説明

音声信号圧縮装置、音声信号圧縮方法及びプログラム

【課題】好適に音声信号を圧縮する。
【解決手段】レベル検出器23、24、42により、低域の信号レベルが0.4、中域の信号レベルが0.9、高域の信号レベルが0.6と検出された場合には、中域の信号レベルの圧縮率として、圧縮率0.5が採用され、0.8に圧縮される。そして、低域、高域の信号レベルの圧縮率として、圧縮率B0.125が採用され、低域は0.375に圧縮され、高域は0.55に圧縮される。このように、信号レベルが高い中域に関しては高い圧縮率で圧縮が行われるとともに、隣り合う高域及び低域に関しては低い圧縮率で圧縮が行われるので、全体の圧縮のバランスがよくなり、これらを加算機28により加算し、出力した際の音の違和感を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号圧縮装置、音声信号圧縮方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル音声を加工して、出力される音声の音質を変化させる機器が知られている。例えば、音声信号を複数の周波数帯域に分割し、分割した信号毎に利得を与えてから、それらを合成して出力する信号圧縮伸張装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−175674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、分割した信号毎に与える利得を決定しているために、それぞれの信号に与える利得の差が大きすぎると、それらを合成して出力したときに違和感のある音になってしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、好適に音声信号を圧縮できる音声信号圧縮装置、音声信号圧縮方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る音声信号圧縮装置は、
音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割部と、
前記分割部により分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出する信号レベル検出部と、
前記分割部によって分割された周波数帯域の圧縮率を、前記信号レベル検出部により検出された1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定部と、
前記圧縮率決定部により決定された圧縮率で、前記分割部により分割された各周波数帯域の音声信号それぞれを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部により圧縮された複数の音声信号を合成する合成部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記圧縮率決定部は、前記信号レベル検出部により検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記所定の閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定するようにしてもよい。
【0008】
本発明の第2の観点に係る音声信号圧縮方法は、
音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手順と、
前記分割手順により分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出する信号レベル検出手順と、
前記分割手順によって分割された周波数帯域の圧縮率を、前記信号レベル検出手順により検出された1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定手順と、
前記圧縮率決定手順により決定された圧縮率で、前記分割手順により分割された各周波数帯域の音声信号それぞれを圧縮する圧縮手順と、
前記圧縮部により圧縮された複数の音声信号を合成する合成手順と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記圧縮率決定手順では、前記信号レベル検出手順により検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定するようにしてもよい。
【0010】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
分割部により複数の周波数帯域に分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出し、分割された周波数帯域の圧縮率を1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定部として機能させることを特徴とする。
【0011】
また、前記圧縮率決定部は、検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、好適に音声信号を圧縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る圧縮部の構成を示すブロック図である。
