説明

音場可視化装置

【課題】音圧に代表される音場の特徴を表す物理量の空間的分布を利用者が直感的に把握し易くすることのできる技術を提供する。
【解決手段】マイクロホンMCには位置センサ21が設けられており、この位置センサ21によってマイクロホンMCの位置が検出される。音場可視化装置1の制御部11は、予め配置された複数の基準位置のなかから、検出されたマイクロホンMCの位置との距離が予め定められた範囲内にある基準位置を特定し、特定した基準位置に、マイクロホンMCが収音した音の音圧に対応する画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場可視化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音圧に代表される音場の特徴を表す物理量の空間的分布を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、被検場内を任意に移動することが可能なセンサによって被検量を検出するとともに、そのセンサの座標をビデオカメラによって検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−265480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、音場の可視化技術は専門家が利用するものが多いため、従来の装置においては精度に重点が置かれているものが一般的である。一方、可視化技術は専門家でない者が音場を理解するための強力な補助となり得る。そこで、より直感的に、また簡便に音場の可視化を行うことができれば好適である。しかしながら、従来の装置では、専門家でない者が音場を直感的に把握することは困難であった。
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、音圧に代表される音場の特徴を表す物理量の空間的分布を利用者が直感的に把握し易くすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、予め定められた空間内で収音し、収音した音を表す音信号を出力する収音手段と、前記収音手段の前記空間内における位置を検出する位置検出手段と、前記収音手段から出力される音信号から音の特徴を表す物理量を検出する物理量検出手段と、前記空間内に予め配置された複数の基準位置のなかから、前記位置検出手段によって検出された位置との距離が予め定められた範囲内にある基準位置を特定する基準位置特定手段と、前記物理量検出手段によって検出された物理量に対応する画像を表示手段に表示させる表示制御手段であって、該画像を前記基準位置特定手段によって特定された基準位置に対応する表示位置に表示させる表示制御手段とを具備することを特徴とする音場可視化装置を提供する。
【0006】
本発明の好ましい態様において、前記物理量検出手段によって検出された物理量と前記基準位置特定手段によって特定された基準位置とを対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段の記憶内容を参照して、前記複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する物理量に対し予め定められた演算を行う演算手段とを具備し、前記表示制御手段は、前記演算手段の演算結果を表す画像を、該演算結果に対応する基準位置に対応する表示位置に表示させてもよい。
【0007】
本発明の更に好ましい態様において、前記収音手段は、収音の指向性を有する収音手段であり、前記位置検出手段は、前記収音手段の位置及び姿勢を検出し、前記表示制御手段は、前記位置検出手段によって検出された姿勢に基づいて、前記収音手段の収音方向を表す画像を前記表示手段に表示させてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、音場における物理量の分布を利用者が直感的に把握し易い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】音場可視化システムの構成の一例を概略的に示す図である。
【図2】音圧平均値データ記憶領域の記憶内容の一例を示す図である。
【図3】基準位置の配置態様の一例を示す図である。
【図4】音場可視化装置の機能的構成の一例を示す図である。
【図5】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図6】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図7】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図8】表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<A:構成>
