説明

非線形光学装置、多光子顕微鏡および内視鏡

【課題】複雑な補償機構を設けることなく、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや波形崩れの影響を低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射できる、非線形光学装置を提供する。
【解決手段】非線形光学装置は、短光パルスを発生する短光パルス源10と、短光パルス源から発生した短光パルスを対象物に伝送するための短光パルス伝送系20とを備える。非線形光学装置内で発生する非線形光学効果が実質的に無く、該非線形光学装置内の群速度分散量が実質的に無く、短光パルス源が発生する短光パルスは、変換限界に近く、且つ、パルス時間幅(半値全幅)TFWHMが、T<TFWHM<Tを満たす。ただし、T,Tは、パルス波形に依存して決定されるパラメータkと総群速度分散スロープ量D3dとから算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短光パルスを対象物に照射して、2次非線形光学効果を誘起する非線形光学装置およびこれを用いた多光子顕微鏡および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物学、医学、医療、加工、計測などの様々な分野において、高ピークパワーを持ち、複数の波長成分を含むピコ秒以下の超短光パルスが利用されるようになってきている。特に、生物学分野や医学分野では、多光子蛍光顕微鏡、高調波顕微鏡などの非線形光学効果を利用した顕微鏡や、光応力波を用いた遺伝子導入装置、拡散光トモグラフィ装置などに、チタン:サファイヤレーザやファイバレーザなどの、超短光パルスを発生する光パルス源が活発に利用されている。
【0003】
これらの分野で超短光パルスは、超短光パルスが照射される対象物において非線形光学効果を誘起することを目的として使用される。そして、対象物に照射される超短光パルスのピークパワーが高いほど、高い効率で非線形光学効果が誘起される。
【0004】
一方、光パルス源にて生成される超短光パルスを対象物まで伝送する際には、通常レンズや光ファイバなどの短光パルス伝送系が用いられる。しかし、高ピークパワーの超短光パルスは、短光パルス伝送系を伝搬する過程において、短光パルス伝送系の群速度分散(Group-velocity dispersion:GVD)効果や短光パルス伝送系中にて誘起される自己位相変調(Self-phase modulation:SPM)効果などの非線形光学効果の影響を受けて、時間幅広がりや波形崩れが生じることが知られている。この光パルス時間幅の広がりや光パルス波形の崩れは、多くの応用で問題となる。
【0005】
例えば、多光子蛍光顕微鏡などの非線形光学顕微鏡では、高いピークパワーの超短光パルスが要求されるが、光ファイバなどの短光パルス伝送系中にパルス時間幅が広がる、または、パルス波形が崩れると、それに伴って短光パルスのピークパワーが低下し、多光子励起の効率が落ちるため、顕微鏡画像の明度が低下するという問題点がある。
【0006】
したがって、短光パルス伝送系中における光パルスの時間幅の広がりや波形崩れを、なるべく低減することが非常に重要である。
【0007】
そこで、これらの短光パルス伝送系におけるGVD効果や非線形光学効果を低減する、もしくは、補償することが広く行なわれている。例えば、GVD効果については、GVDの低い短光パルス伝送系を利用するか、短光パルス伝送系中にGVD補償素子を含めるという対策がとられる。また、非線形光学効果は、短光パルス伝送系中に長尺な光ファイバを含む場合には非常に顕著になるため、特別な対策が必要になるが、その他の場合はほとんど問題にならない。
【0008】
一方、高次のGVDである群速度分散スロープについても、これを補償するための機構が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この機構を短光パルス伝送系内などに設けることによって、群速度分散スロープの影響による短光パルス波形の崩れを補償することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.A.R.Williams, L.A.Everall, I.Bennion, “Fiber Bragg grating fabrication for dispersion slope compensation,” IEEE Photon. Technol. Lett., 8, pp.1187-1189 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、群速度分散スロープなどの高次分散を完全に補償する、もしくは無視できる程度に十分低減することは、現状では技術的に非常に難易度が高い。また、非特許文献1に記載のように、高次分散補償機構を設けると、短光パルス伝送系の複雑化及び高コスト化を招いてしまう。
【0011】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、複雑な補償機構を設けることなく、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや、波形崩れの影響を低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射できる、非線形光学装置およびこれを用いた多光子顕微鏡および内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する請求項1に係る非線形光学装置の発明は、
対象物に短光パルスを照射して2次非線形光学効果を発生させる非線形光学装置であって、
短光パルスを発生する短光パルス源と、
該短光パルス源から発生した短光パルスを前記対象物に伝送するための短光パルス伝送系とを備え、
該非線形光学装置内で発生する非線形光学効果が実質的に無く、該非線形光学装置内の群速度分散量が実質的に無く、且つ、前記短光パルス源が発生する短光パルスのパルス時間幅(半値全幅)TFWHMが、
<TFWHM<T (1)
を満たし、
ただし、
【数1】


k:パルス波形に依存して決定されるパラメータ
3d:総群速度分散スロープ量
α=0.5
であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス伝送系の各伝播媒質の非線形係数をγ、前記短光パルス伝送系の各伝播媒質により伝送される前後の前記短光パルスのピークパワーのうちいずれか高い値をPpeak、前記短光パルス伝送系の各伝播媒質の物理長をL、総群速度分散量をD2d、総群速度分散スロープ量をD3d、前記短光パルスの出力強度が前記ピークパワーの1/eになるときの時間幅をTとするとき、
【数2】