【図3】レベル検出器の構成を示すブロック図である。
【図4】圧縮率設定部の構成などを示す図である。
【図5】圧縮率設定処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】コンプレッサの入出力特性を示すグラフである。
【図7】圧縮部の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】圧縮率設定部の設定例を示す図である。
【図9】従来のオーディオ装置における圧縮部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係るオーディオ装置1の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、オーディオ装置1は、エフェクタ10と、圧縮部20と、再生部30と、から構成される。オーディオ装置1は、入力された音声信号を加工・再生して出力するための機器である。
【0016】
音声信号を入力するためのインターフェースは、例えば、CDやフラッシュメモリなどの記憶媒体から音声信号を読み取るものであればよい。
【0017】
また、音声信号を出力するためのインターフェースは、例えば、外部接続されたスピーカやイヤホンに出力するものであればよい。
【0018】
なお、オーディオ装置1は、音声信号を入力するためのインターフェースや音声信号を出力するためのインターフェースを内蔵していてもよい。
【0019】
その他、オーディオ装置1は、ユーザの操作を受け付けるユーザインターフェースや、楽曲情報などを表示するディスプレイなどを備えていてもよい。
【0020】
エフェクタ10は、入力された音声信号を加工する。例えば、エフェクタ10は、入力された音声信号の低域成分を強調(増幅)したり、高域成分を強調したりすることにより、入力された音声信号の加工信号を生成する。なお、エフェクタ10における音声信号の加工方法は予め決まっていてもよいし、加工方法をユーザが選択できるようにしてもよい。
【0021】
圧縮部20は、エフェクタ10により加工された音声信号を圧縮する。これにより、エフェクタ10により加工された音声信号を圧縮してノイズ(クリップノイズ)の発生を防止する。この圧縮部20が、本発明の音声信号圧縮装置を構成する。
【0022】
再生部30は、デジタル−アナログ変換回路などから構成され、圧縮部20により圧縮された音声信号をデジタル−アナログ変換して、アナログ音声を出力する。
【0023】
オーディオ装置1では、出力できる音声信号の最大値と最小値が予め決まっている。ここでは、その最大値を+1とし、最小値を−1とする。市販のCDに収録されている音声信号などは、図1のW1の波形図に示すように、+1〜−1の範囲内に収まるように予め調整されている。
【0024】
しかしながら、エフェクタ10により、この音声信号を加工した場合、加工後の音声信号が、図1のW2の波形図に示すように、+1、−1を超える波形となってしまうことがある。
【0025】
このような+1、−1を超える波形の音声信号をアナログ変換して出力しようとすると、+1、−1を超えた部分は、+1または−1として処理(クリップ)され、この部分にクリップノイズが発生してしまう。
【0026】
そこで、エフェクタ10の後に圧縮部20を設けて、図1のW3の波形図に示すような波形に音声信号を圧縮してノイズの発生を防止する。
【0027】
ここで、従来の圧縮部の構成例について説明する。図9は、従来の圧縮部100の構成を示すブロック図である。図9に示すように、圧縮部100は、ハイパスフィルタ101と、ローパスフィルタ102と、レベル検出器103、104と、圧縮率設定部105、106と、コンプレッサ107、108と、加算機109と、スイッチ110と、から構成される。
【0028】
ハイパスフィルタ101は、入力された音声信号のうち高域の周波数成分を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ102は、入力された音声信号のうち低域の周波数成分を通過させるフィルタである。低域と高域の境界は予め定められていればよい。
【0029】
レベル検出器103は、ハイパスフィルタ101を通過した音声信号の信号レベルを検出する。そして、レベル検出器103は、検出した信号レベルを圧縮率設定部105に伝送する。
【0030】
また、レベル検出器104は、ローパスフィルタ102を通過した音声信号の信号レベルを検出する。そして、レベル検出器104は、検出した信号レベルを圧縮率設定部106に伝送する。
【0031】
圧縮率設定部105は、レベル検出器103から受け取った信号レベルに基づいて、コンプレッサ107に圧縮率を設定する。圧縮率設定部105は、レベル検出器103から受け取った信号レベルが所定の閾値以上である場合は、所定の圧縮率をコンプレッサ107に設定し、レベル検出器103から受け取った信号レベルが所定の閾値未満である場合は、コンプレッサ107に圧縮を行わないように設定する。
【0032】
圧縮率設定部106は、レベル検出器104から受け取った信号レベルに基づいて、コンプレッサ108に圧縮率を設定する。圧縮率設定部106は、レベル検出器104から受け取った信号レベルが所定の閾値以上である場合は、所定の圧縮率をコンプレッサ108に設定し、レベル検出器104から受け取った信号レベルが所定の閾値未満である場合は、コンプレッサ108に圧縮を行わないように設定する。
