説明

音像定位装置

【課題】
簡易な構成で、音像を任意の位置に定位させることができる音像定位装置を実現する。
【解決手段】
入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答を畳み込んで左チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第1の信号処理手段12Lと、入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答を畳み込んで右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第2の信号処理手段12Rと、第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより定位用オーディオ信号を再生してなる音像を基準音源位置とは異なる位置に定位させる第3の信号処理手段11とを音像定位装置10に設けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音像定位装置に関し、例えばヘッドホンで再生される音像を任意の位置に定位させる場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号をスピーカに供給して再生した場合、その音像はリスナの前方に定位する。これに対して同じオーディオ信号をヘッドホン装置に供給して再生した場合、音像はリスナの頭内に定位し、これにより極めて不自然な音場を構成してしまう。
【0003】
このようなヘッドホン装置における音像定位の不自然さを改善するため、任意のスピーカ位置からリスナの両耳までのインパルス応答を測定あるいは計算しておき、ディジタルフィルタ等を用いて当該インパルス応答をオーディオ信号に畳み込んで再生することにより、あたかも実際のスピーカから再生したような自然な音像の頭外定位を得られるようにしたヘッドホン装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図13は、1チャンネルのオーディオ信号の音像を頭外定位させるヘッドホン装置100の構成を示す。ヘッドホン装置100は、入力端子1を介して入力された1チャンネルのアナログオーディオ信号SAをアナログディジタル変換回路2でディジタル変換してディジタルオーディオ信号SDを生成し、これをディジタル処理回路3L及び3Rに供給する。ディジタル処理回路3L及び3Rは、ディジタルオーディオ信号SDに対して頭外定位のための信号処理を施す。
【0005】
図14に示すように、定位させようとする音源SPがリスナMの正面に位置しているとすると、当該音源SPから出力された音は伝達関数HL及びHRを有する経路を介してリスナMの左耳及び右耳に到達する。このような伝達関数HL及びHRを時間軸に変換した、左チャンネル及び右チャンネルのインパルス応答をあらかじめ測定あるいは計算しておく。
【0006】
ディジタル処理回路3L及び3Rは、ディジタルオーディオ信号SDに対してそれぞれ上述した左チャンネル及び右チャンネルのインパルス応答を畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDL及びSDRとして出力する。ちなみに、ディジタル処理回路3L及び3Rは、例えば図15に示すようなFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成される。
【0007】
ディジタルアナログ変換回路4L及び4Rは、それぞれディジタルオーディオ信号SDL及びSDRをアナログ変換してアナログオーディオ信号SAL及びSARを生成し、対応するアンプ5L及び5Rで増幅してヘッドホン6に供給する。そしてヘッドホン6の音響ユニット(電気・音響変換素子)6L及び6Rは、それぞれアナログオーディオ信号SAL及びSARを音に変換して出力する。
【0008】
したがってヘッドホン6から出力される左右の再生音は、図14に示す音源SPから伝達関数HL、HRを有する経路をそれぞれ介して到達した音と同等となり、これによりリスナがヘッドホン6を装着してその再生音を聴くとき、その音像は図14に示す音源SPの位置に定位する(すなわち頭外定位)。
【0009】
以上は音像が1つの場合についての説明であるが、次に複数の音像をそれぞれ異なる音源位置に定位させる場合について説明する。
【0010】
例えば図16に示すように、音像をリスナ正面前方の正面音源SPf及びリスナ正面α°上方の上方音源SPuの2箇所にそれぞれ頭外定位させる場合のヘッドホン装置101を、図15を用いて説明する。なお、正面音源SPfからリスナMの両耳への伝達関数HfL及びHfR、上方音源SPuからリスナMの両耳への伝達関数HuL及びHuRをそれぞれ時間軸に変換したインパルス応答を、あらかじめ測定あるいは計算しておく。
【0011】
図17において、ヘッドホン装置101のアナログディジタル変換回路2fは、入力端子1fを介して入力された正面定位用のアナログオーディオ信号SAfをディジタル変換してディジタルオーディオ信号SDfを生成し、これを後段のディジタル処理回路3fL及び3fRに供給する。同様にアナログディジタル変換回路2uは、入力端子1uを介して入力された上方定位用のアナログオーディオ信号SAuをディジタル変換してディジタルオーディオ信号SDuを生成し、これを後段のディジタル処理回路3uL及び3uRに供給する。
【0012】
ディジタル処理回路3fL及び3uLは、それぞれディジタルオーディオ信号SDf及びSDuに対して左耳へのインパルス応答を畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDf及びSDuLとして加算回路7Lに供給する。同様にディジタル処理回路3fR及び3uRは、それぞれディジタルオーディオ信号SDf及びSDuに対して右耳へのインパルス応答を畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDfR及びSDuRとして加算回路7Rに供給する。各ディジタル処理回路3fL及び3fR、3uL及び3uRは、いずれも図従3に示すFIRフィルタで構成される。
【0013】
加算回路7Lは、インパルス応答が畳み込まれたディジタルオーディオ信号SDfL及びSDuLを加算して左チャンネルのディジタルオーディオ信号SDLを生成する。同様に加算回路7Rは、インパルス応答が畳み込まれたディジタルオーディオ信号SDfR及びSDuRを加算して右チャンネルのディジタルオーディオ信号SDRを生成する。
【0014】
