説明

非空気圧タイヤ及びその製造方法

【課題】キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤであって、タイヤ幅方向の力により支持構造体とトレッド部が剥離することを防ぐことができる非空気圧タイヤ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤTであって、内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられた外側環状部3と、内側環状部1と外側環状部3とを連結する複数の連結部4,5とを有し、車両からの荷重を支持する支持構造体SSと、支持構造体SSの外周面に接合され、タイヤ幅方向に曲率を有するトレッド部6と、を備え、支持構造体SSの外周面とトレッド部6の内周面の一方に、タイヤ周方向に向かって延びる凸部30が設けられ、他方に、凸部30に嵌合する凹部60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能力はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を高めてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、耐久性、乗り心地、操縦安定性などの改良された非空気圧タイヤを提供する目的で、同心円状に配置された弾性材料からなる外周輪と内周輪とを有するとともに、それら両輪には弾性材料からなるスポーク材が連結されていて、対をなすスポーク材間に弾性材料からなる連結材が設けられた非空気圧タイヤが記載されている。また、この非空気圧タイヤの外周輪の外側にはトレッド部が設けられている。
【0006】
また、特許文献2には、リム部の外周にタイヤ部が設けられたソリッドタイヤであって、前記リム部の外周面と前記タイヤ部の内周面とは凸条及び凹条の関係により嵌合されるとともに前記凸条及び凹条が圧着されてなり、前記凸条及び凹条は前記リム部の軸線方向に沿って延びるように形成されているソリッドタイヤが記載されている。このソリッドタイヤは、凸条及び凹条がリム部の軸線方向に延びるように形成されているため、リム部の回転方向に沿った荷重に対して、抵抗力が働き、タイヤ部の保持力が高くなっているとともに、リム部とタイヤ部との分離が容易となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112243号公報
【特許文献2】特開2009−234361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のような非空気圧タイヤにおいて、車両からの荷重を支持する外周輪、内周輪、スポーク材などの支持構造体は、耐久性の観点から剛性が高い弾性材料から構成され、一方、トレッド部は、乗り心地の観点から剛性が低い弾性材料から構成されることが考えられる。すなわち、支持構造体とトレッド部は、それぞれ異なる材料で構成され、接合されることが考えられるが、その接合が不十分であると、両者が接合面で剥離してしまうおそれがある。また、特許文献2のようなソリッドタイヤは、凸条及び凹条がリム部の軸線方向に延びるように形成されているため、リム部の軸線方向(タイヤ幅方向)の力に対してはリム部とタイヤ部が剥離し易い。このようなタイヤ幅方向の力は、特にキャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられるタイヤにおいて、そのコーナリング時に発生し易い。
【0009】
そこで、本発明の目的は、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤであって、タイヤ幅方向の力により支持構造体とトレッド部が剥離することを防ぐことができる非空気圧タイヤ、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤであって、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを有し、車両からの荷重を支持する支持構造体と、前記支持構造体の外周面に接合され、タイヤ幅方向に曲率を有するトレッド部と、を備え、前記支持構造体の外周面と前記トレッド部の内周面の一方に、タイヤ周方向に向かって延びる凸部が設けられ、他方に、前記凸部に嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体と、支持構造体の外周面に接合されるトレッド部とを備えている。本発明の非空気圧タイヤは、支持構造体の外周面とトレッド部の内周面の一方に、タイヤ周方向に向かって延びる凸部が設けられ、他方に、凸部に嵌合する凹部が設けられているので、嵌合する凸部と凹部がタイヤ幅方向の力に対して抵抗となり、タイヤ幅方向の力により支持構造体とトレッド部が剥離することを防ぐことができる。本発明の非空気圧タイヤは、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられるが、コーナリング時に発生し易いタイヤ幅方向の力に対して凸部と凹部が有効に働き、本発明によれば、タイヤ幅方向の力により支持構造体とトレッド部が剥離することを防ぐことができる。
【0012】
なお、本発明において、タイヤ周方向に沿って延びる凸部は、タイヤ周方向の全周にわたり連続的に設けてもよいが、断続的に設けてもよい。また、タイヤ周方向とは、タイヤ周方向と平行な方向のみならず、タイヤ周方向から傾斜する方向も含むものである。また、凸部は、タイヤ幅方向に一つだけではなく、複数を並べて設けてもよい。