【0033】
コンプレッサ107は、ハイパスフィルタ101を通過した音声信号を、圧縮率設定部105により設定された圧縮率で圧縮する。これにより、音声信号の高域成分がその信号レベルに応じて圧縮される。
【0034】
コンプレッサ108は、ローパスフィルタ102を通過した音声信号を、圧縮率設定部106により設定された圧縮率で圧縮する。これにより、音声信号の低域成分がその信号レベルに応じて圧縮される。
【0035】
加算機109は、コンプレッサ107によって圧縮された音声信号の高域成分と、コンプレッサ108によって圧縮された音声信号の低域成分と、を加算する。
【0036】
スイッチ110は、圧縮部100の機能をオン/オフするためのスイッチである。圧縮部100は、スイッチ110がオンになっている場合、上記の回路を介して圧縮された音声信号を出力し、スイッチ110がオフになっている場合には、圧縮部100に入力された音声信号をそのまま出力する。
【0037】
以上のように、従来の圧縮部100は、入力された音声信号を周波数帯域ごとに分割し、分割した音声信号の信号レベルに基づいて圧縮を行い、最後にそれぞれの周波数帯域の音声信号を加算して出力する。これにより、クリップノイズの発生を防止できる。しかしながら、図9に示したような従来の圧縮部100では、分割した周波数帯域ごとに信号レベルを検出して、その信号レベルに応じて圧縮を行っているため、例えば、高域成分は高い圧縮率で圧縮したが、低域成分は圧縮しなかった場合など、バランスの悪い圧縮が行われてしまうことがある。このようなバランスの悪い圧縮が行われてしまうと、出力される際に違和感のある音になってしまう。このような問題点を解消した本発明の実施の形態の圧縮部20を以下に説明する。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る圧縮部20の構成を示すブロック図である。図2に示すように、圧縮部20は、ハイパスフィルタ21と、ローパスフィルタ22と、レベル検出器23、24と、圧縮率設定部25と、コンプレッサ26、27と、加算機28と、スイッチ29と、から構成される。
【0039】
ハイパスフィルタ21は、入力された音声信号のうち高域の周波数成分を通過させるフィルタである。ローパスフィルタ22は、入力された音声信号のうち高域の周波数成分を通過させるフィルタである。低域と高域の境界は予め定められていればよい。
【0040】
レベル検出器23は、ハイパスフィルタ21を通過した音声信号の信号レベルを検出する。そして、レベル検出器23は、検出した信号レベルを圧縮率設定部25に伝送する。
【0041】
また、レベル検出器24は、ローパスフィルタ22を通過した音声信号の信号レベルを検出する。そして、レベル検出器24は、検出した信号レベルを圧縮率設定部25に伝送する。
【0042】
レベル検出器23、24は、例えば図3に示すような平滑回路を用いて、信号レベルを検出する。平滑回路は、全波整流器51と、ローパスフィルタ52と、から構成される。
【0043】
全波整流器51は、レベル検出器23、24に入力された音声信号の全波整流を行う。ローパスフィルタ52は、全波整流された音声信号のスムージングを行う。レベル検出器23、24は、このようにしてスムージングされた音声信号から信号レベルを検出する。
【0044】
なお、レベル検出器23、24が信号レベルを検出する手法はこれに限定されない。例えば、音声信号を1回サンプリングして、その信号レベルを検出するようにしてもよいし、音声信号を複数回サンプリングして、その信号レベルの移動平均を求め、その移動平均を信号レベルとして検出するようにしてもよい。
【0045】
移動平均を求める場合、サンプル数をn、n個目のデータの値(信号レベル)をXとすると、移動平均Y=ΣX/nとなる。
【0046】
圧縮率設定部25は、レベル検出器23及び24から受け取った信号レベルに基づいて、コンプレッサ26及び27に圧縮率を設定する。
【0047】
図4(A)は、圧縮率設定部25の構成を示すブロック図である。図4(A)に示すように、圧縮率設定部25は、制御部61と、メモリ62と、から構成される。
【0048】
制御部61は、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central processing Unit)などから構成され、メモリ62に記憶されるプログラム、テーブルを参照することにより、レベル検出器23及び24から受け取った信号レベルが所定の閾値以上であるか否かを判別し、その判別結果に基づいて、コンプレッサ26及び27に圧縮率を設定する。
【0049】
メモリ62は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどから構成され、制御部61が実行するプログラムや、参照用のテーブルを記憶する。図4(B)は、メモリ62が記憶するテーブルの一例である。メモリ62は、信号レベル判別用の閾値と、信号レベルが閾値以上であったときに適用される圧縮率Aと、その周波数帯域と隣り合う周波数帯域の信号レベルが閾値未満であったときに適用される圧縮率Bと、を記憶する。