ディジタルアナログ変換回路4L及び4Rは、それぞれディジタルオーディオ信号SDL及びSDRをアナログ変換してアナログオーディオ信号SAL及びSARを生成し、対応するアンプ5L及び5Rで増幅してヘッドホン6に供給する。そしてヘッドホン6の音響ユニット6L及び6Rは、それぞれアナログオーディオ信号SAL及びSARを音に変換して出力する。
【0015】
このときヘッドホン6から出力される左右の再生音は、図16に示す正面音源SPfから伝達関数HfL及びHfRを有する経路を介して到達した音、及び上方音源SPuから伝達関数HuL及びHuRを有する経路を介して到達した音と同等となり、これによりリスナがヘッドホン6を装着してその再生音を聴くとき、その音像は正面音源SPf及び上方音源SPuの位置に定位する。
【特許文献1】特開2000−227350公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、音源からリスナの両耳に至る1対の伝達関数をディジタル信号処理で再現することにより、音像を任意の位置に定位させるヘッドホン装置を実現することができる。しかしながら、定位させようとする音源の数を増やすと、これに応じてディジタル信号処理の量が増加してしまい、これによってヘッドホン装置全体の構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0017】
また、例えば図16に示す正面音源SPfの位置から上方音源SPuの位置まで音源が移動していくような音像定位を実現しようとした場合、図13に示したヘッドホン装置100において、ディジタル処理回路3L及び3Rで畳み込みを行うインパルス応答を、前方正面での伝達関数HfL及びHfRから前方上方での伝達関数HuL及びHuRまで順次変化させていく必要がある。具体的には、図15に示すFIRフィルタの次数nに相当する数の係数k1〜knを全て同時に更新して行かなければならず、これにより長い処理時間及び係数を記憶しておくための大量のメモリが必要となり、ヘッドホン装置全体の構成が複雑化してしまうという問題があった。
【0018】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で音像を任意の位置に定位させることができる音像定位装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するため本発明の音像定位装置においては、任意の音源位置からリスナの両耳までの経路に応じたインパルス応答をオーディオ信号に畳み込んで定位用オーディオ信号を生成することにより、当該定位用オーディオ信号を再生してなる音像を音源位置に定位させる音像定位装置において、入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答を畳み込んで左チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第1の信号処理手段と、入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答を畳み込んで右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第2の信号処理手段と、第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、定位用オーディオ信号を再生してなる音像を基準音源位置とは異なる位置に定位させる第3の信号処理手段とを設けるようにした。
【0020】
音像を定位させる第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、音像を当該第1及び第2のインパルス応答で定位される音源位置から移動させることができ、これらのインパルス応答を適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、簡易な構成で音像を任意の位置に定位させることができる。
【0021】
また本発明の音像定位方法においては、任意の音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答をそれぞれオーディオ信号に畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成することにより、当該左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置に定位させる音像定位方法において、第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、定位用オーディオ信号を再生してなる音像を音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップを設けるようにした。
【0022】
音像を定位させる第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、音像を当該第1及び第2のインパルス応答で定位される音源位置から移動させることができ、これらのインパルス応答を適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、簡易な構成で音像を任意の位置に定位させることができる。
【0023】
また本発明の音像定位方法においては、情報処理装置に対して、任意の音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答をそれぞれオーディオ信号に畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成することにより、当該左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を再生してなる音像を音源位置に定位させる処理を実行させる音像定位プログラムにおいて、第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、定位用オーディオ信号を再生してなる音像を音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップを設けるようにした。
【0024】
