説明

非開削置換更新工法

【課題】破砕された既設管の破片が、分散することなく、更生管の周囲に一体に保持させることが出来る非開削置換更新工法を提供する。
【解決手段】地中に埋設された既設管7が、回転駆動されるドリルロッド2に連結されるリーマー10で破砕されながら、このリーマー10に、連結部材12a及び、ワイヤグリップ12を介して連結された更生管11が、既設管7が配設されていた部分に引き込まれて、更新されるように構成されている。
そして、この既設管7が引き込まれる際に、液状セメント5が注入されて破砕された既設管7の破片17…が、更生管11の周囲の土壌と共に、この更生管11の周囲に、一体に固化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される既設管を、破砕しながら、新しい更生管を引き込むことにより、置換を行う非開削置換更新工法に関し、特に、土壌内に、破砕された既設管が、露出する虞の無い非開削置換更新工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から地中に埋設された既設管が老朽化した場合や、径の異なる管に交換したい場合等に、更生管と、入れ替えを行う入れ替え工法が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このようなものでは、地中に埋設された既設管が、例えば、合成樹脂、石綿若しくはセラミック製等の非金属で構成されている場合、地表を開削すること無く、この既設管内にロッドを挿入して、このロッドの先端に切断刃を取り付けると共に、この切断刃に、更生管を取り付けて、引き込む。
【0004】
このため、前記切断刃によって、前記既設管が、内側から引き裂かれながら、前記更生管は、前記既設管が埋設されていた位置とほぼ同じ位置の地中に引き込まれる。
【0005】
この際、合成樹脂膜で、前記既設管の外周面が覆われることにより、前記更生管が、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂製であっても、表面が傷つきにくい。
【特許文献1】特開平11−117676号公報(0024段落乃至0041段落、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように構成された前記埋設管の入れ替え工法では、地中に埋設された既設管が、前記ロッドの先端に取り付けられた切断刃によって、引き裂かれた際に、大きな破片となって、引き込まれた更生管の外側の地中に放置されてしまう。
【0007】
例えば、既設管の破片が、合成樹脂で構成されている場合には、分解が促進されずに残存してしまう。また、石綿若しくはセラミック製等の非金属である場合に、地中に分散してしまわないような方策を別途講じる必要が生じていた。
【0008】
特に、石綿管の場合には、後日の不測の掘削により、石綿管の地上への露出により、石綿の飛散が発生する虞があった。
【0009】
そこで、この発明は、破砕された既設管の破片が、分散することなく、更生管の周囲に一体に保持させることが出来る非開削置換更新工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、地中に埋設された既設管を先行するリーマーで破砕しながら、該リーマーに連結された更生管を前記既設管が破砕された空間内に引き込んで、更新する非開削置換更新工法であって、前記破砕された既設管の破片を、土壌と共に、該更生管の周囲に一体に固化させる土壌硬化剤を注入する非開削置換更新工法を特徴としている。
【0011】
また、請求項2に記載されたものは、前記土壌硬化剤は、一定時間経過後に固化する液状セメントを主成分としている請求項1記載の非開削置換更新工法を特徴としている。
【0012】
更に、請求項3に記載されたものは、回転駆動するドリルロッドに連結されると共に、内部に設けられた通路を介して供給される前記土壌硬化剤を、外側面から噴射させる噴射孔が開口形成されたリーマー本体を有する請求項1又は2記載の非開削置換更新工法を特徴としている。
【0013】
また、請求項4に記載されたものは、破砕進行方向先端近傍に形成される円錘状先端部及び該円錐状先端部から一体に延設される円筒状胴部とを有するリーマー本体を設けると共に、前記円錐状先端部側面から突設されて、該リーマー本体の回転で、前記既設管を破砕する第一突起刃と、前記円筒状胴部の外側面に設けられて、該第一突起刃の突出量よりも大きく外側突出されることにより、前記第一突起刃によって形成される管路径よりも、大きな管路径となるように拡径させながら、破砕された既設管の破片を、周囲の土壌硬化剤内に攪拌混合させる第二突起刃とを設けた請求項1乃至3のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法を特徴としている。
