説明

非酵素的な分析物認識成分を用いる分析物検査システム

所定の距離をおいて互いに対向している第1の表面(2a)および第2の表面(4a)を備え、2つの上記表面が、ほとんど合同に揃えられている高い表面エネルギーの領域および低い表面エネルギーの領域を形成する実質的に同等の2つの模様を有し、高い表面エネルギーの上記領域が少なくとも2つの検出領域(6aおよび6’a)を有する試料分配系(6)を作り出し、第1および第2の表面(2aおよび4a)の少なくとも2つの上記検出領域(6aおよび6’a)が、少なくとも1つの非酵素的な認識成分(32)を有している生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査要素。分析物検査要素は、所定の分析物と認識成分との間の親和性反応を評価する分析物検査システムにとって好適であるので、現場診断および家庭における設置に適した定性的または定量的な構成機序を含む単純な検査要素を用いて、免疫検定、レセプタ検定、または他の親和性検定を実施するために好適な検査システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、水性液または生理学的使用液のような液体溶媒における分析物を質的におよび量的に測定する分析物検査システムに関する。好ましい実施形態において、本発明は、特に親和性検定および免疫検定のために、ホスト分子とゲスト分子との間の反応を定性および定量する分析物検査システムに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
種々の疾患および健康状態の診断および確認は、医療が実践されて以来、保健医療の専門家にとっての重要な課題である。最近、保健内科医は、処置において、種々の疾患および体液における患者の状態を正確な診断および確認を可能にする利用可能な多くの診断技術を有している。特定の疾患に罹っている患者の異なる状態の測定は、保健従事者にとって最も重要なことであり、同時に、異なる需要と要求とが満たされなくてはならない。血液、血清および尿のような体液における異なる分析物の測定は、種々の疾患の管理において重要な役割を果たす。
【0003】
また、医師および患者は、特に家庭における監視および現場診断のために、使い易くて便利な、正確な検査結果のシステムおよび製品を求めている。そのような便利さは、医師および患者が最終的な検査結果を得るために行う手数、ならびに検査システムが液体試料として血液または血清を必要とする場合に必要な試料の体積および器具などを生体に挿入する必要のある手法と非常に関連している。代表的な例は、妊娠検査におけるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の検出あるいは急性心筋梗塞の時刻を決める心臓マーカーとしての心臓トロポニンI、心臓トロポニンT、CKMB、ミオグオビンおよびBNPの測定である。
【0004】
ますます重要なっている分析物の更なる例としては、あらゆるさらなる癌化組織が臨床的にまたは画像によって見られる前に、治療を受けている患者を監視して、疾患の経過を明らかにするために有用かつ重要な腫瘍マーカーがある。これらのマーカーの例としては、CEA、PSA、CA19−9、およびCA125がある。造血タンパク質であるCEAまたは癌胎児抗原は、消化管系の癌によって産生されることが最初に分かった。
【0005】
同様に、真性糖尿病に関する合併症と同義である疾患管理および/または制御のますます重要になる局面のさらなる例としては、糖尿病の網膜症である。
【0006】
PSAまたは前立腺特異抗原は、通常の前立腺によって産生される。精子を維持する抗凝固剤として作用するセリンタンパク質分解酵素と呼ばれる酵素である。この酵素は、ごく少量が通常の循環において血液循環にしみ出る。拡張した前立腺および癌化した前立腺は、血液循環および尿に相当な量が漏れ出すので、診断および診察方法によって検出され得る。
【0007】
上述の検査のすべておよび多くの他の検査は、存在または非存在をそれぞれ判定して、分析物の分子の濃度を定量するために、所定の分析物(ゲスト分子)と分析物を特異的に認識する要素(ホスト分子)との親和性反応を利用する。
【0008】
当該技術分野における当業者は、実施した検定を免疫検定法として分類する。この場合には、上述の記載に述べた親和性反応は、認識成分としての抗体または抗体断片と、通常、抗原と呼ばれる所定の分析物との間において行われる。この種の親和性検定は、臨床および医療診断の分野において最も知られており、かつ広く用いられている。
【0009】
2003年に、960万人の市民が、米国において癌を抱えて生活していることが記録された。米国癌協会は、早期の診断および診察が癌による死亡を(例えば、結腸直腸癌において30%、子宮頚癌において60%)低下させることを示している。さらに、欧米において増加している他の種類の疾患は、2、3名前を挙げると、肥満、糖尿病および関節炎などを含む。さらに、免疫検定を用いた疾患の診断は、医師に早期の薬物療法または治療の機会を与えて複雑なかつたいてい行われる器具などを生体に挿入する必要のある治療を実施しなければならない見込みを低減させる。上述のような治療は、細菌のリスクが原因して危険に満ち、また費用もかかる上に、患者が完治する見込みは、疾患が患者の体内において明らかになってから時間が経つごとに減少する。
【0010】
特に、ある種のウイルスは世界中において減少しているが、他のウイルスは増加しており、世界保健機構は、全世界において、2005年までにヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した人口が、2000年から8%増加して、推定4000万人であると報告している。補足的なデータによって、第3世界または発展途上国は、この疾患にかかっている診断された個人の数が有為な増加を示すことを支持しており、いくつかの国にとって、比較によるデータに関して15%の増加も珍しくない。
【0011】
従って、医師にとっての現在の問題は、患者が疾患にかかっているか否かを決定するために、迅速かつ正確な検査結果を供給するかれらの能力である。HIV、結核および癌のような疾患の検査手順の1つにおいて、患者から血液試料を採って、それを分析研究所に送る。実際に、上述のような手順は、最初の診察から検査結果までの時間の遅れが相互の負荷および不要な治療の遅れの原因になって、これにより患者のリスクが上昇するので、患者にとって問題がある。しかし、現場診断および予約なしでくる患者が、保健省が認める非効率さに反して、いくつかの国において普及しているが、これにかかる費用のために社会の最も富裕な層に属する人たちにのみ、興味をもたれている。
【0012】
また、医師の診察室に検査設備を備えるのは、開業医にとって費用がかかり過ぎて、一部の医師にとっては、分析のために液体試料を研究所に送ることに頼るほうが好ましいかもしれない。また、すべての保険機構が現場診断を無料にしているわけではないので、ある国においては通院による医療処置の費用が、ある個人にとって法外に高いかもしれない。さらに、場合によって、疾患の診断および監視は、例えば、医師が体液に疾患が存在するか否かを確認し、次に体液に含まれる分析物の濃度水準を分析することによって疾患がどの程度進行しているかを確認するという、2倍の努力を行うことになり得る。
【0013】
このようにして、病気の危険性があるかもしれないと感じている個人は、現場診断または家庭における診断的な検査から恩恵を受けるであろうし、同時に、自身の快適な環境において、簡便に検査することができる。また、もし、検査室にかかる高価な費用を被ることなく、医師が現場において検査を実施すれば、医師は、日常において日々の職務の活動度に対する能率性を得るだろう。多くの場合において、診断キットの供給は、患者が病気を制御する要素を、患者に与えることになるだろう。
【0014】
種々の検査要素は、糖尿病、妊娠および受精のような生理学的な状態の家庭における検査のためにあるのだが、種々の検査要素は、現場診断または家庭において、迅速かつ正確な結果とともに疾患の状態および進行の情報を与える簡単な診断ツールを提供可能な最小限の検査用具を備えている。
【0015】
検査試料における分析物の存在およびそのレベルを測定する、検査室の検査設備および/または治療検査要素にとって有用な異なる検出方式がある(例えば、凝集免疫検定、拡散免疫検定、酵素修飾因子検定、蛍光によって補助した免疫検定、およびコファクター−アポ酵素検定)。
【0016】
したがって、多くの近代産業および特に代謝監視産業には、以下のような特徴および性質を有する検査要素を提供するという課題がある。
【0017】
上記検査要素は、ユーザにとって可能な限り少ない操作手順によって、水性の液体および体液における精度の高い定性的な検査結果または精度の高い定量的な検査結果を提供すべきである。
【0018】
上記検査要素は、少ない量の試料を必要とし、その結果として医師および患者が生体に挿入する必要のある手法を最小限度にのみ使用することを可能にすべきである。
【0019】
上記検査要素は、わずかな製造工程およびそれによる安価に製造することを必要とし、かつ患者による生理的な要因の自己検査を助ける製品として、および/または医師の職場において、使用可能であるべきである。
【0020】
従来の文献には、上述のように説明した課題を解決または部分的に解決するシステムまたは具体例が記載されている。同時に以下に引用する文献は、開示された発明に対して特に興味深いものである。米国特許4,213,893号には、血清のような液体におけるリガンドまたは特異的な結合のパートナーを決める特徴的結合検定における標識された接合体として利用可能な、フラビン アデニン ジヌクレオチド(FAD:Flavin Adenine Dinucleotide)を用いて標識した接合体が開示されている。リガンドにとっての結合検定に使用される、FADを用いて標識された接合体は、FAD活性(例えば、標識した接合体の補酵素活性または補欠分子団の活性)の測定による検定のために監視される。
【0021】
米国特許4,708,933号には、生物学的な液体における抗原、抗体および類似の作用物質の存在および/または濃度を定量し、かつ決定するために採用される、リポソームの不安定化および溶解を引き起こす抗原性リポソームの横方向の相分離を利用する、同質の固相免疫リポソーム検定が開示されている。
【0022】
臨床化学27巻の1499〜1504頁(Rj Tyhach et alによって1981年に公開された試薬除去形式に対する補欠分子団によって標識した同質の免疫検定の適用)には、補欠分子団誘導体としてフラビンN6−(N’2,4−ジニトロフェニル−6−アミノヘキシル)アデニン ジヌクレオチド(DNP−FAD)および競合リガンドとして6−N−(2,4−ジニトロフェニル)アミノヘキサン酸(DNP−カプロン酸塩)を用いて試薬除去形式に組み入れられた、補欠分子団によって標識した免疫検定(PGLIA:Prostatic−Group−Label Immunoassay)技術が開示されている。抗体によって結合しないDNP−FADは、グルコースおよび酸素と反応するグルコース酸化酵素アポ酵素とともに、ペルオキシダーゼに連結された系を介して発色する。従って、その発色率は、DNP−カプロン酸塩濃度と関連している。
【0023】
Journal of Clinical Investigation 115:86−93 (2005)のBulter et alによって公開された“SDF−1は、増殖性網膜症の促進に必要かつ十分である”には、SDF−1として知られるタンパク質と網膜症との関連が開示されている。
【0024】
欧州出願163,393号は、非抽出の体液における所定のリガンドの存在を決定する、ラテックス免疫検定法が開示しており、ラテックス免疫検定法の非特異的な干渉を減少させるために、反応混合物の中にハロゲンによって置換されたカルボキシル酸または上記酸の塩を含有する化学的な添加物を含んでいる。上述のような添加物の添加によって、試料における、外因性の代謝物の量的なレベルを測定し、かつ薬物、治療薬および特異的な結合タンパク質のような所定の特定のリガンドを監視する凝集免疫検定を利用することができる。
【0025】
PCT WO2002/086472号公報には、周囲の粘性に基づいて蛍光強度が変化する蛍光分子回転子の利用について開示されている。この分子回転子は、膜または液体の粘度を測定可能にする炭化水素鎖または親水性基を用いて修飾されている。
【0026】
PCT/EP 2004002284には、生理学的な液体(例えば、血液)における分析物(例えば、グルコース)の光度の検出または量的な測定をする、標準添加法を用いた一体化された校正システムを備えた、分析物検査システムが開示されている。この要素は、試料分配系を形成する第1および第2の表面、ならびに酵素反応によって分析物を検出/測定可能な触媒調合物および校正調合物のそれぞれを用いて被覆されている検出領域を備えている。
【0027】
しかし、これまでに、所定の分析物と分析物を特異的に認識する要素との間の非酵素反応を評価できると同時に、与えられた生理学的なまたは水性の試料液体におけるかかる分析物に対する、一体化された校正および/または定性制御測定を実施する、現場診断または家庭における設置に好適な分析物検査システムは、存在していない。