を満たすことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス源は、該短光パルス源が発生する短光パルスのスペクトル半値幅(半値全幅)をfFWHMとするとき、
【数3】


を満たす短光パルスを発生することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1−3のいずれか一項に記載の非線形光学装置において、
前記パラメータkは、0.35<k<0.55を満たすことを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1−4のいずれか一項に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス源は、チャープした短光パルスを発生するチャープ光発生装置と、該チャープ光発生装置から発生した短光パルスのチャープを補償するチャープ補償装置とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の非線形光学装置において、
前記チャープ補償装置は、回折格子を備えることを特徴とするものである。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の非線形光学装置において、
前記チャープ補償装置は、プリズムを備えることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項1−7のいずれか一項に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス伝送系は、群速度分散補償装置を備えることを特徴とするものである。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の非線形光学装置において、
前記群速度分散補償装置は、回折格子を備えることを特徴とするものである。
【0021】
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の非線形光学装置において、
前記群速度分散補償装置は、プリズムを備えることを特徴とする。
【0022】
請求項11に係る発明は、請求項1−10のいずれか一項に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス伝送系は、中空コアフォトニック結晶ファイバを備えることを特徴とするものである。
【0023】
請求項12に係る発明は、請求項1−11に記載の非線形光学装置において、
前記短光パルス源は、1ピコ秒以下の時間幅の短光パルスを発生することを特徴とするものである。
【0024】
短光パルスの時間幅が1ピコ秒以下であれば、高ピークパワーのパルスとなり、対象物内で高い2次非線形光学効果が生じることが期待できる。
【0025】
上記目的を達成する請求項13に係る多光子顕微鏡の発明は、
請求項1−12のいずれか一項に記載の非線形光学装置を備え、
前記対象物から発生した2次非線形効果を検出することを特徴とするものである。
【0026】
上記目的を達成する請求項14に係る内視鏡の発明は、
請求項1−12のいずれか一項に記載の非線形光学装置を備え、
前記対象物から発生した2次非線形効果を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定の条件下で、短光パルス源が発生する短光パルスの、パルス時間幅(半値全幅)TFWHMが所定の範囲(T<TFWHM<T)を満たすようにしたので、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや波形崩れを低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る非線形光学装置の基本構成を示す図である。
【図2】2次非線光学形効果により発生する信号光量と短光パルス源から射出される光パルスのパルス時間幅との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。
【図4】図3の群速度分散補償装置の一例を示す構成図である。
【図5】第1実施の形態における、2次非線形光学効果により発生する信号光量と短光パルス源から射出される光パルスのパルス時間幅との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。
【図7】第2実施の形態における、2次非線形光学効果により発生する信号光量と短光パルス源から射出される光パルスのパルス時間幅との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第3実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。
【図9】図8のチャープ補償部の一例を示す構成図である。
【図10】図8のマイクロヘッドの詳細な構成を示す図である。
【図11】本発明の第4実施の形態に係る内視鏡の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の説明時先立ち、本願発明の基本的な構成と、理論的な根拠を説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る非線形光学装置の基本構成を示す図である。短光パルスを発生する短光パルス源10と、短光パルス源10から発生した短光パルスを対象物30まで伝送するための短光パルス伝送系20とを備える。ここで、非線形光学装置は、短光パルスを対象物30に照射することにより、2光子蛍光および第2高調波発生等の2次非線形光学効果を発生させる装置である。対象物30から発生した、2光子蛍光や第2高調波等の信号光は、例えば、図示しない検出部によって検出される。
【0031】
ここで、短光パルス源10および短光パルス伝送系20より構成される光学系(短光パルス光学系1)は、公知の方法により、非線形光学効果および総群速度分散が低減できるか、あるいは、補償されるように構成することができる。一方、総群速度分散スロープ量は、容易に補償又は低減できず、無視することができない。そのような場合、短光パルスの波形の変形や歪みは、主として群速度分散スロープの存在に起因して発生する。
【0032】
非線形光学装置内の非線形光学効果、総群速度分散量および総群速度分散スロープ量は、上述の(7),(8),(9)の各条件式を満たすことが好ましい。式(7)を満たす場合、非線形光学装置内の非線形光学効果は、無視できるほど小さい。式(8)を満たす場合、非線形光学装置内の群速度分散量は、無視できるほど小さい。さらに、式(9)を満たす場合、非線形光学装置内の群速度分散スロープは、無視できない。これらの条件式が満たされることによって、短光パルス光学系で発生する非線形光学効果と群速度分散とは、無視できるほど小さくなるので、群速度分散スロープの存在に起因する短光パルスの波形変化が顕著に現れる。
【0033】
また、本発明の短光パルス源10は、式(10)を満たすフーリエ変換限界(以下、変換限界という)に近い短光パルスを発生するものとする。とくに、TFWHM・fFWHMが0.88を超えると、短光パルスを照射する対象物からの2次の非線形光学効果による信号光が完全な変換限界の半分程度以下となる。
【0034】
ここでTFWHM・fFWHMの計算は、以下の式を用いてスペクトル幅を波長幅に直すことによって計算することができる。
【0035】
【数4】


