説明

音声データ処理装置および音声データ処理方法

【課題】音声処理における負荷を低減して安価なシステム構築を容易する。
【解決手段】音声データ処理装置は、著作権を保護して再生すべき音声データを選択する暗号解除部16Aと、専用ケーブルで接続されるAVアンプ20に対して暗号解除部16Aにより選択された音声データをビットストリーム出力するHDMI部と、音声データのビットストリーム出力に先立ってAVアンプ20から仕様識別情報を取得し、この仕様識別情報からAVアンプのウォータマーク検出機能を確認するシステム制御部11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、著作権保持者を特定可能なウォータマークを含む音声データを再生用に処理する音声データ処理装置および音声データ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、DVDのような大容量光ディスクの普及に伴って、著作権保護の重要性が増している。従来、光ディスクに記録された著作権保護情報に基づいてコンテンツの転送を制限する技術が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
現在、市販のHD_DVDのコンテンツのうち、大容量光ディスク機器用の著作権保護規格(AACS)によるコンテンツ保護対象のものについて、著作権保持者を特定可能な電子透かしである「ウォータマーク」の適用が検討されている。これに伴い、ウォータマークの検出および検出結果に基づく再生制御が可能なDVDプレーヤの開発が行われている。尚、ウォータマークの検出は、音声データをPCMデコードにより伸張した結果に対して行う必要がある。
【0004】
また、現行のDVDプレーヤの多くは、例えばHigh-definition Multimedia Interface (HDMI)のようなデジタル音声出力にも対応している。将来的には、このHDMIによる音声出力だけに対応し、HDMI端子以外の音声出力端子を備えないDVDプレーヤが登場することが予想される。
【特許文献1】特開平2005−92943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HDMIによるデジタル音声出力に対応したDVDプレーヤで上述のウォータマークを検出する場合、音声データを圧縮状態のままHDMI出力しても、ウォータマークを検出するために音声データのデコードを行う必要がある。また、仮にウォータマークの検出機能を持つAVアンプが登場しても、実際にDVDプレーヤに接続されたAVアンプ等の外部機器がウォータマークの検出機能を持つかどうかわからないため、やはりDVDプレーヤ側で音声データのデコードを行う必要がある。この場合、音声処理における負荷の低減を期待できないため、これが安価なシステム構築を困難にする。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、音声処理における負荷を低減して安価なシステム構築を容易する音声データ再生装置および音声データ再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1観点によれば、著作権を保護して再生すべき音声データを選択する選択部と、専用ケーブルで接続される外部機器に対して選択部により選択された音声データをビットストリーム出力するデジタル出力インタフェース部と、音声データのビットストリーム出力に先立って外部機器から仕様識別情報を取得し、この仕様識別情報から外部機器のウォータマーク検出機能を確認する制御部とを備える音声データ処理装置が提供される。
【0008】
本発明の第2観点によれば、著作権を保護して再生すべき音声データを選択し、専用ケーブルでデジタル出力インタフェース部に接続される外部機器に対してこの選択された音声データをデジタル出力インタフェース部からビットストリーム出力する音声データ処理方法であって、音声データのビットストリーム出力に先立って外部機器から仕様識別情報を取得し、この仕様識別情報から外部機器のウォータマーク検出機能を確認する音声データ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
これら音声データ再生装置および音声データ再生方法では、音声データのビットストリーム出力に先立って外部機器から仕様識別情報が取得され、この仕様識別情報から外部機器のウォータマーク検出機能が確認される。従って、デジタル音声出力に際してウォータマークの検出に必要なデコードを外部機器に任せることにより音声処理における負荷を低減して安価なシステム構築を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るDVDプレーヤについて添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1はこのDVDプレーヤ10の構成を概略的に示す。