説明

非金属発熱体の製造方法

【課題】使用する原料ガス量を低減させることができるとともに、被膜の厚さが均一で長寿命な非金属発熱体を製造できる非金属発熱体の製造方法を提供する。
【解決手段】本非金属発熱体の製造方法は、非金属発熱体1を用意し、この非金属発熱体1の両端から所定長さの両端部1aに導電性物質を含浸させ、両端部1a以外の部位1bにCVD法により被膜を形成し、両端部1aに接する被膜形成部位1bの一部の領域1cに導電性物質を含浸させて端子部1dを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非金属発熱体の製造方法に係り、特に非金属発熱体の電極部に導電性物質を含浸させる非金属発熱体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非金属発熱体、例えばセラミックス発熱体である炭化珪素発熱体は、反応管内に配された筒状黒鉛電極内に被覆が施される炭化珪素発熱体を挿入し、原料ガスを減圧状態で反応管内に導入しながら、誘導コイルを移動して筒状黒鉛電極を加熱し、炭化珪素発熱体に被膜を形成する方法で製造されている(特許文献1)。
【0003】
また、非金属発熱体の端子部に導電性の物質を含浸させ、原料ガスの加熱を非金属発熱体への通電により生じる抵抗熱によってCVD法を行い、被膜を発熱部にのみ施す方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の反応管内で被膜を形成する方法では、誘導コイルによる加熱が帯域的であり温度ムラが発生して、被膜の厚さにムラが生じるおそれがあり、また、熱源である筒状黒鉛電極の表面にも被膜が形成され原料の無駄が生じることがある。
【0005】
また、特許文献2に記載の非金属発熱体への通電による被膜形成では、その使用時、被膜が形成されない端子部において、発熱部との境界付近に温度が高くなり、酸化による腐食が進行し、寿命が短くなるおそれがある。
【特許文献1】特開昭54−90595号公報
【特許文献2】特開昭62−182179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、使用する原料ガス量を低減させることができるとともに、被膜の厚さが均一で長寿命な非金属発熱体を製造できる非金属発熱体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係る非金属発熱体の製造方法は、非金属発熱体を用意し、この非金属発熱体両端から所定長さの両端部に導電性物質を含浸させ、前記両端部以外の部位に被膜を形成し、前記両端部に接する前記被膜形成部位の一部の領域に導電性物質を含浸させて端子部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用する原料ガス量を低減させることができるとともに、被膜の厚さが均一で長寿命な非金属発熱体を製造できる非金属発熱体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法について添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法の製造フロー図である。
【0011】
図1(a)〜(d)に示すように、本発明に係る非金属発熱体の製造方法は、非金属発熱体(材)1を用意し(a)、非金属発熱体1の両端から所定長さの両端部1a、1aに導電性物質を含浸させ(b)、両端部以外の非含浸部位1bにCVD法により被膜2を形成し(c)、両端部1a、1aに接する非含浸部位(被膜形成部位)1bの一部の領域1c、1cに導電性物質を含浸させて両端部1a、1aと共に端子部1d、1dを形成する(d)。
【0012】
非金属発熱体として炭化珪素発熱体を例にとり、具体的に説明する。
【0013】
図2に示すように、直管状の炭化珪素発熱体材11に一端から所定長さのシリコン棒12を挿入した後、炉芯管13に挿入し、この炉芯管13を囲うように配されたヒータ14によって、炭化珪素発熱体材11及びシリコン棒12を高温に加熱して、一端から所定長さの一端部11aだけシリコンを含浸させる。同様にして、他端部にもシリコンを含浸させる。
【0014】
図3に示すように、両端部にシリコンを含浸した炭化珪素発熱体材11を反応管21内に収容し、両端に電極を接続した後、反応管21内が低圧(例えば1.0Torr以下)になるようにポンプにより排気し、炭化珪素発熱体材11に通電し、シリコンを含浸させていない非シリコン含浸部位11bの表面を所定温度(例えば1400℃)に保持した後、水素ガスをキャリアとしてメチルトリクロロシラン(MTCS)を反応管21内が例えば38Torrの圧力になるように導入し、所定時間(例えば1時間)保持し、CVD法により耐食性を向上させる炭化珪素被膜22が非シリコン含浸部位(シリコン被膜形成部位)11bに形成された炭化珪素発熱体材11を得る。
【0015】
被膜は炭化珪素のほか、アルミナ、シリカ、ムライトあるいはスピネルなどが挙げられ、被膜の形成はCVD法によるのが最も好ましいが、溶射法、塗布あるいは焼成法などを用いてもよい。
【0016】