【0013】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記凸部は、前記支持構造体の外周面であって、タイヤ幅方向の中央部に一体成形されていることが好ましい。非空気圧タイヤに車両からの荷重が加わると、車軸と接地面との間での圧縮力により、支持構造体は変形しようとする。トレッド部がタイヤ幅方向に曲率を有する場合、支持構造体は、タイヤ幅方向の中央部で応力が特に集中するが、支持構造体は、凸部によってタイヤ幅方向中央部の剛性が高くなるため、変形が抑制される。
【0014】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記凸部の断面形状は、長方形、半円形、または三角形であることが好ましい。凸部の断面形状は、凹部と嵌合してタイヤ幅方向の力に対して抵抗することが出来る形状であればよいが、製造の容易さなどの観点から長方形、半円形、または三角形が好ましい。
【0015】
一方、本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とから構成される支持構造体と、前記支持構造体の外周面に接合され、タイヤ幅方向に曲率を有するトレッド部とを備える非空気圧タイヤの製造方法であって、前記トレッド部の内周面を成形するためのトレッド部内周型の外周面に、タイヤ周方向に沿ってスペーサーを貼り付け、前記トレッド部内周型の外側に、前記トレッド部の外周面を成形するためのトレッド部外周型を配置して前記トレッド部に相当するトレッド部用キャビティを形成する工程と、前記トレッド部用キャビティに前記トレッド部を構成する第1材料の原料液を供給して硬化させて前記トレッド部を成形する工程と、成形された前記トレッド部から前記トレッド部内周型および前記スペーサーを取り外す工程と、成形された前記トレッド部の内側に、前記内側環状部の内周面を成形するための中型と、前記内側環状部の外周面、前記外側環状部の内周面、および前記連結部を成形するための複数の中子とを配置して、前記内側環状部、前記外側環状部および前記連結部に相当する支持構造体用キャビティを形成する工程と、前記支持構造体用キャビティに前記支持構造体を構成する第2材料の原料液を供給して硬化させて前記支持構造体を成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、成形されたトレッド部からスペーサーを取り外すことで、トレッド部の内周面に、タイヤ周方向に向かって延びる凹部が形成される。この凹部が形成されたトレッド部と中子との隙間で外側環状部が成形されるので、支持構造体の外周面には、凹部と嵌合する凸部が形成されることとなる。これにより、上記のように、タイヤ幅方向の力により支持構造体とトレッド部が剥離することを防ぐことができる非空気圧タイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
【図2】本発明の非空気圧タイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【図3】図1の非空気圧タイヤを右から見た右側面図
【図4】キャンバー角αで傾いた非空気圧タイヤTを車両正面から見た図
【図5】非空気圧タイヤの製造方法の一例を示す断面図
【図6】本発明の製造方法に用いられる上型の平面図
【図7】別実施形態の非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図8】別実施形態の非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図9】外側環状部をタイヤ径方向から見た図
【図10】実施例及び比較例の非空気圧タイヤにおける縦荷重と変位の関係
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、本発明の非空気圧タイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。図3は、図1の非空気圧タイヤを右から見た右側面図の一部を示している。ここで、Oは軸芯を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0019】
本発明の非空気圧タイヤTは、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる。すなわち、車両がコーナリングする際、車両を正面から見ると、図4に示すように非空気圧タイヤTの上部は左右のどちらかにキャンバー角αで傾く。通常の自動車用タイヤのキャンバー角αは最大でも2度程度であるが、本発明の非空気圧タイヤTは、最大8度程度のキャンバーを付けてコーナリングする車両にも使用可能である。
【0020】
非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備えている。さらに、本発明の非空気圧タイヤTは、支持構造体SSの外周にトレッド部6を備えている。
【0021】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた中間環状部2と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部3と、内側環状部1と中間環状部2とを連結し周方向に各々が独立する複数の内側連結部4と、外側環状部3と中間環状部2とを連結し周方向に各々が独立する複数の外側連結部5とを備えている。この実施形態では、支持構造体SSが中間環状部2を備えているが、中間環状部2は必ずしも必要ではなく、中間環状部2を設けず、内側連結部4と外側連結部5とが連続し1本の連結部を構成してもよい。
【0022】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0023】
