説明

韃靼そば茶飲料およびその製造方法

【課題】機能性物質であるルチンを高濃度に含有する韃靼そば茶飲料であって、韃靼そば特有の苦味や後口の悪さを低減し、そば茶飲料特有の香ばしい香りを向上させた、まろやかですっきりした風味の韃靼そば茶飲料を提供すること。
【解決手段】そば微粉砕焙煎穀粒の抽出物と、場合によりそば甘皮抽出物を韃靼そば茶飲料に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、韃靼そば茶飲料およびその製造方法に関し、より詳細には、香ばしい焙煎香を有し、かつ苦味やエグ味の抑制されたまろやかですっきりした風味を有する韃靼そば茶飲料およびその製造方法に関する。
【従来技術】
【0002】
近年、缶やペットボトル等の容器に充填された容器詰茶飲料が多く開発されている。なかでも、健康志向の高まりから、血管補強剤や毛細血管止血剤として知られるルチン(ビタミンP)や、皮膚細胞の色素沈着に防止効果のあるシス−ウンベル酸等、多くの機能性物質を含むそば茶飲料が注目されている。
【0003】
そば茶飲料の原料としては、普通そば(甘蕎麦ともいわれる)、韃靼そば(苦蕎麦ともいわれる)等が知られている。特に、韃靼そばは、普通そばと比べて、栄養価が高く、特にルチン(ビタミンP)やシス−ウンベル酸が豊富に含まれることから、そば茶原料として好適に用いられているが、特有の苦味や後口の悪さ(ぬめり)を有するという問題がある。
【0004】
そば茶は、通常、そば茶原料となる穀粒を焙煎することで、香ばしい焙煎香とそば由来のまろやかですっきりとした味とを実現している。韃靼そばの場合、焙煎度を高めると、韃靼そば特有の苦味や後口の悪さをマスキングすることができるが、ルチン等の機能性物質が低減してしまうことから、韃靼そばに甘蕎麦を配合し、その甘蕎麦の焙煎度を高めることで、香ばしい焙煎香を付与する手段がとられている。しかし、この場合、甘蕎麦由来の焙煎香に加えて、苦渋味や焦げ臭といった雑味も生じてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、韃靼そばの風味を改善する方法が報告されている。例えば、韃靼そばの実および/またはそば粉に、香ばしくなるまで焙煎した微粉末状または微細粒状の大豆および黒ゴマを混入することにより得られる、風味良好なそば茶(特許文献1)や、苦そば(韃靼そば)に茶葉を混合することにより、苦そばのえぐみを低減してまろやかですっきりした味のお茶(特許文献2)や、そば殻(外皮)を除去することなくそば種子を焙煎し、その後、焙煎した前記そば種子をそば殻と共に粉砕することで、すっきり感を向上させたそば茶飲料(特許文献3)や、韃靼そば茶原料を、脱塩水又は蒸留水と還元性物質とからなる、80〜100℃の温水により10〜30分かけて抽出する工程を含む製造方法により得られる、焦げ臭や雑味のない韃靼そば茶飲料(特許文献4)が挙げられる。また、脱穀したそば種子に適量のアミノ酸およびアミノ酸天然調味料を浸透添加し、アルファ化、乾燥したものを焙煎して、焙煎後の香ばしさを増強したそば茶飲料の製造方法(特許文献5)も提案されている。
【0006】
そば茶は、通常、原料となるそばの穀粒を粉砕し、これに水性溶媒を接触させて抽出処理を行うことによって製造されている。そばの穀粒の粉砕については、特許文献6に10〜40メッシュの粒に粉砕すること、特許文献7にそばの実を10〜60メッシュに粉砕して焙煎すること、上記特許文献1の実施例でそばの実を約3mmの粒径に粉砕したことが記載されているが、香味との関連については開示も示唆もなく、粉砕した穀粒の粒度と香味との関連については、上記特許文献3に14〜23メッシュの粒度に属する粉砕物の比率が最も多くなるように焙煎したそば種子を粉砕することによって、過粉砕に起因するそば茶のエグ味等を防止することができることが記載されているのみである。
【特許文献1】特許第2972174号
【特許文献2】特開平11−137221号公報
【特許文献3】特開平10−313836号公報
【特許文献4】特許第3796362号
【特許文献5】特開2005−6569号公報
【特許文献6】特開2004−305202号公報
