説明

音像制御装置及び音像制御方法

【課題】伝達特性フィルタの間隔を一定としたまま、伝達特性フィルタを増やすことなく、特に距離方向の精度を高めることができる音像制御装置及び音像制御方法を提供すること。
【解決手段】音像制御装置100は、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130の入力の前段に、頭部から音像までの距離方向に対して、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御部101を設け、ヘッドホン試聴時に音像を頭外定位に制御するための仮想反射音発生部150の入力の前段に、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御部102を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝達特性をデジタルフィルタで再現し、これをもとの原音(以下、ソース音という)に畳み込むことによって、音像の定位を制御する音像制御装置及び音像制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人が音を聞き取るときに、音源位置の方向により頭部形状や耳介の影響を受けて伝達特性が変化することを利用し、その伝達特性をデジタルフィルタにて再現し、これを元の音に畳み込むことによって音像の定位を制御する音像制御装置がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、受聴者の頭部周りの各方向から到来する音の音波伝達特性を再現する伝達フィルタを人間の音の弁別限に対応した間隔で保持する立体音響受聴装置が開示されている。
【0004】
図8は、従来の音像制御装置の構成を示すブロック図である。
【0005】
図8において、音像制御装置10は、音像制御部11、仮想音場1用音像定位部12、仮想音場2用音像定位部13、パニングゲイン(Panning Gain)制御部14、仮想反射音発生部15、及び定位音・仮想反射音加算部16を備えて構成される。
【0006】
パニングゲイン制御部14は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部21、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部22、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部23及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部24から構成され、定位音・仮想反射音加算部16は、Rch定位音・仮想反射音加算器25及びLch定位音、仮想反射音加算器26から構成される。
【0007】
仮想音場1用音像定位部12及び仮想音場2用音像定位部13は、主に伝達特性フィルタ(データ)によって任意の位置に定位制御する。
【0008】
パニングゲイン制御部14は、仮想音場1用音像定位部12及び仮想音場2用音像定位部13から出力されるオーディオ信号のクロスフェード処理を行う。
【0009】
音像制御装置10には、モノラル入力オーディオ信号30が入力され、Rch出力オーディオ信号31とLch出力オーディオ信号32を出力する。また、41は仮想音場1用音像定位部12への伝達特性フィルタ転送系統、42は仮想音場2用音像定位部13への伝達特性フィルタ転送系統である。
【0010】
音像制御部11は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部21及び仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部22に、仮想音場1用パニングゲイン制御部コントロール信号43を出力し、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部23及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部24に仮想音場2用パニングゲイン制御部コントロール信号44を出力する。
【0011】
仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部21、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部22、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部23及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部24は、仮想音場1用パニングゲイン制御部コントロール信号43及び仮想音場2用パニングゲイン制御部コントロール信号44によりゲインコントロールされ、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号45、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号46、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号47及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号48を、それぞれRch定位音・仮想反射音加算器25及びLch定位音・仮想反射音加算器26に出力する。
【0012】
また、仮想反射音発生部15は、仮想反射音発生部Rch出力オーディオ信号49及び仮想反射音発生部Lch出力オーディオ出力信号50を、Rch定位音・仮想反射音加算器25及びLch定位音・仮想反射音加算器26に出力する。
【0013】
Rch定位音・仮想反射音加算器25は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号45と仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号47と想反射音発生部Rch出力オーディオ信号49を加算してRch出力オーディオ信号31として出力する。