内側環状部1の厚みは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの6〜30%が好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0024】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定されるが、本発明では中間環状部2を備えるために、内側環状部1の内径をより小さくすることが可能である。内側環状部1の内径は、50〜560mmが好ましく、80〜200mmがより好ましい。
【0025】
内側環状部1の軸方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0026】
内側環状部1の引張モジュラスは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0027】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、及び外側連結部5は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0028】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが0.1〜100MPaであり、より好ましくは0.1〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0030】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0031】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものが使用可能である。
【0032】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、及び外側連結部5が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0033】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0034】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0035】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0036】
中間環状部2は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましいが、多角形筒状などでもよい。
【0037】
中間環状部2の厚みは、内側連結部4と外側連結部5とを十分補強しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜10%が好ましく、4〜9%がより好ましい。
【0038】
中間環状部2の内径は、内側環状部1の内径を超えて、外側環状部3の内径未満となる。但し、中間環状部2の内径としては、内側連結部4と外側連結部5との補強効果を向上させる観点から、外側環状部3の内径から内側環状部1の内径を差し引いた値の20〜80%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることが好ましく、30〜60%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることがより好ましい。
【0039】
中間環状部2の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0040】
中間環状部2の引張モジュラスは、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0041】
外側環状部3の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部3の厚みは、外側連結部5からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの2〜10%が好ましく、2〜9%がより好ましい。
【0042】
外側環状部3の内径は、その用途等応じて適宜決定されるが、本発明では中間環状部2を備えるために、外側環状部3の内径をより大きくすることが可能である。外側環状部3の外径は、100〜600mmが好ましく、120〜300mmがより好ましい。
【0043】
外側環状部3の軸方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0044】
外側環状部3の引張モジュラスは、外側連結部5からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0045】
外側環状部3の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。外側環状部3を補強繊維により補強することで、外側環状部3とトレッド部6などとの接着も十分となる。
【0046】
外側環状部3の外周面には、タイヤ周方向に向かって延びる凸部30が設けられている。この実施形態では、凸部30は、外側環状部3の全周にわたり連続的に設けられており、環状となっている。また、凸部30はタイヤ幅方向の中央部に一体成形されている。
【0047】
凸部30の断面形状は、長方形となっている。凸部30の幅は、タイヤ幅の10〜80%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。また、凸部30の高さは、トレッド厚みの10〜80%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。
【0048】
内側連結部4は、内側環状部1と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、周方向に各々が独立するように複数設けられる。内側連結部4は、ユニフォミティを向上させる観点から、周方向に規則的に設けることが好ましい。
