説明

鞍乗型車両のポジションライト、前照灯構造及びカウル構造

【課題】外観性に優れ、発光面積が広く、被視認性が高いポジションライトを提供する。
【解決手段】ポジションライトバルブ111の左右に配置され、ポジションライトバルブ111のバルブ光Lによって発光する一対の第1発光部121と、ポジションライトバルブ111の前方に配置される前方リフレクタ部材130と、ポジションライトバルブ111の後方に配置される後方リフレクタ部材140と、一対の第1発光部121を連結し且つポジションライトバルブ111のバルブ光Lによって発光する第2発光部122とを備える。第1発光部121は、主として、ポジションライトバルブ111から出光し前方リフレクタ部材130及び後方リフレクタ部材140で順に反射した2回反射バルブ光L2によって発光し、第2発光部122は、主として、ポジションライトバルブ111から出光し後方リフレクタ部材140のみで反射した1回反射バルブ光L1によって発光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などの鞍乗型車両のポジションライト、並びにこれを備えた前照灯構造及びカウル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動二輪車などの鞍乗型車両のポジションライトにおいて、ポジションライトバルブが車体カバーにより隠蔽され、ポジションライトバルブからのバルブ光を車幅方向の左右それぞれから発光する発光部を備えた構成が公知である(例えば、下記特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−165583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたポジションライトは、車幅方向の中央に位置するポジションライトバルブから、左右それぞれの発光部から発光させるものであり、車幅方向の中央においては、フロントカバーが、ポジションライトバルブを遮蔽している。そのため、車幅方向の中央には、発光部が設けられておらず、そのため、左右の発光部が車幅方向に分離しており、車幅方向に一体感が少なく、外観性に劣ると共に、被視認性が低い。更に、車体における左右方向の中央のスペースを、より有効利用して、ポジションライトの発光面積を拡大して、被視認性を更に向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、車幅方向に延びる発光部を有するため、外観性に優れ、発光面積が広く、被視認性が高い鞍乗型車両のポジションライトを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記ポジションライトを備えた前照灯構造及びカウル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、鞍乗型車両の車体の前方に配置される鞍乗型車両のポジションライトであって、光源であるポジションライトバルブと、当該ポジションライトバルブの左方及び右方それぞれに配置され、前記ポジションライトバルブからのバルブ光によって発光する左右一対の第1発光部と、前記ポジションライトバルブの前方に配置され、光を反射する前方リフレクタ部材と、前記ポジションライトバルブの後方に配置され、光を反射する後方リフレクタ部材と、を備える鞍乗型車両のポジションライトであって、前記左右一対の第1発光部を連結するように前記左右一対の第1発光部の間に配置され、前記前方リフレクタ部材の上方又は下方に位置して、前記左右一対の第1発光部と連続して形成され、前記ポジションライトバルブからのバルブ光によって発光する第2発光部を更に備え、前記第1発光部は、主として、前記ポジションライトバルブから出光し、前記前方リフレクタ部材及び前記後方リフレクタ部材において順に反射した2回反射バルブ光によって発光し、前記第2発光部は、主として、前記ポジションライトバルブから出光し、前記後方リフレクタ部材のみにおいて反射した1回反射バルブ光によって発光することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の構成に加えて、前記第1発光部の発光面積は、前記第2発光部の発光面積よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明においては、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記ポジションライトバルブは、車幅方向の中央に1つ配置され、ヘッドライトの上方に位置すると共に、前記車体の前方に配置されるスクリーン又は車体カバーにより前方から覆われ、前記第2発光部は、前記ヘッドライトと前記スクリーン又は前記車体カバーとの上下方向の間に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、前記ポジションライトバルブの前方に配置されるポジションライト用レンズを更に備え、前記前方リフレクタ部材は、前記ポジションライト用レンズに取り付けられ、前記ポジションライトバルブは、前記後方リフレクタ部材に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載のポジションライトと、当該ポジションライトと一体的に構成される前記ヘッドライトと、を備える鞍乗型車両の前照灯構造であって、前記ポジションライトの車幅方向の端部は、前記ヘッドライトの車幅方向の端部を通る鉛直線よりも車幅方向の外側に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載のポジションライトと、当該ポジションライトと一体的に構成されるヘッドライトと、前記ポジションライト及び前記ヘッドライトを覆うと共に固定するフロントカウルと、前記フロントカウルを支持する支持部を有し、車体フレームに固定されるフロントカウルステーと、を備えた鞍乗型車両のカウル構造において、前記支持部は、前記フロントカウルの上側を支持する第1支持部と、前記フロントカウルの下側を支持する第2支持部と、を有し、前記第1支持部は、前記フロントカウルステーに設けられた支持面と、前記支持面から上方向に延びるピン部と、前記ピン部に対して前記フロントカウルを位置決めする上部弾性部材と、を有し、前記第2支持部は、前記フロントカウルステーに対して、前記フロントカウルの角度を前後方向に調整可能に支持することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明においては、請求項6に記載の構成に加えて、前記ピン部は、前記第2支持部が前記フロントカウルの角度を前後方向に調整するときに回動される前記フロントカウルの回動軸上に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明においては、請求項6又は7に記載の構成に加えて、前記第2支持部は、車両の前後方向に延びる長孔を有し、前記フロントカウルに設けられるエーミングステーと、前記長孔を貫通して前記エーミングステーを前記フロントカウルステーに締結するボルトとを有し、前記ボルトの位置に対して、前記フロントカウルが前記エーミングステーの前記長孔に沿って移動可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、第2発光部は、主として1回反射バルブ光によって発光するので、単位面積あたりで、第1発光部よりも大きい光量を得る(明るくする)ことができる。仮に、第1発光部の左右を小さい面積にて連結する場合であっても、第1発光部の視認性が良好となるので、一体感の有るポジションライトの発光部を形成することができる。よって、ポジションライトの外観性を向上させることができると共に、被視認性を高めることができる。