【0014】
そして、請求項5に記載されたものは、前記リーマー本体の前記円錐状先端部には、前記土壌硬化剤を噴射させる第一噴射孔が形成されると共に、前記円筒状胴部には、前記土壌硬化剤を噴射させる第二噴射孔が形成されて、該第一噴出孔と第二噴出孔とを連通するリーマー内通路には、少なくとも何れか一方から、土壌噴出剤を噴出可能とする弁体が設けられている請求項3又は4記載のリーマーを特徴としている。
【0015】
更に、請求項6に記載されたものは、前記リーマーと連結されることにより、回転駆動力を与えるドリルロッドを回転自在に挿通するロッド孔を、略中央に設けると共に、外周縁を前記既設管の内周面に摺接させて、前記土壌硬化剤の流出を防止する請求項1乃至5のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法を特徴としている。
【0016】
そして、請求項7に記載されたものは、前記更生管の進行方向先端部を略閉塞すると共に、該更生管内から供給される土壌硬化剤を噴出させる補助噴出孔が開口形成されている請求項1乃至6のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
このように構成された請求項1記載のものは、前記リーマーに連結された更生管が、前記既設管が配設されていた部分に引き込まれる際に、地中に埋設された既設管が、先行するリーマーで破砕されると、前記注入された土壌硬化剤によって、破砕された既設管の破片が、前記更生管の周囲の土壌と共に硬化して、該更生管の周囲に一体となるように固定される。
【0018】
このため、破砕された既設管の破片が、分散することなく、更生管の周囲に一体に保持させることが出来るので、例えば、石綿管の破片が、地上に露出して、石綿が飛散する虞がない。
【0019】
また、請求項2に記載されたものは、前記既設管を破砕しながら、前記更生管を引き込む際に、前記土壌硬化剤が、液状セメントであるので、流動性を有しており、滑材としても機能する。
【0020】
このため、別途、滑材を噴射させる必要が無くなり、前記既設管の破砕及び該更生管の引き込みと同時に、液状セメントの注入を完了させることが出来るので、施工が容易となる。
【0021】
更に、請求項3に記載されたものは、前記ドリルロッドの回転駆動に伴って回転するリーマー本体の外側面に開口形成された噴射孔から、前記土壌硬化剤が、噴射される。
【0022】
このため、土壌硬化剤を、リーマー本体のリーマー本体及び連結される更生管の周囲に略均等に供給することができる。
【0023】
そして、請求項4に記載されたものは、前記リーマー本体の回転によって、前記円錐状先端部の側面から突設された前記第一突起刃が、前記既設管を破砕する。
【0024】
次に、前記第二突起刃が、該第一突起刃の突出量よりも大きく外側突出されているので、前記第一突起刃によって形成される管路径よりも、大きな管路径となるように拡径させながら、破砕された既設管の破片を、周囲の土壌硬化剤内に攪拌混合させる。
【0025】
このため、前記第一突起刃による破砕時の勢いで、周囲の管路内壁に突き刺さった既設管の破片が、周囲の土壌と共に、掬い取られて、周囲の土壌硬化剤内に攪拌混合される。
【0026】
従って、土壌硬化剤が硬化すると、該土壌硬化剤によって更生管の周囲に一体に設けられる硬化層の中に、前記既設管の破片が保持されるため、施工後に、周囲の土壌内に露出している破片を減少させることができ、後日の不測の掘削により、破片が露出飛散する虞がない。
【0027】
更に、請求項5に記載されたものは、前記弁体を開閉することによって、前記第一噴出孔と第二噴出孔とのうち、両方若しくは、少なくとも何れか一方から、土壌硬化剤を噴出させることができる。
【0028】
従って、施工現場の土壌の状態や、土壌硬化剤の粘性等に応じて、適宜、噴射量を変更出来る。
【0029】
また、請求項6に記載されたものは、前記ドリルロッドが、回転自在となるように、挿通されたシールパッキンの外周縁が、前記既設管の内周面に摺接されて、前記土壌硬化剤の無用の流出が防止される。
【0030】
前記シールパッキンは、前記ドリルロッドと独立していて、回転することが無いので、外周縁によるシール性を良好なものとすることが出来、漏出によって失われる土壌硬化剤の分量を抑制でき、効率がよい。
【0031】