【0028】
〔発明の要約〕
従って、本発明は、所定の距離をおいて互いに対向している第1の表面(2a)および第2の表面(4a)を備え、2つの上記表面が、ほとんど合同に揃えられている高い表面エネルギーの領域および低い表面エネルギーの領域を形成する実質的に同等の2つの模様を有し、高い表面エネルギーの上記領域が少なくとも2つの検出領域(6aおよび6’a)を有する試料分配系(6)を作り出し、第1および第2の表面(2aおよび4a)の少なくとも2つの上記検出領域(6aおよび6’a)が、少なくとも1つの非酵素的な認識成分(32)を有している分析物検査要素を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、分析検査要素は、上記第1の表面(2a)n個の所定の検出領域(6a)が、m個のブランク調合物および異なる濃度の校正化合物(33)を含むn−m個の調合物から構成されるn個の校正調合物(18)を用いて、覆われており、
nが、2よりも大きい整数であり、mは1以上の整数であり、かつn>mであり、
上記第2の表面(4a)が非酵素的な上記認識成分(32)を含む調合物を用いて覆われている。
【0030】
さらなる局面において、本発明は、測定装置および所定の分析物と非酵素的な分析物特異的な認識成分との非酵素的な親和性反応用の(例えば、帯状片の形をした)分析物検査要素からなる分析物検査システムを提供する。統合された校正および定性制御機序のために、上述の分析物検査システムは、必要な標準および/または定性制御を含む分析物検査要素の試料分配系を利用して、標準付加法を採用している。当該システムは、現場診断および家庭における検査に有効な簡単なかつ使い捨ての検査要素を用いた迅速かつ簡単な方法において、免疫検定、レセプタ検定または他の親和性検定を実施するために、最適化される。
【0031】
本発明の分析物検査要素の作製は、上記要素の安価な製造を可能にする少ない数の複雑ではない製造段階に関する。
【0032】
添付の図面と合わせて行う、例示的なかつ好ましい実施形態に関する以下の記載を参照すれば、本発明の特徴および利点についてより一層の理解が得られるであろう。
【0033】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、検査帯という形状を備える本発明の分析物検査要素の一実施形態を示す斜視図である。
【0034】
図2は、拡大した試料導入領域および試料導入系を示している、図1に係る実施形態の斜視図である。
【0035】
図3は、別々の構成を有する3つの層を示している、図1に係る要素の分解斜視図である。
【0036】
図4は、第1の層および第2の層とともに試料穴を形成する中央層の間隙の異なる形態を示している。
【0037】
図5は、疎水性案内要素によって構成される試料分配系の検出領域を示す断面図である。
【0038】
図6は、疎水性経路を用いた試料分配系における検出領域の他の実施形態を示す断面図である。
【0039】
図7は、凝集反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【0040】
図8は、微小粒子の凝集((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、微小粒子上に不動化された認識成分と、校正化合物との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【0041】
図9は、異なる校正方法に適した、経路および検出領域の異なる形態を有する試料分配系の異なる実施形態を示している。
【0042】
図10は、光放出手段および光検出手段を取り付けて、吸光度測定用として構成された図6の試料分配系の試料検出領域を示している断面図である。
【0043】
図11は、光拡散または蛍光の評価用に構成された分析物検査要素にとっての検出器の配置を示している。
【0044】
図12は、非競合的な検定(A)および競合的な検定(B)の定性分析の結果および評価を模式的に示している。
【0045】
図13は、直線的な標準付加法を用いた分析物濃度の測定を例示している。
【0046】
図14は、算出された結果および校正データの有効化法を示すグラフを与える。
【0047】
図15は、非特異的なタンパク質との親和性を有する蛍光色素の例を示している。
【0048】
図16は、蛍光分子回転子によって増強された凝集反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物と、レポータ要素としての非特異的な蛍光分子回転子との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【0049】
図17は、非特異的な蛍光分子回転子の例を示している。
【0050】
図18は、レポータ要素としての特異的な蛍光染料を採用している親和性反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物と、特異的なレポータ要素との間に最終的に形成される親和性複合体)の模式的な原理を示している。
【0051】
図19は、アポ酵素によって補助した認識検定(AARA:apo−enzyme assisted recognition assay)の反応原理を示している。
【0052】
図20は、分析物検査要素の試料体積に対する、積層形成過程における位置合わせ失敗の影響だけでなく、(検査帯の性質を損なうことなく、基底層と被覆層との位置合わせに高い許容度を許す)選択可能な実施形態(C)の平面図およびそれぞれの断面図を示している。
【0053】
図21は、親和性検定および免疫検定に有用な分析物検査要素の準備方法を示している。
【0054】
〔発明の詳細な説明〕
図1および図2に示すように、本発明の分析物検査要素1は、基底層2、基底層2を覆う中央層3、中央層3を覆う被覆層4を備える、多層の配列物である。中央層3は、基底層2および被覆層4と併せて中空の穴を作り出す、間隙5を与える。上述の穴の中には、分析物検査帯の1方の側面に接続されている試料分配系6に配置されている。ユーザとをつなぐ領域としての試料導入領域9は、試料をより簡単に導入するための検査帯の主要な1つの側面から伸びている凸状の曲線10によって形成されていることが好ましい。分析物検査帯の第2の主要な側面上にある試料導入領域9および10の向かい側には、生理学的なまたは水性の液体が所定の検出領域6aおよび6’a(図3を参照のこと)に分配されると同時に空気の置き換えを可能にする、空気孔11が配置されている。この構造が、分析物検査要素内に用いられている所定の検出領域の大きさに関わらず、1つだけ空気孔を必要とすることが分かる。高い表面エネルギーの領域を有する試料分配系の上述の要素(試料導入領域、空気孔、中央層、および中央層における間隙)は、自然の毛細管現象を生み出して、導入された生理学的なまたは水性の液体を所定の検出領域に対して分配させる、分析物検査要素の総体を形成している。
【0055】
また、分析物検査帯状片1は、異なる分析物を測定するための何種類かの分析物検査要素間の区別に有用な、位置合わせ形状7および8を備えている。これによって、複数の分析物の測定器は、特定の分析物の測定に必要な帯状片への挿入について選択的な要因を有する、特別な計画または手法を実行する命令を受けることができる。
【0056】
図1および図2の多層配列物の展開して示している図3に示すように、基底層2は、第1の表面2aを提供し、かつ被覆層4は、第2の表面4aを提供する。第1の表面および第2の表面は、試料分配系6を作り出す領域の模様がつけられている。試料分配系6の模様は、多層配列物の組み立てに関して、ほとんど合同に並べられるまたは位置合わせされる、所定の数の分析物検出領域6aおよび試料通路6bを備えている。中央層3は、基底層2の第1の表面2aと被覆層4の第2の表面4aとの距離を決め、かつ基底層2の第1の表面2aおよび被覆層4の第2の表面4aとともに中空の穴を形成する間隙5を有している。第1の表面2aと第2の表面4aとの間に形成される試料分配系6は、中央層3の間隙5ならびに基底層2の第1の表面2aおよび被覆層4の第2の表面4aによって作り出される穴の中に配置される。中空の穴は、試料分配系よりも実質的に大きく設計されることが好ましい。
【0057】
中央層の間隙5の目的が試料分配系6にとっての穴を作り出すためだけなので、中央層3の間隙5は、図4に示されている例のように、異なる形態を有していてもよい。図4aは、傘の形状である分析物検査要素の穴12を示しており、図4bは、矩形の分析物検査要素の穴13を示しており、図4cにおける試料の穴14は、円形を有している。中央層3の間隙5は、所定の検出領域6aの大きさおよび試料分配系6の通路6bの大きさに影響されず、このため、必要な試料の体積に影響しないまたは必要な試料の体積を変化させない。試料分配系6と比較して、図4に示される穴の形状はむしろ単純であり、このため、単純な穿孔器具を適用すること、および位置合わせの正確さの要求を抑えて速い加工を可能にする。
【0058】
中央層3の間隙5ならびに基底層2の第1の表面2aおよび被覆層4の第2の表面4aによって形成される穴の中に配置された試料分配系6は、上述の表面2aおよび4a上にある高い表面エネルギーの生成領域および低い表面エネルギーの生成領域によって形成されている。基底層2の第1の表面2aおよび被覆層4の第2の表面4a上における高い表面エネルギーの領域および低い表面エネルギーの領域は、互いにほとんど合同に並べられ、かつ位置合わせされる。導入された生理学的な液体またはあらゆる他の水性の液体が、高い表面エネルギーを有する領域のみを濡らすので、導入された生理学的な液体またはあらゆる他の水性の液体は、試料分配系6の所定の通路6bおよび検出領域6aの内側であり、基底層2の第1の表面2aと被覆層4の第2の表面4aとの間に閉じ込められる。
【0059】
図5は、疎水性“案内要素”を用いた試料分配系の構造を示している。本発明の分析物検査要素の本実施形態において、基底層2および被覆層4は、試料の通路および検出領域を形成する領域を除いて、疎水性層16に覆われている。疎水性層16は、導入された試料液体15に対する反発力を起こし、このため、試料分配系を形成する高い表面エネルギーの領域に試料液体15を閉じ込める、低い表面エネルギーを有する領域を作り出す。
【0060】
疎水性層16は、生理学的なまたは水性の液体15によってぬれる親水性表面2aおよび4a上に塗布されることが好ましい。上述した手法は、セロファンのような天然の親水性重合体またはガラスだけでなく、親水性高分子材料(例えば、シリコン2酸化物、エチレン酸化物、エチレングリコール、ピロールまたはアクリル酸)の被覆処理あるいは物理プラズマ堆積または化学プラズマ堆積を用いて疎水性表面に親水性を与えることによって、通常の重合体(以下に例示している)の疎水性表面から作製される親水性表面を必要とする。従って、“案内要素”の模様は、基底層および被覆層の疎水性表面に疎水性インクを打ち出すことによって実現されてもよい。
【0061】
好適な疎水性インクは、水に対する接触角が通常100°以上および通常25mN/m未満である表面エネルギーを有し、かつ通常、疎水性作用、疎水性添加物あるいは疎水性顔料および充填剤を有する単量体、低重合体および重合体を含んでいる。
【0062】
図6は、親水性経路を用いた試料分配系の他の構成を示している。分析物検査要素の本実施形態において、自然に疎水性を有する基底層2および被覆層4は、親水性化合物またはワニス17を用いて覆われて、これにより高い表面エネルギーの領域を作り出される。
【0063】
疎水性表面2aおよび4a上に打ち出された疎水性試薬17は、生理学的なまたは水性の液体15によって非常にぬれ易い。従って、試料分配系の親水性経路を作り出す高い表面エネルギーの領域が、導入された生理学的なまたは水性の試料液体15に対する正の毛細管力を発揮して、試料液体を別々の検出領域に運ぶ。
【0064】
親水性模様は、疎水性表面に親水性または両親媒性の試薬を打ち出すことによって、実現されてもよい。親水性作用を有するインクは、極性溶媒(例えば、水またはアルコール)に可溶な、高い分子量の重合体およびそれらの混合物という広い選択肢から実現されてもよい。特に有用なものとしては、アルギン酸塩、セルロースおよびセルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、ゴム、アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレン酸化物、ポリビニルピロリドン、ポリエステルスルホン酸塩、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、ビニルピロリドン/トリメチルアンモニウム共重合体、ならびにアルキルホスホコリン誘導体から調製された誘導物である。さらなる最適化が有機修飾されたポリシロキサンの架橋結合可能な種類である有機修飾されたシリコンアクリル酸塩の付加物、およびフッ素化された界面活性剤を用いて、達成されてもよい。好適な被覆によって、通常、35°未満の水に対する接触角および通常、50mN/mより大きい表面エネルギーを与えてもよい。