【特許文献7】特開昭62−278969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機能性物質であるルチンを高濃度に含有する韃靼そば茶飲料であって、韃靼そば特有の苦味や後口の悪さを低減し、そば茶飲料特有の香ばしい香りを向上させた、まろやかですっきりした風味の韃靼そば茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、そばの穀粒は過粉砕をするとエグ味を生じるといわれていたが、驚くべきことに、平均粒径が190〜380μmとなるように微粉砕されたそば微粉砕焙煎穀粒の抽出物、特にそばの外皮を除去して平均粒径が1〜3mmとなるように予備粉砕した粉砕穀粒を焙煎して得られた粉砕焙煎穀粒を、さらに平均粒径が190〜380μmとなるまで微粉砕して得られる微粉砕焙煎穀粒の抽出物を韃靼そば茶飲料に配合することにより、韃靼そば茶飲料における特有の苦味や後口の悪さを低減でき、さらには香ばしい焙煎香を向上させることができ、かつ、まろやかなコクを付与することが出来ることを見出した。そして、さらに検討を重ねた結果、前記の微粉砕焙煎穀粒の抽出物に加えて、そば甘皮粉砕物の抽出物を特定量韃靼そば茶飲料に配合することにより、香ばしい香りを増強させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下のものに関する。
1.平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒の抽出物を含むそば茶飲料。
2.そば茶飲料が、原料に韃靼そばを用いた韃靼そば茶飲料である、上記1に記載のそば茶飲料。
3.微粉砕焙煎穀粒が、そばの穀粒の外皮を除去して平均粒径が1.0〜3.0mmとなるように予備粉砕した粉砕穀粒を焙煎して得られた粉砕焙煎穀粒を、さらに粉砕して得られたものである、上記1、又は2に記載のそば茶飲料。
4.さらに、そばの甘皮抽出物を含む、上記1〜3のいずれかに記載のそば茶飲料。
5.容器詰飲料である、上記1〜4のいずれかに記載のそば茶飲料。
6.常温以下の温度で飲用するための飲料である、上記5に記載のそば茶飲料。
7.以下の工程:
1)平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒をそばの原料穀粒全体に対して0.25〜10重量%の割合で配合する工程、
2)上記原料穀粒を含む原料を水性溶媒にて抽出し、抽出物を得る工程、
を含む、そば茶飲料の製造方法。
8.そばの原料穀粒として、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒とを用い、その総量がそばの原料穀粒中85重量%以上であり、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒の配合割合が重量比で2:8〜8:2である、上記7に記載のそば茶飲料の製造方法。
9.水性溶媒による抽出が、30〜100℃の水での1〜60分かけての抽出である、上記7又は8に記載のそば茶飲料の製造方法。
10.上記工程1)において、そばの原料穀粒中に、さらにそば甘皮粉砕物を0.25〜5.0重量%の割合で配合する、上記7〜9のいずれかに記載のそば茶飲料の製造方法。
11.平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒の抽出物を有効成分として含有する、韃靼そば茶飲料の香味改善剤。
12.さらに、そばの甘皮抽出物を有効成分として含有する、上記11に記載の香味改善剤。
13.そばの微粉砕焙煎穀粒、および場合によりそば甘皮粉砕物を含む、そば茶抽出原料。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、香ばしい焙煎香を有し、かつ苦味やエグ味の抑制されたまろやかですっきりした風味を有する韃靼そば茶飲料を得ることができる。
本発明の韃靼そば茶飲料は、嗜好性に優れるだけでなく、機能性物質であるルチンを高濃度に含有することから、容器詰飲料の形態にして、日常的に摂取することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【0011】
(そばの微粉砕焙煎穀粒の抽出物)