【0014】
Lch定位音・仮想反射音加算器26は、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号46と仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号48と仮想反射音発生部Lch出力オーディオ出力信号50を加算してLch出力オーディオ信号32として出力する。
【0015】
以上の構成によれば、伝達特性フィルタを一定間隔毎に保持する必要があり、より精度の高い音像の定位を得るためには、より多くの方向の伝達特性フィルタが必要となるため、多数の伝達特性フィルタを記憶するための大量の記憶領域を必要とする。特許文献1の装置は、用意する伝達特性フィルタを人の音の弁別限に対応した間隔のみにすることで、データ量をあまり増やさずにより精度の高い音像の定位を実現しようとする。
【特許文献1】特開平7−298399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このような従来の音像制御装置にあっては、データ量の削減はある程度見込まれるものの、用意する伝達特性フィルタの間隔が一定ではなくなるため、音像制御するための移動指示から計算された移動先の座標点の近傍の伝達特性フィルタを選択する時などの制御方法が複雑になり、音像制御のための音像制御部の回路規模が増大したり、演算量が増加するという問題がある。
【0017】
また、距離方向についても、距離毎に全方位の伝達特性フィルタを用意する必要があるため、距離方向の精度をより高くしようとすると、1つの距離に対して全方位分の伝達特性フィルタが必要になり、膨大な量の伝達特性フィルタが必要になるといった問題がある。
【0018】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、伝達特性フィルタの間隔を一定としたまま、伝達特性フィルタを増やすことなく、距離方向の音像の定位の精度を高めることができる音像制御装置及び音像制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の音像制御装置は、頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御手段と、前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応するパラメータデータを基に仰角及び方位の音像定位演算を行う音像定位手段と、前記音像定位手段から出力される2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御手段と、前記パニングゲイン制御手段から出力された定位情報を含んだ音信号を、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算することで、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する定位音・仮想反射音加算手段と、前記音像定位手段、前記距離ゲイン制御手段、及び前記パニングゲイン制御手段に対して、前記パラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御手段とを備える構成を採る。
【0020】
本発明の音像制御装置は、頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御手段と、前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応するパラメータデータを基に仰角及び方位の音像定位演算を行う音像定位手段と、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御手段と、前記反射音ゲイン制御された音信号に対して、ヘッドホンによる試聴時に、仮想的な反射音を発生して頭外に音像を定位させる仮想反射音発生手段と、前記音像定位手段から出力される2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御手段と、前記パニングゲイン制御手段から出力された定位情報を含んだ音信号と前記仮想反射音発生手段から出力された仮想反射音の音信号とを、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算することで、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する定位音・仮想反射音加算手段と、前記音像定位手段、前記距離ゲイン制御手段、前記反射音ゲイン制御手段、及び前記パニングゲイン制御手段に対して、前記パラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御手段とを備える構成を採る。
【0021】
本発明の音像制御方法は、頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン工程と、前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第1のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第1の音像定位工程と、前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第2のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第2の音像定位工程と、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン工程と、前記反射音ゲイン制御された音信号に対して、ヘッドホンによる試聴時に、仮想的な反射音を発生して頭外に音像を定位させる仮想反射音発生工程と、前記第1及び第2の音像定位工程から出力された2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御工程と、前記パニングゲイン制御工程から出力された定位情報を含