DVDプレーヤ10はシステム制御部11、メモリ部12、DVDユニット13、分離部14、映像処理部15、音声処理部16、およびHDMI部17を備える。システム制御部11はこれらコンポーネント12〜17に接続され、DVDプレーヤ10全体の動作に必要な制御をこれらコンポーネント12〜17に対して行う。このシステム制御部11には、例えば様々な処理を行うCPU、CPUの制御プログラムや初期データを保持するROM、CPUの入出力データを一時的に保存するRAM、および様々な設定用入力操作を行うユーザインタフェースが設けられる。メモリ部12はDVDユニット13に対するバッファメモリである。DVDユニット13はDVDまたはHD_DVDに記録されたコンテンツをメモリ部12に読み出す。システム制御部11はこのメモリ部12内のコンテンツを分離部14に供給する。分離部14はこのコンテンツを映像データと音声データとに分離する。市販のDVDやHD_DVDに対する分離結果は、ウォータマークを付加して音声をDTS(登録商標),ドルビーデジタル(登録商標),MPEGオーディオ等の圧縮方式で圧縮し、さらに著作権保護規格(AACS)による保護対象として暗号化した音声データである。他方、ユーザが製作したDVDやHD_DVDに対する分離結果では、音声データが圧縮されていなかったり、著作権保護規格(AACS)による保護対象として暗号化されていなかったりする。映像処理部15は分離部14から出力される映像データをディスプレイに表示可能な形式に変換する処理を行う。音声処理部16はスピーカ出力を行う外部機器である例えばAVアンプ20の入力として適した形式に分離部から出力される音声データを変換する処理を行う。
【0012】
音声処理部16は音声データの暗号を解除する暗号解除部16A、暗号解除部16Aから出力される音声データをデコードするデコード部16B、デコード部16Bから出力された音声データからウォータマークを検出するウォータマーク検出部16Cを含む。暗号化されていない音声データや暗号解除に成功した音声データは暗号解除部16Aからデコード部16Bに出力される。この暗号解除部16Aでは、暗号解除に成功した音声データが著作権を保護して再生すべき音声データとして選択されたことになる。
【0013】
暗号解除部16Aから得られた音声データが圧縮されており、AVアンプ20が同圧縮方式およびウォータマーク検出に対応しており、且つ、ユーザからのビットストリーム出力が要求された場合、暗号解除部16Aの出力がHDMI部17に入力される。この場合、DVDプレーヤ10でのウォータマーク検出は実施しない。
【0014】
AVアンプ20が同圧縮方式に対応しているが、ウォータマーク検出に対応していない場合は、デコード部16Bにてデコード処理を行い、その結果の音声データであるPCMデータをウォータマーク検出部16Cに出力する。ウォータマーク検出部16Cでは、ウォータマーク検出を行い、不正なウォータマークが検出された場合は再生を停止し、そうでなければ、デコード部16Bの処理結果(PCMデータ)がHDMI部17に入力され、AVアンプ20に出力される。
【0015】
また、システム制御部11は暗号解除部16A、デコード部16B、およびウォータマーク検出部16Cの処理を制御可能である。暗号解除部16Aからの音声データおよびデコード部16Bからの音声データはHDMI部17によりそれぞれビットストリーム出力およびPCM出力としてAVアンプ20に出力される。HDMI部17は外部機器(すなわち、AVアンプ20)が専用ケーブル(すなわち、HDMIケーブル)でHDMI部17に接続された状態になったことをシステム制御部11に通知する。システム制御部11はこれによりAVアンプ20の接続を認識し、音声データのビットストリーム出力に先立ってAVアンプ20から仕様識別情報(EDID)を取得し、この仕様識別情報から少なくともAVアンプ20のウォータマーク検出機能を確認する。EDIDの取得において、HDMI部17はHDMIケーブルに設けられたDDC(Display Data Channel)プロトコル用のDDC線を介してEDID要求をAVアンプ20へ送信し、この要求に対してAVアンプ20からDDC線を介して返信されるEDIDを受信するように制御される。このEDIDは、ウォータマーク検出機能や適応可能な音声データの圧縮方式を確認できるようなフィールド構成にある。
【0016】