そして、請求項7に記載されたものは、前記蓋体に形成された補助噴出孔から、該更生管内から供給される土壌硬化剤が噴出されて、前記リーマーと、該更生管の先端部との間が、該土壌硬化剤によって充填される。
【0032】
このため、前記更生管の周囲への該土壌硬化剤の付き廻りを更に良好なものとすることができ、空洞を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、図1乃至図11に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の非開削置換更新工法及び該工法に用いられるリーマー及び蓋体について説明する。
【0034】
まず、図3を用いて、この実施の形態の非開削置換更新工法を行うドリル装置等の構成から説明すると、この実施の形態のドリル駆動装置が設けられた掘削機1には、回転駆動可能に接続されるドリルロッド2の内部に形成された通路3に、図6に示すような供給車6から供給される土壌硬化剤としての液状セメント5を送り出す供給ポンプ等からなる供給部4が設けられている。
【0035】
また、施工現場では、置換更新を行う既設管7の前後に、発進坑8及び到達坑9が、所定の深さまで、縦方向に掘削形成されている。
【0036】
そして、この地中に埋設された既設管7が、前記回転駆動されるドリルロッド2に連結されるリーマー10で破砕されながら、このリーマー10に、連結部材12a及び、ワイヤグリップ12を介して連結された更生管11が、前記既設管7が配設されていた部分に引き込まれて、更新されるように構成されている。
【0037】
そして、この実施の形態では、この既設管7が、破砕された空間内に、更生管11が引き込まれる際に、前記液状セメント5が注入されて前記破砕された既設管7の破片17…が、前記更生管11の周囲の土壌と共に、この更生管11の周囲に、一体に固化されるものである。
【実施例1】
【0038】
図1乃至図9に示すこの実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法では、前記既設管7が、例えば、合成樹脂、石綿若しくはセラミック製等の非金属で構成されていて、複数の一定長さの既設管7,7の端部間同士が、金属製の継手部材13によって連結されている。
【0039】
また、前記更生管11は、ポリエチレン樹脂材料製で、図1に示すように、進行方向先端部11aを略閉塞する蓋体14が、着脱自在に内嵌されて、開口を略閉塞するように設けられている。
【0040】
更に、前記液状セメント5は、図11に示すように、普通セメント及び高炉スラグを主成分として、高分子ポリマー等の増粘材を添加することにより、粘度を調整して流動性を有し、施工中の一定時間は、滑材として機能すると共に、一定時間経過後に固化するように構成されている。
【0041】
次に、この実施例1の非開削置換更新工法に用いられるリーマー10の構成について説明する。
【0042】
この実施例1のリーマー10は、図1に示すように、前記回転駆動するドリルロッド2の先端に形成された雄ネジ部2aが、螺合されて連結される連結部10aと、内部に設けられたリーマー内通路10bを介して供給される前記液状セメント5を、外側面から噴射させる複数の第一噴射孔10d…,及び第二噴射孔10e…が開口形成されたリーマー本体10cとを有している。
【0043】
このリーマー本体10cは、主に、破砕進行方向先端側近傍に、前記連結部10aから一体に連続形成される円錘状先端部10f及び、この円錐状先端部10fから一体に延設される円筒状胴部10gとを有して、破砕進行方向に中心軸延設方向を沿わせるように、一定の長さ寸法を有している。
【0044】
このうち、前記円錐状先端部10fの側面には、リーマー本体10cの回転で、前記既設管を破砕する第一突起刃10h…が、複数突設されている。
【0045】
また、前記円筒状胴部10gの後端部近傍外側面には、各第一突起刃10h…の外側方への突出量よりも大きく外側突出される第二突起刃10i…が、複数突設されている。
【0046】
そして、この第二突起刃10iによって、図8に示す前記第一突起刃10hによって形成される小管路18の管路径よりも、図9に示す大管路19が、大きな管路径となるように拡径させられる。この際、破砕された既設管17…の破片が、この第二突起刃10iによって、拡径の際に掘削された小管路18の内壁面の土壌と共に、周囲の液状セメント5内に攪拌混合されるように構成されている。
【0047】
更に、この実施例1の第二突起刃10iは、周上の軸回転方向から、破砕進行方向に対して、所定の角度で傾斜するように突設されていて、前記土壌及び液状セメント5等の抵抗を減少させると共に、このリーマー本体10cの回転で、破砕進行方向後側に向けて土壌及び液状セメント5等を圧送するように構成されている。