図1は、この発明の一実施形態である音場可視化システム100の構成を示すブロック図である。この音場可視化システム100は、音場可視化装置1に、スピーカSPとマイクロホン装置2とがI/F16,17を介して接続されて構成される。音場可視化装置1は、例えばパーソナルコンピュータであり、音場の測定処理や測定結果の表示処理を行う。スピーカSPは、供給される音信号に応じて放音する放音手段である。ここでは、スピーカSPは、音場を測定するための予め定められたサイン波を放出する。マイクロホン装置2は、マイクロホンMCに位置センサ21が装着されて構成される。マイクロホンMCは、予め定められた空間内で収音し、収音した音を表す音信号を出力する収音手段である。なお、マイクロホンMCは、収音の指向性を有するものであってもよく、また、指向性を有しないものであってもよい。位置センサ21は、マイクロホンMCの空間内における位置を検出し、検出した位置を示す信号を出力する。利用者は、このマイクロホン装置2を把持して、音場を測定したい空間内を移動することによって空間内の音場の測定を行う。位置センサ21としては、例えば、音場可視化装置1が超音波パルスを送信する構成とし、この超音波パルスを位置センサ21が受信することによって位置を検出するようにしてもよい。また、例えば、マイクロホンMCにLEDマーカを設ける構成とし、CCDカメラ等の撮影手段によってマイクロホンに取り付けられたLEDマーカを輝度の最大値検索することによって検出するようにしてもよい。また、画像処理と超音波パルス法を併用してマイクロホンの位置検出を行うようにしてもよい。また、位置の検出の態様はこれに限らず、要は、マイクロホンMCの空間内の位置を検出するものであればどのようなものであってもよい。位置センサ21から出力された検出信号はI/F17を介して音場可視化装置1に供給される。
【0011】
次に、音場可視化装置1の構成について図1を参照しつつ説明する。図において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して音場可視化装置1の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部13は、液晶パネルを備え、制御部11による制御の下に各種の画像を表示する。操作部14は、音場可視化装置1の利用者による操作に応じた信号を出力する。音声処理部15は、マイクロホンMCからI/F16を介して供給される音信号をA/D変換によりデジタルデータに変換する。また、音声処理部15は、供給されるデジタルデータをD/A変換によりアナログ信号に変換してI/F16を介してスピーカSPに供給する。
【0012】
なお、この実施形態では、マイクロホンMCとスピーカSPとが音場可視化装置1に接続される場合について説明するが、マイクロホンMCとスピーカSPとが音場可視化装置1に内蔵される構成であっても良い。また、この実施形態では、マイクロホンMCから音声処理部15へ入力されるオーディオ信号及び音声処理部15からスピーカSPへ出力されるオーディオ信号がアナログオーディオ信号である場合について説明するが、デジタルオーディオデータを入出力するようにしても良い。このような場合には、音声処理部15にてA/D変換やD/A変換を行う必要はない。また、この実施形態では、表示部13と操作部14が音場可視化装置1に含まれている場合について説明するが、音場可視化装置1に外部入力端子や外部出力端子を設け、外部モニタや外部操作子を接続する構成としても良い。
【0013】
音場可視化装置1の記憶部12は、音圧データ記憶領域121と、音圧平均値データ記憶領域122とを備えている。音圧データ記憶領域121には、マイクロホンMCで収音された音の音圧と、その音が収音された位置に対応する基準位置とが対応付けて記憶される。ここでは、音圧データ記憶領域121には、マイクロホンMCで収音された音の音圧を表す音圧データと、その音が収音された位置に対応する基準位置を示すデータとが対応付けて時系列に記憶される。音圧平均値データ記憶領域122には、予め配置された複数の基準位置と各基準位置に対応する位置で測定された音圧の平均値(以下「音圧平均値」という)との対応関係が記憶される。図2は、音圧平均値データ記憶領域122の記憶内容の一例を示す図である。図2に示す例では、この記憶領域には、「基準位置」と「音圧平均値」との各項目が互いに関連付けられて記憶されている。これらの項目のうち、「基準位置」の項目には、予め配置された複数の基準位置のそれぞれを識別する情報が記憶される。ここで、基準位置の具体的な内容の一例について、図3を参照しつつ説明する。図3は、複数の基準位置P(x,y)(i,jは整数)の配置態様の一例を示す図である。図3に示す例では、空間を格子状に分割した際の各格子点の位置のそれぞれが基準位置として用いられる。より具体的には、図3に示す例では、図中のx軸方向について距離dxの間隔で空間が分割されるとともに、図中のy軸方向について距離dyの間隔で空間が分割され、各格子点の位置が基準位置として用いられる。すなわち、図3に示す例では、x軸方向については距離dxの間隔で、かつ、y軸方向については距離dyの間隔で、基準位置が配置されている。
【0014】