音像を定位させる第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、音像を当該第1及び第2のインパルス応答で定位される音源位置から移動させることができ、これらのインパルス応答を適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、簡易な構成で音像を任意の位置に定位させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、音像を定位させる第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、音像を当該第1及び第2のインパルス応答で定位される音源位置から移動させることができ、これらのインパルス応答を適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、簡易な構成で音像を任意の位置に定位させ得る音像定位装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0027】
(1)第1の実施の形態
図13及び図17との共通部分に同一符号を付して示す図1において、10は本発明の第1の実施の形態のヘッドホン装置を示し、入力される1チャンネルのオーディオ信号SAを、図2に示すリスナMの正面α°上方の上方音源SPuの位置に頭外定位させるようになされている。
【0028】
ここで、人間は左右の耳へ到達する音のレベル差や位相差に基づいて音源の水平方向を認識しているが、これに加えて人間は音源の上下方向も認識している。本願出願人は、音源から耳への伝達関数を時間軸に変換したインパルス応答における先頭部分が、この上下方向の認識に強く関与していることを発見した。
【0029】
すなわち図3(A)は、図2に示す上方音源SPuからリスナMの両耳までの伝達関数HuL及びHuRを時間軸に変換したインパルス応答IPuを示し、当該インパルス応答IPuの先頭部分が、音像の上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvである。なお、上方音源SPuはリスナMの正面方向にあることから、左右の耳へのインパルス応答は同一であるものとする。
【0030】
ヘッドホン装置10はこのことを利用し、水平方向の定位を形成する第1及び第2のインパルス応答(後述)と、音像の上下方向の定位を形成する第3のインパルス応答IPvとを併用して音像定位処理を行うことにより、音像を上下左右の任意の位置に定位させる。このためヘッドホン装置10は、水平方向の音像定位を行う第1のディジタル処理回路12L及び第2のディジタル処理回路12Rに加え、第3のインパルス応答IPvを用いて上下方向の音像定位を行う第3のディジタル処理回路11を有している。
【0031】
すなわち図1において、音像定位装置としてのヘッドホン装置10は、入力端子1を介して入力されたアナログオーディオ信号SAをアナログディジタル変換回路2でディジタル変換してディジタルオーディオ信号SDを生成し、これを本願発明の特徴である第3のディジタル処理回路11に供給する。
【0032】
図4は第3のディジタル処理回路11の構成を示し、n−1個の遅延器11D1〜11Dn−1、n個の乗算器11E1〜11En、及びn−1個の加算器11F1〜11Fn−1で構成されるnタップのFIRフィルタである。
【0033】
第3のディジタル処理回路11は、入力端11Aを介して入力したディジタルオーディオ信号SDに対し上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを畳み込み、最終段の遅延器11Dn−1から出力されるディジタルオーディオ信号SDu1を第1の出力端11Bを介して第1のディジタル処理回路12L及び第2のディジタル処理回路12R(図1)に供給するとともに、最終段の加算器11Fn−1から出力されるディジタルオーディオ信号SDu2を第2の出力端11Cを介して第1のディジタル処理回路12L及び第2のディジタル処理回路12Rに供給する。
【0034】
第1のディジタル処理回路12L及び第2のディジタル処理回路12Rは同一構成である。図5はディジタル処理回路12L及び12Rの構成を示し、m−1個の遅延器12D1〜12Dm−1、m個の乗算器12E1〜12Em、及びm−1個の加算器12F1〜12Fm−1で構成されるmタップのFIRフィルタである。
【0035】
第1のディジタル処理回路12Lは、入力端12Aを介して入力したディジタルオーディオ信号SDu1及び入力端12Bを介して入力したディジタルオーディオ信号SDu2に対し、図2に示すリスナMの正面前方の前方音源SPfからリスナMの左耳までの伝達関数HfLを時間軸に変換したインパルス応答を畳み込み、最終段の加算器12Fn−1から出力される左チャンネルのディジタルオーディオ信号SDuLを、出力端12Cを介してディジタルアナログ変換回路4Lに供給する。
【0036】
同様に第2のディジタル処理回路12Rは、入力端12Aを介して入力したディジタルオーディオ信号SDu1及び入力端12Bを介して入力したディジタルオーディオ信号SDu2に対し、図2に示すリスナMの正面前方の前方音源SPfからリスナMの右耳までの伝達関数HfRを時間軸に変換したインパルス応答を畳み込み、最終段の加算器12Fn−1から出力される右チャンネルのディジタルオーディオ信号SDuRを、出力端12Cを介してディジタルアナログ変換回路4Rに供給する。
【0037】
ディジタルアナログ変換回路4L及び4Rは、それぞれディジタルオーディオ信号SDuL及びSDuRをアナログ変換してアナログオーディオ信号SAuL及びSAuRを生成し、後段のアンプ5L及び5Rで増幅してヘッドホン6に供給する。そしてヘッドホン6の音響ユニット6L及び6Rは、それぞれアナログオーディオ信号SAuL及びSAuRを音に変換して出力する。
【0038】
ここで、上述したようにヘッドホン装置10は、まず第3のディジタル処理回路11によって、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPv(図3(A))を畳み込んだ後、第1及び第2のディジタル処理回路12L及び12Rによって、水平方向の定位を形成するインパルス応答IPfL及びIPfR(図3(B))を畳み込む。
【0039】
これによりヘッドホン装置10全体としては、図3(C)に示すように、水平方向の定位を形成するインパルス応答IPfL及びIPfRの先頭に上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを付加したインパルス応答列を畳み込むことになる。
【0040】
これによりヘッドホン6から出力される左右の再生音は、インパルス応答IPfL及びIPfRによって定位される基準音源位置としての正面前方の前方音源SPfからインパルス応答IPvによって定位される角度α°だけ上方の、上方音源SPuの位置に音像が定位する。
【0041】
なお、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvの畳み込みは、n=10〜20タップ程度の小規模なFIRフィルタによって実現することができる。