【0015】
更に、車幅方向に延びるように第1発光部及び第2発光部を発光させることができるので、車体における左右方向の中央のスペースを有効利用して、ポジションライトの発光面積を拡大して、被視認性を更に向上させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、第1発光部の発光面積は第2発光部の発光面積よりも大きいため、第1発光部は、光量が弱くても、発光面積が大きい。そのため、ポジションライト全体として一体感が出やすく、また、眩し過ぎず且つ暗過ぎないため被視認性のバランスに優れたポジションライトを実現することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、ポジションライトバルブは、車体の前方に配置されるスクリーン又は車体カバーにより前方から覆われ、第2発光部は、ヘッドライトとスクリーン又は車体カバーとの上下方向の間に位置する。そのため、ポジションライトバルブの上部にスクリーン又は車体カバーが配置される形態と比べて、ポジションライトの上下方向の大きさを抑制できる。また、発光面積は狭いが単位面積あたりの光量が大きい第2発光部を設けることで、ポジションライトの外観性を向上させることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前方リフレクタ部材は、ポジションライト用レンズに取り付けられ、ポジションライトバルブは、後方リフレクタ部材に取り付けられる。そのため、ポジションライトバルブを後方リフレクタ部材で支持しながら、前方リフレクタ部材によるバルブ光の反射方向を任意の方向に設定しやすい。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、ポジションライトとヘッドライトとが一体的に構成される前照灯構造となるので、前照灯構造を車体の前方にコンパクトに配置できると共に、車体への前照灯構造の組み付け性及び生産性を向上できる。
また、ポジションライトの車幅方向の端部を、ヘッドライトの車幅方向の端部を通る鉛直線よりも車幅方向の外側に位置させたため、ポジションライトの視認性を、より一層向上させることができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、フロントカウルは、フロントカウルステーのピン部に位置決めされて、支持面に支持される。そのため、フロントカウルを取り付ける締結用のボルトが不要である。これにより、不要なボルトが外から見えないため、良好な外観が得られる。
【0021】
また、フロントカウルの組み付け作業時には、フロントカウルをピン部に位置決めするだけで、フロントカウルをフロントカウルステーに組み付けることができる。これにより、フロントカウルの組み付けの作業性が向上する。
【0022】
また、フロントカウルは、上部弾性部材を介して、フロントカウルステーのピン部に位置決めされて、支持面に支持される。そのため、第2支持部がフロントカウルの角度を前後方向に調整するときに、フロントカウルは、上部弾性部材の弾力を利用して回動することができる。よって、前照灯の光軸調整が容易となる。
【0023】
また、第1支持部は、フロントカウルの上側を支持する。第2支持部は、フロントカウルの下側を支持する。すなわち、前照灯の光軸調整を行うための回動軸と、光軸調整を行う調整部とが離間している。これにより、光軸の微調整が容易である。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、第2支持部がフロントカウルの角度を前後方向に調整するときに、フロントカウルは回動する。その回動軸はピン部にある。これにより、ピン部とは別に新たに回動軸を設ける必要がない。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、ボルトの位置に対して、エーミングステーを長孔に沿って移動することができる。これにより、前照灯の光軸調整を行うときには、ボルトを緩めて、フロントカウル全体を長孔に沿って光軸調整をすることができる。よって、光軸調整の作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るポジションライト、前照灯構造及びカウル構造を備えた鞍乗型車両としての自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す左側面図である。
【図3】図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す左斜め後方からみた斜視図である。
【図4】図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す背面図である。
【図5】図4に示すカウル構造の要部の拡大図である。
【図6】図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す正面図であって、レンズの内側の部材を中心に示す図である。
【図7】図6に示すA−A線断面図である。
【図8】図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す正面図であって、外観を中心に示す図である(図6対応図)。
【図9】本発明の実施形態に係る前照灯構造の分解斜視図である。
【図10】バルブ光が第1発光部又は第2発光部から発光される際の光路を模式的に示す斜視図である。
【図11】図6に示すB−B線断面図であり、バルブ光が第1発光部から発光される際の光路を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るポジションライト、前照灯構造及びカウル構造を備えた鞍乗型車両としての自動二輪車を示す左側面図である。
先ず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るカウル構造を備えた鞍乗型車両としての自動二輪車1の全体構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、ヘッドパイプ11及びシートレール13を含んで構成される車体フレーム10と、この車体フレーム10の前方に配置されるカウル構造としてのカウル構造部40と、前輪21と、この前輪21の上方に配置されるフロントフェンダ211と、前輪21を軸支するフロントフォーク22と、このフロントフォーク22をヘッドパイプ11に対して左右に回動自在に連結するステアリングステム23と、車体フレーム10の後方に配置される後輪24と、この後輪24の上方に配置されるリアフェンダ241と、後輪24を軸支するスイングアーム25と、このスイングアーム25を車体フレーム10に上下に揺動自在に連結するピボットプレート26と、スイングアーム25とシートレール13との間に介在するリアクッション27と、燃料タンク28と、シート29と、エンジン30と、を備える。
【0029】