図2の説明に戻る。図2において、「音圧平均値」の項目には、各基準位置に対応する位置で検出された音圧の平均値を示す音圧平均値データが格納される。音場可視化装置1の制御部11は、後述する音圧平均値算出処理を行って、基準位置毎の音圧平均値を算出し、このテーブルを更新する。
【0015】
次に、音場可視化装置1の機能的構成について図面を参照しつつ説明する。図4は、音場可視化装置1の機能的構成の一例を示す図である。図において、音圧検出部111、位置検出部112、基準位置特定部113、平均値算出部114及び表示制御部115は、制御部11がROM又は記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することにより実現される。なお、図中の矢印はデータの流れを概略的に示すものである。
【0016】
音圧検出部111は、マイクロホンMCによって収音された音を表す音信号の音圧レベルを、予め定められた単位時間毎に検出する。ここでは、音圧検出部111は、音信号の振幅の二乗平均値を算出する。なお、音圧の算出態様はこれに限らず、他の算出方法を用いて音圧を算出するようにしてもよい。音圧検出部111は、算出した音圧レベルを平均値算出部114へ供給する。位置検出部112は、予め定められた単位時間毎に、位置センサ21から出力される信号に応じてマイクロホンMCの位置を検出する。
【0017】
基準位置特定部113は、予め定められた単位時間毎に、予め配置された複数の基準位置の中から、位置検出部112によって検出された位置との距離が予め定められた範囲内にある基準位置を1又は複数特定する。ここで、基準位置特定部113が行う位置変換処理について、図3を参照しつつ説明する。ここでは、基準位置特定部113は、位置検出部112によって検出された位置との距離が最短である基準位置を特定する。具体的には、図3において、基準位置特定部113は、検出された位置が領域A1内の位置である場合には、基準位置P(x−1,y)の位置に変換する。言い換えると、基準位置特定部113は、位置検出部112によって検出された位置からx軸方向における距離が距離dx/2以内であり、かつy軸方向における距離が距離dy/2以内に位置する基準位置を特定する。基準位置特定部113は、特定した基準位置と音圧検出部111によって検出された音圧とを対応付けて音圧データ記憶領域121に時系列に記憶する。
【0018】
平均値算出部114は、音圧データ記憶領域121に記憶された音圧データと基準位置とに基づいて、複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する音圧に対し予め定められた演算を行う。ここでは、平均値算出部114は、音圧データ記憶領域121に記憶された音圧データと基準位置とに基づいて、複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する音圧の平均値を算出する。平均値算出部114は、算出した基準位置毎の平均値を用いて音圧平均値データ記憶領域122の記憶内容を逐次更新する。
【0019】
表示制御部115は、表示部13を制御して、音圧検出部111によって検出された音圧に対応する画像を表示部13に表示させる。ここでは、表示制御部115は、基準位置特定部113によって特定された基準位置に対応する表示位置に、音圧検出部111によって検出された音圧に対応する画像(以下「音圧画像」という)を表示させる。より具体的には、ここでは、表示制御部115は、平均値算出部114によって算出された平均値(すなわち音圧平均値データ記憶領域122に記憶された平均値)を表す画像を、その平均値に対応する基準位置に対応する表示位置に表示させる。ここで、表示制御部115が行う表示制御処理の具体的な内容の一例について図面を参照しつつ説明する。図5は、表示部13に表示される画面の一例を示す図である。図5に示す例では、基準位置P(x,y)のそれぞれの表示位置に、各基準位置P(x,y)に対応する音圧平均値を表す円画像G1,G2,…が表示される。図5に示す例では、円画像の大きさによって音圧の大きさが表されている。表示制御部115は、各基準位置に対応する音圧平均値が大きいほど円画像の大きさが大きくなるように、各基準位置に対応する表示位置に円画像を表示する。このとき、表示制御部115は、複数の基準位置のうち、対応する位置で音圧が検出されていない基準位置については円画像を表示しない。
【0020】
<動作>
次に、本実施形態の動作について説明する。音場可視化装置1の利用者は、音場可視化装置1の操作部14を用いて音場可視化処理を開始するための操作を行う。操作部14は、利用者の操作内容に応じた操作信号を出力し、制御部11は、操作部14から出力される信号に応じて音場測定処理を開始する。音場測定処理が開示されると、利用者は、マイクロホン装置2を把持し、音場を測定したい空間内を移動する。以下の説明では、説明を容易にするため、利用者がマイクロホン装置2を2次元平面上で移動させる場合の動作について説明する。なお、これに限らず、利用者がマイクロホン装置2を3次元空間内で移動させるようにしてもよい。
【0021】