本発明の韃靼そば茶飲料は、そばの微粉砕焙煎穀粒の抽出液を含有させることにより、韃靼そば茶飲料における特有の苦味や後口の悪さを低減し、香ばしい焙煎香を向上させ、かつ、まろやかなコクを付与することができることを特徴とする。本明細書における「(そばの)微粉砕焙煎穀粒」とは、平均粒径が190〜380μmとなるように粉砕、または300μm以下に粉砕された穀粒が30重量%以上含有するように粉砕されたそばの焙煎穀粒をいう。
【0012】
ここで、微粉砕焙煎穀粒の原料となる穀粒(そばの実、玄そばともいう)は、タデ科(Polygonaceae)のソバ属(Fagopyrun)の穀粒であれば、その種類・産地等、何ら制限なく用いることができ、普通そば(Fagopyrum sagittatum、日本そば(Fagopyrum esculentem))、韃靼そば(Fagopyrum tataricume)の他、Kunawur 地方のそば(Fagopyrum rotundatum)、東ヒマラヤ、中国西北部のそば(Fagopyrum emarginatum)、温帯ヒマラヤ地方のそば(Fagopyrum eymosum)、中国自生のそば(Fagopyrum triangulare)等を例示できる。なかでも、香味的観点および入手の容易さから、普通そば(日本そばを含む)、韃靼そばを用いることが好ましく、特に香味的観点から普通そばを用いるのが好ましい。
【0013】
本発明の微粉砕焙煎穀粒は、前記の原料となる穀粒を焙煎して微粉砕することにより得られる。焙煎方法は、特に限定されるものではなく、熱風炉や砂浴式等、通常の穀類茶の焙煎方法により実施すればよい。これにより、香ばしさの増強された芳醇な風味のそば茶穀粒を得ることができる。焙煎は、そばの穀粒をそのまま焙煎してもよいが、穀類の中心部まで均一な焙煎を行うことが好ましいことから、そばの穀粒(そばの実、玄そば)の外皮を除去した後、平均粒径が1.0〜3.0mm程度になるように予備粉砕、または1.4mm〜2.0mmに粉砕された穀粒が60重量%以上含有するように粉砕して、焙煎するのが好ましい(本明細書中、この粉砕して焙煎したものを「粉砕焙煎穀粒」と表記する)。この焙煎により得られた穀粒(粉砕焙煎穀粒を含む)を、平均粒径が190〜380μmとなるまで粉砕、または300μm以下に粉砕された穀粒が30重量%以上含有するように微粉砕して、本発明の微粉砕焙煎穀粒を得ることができる。なお、平均粒径が190〜380μmに微粉砕または300μm以下に微粉砕された焙煎穀粒を30重量%以上含有するように粉砕してから焙煎を行ってもよいが、この場合、過度の焙煎により苦味や焦げ臭等の雑味が発生することがあり、焙煎の制御が困難であることから、上記したとおり、平均粒径が1.0〜3.0mm程度に予備粉砕した粉砕穀粒を焙煎して得られる粉砕焙煎穀粒を、さらに平均粒径が190〜380μmになるまで微粉砕して製造することが好ましい。尚、予備粉砕及び微粉砕の方法は、ボールミル、ハンマーミルのような公知のいずれかの方法を用いればよく、また、粒子径の測定方法も公知のものを用いればよい。
【0014】
このような微粉砕焙煎穀粒は、従来のそば茶と同様に、急須等に適当量入れ、お湯を注ぐだけで簡便に抽出することができる。工業的に微粉砕焙煎穀粒の抽出液を得る場合には、所望する品質・香味等に応じて適宜設定すればよいが、通常、浸漬抽出あるいはドリップ式等の製造設備にて、30〜100℃、好ましくは50〜98℃、より好ましくは70〜98℃の水などの抽出溶媒(水性溶媒)で、1〜60分、好ましくは5〜40分、より好ましくは10〜30分かけて抽出を行う。抽出溶媒に対する原料の割合は、通常、2〜20質量%、より特定すれば3〜10質量%である。なお、本発明の微粉砕焙煎穀粒の抽出物は、抽出液のまま用いてもよいし、濃縮や乾燥を行って、濃縮エキス、乾燥粉末の形態で使用することもできる。
【0015】
(そばの甘皮抽出物)
そばの穀粒は、外側から、外皮(ソバガラ)、種皮(甘皮)、胚乳、胚芽、の順で構成されている。本発明の韃靼そば茶飲料は、上記の微粉砕焙煎穀粒の抽出物の他、甘皮の抽出物を含有させることにより、さらにその香味を向上させることができる。そばの甘皮は、繊維質を高濃度に含有し、そばの風味、甘味、粘りを出すことが知られているが、灰汁を多く含有することから、甘皮を利用した飲料は知られていない。そばの甘皮は、胚乳から剥がれ易く、また繊維質で挽きにくいため、そば茶原料を製造する際に用いる篩で除去されることが多く、通常のそば茶原料には含まれていないか、含まれていたとしてもごく少量である。本発明は、通常は配合されていないそばの甘皮部分を韃靼そば茶飲料に利用することも特徴である。