【0042】
そして、上下方向の定位を形成するインパルス応答と、水平方向の定位を形成するインパルス応答とをそれぞれ複数記憶しておき、これらを適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、音像を上下左右の任意の位置に定位させることができる。
【0043】
以上の構成によれば、音像を定位させようとする処理対象のオーディオ信号に対し、まず上下方向の定位を形成するインパルス応答を畳み込んだ後、水平方向の定位を形成するインパルス応答を畳み込むようにしたことにより、簡易な構成で、音像を上下左右の任意の位置に定位させ得るヘッドホン装置を実現できる。
【0044】
(2)第2の実施の形態
図1との共通部分に同一符号を付して示す図6において、20は本発明の第2の実施の形態のヘッドホン装置を示し、第3のディジタル処理回路11の第2の出力端11C(図4)と第1及び第2のディジタル処理回路12L及び12Rとの間に減衰器21が介挿されている以外は、第1の実施の形態のヘッドホン装置10と同一である。
【0045】
減衰器21の減衰量は、0から無限大までの間の任意の値に設定し得るようになされている。まず、減衰器21の減衰量を0に設定すると、第3のディジタル処理回路11で畳み込まれる上下方向のインパルス応答IPvがそのまま音像定位に反映されるため、第1の実施の形態と同様に上方音源SPu(図2)の位置に音像が定位する。
【0046】
この状態から減衰器21の減衰量を徐々に増加していくと、上下方向のインパルス応答IPvの影響が減少していき、このため音像は上方音源SPuから正面音源SPfに向けて下降していく。そして、減衰器21の減衰量が無限大になるとインパルス応答IPvの影響が無くなり、このとき音像は正面音源SPfに位置する。
【0047】
このように、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvの影響を減衰器21によって制御すれば、当該インパルス応答IPvで定位される位置を最大位置とする任意の上下位置に音像を定位させることができ、これと水平方向の定位を形成するインパルス応答とを組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、音像を上下左右の任意の位置に定位させることができる。
【0048】
以上の構成によれば、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを畳み込む第3のディジタル処理回路11の後段に、当該インパルス応答IPvの影響を減衰させる減衰器21を設けたことにより、さらに簡易な構成で音像を上下左右の任意の位置に定位させ得るヘッドホン装置を実現できる。
【0049】
(3)第3の実施の形態
図1及び図6との共通部分に同一符号を付して示す図7において、30は本発明の第3の実施の形態のヘッドホン装置を示し、上下方向の定位を形成するインパルス応答を畳み込む第3のディジタル処理回路31と、水平方向の定位を形成するインパルス応答を畳み込む第1のディジタル処理回路33L及び第2のディジタル処理回路33Rとが並列的に処理を行う点で、上述した第1及び第2の実施の形態のヘッドホン装置と相違する。
【0050】
すなわち音像定位装置としてのヘッドホン装置30は、入力端子1を介して入力されたアナログオーディオ信号SAをアナログディジタル変換回路2でディジタル変換してディジタルオーディオ信号SDを生成し、第3のディジタル処理回路31及び遅延器32に供給する。
【0051】
第3のディジタル処理回路31は、ディジタルオーディオ信号SDに対し上下方向の定位を形成するインパルス応答IPv(図3(B))を畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDuとして加算器34L及び34Rに供給する。この第3のディジタル処理回路31には、図8に示すようなIIR(Infinite Impulse Response)フィルタや、図9に示すようなFIRフィルタが用いられる。
【0052】
一方、遅延器32はディジタルオーディオ信号SDに対し、第3のディジタル処理回路31におけるインパルス応答IPvに相当する時間だけ遅延を施して、第1及び第2のディジタル処理回路33L及び33Rに供給する。第1及び第2のディジタル処理回路33L及び33Rは同一構成であり、図9に示すようなFIRフィルタが用いられる。
【0053】
第1のディジタル処理回路12Lはディジタルオーディオ信号SDに対し、図2に示すリスナMの正面前方の前方音源SPfからリスナMの左耳までの伝達関数HfLを時間軸に変換したインパルス応答IPfL(図3(B))を畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDfLとして加算器34Lに供給する。同様に第2のディジタル処理回路12Rはディジタルオーディオ信号SDに対し、リスナMの正面前方の前方音源SPfからリスナMの左耳までの伝達関数HfRを時間軸に変換したインパルス応答IPfRを畳み込み、ディジタルオーディオ信号SDfRとして加算器34Rに供給する。
【0054】
加算機34Lは、ディジタルオーディオ信号SDuとディジタルオーディオ信号SDfLとを合成し、左チャンネルのディジタルオーディオ信号SDuLとして出力する。同様に加算機34Rは、ディジタルオーディオ信号SDuとディジタルオーディオ信号SDfRとを合成し、右チャンネルのディジタルオーディオ信号SDuRとして出力する。
【0055】
ディジタルアナログ変換回路4L及び4Rは、それぞれディジタルオーディオ信号SDuL及びSDuRをアナログ変換してアナログオーディオ信号SAuL及びSAuRを生成し、後段のアンプ5L及び5Rで増幅してヘッドホン6に供給する。そしてヘッドホン6の音響ユニット6L及び6Rは、それぞれアナログオーディオ信号SAuL及びSAuRを音に変換して出力する。
【0056】
ここで、上述したように第1及び第2のディジタル処理回路33L及び33Rに入力されるディジタルオーディオ信号SDは、遅延器32によってインパルス応答IPvに相当する時間だけ遅延されていることから、当該第1及び第2のディジタル処理回路33L及び33Rから出力される水平方向の定位処理が施されたディジタルオーディオ信号SDfL及びSDfRも、上下方向の定位処理が施されたディジタルオーディオ信号SDuに対してインパルス応答IPvに相当する時間だけ遅延している。
【0057】