利用者がマイクロホン装置2を把持して空間内を移動することによって、マイクロホンMCが空間内を移動する。マイクロホンMCに装着された位置センサ21は、マイクロホンMCの空間内の位置を検出し、検出した位置を表す信号を音場可視化装置1へ出力する。また、マイクロホンMCは、空間内で収音し、収音した音を表す音信号を音場可視化装置1へ出力する。音場可視化装置1の制御部11は、マイクロホンMCから出力される音信号の音圧を、予め定められた単位時間毎に検出する。また、制御部11は、位置センサ21から出力される信号に基づいて、マイクロホンMCの位置を表す位置情報を生成する。
【0022】
制御部11は、予め定められた単位時間(例えば、30msec)毎に、マイクロホンMCの位置を検出し、検出した位置に近接する基準位置を特定する。ここでは、制御部11は、図3に示すように、検出した位置との距離が最も小さい基準位置を特定する。制御部11は、特定した基準位置と検出された音圧とを対応付けて音圧データ記憶領域121に時系列に記憶する。
【0023】
また、制御部11は、予め定められた単位時間(例えば、30msec)毎に、音圧データ記憶領域121に記憶された対応関係に従って、複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する位置で検出された音圧の平均値を算出し、算出結果に応じて音圧平均値データ記憶領域122の記憶内容を更新する。この処理が実行されることによって、音圧平均値データ記憶領域122に記憶された基準位置毎の音圧平均値は、予め定められた単位時間毎に逐次更新される。
【0024】
制御部11は、音圧平均値データ記憶領域122を参照して、基準位置毎の音圧平均値を表す画像を表示部13に表示する。図5に示すように、複数の基準位置のそれぞれについて、その基準位置に対応する音圧平均値を表す円画像が表示される。制御部11は、音圧検出処理、位置検出処理、基準位置特定処理及び表示制御処理を、予め定められた単位時間毎に繰り返し実行し、表示部13の表示内容を逐次更新する。すなわち、図5に例示される画面は、所定の単位時間毎に逐次更新される。
【0025】
ところで、音場の可視化処理を行う際に、検出された音圧をその音圧が検出された全ての位置で表示しようとすると、表示が煩雑になっていまい、利用者が音圧の分布を把握し難い。これに対し本実施形態によれば、複数の基準位置でのみ音圧を表示するから、表示を見易くすることができる。利用者は、表示部13に表示される画面を視認することによって、自身が測定したい音場における音圧の分布を直感的に把握することができる。このように、本実施形態によれば、より直感的に、また簡便に音場の可視化を行うことができる。また、本実施形態によれば、予めマイクロホンの位置(測定位置)を定めて順次測定していくのではなく、利用者が表示内容を確認しながら任意にマイクの位置をリアルタイムに変更することができる。
【0026】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、音場可視化装置1の制御部11が、マイクロホンMCから出力される音信号から音圧を検出し、検出した音圧に対応する画像を表示部13に表示するようにしたが、制御部11が検出する物理量は音圧に限らず、例えば、粒子速度や、音響インテンシティ、音響インピーダンスなどの量を物理量として検出するようにしてもよい。要は、制御部11が、マイクロホンMCから出力される音信号から音の特徴を表す物理量を検出し、検出した物理量に対応する画像を表示部13に表示すればよい。
【0027】
(2)上述の実施形態において、制御部11が、図5の鎖線Rで示すような、マイクロホンMCの移動の軌跡を表す画像を表示部13に表示するようにしてもよい。この場合は、制御部11が、検出されたマイクロホンMCの位置を記憶部12の所定の記憶領域に時系列に記憶する構成とし、制御部11が、記憶部12を参照して、マイクロホンMCの移動の軌跡を音圧画像(円画像)と共に表示部13に表示するようにすればよい。
【0028】
(3)上述の実施形態において、位置センサ21が、マイクロホンMCの位置に加えてマイクロホンMCの姿勢を検出するようにしてもよい。この場合は、位置センサ21が、マイクロホンMCの位置及び姿勢を検出し、検出結果を示す信号を音場可視化装置1に出力する。音場可視化装置1の制御部11は、位置センサ21から出力される信号に応じてマイクロホンMCの位置及び姿勢を特定し、各基準位置のそれぞれについて、各基準位置に対応する位置で検出された音圧及び姿勢を表す画像を表示部13に表示するようにしてもよい。この場合、例えば、制御部11が、マイクロホンMCの姿勢を表す矢印を表示するようにしてもよい。ここで、マイクロホンMCの姿勢とは、例えば、直交座標系x,y,zで定義される姿勢である。この場合、z軸の正の向きをマイクロホンMCの長手方向の向きにとるようにしてもよい。
【0029】