【0048】
また、前記リーマー本体10cの前記円錐状先端部10fには、前記液状セメント5を、噴射させる第一噴射孔10d…が形成されているが、これらの各第一噴出孔10d…は、前記ドリルロッド2内の通路3と連通されたリーマー内通路10bの前側と、略放射状に複数分岐された分岐管を介して接続されていて、前記掘削機1の供給部4から供給される液状セメント5を、この円錐状先端部10fの外側周囲に略均等に噴出出来るように、周方向に一定間隔を置いて複数列形成されている。
【0049】
また、前記円筒状胴部10gのうち、第二突起刃10iが形成されている後端部近傍には、前記液状セメント5を、噴射させる第二噴射孔10e…が形成されている。
【0050】
これらの各第二噴出孔10e…は、前記ドリルロッド2内の通路3と連通されたリーマー内通路10bの後側と、略放射状に複数分岐された分岐管を介して接続されていて、前記掘削機1の供給部4から供給される液状セメント5を、この円筒状胴部10gの外側周囲に略均等に噴出出来るように、周方向に一定間隔を置いて形成されている。
【0051】
更に、この実施例1では、これらの第一噴出孔10d…と、第二噴出孔10e…とを連通するリーマー内通路10bには、少なくとも何れか一方から、液状セメント5を噴出可能とするように、このリーマー内通路10bを開閉塞切換可能とする操作ハンドル10kが設けられた弁体10jが介在されている。
【0052】
そして、図1中に示すように、この弁体10jの操作ハンドル10kの回動により、リーマー内通路10bが、閉塞状態となると、前記第一噴出孔10dのみから、前記液状セメント5が噴射されると共に開放状態では、第一噴出孔10d…及び第二噴出孔10e…の両方から、前記液状セメント5が噴射されるように構成されている。
【0053】
また、この実施例1では、図3に示すように、前記リーマー10と連結されることにより、回転駆動力を与えるドリルロッド2の一部には、ゴム製のシールパッキン15が設けられている。
【0054】
このシールパッキン15は、略円盤状を呈して、略中央に、前記ドリルロッド2を回転自在に挿通するロッド孔15aが形成されると共に、外周縁15bが、前記既設管7の内周面に対して、破砕進行方向に摺動自在に摺接されて、前記液状セメント5の無用の流出が防止されるように構成されている。
【0055】
次に、この実施例1の非開削置換更新工法の作用について、図4乃至図7に示す作業順序に沿って説明する。
【0056】
この実施例1の非開削置換更新工法の施工現場では、置換更新を行う既設管7の前後に、発進坑8及び到達坑9が、所定の深さまで、縦方向に掘削形成される。
【0057】
そして、図4に示すように、前記到達坑9から、金属継手探査システム100の台車101を、既設管7内に挿入して、既設管7の状況や、金属製の継手部材13,13の位置及び種類を特定する。
【0058】
次に、図5に示すように、破砕ユニット102を、ドリルロッド2の先端に装着して、前記掘削機1を用いて、発進坑8側から前記既設管7内に挿入させる。
【0059】
この際、地上の作業者が、ロケータ103及びテレビモニタ104等を用いて、継手部材13の位置を特定し、前記破砕ユニット102を用いて、この継手部材13を既設管7の内側から破砕する。
【0060】
そして、図6に示すように、前記到達坑9内で、前記ドリルロッド2の先端の雄ネジ部2aに、前記リーマー10の連結部10aを螺合させて装着し、更に、このリーマー10に、連結部材12a及び、ワイヤグリップ12を介して、前記更生管11の進行方向先端部11aを連結する。
【0061】
この状態で、前記供給車6から供給される液状セメント5を、前記供給部4が、送出しながら、前記掘削機1に連結されたドリルロッド2が回転駆動される。
【0062】
前記ドリルロッド2に連結されるリーマー10が、前記既設管7を破砕しながら、このリーマー10に、連結部材12a及び、ワイヤグリップ12を介して連結された更生管11が、前記既設管7が配設されていた部分に引き込まれて、更新される。
【0063】
この際、地中に埋設された既設管7が、先行するリーマー10で破砕されると、前記注入された液状セメント5によって、破砕された既設管7の破片17…が、前記更生管11の周囲の土壌と共に硬化して、この更生管11の外周面に一体となるように固定される。
【0064】
このため、破砕された既設管7の破片17…が、分散することなく、更生管11の周囲の土壌内に一体に保持させることが出来る。
【0065】
また、前記リーマー10が、既設管7を破砕しながら、前記更生管11を引き込む際に、前記液状セメント5が、流動性を有して滑材として機能する。