【0050】
続いて、圧縮率設定部25の動作について説明する。図5は、圧縮率設定部25の制御部61が、レベル検出器23及びレベル検出器24から信号レベルを受け取ったときに実行する圧縮率設定処理の動作を示すフローチャートである。
【0051】
圧縮率設定処理において、制御部61は、まず、レベル検出器23から受け取った高域の信号レベルが、メモリ62に記憶される閾値(0.7)以上であるか否かを判別する(ステップS101)。
【0052】
高域の信号レベルが閾値(0.7)以上である場合(ステップS101;Yes)、制御部61は、レベル検出器24から受け取った低域(高域と隣り合う帯域)の信号レベルが、メモリ62に記憶される閾値(0.7)以上であるか否かを判別する(ステップS102)。
【0053】
低域の信号レベルも閾値(0.7)以上である場合(ステップS102;Yes)、制御部61は、高域及び低域の圧縮率として圧縮率A(0.5)をコンプレッサ26及びコンプレッサ27にセットする(ステップS103)。そして、圧縮率設定処理を終了する。
【0054】
低域の信号レベルが閾値(0.7)未満である場合(ステップS102;No)、制御部61は、高域の圧縮率として圧縮率A(0.5)をコンプレッサ26にセットし、低域の圧縮率として圧縮率A(0.5)よりも低い圧縮率B(0.125)をコンプレッサ27にセットする(ステップS104)。そして、圧縮率設定処理を終了する。
【0055】
また、高域の信号レベルが閾値(0.7)未満である場合(ステップS101;No)、制御部61は、レベル検出器24から受け取った低域(高域と隣り合う帯域)の信号レベルが、メモリ62に記憶される閾値(0.7)以上であるか否かを判別する(ステップS105)。
【0056】
低域の信号レベルが閾値(0.7)以上である場合(ステップS105;Yes)、制御部61は、高域の圧縮率として圧縮率A(0.5)よりも低い圧縮率B(0.125)をコンプレッサ26にセットし、低域の圧縮率として圧縮率A(0.5)をコンプレッサ27にセットする(ステップS106)。そして、圧縮率設定処理を終了する。
【0057】
低域の信号レベルも閾値(0.7)未満である場合(ステップS105;No)、制御部61は、コンプレッサ26及びコンプレッサ27に高域及び低域の音声信号を圧縮しないように設定する(ステップS107)。ステップS107では、例えば、圧縮率として1をセットすればよい。そして、圧縮率設定処理を終了する。
【0058】
以上のような圧縮率設定処理を実行することで、各周波数帯域の圧縮率を、当該周波数帯域の信号レベル、及び、それと隣り合う周波数帯域の信号レベルに基づいて設定することができる。
【0059】
コンプレッサ26は、ハイパスフィルタ21を通過した音声信号を、圧縮率設定部25により設定された圧縮率で圧縮する。これにより、音声信号の高域成分がその信号レベルに応じて圧縮される。
【0060】
コンプレッサ27は、ローパスフィルタ22を通過した音声信号を、圧縮率設定部25により設定された圧縮率で圧縮する。これにより、音声信号の低域成分がその信号レベルに応じて圧縮される。
【0061】
コンプレッサ26、27に入力され音声信号の信号レベルをx、圧縮されて出力される音声信号の信号レベルをy、適用される圧縮率をβ、適用される閾値αとすると、y=(x−α)・β+αとなる。
【0062】
即ち、コンプレッサ26、27に入力される信号レベルが、閾値(0.7)以上である場合、圧縮率として0.5が適用され、y=(x−0.7)・0.5+0.7となり、その入出力特性は、図6(A)の実線で示すようになる。
【0063】
また、コンプレッサ26、27に入力される信号レベルが、閾値(0.7)未満であるが隣り合う周波数帯域の信号レベルが閾値(0.7)以上である場合、例えば圧縮率として0.125が適用されy=(x−α)・0.125+αとなり、例えば閾値αを0.2とすると、その入出力特性は、図6(B)の実線で示すようになる。図6(B)に示すように、この例では、閾値0.2以下の信号レベルでは圧縮がされないことになる。図6(B)の場合の閾値αの値は任意であり、それ以下の信号レベルでは圧縮したくない場合の値が設定されればよい。
【0064】
コンプレッサ26、27に入力される信号レベルがともに閾値未満である場合は、コンプレッサ26、27による圧縮は行わず、そのまま入力された信号を出力すればよい。なお、入力される信号レベルが閾値未満である場合には、逆に増幅して出力するようにしてもよい。
【0065】
なお、コンプレッサ26、27は、圧縮率設定部25から、圧縮率を受け取って、その2つの値に基づいて入力される音声信号を圧縮するが、コンプレッサ26、27による音声信号の圧縮の方法は、好適に圧縮できれば任意である。例えば、圧縮率設定部25から圧縮率を受け取って、入力される音声信号にその圧縮率を乗じることにより圧縮するものであってもよい。また、この実施の形態では、コンプレッサ26、27には、閾値αとして設定される値が予め記憶され、コンプレッサ26、27は、圧縮率設定部25から受け取った圧縮率に応じて、閾値αを設定して圧縮を行うが、圧縮率設定部25から閾値αとして設定する値も受け取って、その値を用いて圧縮を行うようにしてもよい。
【0066】