また、位置センサ21がマイクロホンMCの姿勢を検出する場合において、制御部11が、検出された姿勢に基づいて、マイクロホンMCの収音方向(マイクロホンMCの物理的な向き、方向)を表す画像を表示部13に表示するようにしてもよい。この場合は、マイクロホンMCとして、収音の指向性を有する収音手段を用いる構成とし、制御部11が、検出された姿勢に基づいてマイクロホンMCの収音方向(又はマイクロホンMCの収音の指向性の基準となる軸の向き)を特定し、特定した収音方向(又は特定した軸の向き)を表す画像を表示部13に表示するようにしてもよい。この場合、指向性を有するマイクロホンMCとしては、例えば、複数のマイクロホンで構成されたマイクアレイを用いるようにしてもよい。図6は、この態様において表示部13に表示される画面の一例を示す図である。図示のように、制御部11は、複数の基準位置のそれぞれに、各基準位置に対応する音圧に対応する円画像G1,G2,…を表示するとともに、各基準位置における収音方向(又は指向性の軸の向き)を表す矢印画像G11,G12,…を表示する。この場合、制御部11は、各基準位置において検出された収音方向(又は指向性の軸の向き)が複数方向ある場合には、それらの方向を表すベクトルを合成したものを表示するようにしてもよく、また、複数方向のうちの検出頻度が最も高い方向を表す矢印を表示するようにしてもよい。利用者は、図6に例示する画面を視認することによって、各基準位置における音圧とその収音方向(又は指向性の軸の向き)とを直感的に把握することができる。
【0030】
また、制御部11が各基準位置の音圧と収音方向(又は指向性の軸の向き)を表示する場合の他の表示態様の一例として、例えば、図7に示すように、音圧と収音方向(又は指向性の軸の向き)を表すベクトルを表示するようにしてもよい。図7に示す例では、制御部11は、各基準位置の音圧(音圧の平均値)をその長さで表すとともに、収音方向(又は指向性の軸の向き)を矢印の方向で表すベクトル画像G21,G22,…を、基準位置毎に表示する。この場合も、上述したように、制御部11は、各基準位置において検出された収音方向(又は指向性の軸の向き)が複数方向ある場合には、複数のベクトルを合成したものを表示するようにしてもよく、また、複数の方向のうちの検出頻度が最も高い方向を表す矢印を表示するようにしてもよい。利用者は、図7に例示する画面を視認することによって、各基準位置における音圧とその収音方向(又は指向性の軸の向き)とを直感的に把握することができる。
【0031】
(4)上述の実施形態において、制御部11が、予め定められた時間内に検出された音圧に対応する画像とそれ以前に検出された音圧に対応する画像との表示態様を異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部11が、予め定められた時間内(例えば、20sec以内)に検出された位置に対応する基準位置についてのみ音圧画像の表示を行い、それ以前(例えば、20sec以上前)に検出された位置に対応する基準位置については音圧の表示を行わないようにしてもよい。この場合は、マイクロホンMCの移動に伴って、或る一定時間内にマイクロホンMCが検出された位置に対応する基準位置についてのみ音圧画像が表示され、或る一定時間より前にマイクロホンMCが検出された位置に対応する基準位置については音圧画像が表示されない。すなわち、最近の時刻に対応する音圧画像のみが表示され、古い音圧画像が逐次表示から消えていくようになる。このようにすることで、或る一定時間内に検出された位置に対応する基準位置での音圧画像のみが表示されるため、利用者がリアルタイムで測定している音圧を直感的に把握し易い。
【0032】
また、制御部11が、音圧が検出されてから経過した時間長に応じて音圧画像の表示態様を異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部11が、音圧が検出されてから経過した時間が長いほど音圧画像の表示が薄くなるようにしてもよい。より具体的には、例えば、制御部11が、複数の基準位置のそれぞれについて、マイクロホンMCの位置との距離が予め定められた範囲内である基準位置については上述の実施形態と同様の音圧画像の表示処理を行う一方、それ以外の基準位置については、予め定められた単位時間毎に表示濃度q(初期値は1)に係数k(k<1)を乗算し、この表示濃度qの値に応じた濃度で音圧画像を表示するようにしてもよい。この場合は、音圧が検出されてからの経過時間が長いほど音圧画像の表示が薄くなっていくから、古い検出結果が残像として表示される。このようにすることで、現在のマイクロホンMCの位置と測定結果とを関連つけて、利用者がリアルタイムでの測定結果を直感的に把握し易い。要するに、今のマイクロホンMCの位置の音圧が最も濃く表示されるので、把持しているマイクロホンMCの現在位置と表示内容との関連付けが直感的に理解できる。
【0033】