んだ音信号と前記仮想反射音発生工程から出力された仮想反射音の音信号とを、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算して、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する出力工程とを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、距離方向に対する伝達特性フィルタの違いはほとんどゲイン成分であるということに着目し、距離方向の制御を独立したゲイン制御で行えるようにすることで、ある一つの距離に対しての一定間隔の仰角、方位に対応した伝達特性フィルタを保持するだけで、距離方向に対しても精度の高い音像の定位を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る音像制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、2チャンネルからなるステレオの音声信号によって受聴者の周囲の任意の位置に音像を定位させる音像制御装置に適用した例である。
【0025】
図1において、音像制御装置100は、距離ゲイン制御部101、反射音ゲイン制御部102、音像制御部110、仮想音場1用音像定位部120、仮想音場2用音像定位部130、パニングゲイン(Panning Gain)制御部140、仮想反射音発生部150、及び定位音・仮想反射音加算部160を備えて構成される。
【0026】
パニングゲイン制御部140は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部141、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部142、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部143及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部144から構成され、定位音・仮想反射音加算部160は、Rch定位音・仮想反射音加算器161及びLch定位音・仮想反射音加算器162から構成される。
【0027】
上記各部には、以下の信号が入出力される。
【0028】
音像制御装置100には、モノラル入力オーディオ信号170が入力され、Rch出力オーディオ信号171とLch出力オーディオ信号172を出力する。また、181は仮想音場1用音像定位部120への伝達特性フィルタ転送系統、182は仮想音場2用音像定位部130への伝達特性フィルタ転送系統である。
【0029】
音像制御部110は、距離ゲイン制御部101に距離ゲイン制御部コントロール信号191を出力し、反射音ゲイン制御部102に反射音ゲイン制御部コントロール信号192を出力する。また、音像制御部110は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部141及び仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部142に、仮想音場1用パニングゲイン制御部コントロール信号183を出力し、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部143及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部144に仮想音場2用パニングゲイン制御部コントロール信号184を出力する。
【0030】
距離ゲイン制御部101は、距離ゲイン制御部出力オーディオ信号193を仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130に出力し、反射音ゲイン制御部102は、反射音ゲイン制御部出力オーディオ信号194を仮想反射音発生部150に出力する。
【0031】
仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部141、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部142、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部143及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部144は、仮想音場1用パニングゲイン制御部コントロール信号183及び仮想音場2用パニングゲイン制御部コントロール信号184によりゲインコントロールされ、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号185、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号186、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号187及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号188を、それぞれRch定位音・仮想反射音加算器161及びLch定位音・仮想反射音加算器162に出力する。
【0032】
また、仮想反射音発生部150は、仮想反射音発生部Rch出力オーディオ信号189及び仮想反射音発生部Lch出力オーディオ出力信号190を、Rch定位音・仮想反射音加算器161及びLch定位音・仮想反射音加算器162に出力する。
【0033】
Rch定位音・仮想反射音加算器161は、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号185と仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部オーディオ信号187と想反射音発生部Rch出力オーディオ信号189を加算してRch出力オーディオ信号171として出力する。
【0034】