【0065】
印字過程にとって基板として好適な基底層2および被覆層4は、ガラス、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエステルとフルオレン環を含むポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリカルボネートとポリカルボネート−ポリエステルのグラフト共重合体、末端修飾されたカルボネート、ポリオレフィン、シクロオレフィンとシクロオレフィン共重合体、および/またはオレフィン−マレイミド共重合体のような材料から形成されてもよい。
【0066】
基板が中程度の疎水性性質を有している場合には、周囲の疎水性模様(例えば、図5および図6の構成の組み合わせ)を用いた親水性経路の印字が、同様に可能である。
【0067】
選択可能な実施形態において、第1のまたは第2の表面は、親水性/疎水性模様(6および16)を付与され、同時に、同じ表面は、第2の表面の等価な親水性模様および疎水性模様(6および16)を用いて第1の表面の親水性模様および疎水性模様(6および16)を並べる必要を省く、やや親水性およびやや疎水性性質(両親媒性の性質)を有する表面を作り出す疎水性領域に囲まれたピクセルの同じ構造の模様を備える。上述の両親媒性表面の性質は、疎水性ピクセルの幾何学的な模様および親水性領域と疎水性領域との間の全体的な比率によって簡単に設計され得る。開示された本発明において、両親媒性の性質、それぞれにおける親水性ピクセルと疎水性ピクセルとの間の比率は、対向する表面が疎水性を備えていれば、試料液体が親水性ピクセルから親水性ピクセルまでのみを進むように、設計される。対向する表面が疎水性の性質を備えていれば、分析物検査要素の毛細管の間隙内における液体の移動は、停止する。この機序は、上述のような方法によって、第1の表面および第2の表面上に備えられる試料分配系の一致する模様の正確な位置合わせに関して厳密な要求なしに、機能的な分析物検査要素の形成を可能になる。
【0068】
しかし、第1の表面および第2の表面の両方は、高い表面エネルギーおよび低い表面エネルギーの等しい模様を備えて、試料分配系の親水性の経路内の試料液体の素早い分配を確実にすることが好ましい。
【0069】
さらに、第1および第2の表面上において約3〜5倍の厚さを有する疎水性層17のエッチング、浮き出しによって、または単に印字によって低い表面エネルギーの領域から第1の表面および第2の表面における高い表面エネルギーを有する領域に物理的に持ち上げることができる。この上昇によって、親水性経路における毛細管の間隙は、周囲の領域と比較してより小さくなり、かつ試料液体に対する毛細管力をより高める。
【0070】
好ましい実施形態において、分析物検査要素に含まれる試料分配系に必要な体積は、約0.5μl〜1.0μlと非常に少なく、かつ検出領域ごとに約100nl〜150nlだけ必要であると同時に、表面エネルギーの高い領域および表面エネルギーの低い領域は、疎水性の案内要素、疎水性の経路またはこれらの組み合わせによって作り出されている。試料分配系の体積が種々の設計および採用した所定の検出領域にともなって変化することは、当該分野の当業者にとって明らかなことである。
【0071】
第1および第2の表面2aおよび4aにある、検出領域を形成している高い表面エネルギーの領域は、検出を促進し、かつ試料液体15における分析物の測定を可能にする調合物18および19を用いて被覆されている。図5および図6に示されている実施形態において、検出領域の第1の表面2aは、校正調合物を用いて被覆されている。校正調合物は、認識成分に対する親和性を有している分析物または分析物と等価な分子であり得る校正化合物を含有している。検出領域の第2の表面4aは、分析物に対する親和性を有し、かつ試料液体における分析物の検出および測定を促進することが可能な認識成分(例えば、受容体、抗体またはFab断片のような抗体の断片)を含有する、認識調合物19を用いて被覆されている。校正化合物と同様に認識成分の具体例は、以下に示されている。
【0072】
上述のように、医師および実施される検査の必要に応じて、体にはびこる異なる疾患は、異なる感度および動的な範囲を要求する。例えば、HIV用の分析物検査システムは、しきい検出のために非常な感度の手法を必要するが、広い動的な範囲は必要ではなく、これとは逆に、HbA1c、糖尿病の進行にとっての3ヶ月マーカーおよび患者の服薬の検出は、広い動的な範囲を必要とするが、過剰に敏感な閾値を必要としない。
【0073】
糖尿病網膜症のような糖尿病の合併症の発症は、タンパク質に基づく検出手段を用いる場合、非常な感度の手法を必要とする。例えば、上述の合併症の検出は、少なくとも2倍の処置(例えば、従来、網膜症の発症が眼科医によって観察され、糖尿病網膜症の診断および状態は検眼鏡を用いて網膜を詳細に検査される)になり得る。糖尿病網膜症の第2の検出技術において、間質性細胞由来因子−1(SDF−1:Stromal cell−Drivated factor−1)のタンパク質濃度は、疾患の重傷度と相関している糖尿病網膜症の進行に関連して増加することが知られている。このため、上述のタンパク質は、網膜症のような疾患の合併症を検出および監視する検定にとっての基礎として使用されてもよい。
【0074】
このように、検出方法および検出方式は、患者の治療要求のそれぞれに診断的な需要の要求に適合されなければならない。以下に開示および明確にされている例は、要求される診断的な課題を満足する分析物検査要素の実現に限らず、好ましい。それらは、ほとんどの場合において、分析物と好適な分析物認識成分との間における所望の親和性反応(認識反応)の検出を可能および増強する、蛍光色素、微小粒子、補酵素およびアポ酵素のような化学的および/または生化学的な化合物を含有する。このため、これらの化合物は、通常、レポータ要素または多くの場合にレポータ系と呼ばれる。
【0075】
(親和性検定の分析にレポータ要素を利用する分析物検査システム)
凝縮法
図7は、親和性検定および免疫検定に適用可能な、あるいは認識検定を通常に説明した、模式図および本発明の第1の実施形態の原理を示している。本実施形態において、所望の分析物31とその特異的な認識成分32との定性的かつ定量的な反応のそれぞれを示す、凝縮反応が説明されている。この特定の場合において、分析物31は、ウイルスタンパク質またはhCGのようなタンパク質であってもよく、かつ認識成分32は、このタンパク質に対する抗体であってもよい。
【0076】
図7は、所望の検出物31を含む液体試料15が、第1の表面2aおよび第2の表面4aに付けられた、認識成分32および校正化合物33を含む試料検出領域に入っているときの反応を模式的に示している。校正化合物33と同様に認識成分32は、液体試料15によって溶けて、認識成分32は、液体試料に含まれる分析物31だけでなく校正化合物33とも反応する。反応が進行すると、認識成分32は、分析物の1分子との結合が可能でありかつ必要とするので、認識成分32は、続いて分析物の分子のすべてを大きな凝集体に架橋または凝集する。これらの凝集体または粒子の大きさは、それらの物理的な大きさに応じてレーザ光を散乱させる。凝集体が光の波長よりも小さければ、レイリー散乱およびレイリー−ガンス−デバイ散乱として当該分野の当業者に知られている特定の散乱を生じる。一方において、凝集体が光の波長よりも大きければ、ミー散乱として知られている散乱を生じさせる。レーザ光に相関する、異なる種類の散乱および散乱の傾向は、分析物の存在および量のそれぞれを測定するため用いられてもよい。
【0077】
認識成分32が図8に示すように、例えば、金またはポリスチレンから作られた微粒子に不動化されている場合において、複数の感受性を与えられた微粒子と分析物との間の凝集反応は、単純な光度計によってまたは肉眼によってさえ、追うことができる。凝集反応の進行の間、単独の微粒子の量が凝集によって減少するので、散乱中心の数は減少し、かつ試料検出領域を通過する光の透過性が向上して、光は上述の反応の後に弱く散乱される。
【0078】
同様にして、液体試料媒体における分析物と認識成分との親和性反応の非存在は、凝集反応の非存在によって識別されるので、試料検出領域を通る光の透過性が低いことによって、特徴付けられる。
【0079】
分析検査要素は、好適な認識成分および感受性が与えられた微粒子35を用いて基底層2の第1の表面2aにおける検出領域6’aを被覆して形成されている。微粒子35は、ラテックス、金またはゼラチンであることが好ましいが、なかでも金がより好ましい。炭素またはポリスチレンなどのような他の周知の粒子が用いられてもよいことは、当該分野の当業者にとって明らかなことである。もう1つの方法として、微粒子35は、被覆層4の第2の表面における検出領域6a上を覆っていてもよい。さらに、校正調合物18および校正化合物33のそれぞれが分析物の分析に必要でなければ、微粒子は、上述の第1の表面2aにおける検出領域および上述の第2の表面4aにおける検出領域の両方を覆っていてもよい。
【0080】
他のさらに好ましい実施形態において、上述の第1の表面2aにおける検出領域6aは、校正調合物18を用いて覆われている。陽性対照および陰性対照の分析を分析物の測定と平行して実施することができるので、測定が正確に行われおり、かつ適用された分析物検査要素だけでなく分析物検査システムが十分に役に立つという保障をユーザに与えることができる。
【0081】
このような多様性は、凝集反応を完全に完了させることが可能な1つの検出領域(例えば、6’a)における高い校正化合物(認識成分に対する親和性を有している分析物または分析物の等価な分子)を与える。従って、検出領域6’aにおける読み出しは、測定装置のほぼ100%または最大測定限界に一致するであろう。第2の検出領域(例えば、6’a)は、認識成分と分析物31の親和性反応を阻害する阻害化合物または非感受性の微粒子のような非反応性の認識成分を保持しているので、検出領域6’aの読み出しは、凝集反応のほぼ0%になる。本実施形態において、所定の検出領域6aにおける認識成分および感受性が与えられた微粒子のそれぞれの濃度は、研究所において最適なような特定の検定用に最適化された濃度に等しい。
【0082】
さらなる最も好ましい実施形態において、基底層2の第1の表面2aにおける2つの検出領域は、同じまたは等価な非触媒作用の親和性反応をする異なり、かつ所定の濃度の分析物または化合物を含む校正化合物を用いて覆われている。
【0083】
最も単純化した校正の型において、分析物と認識成分との親和性反応によって生じる光学反応は、線形的である、またはf(log(x))またはf(1/x)のような適した数学的な関数によって容易に線形化されてもよい。試料導入領域9を用いた液体試料の導入の後に、試料は、試料検出領域に分配される。ここで、試料は第1の表面2aを覆っている校正調合物18および第2の表面4aを覆っている認識化合物19を可溶化して、分析物31と校正化合物33と認識成分32との親和性反応を開始させる。試料に含まれる分析物に加えられる検出領域6’aおよび6’aにおける校正化合物の異なる濃度によって、測定装置および検出装置のそれぞれは、試料液体における分析物の濃度に対する検出領域6aのすべての光学的な読み出しを、相関させることができる。選択可能に試料検出領域6cは、認識成分を含んでいない、または感受性が与えられていない微粒子のような非特異的な結合相手を含んでいるので、検出領域6cにおける試料液体の付与は、凝集を開始させず、かつ分析検査要素における試料液体15のバックグラウンドシグナルの評価に有用である。上述の校正方法は、標準添加法として当該分野の当業者に知られており、「困難な」試料の母体を有する試料用に使用される。
【0084】
図9は、図6に示したような親水性の経路によって、または図5に示したような疎水性の“案内要素”によって、あるいは親水性の経路と疎水性の案内要素との組み合わせによって実現される試料分配系の異なる型を示している。図9における部屋AIは、最も単純な試料分配系のすべての場合を説明している。図9の列Aは、バックグラウンドの補正をしない試料分配系の外形の設計を示し、列Bは、バックグラウンドの補正をする試料分配系の外形を与え、列Cは、隣接する形状を用いて達成する最も高次な多項式の補正の方程式を示し、列nは、各表面における所定の検出領域の数および必要な測定数をそれぞれ示している。各模様の文字は、バックグラウンド補正(c)、試料(1)、および校正化合物の量を増やしてある、関連するすべての補正領域(2、3、4、5および6)を示している。最も単純な補正は、測定と分析物の濃度との関係が厳密に比例する直線的な方程式によって表される。分析物検査化合物の校正は、通常、異なる検出領域の校正化合物を試料に加えることによる標準付加法および続く直線的なまたは単調な非直線的な補正方程式を用いて実施される。図13は、場合Iについてのより詳細な説明を示している。補正の型または次数(列C)は、選択した分析物および採用した検出の化学的性質によって適切である必要があるので、4次の型に従う化学反応に対して直線的な補正の型を適用することができない。そして、この逆もまた同様である。しかし、直線的な補正に5つの標準添加用に設計した分析検査要素を使用することは、それでも可能である。より多い数の標準は、正確な測定および比較された検査の相関関数、標準偏差および標準誤差に関してより高い重要性を有する統計的妥当性でさえ、2つの標準に基づいて直線的な補正を可能にする。