【0066】
このため、従来のように別途、滑材を噴射させる必要が無くなると共に、前記既設管7の破砕及び、この更生管11の引き込みと同時に、液状セメントの注入を完了させることが出来るので、別途、地表から注入坑等を開ける必要も無く、施工が容易である。
【0067】
更に、前記ドリルロッド2の回転駆動に伴って回転するリーマー本体10cの外側面に開口形成された第一噴射孔10d…及び第二噴射孔10e…から、前記液状セメント5が、噴射される。
【0068】
このため、液状セメント5を、リーマー10のリーマー本体10c及び連結される更生管11の周囲に、偏ること無く、略均等に供給することができる。
【0069】
そして、前記リーマー本体10cの回転によって、前記円錐状先端部10fの側面から突設された前記第一突起刃10h…が、先行して、前記既設管7を破砕する。
【0070】
この際、第一突起刃10h…は、既設管7の内側面側から、押し広げるように既設管7を破砕するので、図8に示すように、周囲の小管路18内壁に突き刺さった状態で、既設管7の破片17が、略固定されてしまう虞がある。
【0071】
この実施例1では、この小管路18内壁を掘削しながら進行する前記円筒状胴部10gの後端部近傍の第二突起刃10i…が、これらの第一突起刃10h…の外側方への突出量よりも大きく外側突出されている。
【0072】
このため、前記第一突起刃10hによって形成される小管路18の管路径よりも、大きな大管路19の管路径となるように拡径されつつ、図8に示すように、更生管11と共に、液状セメント5の中で、自重で沈降して堆積する等、分布に偏りを生じた破砕された既設管7の破片17が、周囲の液状セメント5内に攪拌混合される。
【0073】
しかも、前記第一突起刃10hによる破砕時の勢いで、周囲の小管路18内壁に突き刺さった既設管7の破片17,17が、周囲の土壌と共に、掬い取られて、周囲の液状セメント5内に攪拌混合される。
【0074】
従って、液状セメント5が硬化すると、図9に示すように、この液状セメント5によって、更生管11の周囲に一体に設けられる硬化層の中に、前記既設管7の破片17…が保持されるため、施工後に、大管路19の内側面からはみ出して、周囲の土壌内に露出している破片17…を減少させることができる。
【0075】
更に、この実施例1では、前記弁体10jの操作ハンドル10kを用いて、開閉することによって、前記第一噴出孔10dと第二噴出孔10eとのうち、両方若しくは、第一噴出孔10dのみから、液状セメント5を噴出させることができる。
【0076】
従って、施工現場の土壌の状態や、液状セメント5の粘性等に応じて、適宜、噴射量を変更出来る。
【0077】
このため、この実施例1では、例えば、液状セメント5の粘性を比較的高く設定して、大管路19の周囲の土壌に浸出するのを防止しつつ、噴出量を増大させて、空洞の発生を抑制する等、調整を容易に行うことが出来る。
【0078】
また、前記ドリルロッド2が、回転自在となるように、前記ロッド孔15aに挿通された前記シールパッキン15の外周縁15bが、前記既設管7の内周面に摺接されて、前記液状セメント5の無用の流出が防止される。
【0079】
前記シールパッキン15は、前記ドリルロッド2と独立していて、回転することが無いので、外周縁によるシール性を良好なものとすることが出来、漏出によって失われる液状セメント5の分量を抑制できる。
【0080】
更に、この実施例1では、前記第二突起刃10iが、周上の軸回転方向から、破砕進行方向に対して、所定の角度で傾斜するように突設されていて、前記土壌及び液状セメント5等の抵抗を減少させると共に、このリーマー本体10cの回転で、破砕進行方向後側に向けて土壌及び液状セメント5等が圧送される。
【0081】
このため、破片17を含む周囲の土壌が混合された液状セメント5の混合液状物は、前記第二噴出孔10eから噴出された液状セメント5が補充されながら、拡径された大管路19の内側に隙間無く、圧送充填される。
【0082】
したがって、図7及び図9に示すように、液状セメント5が硬化した後の硬化層に空洞が発生する虞を減少させることができる。
【0083】
よって、例えば、既設管7が石綿等で構成されていても、破片17…が、露出して土壌と接触する部分を減少させるように、液状セメント5が、硬化した後の硬化層内に、破片17…を保持させて、更に、確実に地中への分散を防止できる。
【0084】
また、後日の不測の掘削により、石綿管の地上への露出により、石綿の飛散が発生する虞がない。
【0085】
