:
(i)選択されたTMに関するDNA配列データ;
(ii)クロストリジウム菌神経毒素成分に関するDNA配列データ;および
(iii)(i)および(ii)を含む構築物の構築および発現を可能にするためのプロトコル。
【0076】
上記の基本情報(i)〜(iii)のすべては、容易に入手可能であるか、または従来の方法によって容易に決定可能であるかのいずれかである。例えば、WO98/07864およびWO99/17806は両方とも、本出願における使用に適切なクロストリジウム菌神経毒素の組換え技法を例示する。
【0077】
さらに、本発明の構築物の構築および発現のための方法は、以下の参考文献などからの情報を使用し得る:
Lorberboum-Galski, H., FitzGerald, D., Chaudhary, V., Adhya, S., Pastan, I., (1988). Cytotoxic activity of an interleukin 2-Pseudomonas exotoxin chimeric protein produced in Escherichia coli., Proc Natl Acad Sci USA, 85(6): 1922-6;
Murphy, J.R., (1988) Diphtheria-related peptide hormone gene fusions: a molecular genetic approach to chimeric toxin development. Cancer Treat Res; 37: 123-40;
Williams, D.P., Parker, K., Bacha, P., Bishai, W., Borowski, M., Genbauffe, F., Strom, T.B., Murphy, J.R., (1987). Diphtheria toxin receptor binding domain substitution with interleukin-2: genetic construction and properties of a diphtheria toxin-related interleukin-2 fusion protein., Protein Eng; 1(6): 493-8;
Arora, N., Williamson, L.C., Leppla, S.H., Halpern, J.L., (1994). Cytotoxic effects of a chimeric protein consisting of tetanus toxin light chain and anthrax toxin lethal factor in non-neuronal cells, J Biol Chem, 269(42): 26165-71;
Brinkmann, U., Reiter, Y., Jung, S.H., Lee, B., Pastan, I., (1993). A recombinant immunotoxin containing a disulphide-stabilized Fv fragment., Proc Natl Acad Sci USA; 90(16): 7538-42;および
O'Hare, M., Brown, A.N., Hussain, K., Gebhardt, A., Watson, G., Roberts, L.M., Vitetta, E.S., Thorpe, P.E., Lord, J.M., (1990). Cytotoxicity of a recombinant ricin-A-chain fusion protein containing a proteolytically-cleavable spacer sequence., FEBS Lett 10月29日; 273(1-2): 200-4。
【0078】
LおよびLH鎖に関する適切なクロストリジウム菌神経毒素配列情報は、例えば、Kurazono, H., (1992) J. Biol. Chem., 267巻, 21号, 14721-14729頁;およびPopoff, M.R.およびMarvaud, J.-C., (1999). The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins, 第2版, (Alouf, J.E., およびFreer, J.H.編), Academic Press, 174-201頁から得られ得る。
【0079】
同様に、適切なTM配列データは、当該技術分野で広く入手可能である。あるいは、任意の必要な配列データは、当業者に周知の技法によって得られ得る。
【0080】
例えば、TM成分をコードするDNAは、正確なコード領域についてcDNAライブラリーをスクリーニングし(例えば、公知の配列情報に基づく特異的なオリゴヌクレオチドを使用してライブラリーをプローブすることによって)、TM DNAを単離し、確認の目的でこのDNAを配列決定し、次いで選択した宿主において発現に適切な発現ベクター中に単離したDNAを配置することによって、ソース生物からクローニングされ得る。
【0081】
ライブラリーからの配列の単離の代わりとして、利用可能な配列情報を用いて、PCRでの使用に特異的なプライマーを調製し得、それによって、コード配列が、次いで、ソース材料から直接増幅され、そしてプライマーの適切な使用によって、発現ベクターに直接クローニングされ得る。
【0082】
コード配列の単離のための他の代わりの方法は、現存する配列情報を使用し、そしてDNA合成技法を用いて、改変を組み込んでいると思われるコピーを合成することである。例えば、DNA配列データは、現存するタンパク質および/またはRNA配列情報から生成され得る。DNA合成技法を用いてこのようにすること(および上記の代替)は、選択した発現宿主に最適であるように改変されたコード配列のコドンバイアスを可能にする。これは、融合タンパク質の優れた発現レベルを生じる。
【0083】
発現宿主に対するコドンバイアスの最適化は、構築物のTMおよびクロストリジウム菌成分をコードするDNA配列に適用され得る。コドンバイアスの最適化は、自由に利用可能なDNA/タンパク質データベースソフトウエア、例えば、Genetics Computer Group, Inc.から入手可能なプログラムへのタンパク質配列の適用によって可能である。
【0084】
本発明のさらなる局面によれば、クロストリジウム菌神経毒素の軽鎖(またはエンドペプチダーゼ活性を含む軽鎖のフラグメント)をコードする核酸は、TMと結合され得る。このTMは、分泌の原因である関連の非神経細胞の細胞質へのL鎖(またはそのフラグメント)をコードする核酸のインターナリゼーションも引き起こし得る。核酸配列は、トランスロケーションドメインに、および必要に応じてターゲティング部分に、例えば、直接共有結合によってまたはスペーサー分子技法を介してカップリングされ得る。理想的には、コード配列は、ターゲット細胞で発現される。
【0085】