Lch定位音・仮想反射音加算器162は、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号186と仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部オーディオ信号188と仮想反射音発生部Lch出力オーディオ出力信号190を加算してLch出力オーディオ信号172として出力する。
【0035】
距離ゲイン制御部101は、頭部から音像までの距離方向に対して、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧のゲイン制御を行い、距離ゲイン制御された号距離ゲイン制御部出力オーディオ信号193を仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130に出力する。
【0036】
反射音ゲイン制御部102は、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行い、反射音ゲイン制御された反射音ゲイン制御部出力オーディオ信号194を仮想反射音発生部150に出力する。
【0037】
音像制御部110は、仮想音場1用音像定位部120に対して、ある位置に音像を定位させる第1のパラメータデータを設定し、仮想音場2用音像定位部130に対して、前記ある位置と同じ、もしくは異なる位置に音像を定位させる第2のパラメータデータを仮想音場2用音像定位部130に設定するとともに、距離ゲイン制御部101とパニングゲイン制御部140と反射音ゲイン制御部102のそれぞれに対して所定のゲイン値を設定する。
【0038】
また、音像制御部110は、距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する距離ゲインテーブル210(図4び図6参照)と、距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する反射音ゲインテーブル220(図5及び図6参照)と、移動時間に合わせて音圧を変更していく際に、ある移動時間において設定するゲイン値を参照するパニングゲインテーブル200(図2及び図3参照)とを備え、距離ゲインテーブル210、及び反射音ゲインテーブル220、及びパニングゲインテーブル200には仮想音場の特性に合わせたゲイン特性を設定する。
【0039】
音像制御部110は、始点から終点へ移動するときの移動時間と始点と終点のそれぞれの距離を設定することで、距離ゲインテーブル210、反射音ゲインテーブル220、及びパニングゲインテーブル200を参照して、ある単位時間毎に、距離ゲイン制御部101、反射音ゲイン制御部102及びパニングゲイン制御部140に、そのときの移動経過時間と移動距離に対応したゲイン値を自動的に設定する。
【0040】
仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130は、2チャンネルからなるステレオの音声信号によって受聴者の周囲の任意の位置に音像を定位させる音像定位手段であり、音像を定位させる位置に対応するパラメータデータを設定し、設定したパラメータデータを基に入力された1チャンネルからなるモノラルの音声信号に対して仰角及び方位の音像定位演算を行う。
【0041】
パニングゲイン制御部140は、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130から出力されるオーディオ信号のクロスフェード処理を行って、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130から出力される2チャンネルのステレオの音声信号の音圧を制御する。
【0042】
仮想反射音発生部150は、ヘッドホンによる試聴時に、頭外に音像を定位させるための仮想的な反射音を発生する。
【0043】
このように、音像制御装置100は、伝達特性フィルタ処理にて仰角・方位に対する制御を行う仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130の入力の前段に、距離方向のゲイン制御を行う距離ゲイン制御部101を設け、ヘッドホン試聴時に音像を頭外定位に制御するための仮想反射音発生部150の入力の前段に、反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御部102を設けることによって、距離に関するゲイン制御を伝達特性フィルタ処理とは独立して行う構成を採る。
【0044】
図2は、上記パニングゲインテーブル200の一例を示す図である。横軸に参照アドレスであるインデックス[index]を、縦軸にゲイン[dB]をとる。パニングゲインテーブル200は、オーディオ信号のクロスフェード処理を行うためのフェード・アウト(Fade Out)テーブル値(■印参照)とフェード・イン(Fade In)テーブル値(▲印参照)の2つのテーブル値を持つ。図中の印点が実際にテーブルに値を保存しているところを示す。
【0045】
図3は、図2のパニングゲインテーブル200の実際のメモリの値(ゲイン値)を示す図である。図3において、パニングゲインテーブル200は、参照アドレス0−127[address]に対応するフェード・アウト及びフェード・インテーブル値を記憶する。パニングゲインテーブル200の参照動作は、以下のようなものである。音像制御部110が、移動時間により参照アドレスを算出し、図3のパニングゲインテーブル200を参照して該当する参照アドレスのメモリの値(ゲイン値)を読み出し、読み出したゲイン値をパニングゲイン制御部140に設定する。例えば、移動時間により参照アドレス「26」が算出されると、参照アドレス「26」に対応するフェード・イン・ゲイン値「−1.981」とフェード・アウト・ゲイン値「−13.811」を読み出してパニングゲイン制御部140に設定する。なお、従来例においても、上記のようなパニングゲインテーブルを用いたオーディオ信号のクロスフェード処理自体は、図8に示すパニングゲイン制御部14により行われていた。
【0046】