【0085】
さらに、試料および標準の測定の繰り返しは、なお可能であるので、下段のIVに示されている実施形態を用いて生理学的な試料液体または水性試料液体の特定の試料の1つに対する2つの独立した直線的な補正を実施することができる。その上さらに、2つの分析物の測定に同じ分析検査要素を用いることができる。また、選択された検出の化学的性質が干渉の不具合を生じないのであれば、多段の分析系は所定の検出領域の同じ組の中に実現されてもよいので、1つの反応の反応抽出物および反応生成物は、他の反応に関与せず、生成された指示染料は、実質的に異なる波長の範囲において光を吸収する。
【0086】
分析検査要素のさらなる変更可能な実施形態において、補正はより定性的な性質である。検出領域6aの結果は、付加的な検出領域(例えば、6aおよび6a)によって与えられた陽性標準25cおよび陰性標準26cの検出限界を比較される(詳細については図12を参照のこと)。上述のような方法は、通常、妊娠検査システムから分かるように定性的な表示だけが必要な分析に有用である。
【0087】
この場合において、分析物と認識成分との反応の光学的な反応は、直線的ではなく、分析検査要素の試料分配系においてよりおおくの所定の試料検出領域を導入することによって試料分配系が図9に従って非直線的なふるまいに適用されるならば、多の校正の型が採用されてもよい。当該分野における当業者は、図9が説明を目的として適用可能な試料分配系を例示的に集めて示していることに気が付くであろう。また、他の幾何学的な図形は、等価なまたは関連する課題を満たすことが可能であり、かつ有用である。
【0088】
分析物と認識調合物19に含まれる認識成分32との反応の光学的な反応は、測定装置または検出装置によって測定される。測定装置または検出装置は、図10に示すように、所定の試料検出領域6を通して光波24を発する光源20を含む、少なくとも1つであるが、好ましくは複数の配列物を有する帯状片保持部を提供する。光波24の波長は、300nm〜800nmの範囲にあればよいが、好ましくは400nm〜650nm、最も好ましくは635nmである。上述の光源から放射される光は、レンズおよび開口部のような光学的な配列物21および22、基底層2、液体媒体15、ならびに検出領域の被覆層4を通過して、検出手段23によって検査要素の反対側において検出される。光の検出手段は、開口部、レンズおよび/または光学フィルタのような光学的な配列物21aおよび22aならびに少なくとも1つの光ダイオード、光トランジスタ、光電池または荷電結合素子の整列物を備えることが好ましい。光源は、好適な波長を有する発光ダイオードまたはレーザダイオードであってもよい。
【0089】
凝集反応が微粒子の助けを借りずに光散乱によって直接に監視される場合において、光源および検出手段が互いに反対側ではなくむしろ約90°の角度に配置されて、最大限の感受性が実現されることが最も好ましい。光源と検出手段との好ましい角度は、80〜120°の間であるが、最も好ましくは、109°であり、かつ図11に示すように、分析物検査システムは、基底層と光源との角度および被覆層と検出手段との角度を54°にして、検出領域の異なる表面上における内部反射によるバックグラウンドノイズを低下させるように、光学的な検出配列物の中に配置されている。従って、検出手段は、光源によって生じた光波ではなく、凝集粒子上における散乱によってそれた光波のみを読み取るであろう。とはいえ、当該分野における当業者は、実際の角度は、測定装置および検出装置のそれぞれの特定の用途、必要な感度、および要求のために最適化されることに気が付くであろう。さらに、図11に示されている配置は、光源20および光検出器23が励起波長と発光波長とを選別する付加的なフィルタを備える構成であれば、蛍光の検出に採用されてもよい。
【0090】
親和性反応が生じている間に、試料検出領域6のそれぞれの中に光波が導入されると、光波の散乱が促される。検出領域のそれぞれにおける分析物の濃度が、分析物または校正化合物33のような分析物の等価物の付加に従って異なるので、結果として生じるビームの密度もまた異なる。試料分配系の内部に配置された少なくとも3つの検出領域がある場合において、ここで、少なくとも2つの検出領域が異なる濃度の校正化合物を含んでおり、凝集と分析物の濃度との関係が直線的にあるいは単調に増加および減少する型に従う限りにおいて、校正化合物(6’a)なしで所定の検出領域における液体試料媒体15に含まれる分析物31の不明な濃度を校正することができる。多項式の関係に基づく校正の型に対応する強力な試料分配系は、上述のように図9に示されている。
【0091】
試料検出領域において凝集反応が発生しない、すなわち、分析物31と認識成分32との反応がない場合において、光は、偽の高い光学密度(吸光度)を導いて強力に散乱される。逆に、基底層の第1の表面および被覆層の第2の表面上における分析物および校正化合物のそれぞれと認識成分との高い反応に従って、〜100%の凝集が生じる場合において、光は、低い光学密度に最小に散乱されるだろう。
【0092】
図12は、定性的な検出方式を用いて、濃度に対する吸光度の例示的なグラフを示している。ここで、所定の検出領域6aおよび6aは、凝集反応の動的な範囲の情報を提供するために構成され、上述の6aは、陰性標準26cを表す〜0%の凝集との比較を提供し、6aは、陽性標準25cを表す〜100%の凝集との比較を提供するので、これらの検出領域の読み出しは、検出領域において実施される測定を確実にするために使用されてもよい。
【0093】
図13は、定量的な分析物にとって好適な液体媒体における、分析物と認識成分との凝集反応の濃度に対する吸光度の例示的なグラフおよび評価を示している。例えば、検出領域6a〜6a上にある所定量の抗体または検出領域6a〜6a上にある微粒子表面に不動化された所定量の抗体である認識成分の濃度は、所望の分析物にとっての適切な感受性および動的な範囲を与えるために最適化される。さらに、4つめの検出領域において、検出領域6cに位置する試料の光散乱または吸光度が測定される。この検出領域の読み出しは、薄膜、不活性な被覆化合物、非特異的なタンパク質、または非感受性の微粒子、あるいは試料物質そのもののような、分析物検査要素の材料によって生じる反応の非特異的な一部の総体的な情報を提供する、特に定量的な試料の評価に必要な、試料のバックグラウンドに関する定量性を示している。
【0094】
上述のように、校正化合物33を含む校正調合物18、ならびに認識成分32および好適な微粒子上に不動化された認識成分のそれぞれを含む認識調合物19の被覆は、微量密着印刷、液滴要求印刷または液滴要求堆積法、あるいは他の毛細接触堆積法のような、種々の周知の技術によって実施される。分析物検査要素内の校正化合物および認識成分のような被覆またはインクにおける活性要素の濃度は、所望の特定の分析物に対する分析検査系の妥当な動的な範囲および感受性を決める研究室的な手法によって最適化されてもよい。
【0095】
特定の検査の動的な範囲が研究室において評価されるならば、図14に示されるように、決定された性質は、測定に続いて結果の妥当性確認、および付加的に校正演算30から利用可能な統計的な変数の評価を実施するために、有効窓29としての測定装置または検出装置にプログラムされてもよい。
【0096】
蛍光発光によって補助した検出法
凝集検定に関する上述の手法の実施は、検定の速度および測定装置の経済性という、相互に関連するこれらの要因の両方に依存する。分子的な尺度において、微粒子は、巨大であり、例えば、非常に一般的な認識成分であるIgG抗体よりも約1000〜10000倍大きい。認識成分32が微粒子35上に不動化されている場合において、感受性のある微粒子の拡散は、検定に影響する認識成分のみの拡散よりも緩やかなので、強力な生成物の性質であるが、凝集反応そのものは、非常に単純かつ費用効率のよい装置を用いて監視され、仮に、粒子の大きさが5の因数だけ増加されて、散乱強度が約1020増加した結果、適当な微粒子が選択されれば、肉眼によってさえ監視されてもよい。
【0097】
一方において、分析物と不動化されていない認識成分32との凝集反応は、上述のようなレーザによって補助した監視装置を用いて、分子的な水準において監視される。認識成分および分析物と反応した後の結果物としての凝集物の分子量を定量することさえ可能である。しかし、主に採用されるレーザ技術が原因になって、要求される設備の費用は、現場診断または家庭における監視への利用を妨げる。
【0098】
開示された発明のさらなる局面は、上述した2つの凝集手法の中道を取る溶液を提供する。分子水準において、認識成分と分析物との凝集は、タンパク質と水との全重量には影響を与えないが、水とタンパク質との間のモル濃度を部分的に変化させる小さなタンパク質の粒子の網を生成する。凝集後の、試料液体におけるある領域は、より高い濃度を有し、ある領域は、凝集反応の前の時点に比べてタンパク質の濃度がより低い。物理的性質に関するこの変化は、タンパク質と高い親和性を有する染料分子の蛍光を抑制すること、または蛍光分子の回転子のいずれかによって、検出され、かつ伝えられてもよい。
【0099】
レポータ要素としての非特異的なタンパク質親和性を有する蛍光色素
この検出法の基礎をなす原理は、蛍光の抑制に依存する濃度の影響を利用している。ある濃度を超えて、蛍光染色分子が他の蛍光染色分子によって発せられる蛍光を除去するようになると、試料の検出可能な放射の合計は濃度とともに減少する。この減少は、蛍光染色分子の性質および2つの蛍光染色分子間の距離に依存する。言い換えると、蛍光染色分子同士が近ければ近いほど、その距離が短ければ短いほど、蛍光の抑制が強くなる。同質な溶液において、上述した周知の蛍光抑制効果は、蛍光染色分子の濃度によって単純に促進されるが、抑制の閾値は、供給された蛍光染料または蛍光染料の混合物に依存する。染料が非同質に試料液体に分散され、かつ何らかの形において分析物および認識成分の凝集を反映して、試料液体において分析物および認識成分の非同質な分布を引き起こすならば、抑制効果は、認識検定にのみ関与する。また、染料がタンパク質表面に吸着されてバックグラウンドシグナルを最小化した後に、蛍光発生量の増加を示す蛍光染料を選択することが有効である。この検定の原理に好適な候補としては、RH364、RH160、RH237、RH421、ジ−4−ANEPBS、BNBIQ、ANNINE−5およびANNINE−6のような、ジブチルアミノ−ピリジニウム−ブチルスルフォン酸塩および(また、ヘミシアニン染料として知られる)ストリリル(stryryl)染料から由来する2つの同質な系を有する双性イオンのアニリンピリジニウムの種類に見出されてもよい。これらの例示した染料の構造的な化学式は、図15に示されている。しかし、ナイルブルー A、フロキシン B、1−アミノ−8−ナフタレンスルフォン酸塩(ANS)またはこれらの誘導体のような、より通常に知られる染料も同様に、上述の方法に使用されてもよい。
【0100】
この手法の重要な反応は、選択された染料を用いた、液体試料媒体内部にある認識成分および分析物のその場における被覆であるので、当該反応は、基本的に一群のタンパク質に属する認識成分および分析物に限定される。凝集反応と染料の吸着とが起こる順番は、染料の吸着が凝集反応を妨げない限り、重要ではない。凝集過程の間に、染料の局所的なモル濃度は、凝集物の内部において増加し、かつクエンチング効果を誘導する。分析物試験要素に供給された染料の濃度は、染料、認識成分および分析物のそれぞれの組み合わせだけでなく、他の実験上の条件に対して評価されなければならないが、通常、染料タンパク質の適用範囲、染料タンパク質の結合定数、凝集物の緊密さ、および染料の蛍光範囲におけるストローク転移(stroke shift)および半値幅の働きである染料の必須な励起と放射との重複に依存している。
【0101】
試料導入領域9上に液体試料媒体を導入した後に、試料は、試料分配系6によって試料検出領域6aに分配される。ここで、試料は、第1の層2の表面2a上にある蛍光染料および校正化合物32を含む校正調合物19、ならびに第2の層4の表面4a上にある認識成分32を含む認識調合物18を溶解させる。第1および第2の表面の供給された化合物を混合した後に、タンパク質である分析物にもたらされる(認識成分および分析物の)反応物は、反応物の架橋を引き起こす、染料ならびに認識成分分子および粒子の集団を用いて覆われた状態になる。従って、蛍光抑制の合計は、分析検査要素の検出手段によって測定されてもよい。定性検出方式にとって、2つの試料検出領域は、陰性対照6’aおよび陽性対照6’aとして構成されている。陽性対照の測定は、関係する試料検出領域上に供給された添加成分を加えた試料の、凝集していないタンパク質の含有量の全体における蛍光に関する。凝集反応を避けるために、検出領域6’aは、分析物に対する親和性を有していない非特異的な認識成分を用いて覆われている。従って、検出領域の蛍光の読み出しは、結果として動的な範囲の上限を決める100%のシグナルになる。