【0016】
本明細書における「そばの甘皮抽出物」とは、そばの甘皮、特にそばの甘皮の粉砕物に水性溶媒を接触させて抽出したものをいう。甘皮の原料となるそば穀粒(そばの実、玄そば)は、上記同様に何ら制限されないが、普通そば(日本そばを含む)、韃靼そばを用いることが好ましく、特に香味的観点から普通そばを用いるのが好ましい。
【0017】
甘皮の粉砕物の製造方法は特に限定されないが、例えば次のような方法により甘皮部分を多量に含む組成物として製造することができる。まず、そばの穀粒(そばの実、玄そば)の外皮を除去した後、平均粒径が1.0〜3.0mm程度に粉砕(特に1.4mm〜2.0mmに粉砕された穀粒が60重量%以上含有するように粉砕)する。これを焙煎した後、篩等により選別して甘皮部分を多量に含む組成物を得る。ここで篩別されるのは、20メッシュよりも小さいものであり、平均粒径が450〜850μm程度の細粒状で存在している。この篩別された甘皮部分を多量に含む組成物(焙煎穀粒)は、350〜850μmのサイズの穀粒を60重量%以上含有し、特に350μm以下に微粉砕された穀粒が10重量%未満及び/または1000μm以上の穀粒が5重量%以下の組成物である。また、焙煎された甘皮の粉砕物は、特公平6−71418号公報に記載の方法(そばの実の外層部分に相当する20メッシュよりも小さな細粒状部の製造方法)と同様にして得ることができる。
【0018】
このようにして得られた甘皮の粉砕物は、従来のそば茶と同様に、急須等に適当量入れ、お湯を注ぐだけで簡便に抽出することができる(甘皮抽出物)。工業的に甘皮抽出物を得る場合には、所望する品質・香味等に応じて適宜設定すればよいが、通常、浸漬抽出あるいはドリップ式等の製造設備にて、30〜100℃、好ましくは50〜98℃、より好ましくは70〜98℃の水などの抽出溶媒(水性溶媒)で、1〜60分、好ましくは5〜40分、より好ましくは10〜30分かけて抽出を行う。抽出溶媒に対する原料の割合は、通常、2〜20質量%、より特定すれば3〜10質量%である。なお、本発明の甘皮抽出物は、抽出液のまま用いてもよいし、濃縮や乾燥を行って、濃縮エキス、乾燥粉末の形態で使用することもできる。
【0019】
(そば茶飲料)
本発明の韃靼そば茶飲料は、上記の微粉砕焙煎穀粒の抽出物と、必要により上記の甘皮抽出物とを含有する。微粉砕焙煎穀粒の抽出物が高濃度になると雑味を呈するようになり、また甘皮抽出物が高濃度になると苦味を呈するようになるため、本発明の茶飲料では、微粉砕焙煎穀粒の抽出物単独または微粉砕焙煎穀粒の抽出物と甘皮抽出物とを主な成分とする茶飲料とはせず、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒の抽出液に混合して用いることが好ましい。すなわち、本発明の微粉砕焙煎穀粒の抽出液や甘皮抽出物は、韃靼そば茶飲料の香味改善剤として用いることができるものである。
【0020】
そば茶原料として、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒を用いる場合、前記したとおりルチン等の機能性物質の減少を抑制するため焙煎の程度は軽めに行い、普通そばの粉砕焙煎穀粒を併用して焙煎香を付与している。本発明の茶飲料においても、原料として、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒とを併用して用いることが好ましい。
【0021】
本発明のそば茶飲料は、微粉砕焙煎穀粒の抽出液と必要により甘皮抽出物とを含有することで、普通そばの焙煎を過度に行わなくても焙煎香を増強することができ、過度の焙煎に伴う苦味や焦げ臭といった雑味を抑制することができる。また、その芳醇な焙煎香とコク味から、そば茶原料として用いる普通そばの粉砕焙煎穀粒の配合割合を低減することができる。尚、ルチンの濃度は、公知のいずれかの方法により測定することができる。本明細書の実施例においては、ルチンは高速液体クロマトグラフ法により測定した。
【0022】