図4は、上記距離ゲインテーブル210の一例を示す図である。横軸に頭部からの距離[cm]を、縦軸にゲイン[dB]をとる。距離ゲインテーブル210は、2つのSPゲイン値(■印参照)とHPゲイン値(▲印参照)の2つのテーブル値を持つ。本実施の形態では、2つのゲイン値を持っているが仕様に合わせて感度を変えるため3つ以上であってもよい。図中の印点が実際にテーブルに値を保存しているところを示す。図4に示すように、距離に対応してゲインの変化量が大きく変わる(距離が短いと変化量が大きい)ため、距離に応じて3つの領域を設け、3つの領域毎に保存するテーブル値の間隔を変えることでゲインテーブルの容量を抑える。本実施の形態では、距離に対して変化量の最も大きい領域a.については1cm間隔で、距離に対して変化量の次に大きい領域b.は8cm間隔で、距離に対して変化量が少ない領域c.は16cm間隔でそれぞれテーブル値を保存している。
【0047】
図5は、上記反射音ゲインテーブル220の一例を示す図である。横軸に頭部からの距離[cm]を、縦軸にゲイン[dB]をとる。図中の印点(■印参照)が実際にテーブルに値を保存しているところを示す。図5に示すように、反射音ゲインテーブル220についても距離に対応してゲインの変化量が大きく変わる(距離が短いと変化量が大きい)ため、距離に応じて3つの領域を設け、3つの領域毎に保存するテーブル値の間隔を変えることでゲインテーブルの容量を抑える。本実施の形態では、距離に対して変化量の最も大きい領域a.については1cm間隔で、距離に対して変化量の次に大きい領域b.は8cm間隔で、距離に対して変化量が少ない領域c.は16cm間隔でそれぞれテーブル値を保存している。
【0048】
図6は、図4の距離ゲインテーブル210の実際のメモリの値(ゲイン値)を示す図である。ここではHPゲイン値の場合を例に採るが、SPゲイン値及び図5の反射音ゲインテーブル220の反射音ゲイン値の場合も同様である。図6において、距離ゲインテーブル210は、参照アドレス0−255[address]に対応するテーブル値を記憶する。距離ゲインテーブル210(反射音ゲインテーブル220についても同様)の参照動作は、以下のようなものである。音像制御部110が、距離により参照アドレスを算出し、上記距離ゲインテーブル210(反射音ゲインテーブル220)を参照して該当する参照アドレスのメモリの値(ゲイン値)を読み出し、読み出したゲイン値を距離ゲイン制御部101(反射音ゲイン制御部102)に設定する。例えば、距離により参照アドレス「166」が算出されると、参照アドレス「166」に対応するゲイン値「−11.204」を読み出して距離ゲイン制御部101(反射音ゲイン制御部102)に設定する。
【0049】
以下、上述のように構成された音像制御装置の動作について説明する。
【0050】
まず、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130に設定するフィルタ係数について述べる。
【0051】
図7は、音像の移動を説明する図である。図7において、頭部300の左前方に方位角(angle)及び仰角(elevation)が(a,e)である音像のA点があり、頭部300の右前方に方位角及び仰角が(a,e)である音像のB点がある。フィルタ係数は、方位角と仰角から算出したもの(距離に依存しない)を用いて、A点及びB点のフィルタ係数をそれぞれ仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130に設定する。また、実際の音像を現す音像をA’(a,e,d)及びB’(a,e,d)であるとする。本実施の形態では、頭部300からの距離(distance)を示す距離情報であるA’点の距離d及びB’点の距離dが、新たに付加されている。距離ゲイン制御部101は、距離ゲインテーブル210を参照することでA’点の距離d及びB’点の距離dを、前記方位角及び仰角とは別途に制御することで、A’点からB’点までの音像の移動を制御することが可能になる。より具体的な効果として、距離方向に対する伝達特性フィルタの違いはほとんどゲイン成分であるということに着目し、音像の移動に頭部300からの距離(情報)を導入することで、距離方向の制御を独立したゲイン制御で行うことができ、ある一つの距離に対しての一定間隔の仰角、方位に対応した伝達特性フィルタを保持するだけで、距離方向に対しても精度の高い音像の定位を実現することが可能となる。ここで、フィルタ係数は、距離によらないことが望ましいので、頭部300の大きさ(約10〜15cm)の距離を基準にするとよい。
【0052】
図1に戻って、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130には、上述したフィルタ係数が設定されており、従来例と同様に伝達特性フィルタ処理にて仰角、方位に対する制御が行われることになる。本実施の形態では、この仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130の入力の前段に、距離方向のゲイン制御を行う距離ゲイン制御部101が設置され、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130は、まず距離ゲイン制御部101によりゲイン制御された1チャンネルのモノラル入力オーディオ信号に対して音像定位演算による音像定位制御を行う。さらに、本実施の形態では、仮想反射音発生部150の入力の前段に、反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御部102が設置されており、反射音に対しても上記定位の場合と同様の、距離によるゲイン制御を行う。
【0053】
まず、1チャンネルのモノラル入力オーディオ信号170が距離ゲイン制御部101及び反射音ゲイン制御部102に入力される。
【0054】
距離ゲイン制御部101では、1チャンネルのモノラル入力オーディオ信号170が入力されると、音像制御部110に内蔵された距離ゲインテーブル210(図4)を参照して、現時点での距離情報に対応した距離ゲイン値を読み出す。距離ゲインテーブル210の動作については図6で述べた通りである。距離ゲイン制御部101により、モノラル入力オーディオ信号170の音圧を距離ゲイン値に制御でき、距離方向の音像制御が可能になる。
【0055】