しかも、この実施例1では、前記第二突起刃10iが、前記円筒状胴部10gの後端部近傍外側面に設けられて、前記第一突起刃10hが、形成された円錐状先端部10fから、一定寸法、離間するように設定されている。
【0086】
このため、前記ドリルロッド2によって、回転駆動されながら、発進孔8方向に牽引される際に、外径方向に、この円筒状胴部10gの後端部が揺動する虞が少なく、先行する前記円錐状先端部10fの後方から、略同じ道程で、トレースすることができる。
【0087】
従って、硬化後のセメント硬化層の形状を直線状とすることが出来て、施工効率も良好である。
【実施例2】
【0088】
図10は、この発明の実施の形態の実施例2の非開削置換更新工法に用いられる蓋体20を示すものである。
【0089】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0090】
この実施例2の非開削置換更新工法に用いられる蓋体20では、前記更生管11の進行方向先端部11aを略閉塞する略円盤状の蓋体本体20aに、複数の補助噴出孔22,22が、開口形成されている。
【0091】
これらの補助噴出孔22,22には、更生管11内に延設される液状セメント5の通路が設けられた供給パイプ21の分岐パイプ21a,21aが、各々接続されていて、到達坑9側から供給される液状セメント5を噴出させるように構成されている。
【0092】
次に、この実施例2の非開削置換更新工法に用いられる蓋体20の作用効果について説明する。
【0093】
この実施例2の蓋体20では、前記実施例1の作用効果に加えて、更に、前記蓋体20に形成された補助噴出孔22,22では、前記更生管11内に延設される液状セメント5の通路が設けられた供給パイプ21から供給される液状セメント5が、噴出されて、前記リーマー10の後端部と、この更生管11の先端部11aとの間が、液状セメント5によって充填される。
【0094】
このため、破砕進行方向への前記リーマー10の移動に伴って、後端部近傍に発生する空洞で、大管路19の上側内壁面に付着している前記破片17を含む周囲の土壌を混合した液状セメント5の混合液状物が、剥離して落下する虞が減少すると共に、更に、前記更生管11の周囲に位置する硬化層のうち、最も更生管11外周面に近接した層を、混合物の少ないセメント層として、更生管11の周囲への付き廻りを更に良好なものとすることができる。
【0095】
また、前記発進坑8側から供給される液状セメント5の配合比率と、この補助噴出孔22,22から噴出される液状セメント5の配合比率とを異なるものとして、粘度及び硬化時間等を調整することにより、更に、施工現場の土壌の状態等の諸条件に適合した非開削置換更新施工を行うことができる。
【0096】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0097】
即ち、前記実施の形態及び実施例1では、前記リーマー10に設けられる第二突起刃10iの形状が、周上の軸回転方向から、破砕進行方向に対して、所定の角度で傾斜するように突設されているが、特にこれに限らず、例えば、角状や、丸棒状等が、ランダムに配列される等、前記第一突起刃10h及び、第二突起刃10iは、どのような形状、数量,及び配列であってもよい。
【0098】
また、前記実施の形態及び実施例1では、外側面から噴射させる複数の第一噴射孔10d…,及び第二噴射孔10e…が開口形成されたリーマー本体10cを示して説明してきたが、これらの第一噴射孔10d…,及び第二噴射孔10e…の数量、形状及び配列であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法に用いられるリーマーを示し、要部の説明する斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法で、リーマーが、既設管の破砕を行いながら、土壌硬化剤を噴射する様子を説明する地中の縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法で、全体の構成を説明する地中の一部断面斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法を説明し、継手部材を探査する様子を説明する模式的な地中の縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法を説明し、継手部材を破砕する様子を説明する模式的な地中の縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法を説明し、更生管を引き込む様子を説明する模式的な地中の縦断