【0049】
内側連結部4を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、20〜60個が好ましく、20〜50個がより好ましい。図1には、内側連結部4を30個設けた例を示す。
【0050】
個々の内側連結部4の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられるが、本実施形態では板状体の例を示す。これらの内側連結部4は、正面視断面において、タイヤ径方向又はタイヤ径方向から傾斜した方向に延びている。本発明では、ブレークポイントを高くして剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、内側連結部4の延設方向が、タイヤ径方向±30°以内が好ましく、タイヤ径方向±15°以内がより好ましい。図1では、内側連結部4が、タイヤ径方向に延設されている例を示す。
【0051】
内側連結部4の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜12%が好ましく、4〜10%がより好ましい。
【0052】
内側連結部4の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、1〜50MPaが好ましく、1〜30MPaがより好ましい。
【0053】
内側連結部4の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0054】
外側連結部5は、外側環状部3と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、周方向に各々が独立するように複数設けられる。外側連結部5は、ユニフォミティを向上させる観点から、周方向に規則的に設けることが好ましい。
【0055】
なお、外側連結部5と内側連結部4とは全周の同じ位置に設けてもよく、異なる位置に設けてもよい。すなわち、外側連結部5と内側連結部4は、必ずしも図1のように同じ方向に連続するように延設する必要はない。
【0056】
外側連結部5を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、20〜60個が好ましく、20〜50個がより好ましい。図1には、外側連結部5を内側連結部4と同じく30個設けた例を示す。なお、外側連結部5の数と内側連結部4の数は、必ずしも同じとする必要はなく、外側連結部5を内側連結部4よりも多く設けてもよい。
【0057】
個々の外側連結部5の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられるが、本実施形態では板状体の例を示す。これらの外側連結部5は、正面視断面において、タイヤ径方向又はタイヤ径方向から傾斜した方向に延びている。本発明では、ブレークポイントを高くして剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、外側連結部5の延設方向が、タイヤ径方向±30°以内が好ましく、タイヤ径方向±15°以内がより好ましい。図1では、外側連結部5が、タイヤ径方向に延設されている例を示す。
【0058】
外側連結部5の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜12%が好ましく、4〜10%がより好ましい。
【0059】
外側連結部5の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、1〜50MPaが好ましく、1〜30MPaがより好ましい。
【0060】
外側連結部5の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0061】
本実施形態において、それぞれの外側連結部5は、板状体であって、外側環状部3と交わる部分は、交線部51を構成する。この交線部51は、図3に破線で示されるように、タイヤ幅方向に対して角度θで傾斜している。また、隣り合う交線部51は、各々独立しており、タイヤ幅方向に対してそれぞれ反対の向きに角度θで傾斜している。すなわち、タイヤ径方向から見ると、隣り合う2つの交線部51がハの字状となるように、外側連結部5は設けられている。交線部51がタイヤ幅方向に平行の場合、外側連結部5直下で接地する場合と、外側連結部5間で接地する場合とでタイヤの上下方向の変位差(上下方向の振動幅)が大きくなり、乗り心地の悪化に繋がる。これに対し、交線部51がタイヤ幅方向に対して傾斜している場合、交線部51のタイヤ幅方向両端部51aが隣の交線部51のタイヤ幅方向両端部51aに近くなり、隣り合う外側連結部5どうしの間隔が狭くなるため、上記の変位差が小さくなる。
【0062】
交線部51のタイヤ幅方向に対する傾斜角度θは、45度以下が好ましい。キャンバーを付けたコーナリング時には、タイヤ幅方向のトルクが発生し、交線部51をタイヤ幅方向に傾斜させると、このタイヤ幅方向のトルクに対する耐久力が低下する傾向にある。θを45度より大きくすると、上下方向の変位差改善の効果は高いが、タイヤ幅方向の耐久力の低下が著しくなり好ましくない。
【0063】
内側連結部4および外側連結部5の厚みは、タイヤ径方向には一定であるが、図3に示されるように、タイヤ幅方向には、両端部51aから中央部51bへ向かって増大している。この実施形態では、両端部51aが厚みを有しているが、両端部51aの厚みをゼロとして中央部51bが膨らむようにしてもよい。
【0064】