同様に、反射音ゲイン制御部102では、1チャンネルのモノラル入力オーディオ信号170が入力されると、音像制御部110に内蔵された反射音ゲインテーブル220(図5)を参照して、現時点での距離情報に対応した反射音ゲイン値を読み出す。反射音ゲイン制御部102により、ヘッドホン試聴時に距離に応じた仮想反射音の音圧に制御することで頭外定位の制御が可能になる。
【0056】
仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130では、距離ゲイン制御部101により距離ゲイン値に制御されたモノラル入力オーディオ信号に対して、伝達特性フィルタを用いて音像定位演算を行って受聴者の周囲の任意の位置に音像を定位させる。
【0057】
パニングゲイン制御部140では、音像制御部110に内蔵されたパニングゲインテーブル200(図2)を参照して、現時点でのパニング情報に対応したパニングゲイン値を、仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部141及び仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部142と、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部143及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部144とに設定する。仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部141、仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部142、仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部143、及び仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部144は、設定されたパニングゲイン値を基に、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130から出力されるオーディオ信号のクロスフェード処理を行う。
【0058】
一方、反射音ゲイン制御部102からは、ヘッドホン試聴時に距離に応じた仮想反射音の音圧に制御された反射音ゲイン制御部出力オーディオ信号194が、仮想反射音発生部150に出力される。仮想反射音発生部150では、反射音ゲイン制御部出力オーディオ信号194を基に、ある空間の音響特性フィルタによって仮想の反射音を発生し、ヘッドホン試聴時の頭外定位を制御する。
【0059】
定位音・仮想反射音加算部160のRch定位音・仮想反射音加算器161及びLch定位音・仮想反射音加算器162では、パニングゲイン制御部140から出力された定位情報を含んだオーディオ信号と仮想反射音発生部150から出力された仮想反射音のオーディオ信号とをRch,Lchそれぞれで加算することで、Rch出力オーディオ信号171とLch出力オーディオ信号172とを出力する。
【0060】
以上の動作を制御工程から見ると、以下のようになる。
(1)頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン工程と、
(2)距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第1のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第1の音像定位工程と、
(3)距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第2のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第2の音像定位工程と、
(4)1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン工程と、
(5)反射音ゲイン制御された音信号に対して、ヘッドホンによる試聴時に、仮想的な反射音を発生して頭外に音像を定位させる仮想反射音発生工程と、
(6)第1及び第2の音像定位工程から出力された2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御工程と、
(7)パニングゲイン制御工程から出力された定位情報を含んだ音信号と仮想反射音発生工程から出力された仮想反射音の音信号とを、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算して、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する出力工程と、を実行して2チャンネルからなるステレオの音声信号によって受聴者の周囲の任意の位置に音像を定位させる。
【0061】
上記第1の音像定位工程、第2の音像定位工程、距離ゲイン制御工程、前記反射音ゲイン制御工程、及びパニングゲイン制御工程に対して、第1のパラメータデータ、第2のパラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御工程が適宜実行される。
【0062】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、音像制御装置100は、仮想音場1用音像定位部120及び仮想音場2用音像定位部130の入力の前段に、頭部から音像までの距離方向に対して、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御部101を設け、ヘッドホン試聴時に音像を頭外定位に制御するための仮想反射音発生部150の入力の前段に、入力される1チャンネルからなるモノラルの音声信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御部102を設けているので、距離に関するゲイン制御を伝達特性フィルタ処理とは独立して行うことが可能になる。これにより、距離ゲイン制御部101によって、まず距離方向の制御が独立したゲイン制御で行われ、その後距離ゲイン制御された音信号に対して、音像定位部120,130が音像を定位させる音像定位演算を行う。