車体フレーム10は、複数種の鋼材が溶接等により一体的に結合されて構成される。図1に示すように、この車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、メインフレーム12と、シートレール13と、ダウンフレーム14と、サブフレーム15と、を備える。
【0030】
ヘッドパイプ11は、車体フレーム10の前端部に配置される。
メインフレーム12は、左右に一対設けられている。一対のメインフレーム12は、側面視で、ヘッドパイプ11から後方に延出し、途中で下方に屈曲する屈曲部12aを有する。
シートレール13は、左右に一対設けられている。一対のシートレール13は、側面視で、一端側においてメインフレーム12の屈曲部12aに連結されており、他端側において後方に向かって延びている。
【0031】
ダウンフレーム14は、左右に一対設けられている。一対のダウンフレーム14は、側面視で、ヘッドパイプ11の後部から斜め下後方に延びている。
サブフレーム15は、左右に一対設けられている。一対のサブフレーム15は、一端側において一対のメインフレーム12の後部に連結され、他端側において斜め上後方に延びて一対のシートレール13の後部に連結されている。
【0032】
フロントフォーク22は、左右に一対設けられている。一対のフロントフォーク22は、ヘッドパイプ11の前方に、このヘッドパイプ11に略平行に配置される。一対のフロントフォーク22は、トップブリッジ231、ボトムブリッジ232及びステアリングステム23を介してヘッドパイプ11に軸支される。
【0033】
トップブリッジ231の上面には、ハンドルステー16aを介して、ハンドル16が連結される。ボトムブリッジ232及びトップブリッジ231には、カウル構造部40のフロントカウルステー60(後述)が固定される。ボトムブリッジ232は、フロントカウルステー60の下部固定ボス611(後述)を収容するボス孔232a(図2参照)を有する。トップブリッジ231は、フロントカウルステー60の上部固定ボス612(後述)を収容するボス孔231a(図2参照)を有する。
車体フレーム10、フロントフォーク22、ハンドル16等を主体として、車体2が構成されている。
【0034】
スイングアーム25は、左右に一対設けられている。一対のスイングアーム25は、車体フレーム10における前後方向の中央部に揺動自在に懸架され、後輪24を回転自在に保持する。
ピボットプレート26は、左右に一対設けられている。一対のピボットプレート26は、一対のメインフレーム12の後部の前側に連結されており、一対のスイングアーム25を軸支している。
リアクッション27は、左右に一対設けられている。一対のリアクッション27は、一端側が一対のスイングアーム25の後部に連結され、他端側がクッションガセット17を介して一対のシートレール13に連結されている。
【0035】
燃料タンク28は、一対のメインフレーム12の上部に支持されている。シート29は、燃料タンク28の後方において一対のシートレール13の上部に支持されている。
【0036】
エンジン30は、車体2における前後方向の略中央部に搭載される。このエンジン30は、シリンダヘッド31を有するシリンダ部32と、シリンダヘッド31に連結された吸気部33及び排気部34と、を備える。
【0037】
シリンダ部32は、一対のメインフレーム12、一対のダウンフレーム14及び一対のピボットプレート26に囲まれた空間に配置される。このシリンダ部32の内部には、ピストン(図示せず)が往復動可能に嵌装されている。ピストンの往復動は、コンロッド(図示せず)を介してクランク軸(図示せず)の回転動に変換される。そして、エンジン30の出力は、変速機構(図示せず)を経由して出力され、チェーンドライブ式の動力伝達機構(図示せず)を介して、後輪24に伝達される。
【0038】
吸気部33は、シリンダヘッド31の後部に接続されたキャブレタ331と、このキャブレタ331の後部に接続されたエアクリーナ332と、を備える。エアクリーナ332は、一対のシートレール13、一対のメインフレーム12及び一対のサブフレーム15に囲まれた空間に配置される。
【0039】
排気部34は、基端側がシリンダヘッド31の前部に接続された排気管341と、この排気管341の先端側に接続されるサイレンサ(図示せず)と、を備える。排気管341は、シリンダ部32の前方及び下方において湾曲し、先端側が後方に向かって延びている。サイレンサは、後輪24の右側に配置される。
【0040】
次に、本実施形態のカウル構造としてのカウル構造部40の詳細について、図面を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す左側面図である。図3は、図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す左斜め後方からみた斜視図である。図4は、図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す背面図である。図5は、図4に示すカウル構造の要部の拡大図である。
【0041】
図2〜図4に示すように、本実施形態のカウル構造部40は、ポジションライト110及びヘッドライト180を主体として構成される前照灯構造としての前照灯構造部100と、ウインカ45と、前照灯構造部100に固定されて前照灯構造部100の周囲を覆うフロントカウル50と、フロントカウル50を車体フレーム10に固定するフロントカウルステー60と、フロントナンバープレート(図示せず)を取り付けるナンバープレート取り付けステー70と、を備える。
【0042】
前照灯構造部100は、ポジションライト110と、ポジションライト110と一体的に構成されるヘッドライト180と、を備える。
前照灯構造部100の詳細については後述する。
【0043】
フロントカウル50は、樹脂等により形成される。フロントカウル50は、前照灯構造部100の上部を覆う上部カバー部51と、前照灯構造部100の左右の側部を覆う一対の側部カバー部52と、前照灯構造部100(ヘッドライト180)の下部を覆う下部カバー部53と、スクリーン171と、左右一対のブラケット54と、エーミングステー55と、を備える。
【0044】
図3及び図4に示すように、上部カバー部51は、車体2の前方に配置され、後端側が後ろ上がりになるように形成されている。一対の側部カバー部52は、後端が幅広になるように形成されている。一対の側部カバー部52には、左右一対のウインカ45が固定されている。
【0045】
図2に示すように、下部カバー部53は、フロントカウル50の前側から後方に向かって略水平に少し延び、そこから下方に向かって少し延び、さらに後方に向かって略水平に少し延びるように形成されている。下部カバー部53の下端部には、後方に向かって略水平に延びる取り付け面531が形成されている。
【0046】
スクリーン171は、車体2の前方に配置され、上部カバー部51の前方に近接して配置され、上部カバー部51の前部を覆う。スクリーン171は、上部カバー部51よりも上方に延出し、風避けとして機能する。
【0047】
左右一対のブラケット54は、一対の側部カバー部52の内側に設けられる。一対のブラケット54は、略水平に位置する水平部541と、水平部541の前側から略垂直に立ち上がる前側垂直部542と、水平部541の後側から略垂直に垂れ下がる後側垂直部543と、を有する。
【0048】