さらに、上記最初のシリコン含浸と同様の方法により、図4に示すように、非シリコン含浸部位11bに炭化珪素被膜22が形成された炭化珪素発熱体材11の一端部11aに接し、非シリコン含浸部位(被膜形成部位)11bの一部の領域11cに導電物質としてのシリコン棒を挿入し、シリコンを含浸させて一端部11aと共に端子部11dを形成する。同様にして、他端部にもシリコンを含浸させる。端子部の一部にも炭化珪素被膜22が形成されて、使用時高温になる発熱部と端子部の境界域が被覆されるので、耐食性が向上する。なお導電物質としてはシリコンのほか銅あるいは鉄などが挙げられる。
【0017】
このような製造方法によれば、低圧の反応管に原料ガスを導入するので、使用する原料ガス量が低減し、また、CVD法により炭化珪素被膜を形成するので、被膜の厚さにムラがなく、さらに、端子部の一部の表面にも炭化珪素被膜を形成することができるので、酸化が抑制され、長寿命な炭化珪素発熱体を製造することができる。
【0018】
本実施形態の非金属発熱体の製造方法によれば、使用する原料ガス量を低減させることができるとともに、被膜の厚さが均一で長寿命な非金属発熱体を製造することができる。
【0019】
なお、上記実施形態では、直管状の炭化珪素発熱体を例にとり説明したが、本発明は直管に限定されるものではなく、スパイラル形状、U字形状、W字形状などの管体あるいは中実体にも応用できる。
【実施例】
【0020】
(試料)「比較例」 内径20mm、外径35mm、長さ1200mmの中空状の炭化珪素発熱体を用意し、一端から300mmまでシリコン棒を挿入し、炉温2200℃に調節した横型含浸炉に端から300mmまでが均熱域に入るように挿入し含浸した。同様に他端にも含浸した後、含浸した炭化珪素発熱体を反応管に配置し、両端に電極を接続した後、真空ポンプにより排気して炉内圧を1.0Torr以下にした。ついで、炭化珪素発熱体に通電し含浸されない部分の表面部分を1200℃に保持した後、水素ガスをキャリアにしてMTCSを炉内が38Torrの炉内圧となるように反応管に導入し、この状態で1時間保持しCVD法により炭化珪素被膜が中央部600mmの発熱部に形成された炭化珪素発熱体を得た。
【0021】
「実施例」 内径20mm、外径35mm、長さ1200mmの中空状の炭化珪素発熱体を用意し、一端から200mmまでシリコン棒を挿入し、炉温2200℃に調節した横型含浸炉に端から200mmまでが均熱域に入るように挿入し含浸した。同様に他端にも含浸した後、含浸した炭化珪素発熱体を反応管に配置し、両端に電極を接続した後、真空ポンプにより排気して炉内圧を1.0Torr以下にした。ついで、炭化珪素発熱体に通電し含浸されない部分の表面部分を1200℃に保持した後、水素ガスをキャリアにしてMTCSを炉内が38Torrの炉内圧となるように反応管に導入し、この状態で1時間保持しCVD法により炭化珪素被膜が中央部800mmの発熱部に形成された炭化珪素発熱体を得、さらに、この炭化珪素発熱体の両端から、200mm位置から奥側に100mmのシリコン棒を挿入し、炉温2200℃に調節した横型含浸炉に端から300mmまでが均熱域に入るように挿入し含浸することで、中央部800mm位置に炭化珪素が形成され、発熱部が600mmの炭化珪素体を得た。
【0022】
(試験)
上記のようにして作製した実施例及び比較例を用いて、空気中で長時間発熱試験(電圧120V、電流120A)を行った。
【0023】
(結果)
実施例は90日間発熱させたが、端子部に異常は認められなかった。
【0024】
これに対して、比較例では60日間経過後に発熱部と端子部の境界域に酸化による浸食が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法の製造フロー図。
【図2】本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法に用いるシリコン含浸装置の概念図。
【図3】本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法に用いるCVD装置の概念図。
【図4】本発明の一実施形態に係る非金属発熱体の製造方法に用いるシリコン含浸装置(再含浸時)の概念図。
【符号の説明】
【0026】
1 非金属発熱体
1a 両端部
1b 非含浸部位
1c 一部の領域
1d 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属発熱体を用意し、この非金属発熱体両端から所定長さの両端部に導電性物質を含浸させ、前記両端部以外の部位に被膜を形成し、前記両端部に接する前記被膜形成部位の一部の領域に導電性物質を含浸させて端子部を形成することを特徴とする非金属発熱体の製造方法。
【請求項2】
前記非金属発熱体が炭化珪素発熱体であり、前記導電性物質がシリコンであり、かつ前記被膜がCVD法による炭化珪素被膜であることを特徴とする請求項1に記載の非金属発熱体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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