ここで、cは光速、λは短光パルスの中心波長、λFWHMは波長幅(半値全幅)である。
【0036】
上述のような条件下において、まず、短光パルス伝送系内の総群速度分散スロープ量を考慮しないで計算すると、短光パルスが照射される対象物において2次非線形光学効果により発生する信号の光量FnoD[W]は以下の式(12)のように表される。
【0037】
【数5】


ここで、Cは[1/W]の次元を持つ係数、Paveは短光パルスの単位時間における平均パワー、frepは短光パルスの繰り返し周波数、TFWHMは短光パルス時間幅(半値全幅)である。
【0038】
式(12)を見ると、短光パルス時間幅が短いほど、対象物における2次非線形光学効果により発生する信号の光量FnoDが高いことがわかる。しかし、短光パルス伝送系内における総群速度分散スロープ量を考慮すると、短光パルス波形の崩れによる影響で、信号光の光量FnoDは、式(12)に以下の式(13)を乗じたものとなる。
【0039】
【数6】


ここで、kは短光パルスの波形により定まるパラメータであり、D3dは総群速度分散スロープ量である。
【0040】
すると、短光パルスが照射される対象物において2次非線形光学効果により発生する信号の光量Fは、式(12)と式(13)を掛け合わせた以下の式(14)のように表される。
【0041】
【数7】

【0042】
図2は、この式(14)を横軸に短光パルス幅TFWHMをとりグラフに表したものである。図2に示されるように、短光パルス伝送系内における総群速度分散スロープ量が無視できないほど大きい場合、対象物に短光パルスを照射して2次非線形光学効果により発生する信号の光量Fには、最大(FMAX)となる短光パルス時間幅があり、そこから大きく外れると2次非線形光学効果により発生する信号の光量Fが著しく低下する。
【0043】
ここで、2光子蛍光観察における蛍光強度や短光パルスを照射する対象物の熱損傷などを考慮すると、2次非線形光学効果により発生する光量が最も高い値(FMAX)から光量Fがその50%(α=0.5)に落ちるまでの範囲(T<TFWHM<T)のTFWHMを有する短光パルスを用いることが好ましい。更に、検出器の感度などを考えるとより好ましくはFMAXの60%以上、更には観察対象によっては70%以上、また、微弱なシグナルを検出する場合は80%以上となる範囲のTFWHMが好ましい。
【0044】
この最適な短光パルス時間幅TFWHMの範囲T、Tを式(14)から求めると、上述の式(2)および(3)が得られる。
【0045】
【数8】