したがって、本発明の薬剤は、薬剤の好ましい作用部位に独立して送達される組換え遺伝子の発現産物であり得る。遺伝子送達技法は、文献に広く報告されている[「Advanced Drug Delivery Reviews」27巻, (1997), Elsevier Science Ireland Ltdに総説されている]。
【0086】
他の局面によれば、本発明は、したがって、哺乳動物、例えば、ヒトにおいて核酸での治療が可能な症状また疾患を治療する方法を提供し、これは、本発明の化合物の有効な非毒性量を罹患者に投与する工程を含む。核酸での治療が可能な症状または疾患は、例えば、遺伝子治療によって治療され得るまたは遺伝子治療を必要とする症状または疾患であり得る。本発明の治療が可能な好ましい症状または疾患は、好ましいTMとともに、本明細書に既に記載されている。同様に、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質(例えば、SNAP-25、シナプトブレビン、およびシンタキシン)を切断する好ましい第1のドメインは、本明細書に既に記載されている。遺伝子治療における使用のための薬剤の種々のドメインは、例えば、本明細書に既に記載されているように、直接的に結合(例えば、共有結合を介して)または間接的に結合(例えば、スペーサー分子を介して)され得る。
【0087】
本発明はさらに、活性な治療物質としての使用のための、特に、本明細書の特許請求の範囲に記載のような症状または疾患の治療での使用のための、本発明の化合物を提供する。
【0088】
本発明はさらに、本発明の薬剤または結合体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物を提供する。
【0089】
使用において、薬剤または結合体は、通常は、ヒトの薬学的キャリア、希釈剤および/または賦形剤とともに薬学的組成物の形態で用いられるが、組成物の正確な形態は、投与の態様に依存する。
【0090】
結合体は、例えば、吸入用のエアロゾルまたは噴霧可能な溶液、あるいは非経口投与、関節内投与、もしくは頭蓋内投与用の滅菌溶液の形態で用いられ得る。
【0091】
内分泌腺ターゲットを治療するためには、静脈内注射、腺への直接注射、または肺送達のためのエアロゾル化が好ましく;炎症性細胞ターゲットを治療するためには、静脈内注射、皮下注射、または表面パッチ投与が好ましく;外分泌腺ターゲットを治療するためには、静脈内注射、または腺への直接注射が好ましく;免疫学的ターゲットを治療するためには、静脈内注射、または、特定の組織、例えば、胸腺、骨髄、もしくはリンパ組織への注射が好ましく;心臓血管ターゲットの治療については、静脈内注射が好ましく;そして骨ターゲットの治療については、静脈内注射、または直接注射が好ましい。静脈内注射の場合、これはまた、ポンプシステムの使用が含まれるべきである。
【0092】
本発明の化合物の投与のための用量範囲は、所望の治療効果を生じる範囲である。必要とされる用量範囲は、結合体の正確な性質、投与経路、処方物の性質、患者の年齢、患者の症状の性質、程度、または重篤度、配合禁忌、および、もしあれば、主治医の判断に依存する。
【0093】
適切な日用量は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲である。単位投与量は、1マイクログラム未満から30mgまで変化し得るが、代表的には、1回投与量当たり0.01〜1mgの領域であり、毎日またはそれ以下の頻度で、例えば、毎週または6ヶ月毎に投与され得る。
【0094】
しかし、必要とされる投与量が広く変動することは、結合体の正確な性質、および種々の投与経路によって異なる効率に依存して、予測されるべきである。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも高い投与量を必要とすることが予測される。
【0095】
これらの投与量レベルの変動は、当該技術分野で十分に理解されているように、最適化の標準的な実験的ルーチンを使用して調節され得る。
【0096】
注射に適切な組成物は、溶液、懸濁液もしくは乳化液、または使用前に適切なベヒクルに溶解または懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0097】
液体単位投与形態は、代表的には、発熱性物質を含まない滅菌ベヒクルを利用して調製される。使用されるベヒクルおよび濃度に依存して、活性成分は、ベヒクルに溶解または懸濁のいずれかがなされ得る。
【0098】
溶液は、非経口投与のすべての形態に使用され得、そして特に、静脈内注射に使用される。溶液の調製において、化合物は、ベヒクルに溶解され得、溶液は、必要ならば、塩化ナトリウムの添加によって等張にされ、そして無菌技法を使用して滅菌フィルターによる濾過によって滅菌し、適切な滅菌バイアルまたはアンプルに充填して密封する。あるいは、溶液安定性が適切ならば、密封容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0099】
緩衝化剤、溶解剤、安定化剤、保存剤または殺菌剤、懸濁化または乳化剤、および/または局所麻酔剤のような好都合な添加剤は、ベヒクルに溶解され得る。
【0100】
使用前に適切なベヒクルに溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌領域で無菌技法を用いて、予め滅菌した薬物物質および他の成分を滅菌容器中に充填することによって調製され得る。
【0101】
あるいは、薬剤および他の成分は、水性ベヒクルに溶解され得、溶液は、濾過によって滅菌され、そして滅菌領域で無菌技法を用いて適切な容器に分配される。次いで、産物を凍結乾燥し、そして容器は無菌的に密封される。
【0102】
筋肉内、皮下、または皮内注射に適切な非経口懸濁液は、滅菌化合物が溶解される代わりに滅菌ベヒクルに懸濁され、そして滅菌が濾過によって行われ得ないこと以外は、実質的に同様に調製される。化合物は、滅菌状態で単離され得、あるいは、例えば、γ線照射によって単離後に滅菌され得る。
【0103】
有利には、懸濁化剤、例えば、ポリビニルピロリドンは、化合物の均一な分布を容易にするために、組成物に含まれる。
【0104】
気道を介する投与に適切な組成物としては、エアロゾル、噴霧可能な溶液、または吸入のための微細粉末が挙げられる。後者では、50ミクロン未満、特に10ミクロン未満の粒子サイズが好ましい。このような組成物は、従来の方法で作成され、そして従来の投与デバイスとともに用いられ得る。
【0105】
本発明に記載の薬剤は、化学的メッセンジャー由来の内分泌細胞の過剰分泌、外分泌細胞からの過剰分泌、免疫系の細胞、心臓血管系、および骨細胞からの分泌のような、非神経細胞からの分泌に関連する症状の治療については、直接的または薬学的に受容可能な塩としてのいずれかでインビボで使用され得る。
【0106】
本発明は、添付の図面によって例示される以下の実施例を参照して記載される。
【0107】
図5〜9を、ここでより詳細に記載する。
【0108】