このため、加算機34L及び34Rによって合成後のディジタルオーディオ信号SDuL及びSDuRには、図3(C)に示すような、水平方向の定位を形成するインパルス応答IPfL及びIPfRの先頭に上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvが付加されたインパルス応答列と等価な処理が施されていることになる。
【0058】
これによりヘッドホン6から出力される左右の再生音は、インパルス応答IPfL及びIPfRによって定位される正面前方の前方音源SPf(図2)からインパルス応答IPvによって定位される角度α°だけ上方の、上方音源SPuの位置に音像が定位する。
【0059】
そして、上下方向の定位を形成するインパルス応答と、水平方向の定位を形成するインパルス応答とをそれぞれ複数記憶しておき、これらを適宜組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、音像を上下左右の任意の位置に定位させることができる。
【0060】
また、FIRフィルタに比べ構成が簡易なIIRフィルタを第3のディジタル処理回路31として使用できることから、ヘッドホン装置30全体の構成を、上述した第1及び第2の実施の形態のヘッドホン装置10及び20に比べてさらに簡素化できる。
【0061】
以上の構成によれば、音像を定位させようとする処理対象のオーディオ信号に対して上下方向の定位処理を施すとともに、当該処理対象のオーディオ信号に対して上下方向の定位を形成するインパルス応答に相当する遅延を施した後水平方向の定位処理を施し、これらを合成するようにしたことにより、簡易な構成で、音像を上下左右の任意の位置に定位させ得るヘッドホン装置を実現できる。
【0062】
(4)第4の実施の形態
図7との共通部分に同一符号を付して示す図10において、40は本発明の第4の実施の形態のヘッドホン装置を示し、第3のディジタル処理回路31と加算機34L及び34Rとの間に減衰器21が介挿されている以外は、第3の実施の形態のヘッドホン装置30と同一である。
【0063】
減衰器21の減衰量は、0から無限大までの間の任意の値に設定し得るようになされており、減衰器21の減衰量を0に設定すると、第3のディジタル処理回路31で畳み込まれる上下方向のインパルス応答IPvがそのまま音像定位に反映されるため、上方音源SPu(図2)の位置に音像が定位する。
【0064】
そして減衰器21の減衰量を徐々に増加していくと、上下方向のインパルス応答IPvの影響が減少して音像は上方音源SPuから正面音源SPfに向けて移動していき、減衰器21の減衰量が無限大になるとインパルス応答IPvの影響が無くなり、音像は正面音源SPfに位置する。
【0065】
このように、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvの影響を減衰器21によって制御すれば、当該インパルス応答IPvを一つ記憶しておくだけで、音源を任意の上下方向に定位させることができ、これと水平方向の定位を形成するインパルス応答とを組み合わせて畳み込みを行うようにすれば、音像を上下左右の任意の位置に定位させることができる。
【0066】
以上の構成によれば、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを畳み込むための第1のディジタル処理回路31の後段に、当該インパルス応答IPvの影響を減衰させる減衰器21を設けたことにより、さらに簡易な構成で音像を上下左右の任意の位置に定位させ得るヘッドホン装置を実現できる。
【0067】
(5)他の実施の形態
なお上述の第1乃至第4の実施の形態においては、いずれも音像を頭外定位させるヘッドホン装置に本発明を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、音像を任意の位置に定位させるスピーカ装置に適用することもできる。
【0068】
また上述の第2及び第4の実施の形態においては、上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを畳み込むための第3のディジタル処理回路11及び31の後段に、当該インパルス応答IPvの影響を減衰させる減衰器21を設けることにより、当該インパルス応答IPvで定位される位置を最大位置とする任意の上下位置に音像を定位させるようにしたが、本発明はこれに限らず、減衰器21の代わりに、当該インパルス応答IPvの影響を増大させる増幅器を第3のディジタル処理回路11、31の後段に設けるようにしてもよい。この場合、増幅器による増幅率を上げていくと、音像はインパルス応答IPvで定位される位置からさらに上方あるいは下方に移動していく。
【0069】
さらに上述の第1乃至第4の実施の形態においては、第3のディジタル処理回路11及び31が上下方向の定位を形成するインパルス応答IPvを畳み込むようにしたが、本発明はこれに限らず、第3のディジタル処理回路11及び31で水平方向の定位を形成するインパルス応答を畳み込むようにしてもよい。
【0070】
さらに上述の第1乃至第4の実施の形態においては、オーディオ信号に対してインパルス応答を畳み込む一連の信号処理を、ディジタル処理回路等のハードウェアで処理するようにしたが、本発明はこれに限らず、これらの一連の信号処理を、DSP(Digital Signal Processor)のような情報処理手段上で実行される信号処理プログラムによって処理するようにしてもよい。
【0071】
まず、第1の実施の形態のヘッドホン装置10に相当する信号処理をおこなう音像定位処理プログラムを、図11に示すフローチャートを用いて説明する。ヘッドホン装置の情報処理手段は、音像定位処理手順ルーチンRT1の開始ステップから入ってステップSP1に移り、ディジタルオーディオ信号SDを所定時間で区分した入力信号x(t)を読み込み、次のステップSP2に移る。
【0072】
ステップSP2においてヘッドホン装置の情報処理手段は、入力信号x(t)に対して上下方向の定位を形成するインパルス応答h(t)を畳み込み、その畳み込み結果y(t)と、ディレイ出力d(t)とを取得して次のステップSP3に移る。なお、この畳み込み結果y(t)は図4に示す最終段の加算器11Fn−1から出力されるディジタルオーディオ信号SDu2に相当し、ディレイ出力d(t)は最終段の遅延器11Dn−1から出力されるディジタルオーディオ信号SDu1に相当する。
【0073】
ステップSP3においてヘッドホン装置の情報処理手段は、ディレイ出力d(t)に対して左右方向の定位を形成するインパルス応答h(t)及びh(t)を畳み込み、その畳み込み結果y(t)及びy(t)を取得して次のステップSP4に移る。
【0074】