ここで、kは短光パルスの波形に依存して変化するパラメータであり、パルス波形がガウシアン型の場合0.535となり、ハイパボリックセカント(sech)型の場合0.370となる。また、ガウシアン型とsech型の中間のパルス波形の場合、この2値の中間の値をとる。
【0046】
したがって、本発明の非線形光学装置は、群速度分散スロープを補償するための機構を設けなくとも、パルス時間幅TFWHMが上記要件を満足するようにすれば、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや波形崩れの影響を低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射できる。
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0048】
(第1実施の形態)
図3は、本発明の第1実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。
【0049】
この多光子顕微鏡は、sech型短光パルスを発生する短光パルス源11、群速度分散補償装置21、ビームエキスパンダ22、ガルバノミラー41a,41b、分光ミラー42、対物レンズ43、バリアフィルタ44および検出器45を含んで構成されている。
【0050】
短光パルス源11は、例えば、チタンサファイアレーザを用いた波長980nmの近赤外領域のsech型短光パルスを発生する光源であり、平均パワーは1W、繰り返し周波数は80MHz、時間半値全幅は80fs、スペクトル幅は13nmである。
【0051】
群速度分散補償装置21、ビームエキスパンダ22、ガルバノミラー41a,41b、分光ミラー42、対物レンズ43は、短光パルス源11を出射した短光パルスを観察対象の観察対象31まで伝送する短光パルス伝送系を構成する。ここで、分光ミラー42は、短光パルス源から伝送された短光パルスを反射させ、短光パルスの照射により観察対象から発生する信号光は透過させる周波数特性を有する、ダイクロイックミラーである。
【0052】
群速度分散補償装置21は、短光パルス源11から観察対象31までの光学系の総群速度分散量を補償する装置である。群速度分散補償装置21は、例えば、プリズムペアを使用したものが知られており、図4に示すように、プリズム21a,21bおよびミラー21c,21dにより構成される。プリズム21a、21bの間隔はおよそ75cmで、用いるプリズムは硝材SF58で構成されたブリュースタープリズムである。
【0053】
図4の群速度分散補償装置21の作用を簡単に説明すると、短光パルス源11から射出された短光パルスは、プリズム21aに入射し、これを通過する際、ガラスの屈折率分散による角度分散が生じる。さらに、角度分散により広げられた短光パルスは、プリズム21bを通過して平行になり、ミラー21cにより反射される。反射された光は、プリズム21b、21aを通過しミラー21dで反射されて出射する。これにより発生する負の群速度分散により、非線形光学装置内の群速度分散が補償される。
【0054】
次に多光子顕微鏡の装置全体の作用について説明する。短光パルス源11から射出された光は、群速度分散補償装置21を経由して、レンズ22aおよび22bより構成されるビームエキスパンダ22によりビーム径が拡大される。ビームエキスパンダ22を出射した短光パルスは、ガルバノミラー41aおよび41bで順次反射され、分光ミラー42で反射され、対物レンズ43により集光されて観察対象31の所望の観察位置を照射する。その際、ガルバノミラー41a,41bを駆動することにより、観察対象31上のパルス照射位置を順次走査させる。
【0055】
ここで、観察対象31は、マウスなどの実験小動物や人間の皮膚などであり、短光パルスの照射により、これら観察対象から2光子蛍光や第2高調波(SHG)が発生する。
【0056】
発生した2光子蛍光または第2高調波は、対物レンズ43を経て分光ミラー42を透過し、短光パルスによる迷光をカットするためのバリアフィルタ44を透過して、信号光として検出器45によって検出される。検出器45はガルバノミラー41a、41bとともに図示しない画像処理装置に接続され、検出器45で得られる信号光強度と観察対象31上の短光パルス照射位置の情報に基づいて、2次元顕微鏡画像が形成される。
【0057】
以上のような構成により、短光パルス源11および短光パルス伝送系内で非線形光学効果はほとんど生じず、また、ビームエキスパンダ22や対物レンズ43等で発生する群速度分散は、群速度分散補償装置21によって補償される。一方、群速度分散スロープは補償されていない。さらに、好適には、式(7)、(8)、(9)の条件が満たされる。そこで、式(2)および式(3)によりT、Tを求め、式(1)に基づいて、好ましい短光パルスの時間幅(半値全幅)を求めることができる。
【0058】
図5は、第1実施の形態における、2次非線形光学効果により発生する信号光量Fと短光パルス源から射出される光パルスのパルス時間幅TFWHMとの関係を示すグラフである。最適な短光パルス時間幅(半値全幅)の範囲を求めた結果、
=12[fs]
=83[fs]
となった。
【0059】
よって、短光パルスを照射する観察対象に2次の非線形光学効果を効率良く発生させるには、
12[fs]<TFWHM<83[fs]
を満たす時間幅の短光パルスを用いると良い。短光パルス源11から発せられる短光パルス時間幅(半値全幅)である80[fs]は、この範囲内に属している。
【0060】
また、短光パルス源11を出射した直後の短光パルスは、TFWHM×fFWHM=0.33となり、式(10)の条件を満たしている。
【0061】
上記TFWHMの好適な範囲の導出において、短光パルス源11からはsech型短光パルスが発生するとして、
k=0.37
3d=0.00003[ps
α=0.5
とした。
【0062】
ここで、kとD3dとの導出過程を簡単に説明する。まず、kは短光パルスの波形に依存するパラメータであり、k=k×kのように2つに分けることができる。
【0063】
短光パルスが群速度分散スロープで波形歪みを起こした場合、その波形歪みにより、短光パルスが照射される対象において、2次非線形光学効果により発生する信号光量Fが減少する。kはその減少に関する係数を表している。
【0064】
具体的に説明すると、群速度分散スロープがない、もしくはほとんど無視できる場合は、短光パルスが照射される対象物において2次非線形光学効果により発生する信号の光量FnoDは上述のように式(12)で表すことができた。
【0065】
【数9】