図5については、MBP-LHN/Bを、実施例4に記載のようにE. coliで発現させた。レーン1は、E. coliにおいて発現した融合タンパク質のプロファイルを示す。レーン2は、粗E. coliライセートにおいて発現した融合タンパク質のプロファイルを示す。レーン3は、固定化アミロースによる精製後のMBP-LHN/Bのプロファイルを示す。kDaでの分子量を、図の右側に示す。
【0109】
図6については、recLHN/B(実施例4に記載のように調製した)およびBoNT/Bの希釈物を、インビトロペプチド切断アッセイで比較した。データは、組換え産物が天然のままの神経毒素と類似の触媒活性を有することを示す。これは、組換え産物が、活性コンホメーションに正確にフォールディングされたことを示す。
【0110】
図7については、細胞を、500nMのBoNT/Bを含むまたは含まないpH4.7培地に2.5時間曝露し(コントロール細胞は、pH7.4培地を与えた)、次いで洗浄した。24時間後、vWFの放出を、1mM ヒスタミンを用いて刺激し、そして示された結果は、ベースが差し引かれた正味の刺激による放出である。結果は、vWFのmIU/mlで示す。そして2回の測定であるpH4.7単独以外は、3回の測定の平均±SEMである。pH4.7+BoNT/Bは、pH7.4のコントロールと比較してvWF放出が27.4%減少していた。
【0111】
図8については、高分子量ムチンを合成する結腸癌腫LS180細胞を、pH4.7培地および500nMボツリヌス菌神経毒素B型(BoNT/B)を含むpH4.7培地で4時間処理し、次いで[H]-グルコサミンで18時間標識した。高分子量材料の放出を、10μMイオノマイシンで刺激し、そして[H]-グルコサミン標識した材料を超遠心分離および遠心分子量篩によって回収した。放出された標識した高分子量材料の放射標識を、シンチレーションカウントによって測定し、そして正味の刺激による放出を、非刺激のベースの値を差し引くことによって算出した。データを、3回の測定における1分あたりの壊変(dpm)±SEMとして表す。BoNT/B同時処理は、これらのムチン合成細胞からの高分子量材料の放出を明らかに阻害し、そしてこの実験において、74.5%の減少が見られた。
【0112】
図9については、細胞を、500nMのBoNT/Bを含むまたは含まないpH4.8培地に2.5時間曝露し(コントロール細胞は、pH7.4培地を与えた)、次いで洗浄し、そして300μMジブチリルサイクリックAMP(dbcAMP)の添加によって40時間分化させた。細胞を、サイトカラシンB(5μM)の存在下でfMet-Leu-Phe(1μM)+ATP(100μM)で10分間刺激し、そして放出されたβ-グルクロニダーゼを比色アッセイによって測定した。正味の刺激による放出を、刺激された値から非刺激のベースの放出値を差し引くことによって算出し、そして放出された活性を、細胞に存在する総活性の百分率として表す。データは、3回の測定の平均±SEMである。低pH培地でのBoNT/B処理は、低pHのみで処理した細胞と比較して、β-グルクロニダーゼの刺激による放出を顕著に阻害した(不均等分散の群での2テイルスチューデントT検定にかけた場合、p=0.0315)。
【実施例】
【0113】
実施例1
Triticum vulgaris由来のレクチンとLHN/Aとの結合体の生成
材料
Triticum vulgaris由来のレクチン(小麦胚芽アグルチニン−WGA)をSigma Ltd.から得た。
SPDPを、Pierce Chemical Co.から得た。
PD-10脱塩カラムをPharmaciaから得た。
ジメチルスルホキシド(DMSO)をモレキュラーシーブ上で保存して無水に保った。
変性ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、Novexからのゲルおよび試薬を用いて行った。
他の試薬を、Sigma Ltd.から得た。
【0114】
LHN/Aを、既知の方法(Shone, C.C.およびTranter, H.S., (1995) 「Clostridial Neurotoxins - The molecular pathogenesis of tetanus and botulism」(Montecucco, C.編), 152-160頁, Springer)に従って調製した。FPLC(登録商標)クロマトグラフィー培地およびカラムを、Amersham Pharmacia Biotech, UKから得た。Affi-gel HzTMマトリクスおよび材料を、BioRad, UKから得た。
【0115】
抗BoNT/A抗体アフィニティーカラムの調製
抗体アフィニティーカラムを、本質的には製造業者のプロトコルに示唆されるように、特異的なモノクローナル抗体を用いて調製した。簡単にいえば、Hドメインに異なるエピトープ認識部位を有するモノクローナル抗体5BA2.3および5BA9.3(Hallis, B., Fooks, S., Shone, C.およびHambleton, P., (1993)「Botulinum and Tetanus Neurotoxins」(DasGupta, B.R.編), 433-436頁, Plenum Press, New York)を、プロテインG(Amersham Pharmacia Biotech)クロマトグラフィーによってマウスハイブリドーマ組織培養物上清から精製した。これらの抗体は、BoNT/A H特異的結合分子のソースを示し、そしてマトリクスに固定され得るかまたはBoNT/Aを結合するように溶液中で遊離の状態で使用され得る。部分精製したLHN/A(Hドメインを有さない)の存在下で、これらの抗体は、BoNT/Aにのみ結合する。抗体5BA2.3および5BA9.3を、3:1の比でプールし、そして2mgのプールした抗体を、過ヨウ素酸ナトリウム(0.2%の最終濃度)の添加によって酸化して、1mlのAffi-gel HzTMゲルにカップリングした(室温にて16時間)。カップリング効率は、ルーチンで65%より大きかった。マトリクスを0.02%アジ化ナトリウムの存在下で4℃にて保存した。
【0116】
純粋なLHN/Aの調製のための精製方法
BoNT/Aを、1mgのBoNT/A当たり17μgのトリプシンで72〜120時間処理した。この時間の後、SDS-PAGEおよびクーマシーブルー染色によって150kDaの材料は観察されなかった。トリプシン処理した試料を、Mono Q(登録商標)カラム(HR5/5)でクロマトグラフ(FPLC(登録商標)システム、Amersham Pharmacia Biotech)を行って、トリプシンを除去し、そしてLHN/Aから大多数のBoNT/Aを分離した。粗試料を、20mM HEPES、50mM NaCl中pH7でカラムにロードし、そして2mlのLHN/A画分を、50mMから150mMまでのNaClグラジエントで溶出した。LHN/A(5.2)に対してわずかに大きいpIのBoNT/A(6.3)は、トリプシン処理後に残留するBoNT/Aを、LHN/Aよりも低い塩濃度で陰イオン交換カラムから溶出させることを促進した。LHN/A含有画分(SDS-PAGEによって同定した)を、抗体カラムへの適用のためにプールした。
【0117】