ステップSP4においてヘッドホン装置の情報処理手段は、畳み込み結果y(t)に対して畳み込み結果y(t)、y(t)を加算し、その結果をステレオの出力信号z(t)、z(t)として出力してステップSP1に戻る。
【0075】
次に、第3の実施の形態のヘッドホン装置30に相当する信号処理をおこなう音像定位処理プログラムを、図12に示すフローチャートを用いて説明する。ヘッドホン装置の情報処理手段は、音像定位処理手順ルーチンRT2の開始ステップから入ってステップSP11に移り、ディジタルオーディオ信号SDを所定時間で区分した入力信号x(t)を読み込み、次のステップSP12に移る。
【0076】
ステップSP12においてヘッドホン装置の情報処理手段は、入力信号x(t)に対して上下方向の定位を形成するインパルス応答h(t)を畳み込み、その畳み込み結果y(t)を取得して次のステップSP13に移る。この畳み込み結果y(t)は、図7に示す第1のディジタル処理回路31から出力されるディジタルオーディオ信号SDuに相当する。
【0077】
ステップSP13においてヘッドホン装置の情報処理手段は、入力信号x(t)に対してインパルス応答h(t)に相当する遅延を施してディレイ出力d(t)を取得し、次のステップSP14に移る。
【0078】
ステップSP14においてヘッドホン装置の情報処理手段は、ディレイ出力d(t)に対して左右方向の定位を形成するインパルス応答h(t)及びh(t)を畳み込み、その畳み込み結果y(t)及びy(t)を取得して次のステップSP15に移る。この畳み込み結果y(t)及びy(t)は、図7に示す第1及び第2のディジタル処理回路33L及び33Rから出力されるディジタルオーディオ信号SDfL及びSDfRに相当する。
【0079】
ステップSP15においてヘッドホン装置の情報処理手段は、畳み込み結果y(t)に対して畳み込み結果y(t)、y(t)を加算し、その結果をステレオの出力信号z(t)、z(t)として出力してステップSP11に戻る。
【0080】
このように音像定位処理をプログラムによって行う場合でも、上下方向の定位を形成するインパルス応答と、水平方向の定位を形成するインパルス応答とを別個に畳み込むようにすることにより、音像定位処理の処理負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、オーディオ信号の音像を任意の位置に定位させる用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1の実施の形態のヘッドホン装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における音像定位の説明に供する略線図である。
【図3】インパルス応答の説明に供する特性曲線図である。
【図4】第1のディジタル信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図5】第2及び第3のディジタル信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態のヘッドホン装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】第3の実施の形態のヘッドホン装置の全体構成を示すブロック図である。
【図8】IIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図9】FIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施の形態のヘッドホン装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】第1の実施の形態に対応する音場定位処理手順のフローチャートである。
【図12】第3の実施の形態に対応する音場定位処理手順のフローチャートである。
【図13】従来のヘッドホン装置の全体構成を示すブロック図である。
【図14】ヘッドホン装置における音像定位の説明に供する略線図である。
【図15】FIRフィルタの構成を示すブロック図である。
【図16】複数音源の場合の伝達関数の説明に供する略線図である。
【図17】2チャンネル対応のヘッドホン装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
10、20、30、40、100、101……ヘッドホン装置、11、12、31、33……ディジタル処理回路、21……減衰器、32……遅延器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の音源位置からリスナの両耳までの経路に応じたインパルス応答をオーディオ信号に畳み込んで定位用オーディオ信号を生成することにより、当該定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置に定位させる音像定位装置において、
入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答を畳み込んで左チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第1の信号処理手段と、
上記入力オーディオ信号に対して上記基準音源位置からリスナの右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答を畳み込んで右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第2の信号処理手段と、
上記第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、上記定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記基準音源位置とは異なる位置に定位させる第3の信号処理手段と
を具えることを特徴とする音像定位装置。
【請求項2】
上記第3の信号処理手段は、上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第1及び第2の信号処理手段は、上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する
を具えることを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項3】
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する遅延手段を具え、