また、上記のとおり、本発明のそば茶飲料では、普通そばの焙煎を過度に行う必要がなく、また普通そばの配合量を低くすることもできることから、従来のそば茶飲料と比較して色味の淡い茶飲料となる。通常、濃い褐色の茶飲料は強い焙煎香や苦味を連想させるが、本発明の茶飲料は淡い黄色味であることから見た目にも苦味感がないものであり、見た目にも飲用しても苦味が低減され香ばしい焙煎香とそば特有のコク味を有するそば茶飲料として楽しむことができる。
【0023】
一つの態様において、本発明のそば茶飲料は、主成分としての韃靼そばの粉砕焙煎穀粒の抽出物(液)及び普通そばの粉砕焙煎穀粒抽出物(液)に加えて、本発明の特徴である微粉砕焙煎穀粒の抽出物(液)および必要により甘皮抽出物(液)が含まれればよく、それぞれの抽出液(または抽出物)を得てこれを適宜混合して本発明の茶飲料としてもよいし、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒と微粉砕焙煎穀粒と必要により甘皮の粉砕物とを混合してそば茶の原料穀粒(本願明細書においては、このようなそば茶の抽出に供される穀粒を「原料穀粒」と表記し、特にそばに由来する原料穀粒を「そばの原料穀粒」と表記する)とし、この混合そば茶原料穀粒を含む原料を水等の水性溶媒で抽出して茶飲料とすることもできる。後者の方法で茶飲料を製造した場合、特に甘皮の粉砕物をそば茶原料として混合した場合、それぞれの抽出液を混合して得られる前者の製造方法による茶飲料と比較して、より雑味が少なくなることがある。また、生産効率の観点からも、後者の方法が好ましい。すなわち、本発明の茶飲料を得るには、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒と微粉砕焙煎穀粒と甘皮の粉砕物とを混合してそば茶原料穀粒とし、これを含む原料を抽出して製造するのが好ましい(この製造方法についての詳細は、後述する)。
【0024】
本発明のそば茶飲料には、上記の韃靼そばおよび/または普通そばの粉砕焙煎穀粒の抽出物、微粉砕焙煎穀粒の抽出物、および必要により甘皮抽出物の他、茶飲料で用いることができる任意の成分、例えば、アスコルビン酸等の酸化防止剤や重曹等のpH調整剤などの添加物を配合してもよい。また、原料穀粒は、そばの穀粒100%のものに限定されるものではなく、そばの穀粒を原料の一部に用いる茶飲料であれば本発明を利用することができ、例えば、そば以外の穀類を原料穀粒中に含んでもよい。原料穀粒は、茶葉、通常飲料で配合される素材と混合して抽出原料として用いてもよい。
【0025】
また、本発明の茶飲料は、機能性物質であるルチンを高濃度、具体的には5mg/100mL以上、好ましくは8mg/100mL以上、より好ましくは10mg/100mL以上の濃度で含有し、苦味やエグ味が低減されたすっきりとした香味を有する茶飲料であるから、容器詰飲料の形態とすることにより、嗜好性に優れた機能性飲料として日常的に継続的に摂取することができる。容器詰茶飲料の容器は特に限定されるものではなく、紙パック、瓶、缶、ペットボトル等が例示される。上記したとおり、本発明の茶飲料は、従来のそば茶飲料と比較して淡い色味を有するという特徴があるから、特に透明容器(瓶、ペットボトル等)に充填された容器詰飲料とすると、その特徴を十分に楽しむことができる。
【0026】
このような容器詰飲料は、常温以下で飲用することも可能である。通常、コールドで販売される茶飲料、すなわち常温以下(例えば0〜30℃、好ましくは0〜20℃、より好ましくは3℃〜15℃)に冷却された茶飲料は、より苦味を感じやすいという性質を有するが、本発明のそば茶飲料は、常温以下に冷却しても、苦味が感じられないという特徴も有する。
【0027】
また、本発明は、そばの微粉砕焙煎穀粒を含むそば茶抽出原料として、固体の形態で(粉末やティーバッグの形態も含む)提供することも好適である。通常、そば茶抽出原料は、単にそば茶とも呼ばれるものである。この抽出原料には、必要により上記の甘皮抽出物を含有させてもよい。好ましい態様においては、当該抽出原料には、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒も含まれる。そば抽出原料に含まれ得る他の成分は、そば茶飲料に関して上記したとおりである。
【0028】
(茶飲料の製造方法)