一対のブラケット54の水平部541には、上部弾性部材544が固定されている。図5に示すように、上部弾性部材544は、略円筒状であり、中心孔544aを有する。上部弾性部材544には、外周面における上下間の中間位置に、上面及び下面と平行な環状溝544bが形成されている。水平部541に設けられた孔541aに環状溝544bを嵌合することにより、上部弾性部材544は、水平部541に固定される。
【0049】
一対のブラケット54の前側垂直部542及び後側垂直部543は、一対の側部カバー部52の内側に取り付けられている。図2及び図3に示すように、一対の側部カバー部52は、内側に、一対のブラケット54の前側垂直部542に対応するボス穴521、及び、後側垂直部543に対応するボス穴522を有する。ねじ545を、前側垂直部542及び後側垂直部543に設けられた孔(図示せず)に通して、ボス穴521、522にねじ込むことにより、前側垂直部542及び後側垂直部543は、側部カバー部52の内側に取り付けられる。
【0050】
エーミングステー55は、下部カバー部53の内側に設けられる。エーミングステー55は、略水平に位置する水平部551と、水平部551の左右両側から略垂直に垂れ下がる一対の垂直部552と、を有する。
【0051】
図2に示すように、エーミングステー55の水平部551は、下部カバー部53の内側に下部弾性部材554を介して取り付けられている。水平部551は、一対の取り付け孔(図示せず)を有する。下部弾性部材554は、略円筒状であり、中心孔(図示せず)を有する。
【0052】
ナンバープレート取り付けステー70に設けられた孔(図示せず)に下からボルト555を通し、このボルト555を、下部カバー部53の取り付け面531に設けられた孔(図示せず)、下部弾性部材554の中心孔、及び水平部551の取り付け孔を順次通して、ナット556で固定することにより、水平部551は、下部カバー部53の内側に下部弾性部材554を介して取り付けられる。
【0053】
エーミングステー55の左右一対の垂直部552には、車両の前後方向に延びる長孔552aが設けられている。
【0054】
フロントカウルステー60は、左右一対の固定フレーム61と、下部連結フレーム62と、左右一対の膨出部としての下部支持フレーム63と、左右一対の上部フレーム64と、上部連結フレーム65と、左右一対の上部支持フレーム66と、を備える。
【0055】
一対の固定フレーム61は、上下方向に延びている。一対の固定フレーム61の下部は、中間部に対して後方に位置するように屈曲している。一対の固定フレーム61の下端部は、下部固定ボス611を有する。一対の固定フレーム61の上部は、中間部に対して後方に位置するように屈曲している。一対の固定フレーム61の上端部は、上部固定ボス612を有する。
下部連結フレーム62は、一対の固定フレーム61の下側において一対の固定フレーム61同士を互いに連結する。
【0056】
一対の下部支持フレーム63は、フロントカウル50の下面としての取り付け面531と干渉しない範囲で、一対の固定フレーム61の下部から前方へ膨出している。一対の下部支持フレーム63の相互の間隔は、フロントカウル50のエーミングステー55における左右一対の垂直部552の間隔に比べて、やや狭く配置されている。
一対の下部支持フレーム63には、エーミングステー55の左右一対の長孔552aに対応する位置に、孔(図示せず)が設けられ、ナット631(図3参照)が溶接されている。
【0057】
一対の上部フレーム64は、上下方向に延びている。一対の上部フレーム64の下部は、固定フレーム61の中間部に連結されている。上部連結フレーム65は、一対の上部フレーム64の上端部において、一対の上部フレーム64同士を互いに連結する。
【0058】
一対の上部支持フレーム66は、一対の上部フレーム64の中間部に連結されている。一対の上部支持フレーム66は、一対の上部フレーム64の中間部から、フロントカウル50の一対のブラケット54に対応する位置まで延びる。
一対の上部支持フレーム66は、それぞれ、支持面661と、支持面661から上方向に延びるピン部662と、を有する。ピン部662は、フロントカウル50の一対のブラケット54の中心孔544aに対応する位置に配置される。
【0059】
上記のように構成されたフロントカウルステー60は、自動二輪車1の車体フレーム10に固定されている。詳述すると、フロントカウルステー60の下部固定ボス611は、ボトムブリッジ232のボス孔232aに収容される。フロントカウルステー60の上部固定ボス612は、トップブリッジ231のボス孔231aに収容される。これにより、フロントカウルステー60は、ボトムブリッジ232及びトップブリッジ231に固定される。フロントカウルステー60は、ボトムブリッジ232及びトップブリッジ231を介して、車体フレーム10に固定される。
【0060】
次に、本実施形態の前照灯構造部100の詳細について、図面を参照しながら説明する。図6は、図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す正面図であって、レンズの内側の部材を中心に示す図である。図7は、図6に示すA−A線断面図である。図8は、図1に示す自動二輪車のカウル構造を示す正面図であって、外観を中心に示す図である(図6対応図)。図9は、本発明の実施形態に係る前照灯構造の分解斜視図である。図10は、バルブ光が第1発光部又は第2発光部から発光される際の光路を模式的に示す斜視図である。図11は、図6に示すB−B線断面図であり、バルブ光が第1発光部から発光される際の光路を模式的に示す横断面図である。
図6〜図9に示すように、本実施形態の前照灯構造部100は、ポジションライト110と、ヘッドライト180と、を備える。
【0061】
ヘッドライト180は、光源であるヘッドライトバルブ181と、ヘッドライトバルブ181の後方に配置され、ヘッドライトバルブ181を収容するヘッドライト用ハウジング182と、ヘッドライトバルブ181の前方に配置されるヘッドライト用レンズ183と、を備える。ヘッドライト用ハウジング182におけるヘッドライトバルブ181の周囲の前方に臨む領域は、ヘッドライトバルブ181からのバルブ光を反射するヘッドライト用リフレクタ184として機能する。
【0062】
ヘッドライト用リフレクタ184は、ヘッドライトバルブ181からのバルブ光を車両前方に向けて反射させる。ヘッドライト用リフレクタ184は、車両後方に向かって窪んだ凹曲面を形成している。その凹曲面の底部(ヘッドライト用リフレクタ184の略中央部)には、ヘッドライトバルブ181を挿通して配置させるヘッドライトバルブ配置孔186が設けられる。ヘッドライトバルブ181は、その出光方向を車両前方に向けて、ヘッドライトバルブ配置孔186に取り付けられている。
【0063】
ヘッドライト用リフレクタ184には、その全体に亘って、上下方向に延びる複数本の屈曲線184aが、車幅方向に間隔をあけて設けられている。複数の屈曲線184aを設けることによって、ヘッドライト用リフレクタ184は、複数の平面の集合体として構成され、車両前方に向けて光を一層集め易くなると共に、透明なヘッドライト用レンズ183を通して視認されるヘッドライト用リフレクタ184の外観性を向上させている。
【0064】