トレッド部6は、支持構造体SSの外周面に接合されている。トレッド部6は、図2に示されるように、タイヤ幅方向に曲率を有している。トレッド部6が、曲率を有することで、キャンバーを付けてコーナリングする際にも接地面積が小さくなりすぎず、直進走行時とコーナリング時との間の接地面積の変動が少なくなる。トレッド部6の曲率半径Rは、40〜100mmが好ましく、40〜65mmがより好ましい。曲率半径Rが40mmより小さい場合、キャンバー時の接地面積が過大となり、グリップ性能が急激に増加するため、急停止に近い状況となってしまう。また、曲率半径Rが100mmよりも大きい場合、キャンバー時の接地面積が過小となり、グリップ性能が急激に低下するため、滑りが発生してしまう。
【0065】
トレッド部6の内周面には、タイヤ周方向に沿って延びる凹部60が設けられている。凹部60は、トレッド部6の全周にわたり連続的に設けられ、その断面形状は長方形となっており、外側環状部3の凸部30と嵌合するようになっている。
【0066】
トレッド部6は、弾性材料で成形される。本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが0.1〜100MPaであり、より好ましくは0.1〜50MPaである。弾性材料としては、上述した熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。
【0067】
トレッド部6の外表面には、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0068】
非空気圧タイヤTの一例としては、タイヤ外径が156mm、タイヤ幅が57mm、タイヤ断面高さHが33mm、トレッドの厚みが10mm、曲率半径Rが55mm、連結部4,5の厚みが2mm、傾斜角度θが5度であるものが例示される。
【0069】
以下に、本発明の非空気圧タイヤTの製造方法を説明する。図5は、非空気圧タイヤTの製造方法の一例を示す断面図である。なお、図5では、成形型の右半分が省略して記載されている。
【0070】
まず、図5(a)のように、非空気圧タイヤTの幅方向一端部を成形する下型11の上面に、トレッド部6の内周側を成形するためのドーナツ状のトレッド部内周型12、トレッド部6の外周面を成形するためのドーナツ状のトレッド部外周型13を固定する。本実施形態では、トレッド部外周型13は、第1トレッド部外周型13a及び第2トレッド部外周型13bに上下で分割可能であり、初めに第1トレッド部外周型13aのみを下型11の上面に固定する。次に、トレッド部内周型12の外周面に、タイヤ周方向に沿ってスペーサー14を環状に貼り付ける。スペーサー14は、柔軟性を有する帯状部材、例えば帯状のゴム部材等で構成される。
【0071】
次いで、図5(b)のように、第2トレッド部外周型13bを第1トレッド部外周型13aの上に配置し、さらにその上に注入孔15aを備える上型15を配置する。これにより、トレッド部6を成形するためのトレッド部用キャビティ21が形成される。トレッド部内周型12の外周面の幅方向一端部は、面取りされて面取り部12aが形成されており、注入孔15aは、面取り部12aに対向する位置に設けられている。
【0072】
次いで、図5(c)のように、注入孔15aよりトレッド部6を構成する第1の弾性材料の原料液を注入することで、トレッド部用キャビティ21に原料液が充填され、この原料液を硬化させることで、トレッド部6が成形される。
【0073】
次いで、上型15を取り外し、成形型全体を上下逆にして、図5(d)のように、下型11をトレッド部内周型12とともにトレッド部6から引き抜いて取り外す。さらに、トレッド部6からスペーサー14を取り外す。これにより、タイヤ周方向に向かって延びる凹部60が内周面に形成されたトレッド部6を成形することができる。
【0074】
次いで、図5(e)のように、トレッド部6の内側に、内側環状部1の内周面を成形するための中型16と、内側環状部1の外周面、外側環状部3の内周面、中間環状部2、および連結部4,5を成形するための複数の中子17とを配置し、これらを上下から上型18と下型19で挟み込む。これにより、支持構造体SSを成形するための支持構造体用キャビティ22を形成する。
【0075】
ここで、図6は、上型18の平面図を示している。上型18は、円板状をしている。上型18には、外側環状部3と内側環状部1に相当する位置に注入孔18a,18bが設けられている。注入孔18a,18bは、中心角が120度程度の円弧状のスリットとなっている。また、外側環状部3と内側環状部1に相当する位置であって、注入孔18a,18b以外の場所には、エア抜き孔18cが複数設けられている。同様に、中間環状部2に相当する位置にも複数のエア抜き孔18cが全周にわたり設けられている。
【0076】
次いで、図5(f)のように、注入孔18a,18bより支持構造体SSを構成する第2の弾性材料の原料液を注入することで、支持構造体用キャビティ22に原料液が充填され、この原料液を硬化させることで、トレッド部6と一体となった支持構造体SSが成形される。このとき、支持構造体SSの外側環状部3の外周面には、タイヤ周方向に向かって延びる凸部30が一体成形される。最後に、支持構造体SSとトレッド部6により構成された非空気圧タイヤTを脱型する。
【0077】
<別実施形態>
前述の実施形態では、外側環状部3の凸部30の断面形状を長方形とする例を示したが、図7(a),(b)に示すように、本発明では、半円形、三角形などとすることも可能である。なお、トレッド部6の凹部60は、凸部30に嵌合するように設けられる。
【0078】
前述の実施形態では、凸部30をタイヤ幅方向に1本だけ設ける例を示したが、図8(a),(b)に示すように、本発明では、複数本設けることも可能である。凸部30は、1〜5本設けることが好ましく、1〜3本設けることが特に好ましい。凸部30を複数本設ける場合、奇数本のときはタイヤ幅方向中央に1本設け、その左右に中央の凸部30から等間隔で設けることが好ましく、偶数本のときは、タイヤ幅方向中央から等間隔に設けることが好ましい。また、凸部30を複数本設ける場合、すべての凸部30の断面形状を同じとする必要はなく、例えば、図8(c)に示すように、タイヤ幅方向中央付近の凸部30を、その両側の凸部30よりも大きくしてもよい。なお、トレッド部6の凹部60は、凸部30に嵌合するように設けられる。