半精製したLHN/A混合物をアプライし、そして20℃にて1〜2mlの固定化したモノクローナル抗体マトリクスに少なくとも3回再アプライした。固定化抗体と合計3時間接触させた後、LHN/A富化した上清を取り出した。BoNT/A夾雑物の捕捉は、LHN/Aを特異的に結合するよりもむしろ、LH安定性が最適に維持される溶出条件を可能にする。したがって、厳しい溶出条件、例えば、LHポリペプチドフォールディングおよび酵素活性に有害な影響を有し得る低pH、高塩、カオトロピックイオンの使用を避ける。0.2Mグリシン/HCl pH2.5での固定化抗体カラムの処理により、カラムを再生し、そして150kDaのBoNT/A反応性タンパク質を溶出した。
【0118】
LHN/A富化した試料を、次いで、20℃にて1ml HiTrap(登録商標)プロテインGカラム(Amersham Pharmacia Biotech)に2回アプライした。マウスモノクローナル抗体に対して高い親和性を有するので、プロテインGを選択した。この工程は、免疫カラムから溶脱され得るBoNT/A−抗体複合体を除去することを含んでいた。抗体種は、本質的には、Shone, C.C., Hambleton, P., およびMelling, J., 1987, Eur. J. Biochem., 167, 175-180の方法によってならびにPCT/GB00/03519に記載のように、プロテインGマトリクスに結合し、精製したLHN/Aを溶出させる。
【0119】
方法
凍結乾燥したレクチンを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で再水和して10mg/mlの最終濃度にした。この溶液のアリコートを、使用まで−20℃で保存した。
【0120】
WGAを、DMSO中の10mM SPDPストック溶液の添加によって混合しながら、等濃度のSPDPと反応させた。室温にて1時間後、反応を、PD-10カラムでPBS中に脱塩することによって停止した。
【0121】
チオピリドン脱離基を、産物から除去して、ジチオトレイトール(DTT;5mM;30分)での還元によって遊離のSH基を放出した。チオピリドンおよびDTTを、もう1度PD-10カラムでPBS中に脱塩することによって除去した。
【0122】
LHN/AをPBSE(1mM EDTAを含むPBS)中に脱塩した。得られた溶液(0.5〜1.0mg/ml)を、DMSO中の10mM SPDPストック溶液の添加によって、4倍モル過剰のSPDPと反応させた。室温にて3時間後、反応を、PD-10カラムでPBSE中に脱塩することによって停止した。
【0123】
誘導体化したLHN/Aの一部を溶液から取り出し、そしてDTT(5mM、30分)で還元した。この試料を、280nmおよび343nmで分光学的に分析して、誘導体化の程度を測定した。達成した誘導体化の程度は、3.53±0.59mol/molであった。
【0124】
誘導体化したLHN/Aのバルクおよび誘導体化したWGAを、WGAが3倍モル過剰以上であるような割合で混合した。結合反応を、4℃にて16時間以上行った。
【0125】
得られた混合物を、遠心分離して、析出した沈殿物を澄明にした。上清を濃縮機(10000分子量排除限界を有する)による遠心分離によって濃縮して、FPLCクロマトグラフィーシステム(Pharmacia)においてSuperose 12カラムにアプライした。カラムをPBSで溶出し、そして溶出プロファイルを280nmで追跡した。
【0126】
画分を、4〜20%ポリアクリルアミドグラジエントゲルでのSDS-PAGEによって、次いでクーマシーブルーで染色して、分析した。主要な結合産物は、106〜150kDaの間の見かけの分子量を有し、これらは、残留している非結合LHN/Aのバルクと分離され、そして非結合WGAとはより完全に分離される。結合体を含む画分をプールして、PBSで洗浄したN-アセチルグルコサミン−アガロースに添加した。レクチン含有タンパク質(すなわち、WGA−LHN/A結合体)は、夾雑物(主として非結合LHN/A)を除去するためのPBSでの洗浄中、アガロースに結合したままであった。WGA−LHN/A結合体を、0.3M N-アセチルグルコサミン(PBS中)の添加によってカラムから溶出し、そして溶出プロファイルを280nmで追跡した。全精製スキームのSDS-PAGEプロファイルについての図1を参照のこと。
【0127】
結合体を含む画分をプールし、PBSに対して透析し、そして使用するまで4℃にて保存した。
【0128】
実施例2
培養した内分泌細胞(HIT-T15)におけるWGA−LHN/Aの活性
ハムスター膵臓B細胞株HIT-T15は、内分泌起源の細胞株の一例である。したがって、薬剤の放出効果の阻害の研究のためのモデル細胞株を表す。HIT-T15細胞は、WGA−LHN/Aの結合およびインターナリゼーションを可能にする表面部分を有する。
【0129】
対照的に、HIT-T15細胞は、クロストリジウム菌神経毒素に適切なレセプターがなく、したがってボツリヌス菌神経毒素(BoNT)に感受性ではない。
【0130】
図2は、WGA−LHN/Aとのインキュベーション前後のHIT-T15細胞からのインスリンの放出の阻害を示す。用量依存的な阻害が観察されることが明らかであり、WGA−LHN/Aが、内分泌細胞モデルからのインスリンの放出を阻害し得ることを示す。
【0131】
インスリン放出の阻害が、SNAREタンパク質であるSNAP-25の切断と相関することを示した(図3)。したがって、化学的メッセンジャーの放出の阻害は、SNAREタンパク質切断のクロストリジウム菌エンドペプチダーゼ媒介効果によるものである。
【0132】
材料
インスリンラジオイムノアッセイキットを、Linco Research Inc., USAから得た。
ウエスタンブロッティング試薬を、Novexから得た。
【0133】
方法
HIT-T15細胞を、12ウェルプレート上に播種し、そして5%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミンを含むRPMI-1640培地中で5日間培養して使用した。WGA−LHN/Aを加えて、氷上に4時間置き、細胞を洗浄して非結合WGA−LHN/Aを除去し、そしてインスリンの放出を16時間後にアッセイした。HIT-T15細胞からのインスリンの放出を、製造業者の指示書に示されるように正確に、ラジオイムノアッセイによって評価した。
【0134】
細胞を、2M酢酸/0.1%TFA中で溶解した。ライセートを乾燥し、次いで0.1M Hepes、pH7.0に再懸濁した。膜タンパク質を抽出するために、Triton-X-114(10%v/v)を加え、そして4℃にて60分間インキュベートした。不溶材料を遠心分離によって除去し、そして上清を30分間で37℃まで温めた。生じた2相を遠心分離によって分離し、そして上相を捨てた。下相のタンパク質を、クロロホルム/メタノールで沈殿させて、ウエスタンブロッティングによって分析した。
【0135】
試料を、SDS-PAGEにより分離し、そしてニトロセルロースに移した。次いで、神経分泌プロセスの重要な成分であるSNAP-25、およびBoNT/Aの亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性についての基質のタンパク質分解を、SNAP-25の未処理および切断の両方の形態を認識する抗体(SMI-81)とのプロービングによって検出した。