ポジションライト110は、ヘッドライト180の上方に、ヘッドライト180と一体的に設けられる。ポジションライト110は、光源であるポジションライトバルブ111と、ポジションライトバルブ111の後方に配置され、ポジションライトバルブ111を収容するポジションライト用ハウジング112と、ポジションライトバルブ111の前方に配置されるポジションライト用レンズ113と、ポジションライト用レンズ113とポジションライトバルブ111との前後方向の間に配置される前方リフレクタ部材130と、を備える。
【0065】
ポジションライト用ハウジング112におけるポジションライトバルブ111の周囲の部分は、ポジションライト110用の後方リフレクタ部材140として機能する。後方リフレクタ部材140は、ポジションライトバルブ111の後方に配置される。また、後方リフレクタ部材140における前方に臨む面は、ポジションライトバルブ111からのバルブ光を前方に反射する後方リフレクタ141として機能する。
【0066】
後方リフレクタ141は、車両後方に向かって窪んだ凹曲面を形成している。その凹曲面の底部(後方リフレクタ141の略中央部)には、ポジションライトバルブ111を挿通して配置させるポジションライトバルブ配置孔116が設けられる。ポジションライトバルブ111は、その出光方向を車両前方に向けて、後方リフレクタ部材140のポジションライトバルブ配置孔116に取り付けられている。
【0067】
後方リフレクタ141には、その全体に亘って、上下方向に延びる複数本の屈曲線141aが、車幅方向に間隔をあけて設けられている。複数の屈曲線141aを設けることによって、後方リフレクタ141は、複数の平面の集合体として構成される。
【0068】
前方リフレクタ部材130は、ポジションライトバルブ111の前方に配置され、ポジションライト用レンズ113の前方に配置されるポジションライト用レンズ113の後側(内面側)に、ビス等の固定部材135により、取り付けられる。前方リフレクタ部材130における後方に臨む面は、ポジションライトバルブ111からのバルブ光を後方に反射する前方リフレクタ131として機能する。
【0069】
前方リフレクタ131には、その背面(後方リフレクタ141に対向する面)の全体に亘って、上下方向に延びる複数本の屈曲線131aが、車幅方向に間隔をあけて設けられている。複数の屈曲線131aを設けることによって、前方リフレクタ131は、複数の平面の集合体として構成される。
【0070】
ヘッドライト用リフレクタ184、後方リフレクタ141及び前方リフレクタ131は、いずれも、バルブ光の反射面として機能するもので、例えば、アルミ蒸着により形成される。
【0071】
ポジションライトバルブ111は、車幅方向の中央に1つ配置され、ヘッドライト180のヘッドライトバルブ181の上方に位置する。ポジションライトバルブ111は、スクリーン171及び上部カバー部51により、前方から覆われる。
【0072】
ポジションライト用レンズ113の前側の露出部は、左右一対の第1発光部121,121及び第2発光部122として機能する。
第1発光部121及び第2発光部122は、ヘッドライト180とスクリーン171及び上部カバー部51との上下方向の間に位置する。
【0073】
ポジションライト110においては、ポジションライトバルブ111からのバルブ光は、第1発光部121及び第2発光部122から発光する。ポジションライト用レンズ113の前方には、フロントカウル50の不透明な上部カバー部51が配置しているため、車両前方から、ポジションライトバルブ111を直接視認することはできない。また、ポジションライトバルブ111からのバルブ光は、上部カバー部51の前方には、直接出光しない。
【0074】
ポジションライト110とヘッドライト180との一体的構造について、更に説明する。ポジションライト用ハウジング112とヘッドライト用ハウジング182とは、一体的に構成されて、ハウジング102を形成している。ハウジング102は、正面視において、上縁部102aが上方に丸みを帯びて膨出し、下縁部102bが下方に尖り、両側縁部102c,102cが上方に向けて拡がる形状を有している。ハウジング102の外縁形状は、正面視において、前照灯構造部100の外縁形状とほぼ一致する。
【0075】
ポジションライトバルブ111の前面を覆うポジションライト用レンズ113とヘッドライトバルブ181の前面を覆うヘッドライト用レンズ183とは、一体的に構成されて、レンズ103を形成している。レンズ103は、例えば、透明な樹脂から形成される。レンズ103は、正面視において、上縁部103aが上方に丸みを帯びて膨出し、下縁部103bが下方に尖り、両側縁部103c,103cが上方に向けて拡がる形状を有している。レンズ103の外縁形状は、正面視において、前照灯構造部100(ハウジング102)の外縁形状とほぼ一致する。
レンズ103の周縁部が、ハウジング102に周縁部の設けられた嵌合凹部に挿入されて嵌合することにより、レンズ103は、ハウジング102に取り付けられる。
【0076】
ハウジング102には、仕切り部105が設けられている。仕切り部105は、正面視において、両側縁部102c,102cから左右方向中央部に向けて且つ上方に向けて延びている。仕切り部105は、側面視において、前方に向けて延びている。
ハウジング102は、仕切り部105によって区画されている。より詳細には、仕切り部105によって、ハウジング102は、下方に位置するヘッドライト用ハウジング182と、上方に位置するポジションライト用ハウジング112とに区画されている。別の見方をすると、仕切り部105によって、前照灯構造部100は、ポジションライト110とヘッドライト180とに区画されている。
【0077】
ヘッドライト用リフレクタ184の外縁部分は、仕切り部105、ハウジング102の下縁部102b、ハウジング102の両側縁部102c,102cによって形成されている。ヘッドライトバルブ181からのヘッドライト用リフレクタ184の外縁部分までの距離は、ほぼ等しくなっている。
【0078】
また、仕切り部105における車両前方の先端部は、レンズ103が取り付けられた状態で、レンズ103の内面と接触する位置又はその近傍まで延びている。
ポジションライト用ハウジング112の外縁部分は、仕切り部105、ハウジング102の上縁部102a、ハウジング102の両側縁部102c,102cによって形成されている。
【0079】
次に、第1発光部121及び第2発光部122について、図面を参照しながら更に詳細に説明する。図10は、バルブ光が第1発光部又は第2発光部から発光される際の光路を模式的に示す斜視図である。図11は、図6に示すB−B線断面図であり、バルブ光が第1発光部から発光される際の光路を模式的に示す横断面図である。
【0080】
図6〜図11に示すように、左右一対の第1発光部121は、ポジションライトバルブ111の左方及び右方それぞれに配置され、ポジションライトバルブ111からのバルブ光Lによって発光する。
第2発光部122は、左右一対の第1発光部121,121を連結するように、左右一対の第1発光部121,121の間に配置される。第2発光部122は、前方リフレクタ部材130の下方に位置して、左右一対の第1発光部121と連続して形成される。第2発光部122は、ポジションライトバルブ111からのバルブ光Lによって発光する。
なお、第2発光部122を前方リフレクタ部材130の上方に位置させた構成とすることもできる。
【0081】
第1発光部121及び第2発光部122は、ポジションライト用レンズ113のうち上部カバー部51等の不透明な部材により覆われておらず、光が透過可能な領域により形成される。