本発明の茶飲料は、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒と微粉砕焙煎穀粒と甘皮の粉砕物とを混合してそば茶原料穀粒とし、これを含む原料を抽出して製造するのがよい。そば茶原料中における韃靼そばの粉砕焙煎穀粒および普通そばの粉砕焙煎穀粒の割合は、得られる抽出物(茶飲料)に所望するルチン量や香味等により適宜設定すればよいが、本発明の茶飲料は、普通そばの配合量を少なくしても香ばしい焙煎香を付与することができ、かつ韃靼そば特有の苦味や後口の悪さを低減できるという特徴を有することから、韃靼そばの配合割合を高くしても良好な風味の茶飲料を製造することができる。そば茶原料中、通常、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒の配合割合は、重量で韃靼そば:普通そば=2:8〜8:2、好ましくは3:7〜7:3、さらに好ましくは4:6〜6:4程度、または韃靼そばの配合割合は50%を超えることが好ましく、より好ましくは60重量%以上である。また、そばの原料穀粒中の韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒との総量は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは、90重量%以上である。
【0029】
本発明では、この韃靼そばと普通そばの混合原料に、微粉砕焙煎穀粒を、そばの原料穀粒全体に対し好ましくは0.25〜10重量%、より好ましくは0.5〜5.0重量%、さらに好ましくは1.0〜3.0重量%の割合で配合する。微粉砕焙煎穀粒の配合割合が10重量%を超えると、得られる抽出液(茶飲料)が雑味を呈することになり、0.25重量%未満の配合では、微粉砕焙煎穀粒を配合する効果(香ばしい香味、苦味の低減、コク味の付与等)が十分に発揮されない場合がある。
【0030】
また、そば甘皮の粉砕物を配合する場合には、甘皮粉砕物は、そばの原料穀粒全体に対し好ましくは0.25〜5.0重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%の割合で配合する。甘皮の粉砕物の配合割合が5重量%を超えると、得られる抽出液(茶飲料)が苦味を呈することになり、0.25重量%未満では甘皮の粉砕物を配合する効果(焙煎香の増強)が発揮されない場合がある。
【0031】
本発明のそば茶飲料は、上記そば茶原料を水性溶媒にて抽出して抽出物又は液を得、必要により殺菌、容器に充填することで得ることができる。
ここで、抽出溶媒となる水性溶媒としては、水、エタノール、エタノール水溶液等を挙げることができるが、中でも水が好ましい。抽出条件は、用いる原料の種類、量等により適宜設定すればよいが、通常、水性溶媒として水を用いる場合、30〜100℃、好ましくは50〜98℃、より好ましくは70〜98℃で、1〜60分、好ましくは5〜40分、より好ましくは10〜30分かけて抽出する。抽出溶媒に対する原料の割合は、通常、2〜20質量%、より特定すれば3〜10質量%である。殺菌条件も適宜設定すればよいが、例えば、140℃、15秒の殺菌が例示できる。
【実施例】
【0032】
以下実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
原料として、以下のものを用いた。
【0033】
尚、各サンプルの粒度は、電動篩により篩分けを行い、分布幅の平均値にその分布に構成される粒度の割合(%)を乗じた総和により算出した(例:韃靼そば粉砕焙煎穀粒の場合:(平均粒径)=(2.0×0.07)+[(2.0+1.4)/2×0.642]+[(1.4+1.0)/2×0.234]+[(1.0+0.85)/2×0.03]+(0.85×0.02)≒1.6)。ただし、そば粉は粒度分布計により測定した。
1)韃靼そば粉砕焙煎穀粒(以下、韃靼そば):
(粒度分布)2.0mm以上:7.0%、2.0〜1.4mm:64.2%、1.4〜1.0mm:23.4%、1.0〜0.85mm:3.0%、0.85mm以下:2.0%
(平均粒径)1.6mm
2)普通そば粉砕焙煎穀粒(以下、普通そば):
(粒度分布)2.0mm以上:10.7%、2.0〜1.4mm:68.6%、1.4〜1.0mm:18.2%、1.0〜0.85mm:1.7%、0.85mm以下:0.7%