【0066】
さらに、系内の群速度分散スロープ量が無視できない場合、式(13)の項を式(12)に乗じていた。
【0067】
【数10】

【0068】
この式(13)を書き換えると、以下のようになる。
【0069】
【数11】

【0070】
式(15)は、変換限界におけるパルス時間幅(T)の異なる光源を用意し、D3dの群速度分散スロープを持つ光学系に入射させ、2次非線形光学効果により発生する信号光量を見積もると、kの増加とともに信号光量Fが減少することを示し、kはこのときの係数を表している。この値は、sech型短光パルスでは、k=0.676となる。
【0071】
また、kは、短光パルス波形の半値全幅TFWHMと、信号強度が1/eになる幅Tとの比の3乗である。よって、
【数12】


と表され、sech型パルスではk2=1.763となる。
【0072】
したがって、kはk、kを掛け合わせて0.37と算出される。
【0073】
次に群速度分散スロープD3dの値の導出方法を説明する。D3dは、ビームエキスパンダ22などのレンズから発生するD3d1と、群速度分散補償装置(プリズム対)から発生するD3d2との和として計算した。前者は、使用しているレンズ材料屈折率の波長依存性を表すセルマイヤー方程式から求め、後者は、論文(R.L.Fork, O.E.Martinez, and J.p.Gordon, “Negative dispersion using pairs of prisms,” Opt. Lett., 9, pp.150 (1984))に掲載のプリズム対からの群速度分散スロープを見積もる式から計算した。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態によれば、sech型の短光パルス源および短光パルス伝送系を備える非線形光学装置であって、装置内で発生する群速度分散スロープにより生じる短光パルスの変形による広がりが、装置内で発生する非線形光学効果と群速度分散とにより生じる短光パルスの変形による広がりよりも大きく、且つ、短光パルス源が発生する短光パルスの時間幅(半値全幅)が、12<[fs]TFWHM<83[fs]を満たすようにしたので、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや波形崩れを低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射することができる。
【0075】
また、式(7)、(8)、(9)の条件が満たされる場合、非線形光学装置内の非線形光学効果および群速度分散効果が無視できるほど小さいので、群速度分散スロープの存在に起因する短光パルスの波形変化が顕著に現れるので、上記時間幅の超短パルスを使用することが特に有効である。
【0076】
なお、群速度分散補償装置は、短光パルス源の直後に配置したが、これに限られず、総群速度分散を補償するために、短光パルス伝送系の任意の位置に配置することができる。また、群速度分散補償装置は、プリズム対を使ったものに限られず、回折格子対を用いたものなど(後述の実施例3のチャープ補償装置と同様のもの)、群速度分散を補償する種々の装置を利用することができる。
【0077】
(第2実施の形態)
図6は、本発明の第2実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。本実施の形態は、既存の多光子顕微鏡に本発明を適用したものである。
【0078】
この多光子顕微鏡は、ガウシアン型短光パルスを発生する短光パルス源12、レンズ24、中空コアフォトニック結晶ファイバ25、レンズ26および既存の顕微鏡装置50を含んで構成されている。
【0079】
短光パルス源12は、例えば、チタンサファイアレーザを用いた波長980nmの近赤外領域のガウシアン型短光パルスを発生する光源であり、平均パワーは1W、繰り返し周波数は80MHz、パルス時間半値全幅は148fs、スペクトル幅は15nmである。
【0080】
短光パルス源12を出射した短光パルスは、レンズ24を用いて長さ3mの中空コアフォトニック結晶ファイバ25に入射し、この中空コアフォトニック結晶ファイバ25を通った後、レンズ26を用いて平行ビームとして顕微鏡装置50に供給される。一般に中空コアフォトニック結晶ファイバの群速度分散量と群速度分散スロープ量とは非常に大きいが、伝送される光の波長を選択することよって、群速度分散量をゼロにすることができる。本実施の形態の中空コアフォトニック結晶ファイバ25は、短光パルス源12の発生する短光パルスの波長980nmで、群速度分散量がゼロになるものを用いる。
【0081】
顕微鏡装置50は、ガルバノミラー対51、分光ミラー42、対物レンズ43、バリアフィルタ44および検出器45を含んで構成されている。ここで、ガルバノミラー対は、観察対象31を走査するための2組のガルバノミラーであり、第1実施の形態における2つのガルバノミラー41aおよび41bと同様の構成、作用を有している。また、顕微鏡装置50内のその他の構成も、第1実施の形態と同様であるので、同様の構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0082】
なお、レンズ24、中空コアフォトニック結晶ファイバ25、レンズ26、ガルバノミラー対51、分光ミラー42、対物レンズ43は、短光パルス伝送系を構成する。
【0083】
以上のような構成によって、短光パルス光源12と顕微鏡装置50との間を、中空コアフォトニック結晶ファイバ25で接続するようにしたので、顕微鏡装置50から離れた場所に短光パルス源12を配置することができる。また、このような配置にすることで、短光パルス源12からの短光パルスを、空間を伝播させ顕微鏡本体50に導入する第1実施の形態のような場合と比べ、短光パルス源12を動かしても、アライメントをし直す必要がないので、使い勝手が非常に良くなる。
【0084】
また、以上のような構成によれば、短光パルス源12および短光パルス伝送系内で非線形光学効果はほとんど生じず、また、中空コアフォトニック結晶ファイバ25内では群速度分散は発生しない一方、大きな群速度分散スロープが発生している。この際、好適には、式(7)、(8)、(9)の条件が満たされる。そこで、式(2)および式(3)から求めたT、Tに基づいて、式(1)から好ましい短光パルスの時間幅(半値全幅)を求めることができる。
【0085】
図7は、第2実施の形態における、2次非線形光学効果により発生する信号光量Fと、短光パルス源から射出される光パルスのパルス時間幅TFWHMとの関係を示すグラフである。最適な短光パルス時間幅(半値全幅)の範囲を求めた結果、
=65[fs]
=434[fs]
となった。
【0086】
よって、短光パルスを照射する観察対象に2次の非線形光学効果を発生させるには、
65[fs]<TFWHM<434[fs]
を満たす時間幅の短光パルスを用いると良い。更には最も好ましい短光パルス時間幅(半値全幅)は148[fs]であり、本実施の形態の短光パルス源12から発せられる短光パルス時間幅(半値全幅)は、最適な値となっていることがわかる。
【0087】
また、短光パルス源10出射直後の短光パルスは、TFWHM×fFWHM=0.7となり、式(10)の条件を満たしている。
【0088】
上記TFWHMの好適な範囲の導出において、短光パルス源からはガウシアン型短光パルスが発生するとして、
k=0.535
3d=0.003[ps
α=0.5
とした。
【0089】
ここで、第1実施の形態と同様に、kとD3dとの導出過程を簡単に説明する。まず、kを、k=k×kのように2つに分け、ガウシアン型のパルスについて、sech型のパルスについて説明したのと同様にk、kを求めると、k=0.116,k=1.666となる。したがって、kは、k、kを掛け合わせて0.535と算出される。
【0090】
また、群速度分散スロープD3dは、中空コアフォトニック結晶ファイバのゼロ分散波長における分散スロープD(約4.4[ps/nm/km])を用い、中空コアフォトニック結晶ファイバの長さL=3mとして、公知の算出式
【数13】