一対の第1発光部121は、それぞれ下方に尖った略三角形形状を有する。第2発光部122は、車幅方向に延びる細い帯形状を有する。1発光部121の発光面積は、第2発光部122の発光面積よりも大きい。
【0082】
第1発光部121は、主として、ポジションライトバルブ111から出光し、前方リフレクタ部材130及び後方リフレクタ部材140において順に反射した2回反射バルブ光L2(図10及び図11において破線で示す)によって発光する。「主として、2回反射バルブ光L2によって発光する。」とは、第1発光部121から発光される光の光量の50%以上が、2回反射バルブ光L2による光量であり、ポジションライトバルブ111から出光して第2発光部122に直接到達する直接バルブ光による光量が、第1発光部121から発光される光の光量の10%以下であることをいう。
【0083】
第2発光部122は、主として、ポジションライトバルブ111から出光し、後方リフレクタ部材140のみにおいて反射した1回反射バルブ光L1(図10及び図11において実線で示す)によって発光する。「主として、1回反射バルブ光L1によって発光する。」とは、第2発光部122から発光される光の光量の50%以上が、1回反射バルブ光L1による光量であり、ポジションライトバルブ111から出光し、前方リフレクタ部材130及び後方リフレクタ部材140において順に反射した2回反射バルブ光による光量が、第2発光部122から発光される光の光量の10%以下であることをいう。
【0084】
図6に示すように、ポジションライト110の車幅方向の端部110wを通る鉛直線VL1は、ヘッドライト180の車幅方向の端部180wを通る鉛直線VL2よりも、車幅方向の外側に距離D離れて位置する。
【0085】
ヘッドライトバルブ181の後側及びポジションライトバルブ111の後側には、不図示の配線が接続されている。ヘッドライトバルブ181及びポジションライトバルブ111は、この配線を介して給電を受けるようなっている。
【0086】
次に、本実施形態のポジションライト110におけるバルブ光Lの光路について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態において、バルブ光L(L1,L2)が第1発光部121から発光される際の光路について説明する。
【0087】
図10及び図11に示すように、第1発光部121は、ポジションライトバルブ111から出光し、前方リフレクタ部材130及び後方リフレクタ部材140において順に反射した2回反射バルブ光L2と、ポジションライトバルブ111から出光し、後方リフレクタ部材140のみにおいて反射した1回反射バルブ光L1と、によって発光する。これらの2回反射バルブ光L2及び1回反射バルブ光L1は、左右方向外側に向けて反射しながら進む。ポジションライトバルブ111から出光して第1発光部121に直接到達する直接バルブ光、及び3回以上反射したバルブ光は、存在しない。
【0088】
また、図11に示すように、第2発光部122は、ポジションライトバルブ111から出光し、後方リフレクタ部材140のみにおいて反射した1回反射バルブ光L1によって発光する。この1回反射バルブ光L1は、前方リフレクタ部材130の下側を通過する。ポジションライトバルブ111から出光して第1発光部121に直接到達する直接バルブ光、ポジションライトバルブ111から出光し、前方リフレクタ部材130及び後方リフレクタ部材140において順に反射した2回反射バルブ光、及び3回以上反射したバルブ光は、存在しない。
【0089】
次に、本実施形態のフロントカウル50をフロントカウルステー60に取り付ける手順及び光軸調整を行う手順について説明する。
先ず、自動二輪車1の車体フレーム10に固定されているフロントカウルステー60に対して、フロントカウル50を上方から接近させる。そして、フロントカウル50の左右の上部弾性部材544の中心孔544aが、フロントカウルステー60の左右のピン部662に対応するように位置合わせする。この位置で、フロントカウル50を降ろして左右の上部弾性部材544の中心孔544aに、フロントカウルステー60の左右のピン部662を挿入させる。
このとき、フロントカウル50のエーミングステー55の左右の垂直部552は、フロントカウルステー60の左右の下部支持フレーム63を両側から挟むようにして位置する。
【0090】
これにより、フロントカウル50は、フロントカウルステー60に対して、左右の上部弾性部材544と左右のピン部662とによって、所定の位置に位置決めされる。また、フロントカウル50は、その重量を、フロントカウルステー60の左右の支持面661によって支持される。このように、フロントカウルステー60の左右の支持面661及び左右のピン部662と、フロントカウル50の左右の上部弾性部材544とで、第1支持部を構成する。
【0091】
次に、フロントカウル50のエーミングステー55を前後方向に移動させることによって、ヘッドライト180の光軸調整を行う。エーミングステー55を前後方向に移動させようとすると、フロントカウル50がフロントカウルステー60の支持面661に支持された状態で、上部弾性部材544の中心孔544aの弾力を利用して、ピン部662に対して変形する。これにより、フロントカウル50は、支持面661と平行な軸線を回動軸50aとして前後方向に回動する。この回動によって、フロントカウル50の角度は、前後方向に調整される。すなわち、フロントカウル50に固定されたヘッドライト180の光軸が調整される。
【0092】
ヘッドライト180の光軸調整が定まったら、その位置で、ボルト553を、エーミングステー55の左右の長孔552aに外側から通して、ナット631に締結する。このように、フロントカウル50のエーミングステー55の長孔552aと、長孔552aに通されるボルト553と、ボルト553が締結されるフロントカウルステー60のナット631とで、第2支持部を構成する。
【0093】
以上説明した本実施形態のポジションライト110及びヘッドライト180(前照灯構造部100)を含むカウル構造部40によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
【0094】
本実施形態のポジションライト110によれば、第2発光部122は、主として1回反射バルブ光L1によって発光するので、単位面積あたりで、第1発光部121よりも大きい光量を得る(明るくする)ことができる。仮に、第1発光部121の左右を小さい面積にて連結する場合であっても、第1発光部121の視認性が良好となるので、一体感の有るポジションライト110の発光部を形成することができる。よって、ポジションライト110の外観性を向上させることができると共に、被視認性を高めることができる。
更に、車幅方向に延びるように第1発光部121及び第2発光部122を発光させることができるので、車体2における左右方向の中央のスペースを有効利用して、ポジションライト110の発光面積を拡大して、被視認性を更に向上させることができる。
【0095】
本実施形態のポジションライト110によれば、第1発光部121の発光面積は第2発光部122の発光面積よりも大きいため、第1発光部121は、光量が弱くても、発光面積が大きい。そのため、ポジションライト全体として一体感が出やすく、また、眩し過ぎず且つ暗過ぎないため被視認性のバランスに優れたポジションライト110を実現することができる。
【0096】