上記第3の信号処理手段は、上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第1及び第2の信号処理手段は、上記遅延手段から出力されるオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成し、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号を加算して出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項4】
上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号を減衰させる減衰手段を具える
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項5】
上記第3のインパルス応答は、音像を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項6】
任意の音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答をそれぞれオーディオ信号に畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成することにより、当該左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置に定位させる音像定位方法において、
上記第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、上記定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップ
を具えることを特徴とする音像定位方法。
【請求項7】
上記定位位置変更ステップは、入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位用オーディオ信号生成ステップを具える
ことを特徴とする請求項6に記載の音像定位装置。
【請求項8】
上記定位位置変更ステップは、入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する信号遅延ステップと、
上記信号遅延ステップで遅延された入力オーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位用オーディオ信号生成ステップと、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を加算して出力する加算ステップと
を具えることを特徴とする請求項6に記載の音像定位方法。
【請求項9】
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰ステップ
を具えることを特徴とする請求項6に記載の音像定位方法。
【請求項10】
上記第3のインパルス応答は、音源を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項6に記載の音像定位方法。
【請求項11】
情報処理装置に対して、任意の音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答をそれぞれオーディオ信号に畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成することにより、当該左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置に定位させる処理を実行させる音像定位プログラムにおいて、
上記第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、上記定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップ
を具えることを特徴とする音像定位プログラム。
【請求項12】
上記定位位置変更ステップは、入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位用オーディオ信号生成ステップを具える
ことを特徴とする請求項11に記載の音像定位プログラム。
【請求項13】
上記定位位置変更ステップは、入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する信号遅延ステップと、
上記信号遅延ステップで遅延された入力オーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位用オーディオ信号生成ステップと、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を加算して出力する加算ステップと
を具えることを特徴とする請求項11に記載の音像定位プログラム。
【請求項14】
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰ステップ
を具えることを特徴とする請求項11に記載の音像定位プログラム。
【請求項15】
上記第3のインパルス応答は、音源を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項11に記載の音像定位プログラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力オーディオ信号に対して基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答を畳み込んで左チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第1の信号処理手段と、
上記入力オーディオ信号に対して上記基準音源位置からリスナの右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答を畳み込んで右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する第2の信号処理手段と、
上記第1及び第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加することにより、上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を再生してなる音像を上記基準音源位置とは異なる位置に定位させる第3の信号処理手段と
を具えることを特徴とする音像定位装置。
【請求項2】
上記第3の信号処理手段は、上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第1及び第2の信号処理手段は、上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項3】
