説明

革製造方法

【課題】原皮から革を仕上げる最終工程となる「仕上げ工程」において、革をほぐすための「空打ち処理」時間を短縮できる革の製造方法の提供。
【解決手段】クロムなめし工程を経た、大きさが93mm×40mm、厚みが1.5mmの革30枚(重量900g)を、ステンレス製ドラム(直径1.2m×幅60cm、容量0.68m)に投入し、直径20mm〜55mmのゴムボール(ショアA硬さ40〜60、重量900g〜1800g)を入れ、回転数17rpmでドラムを2時間以上回転させて空打ち処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、革製造の仕上げ工程における空打ち処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛皮、豚皮、羊皮などの原皮から革を製造する工程は準備工程、なめし工程、仕上げ工程に大別できる。準備工程は毛、表皮、脂肪、タンパク質等の革として不要な成分を原皮から除去し、コラーゲン繊維のからみ合いをほぐす工程であり、なめし工程はクロムなめし剤や植物タンニンなめし剤を皮に浸透させ、耐熱性などの耐久性を与える工程である。なめし工程後は皮が革へと変化する。仕上げ工程は革に柔軟性や弾力性を与え外観を整える工程である。
【0003】
この仕上げ工程には革をほぐすための「空打ち処理」工程があり、そこでは革の入ったドラムを回転させて革をドラム壁面へ衝突、あるいは革同士を衝突させて革の繊維をほぐして柔らかくしている。
この時の衝撃が強すぎると革の繊維が破断して本来の特性が損なわれるため、比較的弱い衝撃を長時間与えて繊維をほぐしている。そのため生産効率があまり良くない。宮内産業株式会社のカタログ「革のできるまで」には、空打ち処理として、直径4m程の網ドラムで4時間ほど革をもみほぐすと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】宮内産業株式会社のカタログ 「革のできるまで」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仕上げ工程における革をほぐすための「空打ち処理」工程時間の短縮化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原皮から革を仕上げる最終工程となる仕上げ工程において、なめし工程を経た革をゴムボールの入ったドラムに投入し、ドラムを所定時間以上回転させる空打ち処理工程を設けた革の製造方法。
【0007】
本発明における各要素の態様を以下に例示する。
【0008】
原皮としては哺乳類の牛皮、豚皮、羊皮、爬虫類のワニ皮、ヘビ皮などがある。
【0009】
ゴムボールとしては、ショアAでの硬さが40〜60、ゴム材質としてブチルゴム、SBR、EPDMなどが例示でき、大きさは直径20mm〜55mmが例示できる。
【0010】
ドラムのサイズとしては直径1m〜2m×幅50cm〜1m(容量 0.39m〜3.14m)、ドラムの回転数は15rpm〜25rpm(10分毎に反転)が例示できる。
【0011】
革の投入量としては800g〜1000gを例示できる。一枚当たりの革の大きさは100mm×50mm程度(厚みは1.5mm)であり、投入枚数としては30枚前後を例示できる。
【0012】
ゴムボール量はドラムのサイズ、革の投入量にもよるが、800g〜2000gが例示できる。ドラムの単位体積(m)当たりにすると0.25Kg/m〜5.13Kg/mとなるが、1Kg/m〜3Kg/mが好ましい。さらに、革の投入量当たりにすると0.8Kg/Kg〜2.5Kg/Kgとなるが、1Kg/Kg〜2Kg/Kgが好ましい。
【0013】
空打ち処理時間は革の柔軟性の要求度によるので一概には取り決められないが、2時間以上を例示できる。
【発明の効果】
【0014】
ゴムボール入りドラムに革を投入してドラムを回転させるので、革のドラム内面との衝突だけではなくゴムボールとの衝突も加わり、空打ち処理時間の短縮化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は空打ち処理時間(直径22mmのゴムボール)と剛軟度変化率との関係図ある。
【図2】図2は空打ち処理時間(直径49mmのゴムボール)と剛軟度変化率との関係図ある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
原皮から革を仕上げる最終工程となる仕上げ工程において、なめし工程を経た革を、直径20mm〜55mmのゴムボールの入ったドラムに投入し、ドラムを2時間以上回転させる空打ち処理工程を設けた革の製造方法
【実施例】
【0017】
クロムなめし工程を経た、93mm×40mm×厚み1.5mmの大きさの革30枚(重量900g)をステンレス製ドラム(直径1.2m×幅60cm、容量0.68m)に投入し、そこに直径22mmのゴムボール(ブチルゴム、ショアA50)900gを入れ、ドラムを回転数17rpmで回転させて所定時間(1、2、3、4、5、6時間)の空打ち処理を行った。さらに、ゴムボール量を1800gとして同様な実験を行った。
【0018】
次に、直径が49mmのゴムボール(ブチルゴム、ショアA50)を用いて、ゴムボール量を900gと1800gで同様な実験を行った。
【0019】
ドラム単位体積(m)当たりのゴムボール量は1.32Kg/m、2.64Kg/mとなる。さらに、革の投入量当たりのゴムボール量は1Kg/Kg、2Kg/Kgとなる。
【0020】
さらに、ゴムボールをドラムに入れずに空打ち処理した実験を行った。
【0021】
空打ち処理後の革の柔軟性は剛軟度で評価するが、剛軟度はソフトネステスター(MSA Engineering Systems社製)にて測定した。
【0022】
その結果を図1、図2に示す。図の横軸は空打ち処理時間であり縦軸は剛軟度変化率である。剛軟度変化率とは、空打ち処理後の剛軟度を空打ち前の剛軟度で除した値である。
【0023】
図1に示すように、直径22mmのゴムボールをドラムに入れた1時間の空打ち処理では、ゴムボール量に関わらずその効果は認められない。しかし、2時間以上の空打ち処理を行うとゴムボールを入れた効果が現れ、より短時間で柔軟性を得る事ができる。
【0024】
また、図2に示すように、直径49mmのゴムボールをドラムに入れた1時間の空打ち処理では、図1に示した結果と同様、ゴムボール量に関わらずその効果は小さい。しかし、2時間以上の空打ち処理を行うとゴムボールを入れた効果が現れ、より短時間で柔軟性を得る事ができる。ゴムボールの径が大きいほどその傾向が顕著となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原皮から革を仕上げる最終工程となる仕上げ工程において、なめし工程を経た革をゴムボールの入ったドラムに投入し、ドラムを所定時間以上回転させる空打ち処理工程を設けた革の製造方法。
【請求項2】
前記ゴムボールの硬さはショアAで40〜60であり、大きさが直径20mm〜55mmである請求項1記載の革の製造方法。
【請求項3】
前記ゴムボールの量はドラム単位体積当たり1Kg/m〜3Kg/mである請求項1〜請求項2記載の革の製造方法。
【請求項4】
前記ゴムボールの量は革の投入量当たり1Kg/Kg〜2Kg/Kgである請求項1記載の革の製造方法。
【請求項5】
前記所定時間が2時間以上である請求項1記載の革の製造方法。

【図1】
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【図2】
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