【0136】
実施例3
培養した神経内分泌細胞(PC12)におけるWGA−LHN/Aの活性
ラットクロム親和性細胞腫PC12細胞株は、神経内分泌起源の細胞株の一例である。その未分化形態において、副腎クロム親和性細胞と結合する特性を有する[GreeneおよびTischler, 「Advances in Cellular Neurobiology」(FederoffおよびHertz編), 3巻, 373-414頁, Academic Press, New York, 1982]。したがって、薬剤の放出効果の阻害の研究のためのモデル細胞株を表す。PC12細胞は、WGA−LHN/Aの結合およびインターナリゼーションを可能にする表面部分を有する。図4は、WGA−LHN/Aとのインキュベーション前後のPC12細胞からのノルアドレナリンの放出の阻害を示す。用量依存的な阻害が観察されることが明らかであり、WGA−LHN/Aが、非神経内分泌細胞モデルからのホルモンの放出を阻害し得ることを示す。結合体および非ターゲティングLHN/Aで観察される阻害効果の比較は、伝達物質放出の効率的な阻害についてのターゲティング部分(TM)の必要性を証明する。
【0137】
方法
PC12細胞を、10%ウマ血清、5%ウシ胎児血清、1% L-グルタミンを含むRPMI-1640培地中で24ウェルプレート上で培養した。細胞を、ある濃度範囲のWGA−LHN/Aで3日間処理した。ノルアドレナリンの分泌を、 [H]-ノルアドレナリン(2μCi/ml、0.5ml/ウェル)で細胞を60分間標識することによって測定した。細胞を、15分毎に1時間洗浄し、次いで、5mM KClを含む平衡塩類溶液で5分間インキュベーションすることによってベース放出を測定した。分泌を、細胞外カリウム濃度を上昇させることによって(100mM KCl)5分間刺激した。ベースおよび刺激した注ぎかけ液(superfusate)の放射活性を、シンチレーションカウントによって測定した。分泌を、総取り込みの百分率として表し、そして刺激された分泌を、ベースを差し引くことによって算出した。分泌の阻害は用量依存的であり、IC50の実測値は0.63±0.15μg/ml(n=3)であった。阻害は、非ターゲティングエンドペプチダーゼと比較した場合、より著しく強力であった(図4のLHN/A)。したがって、WGA−LHN/Aは、モデル神経内分泌細胞タイプからの神経伝達物質の放出を阻害する。
【0138】
実施例4
触媒的に活性な組換えLHN/Bの発現および精製
LHN/Bのコード領域を、発現ベクターpMAL(New England Biolabs)中のマルトース結合タンパク質(MBP)をコードする遺伝子の3'にインフレームで挿入した。この構築物において、発現したMBPおよびLHN/Bポリペプチドは、第Xa因子切断部位で分離される。
【0139】
E. coli TG1におけるMBP−LHN/Bの発現を、約0.8のOD600の増殖培養物にIPTGを添加して誘導した。発現を、誘導剤の存在下でさらに3時間維持し、遠心分離によって採取した。回収した細胞ペーストを、必要とされるまで−20℃にて保存した。
【0140】
細胞ペーストを、ペースト1グラム当たり6mlの緩衝液で再懸濁緩衝液(50mM Hepes pH7.5+150mM NaCl+種々のプロテアーゼインヒビター)に再懸濁した。この懸濁液に、1mg/mlの最終濃度になるまでリゾチームを加えた。0℃にて10分後、懸濁液を、0℃にて24μで6×30秒間超音波処理をした。次いで、破壊された細胞ペーストを、遠心分離して、細胞破砕物を除去し、そして上清を回収してクロマトグラフィーに付した。
【0141】
いくつかの状況では、細胞ペーストを、製造業者のプロトコルのとおりにBugBusterTM(Novagen)のような独自の破砕剤を使用することによって破砕した。これらの薬剤は、アフィニティークロマトグラフィー用の上清材料を提供するための細胞の破砕に十分であった。
【0142】
上清を、0.4ml/分で固定化アミロースマトリクスにアプライして、融合タンパク質の結合を容易にした。結合後、カラムを大量の再懸濁緩衝液で洗浄して、夾雑するタンパク質を除去した。結合したタンパク質を、溶出緩衝液(再懸濁緩衝液+10mMマルトース)の添加によって溶出し、そして画分を集めた。タンパク質を含む溶出した画分をプールし、第Xa因子での処理に用いた。
【0143】
いくつかの場合では、さらなる精製工程を、第Xa因子の添加前にスキームに組み込んだ。これらの場合では、溶出した画分を、5mM DTTにし、そしてFPLCシステムの一部としてPharmacia Mono-Q HR5/5カラム(再懸濁緩衝液で平衡化した)にアプライした。タンパク質を、150mM NaClでカラムに結合し、その後、グラジエントで500mM NaClまで上昇させた。画分を集め、そしてウエスタンブロッティング(プローブ抗体=モルモット抗BoNT/Bまたは市販の抗MBP)によってMBP−LHN/Bの存在について分析した。
【0144】
第Xa因子による融合タンパク質の切断は、製造業者(New England Biolabs)によって供給されたプロトコルに記載のとおりであった。融合タンパク質の切断により、MBP融合タグを除去し、そしてLHN/BのLCおよびHドメインを分離した。第2の固体化マルトースカラムに切断した混合物を通過させ、混合物から遊離のMBPを除去して、精製したジスルフィド結合したLHN/Bを得た。この材料を、結合に用いた。
【0145】
LHN/Bの精製の例示については図5を参照のこと。
LHN/Bのインビトロ触媒活性の例示については図6を参照のこと。
【0146】
実施例5
Triticum vulgaris由来のレクチンおよびLHN/Bの結合体の生成
材料
Triticum vulgaris由来のレクチン(WGA)をSigma Ltd.から得た。
LHN/Bを実施例4に記載のように調製した。
SPDPを、Pierce Chemical Co.から得た。
PD-10脱塩カラムをPharmaciaから得た。
ジメチルスルホキシド(DMSO)をモレキュラーシーブ上で保存して無水に保った。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、Novexからのゲルおよび試薬を用いて行った。
他の試薬を、Sigma Ltd.から得た。
【0147】
方法
凍結乾燥したレクチンを、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で再水和して10mg/mlの最終濃度にした。この溶液のアリコートを、使用まで−20℃で保存した。
【0148】
WGAを、DMSO中の10mM SPDPストック溶液の添加によって混合しながら等濃度のSPDPと反応させた。室温にて1時間後、反応を、PD-10カラムでPBS中に脱塩することによって停止した。
【0149】
チオピリドン脱離基を、産物から除去して、ジチオトレイトール(DTT;5mM;30分)で還元して遊離のSH基を放出した。チオピリドンおよびDTTを、もう1度PD-10カラムでPBS中に脱塩することによって除去した。