本実施形態のポジションライト110によれば、ポジションライトバルブ111は、車体2の前方に配置されるスクリーン171又は車体カバーとしての上部カバー部51により前方から覆われ、第2発光部122は、ヘッドライト180とスクリーン171又は上部カバー部51との上下方向の間に位置する。そのため、ポジションライトバルブ111の上部にスクリーン171又は上部カバー部51が配置される形態と比べて、ポジションライト110の上下方向の大きさを抑制できる。また、発光面積は狭いが単位面積あたりの光量が大きい第2発光部122を設けることで、ポジションライト110の外観性を向上させることができる。
【0097】
本実施形態のポジションライト110によれば、前方リフレクタ部材130は、ポジションライト用レンズ113に取り付けられ、ポジションライトバルブ111は、後方リフレクタ部材140に取り付けられる。そのため、ポジションライトバルブ111を後方リフレクタ部材140で支持しながら、前方リフレクタ部材130によるバルブ光Lの反射方向を任意の方向に設定しやすい。
【0098】
本実施形態の前照灯構造としての前照灯構造部100によれば、ポジションライト110とヘッドライト180とが一体的に構成される前照灯構造となるので、前照灯構造を車体2の前方にコンパクトに配置できると共に、車体2への前照灯構造部100の組み付け性及び生産性を向上できる。
また、ポジションライト110の車幅方向の端部110wを、ヘッドライト180の車幅方向の端部180wを通る鉛直線VL2よりも車幅方向の外側に位置させたため、ポジションライト110の視認性を、より一層向上させることができる。
【0099】
本実施形態のカウル構造部40によれば、フロントカウル50は、フロントカウルステー60のピン部662に位置決めされて、支持面661に支持される。そのため、フロントカウル50を取り付ける締結用のボルトが不要である。これにより、不要なボルトが外から見えないため、良好な外観が得られる。
【0100】
本実施形態のカウル構造部40によれば、フロントカウル50の組み付け作業時には、フロントカウル50をピン部662に位置決めするだけで、フロントカウル50をフロントカウルステー60に組み付けることができる。これにより、フロントカウル50の組み付けの作業性が向上する。
【0101】
本実施形態のカウル構造部40によれば、フロントカウル50は、上部弾性部材544を介して、フロントカウルステー60のピン部662に位置決めされて、支持面661に支持される。そのため、フロントカウル50の角度を前後方向に調整するときに、フロントカウル50は、上部弾性部材544の弾力を利用して回動することができる。よって、ヘッドライト180の光軸調整が容易となる。
【0102】
本実施形態のカウル構造部40によれば、ヘッドライト180の光軸調整を行うためのフロントカウル50の回動軸50aと、光軸調整を行うためのエーミングステー55とが離間している。これにより、光軸の微調整が容易である。
【0103】
本実施形態のカウル構造部40によれば、エーミングステー55がフロントカウル50の角度を前後方向に調整するときに、フロントカウル50は回動する。その回動軸50aはピン部662に位置する。これにより、ピン部662とは別に新たに回動軸を設ける必要がない。
【0104】
本実施形態のカウル構造部40によれば、ボルト553及びナット631の位置に対して、エーミングステー55を長孔552aに沿って移動することができる。これにより、ヘッドライト180の光軸調整を行うときには、ボルト553を緩めて、フロントカウル50の全体を長孔552aに沿って調整することができる。よって、光軸調整の作業が容易である。
【0105】
本実施形態のカウル構造部40によれば、エーミングステー55は、フロントカウル50の下部に支持されている。これにより、ヘッドライト180の光軸調整の作業がし易い。
エーミングステー55は、下部弾性部材554を介して支持されている。これにより、光軸調整の作業において、例えば多少の調整誤差があった場合に、その誤差を下部弾性部材554の弾力によって吸収することができる。
【0106】
本実施形態のカウル構造部40によれば、エーミングステー55は、フロントカウルステー60の下部に、フロントカウル50の下面と干渉しない範囲で前方に膨出した下部支持フレーム63に取り付けられる。そのため、フロントカウル50の下面と下部支持フレーム63とは干渉しない。これにより、ヘッドライト180を固定したフロントカウル50を、フロントカウルステー60に対して上方から組み付けることができる。よって、組み付けの作業性がさらに向上する。
【0107】
本実施形態のカウル構造部40によれば、支持面661、ピン部662及び上部弾性部材544は、フロントカウル50の上部に左右一対設けられる。これにより、ヘッドライト180の光軸調整を行うための回動軸50aが安定する。よって、光軸調整の作業がさらにし易くなる。
ナット631、長孔552a及びボルト553は、フロントカウル50の下部に左右一対設けられる。そのため、フロントカウル50は、フロントカウルステー60に対して、合計4箇所で固定される。よって、フロントカウル50の支持剛性が向上する。
【0108】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態の前照灯構造部100では、ポジションライト用レンズ113の前側の露出部(上部カバー部51に覆われていない領域)を、第1発光部121及び第2発光部122として機能させているが、これに制限されない。ポジションライト用レンズ113の前側に不透明な部材を配置せずに、ポジションライト用レンズ113の前側の全面を第1発光部121及び第2発光部122として機能させる構造を採用することができる。
【0109】
上記実施形態の前照灯構造部100では、ポジションライト用レンズ113とヘッドライト用レンズ183とが一体的に構成されているが、これに制限されない。ポジションライト用レンズ113とヘッドライト用レンズ183とは、別体で構成することもできる。
【0110】
上記実施形態のカウル構造部40では、上部弾性部材544を、ブラケット54に固定し、フロントカウル50側に設けることで、第1支持部を構成しているが、これに限らない。すなわち、上部弾性部材544を、ピン部662に固定し、フロントカウルステー60側に設けることで、第1支持部を構成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態のカウル構造部40では、上部弾性部材544を、フロントカウル50及びフロントカウルステー60から独立した部品として構成して、第1支持部を構成してもよい。その場合には、フロントカウルステー60に対するフロントカウル50の組み付け作業時に、上部弾性部材544を、ピン部662とブラケット54との間に介在させることができる。
【0112】
さらに、上記実施形態のカウル構造部40では、本発明を鞍乗型車両としての自動二輪車に適用したが、これに限らない。すなわち、本発明を三輪又は四輪の鞍乗型車両に適用してもよい。つまり、鞍乗型車両とは、車体にまたがって乗車する車両全般を含む。
【符号の説明】
【0113】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)
2…車体
10…車体フレーム
50…フロントカウル
50a…回動軸
51…上部カバー部(車体カバー)
100…前照灯構造部(前照灯構造)