【0102】
逆に試料検出領域6’aに配置されている陽性対照の測定は、可能な蛍光抑制の最大の程度を与える十分に形成および凝集された染料凝集物の蛍光に関する。このような陽性対照は、試料検出領域6’a上を覆っている校正調合物内にある、過剰な校正化合物ならびに分析物または分析物の等価物によって構成されている。この構成は、分析物の存在または非存在を伝えることができるだけでなく、分析物の濃度についての準定量的な情報を、低い、中程度であるおよび高いのように、陰性対照および陽性対照の測定を比較して比較的に明確に伝える機会を与える。
【0103】
分析物の濃度と蛍光抑制との間の関係が、所望の分析物の濃度範囲において直線的である、または好適な数式を用いて直線化され得るのであれば、分析物にとっての定量的な結果は、検出領域6’aおよび6’aに堆積されている校正化合物の量が既知であれば、達成され得る。ここで、検出領域6’aにおける構成化合物の濃度が6’aにおける校正化合物の濃度よりも大きい。この関係が直線的ではない場合において、分析物の定量的な情報は、たくさんの試料検出領域および校正化合物の2つ以上の異なる濃度水準を備えている試料検査要素を用いて得られてもよい(図9)。直線的な標準付加法によって分析物の濃度の定量性を算出する装置の処理部によって用いられる方法は、図13AおよびB示されているシグナルの前調節および計測に分かれている両方の例と同じである。従って、標準付加法のさらなる詳細については、この例においては省略する。
【0104】
検定凝縮用のレポータ要素としての非特異的な蛍光分子回転子
結果として閉じ込められた蛍光分子回転子とともに凝集物34を生じる凝集反応における経過が図16A〜Cに示されている。この場合において、分析物検査システムは、分子構造における特別な基の回転が、粘度の向上または立体障害のいずれかによって妨げられるときに、蛍光分子回転子36がそれらの蛍光を増強するという影響を利用している。従って、使用した染料の蛍光産生量は、凝集物の大きさおよび架橋の程度とともに向上するが、両方の要因は、分析物の濃度に関連している。
【0105】
通常の蛍光分子回転子は、キサンテン染料の主構造に基づいている。フルオレセインが原型である(キサンテン核を有するような染料のすべてである)キサンテン染料は、レゾルシノール(およびその誘導体)あるいはm−アミノフェノール(およびその誘導体)を用いた、無水フタル酸の縮合によって誘導される。しかし、キサンテン染料のすべてが、蛍光分子回転子というわけではない。フルオレセインは、分子回転子にとっての基本構造を与えるが、蛍光と側鎖の分子内回転との所望の依存性および関連性を与えるわけではない。試料液体の微小な粘度ではなく、試料媒体のpHにのみ影響される、この影響は、分子の3’位および6’位における水酸基の側鎖が原因で、フルオレセインに一般的なものではない。
【0106】
有効な蛍光分子回転子は、ローダミン染料に一般的な、基底をなすキサンテン構造に基づいている。これらの染料は、m−ジアルキルアミノフェノールを用いた無水フタル酸から誘導される。フルオレセインの水酸基(OH−)は、分子構造において有効な回転子として第2アミン基(RN−)を有するローダミン染料に置き換えられる。アシッドレッド 52とも呼ばれるローダミン Bは、回転子の分子構造における残基Rとして2つのエチル基を有し、試料検査システムに採用されるべき蛍光と分子の運動性との間に必要な特性を供給する。
【0107】
向上した水溶性を有するローダミン Bまたはスルフォローダミン Bは、単に、ここまでに述べた用途に対する一例として挙げる蛍光分子回転子である。オーラミン O、クリスタルバイオレット、p−N,N−ジメチルアミノベンゾニトリル、p−N,N−ジメチルアミノベンジルイデネマロノニトリル、ジュロリジンベンジルイデネマロノニトリル、ローダミン 19、ローダミン 6G、オキサジン 1、オキサジン 4、オキサジン 170、ローザミン染料、カルボピロニン染料、ピロニン染料、およびチアジン染料が、有効な蛍光分子回転子のさらなる例として挙げられる。通常の分子構造は、図17に示されている。
【0108】
分析物検査システムを用いた所望の動的な範囲および感受性を達成し、かつ所定の分析物と対応する認識成分との反応を最適に検出するために、最も好適な蛍光分子回転子が選択される、または回転子の大きさでさえ修飾される必要がある。しかし、蛍光分子回転子の修飾は、本発明の範囲内に含まれる。
【0109】
競合的なおよび非競合的な認識検定用の相対的な分子の回転を用いる特異的な蛍光レポータ要素
本発明のさらなる局面において、蛍光染料は、分析物よ認識成分との親和性反応に関与すると同時に、染料の特定の残基Rは、認識成分に対する親和性を有している。この手法によれば、染料分子におけるすべての官能基、いくつかの官能基、または一部の官能基は、反応相手(例えば、分析物、ペプチド、ホルモン、薬剤あるいはオリゴヌクレオチドまたは短いアプタマーのような核酸)の構造を表す特定の残基Rによって置換されている。以下の化学式
【0110】
【化1】

における3つの例は、蛍光染料であるフルオレセイン、ローダミン6Gおよびオキサジン4の可能な修飾を示している。
【0111】
分子内の自由度の変化がそれらの蛍光産生量を変化させるという、上に示した蛍光分子回転子の例に反して、分析検査要素用にいま紹介した検出計画は、認識成分に対する特異的な親和性を有する蛍光染料分子の分子回転子の合計に焦点を当てている。加えられた液体試料媒体における分子回転子の合計が、蛍光染料の分子量に関連する流体力学的な分子直径に関係していることは、当該分野における当業者にとって明らかであろう。蛍光染料の分子回転子の合計は、1926年にパーリンによって初めて発見された蛍光偏光によって直接に監視されてもよい。
【0112】
蛍光偏光は、通常、分子の回転速度と反比例するので、染料が速く回転すればするほど、観察される蛍光偏光シグナルは小さくなる。従って、蛍光偏光シグナルは、分子量および見かけの流体力学的な分子の大きさとに比例する。言い換えると、分子が大きければ大きいほど、蛍光偏光シグナルは強くなる。
【0113】
蛍光偏光を検出するために、直線偏光は、所定の蛍光染料を励起するために使用され、結果として生じる蛍光の放射が第2の偏光フィルタの背後において測定される。
偏光板が励起装置における偏光板と平行(I)または垂直(I)のいずれかに向けられている。そのような直線偏光が蛍光団によって吸収されるとき、偏光が消されて、分子は、蛍光の寿命の期間を超えて有為な程度まで溶液において回転が加えられる。
【0114】
例えば、分子量5000D未満のリガンドとくっついた〜332Dの分子量を有する蛍光染料であるフルオレセインは、4ナノ秒(ns)の蛍光団の蛍光寿命を超えた速い分子回転による有為な偏光の消滅が原因で、弱い蛍光偏光シグナルのみを返す。これは、互いに垂直なフィルタを用いた第2の測定の間に、Iが有為であり、Iと同様の大きさであるように、検出器を通って通過する重要な放射強度があることを意味している。この結果として、比較的に小さな偏光シグナルになる。
【0115】
蛍光染料が大きな認識成分と結合する場合において、蛍光寿命を超えた分子回転の総数は、強く低減され、かつシグナルの偏光の消滅は問題にならない。従って、小さい放射強度が互いに垂直に方向付けられた偏光フィルタを用いて測定され、Iを小さくすると、結果として比較的に高い偏光シグナルを生成する。
【0116】
蛍光偏光を観察するために、測定装置は、光源の光学的な配列物21および22における1つ、ならびに光学的な検出器32の光学的な配列物21aおよび22aにおける他の1つという2つの偏光フィルタを有する構成である必要がある。当該測定装置は、蛍光強度を2回、測定する必要がある。1つの測定にとって、偏光フィルタは、互いに平行に方向付けられ(I)、第2の測定は、互いに垂直に方向付けられた(I)偏光フィルタを必要とする。従来技術の装置は、歯車あるいは回転または物理的な動きによって位置を変えることができる固定具の上に搭載されている偏光フィルタを用いて、異なる偏光板を選択することができる。フィルタの機械的な選択は、良好な自由度および検査室の装置にとっていくつかの利点を提供する。
【0117】
この問題を非機械的に解決するには、液晶フィルタまたは液晶偏光板選択器によって、平行または垂直な偏光板を選択する。液晶フィルタまたは液晶偏光板選択器は、液晶を囲む2つの隣接する担体層に電位を印加することによって1つの偏光板に方向付けることができる、液晶の2つ層の間に3つの担体層が互いに平行に集められたサンドイッチ構造として理解されてもよい。上述の2つの担体層に対する電位は、測定装置の処理ユニットによって制御されてもよい。
【0118】
当該分野における当業者であれば、改変された液晶表示ユニットに対する液晶偏光板の関係であると認識するであろう。
【0119】
測定装置の処理ユニットは、2つの偏光板に由来する測定された2つの蛍光強度から、以下の数式
【0120】
【数1】

によって表される蛍光偏光を直ちに算出することができる。
【0121】
当該数式から、偏光単位Pが微小であるので、使用する蛍光染料、光源の強度、および最も重要な、試料の性質による傾向強度の減弱から独立しているということが明らかである。この検出原理は、以下に述べるような競合的な認識および非競合的な認識にとって、等しく通用する。
【0122】
競合的に検定は、分析物の量と蛍光偏光との間の反比例する性質を示すので、低濃度の分析物によって強い蛍光偏光を示し、かつ高濃度の分析物によって最小限の蛍光偏光を示す(図12Bを参照のこと)。また、認識成分は、抗体のような活性な結合要素または宿主分子としてみなされ、かつ分析物は、受動的な結合相手または外来分子(guest molecule)としてみなされる。
【0123】
逆に、非特異的な蛍光分子回転子を用いた上述の凝集手法を採用すると、蛍光分子回転子が直接には関与しないが、認識反応による回転を抑制し、かつ妨げて、高濃度の分析物は、蛍光の高い産生量を示す(図12Aを参照のこと)。
【0124】
図18は、分析物31と認識成分と特異的なレポータ要素37との間の反応過程を模式的に示している。試料が導入(A)され、認識調合物およびレポータ要素としての特異的な蛍光染料を含む校正調合物が溶解(B)した後に、認識反応(C)が起こる。試料媒体に含まれる分析物31は、試料検出領域の第2の表面4a上に付与された有効な認識成分に対して、特異的な蛍光染料37の残基を競合する。当該認識成分は、すべての反応相手との間に複雑な網目状構造を形成する。分析物分子の濃度が高いとき、備えられた認識成分32におけるほとんどすべての結合部位が塞がれて、低い蛍光偏光を有する抑制されていない蛍光染料37の自由な回転が導かれる。逆に、試料媒体における分析物分子の濃度が低いとき、認識成分32の結合部位が蛍光染料37の特異的な残基によってほとんど塞がれないので、染料分子の抑制および高い蛍光偏光が導かれる。この競合的な検定における概念の通常の関係は、図12Bに示されている。
【0125】
しかし、当該分野における当業者であれば、分析物自身が活性な結合要素および受容分子(host molecule)として振舞う、さらなる構成を考慮に入れる。これは、所定の分析物が抗体である(例えば、患者がワクチンに対する応答について検査される場合)であろう。この場合において、特異的な蛍光染料が、さらなる反応相手を関与せずに、分析物と直接に反応するので、当該反応は非競合的であり、かつ蛍光偏光は当該反応の動的な範囲を超えて分析物の濃度と比例する。この状況は、図12Aに示されている。
【0126】
当該分析検査要素の基本的な構成は、初期の記載に従っている。この場合も同様に、分析物検査要素は、定性的な結果または定量的な結果を示してもよい。定性的な結果は、分析物の存在または非存在の情報、あるいは分析物検査要素動的な範囲を決める陽性対照および陰性対照の測定とともに実現され得る、分析物が低濃度または高濃度を示しているか否かという情報を提供する。従って、検出領域6’aは、蛍光染料が親和性反応によって抑制されていないときに、陰性対照として構成されているので、検出手段は、バックグラウンド蛍光(競合的な手法の場合において、これは陽性対照である)を算出することができる。この状態は、検出領域6aにおける非特異的な認識成分の利用によって達成されてもよい。
【0127】
検出領域6aは、蛍光染料が十分に成長した凝集物ことによって十分に抑制されているとき、または蛍光染料が認識成分によって完全に補足されているとき、陽性対照として構成されるので、分析物検査システムは最大の蛍光(競合的な手法の場合において、これは陰性対照になる)を示すことができる。従って、校正調合物は、分析物または校正化合物を含んで、十分に完全な親和性反応を開始する。
【0128】
少なくとも2つの試料検出領域が、校正調合物内に含まれる、少なくとも2つの異なる濃度の校正化合物を用いて構成されていれば、定量的な結果は、分析物検査要素を用いて得られる。異なる水準の2つの校正化合物の最小量によって、直線的な反応特性を有する分析物を十分に評価される。上述の特性がさらに複雑な物であれば、試料検出領域および異なる校正調合物の数を、より高次の多項式の方程式のような好適な校正の型を満たすように増やす必要がある。