図2はDVDプレーヤ10とウォータマーク検出機能を持つAVアンプ20との間で行われる通信内容を示す。AVアンプ20がHDMIケーブルで接続されると、DVDプレーヤ10がEDIDをAVアンプ20へ要求し、この要求に対してAVアンプ20から返信されるEDIDを取得し、このEDIDからAVアンプ20のウォータマーク検出機能の有無を確認する。ウォータマーク検出機能ありが確認された後に、ユーザからビットストリーム出力を選択した音声データの再生要求があると、音声データがDVDプレーヤ10からAVアンプ20へビットストリーム出力される。これに伴い、AVアンプ20はDVDプレーヤ10からビットストリーム出力された音声データを必要に応じてデコードしてウォータマーク検出を行う。ウォータマークの検出結果は、HDMIケーブルに設けられたCEC(Consumer Electronics Control)プロトコル用のCEC線を介してAVアンプ20からDVDプレーヤ10へ送信される。DVDプレーヤ10では、HDMI部17がこのウォータマークの検出結果を受信してシステム制御部11に通知する。検出ウォータマークが不正であるとシステム制御部11で判定されると、この時点でHDMI部17からのビットストリーム出力が停止される。尚、AVアンプ20がAACSによるウォータマーク適用規則も認識するタイプであれば、検出ウォータマークが不正であるとAVアンプ20で判定された時点でデコード結果の音声出力が停止される。
【0017】
図3はDVDプレーヤ10とウォータマーク検出機能を持たないAVアンプ20との間で行われる通信内容を示す。AVアンプ20がHDMIケーブルで接続されると、DVDプレーヤ10がEDIDをAVアンプ20へ要求し、この要求に対してAVアンプ20から返信されるEDIDを取得し、このEDIDからAVアンプ20のウォータマーク検出機能の有無を確認する。ウォータマーク検出機能無しが確認された後に、ユーザから音声データの再生要求があると、DVDプレーヤ10からAVアンプ20へのビットストリーム出力がPCM出力に変更される。これに伴い、DVDプレーヤ10は音声データを必要に応じてデコード部16Bでデコードしてウォータマーク検出部16Cでウォータマーク検出を行う。このウォータマークの検出結果はウォータマーク検出部16Cからシステム制御部11に通知される。検出ウォータマークが不正であるとシステム制御部11で判定されると、この時点でデコード部16BからのPCM出力が停止される。
【0018】
図4はシステム制御部11により行われる音声出力処理を示す。この音声出力処理がAVアンプ20の接続に伴って開始されると、システム制御部11がステップS1でEDIDをHDMI部17からAVアンプ20に要求する。ステップS2では、このEDIDを取得したか繰返しチェックされる。EDIDの取得後、ステップS3でウォータマークの検出機能があるかチェックされる。このウォータマークの検出機能があることが確認されれば、ステップS4でビットストリーム出力がユーザによって選択されているかチェックされる。このビットストリーム出力が選択されていれば、ステップS5でデコード部16Bがユーザからの再生要求に対して休止されて、音声データがHDMI部17を経由してAVアンプ20へビットストリーム出力される。これに続き、ステップS6でAVアンプ20からのウォータマーク検出結果があるかチェックされる。ウォータマーク検出結果があれば、適正なウォータマークかステップS7でチェックされる。適正なウォータマークでなければ、ステップS8でビットストリーム出力が停止され、音声出力処理が終了する。
【0019】
また、ステップS6でウォータマーク検出結果がないことが確認されるか、あるいはステップS7で適正なウォータマークであることが確認されると、ステップS9で音声データの出力が完了したかチェックされる。音声データの出力が完了していなければ、ステップS5が音声データの出力を継続するために再度実行される。他方、音声データの出力が完了すると、音声出力処理が終了する。
【0020】
さらに、上述のステップS3でウォータマークの検出機能が無いことが確認された場合、あるいはステップS4でビットストリーム出力が選択されていないことが確認された場合には、ステップS10で音声データのビットストリーム出力がユーザから再生要求に対して禁止される。これに続き、ステップS11で音声データがデコード部16Bのデコード結果としてAVアンプ20にPCM出力され、ステップS12でウォータマーク検出部16Cからのウォータマーク検出結果があるかチェックされる。ウォータマーク検出結果があれば、適正なウォータマークかステップS13でチェックされる。適正なウォータマークでなければ、ステップS14でPCM出力が停止され、音声出力処理が終了する。
【0021】
また、ステップS12でウォータマーク検出結果がないことが確認されるか、あるいはステップS13で適正なウォータマークであることが確認されると、ステップS15で音声データの出力が完了したかチェックされる。音声データの出力が完了していなければ、ステップS11が音声データの出力を継続するために再度実行される。他方、音声データの出力が完了すると、音声出力処理が終了する。
【0022】
本実施形態では、DVDプレーヤがアナログ音声出力およびデジタル音声出力の同時出力を行わない構成であり、音声データのビットストリーム出力に先立って外部機器、すなわちAVアンプ20から仕様識別情報(EDID)が取得され、この仕様識別情報から外部機器のウォータマーク検出機能が確認される。従って、このDVDプレーヤでデジタル音声出力の際にウォータマークの検出に必要なデコードを外部機器に任せることができるため、音声処理における負荷を低減して安価なシステム構築を容易にできる。