【0150】
recLHN/BをPBS中に脱塩した。得られた溶液(0.5〜1.0mg/ml)を、DMSO中の10mM SPDPストック溶液の添加によって、4倍モル過剰のSPDPと反応させた。室温にて3時間後、反応を、PD-10カラムでPBS中に脱塩することによって停止した。
【0151】
誘導体化したrecLHN/Bの一部を溶液から取り出し、そしてDTT(5mM、30分)で還元した。この試料を、280nmおよび343nmで分光学的に分析して、誘導体化の程度を測定した。
【0152】
誘導体化したrecLHN/Bのバルクおよび誘導体化したWGAを、WGAが3倍モル過剰以上であるような割合で混合した。結合反応を、4℃にて16時間以上行った。
【0153】
得られた混合物を、遠心分離して、析出した沈殿物を除いた。上清を濃縮機(10000分子量排除限界を有する)による遠心分離によって濃縮して、FPLCクロマトグラフィーシステム(Pharmacia)においてSephadex G-200カラムにアプライした。カラムをPBSで溶出し、そして溶出プロファイルを280nmで追跡した。
【0154】
画分を、4〜20%ポリアクリルアミドグラジエントゲルでのSDS-PAGEによって、次いでクーマシーブルーで染色して、分析した。主要な結合体産物は、106〜150kDaの間の見かけの分子量を有し、これらは、残留している非結合recLHN/Bのバルクと分離され、そして非結合WGAとはより完全に分離される。結合体を含む画分をプールして、PBSで洗浄したN-アセチルグルコサミン−アガロースに添加した。レクチン含有タンパク質(すなわち、WGA−recLHN/B結合体)は、夾雑物(主として非結合recLHN/B)を除去するためのPBSでの洗浄中アガロースに結合したままであった。WGA−recLHN/B結合体を、0.3M N-アセチルグルコサミン(PBS中)の添加によってカラムから溶出し、そして溶出プロファイルを280nmで追跡した。
【0155】
結合体を含む画分をプールし、PBSに対して透析し、そして使用するまで4℃にて保存した。
【0156】
実施例6
血管内皮細胞におけるBoNT/Bの活性
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、ヒスタミンを含む種々の細胞表面レセプターアゴニストで刺激された場合、フォン・ビルブラント因子(vWF)を分泌する。これらの細胞は、臨月の臍帯から調製されそして培養物中で増殖する場合に、この特性を維持する(Loesbergら, 1983, Biochim. Biophys. Acta., 763, 160-168)。したがって、HUVECによるvWFの放出は、心臓血管系由来の非神経細胞タイプの分泌活性を示す。図7は、低pH培地中のBoNT/Bで予め処理した場合の、HUVECによるvWFのヒスタミン刺激された放出の阻害を示す。低pH中の毒素での細胞の処理は、外因的に適用されたクロストリジウム菌神経毒素に抵抗性の細胞の原形質膜の毒素浸透を容易にするための技法として使用され得る。
【0157】
この結果は、ボツリヌス菌神経毒素が心臓血管系において非神経細胞の分泌活性を阻害する能力を明らかに示す(図7を参照のこと)。
【0158】
方法
HUVECを、Jaffeら, 1973, J. Clin. Invest., 52, 2745-2756の方法によって調製した。細胞を、10%ウシ胎児血清、10%ウシ新生児血清、5mM L-グルタミン、100ユニット/ml ペニシリン、100ユニット/ml ストレプトマイシン、20μg/ml 内皮細胞増殖因子(Sigma)を補充した培地199中で24ウェルプレート上に1回継代した。細胞を、DMEM pH7.4、DMEM pH4.7(pHをHClで低下させた)、または500nM BoNT/Bを含むDMEM pH4.7で2.5時間処理し、次いでHUVEC培地で3回洗浄した。24時間後、細胞を、平衡塩類溶液、pH7.4で洗浄し、そしてベースの放出を確立するために30分間この溶液に曝露した。これを取り出し、そして1mMヒスタミンを含むBSSをさらに30分間アプライした。注ぎかけ液を遠心分離して脱離した細胞を取り除き、そしてPaleologら, 1990, Blood., 75, 688-695に記載されるように、ELISAアッセイを用いてvWFの量を測定した。次いで、刺激した分泌を、ヒスタミン刺激した放出からベースを差し引くことによって算出した。pH4.7でのBoNT/B処理による阻害を、pH4.7処理のみと比較した場合に、27.4%と算出した。
【0159】
実施例7
粘液分泌細胞におけるBoNT/Bの活性
LS180結腸癌腫細胞株は、ムチン分泌細胞のモデルとして認識されている(McCool, D.J., Forstner, J.F., およびForstner, G.G., 1994, Biochem. J., 302, 111-118)。これらの細胞は、杯状細胞形態学に適合しそしてムスカリンアゴニスト(例えば、カルバコール)、ホルボールエステル(PMA)、およびCa2+イオノフォア(例えば、A23187)で刺激された場合に高分子量ムチンを放出することが示されている(McCool, D.J., Forstner, J.F., およびForstner, G.G., 1995, Biochem. J., 312, 125-133)。したがって、これらの細胞は、調節されたムチン分泌を行い得る結腸由来の非神経細胞タイプを示す。図8は、低pH培地においてBoNT/Bで予め処理することによる、LS180細胞からの高分子量の[H]-グルコサミン標識した材料のイオノマイシン刺激された放出の阻害を示す。イオノマイシンは、Ca2+イオノフォアであり、そして低pH培地での細胞の処理は、細胞への毒素侵入を容易にすることが既に示されている。
【0160】
この結果は、分泌促進物質で刺激した場合に、ボツリヌス菌神経毒素が、ムチンを放出し得る非神経細胞の分泌活性を阻害する能力を明らかに示す(図8を参照のこと)。
【0161】
方法
ムチン合成性結腸癌腫LS180細胞を、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、および1%非必須アミノ酸(Sigma)を補充した最少必須培地中、Matrigelコーティングした24ウェルプレートで増殖した。細胞を、pH7.4培地、pH4.7培地、および500nM ボツリヌス菌神経毒素B型(BoNT/B)を含むpH4.7培地で4時間処理し、次いでL15無グルコース培地中18時間、[H]-グルコサミン(1μCi/ml、0.5ml/ウェル)で標識した。次いで、細胞を平衡塩類溶液(BSS)pH7.4で2回洗浄し、次いで0.5mlのBSSを、30分間アプライした。この材料を取り出し、そして10μMイオノマイシンを含む0.5mlのBSSをアプライして、ムチン放出を刺激した。刺激溶液を取り出し、そしてすべての注ぎかけ液を遠心分離して脱離した細胞を除去した。次いで、上清を、100,000×gで1時間遠心分離した。上清を、100kDaの分子量カットオフを有するCentricon遠心濃縮機にアプライし、そしてすべての液体が膜を通過するまで遠心分離した(2,500×g)。膜を、3回の遠心分離によってBSSで洗浄し、次いで、残った[H]-グルコサミン標識した高分子量材料について膜をシンチレーションカウントした。