により算出した。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ガウシアン型の短光パルス源および短光パルス伝送系より構成される非線形光学装置であって、装置内で発生する群速度分散スロープにより生じる短光パルスの変形による広がりが、装置内で発生する非線形光学効果と群速度分散とにより生じる短光パルスの変形による広がりよりも大きく、且つ、短光パルス源が発生する短光パルスの時間幅を、65[fs]<TFWHM<434[fs]を満たすようにしたので、群速度分散スロープによる光パルスの時間幅の広がりや波形崩れを低減した高ピークパワーの短光パルスを対象物に照射することができる。
【0092】
また、式(7)、(8)、(9)の条件が満たされる場合、非線形光学装置内の非線形光学効果および群速度分散効果が無視できるほど小さいので、群速度分散スロープの存在に起因する短光パルスの波形変化が顕著に現れるので、上記時間幅の超短パルスを使用することが特に有効である。
【0093】
なお、本実施の形態では、群速度分散のない中空コアフォトニック結晶ファイバを用いたので、第1実施の形態と異なり、群速度分散補償装置を用いない構成とした。仮に、顕微鏡装置の観察対象までの光学系で対物レンズ等により無視できない大きさの群速度分散が発生する場合は、これを補償するために群速度分散補償装置を短光パルス伝送系内に設けても良い。
【0094】
(第3実施の形態)
図8は、本発明の第3実施の形態に係る多光子顕微鏡の概略構成図である。本実施の形態は、中空コアフォトニック結晶ファイバの先端に顕微鏡を小型化したマイクロヘッドを配置し、マウスなどの実験小動物の頭部に固定して、麻酔をかけない状態でマウスの脳などの臓器を観察できるようにしたものである。
【0095】
この多光子顕微鏡は、チャープ光発生源13、チャープ補償装置14、レンズ27、中空コアフォトニック結晶ファイバ28、マイクロヘッド61、マルチモード光ファイバ62、レンズ63、バリアフィルタ64および検出器65を含んで構成されている。
【0096】
チャープ光発生源13は、チャープしたパルスを射出する短光パルス光源であり、該チャープ光発生源13の後段に配置されたチャープ補償装置14は、そのチャープを補償するためのプリチャーパである。本実施の形態では、短光パルス源は、チャープ光発生源13とチャープ補償装置14とを含んで構成される。
【0097】
図9は、回折格子を用いた公知のチャープ補償装置14の詳細な構成を示す図である。群速度分散補償装置14は、回折格子14a,14d、レンズ14b,14cおよびミラー14e,14fを含んで構成される。短光パルス源13から射出されたチャープした光パルスは、回折格子14aに入射し回折される際に、波長成分により角度分散が生じる。さらに、角度分散により広げられた短光パルスは、レンズ14b,14cを経て回折格子14dで再び回折され平行光になり、ミラー14eにより反射される。反射された光は、回折格子14d、レンズ14c,14bおよび回折格子14aを経由して、ミラー14fで反射されて出射する。これにより発生する負の群速度分散により、チャープ光発生源13の有するチャープが補償される。従って、短光パルス源13およびチャープ補償装置14は、組み合わされて、チャープのない変換限界に近い短光パルスを発生する短光パルス源を構成する。
【0098】
図8に示すように、チャープ補償装置14を出射した短光パルスは、レンズ27を用いて中空コアフォトニック結晶ファイバ28に入射し、この中空コアフォトニック結晶ファイバ28を通って、観察対象である例えばマウス33の頭部に取付けられ固定されたマイクロヘッド61に伝送される。
【0099】
図10は、図8のマイクロヘッド61の詳細な構成を示す図である。マイクロヘッド61は、ピエゾXYスキャナ61a、レンズ61b、分光ミラー61c、対物レンズ61d、バリアフィルタ61eおよびレンズ61fを含んで構成される。ピエゾXYスキャナ61aは、マイクロヘッド61内へ導入された中空コアフォトニック結晶ファイバ28の先端部と結合している。また、分光ミラー61cは、短光パルスを透過させ、短光パルスの照射により観察対象から発生する信号光を反射させる周波数特性を有する。中空コアフォトニック結晶ファイバ28を出射した短光パルスは、レンズ61bでビーム径を拡大され、分光ミラー61cを透過して対物レンズ61dによりにより観察対象31の所望の観察位置を照射する。その際、ピエゾXYスキャナ61aを駆動することにより、観察対象31上のパルス照射位置を順次走査させる。
【0100】