(平均粒径)1.4mm
3)普通そば微粉砕焙煎穀粒(以下、微粉砕焙煎物)
2)の普通そば粉砕焙煎穀粒をさらに機械的に微粉砕したもの
(粒度分布)380μm以上:22%、190〜380μm:55%、190μm以下:23%
(平均粒径)約300μm
4)普通そばの甘皮粉砕物(以下、甘皮粉砕物)
2)の普通そば粉砕焙煎穀粒を20メッシュを用いて篩別して小さいサイズのものを回収したもの。
【0034】
(粒度分布)850μm以上:28.2%、850〜630μm:37.9%、630〜450μm:19.7%、450〜355μm:5.0%、355μm以下:9.2%
(平均粒径)0.7mm
5)普通そばのそば粉(以下、そば粉):日穀製粉(株)社製、清露(月)
(粒度分布)272〜8.5μm、平均粒径:95μm、未焙煎品
6)普通そばの外皮焙煎品(以下、外皮焙煎物):
外皮(ソバガラ)を粉砕して焙煎したもの。
【0035】
上記原料を用いて表1に示す配合で混合し、混合原料を得た。これに、25倍量の水(温度:91℃)でドリップ式抽出を行った。得られた抽出液に0.3重量%のL−アスコルビン酸および0.3重量%の炭酸水素ナトリウムを添加して、殺菌(140℃、15秒)し、500mLペットボトルに充填して容器詰飲料を得た。この各種容器詰されたそば茶飲料(12℃)について、専門パネラーで官能評価した。評価は次のように6段階評価にて行った。
【0036】
1)香ばしさ:5点(非常に強く感じる)、4点(強く感じる)、3点(感じる)、2点(やや感じる)、1点(ほとんど感じない)、0点(感じない)
2)甘味・コク味:5点(非常に強く感じる)、4点(強く感じる)、3点(感じる)、2点(やや感じる)、1点(ほとんど感じない)、0点(感じない)
3)苦味:5点(非常に強く感じる)、4点(強く感じる)、3点(感じる)、2点(やや感じる)、1点(ほとんど感じない)、0点(感じない)
4)後味のすっきり感:5点(非常に強く感じる)、4点(強く感じる)、3点(感じる)、2点(やや感じる)、1点(ほとんど感じない)、0点(感じない)
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表2に、官能評価結果を示す。比較例1に各種原料を配合して調製したそば茶飲料(比較例2〜5及び本発明1及び2)について評価を行った。表より明らかなとおり、そば粉を配合した場合には、甘味・コク味が付与されたが、後味のすっきり感が損なわれた(比較例2)。外皮焙煎物を配合した場合には、香ばしい香味が増強され、甘味・コク味が付与されたが、苦味も増え、後味のすっきり感が低減した(比較例3)。甘皮粉砕物のみを配合した場合には、香ばしい香りが増強され、甘味・コク味も付与され、苦味が若干低減したが、若干後味のすっきり感を損なうこととなった(比較例4,5)。一方、微粉砕焙煎物を配合した場合には、香ばしい香りが増強され、甘味・コク味も付与され、苦味が若干低減し、嗜好性に優れた茶飲料となった(本発明1)。特に、微粉砕焙煎物と甘皮抽出物とを配合した場合には、香ばしい香味がさらに増強され、より嗜好性に優れた茶飲料となった(本発明2)。
【0040】
実施例2
実施例1と同様の原料を用い、表3の配合にて混合し、混合原料を得た。これに実施例1と同様の操作を行い、容器詰そば茶飲料を得た。この茶飲料(12℃)について実施例1と同様に官能評価を行った。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
表4に、官能評価結果を示す。表2の比較例1と表4の比較例6とを比べると、普通そばの配合量が多い比較例6は香ばしい香りがあるが、苦味も有していることがわかる。
表4より明らかなとおり、微粉砕焙煎物の配合量の増加に伴い、香ばしい香りが増強した。また、甘皮粉砕物の配合により、香ばしい香りが増強された。しかしながら、この甘皮粉砕物の香ばしい香りの増強作用は、配合量に依存していなかった。甘味・コク味は、微粉砕焙煎物の配合量の増加に伴い増強された。また、甘皮粉砕物を配合することで、さらに甘味・コク味が増強されたが、甘皮粉砕物の配合割合が5.0重量%以上となると減少する傾向がみられた。苦味は、微粉砕焙煎物を0.25重量%以上配合することで低減されたが、甘皮抽出物を10重量%配合すると増加した。後味のすっきり感は、微粉砕焙煎物を5重量%以上配合すると、配合量に応じて低下した。また、甘皮抽出物を配合すると、配合量に応じて後味のすっきり感は低下した。雑味は、微粉砕焙煎物を1重量%以上あるいは甘皮抽出物を配合すると配合量に応じて強く感じるようになり、微粉砕焙煎物を20重量%以上あるいは甘皮抽出物を10%以上配合すると顕著であった。