【0129】
競合的な直線的な型に対する要求を満たすために、分析物または分析物と等価な分子のような特異的な蛍光染料および校正化合物を含む校正調合物は、第1の層2の表面2aにおける検出領域6’aおよび6’a上を覆っている。試料検出領域6’a上を覆っている校正調合物は、レポータ要素として特異的な蛍光染料のみを含んでいるが、付加的な校正化合物を含んでいない。第2の層4の表面4a上にある検出領域6a〜6aは、好適な濃度を有する認識成分を含む認識調合物を用いて覆われている。非競合的な手法の場合には、特異的な蛍光染料が、認識成分になり、かつ校正化合物と反対側にある検出領域上を覆っている。説明のために直線の競合的な分析物検査システムおよび直線の非競合的な分析物検査システムにとっての構成が、表1に示されている。
【0130】
【表1】

【0131】
レポータ要素としてのアポ酵素によって補助した認識検定(AARA)
アポ酵素によって補助した認識検定(AARA)技術は、用途の広い検査系におけるこの構想の完成を妨げている、免疫検定法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELIZA))の通常に生じる欠点である洗浄によって遊離種と結合種とを物理的に分離することなく、液体媒体における分析物の存在を検出するために利用されてもよい。しかし、AARAは、ホルモン、ステロイド、ペプチド(例えば、Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP))、心臓マーカー類似のトロポニン I(TnI)、トロポニン T(TnT)およびトロポニン C(TnC)、ヘプタン、有機分子類似の殺虫剤、薬物(特に、アンフェタミン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、コカイン、塩酸メタンフェタミン、アヘン剤、フェンサイクリジンおよびTHCのような不正使用が適用される薬剤)または火薬類のような小さな分析物に限定される。診断領域において知られており、かつ利用されている腫瘍マーカーのいくつか(例えば、約180000ダルトンの癌胎児抗原(CEA))は、この検定の構想にとっては大きすぎる。
【0132】
図19は、認識成分32(例えば、抗原)および酵素的に活性なホロ酵素41を形成する適切なアポ酵素40と反応可能な、分析物によって標識した補酵素39を有する、本発明の分析物検査システムに採用されるAARAの主な機序を示している。AARAによる分析物の定量的な測定は、分析物31の濃度がホロ酵素の再構成された濃度、ならびに分析物によって標識した補酵素およびアポ酵素の再構成によって生じたホロ酵素の修飾された酵素活性のそれぞれに比例する、という事実を利用している。
【0133】
特定の例として、補酵素は、所定の分析物(例えば、BNP)の誘導体と連結されると同時に、レポータ要素の一部としてグルコース酸化酵素のアポ酵素が用いられている、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)であってもよい。遊離の分析物の非存在において、標識された補酵素は認識成分(ここでは、BNP特異抗体)と反応するので、補酵素の再構成が抑制される。十分な分析物(例えば、BNP)が液体試料媒体に含まれているほど、認識成分の比例率は、分析物に占められ、かつ比例する十分に標識された補酵素は、ホロ酵素の再構成を有効にする。上述の機序にとって、標識された補酵素39がアポ酵素との再構成を妨げる認識成分32によって立体的に遮断されることが重要である。当該分野における当業者によって周知のように、活性化されたGODは、グルコースを酸化して、続いて起こる好適な色素生成反応に用いられ得るグルコノラクトンおよび過酸化水素水にし始める。分析物検査要素は、少なくとも2つ、好ましくは3つの試料検出領域を用いて構成されて、AARAを実施する。当該構成は、表面2aおよび4a上にある試料分配系6を用いて所定の距離だけ離れて互いに対向する基底層2および被覆層4を供給するという上述の記載に従っている。ある重合体の薄膜を用いれば、親水性の被覆17だけでなく疎水性の誘導要素16も有している試料分配系6を提供して試料の最適な分配を達成するという利点がある。
【0134】
上述の実施形態との構成上の主な差異は、第1および第2の表面上にある活性成分およびこれらの組み合わせの被覆である。AARAは、ホースラディッシュ ペルオキシダーゼおよび酵素染色物の基質のような酵素を含む色素生成のレポータ要素を加えた、少なくとも2つの、ここでは、4つの9活性成分を必要とする。ここで、検出領域の1つのおよび同じ表面上に成分の非活性な配合物のみを組み合わせることが重要である。これらの非活性な配合物は、酵素の2つの基質のような互いに反応しない、2つ以上の化学物質の混合物であるが、活性な結合が酵素と好適な酵素基質と、または認識成分(例えば、抗体)と好適な分析物(例えば、抗原)とのような、2つの活性な化合物の混合を表す。調合物またはインクの形態において1つの表面上に供給される、これらの非活性な配合物は、
液体の試媒体と接触すると溶解されて、化学的なまたは物理的な反応を始める混合の後に、続いて反対側の表面の化合物と活性な結合を形成する。
【0135】
この手法によれば、第1の表面の試料検出領域は、分析物または等価な分子、分析物によって標識された補酵素、ならびに色素原およびホロ酵素によって要求される酵素基質のような光度評価に必要な化合物を含む、校正調合物を用いて覆われている。校正の方法に応じて、校正調合物における校正化合物の濃度は、nの試料検出領域のn−1またはn−2に変化するので、少なくとも1つの試料検出領域は、校正化合物を持っていない。第2の表面上にある試料検出領域は、所定の分析物を認識する認識成分およびアポ酵素に加えて、色素生成反応が必要であれば付加的な酵素を含む、認識調合物を用いて覆われている。
【0136】
AARA用の基準付加法
上述のように、分析物が液体媒体に存在するか否かを決定することの役割は、医師にとって重要である。液体媒体における分析物の濃度の測定は、等しく重要である。本発明の実施形態において、分析物検査要素は、直線的な標準付加法に基づいて所定の分析物の定量的な測定用に構成されている。例えば、分析物の所望の監視範囲を超えて分析物の直線的な関係が判断される。
【0137】
上述のAARAと同じように、分析物検査要素は、試料分配系を作るためにほぼ一致して配置されている第1の表面および第2の表面上にある4つの検出領域を備えている。3つの試料検出領域(6’a、6’aおよび6’a)は、校正調合物18を用いて覆われていると同時に、試料検出領域6’aおよび6’a上を覆っている校正調合物は、2つの異なる所定および既知の濃度の校正化合物33を含んでいる。逆に、試料検出領域6’aは、校正化合物または分析物を含んでいない校正調合物を用いて覆われている。試料検出領域6’cは、校正化合物を用いて覆われておらず、試料のバックグラウンドの評価に使用される。第2の表面4a上における試料検出領域(6’a、6’aおよび6’a)は、所定の濃度の認識成分32、アポ酵素、および必要に応じてさらなる酵素を備えている認識化合物19を用いて覆われている。この場合もやはり、反対側の相手6’cと似ている試料検出領域6cは、活性のない成分および認識成分を有する非認識化合物または調合物を備えている。表2は、上述の構成の外洋を示している。
【0138】
【表2】

【0139】
試料導入系に液体試料媒体を導入した後に、校正調合物および認識調合物の再可溶化およびこれにおいて続いて起こる反応を可能にし、測定器の光放射部20および検出配列物23は、図13Aに示されているような校正化合物の第1の水準を有する試料検出領域6’aに配置されている液体媒体における第1の吸光度25aを測定する。この検出領域6aの読み出しは、6aにおける校正化合物の濃度と液体媒体における分析物の濃度との組み合わせと比例するシグナルを示す。同時に、第2の吸光度26aは、6’aにおける校正化合物の第2の水準を用いた、検出領域6aに配置された液体試料媒体の測定結果であり、校正化合物の濃度と分析物の濃度との組み合わせと比例するシグナルを表している。さらに、吸光度27aは、検出領域6’aを覆う校正調合物における校正化合物を含んでいない検出領域6aの測定結果である。従って、液体試料媒体15は、未知の濃度の分析物31のみを含んでいる。直線的な標準付加法の理論に従って、検査系の処理手段は、測定された吸光度25a、26aおよび27aならびに試料検出領域6’aおよび6’aにおける校正化合物の既知の濃度から、分析物の未知の濃度、校正方程式y=c0+c1xの係数、相関係数、および直線的な回帰検定によって実施される解析用の標準偏差を算出することができる。認識調合物に含まれる異なる構成要素および表2に係る種々の校正調合物が有する特定の濃度は、分析物検査システムを用いた最適な実施を実現するために、通常の検査室における実験によって最適化される必要がある。この場合も同様に、吸光度と分析物の濃度との関係が、非直線的な性質を示すならば、標準付加法は、図9に示されているようにより多くの試料検出領域を備えることによって、改変され、かつ上述の非直線的な挙動に適応されてもよい。
【0140】
(分析物検査要素の作製方法)
好ましくは帯状片という形状に形成されている、本発明の分析物検査要素は、印刷、打ち抜きおよび積層という当該分野におけるこれらの通常の処理によって容易に作製されてもよい。分析物検査要素の設計は、好ましくは必ずしも継続する性質を必要としない、簡単かつ費用効率のよい生産過程を可能にする。
【0141】
作製方法の第1の段階において、試料分配系の模様が基板の上に高い表面エネルギーおよび低い表面エネルギーの領域を生じることによって形成される。第1の実施形態において、第1および第2の表面上に試料の通路および検出領域を形成する高い表面エネルギーの領域が、基板の疎水性表面の上に親水性調合物を塗布することによって形成される。上述のように、疎水性表面の上に親水性の“案内要素”の模様を塗布することによって高い表面エネルギーおよび低い表面エネルギーの領域が生じる。好ましい場合において、基板は、市販の透明な重合体薄膜の中程度の疎水性を有している。ここで、試料分配系および試料検出領域における高い表面エネルギーおよび低い表面エネルギーの領域は、底面に親水性経路を印刷することによって生じている、または疎水性の案内要素が疎水性の模様によって囲まれている。基板は、ガラス、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエステルとフルオレン環を含むポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリカルボネートとポリカルボネート−ポリエステルのグラフト共重合体、末端修飾されたカルボネート、ポリオレフィン、シクロオレフィンとシクロオレフィン共重合体、および/またはオレフィン−マレイミド共重合体のような材料から形成されてもよい。疎水性基板上に対する親水性模様の適用および/または親水性基板上に対する疎水性の“案内要素”の適用あるいはそのあらゆる組み合わせは、密着印刷および非密着印刷、噴霧、浸漬あるいはプラズマ堆積によって達成されてもよく、特に有用な技術は、フレキソ印刷、リソグラフ、グラビア印刷、固形インクコーティング法(solid ink coating method)またはインクジェット印刷処理である。
【0142】
しかし、好ましい製造方法は、輪転機上における高解像度の印刷を可能にし、かつ高速の生産を支持する、フレキソ印刷である。それは、重合体基板上に印刷する確立された技術であり、かつ包装産業において広く使用されている。図10および11に示されている光学的な検出処理は、親水性の模様を形成するために低粘度を有する透明かつ澄んだインクを必要とする。低粘度のインクは、約2〜4ミクロンの被覆の薄さを実現するために好ましい。インクの光学窓は、化学反応の光学的な検出に好適な波長範囲にある必要がある。疎水性の性質を除いて、疎水性のインクには厳密な要求はなく、同様に所望の色を有する分析物検査要素を装飾するために使用されてもよいので、この段階にとっては不透明なインクが好ましい。4色のフレキソ印刷機の動作が、実地に確立され、かつ動作の問題は示されていない。同様にリソグラフィ装置も有効である。
【0143】
分析物検査要素の作製に最も便利なのは、種々の製法から大きな多用さに適用可能な、インクを基にした溶剤である。さらに、上述のインクのすべては、必要な要素を最適化するために付加的な添加剤および顔料を用いてわずかに変化されていてもよい。これらのインクの多くは、ニトロセルロースエタノールまたはポリビニルエタノール混合物に基づいており、例えば、有限会社サンケミカル(35 ウォータービュー ブールバード,パーシッパニー, ニュージャージー州, USA)または有限会社フリントインク(アローヘッド ドライブ, アナーバー, ミシシッピー州, USA)から得られる。
【0144】