102…ハウジング
103…レンズ
110…ポジションライト
110w…ポジションライトの車幅方向の端部
111…ポジションライトバルブ
112…ポジションライト用ハウジング
113…ポジションライト用レンズ
121…第1発光部
122…第2発光部
130…前方リフレクタ部材
140…後方リフレクタ部材
171…スクリーン
180…ヘッドライト
181…ヘッドライトバルブ
182…ヘッドライト用ハウジング
183…ヘッドライト用レンズ
180w…ヘッドライトの車幅方向の端部
544…上部弾性部材(第1支持部)
55…エーミングステー
552a…長孔(第2支持部)
553…ボルト(第2支持部)
554…下部弾性部材
60…フロントカウルステー
63…下部支持フレーム(膨出部)
631…ナット(第2支持部)
661…支持面(第1支持部)
662…ピン部(第1支持部)
L…バルブ光
L1…1回反射バルブ光
L2…2回反射バルブ光
VL1,VL2…鉛直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(1)の車体(2)の前方に配置される鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)であって、
光源であるポジションライトバルブ(111)と、
当該ポジションライトバルブ(111)の左方及び右方それぞれに配置され、前記ポジションライトバルブ(111)からのバルブ光(L)によって発光する左右一対の第1発光部(121)と、
前記ポジションライトバルブ(111)の前方に配置され、光を反射する前方リフレクタ部材(130)と、
前記ポジションライトバルブ(111)の後方に配置され、光を反射する後方リフレクタ部材(140)と、を備える鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)であって、
前記左右一対の第1発光部(121)を連結するように前記左右一対の第1発光部(121)の間に配置され、前記前方リフレクタ部材(130)の上方又は下方に位置して、前記左右一対の第1発光部(121)と連続して形成され、前記ポジションライトバルブ(111)からのバルブ光(L)によって発光する第2発光部(122)を更に備え、
前記第1発光部(121)は、主として、前記ポジションライトバルブ(111)から出光し、前記前方リフレクタ部材(130)及び前記後方リフレクタ部材(140)において順に反射した2回反射バルブ光(L2)によって発光し、
前記第2発光部(122)は、主として、前記ポジションライトバルブ(111)から出光し、前記後方リフレクタ部材(140)のみにおいて反射した1回反射バルブ光(L1)によって発光することを特徴とする
鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)。
【請求項2】
前記第1発光部(121)の発光面積は、前記第2発光部(122)の発光面積よりも大きいことを特徴とする
請求項1に記載の鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)。
【請求項3】
前記ポジションライトバルブ(111)は、車幅方向の中央に1つ配置され、ヘッドライト(180)の上方に位置すると共に、前記車体(2)の前方に配置されるスクリーン(171)又は車体カバー(51)により前方から覆われ、
前記第2発光部(122)は、前記ヘッドライト(180)と前記スクリーン(171)又は前記車体カバー(51)との上下方向の間に位置することを特徴とする
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)。
【請求項4】
前記ポジションライトバルブ(111)の前方に配置されるポジションライト用レンズ(113)を更に備え、
前記前方リフレクタ部材(130)は、前記ポジションライト用レンズ(113)に取り付けられ、
前記ポジションライトバルブ(111)は、前記後方リフレクタ部材(140)に取り付けられることを特徴とする
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鞍乗型車両(1)のポジションライト(110)。
【請求項5】
請求項3に記載のポジションライト(110)と、当該ポジションライト(110)と一体的に構成される前記ヘッドライト(180)と、を備える鞍乗型車両(1)の前照灯構造(100)であって、
前記ポジションライト(110)の車幅方向の端部(110w)は、前記ヘッドライト(180)の車幅方向の端部(180w)を通る鉛直線(VL2)よりも車幅方向の外側に位置することを特徴とする
鞍乗型車両(1)の前照灯構造(100)。
【請求項6】
請求項3に記載のポジションライト(110)と、
当該ポジションライト(110)と一体的に構成されるヘッドライト(180)と、
前記ポジションライト(110)及び前記ヘッドライト(180)を覆うと共に固定するフロントカウル(50)と、
前記フロントカウル(50)を支持する支持部(544、552a、553、631、661、662)を有し、車体フレーム(10)に固定されるフロントカウルステー(60)と、を備えた鞍乗型車両(1)のカウル構造(40)において、
前記支持部(544、552a、553、631、661、662)は、前記フロントカウル(50)の上側を支持する第1支持部(544、661、662)と、前記フロントカウル(50)の下側を支持する第2支持部(552a、553、631)と、を有し、
前記第1支持部(544、661、662)は、前記フロントカウルステー(60)に設けられた支持面(661)と、前記支持面(661)から上方向に延びるピン部(662)と、前記ピン部(662)に対して前記フロントカウル(50)を位置決めする上部弾性部材(544)と、を有し、
前記第2支持部(552a、553、631)は、前記フロントカウルステー(60)に対して、前記フロントカウル(50)の角度を前後方向に調整可能に支持することを特徴とする
鞍乗型車両(1)のカウル構造(40)。
【請求項7】
前記ピン部(662)は、前記第2支持部(552a、553、631)が前記フロントカウル(50)の角度を前後方向に調整するときに回動される前記フロントカウル(50)の回動軸(50a)上に位置することを特徴とする
請求項6に記載の鞍乗型車両(1)のカウル構造(40)。
【請求項8】
前記第2支持部(552a、553、631)は、
車両の前後方向に延びる長孔(552a)を有し、前記フロントカウル(50)に設けられるエーミングステー(55)と、
前記長孔(552a)を貫通して前記エーミングステー(55)を前記フロントカウルステー(60)に締結するボルト(553)とを有し、
前記ボルト(553)の位置に対して、前記フロントカウル(50)が前記エーミングステー(55)の前記長孔(552a)に沿って移動可能に構成されることを特徴とする
請求項6又は7に記載の鞍乗型車両(1)のカウル構造(40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−218468(P2012−218468A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82958(P2011−82958)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】