(5)上述の実施形態では、制御部11が、基準位置毎に音圧平均値を算出し、算出した音圧平均値を表す画像を表示するようにしたが、制御部11が行う基準位置毎の演算の態様はこれに限らず、例えば、制御部11が、基準位置毎に音圧の二乗平均値を算出するようにしてもよく、また、例えば、制御部11が、基準位置毎に検出頻度の最も高い音圧(又は音圧範囲)を特定するようにしてもよい。要は、制御部11が、音圧データ記憶領域121の記憶内容を参照して、複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する音圧に対し予め定められた演算を行い、演算結果を表す画像を、その演算結果に対応する基準位置に対応する表示位置に表示させるようにすればよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、制御部11が、予め定められた単位時間毎に各基準位置の音圧の平均値を算出するという演算を行うようにしたが、平均値を算出する演算を行わないようにしてもよい。この場合は、制御部11が、音信号の音圧を検出する処理と、マイクロホンMCの位置を検出して検出した位置から予め定められた範囲内にある基準位置を特定する処理とを予め定められた単位時間毎に実行し、検出された音圧(検出された音圧そのもの)を表す画像を特定された基準位置に逐次表示させるようにしてもよい。
すなわち、制御部11は、各基準位置の音圧平均値を表す画像(各基準位置における演算結果を表す画像)を表示するようにしてもよく、また、例えば、検出された音圧そのものを表す画像を表示するようにしてもよく、要は、制御部11が、マイクロホンによって収音された音の音圧に対応する画像を表示するものであればよい。
【0035】
(6)上述の実施形態では、説明の便宜上、マイクロホン装置2が2次元平面上を移動する場合の動作について説明したが、これに限らず、マイクロホン装置2が、3次元空間内を移動してもよい。この場合は、上述した図5に例示した画像に代えて、3次元空間とその空間内に配置された基準位置とを表示するとともに、各基準位置における音圧画像や収音方向を表す画像を3次元空間内で立体的に表示するようにすればよい。
【0036】
(7)上述の実施形態では、音場可視化装置1の制御部11は、位置センサ21によって検出されたマイクロホンMCの位置との距離が最短である基準位置を特定した。基準位置の特定の態様はこれに限らず、要は、制御部11が、位置センサ21によって検出された位置に対して予め定められた範囲内に位置する1又は複数の基準位置を特定すればよい。具体的には、例えば、図3に示す例において、制御部11が、検出された位置に対するx軸方向の距離がdx以内であり、かつ、y軸方向の距離がdy以内である基準位置を特定するようにしてもよい。この場合は、検出される位置に対して複数の基準位置が特定される。
【0037】
(8)上述の実施形態では、スピーカSPから予め定められたサイン波を放出させるようにしたが、スピーカSPから放音させる音はこれに限らず、例えば、ホワイトノイズを放音するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、スピーカSPを用いてテスト用の音波を放出するようにしたが、これに限らず、スピーカSPからテスト用の音波を放出しないようにしてもよい。例えば、OA機器や家電機器などのように自ら音を発する音源を有する場合には、これらの機器から発される異常音を検出するために、音場可視化装置1を用いて音場を表示することによって、スピーカSPからテスト用の音波を放出することなく、OA機器や家電機器において異常音が発生している部品や部材を特定することができる。
【0038】
(9)上述の実施形態では、制御部11が、検出された音圧が大きいほど円画像の大きさが大きくなるように、検出された音圧に応じた円画像を表示部13に表示させるようにした。音圧の表示の態様はこれに限らず、例えば、音圧の大小を色の濃淡や色の違い(色相)で表すようにしてもよい。要は、制御部11が、検出された音圧を表す画像を表示部13に表示するようにすればよい。
【0039】
(10)上述の実施形態では、複数の基準位置は、空間を格子状に分割した際の各格子点のそれぞれの位置であったが、基準位置の配置の態様はこれに限らず、例えば、空間をハニカム状に分割した際の各空間の中心点を基準位置とするようにしてもよい。要は、複数の基準点は、空間内に予め定められた配置態様で配置されたものであればどのようなものであってもよい。
【0040】
(11)上述の実施形態では、音場可視化装置1とマイクロホン装置2とは、オーディオケーブル等によって接続されていたが、これに限らず、音場可視化装置1とマイクロホン装置2とが、インターネットやLAN(Local Area Network)などの通信ネットワークで接続されてもよい。
また、上述の実施形態では、音場可視化装置1とマイクロホン装置2とが別体として構成されていたが、これに限らず、音場可視化装置1とマイクロホン装置2とが一体として構成されていてもよい。この場合は、利用者は、一体として構成された音場可視化装置を把持しつつ音場の測定処理を行うようにすればよい。
【0041】