インクを基にした溶媒または紫外線硬化インクは、分析物検査要素の作製に適用可能であるが、電子ビーム(EB)硬化インクが、いくつかの好ましい性質を有している。これらのインクは、機械的および化学的要因に対する最も高い耐性を備え、かつ付加的に、揮発性の有機溶媒および光開始剤ではない顔料を有する、検出器成分の安定性に影響することが分かっている、100%の重合体を含んでいる。実施の性質におけるこれらの積極的な利益は、電子の能力に由来して、架橋された重合体薄膜を形成し、かつ表面に浸透する。
【0145】
EB硬化に使用さるインクは、アクリルの単量体および低重合体の重合化能力を利用している。アクリル成分は、今日のインクにおいて特別な重要さを有している(6 J.T. Kunjappu. “インク成分におけるポリアクリレートの緊急性”Ink World, Feburary,1999, p.40)。最も単純なアクリルの成分であるアクリル酸の構造は、以下の化学式(I)
CH=CH−COOH(I)
に示されている。
【0146】
アクリルの一部分における二重結合は、電子との相互作用の間において開き(開始)、鎖を形成している他の単量体上に作用(伝播)して高分子量の重合体に導く遊離基を形成する。上述のように、重合体化を誘導する放射は、外部の開始体を必要としないので、放射自身が、被覆に開始種を残さないという結果とともに、遊離基を生成する。
【0147】
種々のアクリルの単量体は、2−フェノキシエチルアクリレートおよびイソオクチルアクリレートのような単純なアクリレートから、ビスフェノール A、エポキシアクリレートおよびポリエステル/ポリエーテルアクリレートのようなプレポリマーまでの範囲のEB硬化に適用できる(R. Golden.J. Coatings Technol., 69(1997), P.83)。この硬化技術は、所望の過程を複雑にする他のインクに要求される溶媒および硬化の成分を必要とすることなく、所望の化学的および物理的性質を重視した“機能的なインク”の設計を可能にする。
【0148】
通常、好適な疎水性のインクは、疎水性の作用を有する単量体、低重合体およびプレポリマー、充填剤あるいはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。疎水性の作用を有する単量体、低重合体およびプレポリマーとしては、イソオクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、スチレンまたはシリコンの誘導体、部分的にフッ化炭素鎖ならびにおよび付加的な疎水性の添加物を有する系などが挙げられる。また、疎水性の作用を有する充填剤としては、TEGOフォーブシリーズ(Phobe Series)(TEGOケミカルサービス、エッセン ドイツ)に属する疎水性剤、銅フタロシアン、カーボン、またはグラファイトのような疎水性顔料、あるいはヒュームドシリカ修飾したシリコン、またはPTFE粉末とPTFE粒子のような充填剤が挙げられる。添加物、顔料および充填剤の種類が非常に多いので、上において示唆した化合物は、例示的な性質のみを有している。
【0149】
疎水性作用を有するインクは、エタノールおよび水可溶性のポリマーならびにポリマーの混合物の広い選択肢の中から実現されてもよい。有用なものとしては、以下の物質:アルギナート、セルロースおよびセルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、生ゴム、アクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレン酸化物、ビニルピロリドン、ポリエチレンスルフォネート、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)、ビニルピロリドン/トリメチルアンモニウム共重合体、ならびにアルキルホスホコリン誘導体を基にした、重合体および重合体の誘導体、共重合体ならびに化合物が挙げられる。さらなる最適化が、有機修飾されたポリシロキサンおよびフッ素化された界面活性剤の架橋された種である、有機修飾されたシリコンアクリレート誘導体によって達成されてもよい。通常の好適な被覆は、水との接触角が通常35°未満および通常50mN/m以上の表面エネルギーを提供する。
【0150】
作製工程の第2の段階は、認識成分ならびに試料検出領域内に均一な層を形成している印刷可能なおよび/またはなくてもよいインクを生成するための他の試薬を含んでいる、認識化合物を塗布することを包含する。
【0151】
反対側の表面にある一致する試料検出領域のすべての上に、定量的または定性的な検出方式に必要である適切な量の校正化合物を含む校正調合物が堆積される。検出の機序(例えば、凝集、蛍光によって補助された凝集またはAARA)に応じて、付加的なレポータ要素が認識調合物または校正調合物に加えられてもよい。この詳細は、上述の記載および表1に示されている。
【0152】
所定の試料検出領域6a〜6aに塗布された認識成分の濃度水準および総量が、上述した種々の分析物検査要素の感受性および動的な範囲を担っており、同様に塗布された校正化合物の濃度水準および正確さが検査結果の正確さを担っているので、分析物検査要素に上述の要素、化合物および成分の正確な量を供給することは、この塗布にとって最優先の事項である。このような正確な量は、例えば、株式会社フェルムテクニーク(パルンカーマー通り18−20、D−83624 オッターフィンク、ドイツ)から購入可能な微小分配システムを用いて実現されてもよい。また、当該システムは、ある凝集反応にとって必要に応じた、ナノ粒子またはミクロ粒子の量を可能にする。被覆調合物は、試料液体の後に速いかつ残りのない再構成を可能にするために、液体試料媒体によって十分に可溶化するように調製されなければならない。次の段階は、試料分配系の第1および第2の表面を与える基底層および被覆層が中央層の上に積層される、従って、基底層および被覆層の第1の表面と第2の表面との間の距離を決めている積層手順を包含している。中央層は、基底層および被覆層の第1および第2の表面上に試料分配系が形成される、領域において試料分配系に対して空洞を作り出す間隙を供給する。基底層および被覆層の第1よおび第2の表面の上に形成された高い表面エネルギーおよび低い表面エネルギーの模様は、第1の表面と第2の表面と間にある機能的な試料分配系の調合物を可能にするほとんど一致して配置されなければならない。
【0153】
この位置合わせが実現されなければ、試料分配系は適切に機能しない、および/または特定の試料体積に関してより高い多様性を有するので、基底層および被覆層の正確なxy位置合わせは、要素の機能にとっての決定的な課題になる。位置合わせの寛容性は、良好な機能を実現するために、疎水性経路の幅のプラスマイナス5%以内にあるべきである。
【0154】
図20は、分析物検査要素および位置合わせ精度の影響の上面図(左)および断面図(右)を示している。20aの場合において、試料分配系は、第1の表面2aおよび第2の表面4aにおける疎水性経路の良好な構成とともに、適切に集合される。分析物検査要素を不適切に配置された結果が、図20bに示されている。基底層(2)と被覆層(4)との間の間隔が20aおよび20bの場合に決定されるが、試料液体は、試料分配系の疎水性の案内要素を部分的に覆っているので、試料の体積は、場合bにおいて不適当な広がっている。この影響は、最も有利なエネルギー状態を得るために空気にさらされている表面領域の最小化を求めて、疎水性領域の影響よりも優位にある、析検査要素内の試料液体によって生じる。
【0155】
図20cに示されているような別の実施形態において、被覆層4の試料分配系は、基底層2の試料分配系よりも約10%小さく設計されているので、分析物検出要素の試料体積の総量が基底層の試料分配系における伸展によって決まり、必要な試料体積の正確さを損なうことなく、製造工程の位置合わせ過程にとってのより高い寛容性を可能にする。当該分野における当業者にとって、基底層および被覆層が本発明の原理に影響することなく上述の実施形態に変更可能であることは、明らかであろう。好ましくは80ミクロンの厚さを有する両面接着テープまたは変更可能に同様の厚さに堆積されたホットメルト接着剤であってもよい、中央層の塗布は、疎水性の経路の大きさと同等である材料における比較的大きな間隙のために損害が少ない。位置合わせは、1分間に基板が数m〜10mも進行する連続的な生産ラインにおいて、特に重要である。基板の拡大およびウェブ張力は、ウェブ動作(web movement)に垂直なy方向における位置合わせよりもx方向(ウェブ動作の方向)における位置合わせを困難にする。
【0156】
第1および第2の表面における模様の正確な位置合わせを提供する柔軟性のある重合体薄膜を作製する方法は、連続的なウェブ製造工程の一部を示している図21に図示されている。図21aに係る第1の製造段階において、基底層および被覆層における試料分配系6の模様が、製造された試料分配要素の材料を与える1つのウェブ基板に印刷される。図21に図示されているように、試料分配系6の印刷された模様は、2つの試料分配系が鏡線から左右に対して反対になるようにウェブ基板49上に配置されている。また、試料分配系は、試料導入領域を形成する領域とつながっていてもよい。従って、所定の検出領域6aおよび6’aの位置は、互いに対して比較的に固定されており、かつ材料の伸展およびウェブ張力によって影響されない。破線50は、分析物検査帯状片を分離する後の切断線を示し、同時に破線51は、帯状片作製の鏡線およびウェブ基板の折りたたみ線を示している。
【0157】
分析物検査要素における流体の経路を印刷した後に、試料分配系の検出領域6aおよび6’aは、校正調合物および認識調合物を用いて覆われている。例えば、試料検査要素の第1の表面にあたる、ウェブ基板49における下の列の検出領域6’aは、レポータ要素および異なる水準の校正化合物を含む校正調合物を用いて覆われている。(例えば、6’aに位置付けられた)校正調合物の1つは、校正化合物を含んでおらず、液体試料媒体の読み出しを与えない。一方、分析物検査要素の第2の表面にあたる、ウェブ基板49における上の列の検出領域6aは、認識化合物およびアポ酵素によって補助された認識検定という特定の場合においてレポータ系の付加的な部分も同様に含む認識調合物を用いて覆われている。
【0158】
これらの後に、図21bに示すような分析物検査要素の中央層52にあたる付加的な層が、表面の1つ(例えば、基底層2の表面2a)の上に積層される。中央層52は、最後の組み立て段階の後に分析物検査要素における試料分配系に穴を作り出す試料分配系6を露出させる突破口5を備える、両面接着テープまたはホットメルト接着剤から形成されていてもよい。
【0159】
それから、本発明の分析物検査要素は、例えば、折りたたみ用の鉄製品または他の好適な装置を用いて、図21cに図示されているように、鏡線に沿って2つの端を折りたたむことによって組み立てられて、図21dに示されているような折りたたまれ、かつ積層されたウェブ53を作り出す。続いて、プレスローラは中央層と基底層と被覆層とを隙間なく固定することができる。
【0160】
最後に積層されたウェブ53は、所望の製品の形状に切断または押出しされると同時に、線50は、分離過程の前に最終的な分析物検査帯状片の一例の形状を描出している。図21に図示されているような作製方法を用いれば、基板の上部は、ウェブのx方向における位置合わせを失敗する危険を冒すことなく、底部の部分上に折りたたまれてもよく、単一のシート過程と比べて、試料分配系を形成する第1および第2の表面の正しい位置合わせを実現するより容易な方法を提供する。
【0161】
本発明は、放射免疫検定、散乱免疫検定または前方流動免疫検定ならびに酵素結合免疫吸着検定のような免疫学的なまたは同様の親和性分析法によって支持された検査室によってのみ利用可能な、臨床的に適切なおよび生物学的な分析物の濃度を測定する系を提供する。通常、分析物は、血液、血清、血漿、唾液、尿、細胞間質液および/または細胞内液のような液体試料媒体において検出される。分析物検査要素は、約0.5μLの非常に小さい試料の体積を用いた乾燥した試薬の検査帯状片にとって好適な、統合された算出系および定性制御系を備えられている。本発明の分析物検査要素の製造は、当該要素の高価ではない製造を可能にする、少ない数のまたは複雑ではない製造段階のみに関する。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】検査帯状片という形状を備える本発明の分析物検査要素の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】拡大した試料導入領域および試料導入系を示している、図1に係る実施形態の斜視図である。
【図3】別々の構成を有する3つの層を示している、図1に係る要素の分解斜視図である。
【図4】第1の層および第2の層とともに試料穴を形成する中央層の隔たりの異なる形態を示している。
【図5】疎水性案内要素によって構成される試料分配系の検出領域を示す断面図である。
【図6】疎水性経路を用いた試料分配系における検出領域の他の実施形態を示す断面図である。