仮想反射音発生部150についても同様に、反射音ゲイン制御部102によって、まず反射音の距離によるゲイン制御が行われ、その後反射音ゲイン制御された音信号に対して、仮想反射音発生部150が音像を頭外定位に制御する。したがって、距離方向を区別することになく単に、伝達特性をデジタルフィルタにて再現していた従来例に比べ、本実施の形態では距離方向に対する伝達特性フィルタを用いた音像定位演算などをゲイン制御に置き換えることで、音像の定位の精度を確保した上で演算量あるいは伝達特性フィルタの個数を大幅に減少させることができる。具体的な効果として、距離方向の制御を独立したゲイン制御で行えるようにすることで、ある一つの距離に対しての一定間隔の仰角、方位に対応した伝達特性フィルタを保持するだけで、距離方向に対しても精度の高い音像の定位を実現することが可能となる。また、特許文献1記載の装置のように、伝達特性フィルタを減少させることを目的として、用意する伝達特性フィルタの間隔を不均一にしてまで伝達特性フィルタを減らす必要性がなくなる。このため、本実施の形態によれば、伝達特性フィルタを選択する時などの制御方法が簡略化でき、音像制御のための音像制御部110の回路規模や演算量を減らすことができる。
【0063】
このように、距離に関するゲイン制御を伝達特性フィルタ処理とは独立して行うことが可能とすることで、伝達特性フィルタの間隔を一定としたまま、伝達特性フィルタを増やすことなく、特に距離方向の精度を高めることができる。
【0064】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。例えば、反射音ゲイン制御部102及び仮想反射音発生部150を省略した装置とすることもできる。
【0065】
また、本実施の形態では、オーディオ信号の音像制御装置に適用した例について説明しているが、同様の他の音像制御装置に適用するものでもよい。
【0066】
また、図2乃至図7のテーブルなどは一例でありどのようなデータ構造であっても構わない。
【0067】
また、本実施の形態では音像制御装置及び音像制御方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、音響装置、音響再生システム、音像定位方法等であってもよいことは勿論である。
【0068】
さらに、上記音像制御装置を構成する各回路部、例えば信号処理部等の種類、チャンネル数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る音像制御装置及び音像制御方法は、距離方向の音像定位におけるゲイン制御を伝達特性フィルタ処理とは独立して行えるようにすることで、伝達特性フィルタの間隔を一定としたまま、伝達特性フィルタを増やすことなく、特に距離方向の精度を高めることが可能であり、携帯機器等の音像制御装置等として有用である。またゲーム機器等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態に係る音像制御装置の構成を示すブロック図
【図2】上記実施の形態に係る音像制御装置のパニングゲインテーブルの一例を示す図
【図3】上記実施の形態に係る音像制御装置のパニングゲインテーブルの実際のメモリの値を示す図
【図4】上記実施の形態に係る音像制御装置の距離ゲインテーブルの一例を示す図
【図5】上記実施の形態に係る音像制御装置の反射音ゲインテーブルの一例を示す図
【図6】上記実施の形態に係る音像制御装置の距離ゲインテーブルの実際のメモリの値を示す図
【図7】上記実施の形態に係る音像制御装置の音像の移動を説明する図
【図8】従来の音像制御装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0071】
100 音像制御装置
101 距離ゲイン制御部
102 反射音ゲイン制御部
110 音像制御部
120 仮想音場1用音像定位部
130 仮想音場2用音像定位部
140 パニングゲイン制御部
141 仮想音場1Rch用パニングゲイン制御部
142 仮想音場1Lch用パニングゲイン制御部
143 仮想音場2Rch用パニングゲイン制御部
144 仮想音場2Lch用パニングゲイン制御部
150 仮想反射音発生部
160 定位音・仮想反射音加算部
161 Rch定位音・仮想反射音加算器
162 Lch定位音、仮想反射音加算器
200 パニングゲインテーブル
210 距離ゲインテーブル
220 反射音ゲインテーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御手段と、
前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応するパラメータデータを基に仰角及び方位の音像定位演算を行う音像定位手段と、
前記音像定位手段から出力される2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御手段と、
前記パニングゲイン制御手段から出力された定位情報を含んだ音信号を、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算することで、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する定位音・仮想反射音加算手段と、
前記音像定位手段、前記距離ゲイン制御手段、及び前記パニングゲイン制御手段に対して、前記パラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御手段と
を備えることを特徴とする音像制御装置。
【請求項2】
頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン制御手段と、
前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応するパラメータデータを基に仰角及び方位の音像定位演算を行う音像定位手段と、
1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン制御手段と、