【0079】
前述の実施形態では、凸部30をタイヤ周方向の全周にわたり連続的に設ける例を示したが、断続的に設けてもよい。図9は、外側環状部3をタイヤ径方向から見た図である。図9(a)は、凸部30を全周にわたり連続的に設ける例、図9(b)は、凸部30を断続的に設ける例を示している。ただし、凸部30は、全周にわたり連続的に設けたほうが、タイヤ剛性の周方向変動が少なくなるためより好ましい。また、凸部30は、図9(c)に示すように、タイヤ周方向に直線状でなく、波状に設けてもよい。ただし、凸部30を波状に設けた場合、荷重をかけた状態で回転させると接地面圧がタイヤ幅方向で変動するので、直線状に設けることが好ましい。
【0080】
前述の実施形態では、支持構造体SSの外周面に凸部30を設け、トレッド部6の内周面に凹部60を設ける例を示したが、トレッド部6の外周面に凸部を設け、支持構造体SSの内周面に凹部を設けてもよい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0082】
<実施例>
タイヤ外径が156mm、タイヤ幅が57mm、タイヤ断面高さHが33mm、トレッドの最大厚み(曲率を有するトレッドの最も厚い箇所での厚み)が10mm、曲率半径Rが55mmの非空気圧タイヤTにおいて、外側環状部3の外周面に幅10mm、高さ1mmの断面形状を有する凸部30、トレッド部6の内周面に凸部30に嵌合する凹部60を設けた。凸部30と凹部60は、タイヤ周方向に沿って直線状に連続して設けた。
【0083】
<比較例>
上記実施例の非空気圧タイヤTにおいて、凸部30と凹部60を設けなかった。
【0084】
実施例及び比較例の非空気圧タイヤTに、縦荷重を徐々に負荷していき、そのときの変位を計測した。図10に縦荷重と変位の関係を示す。スポーク間とは、図3の線A上で接地した状態、スポーク上とは、図3の線B上で接地した状態での計測結果である。非空気圧タイヤTを90度ずつ回転させて、スポーク間、スポーク上をそれぞれ4つの部位で計測した。
【0085】
図10のように、実施例は、比較例に比べ、例えば1000N以上の高荷重域において、部位による差異が少なく、急激な変位の上昇も少ない。本発明によれば、非空気圧タイヤの剛性が高くなり変形が抑制されることが分かる。これにより、本発明によれば、非空気圧タイヤの耐久性の向上が見込まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 内側環状部
2 中間環状部
3 外側環状部
4 内側連結部
5 外側連結部
6 トレッド部
11 下型
12 トレッド部内周型
13 トレッド部外周型
14 スペーサー
15 上型
16 中型
17 中子
18 上型
19 下型
21 トレッド部用キャビティ
22 支持構造体用キャビティ
30 凸部
60 凹部
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられる非空気圧タイヤであって、
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを有し、車両からの荷重を支持する支持構造体と、
前記支持構造体の外周面に接合され、タイヤ幅方向に曲率を有するトレッド部と、を備え、
前記支持構造体の外周面と前記トレッド部の内周面の一方に、タイヤ周方向に向かって延びる凸部が設けられ、他方に、前記凸部に嵌合する凹部が設けられている非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記凸部は、前記支持構造体の外周面であって、タイヤ幅方向の中央部に一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記凸部の断面形状は、長方形、半円形、または三角形であることを特徴とする請求項1または2に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項4】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とから構成される支持構造体と、前記支持構造体の外周面に接合され、タイヤ幅方向に曲率を有するトレッド部とを備える非空気圧タイヤの製造方法であって、
前記トレッド部の内周面を成形するためのトレッド部内周型の外周面に、タイヤ周方向に沿ってスペーサーを貼り付け、前記トレッド部内周型の外側に、前記トレッド部の外周面を成形するためのトレッド部外周型を配置して前記トレッド部に相当するトレッド部用キャビティを形成する工程と、
前記トレッド部用キャビティに前記トレッド部を構成する第1材料の原料液を供給して硬化させて前記トレッド部を成形する工程と、
成形された前記トレッド部から前記トレッド部内周型および前記スペーサーを取り外す工程と、
成形された前記トレッド部の内側に、前記内側環状部の内周面を成形するための中型と、前記内側環状部の外周面、前記外側環状部の内周面、および前記連結部を成形するための複数の中子とを配置して、前記内側環状部、前記外側環状部および前記連結部に相当する支持構造体用キャビティを形成する工程と、
前記支持構造体用キャビティに前記支持構造体を構成する第2材料の原料液を供給して硬化させて前記支持構造体を成形する工程と、を備えることを特徴とする非空気圧タイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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