【0044】
以上より、次のことが考察される。
・韃靼そばを多く配合すると機能性物質であるルチンが増加する一方で苦味および後口の悪さも呈する。韃靼そばの配合が多い、具体的には、原料全体に対し50重量%を超える濃度の場合には、微粉砕焙煎物を配合することで、苦味や後口の悪さを低減することができ、かつ香ばしい香りとそば茶特有の甘味・コク味を付与することができる。
・そば粉や外皮焙煎物を配合した場合、香ばしい香りや甘味・コク味が増強される傾向にあるが、苦味が増加したり後味のすっきり感が低下する。一方、微粉砕焙煎物を配合した場合には、香ばしさ、甘味・コク味・苦味・後味のすっきり感のいずれの項目においても配合しない場合と比べて、同等以上の優れた香味に向上する。
・微粉砕焙煎物は、配合量が多すぎると後味のすっきり感を損なうことがあることから、その配合割合は、そばの原料穀粒全体に対し、好ましくは10重量%以下、より好ましくは0.25〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5.0重量%、特に好ましくは1.0〜3.0重量%である。
・甘皮粉砕物を配合すると、香ばしい香りが増強され、甘味・コク味も付与される傾向にあるが、配合量が多すぎると苦味を呈し後味のすっきり感を損なうことから、甘皮抽出物の配合割合は、そばの原料穀粒全体に対し、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.25〜5.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.5重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒の抽出物を含むそば茶飲料。
【請求項2】
そば茶飲料が、原料に韃靼そばを用いた韃靼そば茶飲料である、請求項1に記載のそば茶飲料。
【請求項3】
微粉砕焙煎穀粒が、そばの穀粒の外皮を除去して平均粒径が1.0〜3.0mmとなるまで予備粉砕した粉砕穀粒を焙煎して得られた粉砕焙煎穀粒を、さらに粉砕して得られたものである、請求項1又は2に記載のそば茶飲料。
【請求項4】
さらに、そばの甘皮抽出物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のそば茶飲料。
【請求項5】
容器詰飲料である、請求項1〜4のいずれかに記載のそば茶飲料。
【請求項6】
常温以下の温度で飲用するための飲料である、請求項5に記載のそば茶飲料。
【請求項7】
以下の工程:
1)平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒をそばの原料穀粒全体に対して0.25〜10重量%の割合で配合する工程、
2)上記原料穀粒を含む原料を水性溶媒にて抽出し、抽出物を得る工程、
を含む、そば茶飲料の製造方法。
【請求項8】
そばの原料穀粒として、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒とを用い、その総量がそばの原料穀粒中85重量%以上であり、韃靼そばの粉砕焙煎穀粒と普通そばの粉砕焙煎穀粒の配合割合が重量比で2:8〜8:2である、請求項7に記載のそば茶飲料の製造方法。
【請求項9】
水性溶媒による抽出が、30〜100℃の水での1〜60分かけての抽出である、請求項7又は8に記載のそば茶飲料の製造方法。
【請求項10】
上記工程1)において、そばの原料穀粒中に、さらにそば甘皮粉砕物を0.25〜5.0重量%の割合で配合する、請求項7〜9のいずれかに記載のそば茶飲料の製造方法。
【請求項11】
平均粒径が190〜380μmであるそばの微粉砕焙煎穀粒の抽出物を有効成分として含有する、韃靼そば茶飲料の香味改善剤。
【請求項12】
さらに、そばの甘皮抽出物を有効成分として含有する、請求項11に記載の香味改善剤。