【0023】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々に変形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るDVDプレーヤを概略的に示す図である。
【図2】図1に示すDVDプレーヤとウォータマーク検出機能を持つAVアンプとの間で行われる通信内容を示す図である。
【図3】図1に示すDVDプレーヤとウォータマーク検出機能を持たないAVアンプとの間で行われる通信内容を示す図である。
【図4】図1に示すシステム制御部により行われる音声出力処理を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10…DVDプレーヤ、20…AVアンプ、11…システム制御部、12…メモリ部、13…DVDユニット、14…分離部、16…音声処理部、16A…暗号解除部、16B…デコード部、16C…ウォータマーク検出部、17…HDMI部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
著作権を保護して再生すべき音声データを選択する選択部と、専用ケーブルで接続される外部機器に対して前記選択部により選択された音声データをビットストリーム出力するデジタル出力インタフェース部と、前記音声データのビットストリーム出力に先立って前記外部機器から仕様識別情報を取得し、この仕様識別情報から前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認する制御部とを備えることを特徴とする音声データ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は前記外部機器によるウォータマークの検出結果を取得し、この検出結果から前記ウォータマークが不正であると判定した時点で前記音声データの出力を停止することを特徴とする請求項1に記載の音声データ処理装置。
【請求項3】
前記選択部により選択された音声データをデコードするデコード部および前記デコード部のデコード結果からウォータマークを検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認した場合に前記デコード部を休止させることを特徴とする請求項1に記載の音声データ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認できない場合に前記検出部によるウォータマークの検出結果を取得し、この検出結果から前記ウォータマークが不正であると判定した時点で前記音声データの出力を停止することを特徴とする請求項3に記載の音声データ処理装置。
【請求項5】
前記選択部、前記検出部、前記デジタル出力インタフェース部および前記制御部はDVDプレーヤに組み込まれることを特徴とする請求項3に記載の音声データ処理装置。
【請求項6】
著作権を保護して再生すべき音声データを選択し、専用ケーブルでデジタル出力インタフェース部に接続される外部機器に対して前記選択された音声データを前記デジタル出力インタフェース部からビットストリーム出力する音声データ処理方法であって、前記音声データのビットストリーム出力に先立って前記外部機器から仕様識別情報を取得し、この仕様識別情報から前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認することを特徴とする音声データ処理方法。
【請求項7】
前記外部機器によるウォータマークの検出結果を取得し、この検出結果から前記ウォータマークが不正であると判定した時点で前記音声データの出力を停止することを特徴とする請求項6に記載の音声データ処理方法。
【請求項8】
選択された音声データをデコードするデコード部および前記デコード部のデコード結果からウォータマークを検出する検出部を設け、前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認した場合に前記デコード部を休止させることを特徴とする請求項6に記載の音声データ処理方法。
【請求項9】
前記外部機器のウォータマーク検出機能を確認できない場合に前記検出部によるウォータマークの検出結果を取得し、この検出結果から前記ウォータマークが不正であると判定した時点で前記音声データの出力を停止することを特徴とする請求項8に記載の音声データ処理方法。
【請求項10】
前記デコード部、前記検出部および前記デジタル出力インタフェースはDVDプレーヤに組み込まれることを特徴とする請求項8に記載の音声データ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−158055(P2009−158055A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338205(P2007−338205)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】