説明

非線形電流−電圧特性を有する負荷のための電子コントローラまたはアクチュエータ用電流制限装置

【課題】モータ特性に対する電流制限の適合が改善された電流制限装置を提供する。
【解決手段】電子電流制限装置が、非線形電流−電圧特性(2)を有する負荷のための電圧コントローラまたは電流コントローラ内に設けられる。負荷電流は、負荷電圧に応じて制限される。電流制限線(1)は、少なくとも2つの異なる勾配(ゼロおよび無限大を除く)を区画状に有する、非線形な挙動を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形電流−電圧特性を有する負荷を通過する電流、または該負荷にかかる電圧を調整または変動させる、電子コントローラまたはアクチュエータ用の電流制限装置に関し、特に、自動車両のファンコントローラ用電流制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる装置は、一般に知られている。一般的に、この既知の装置は、例えば電動モータなどの負荷にかかる電圧を調整する回路を備える。これらのコントローラの多くは、最大可能負荷またはモータ電流を制限する装置を含み、したがって短絡保護または過負荷保護を行う。この電流制限装置は、モータ電流IMotorが制限値Imaxに近づくやいなや、モータ電流をこの制限値Imax未満に保つように能動的に制限する。Imaxは一般に一定の値ではなく変数であり、該変数は、モータ電圧UMotorに応じて時間的に連続して設定される。ファンモータは一般に、漸進的に上昇する関数グラフを伴う非線形特性IMotor=f(UMotor)を特徴とするが、既知のファン用電流制限装置付き電圧コントローラでは、関係式Imax=f(UMotor)は線形である。
【0003】
図2から、モータ電圧とモータ電流の間の相互関係(モータ負荷特性)だけでなく、モータ電圧と電流制限を伴う既知の電圧コントローラの最大電流制限との相互関係も明らかである。細い点線の特性2は、相互関係IMotor=f(UMotor)を示す。モータ特性2が、非線形な形状を特徴としていることは明らかである。
【0004】
既知の電流制限装置付き電圧コントローラは、モータ電圧に応じて線形に電流を制限する。電流制限装置付き電圧コントローラは、モータ電圧を計測する回路を特徴としており、このモータ電圧に応じて電流を制限するために値Imaxを設定する。この制限値は、太い黒線3で図2に示されている。モータ電圧0〜1Vでは、モータ電流の制限値は5Aである。したがって、モータ電圧0Vでは、ある量の電流を許容しなければならず、そうしなければこのモータは起動しない。最大許容モータ電流は35Aである。これは、特性3の12Vより大きいモータ電圧UMotorに割り当てられた電流制限である。この電流制限により、モータ電圧が少なくとも12Vである場合に限り最大電流は35Aとされる。いずれの場合も、電流制限装置による電圧制御によって、モータ電圧は12V未満の値に制限され、ファンコントローラの場合における所望のモータ電力、所望のファン電力、は随意にはならないので、電流制限特性3は0V<UMotor<12Vの範囲内でモータ特性2と交差しない。これらを保証するには、電流制限Imax=f(UMotor)の特性3は、モータ特性2から一定の距離を保たなければならず、それによって許容誤差を確保する。
【0005】
ただし、この距離は、線形原理に従って機能する電流制限装置付きの電圧コントローラで電流制限器が応答する場合の損失電力をできるだけ低く保つために、必要な大きさだけにするべきである。ファンコントローラが、供給電圧14V(これは乗用車の通常の搭載電圧である)で、図2による線形電流制限3で動作し、7Vのモータ電圧が設定されると、例えば重負荷モータ運転などの過負荷の場合では、電流制限器は負荷電流を22Aに制限する。この運転の場合、線形原理に従って機能するコントローラでの損失電力は7V×22A=154Wになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、モータ特性に対する電流制限の適合が改善された電流制限装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、電流制限線が少なくとも2つの異なる勾配(ゼロおよび無限大を除く)を区画状に有する非線形な挙動を特徴とする、冒頭で述べたタイプの電子コントローラまたはアクチュエータ用の電流制限装置によって解決される。
【発明の効果】
【0008】
単純な技術的な実装形態では、互いに連結された複数の直線により、近似することができる。電流制限特性線の電流制限線への近似は、分点を有する一続きの直線群によって実現される。このようにして、電流制限を伴う負荷モータの公称電流を供給する制御システムが得られるが、このシステムは、故障の場合、従来の電流制限器よりも低い、臨界ではない値に電流を制限する。これは、制御装置だけでなく、モータも安全であるという利点を有する。本発明は特に、自動車両のファンコントローラに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい例示的な一実施形態を図面に略図で示し、この図面を使用して詳細に説明する。
【0010】
やはり図1から、モータ電圧とモータ電流の相互関係が明らかである。図1の細い点線の特性2が、図2の相互関係IMotor=f(UMotor)を示している。モータ特性2は、非線形な形状を特徴としていることは明らかである。図1は、モータ特性2だけでなく、それと同様に非線形の電流制限特性線1を示している。ここではUMotor=8Vで分点を有する、勾配が異なる2本の直線によって近似される。
【0011】
図1に係る電流制限特性線1を特徴とする電子コントローラ用の電流制限装置は、例えば、公称電圧7Vの場合、重負荷モータを流れる電流を17Aに制限する。供給電圧14Vの場合、この線形原理に従って機能する電子コントローラでは損失電力が119Wとなる。これと比較すると、図2に係る電流制限装置は、この例のモータ電流を22Aに制限し、したがってこの電子コントローラは、損失電力が154Wになる。図1に係る非線形電流制限器は、図2に係る線形電流制限器よりもより良く保護することが分かる。非線形な電流制限曲線1を使用する場合にもたらされる利益は、モータ特性2の曲率と共に増大する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電流制限線(モータ特性)を考慮した、本発明に係る電流制限器の特性線関数を示す図である。
【図2】従来技術による電流制限器の特性線関数を示す図である。
【符号の説明】
【0013】
1 非線形な電流制限特性線
2 モータ特性
3 線形な電流制限特性線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷電流が負荷電圧に応じて制限される、非線形電流−電圧特性(2)を有する負荷のための電圧コントローラまたは電流コントローラ内の電子電流制限装置であって、電流制限線(1)が、少なくとも2つの異なる勾配(ゼロおよび無限大を除く)を区画状に有する非線形な挙動をもつことを特徴とする電流制限装置。
【請求項2】
電流制限特性線(1)の線形が、負荷特性(2)の非線形な形状に近似されることを特徴とする請求項1記載の電流制限装置。
【請求項3】
全電圧範囲のスイッチング誤差を全て想定しても、前記電圧コントローラが前記負荷の公称電流を供給するように、電流制限特性線(1)が負荷特性(2)に対してずらされることを特徴とする請求項1又は2記載の電流制限装置。
【請求項4】
前記電流制限特性線(1)が、複数の相互接続された直線によって近似されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電流制限装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−136339(P2008−136339A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−267978(P2007−267978)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(503145110)シトリニック ゲス フュール エレクトロテクニッシュ オウスルゥスタング エム ベー ハー ウント コー カー ゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】sitronic Ges.  fur elektrotechnische Ausrustung mbH & Co. KG
【Fターム(参考)】