【図7】凝集反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【図8】微小粒子の凝集((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、微小粒子上に不動化された認識成分と、校正化合物との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【図9】異なる校正方法に適した、経路および検出領域の異なる形態を有する試料分配系の異なる実施形態を示している。
【図10】光放出手段および光検出手段を取り付けて、吸光度測定用として構成された図6の試料分配系の試料検出領域を示している断面図である。
【図11】光拡散または蛍光の評価用に構成された分析物検査要素にとっての検出器の配置を示している。
【図12】非競合的な検定(A)および競合的な検定(B)の定性分析の結果および評価を模式的に示している。
【図13】直線的な標準付加法を用いた分析物濃度の測定を例示している。
【図14】算出された結果および校正データの有効化法を示すグラフである。
【図15】非特異的なタンパク質との親和性を有する蛍光色素の例を示している。
【図16】蛍光分子回転子によって増強された凝集反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物と、レポータ要素としての非特異的な蛍光分子回転子との間に最終的に形成される凝集物)の模式的な原理を示している。
【図17】非特異的な蛍光分子回転子の例を示している。
【図18】レポータ要素としての特異的な蛍光染料を採用している親和性反応((A)液体試料媒体の導入、(B)認識調合物および校正調合物の溶解、および(C)分析物と、認識成分と、校正化合物と、特異的なレポータ要素との間に最終的に形成される親和性複合体)の模式的な原理を示している。
【図19】アポ酵素によって補助した認識検定(AARA:apo−enzyme assisted recognition assay)の反応原理を示している。
【図20】分析物検査要素の試料体積に対する、積層形成過程における位置合わせ失敗の影響だけでなく、(検査帯の性質を損なうことなく、基底層と被覆層との位置合わせに高い許容度を許す)選択可能な実施形態(C)の平面図およびそれぞれの断面図を示している。
【図21a】親和性検定および免疫検定に有用な分析物検査要素の準備方法を示している。
【図21b】親和性検定および免疫検定に有用な分析物検査要素の準備方法を示している。
【図21】親和性検定および免疫検定に有用な分析物検査要素の準備方法を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離をおいて互いに対向している第1の表面(2a)および第2の表面(4a)を備え、
2つの上記表面が、ほとんど合同に揃えられている高い表面エネルギーの領域および低い表面エネルギーの領域を形成する実質的に同等の2つの模様を有し、
高い表面エネルギーの上記領域が少なくとも2つの検出領域(6aおよび6’a)を有する試料分配系(6)を作り出し、
第1および第2の表面(2aおよび4a)の少なくとも2つの上記検出領域(6aおよび6’a)が、少なくとも1つの非酵素的な認識成分(32)を有している
生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査要素。
【請求項2】
上記第1の表面(2a)のn個の所定の検出領域(6a)が、m個のブランク調合物および異なる濃度の校正化合物(33)を含むn−m個の調合物から構成されるn個の校正調合物(18)を用いて、覆われており、
nが、2よりも大きい整数であり、mは1以上の整数であり、かつn>mであり、
上記第2の表面(4a)のn個の所定の検出領域(6’a)が非酵素的な上記認識成分(32)を含む調合物を用いて覆われている請求項1に記載の分析物検査要素。
【請求項3】
付加的な検出領域(6c)が、分析物の上記認識成分(32)または上記調合化合物(33)のどちらも含んでいない、バックグラウンド測定を可能にする非特異的な物質を備えている、請求項2に記載の分析物検査要素。
【請求項4】
上記校正化合物(33)が上記分析物と同一または実質的に等価である請求項2に記載の分析物検査要素。
【請求項5】
特異的な上記認識要素(32)が、微粒子上に不動化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析物検査要素。
【請求項6】
上記認識調合物および/または上記校正調合物が、上記分析物の光学的な検出/測定を媒介するレポータ要素を含んでいる請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析物検査要素。
【請求項7】
上記レポータ要素が蛍光染料である請求項6に記載の分析物検査要素。
【請求項8】
上記蛍光染料が、上記認識成分に対する親和性を有している請求項7に記載の分析物検査要素。
【請求項9】
上記蛍光染料が、上記分析物に対する親和性を有している請求項7に記載の分析物検査要素。
【請求項10】
上記レポータ要素が、蛍光分子回転子である請求項6に記載の分析物検査要素。
【請求項11】
上記レポータ要素が、アポ酵素によって補助された認識検定を包含している請求項6に記載の分析物検査要素。
【請求項12】
アポ酵素によって補助された上記認識検定が、認識成分、アポ酵素、分析物によって標識された補酵素、ホロ酵素によって要求される基質および色素原を備えている請求項11に記載の分析物検査要素。
【請求項13】
上記認識成分(32)が上記分析物に対する抗体または抗体の断片である請求項1〜12のいずれか1項に記載の分析物検査要素。
【請求項14】
特異的な上記認識成分(32)が、核酸である請求項1〜13のいずれか1項に記載の分析物検査要素。
【請求項15】
特異的な上記認識成分(32)が、上記分析物の受容体である請求項1〜14のいずれか1項に記載の分析物検査要素。
【請求項16】
第1の表面(2a)を有する基底層(2)の上に、低い表面エネルギーの領域およびn個の検出領域(6’a)を用いて疎水性の試料分配系(6)を形成している高い表面エネルギーの領域を生成する工程と、
第2の表面(4a)を有する被覆層(4)の上に、低い表面エネルギーの領域および高い表面エネルギーの領域の対応する模様を生成する工程と、
m個のブランク調合物および異なる濃度の校正化合物(33)を含むn−m個の調合物から構成されるn個の校正調合物(18)を用いて上記第1の表面(2a)のn個の所定の検出領域(6a)を被覆する工程と、
認識成分(32)を含む認識調合物(19)を用いて第2の表面(4a)のn個の所定の検出領域(6’a)を被覆する工程と、
第1および第2の層(2および4)の第1および第2の表面(2aおよび4a)上にある高い表面エネルギーの上記領域(6および6’)によって形成される上記試料分配系用の空洞を提供する間隙(5)を有する中央層(3)の反対方向にある側に対して第1および第2の表面の層を貼り付ける工程と、
を包含し、
nが2よりも大きい整数であり、mが1以上の整数であり、かつn>mである
分析物検査要素の作製方法。
【請求項17】
高い表面エネルギーの上記領域(6および6’)が、第1および第2の表面(2aおよび4a)上に親水性の調合物を塗布することによって作り出される請求項16に記載の分析物検査要素の作製方法。
【請求項18】
低い表面エネルギーの上記領域が、第1および第2の表面(2aおよび4a)上に疎水性の調合物を塗布することによって作り出される請求項16または17に記載の分析物検査要素の作製方法。
【請求項19】
上記親水性の調合物および/または上記疎水性の調合物が、接触印刷および非接触印刷、噴霧、浸漬、あるいはプラズマ堆積によって、特に、フレキソ印刷、リソグラフィ、グラビア印刷、固形インクコーティング法(solid ink coating method)またはインクジェット印刷によって、第1および第2の表面の上に塗布されている請求項17または18に記載の分析物検査要素の作製方法。
【請求項20】
上記認識調合物および/または校正調合物(18および19)が、微小接触印刷、微小分散またはインクジェット印刷によって、第1および第2の表面の検出領域(6aおよび6’a)上を覆っている請求項16〜19のいずれか1項に記載の分析物検査要素の作製方法。
【請求項21】
基底層(2)および被覆層(4)が、1つのフレキシブル基板から形成され、かつ所定の検出領域(6aおよび6’a)を用いて試料分配系を形成している親水性の模様(6および6’)がほとんど合同に揃えられ、かつ位置合わせされるように、長軸方向の鏡線(45)に沿って折り曲げられて中央層(3)を囲む請求項16〜20のいずれか1項に記載の分析物検査要素の作製方法。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の分析物検査要素を備え、
上記第1の表面(2a)のn個の所定の検出領域(6a)が、m個のブランク調合物および異なる濃度の校正化合物(33)を含むn−m個の調合物から構成されるn個の校正調合物(18)を用いて、覆われており、
nが、2よりも大きい整数であり、mは1以上の整数であり、かつn>mであり、
上記第2の表面(4a)のn個の所定の検出領域(6’a)が非酵素的な上記認識成分(32)を含む調合物を用いて覆われており、
2n個の所定の検出領域に位置する生理学的な試料の光学的な性質の変化を検出し、かつ2n個の所定の検出領域からn個の結果を得る検出手段と、
n個の上記測定値から利用可能な多項式の校正方程式における校正係数のすべて、および上記校正方程式の算出された校正係数の質を確認する1つの回帰係数を算出する処理手段とをさらに備える
生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査システム。
【請求項23】
偏光板選択器を備えている請求項22に記載の生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査システム。
【請求項24】
上記偏光板選択器が、処理手段によって制御されている請求項23に記載の生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査システム。
【請求項25】
上記偏光板選択器が、少なくとも1つの液晶サブユニットから構成されている請求項23または24に記載の生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する分析物検査システム。
【請求項26】
所定の距離をおいて互いに対向している第1の表面(2a)および第2の表面(4a)を備え、2つの上記表面が、ほとんど合同に揃えられている高い表面エネルギーの領域を形成している2つの実質的に同等の模様(6および6’)を有し、高い表面エネルギーの上記領域が少なくとも2つの検出領域(6a)を用いて試料分配系を作り出し、上記第1および第2の表面(2aおよび4a)の少なくとも1つの上記検出領域(6aおよび6’a)が、少なくとも1つの非酵素的な認識成分(32)を有している分析物検査要素に生理学的な試料液体を導入する工程と、
検出手段および処理手段に上記分析物検査要素を接続する工程と、
異なる検出領域において生成されたシグナルを検出し、かつ関連付ける工程と、
を包含する生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に測定する方法。
【請求項27】
所定の距離をおいて互いに対向している第1の表面および第2の表面を備え、
上記第1および第2の表面のいずれか1つが親水性/疎水性の模様を有し、かつ対応する表面が疎水性の領域に囲まれた親水性ピクセルの同質の模様を有して、やや親水性およびやや疎水性の性質を有する表面を作り出し、
上記親水性の領域および上記やや疎水性の領域が少なくとも2つの検出領域を用いて試料分配系を作り出し、
第1および第2の表面の少なくとも1つの検出領域が少なくとも1つの非酵素的な分析物認識成分を有している
生理学的なまたは水性の試料液体における少なくとも1つの分析物の濃度を測定する分析物検査要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図21c】
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【図21d】
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【公表番号】特表2009−506331(P2009−506331A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528346(P2008−528346)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009381
【国際公開番号】WO2007/025558
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(507047517)エゴメディカル テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】