例えば、観察対象31がマウスの脳の場合、短光パルスの照射により発生した2光子蛍光や第二高調波等は、対物レンズ61dを経て分光ミラー61cで反射され、短光パルスによる迷光をカットするためのバリアフィルタ61eを透過して、レンズ61fにより集光されマルチモードファイバ62に入射する。
【0101】
その後、図8に示すように、信号光はマルチモードファイバ62を通り、レンズ63、バリアフィルタ64を経て検出器65によって検出される。検出器65はピエゾXYスキャナ61aとともに図示しない画像処理装置に接続され、検出器65で得られる信号光強度と観察対象31上の短光パルス照射位置との情報に基づいて、2次元顕微鏡画像が形成される。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態によれば、チャープしたパルスを発生するチャープ光発生源とチャープを補償するチャープ補償装置とを含んで短光パルス源を構成したので、所定の条件を満たす場合、この光源を用いて第1および第2実施の形態による非線形光学装置と同様の効果が得られる。
【0103】
なお、チャープ補償装置としては、回折格子対を用いるものとしたが、これに限られない。第1実施の形態で、分散補償装置に使用したプリズム対を用いた装置と同様な構成の装置など、チャープした短光パルス源のチャープを補償する装置であれば、種々の装置を利用することが可能である。
【0104】
(第4実施の形態)
図11は、本発明の第4実施の形態に係る内視鏡の概略構成図である。本実施の形態は、図8の第3実施の形態において、マイクロヘッド61を硬性部72として、これに接続される中空コアフォトニック結晶ファイバとマルチモードファイバとを1本に束ねて可撓性の挿入部71とし、単独でもしくは既存の内視鏡の鉗子穴に挿入するなどして使用することにより、内視鏡非線形システム70として使用するものである。これによって、内視鏡として利用しても、第3実施の形態と同様の効果が得られる。
【0105】
なお、本発明は、上記各実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、本発明の利用分野は、顕微鏡や内視鏡に限られず、2光子過程による2次の非線形光学効果を利用するものであれば、例えば材料の加工等の種々の分野にも適用可能である。また、上記第1〜第3の実施形態では、sech型またはガウシアン型の短光パルス源を用いたが、本発明が利用できる短光パルス源はこれに限られず、他の種々の光源を利用することが可能である。その場合、短光パルスの波形により、短光パルスの時間幅(半値全幅)の算出に用いたパラメータkが異なる。特に、ガウシアン型とsech型との中間に位置するようなパルス波形を有する場合、kの値もガウシアン型とsech型との中間、すなわち、0.35<k<0.55の範囲にある。このような波形の短光パルスに対しても、本発明の効果が有効に得られる。
【符号の説明】
【0106】
10 短光パルス源
11 短光パルス源(sech型)
12 短光パルス源(ガウシアン型)
13 チャープ光発生源
14 チャープ補償装置
14e,14f ミラー
14a,14d 回折格子
14b,14c レンズ
20 短光パルス伝送系
21 群速度分散補償装置
21a,21d ミラー
21b,21c プリズム
22 ビームエキスパンダ
22a レンズ
22b レンズ
24 レンズ
25 中空コアフォトニック結晶ファイバ
26 レンズ
27 レンズ
28 中空コアフォトニック結晶ファイバ
30 対象物
31 観察対象
33 マウス
40 顕微鏡
41a,41b ガルバノミラー
42 分光ミラー
43 対物レンズ
44 バリアフィルタ
45 検出器
50 既存の顕微鏡装置
51ガルバノミラー対
60 小型顕微鏡
61 マイクロヘッド
61a ピエゾXYスキャナ
61b レンズ
61c 分光ミラー
61d レンズ
61e バリアフィルタ
61f 対物レンズ
62 マルチモードファイバ
63 レンズ
64 バリアフィルタ
65 検出器
70 内視鏡非線形システム
71 可撓性の挿入部
72 硬性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に短光パルスを照射して2次非線形光学効果を発生させる非線形光学装置であって、
短光パルスを発生する短光パルス源と、
該短光パルス源から発生した短光パルスを前記対象物に伝送するための短光パルス伝送系とを備え、
該非線形光学装置内で発生する非線形光学効果が実質的に無く、該非線形光学装置内の群速度分散量が実質的に無く、且つ、前記短光パルス源が発生する短光パルスのパルス時間幅(半値全幅)TFWHM が、T<TFWHM<Tを満たし、
ただし、
【数1】