前記反射音ゲイン制御された音信号に対して、ヘッドホンによる試聴時に、仮想的な反射音を発生して頭外に音像を定位させる仮想反射音発生手段と、
前記音像定位手段から出力される2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御手段と、
前記パニングゲイン制御手段から出力された定位情報を含んだ音信号と前記仮想反射音発生手段から出力された仮想反射音の音信号とを、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算することで、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する定位音・仮想反射音加算手段と、
前記音像定位手段、前記距離ゲイン制御手段、前記反射音ゲイン制御手段、及び前記パニングゲイン制御手段に対して、前記パラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御手段と
を備えることを特徴とする音像制御装置。
【請求項3】
前記音像定位手段は、第1の仮想音場に音像を定位させる第1のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第1の仮想音場用音像定位手段と、
第2の仮想音場に音像を定位させる第2のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第2の仮想音場用音像定位手段とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像制御装置。
【請求項4】
前記音像制御手段は、ある位置に音像を定位させる前記第1のパラメータデータを前記第1の仮想音場用音像定位手段に設定し、前記ある位置と同じ、もしくは異なる位置に音像を定位させる前記第2のパラメータデータを前記第2の仮想音場用音像定位手段に設定することを特徴とする請求項3記載の音像制御装置。
【請求項5】
前記音像制御手段は、距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する距離ゲインテーブルを有し、参照したゲイン値を前記距離ゲイン制御手段に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像制御装置。
【請求項6】
前記音像制御手段は、距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する反射音ゲインテーブルを有し、参照したゲイン値を前記反射音ゲイン制御手段に設定することを特徴とする請求項2に記載の音像制御装置。
【請求項7】
前記音像制御手段は、移動時間に合わせて音圧を変更していく際に、ある移動時間において設定するゲイン値を参照するパニングゲインテーブルを有し、参照したゲイン値を前記パニングゲイン制御手段に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の音像制御装置。
【請求項8】
前記音像制御手段は、距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する距離ゲインテーブルと、
距離に合わせて音圧を変更していく際に、ある距離において設定するゲイン値を参照する反射音ゲインテーブルと、
移動時間に合わせて音圧を変更していく際に、ある移動時間において設定するゲイン値を参照するパニングゲインテーブルとを有し、
始点から終点へ移動するときの移動時間と始点と終点のそれぞれの距離を設定することで、前記距離ゲインテーブル、前記反射音ゲインテーブル、及び前記パニングゲインテーブルを参照して、ある単位時間毎に、前記距離ゲイン制御手段、前記反射音ゲイン制御手段及び前記パニングゲイン制御手段に、そのときの移動経過時間と移動距離に対応したゲイン値を設定することを特徴とする請求項2記載の音像制御装置。
【請求項9】
頭部から音像までの距離方向に対して、1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧のゲイン制御を行う距離ゲイン工程と、
前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第1のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第1の音像定位工程と、
前記距離ゲイン制御された音信号に対して、音像を定位させる位置に対応する第2のパラメータデータを基に音像定位演算を行う第2の音像定位工程と、
1チャンネルモノラルの音入力信号の音圧の反射音の距離によるゲイン制御を行う反射音ゲイン工程と、
前記反射音ゲイン制御された音信号に対して、ヘッドホンによる試聴時に、仮想的な反射音を発生して頭外に音像を定位させる仮想反射音発生工程と、
前記第1及び第2の音像定位工程から出力された2チャンネルのステレオの音信号のクロスフェード処理を行って音圧を制御するパニングゲイン制御工程と、
前記パニングゲイン制御工程から出力された定位情報を含んだ音信号と前記仮想反射音発生工程から出力された仮想反射音の音信号とを、2チャンネルのステレオの音信号それぞれで加算して、2チャンネルのステレオの音出力信号を出力する出力工程と
を有することを特徴とする音像制御方法。
【請求項10】
さらに、前記第1の音像定位工程、前記第2の音像定位工程、前記距離ゲイン制御工程、前記反射音ゲイン制御工程、及び前記パニングゲイン制御工程に対して、前記第1のパラメータデータ、前記第2のパラメータデータ、及びゲイン制御のためのゲイン値を設定する音像制御工程とを有することを特徴とする請求項9記載の音像制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−336184(P2007−336184A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164884(P2006−164884)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】