【0162】
実施例8
炎症性細胞におけるBoNT/Bの活性
前骨髄球細胞株HL60は、培養培地へのジブチリルサイクリックAMPの添加によって、好中球様細胞に分化され得る。分化の際、これらの細胞は、β-グルクロニダーゼのような特徴的な酵素の発現が増加する。したがって、この条件では、これらの細胞は、ある疾患状態(例えば、慢性関節リウマチ)の炎症性応答に寄与する食細胞タイプのモデルを示す。図9は、低pH培地中でBoNT/Bで予め処理することによってdbcAMP分化したHL60細胞からのβ-グルクロニダーゼの刺激された放出の有意な(p>0.05)阻害を示す。
【0163】
この結果は、ボツリヌス菌神経毒素が、炎症に関与する細胞の好中球のモデルである非神経細胞タイプの分泌活性を阻害する能力を明らかに示す。
【0164】
方法
HL60細胞を、10%ウシ胎児血清および2mMグルタミンを含むRPMI1640培地中で培養した。細胞を、低pHおよび毒素に2.5時間曝露し、次いで3回洗浄し、そしてジブチリルサイクリックAMP(dbcAMP)を300μMの最終濃度まで添加することによって分化させた。細胞を、40時間分化させ、次いで刺激によるβ-グルクロニダーゼ活性の放出を測定した。細胞を、刺激の5分前にサイトカラシンB(5μM)で処理した。細胞を、100μM ATPを含む1μM N-ホルミル-Met-Leu-Pheで10分間刺激し、次いで遠心分離し、そして上清を、β-グルクロニダーゼ活性のアッセイにかけた。活性を、細胞ライセート中で測定し、そして放出した量を、酵素の総細胞含量の百分率として表した。
【0165】
β-グルクロニダーゼ活性を、基質としてp-ニトロフェニル-β-D-グルクロニドを用いてAbsolom D.R., 1986(Methods in Enzymology, 132, 160)の方法に従って測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内分泌細胞、外分泌細胞、免疫学的細胞、心臓血管系の細胞、および分泌により骨障害に至る細胞からなる群より選択される非神経細胞からの分泌の阻害における使用のための薬剤であって、該薬剤は第1、第2および第3のドメインを含み、該第1のドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、該第2のドメインが、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートし、そして該第3のドメインが、該薬剤を該非神経細胞にターゲティングする、薬剤。
【請求項2】
前記第3のドメインが、前記薬剤を内分泌細胞にターゲティングする、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項3】
前記第3のドメインが、ヨウ素、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、TSHレセプター抗体、島特異的モノシアロガングリオシドGM2-1に対する抗体、インスリン、インスリン様成長因子、ならびに両方のレセプターに対する抗体、TSH放出ホルモン(プロチレリン)およびそのレセプターに対する抗体、FSH/LH放出ホルモン(ゴナドレリン)およびそのレセプターに対する抗体、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)およびそのレセプターに対する抗体、ならびにACTHおよびそのレセプターに対する抗体から選択されるリガンドを含む、またはからなる、請求項1または2に記載の使用のための薬剤。
【請求項4】
内分泌細胞からの分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療のための、好ましくはMENを含む内分泌腺腫瘍、甲状腺亢進症および甲状腺からの過剰分泌に依存する他の疾患、先端巨大症、高プロラクチン血症、クッシング症、および下垂体前葉過剰分泌に依存する他の疾患、アンドロゲン過多症、慢性無排卵症、および多嚢胞性卵巣症候群に関連する他の疾患から選択される疾患の治療のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項5】
前記第3のドメインが、前記薬剤を外分泌細胞にターゲティングする、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項6】
前記第3のドメインが、下垂体アデニルシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP-38)およびそのレセプターに対する抗体から選択されるリガンドを含む、またはからなる、請求項1または5に記載の使用のための薬剤。
【請求項7】
外分泌細胞からの分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療のための、好ましくは急性膵臓炎の治療のための、または消化管の粘液分泌細胞からの、特に結腸の粘液分泌細胞からの粘液過剰分泌の治療のための、請求項1、5および6のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項8】
前記第3のドメインが、前記薬剤を免疫学的細胞にターゲティングする、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項9】
前記第3のドメインが、エプスタイン・バーウイルスのフラグメント/表面の特徴およびイディオタイプ抗体(Bリンパ球およびリンパ腺濾胞樹状細胞上のCR2レセプターに結合する)から選択されるリガンドを含む、またはからなる、請求項1または8に記載の使用のための薬剤。
【請求項10】
免疫学的細胞からの分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療のための、好ましくは重症筋無力症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、臓器移植、組織移植、体液移植、グレーブス病、甲状腺亢進症、自己免疫性糖尿病、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、好中球減少症、慢性自己免疫性肝炎、自己免疫性胃炎、悪性貧血、橋本甲状腺炎、アジソン病、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、多発性筋炎、硬皮症、全身性硬化症、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、心筋炎、リウマチ性心臓炎、糸球体腎炎(グッドパスチャー型)、ブドウ膜炎、精巣炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、萎縮性胃炎、悪性貧血、および1型真性糖尿病から選択される疾患の治療のための、請求項1、8および9のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項11】