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法を説明し、更生管が引き込まれて、施工がほぼ完了した様子を説明する模式的な地中の縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法の比較例として示す第一突起刃によって、破砕された破片の分布を示す地中の鉛直断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例1の非開削置換更新工法を示し、第二突起刃によって、攪拌された破片の分布を示す地中の鉛直断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例2の非開削置換更新工法で、更生管の蓋体から、土壌硬化剤が噴射される様子を説明する地中の縦断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に用いられる土壌硬化剤としての液状セメントの配合の一例を示す表図である。
【符号の説明】
【0100】
1 掘削機
2 ドリルロッド
3 通路
4 供給部
5 液状セメント(土壌硬化剤)
7 既設管
10 リーマー
10b リーマー内通路
10c リーマー本体
10d 第一噴射孔
10e 第二噴射孔
10f 円錐状先端部
10g 円筒状胴部
11 更生管
15 シールパッキン
15a ロッド孔
15b 外周縁
18 小管路
19 大管路
20 蓋体
22 補助噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された既設管を先行するリーマーで破砕しながら、該リーマーに連結された更生管を前記既設管が破砕された空間内に引き込んで、更新する非開削置換更新工法であって、
前記破砕された既設管の破片を、土壌と共に、該更生管の周囲に一体に固化させる土壌硬化剤を注入することを特徴とする非開削置換更新工法。
【請求項2】
前記土壌硬化剤は、一定時間経過後に固化する液状セメントを主成分としていることを特徴とする請求項1記載の非開削置換更新工法。
【請求項3】
回転駆動するドリルロッドに連結されると共に、内部に設けられた通路を介して供給される前記土壌硬化剤を、外側面から噴射させる噴射孔が開口形成されたリーマー本体を有することを特徴とする請求項1又は2記載の非開削置換更新工法。
【請求項4】
破砕進行方向先端近傍に形成される円錘状先端部及び該円錐状先端部から一体に延設される円筒状胴部とを有するリーマー本体を設けると共に、前記円錐状先端部側面から突設されて、該リーマー本体の回転で、前記既設管を破砕する第一突起刃と、前記円筒状胴部の外側面に設けられて、該第一突起刃の突出量よりも大きく外側突出されることにより、前記第一突起刃によって形成される管路径よりも、大きな管路径となるように拡径させながら、破砕された既設管の破片を、周囲の土壌硬化剤内に攪拌混合させる第二突起刃とを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法。
【請求項5】
前記リーマー本体の前記円錐状先端部には、前記土壌硬化剤を噴射させる第一噴射孔が形成されると共に、前記円筒状胴部には、前記土壌硬化剤を噴射させる第二噴射孔が形成されて、該第一噴出孔と第二噴出孔とを連通するリーマー内通路には、少なくとも何れか一方から、土壌噴出剤を噴出可能とする弁体が設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載のリーマー。
【請求項6】
前記リーマーと連結されることにより、回転駆動力を与えるドリルロッドを回転自在に挿通するロッド孔を、略中央に設けると共に、外周縁を前記既設管の内周面に摺接させて、前記土壌硬化剤の流出を防止することを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法。
【請求項7】
前記更生管の進行方向先端部を略閉塞すると共に、該更生管内から供給される土壌硬化剤を噴出させる補助噴出孔が開口形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか一項記載の非開削置換更新工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−239389(P2007−239389A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66348(P2006−66348)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】