k:パルス波形に依存して決定されるパラメータ
3d:総群速度分散スロープ量
α=0.5
であることを特徴とする非線形光学装置。
【請求項2】
前記短光パルス伝送系の各伝播媒質の非線形係数をγ、前記短光パルス伝送系の各伝播媒質により伝送される前後の前記短光パルスのピークパワーのうちいずれか高い値をPpeak、前記短光パルス伝送系の各伝播媒質の物理長をL、総群速度分散量をD2d、総群速度分散スロープ量をD3d、前記短光パルスの出力強度が前記ピークパワーの1/eになるときの時間幅をTとするとき、
【数2】


を満たすことを特徴とする請求項1に記載の非線形光学装置。
【請求項3】
前記短光パルス源は、該短光パルス源が発生する短光パルスのスペクトル半値幅(半値全幅)をfFWHMとするとき、
【数3】


を満たす短光パルスを発生することを特徴とする請求項1または2に記載の非線形光学装置。
【請求項4】
前記パラメータkは、0.35<k<0.55を満たすことを特徴とする請求項1−3のいずれか一項に記載の非線形光学装置。
【請求項5】
前記短光パルス源は、チャープした短光パルスを発生するチャープ光発生装置と、該チャープ光発生装置から発生した短光パルスのチャープを補償するチャープ補償装置とを備えることを特徴とする請求項1−4のいずれか一項に記載の非線形光学装置。
【請求項6】
前記チャープ補償装置は、回折格子を備えることを特徴とする請求項5に記載の非線形光学装置。
【請求項7】
前記チャープ補償装置は、プリズムを備えることを特徴とする請求項5に記載の非線形光学装置。
【請求項8】
前記短光パルス伝送系は、群速度分散補償装置を備えることを特徴とする請求項1−7のいずれか一項に記載の非線形光学装置。
【請求項9】
前記群速度分散補償装置は、回折格子を備えることを特徴とする請求項8に記載の非線形光学装置。
【請求項10】
前記群速度分散補償装置は、プリズムを備えることを特徴とする請求項8に記載の非線形光学装置。
【請求項11】
前記短光パルス伝送系は、中空コアフォトニック結晶ファイバを備えることを特徴とする請求項1−10のいずれか一項に記載の非線形光学装置。
【請求項12】
前記短光パルス源は、1ピコ秒以下の時間幅の短光パルスを発生することを特徴とする請求項1−11に記載の非線形光学装置。
【請求項13】
請求項1−12のいずれか一項に記載の非線形光学装置を備え、
前記対象物から発生した2次非線形効果を検出することを特徴とする多光子顕微鏡。
【請求項14】
請求項1−12のいずれか一項に記載の非線形光学装置を備え、
前記対象物から発生した2次非線形効果を検出することを特徴とする内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−203321(P2011−203321A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68035(P2010−68035)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】