前記第3のドメインが、前記薬剤を心臓血管系の細胞にターゲティングする、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項12】
前記第3のドメインが、血小板をターゲティングするためのリガンド、好ましくはトロンビンもしくはTRAP(トロンビンレセプターアゴニストペプチド)、またはCD31/PECAM-1、CD24、もしくはCD106/VCAM-1に対する抗体、そして心臓血管内皮細胞をターゲティングするためのリガンド、好ましくはGP1b表面抗原認識抗体から選択されるリガンドを含む、またはからなる、請求項1または11に記載の使用のための薬剤。
【請求項13】
心臓血管系の細胞からの分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療のための、好ましくは不適切な血小板活性化および/もしくは血栓形成に関連する疾患状態の治療のための、または高血圧症の治療のための、請求項1、11および12のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項14】
前記第3のドメインが、前記薬剤を分泌により骨障害に至り得る細胞にターゲティングする、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項15】
前記第3のドメインが、骨芽細胞をターゲティングするためのリガンド、好ましくはカルシトニン、および破骨細胞をターゲティングするためのリガンド、好ましくは破骨細胞分化因子(TRANCE、またはRANKLもしくはOPGL)、またはレセプターRANKに対する抗体からなる群より選択されるリガンドを含む、またはからなる、請求項1または14に記載の使用のための薬剤。
【請求項16】
分泌により骨障害に至り得る細胞からの分泌によって引き起こされる、悪化する、または維持される疾患の治療のための、好ましくは大理石骨病および骨粗鬆症から選択される疾患の治療のための、請求項1、14および15のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項17】
前記薬剤が、SNAP-25、シナプトブレビン、およびシンタキシンから選択されるタンパク質を切断する第1のドメインを含む、好ましくは該第1のドメインが、クロストリジウム菌神経毒素の軽鎖、またはエキソサイトーシスを阻害するそのフラグメント、改変体、もしくは誘導体を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項18】
前記第2のドメインが、クロストリジウム菌ポリペプチドのH領域、または前記第1のドメインのエキソサイトーシス阻害活性を前記細胞にトランスロケートするそのフラグメント、改変体、もしくは誘導体を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための薬剤。
【請求項19】
少なくとも第1、第2、および第3のドメインを含む、非神経細胞からの分泌を阻害するための薬剤であって、該第1のドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、該第2のドメインが、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートし、そして該第3のドメインが、内分泌細胞、外分泌細胞、免疫学的細胞、心臓血管系の細胞、または分泌により骨障害に至る細胞からなる群より選択される非神経細胞に結合する、薬剤。
【請求項20】
前記第3のドメインが、請求項3、6、9、12および15のいずれかに規定される、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
請求項19または20に記載の薬剤をコードする核酸構築物であって、該構築物が、前記第1、第2、および第3のドメインをコードする核酸配列を含む、核酸構築物。
【請求項22】
プロモーターおよびターミネーター配列ならびに必要に応じて調節配列を作動可能に連結し、該プロモーター、ターミネーター、および調節配列が、ターゲット細胞で前記薬剤を発現させるために該ターゲット細胞において機能的である、請求項21に記載の核酸構築物。
【請求項23】
エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断する第1のドメインをコードする核酸配列、該核酸配列に結合した第2のドメインであって、患者に投与後、非神経ターゲット細胞へ該核酸配列をトランスロケートし、そして該非神経ターゲット細胞において、該核酸配列の発現を引き起こす第2のドメイン、および前記薬剤を内分泌細胞、外分泌細胞、免疫学的細胞、心臓血管系の細胞、または分泌により骨障害に至る細胞からなる群より選択される非神経細胞にターゲティングするための第3のドメインを含む、遺伝子治療のための薬剤であって、該薬剤は第1、第2および第3のドメインを含み、該第1のドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、該第2のドメインが、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートし、そして該第3のドメインが、該薬剤を該非神経細胞にターゲティングする、薬剤。
【請求項24】
前記核酸配列が、プロモーターおよびターミネーター配列ならびに必要に応じて調節配列を作動可能に連結し、該プロモーター、ターミネーター、および調節配列が、前記非神経ターゲット細胞で前記薬剤を発現させるために該非神経ターゲット細胞において機能的である、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
内分泌細胞、外分泌細胞、免疫学的細胞、心臓血管系の細胞、または分泌により骨障害に至る細胞からなる群より選択される非神経細胞からの分泌の阻害における使用のための、請求項21もしくは22に記載の核酸構築物、または請求項23もしくは24に記載の薬剤であって、該薬剤は第1、第2および第3のドメインを含み、該第1のドメインが、エキソサイトーシスに必須の1以上のタンパク質を切断し、該第2のドメインが、該第1のドメインを該細胞にトランスロケートし、そして該第3のドメインが、該薬剤を該非神経細胞にターゲティングする、核酸構築物または薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−74091(P2011−74091A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7383(P2011−7383)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【分割の表示】特願2001−524636(P2001−524636)の分割
【原出願日】平成12年9月25日(2000.9.25)
【出願人】(509039046)シンタキシン リミテッド (7)
【Fターム(参考)】