(12)上述の実施形態では、制御部11が、予め定められた単位時間(以下「単位時間t」とする)毎に音圧を検出したが、これに加えて、制御部11が、予め定められた単位時間T(T>t)毎に、検出された音圧の代表値を特定し、特定した代表値を用いて音圧画像の表示を行うようにしてもよい。より具体的には、例えば、図8に例示するように、x軸,y軸に加えて、時間軸tを用いて音圧画像と移動軌跡を表す画像とを立体的に表示するようにしてもよい。代表値の算出の態様としては、例えば、制御部11が、予め定められた単位時間T毎に、検出された音圧の平均値を算出するようにしてもよく、また、例えば、検出された音圧のうちの検出頻度が最も高い値を特定するようにしてもよい。
【0042】
(13)上述の実施形態では、音場可視化装置1の制御部11がROM又は記憶部12に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、図4に示す各部がソフトウェアとして実現される場合について説明したが、これに限らず、図4に示した音場可視化装置1の各部がハードウェアとして構成されていてもよい。また、上述の実施形態において音場可視化装置1の制御部11によって実行されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由で音場可視化装置1にダウンロードさせることも可能である。
【0043】
(14)上述の実施形態において、制御部11が、基準位置毎に過去のデータを集計して、平均処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、利用者がマイクロホンMCを左右に振ると、その音圧が表示され、このとき、基準位置毎に、過去のデータを集計(平均)して表示する。このようにすることで、音圧が高いところ(円画像が大きなところ、赤いところなど)が次第に浮き上がって表示されてくる。エンジンやモーターなど変動する騒音源の場合には、音圧の大きな箇所、あるいは特定の周波数の音などを速く探索することが可能となる。
【0044】
従来の装置においては、基準位置毎に変動騒音がある一定値に収束するまで、ある程度の時間を要した。更に、これを所定点数実行するので、測定に時間を要した。それに対し、この態様によれば、まず概略音圧の大きそうな箇所を手で大きくゆっくり振りながら走査し、当たりがついたら、左右に細かく往復させて振りながら、音圧の高いポイントを探り当てることができる。利用者は、表示を見ながら、マイクロホンを振ることだけに集中すれば良い。このように、この態様によれば、リアルタイムで直感的に探査することが可能である。この場合、制御部11は、音圧の高いポイントは記憶しておいて、あとから出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…音場可視化装置、2…マイクロホン装置、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、15…音声処理部、21…位置検出部、100…音場可視化システム、SP…スピーカ、MC…マイクロホン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた空間内で収音し、収音した音を表す音信号を出力する収音手段と、
前記収音手段の前記空間内における位置を検出する位置検出手段と、
前記収音手段から出力される音信号から音の特徴を表す物理量を検出する物理量検出手段と、
前記空間内に予め配置された複数の基準位置のなかから、前記位置検出手段によって検出された位置との距離が予め定められた範囲内にある基準位置を特定する基準位置特定手段と、
前記物理量検出手段によって検出された物理量に対応する画像を表示手段に表示させる表示制御手段であって、該画像を前記基準位置特定手段によって特定された基準位置に対応する表示位置に表示させる表示制御手段と
を具備することを特徴とする音場可視化装置。
【請求項2】
前記物理量検出手段によって検出された物理量と前記基準位置特定手段によって特定された基準位置とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の記憶内容を参照して、前記複数の基準位置のそれぞれについて各基準位置に対応する物理量に対し予め定められた演算を行う演算手段と
を具備し、
前記表示制御手段は、前記演算手段の演算結果を表す画像を、該演算結果に対応する基準位置に対応する表示位置に表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音場可視化装置。
【請求項3】
前記収音手段は、収音の指向性を有する収音手段であり、
前記位置検出手段は、前記収音手段の位置及び姿勢を検出し、
前記表示制御手段は、前記位置検出手段によって検出された姿勢に基づいて、前記収音手段の収音方向を表す画像を前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の音場可視化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210277(P2010−210277A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53909(P2009−53909)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】