加算機28は、コンプレッサ26によって圧縮された音声信号の高域成分と、コンプレッサ27によって圧縮された音声信号の低域成分と、を加算する。
【0067】
スイッチ29は、圧縮部20の機能をオン/オフするためのスイッチである。圧縮部20は、スイッチ29がオンになっている場合、上記の回路を介して圧縮された音声信号を出力し、スイッチ29がオフになっている場合には、圧縮部20に入力された音声信号をそのまま出力する。スイッチ29のオン/オフは、ユーザが設定可能にしてもよい。また、エフェクタ10による音声信号の加工が行われない場合は、自動的にオフになるようにしてもよい。
【0068】
なお、図2に示した圧縮部20は、高域と低域の2つの周波数帯域に音声信号を分割し、それぞれの帯域成分の圧縮を行っていたが、3以上の周波数帯域に分割してそれぞれの帯域成分の圧縮を行うようにしてもよい。
【0069】
例えば、音声信号を高域、中域、低域の3の周波数帯域に分割してそれぞれの帯域成分の圧縮を行うようにしてもよい。この場合、図7に示すような圧縮部40を使用すればよい。図7に示す圧縮部40は、図2に示した圧縮部20に加えて、バンドパスフィルタ41と、レベル検出器42と、コンプレッサ43と、が設けられ、圧縮率設定部25に代えて、圧縮率設定部44が設けられている。
【0070】
バンドパスフィルタ41は、入力された音声信号のうち中域の周波数成分を通過させるフィルタである。低域、中域、高域の境界は予め定められていればよい。
【0071】
レベル検出器42は、バンドフィルタ41を通過した音声信号の信号レベルを検出する。そして、レベル検出器42は、検出した信号レベルを圧縮率設定部44に伝送する。
【0072】
コンプレッサ43は、バンドフィルタ41を通過した音声信号を、圧縮率設定部44により設定された圧縮率で圧縮する。これにより、音声信号の中域成分がその信号レベルに応じて圧縮される。
【0073】
圧縮率設定部44は、レベル検出器23、24及び42から受け取った信号レベルに基づいて、コンプレッサ26、27及び43に圧縮率を設定する。圧縮率設定部44は、レベル検出器42から受け取った信号レベルに基づいて図5に示す圧縮率設定処理に中域の信号レベルを判別して圧縮率を設定する処理を加えた処理を実行することにより、コンプレッサ43に閾値や圧縮率をセットする点以外は、圧縮率設定部25と同様である。
【0074】
この場合、例えば、圧縮率設定部44が、図8に示す設定例のように、コンプレッサ26、27、43に圧縮率を設定する。図8(A)に示すように、全ての帯域の信号レベルが閾値未満である場合には、音声信号の圧縮を行わない。
【0075】
図8(B)〜(D)に示すように、いずれか1つの帯域の信号レベルが閾値(0.7)以上である場合には、信号レベルが閾値以上である帯域においては高い圧縮率(例えば0.5)をセットし、信号レベルが閾値未満である帯域であって、信号レベルが閾値以上である帯域と隣り合う帯域においては低い圧縮率(例えば0.125)をセットする。
【0076】
また、図8(E)〜(G)に示すように、いずれか2つの帯域の信号レベルが閾値以上である場合には、信号レベルが閾値以上である帯域においては高い圧縮率(例えば0.5)をセットし、信号レベルが閾値未満である帯域であって、信号レベルが閾値以上である帯域と隣り合う帯域(帯域が3つである場合は残りの帯域)においては低い圧縮率(例えば0.125)をセットする。
【0077】
図8(H)に示すように、全ての帯域の信号レベルが閾値以上である場合には、信号レベルが閾値以上である全ての帯域においては高い圧縮率(例えば0.5)をセットする。
【0078】
このように、信号レベルが高い帯域においては、高い圧縮率で圧縮が行われるとともに、信号レベルが低い帯域であっても高い圧縮率で圧縮が行われる帯域と隣り合う帯域においては、低い圧縮率で圧縮を行うので、全体の圧縮のバランスがよくなり、これらを加算機28により加算し、出力した際の音の違和感を低減することができる。
【0079】
続いて、圧縮部44による音声信号の圧縮の具体例を説明する。例えば、レベル検出器23、24、42により、低域の信号レベルが0.4、中域の信号レベルが0.9、高域の信号レベルが0.6と検出された場合には、中域の信号レベルの圧縮率として、圧縮率A(0.5)が採用され、0.8に圧縮される。そして、低域、高域の信号レベルの圧縮率として、圧縮率B(0.125)が採用され、低域は0.375に圧縮され、高域は0.55に圧縮される。
【0080】
このように、信号レベルが閾値以上である中域に関しては高い圧縮率で圧縮が行われるとともに、信号レベルが閾値未満であるが信号レベルが閾値以上である中域に隣り合う高域及び低域に関しては低い圧縮率で圧縮が行われるので、全体の圧縮のバランスがよくなり、これらを加算機28により加算し、出力した際の音の違和感を低減することができる。
【0081】
また、他の例として、レベル検出器23、24、42により、低域の信号レベルが0.8、中域の信号レベルが0.9、高域の信号レベルが0.8と検出された場合には、全ての帯域の信号レベルの圧縮率として、圧縮率A(0.5)が採用され、低域は0.75に圧縮され、中域は0.8に圧縮され、高域は0.75に圧縮される。
【0082】