上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号を減衰させる減衰手段
を具えることを特徴とする請求項2に記載の音像定位装置。
【請求項4】
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する遅延手段を具え、
上記第3の信号処理手段は、上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力し、
上記第1及び第2の信号処理手段は、上記遅延手段から出力されるオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成し、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号を加算して出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項5】
上記第3の信号処理手段から出力されるオーディオ信号を減衰させる減衰手段を具える
ことを特徴とする請求項に記載の音像定位装置。
【請求項6】
上記第3のインパルス応答は、音像を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項1に記載の音像定位装置。
【請求項7】
基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加して、入力オーディオ信号に対して畳み込むことにより、再生される音像を上記基準音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップ
を具えることを特徴とする音像定位方法。
【請求項8】
上記定位位置変更ステップは、
入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力する変更処理ステップと
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位処理ステップと
を具えることを特徴とする請求項に記載の音像定位方法
【請求項9】
上記変更処理ステップと定位処理ステップとの間に、上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項8に記載の音像定位方法。
【請求項10】
上記定位位置変更ステップは、
入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力する変更処理ステップと
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する遅延処理ステップと、
上記遅延処理ステップで遅延された入力オーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位処理ステップと、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を加算して出力する加算処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項に記載の音像定位方法。
【請求項11】
上記変更処理ステップと加算処理ステップとの間に、上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項10に記載の音像定位方法。
【請求項12】
上記第3のインパルス応答は、音源を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項に記載の音像定位方法。
【請求項13】
情報処理装置に音像定位処理を実行させる音像定位プログラムにおいて、
基準音源位置からリスナの左耳までの経路に応じた第1のインパルス応答及び右耳までの経路に応じた第2のインパルス応答に対して第3のインパルス応答を付加して、入力オーディオ信号に対して畳み込むことにより、再生される音像を上記基準音源位置とは異なる位置に定位させる定位位置変更ステップ
を具えることを特徴とする音像定位プログラム。
【請求項14】
上記定位位置変更ステップは、
入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力する変更処理ステップと
上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位処理ステップと
を具えることを特徴とする請求項13に記載の音像定位プログラム。
【請求項15】
上記変更処理ステップと定位処理ステップとの間に、上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項14に記載の音像定位プログラム。
【請求項16】
上記定位位置変更ステップは、
入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答を畳み込んで出力する変更処理ステップと
上記入力オーディオ信号に対して上記第3のインパルス応答に相当する遅延を施して出力する遅延処理ステップと、
上記遅延処理ステップで遅延された入力オーディオ信号に対してそれぞれ第1及び第2のインパルス応答を畳み込んで左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号を生成する定位処理ステップと、
上記左チャンネル及び右チャンネルの定位用オーディオ信号それぞれに対して上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を加算して出力する加算処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項13に記載の音像定位プログラム。
【請求項17】
上記変更処理ステップと加算処理ステップとの間に、上記第3のインパルス応答が畳み込まれたオーディオ信号を減衰させる減衰処理ステップ
を具えることを特徴とする請求項16に記載の音像定位プログラム。
【請求項18】
上記第3のインパルス応答は、音源を上下方向に定位させるインパルス応答でなる
ことを特徴とする請求項13に記載の音像定位プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−14218(P2006−14218A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191952(P2004−191952)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】