このように、全ての帯域の信号レベルが閾値以上である場合には、全ての帯域が同じ圧縮率で圧縮が行われるので、全体の圧縮のバランスがよくなり、これらを加算機28により加算し、出力した際の音の違和感を低減することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な応用、変形が可能である。上記実施の形態の圧縮率設定部25、44では、各帯域の音声信号の信号レベルを単一の閾値と比較することにより、コンプレッサ26、27、43に圧縮率を設定していたが、圧縮率設定部25、44による圧縮率を設定方法はこれに限定されない。例えば、圧縮率設定部25、44は、各帯域の音声信号の信号レベルを複数段階の閾値と比較することにより、コンプレッサ26、27、43に隣り合う周波数帯域の信号レベルを考慮した上で段階的に圧縮率を設定するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態の圧縮率設定部25、44における閾値や圧縮率A、Bの数値は一例であって、音声信号を好適に圧縮できれば任意でよい。また、これらの値をユーザが設定または選択できるようにしてもよい。
【0085】
また、圧縮率設定部25、44が実行するプログラムは、メモリ62に予め記憶されているものとして説明したが、外部の記憶媒体から取得したものであってもよいし、ネットワークを介して伝送されたものを記憶したものであってもよい。また、このプログラムを記憶媒体やネットワークを介して配布するようにしてもよい。
【0086】
また、本発明を実現するため、圧縮部20、40の各部を制御するためのプログラムを記憶媒体やネットワークを介して配布するようにし、コンピュータを圧縮部20、40として機能させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 オーディオ装置
10 エフェクタ
20 圧縮部
30 再生部
21 ハイパスフィルタ
22 ローパスフィルタ
41 バンドパスフィルタ
23、24、42 レベル検出器
25、44 圧縮率設定部
26、27、43 コンプレッサ
28 加算機
29 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割部と、
前記分割部により分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出する信号レベル検出部と、
前記分割部によって分割された周波数帯域の圧縮率を、前記信号レベル検出部により検出された1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定部と、
前記圧縮率決定部により決定された圧縮率で、前記分割部により分割された各周波数帯域の音声信号それぞれを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部により圧縮された複数の音声信号を合成する合成部と、
を備えることを特徴とする音声信号圧縮装置。
【請求項2】
前記圧縮率決定部は、前記信号レベル検出部により検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記所定の閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号圧縮装置。
【請求項3】
音声信号を複数の周波数帯域に分割する分割手順と、
前記分割手順により分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出する信号レベル検出手順と、
前記分割手順によって分割された周波数帯域の圧縮率を、前記信号レベル検出手順により検出された1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定手順と、
前記圧縮率決定手順により決定された圧縮率で、前記分割手順により分割された各周波数帯域の音声信号それぞれを圧縮する圧縮手順と、
前記圧縮部により圧縮された複数の音声信号を合成する合成手順と、
を備えることを特徴とする音声信号圧縮方法。
【請求項4】
前記圧縮率決定手順では、前記信号レベル検出手順により検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の音声信号圧縮方法。
【請求項5】
コンピュータを、
分割部により複数の周波数帯域に分割された音声信号それぞれの信号レベルを検出し、分割された周波数帯域の圧縮率を1の周波数帯域の信号レベルと、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルと、に基づいて決定する圧縮率決定部として機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記圧縮率決定部は、検出された1の周波数帯域の信号レベルが所定の閾値以上である場合には、前記1の周波数帯域の圧縮率として第1の値に決定し、前記1の周波数帯域と隣接する周波数帯域の信号レベルが前記閾値未満である場合には、前記隣接する周波数帯域の圧縮率として前記第1の値よりも小さい第2の値に決定する
ことを特徴とする請求項5に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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