説明

音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、クライアントによるアクセスを提供する方法及びプログラム並びにサーバシステム

【課題】より利便性の高い読み上げサービスの提供。
【解決手段】クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップと、を含む、インターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、該クライアントによるアクセスを提供する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、クライアントによるアクセスを提供する方法及びプログラム並びにサーバシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
音声プロキシサーバを用いて、WWWの情報に含まれるテキストなどを読み上げる技術は、例えば特許文献1に開示されている。
またホームページの音声読み上げシステムも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
図2に、従来のホームページの音声読み上げシステムのシステム処理概要を例示する。
以下、図2を引用して、音声読み上げシステムの全体動作のデータの流れを詳細に説明する。
クライアントがホームページにアクセスすると、既存WebサーバにあるHTMLファイルがインターネットエクスプローラなどのアプリケーションによってクライアントPCの画面に表示される。画面に表示されたページ内の読み上げテキストは、特定のHTMLタグなどで設定されたところのテキストデータである。
【0004】
さらにクライアントが読み上げボタンを押すと、JAVA(登録商標)SCRIPTやFLASHなどで書かれたプログラムが起動してこれらの設定されている読み上げ部分のテキストデータを抽出し、上から順番にソートする。これらは認証キーとともにサーバ群へ送信される。ここでは、まず、認証キーがサーバ群のデータベースと照合されて、アクセスが許可されている認証キーであるか否かがチェックされる。
次にこのチェックをパスした認証キーとともに受信されたテキストデータは音声エンジンを用いて音声合成される。この音声合成された音声ファイルがストリーミングでHTMLに送信されてリアルタイムで音声再生される。以上が全体動作のデータの流れである。
【0005】
このような従来のホームページの音声読み上げシステムでは、読み上げは,マウスが読み上げ箇所にマウスオーバーした場合又は読み上げボタンをクリックした場合に開始される。
このため、より利便性の高い読み上げサービスを提供するという観点から、これまでの技術には次のような問題点がある。
(1)テキストの読み上げは、その箇所をマウスでクリックしたとき、又はマウスオーバーしたときから読み上げを開始する仕組みであり、早期に読み上げを開始する場合よりも理解のための時間的な余裕が少なく、利便性が低い。
(2)リンク(RINK)箇所については、リンク箇所にマウスカーソルが来たときにリンク先の縮小された内容のホップアップが表示されるだけであり、その内容を読み上げるなどの高度な利便性が考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−110186号公報
【特許文献2】特開2009−75625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決し、より利便性の高い読み上げサービスを提供することを課題とする。
より詳細には、本発明は、クライアントに読み上げ箇所の情報を早めに伝達し、内容を理解する時期的な余裕を与えるなどの利便性を高くすることを課題とする。
また本発明は、リンク先の理解を深めさせるとともに興味をクライアントに増長させる手助けするとともに、リンク箇所にクライアントのマウスカーソルが滞在中に、リンク先に行きたいか否かを判断して自動的に表示する利便性を付加することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、以下の音声読み上げシステムを有する情報ページに対するアクセスを提供する方法及びプログラム並びにサーバシステムによって解決される。
(1)クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップと、を含む、インターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、該クライアントによるアクセスを提供する方法。
(2)上記近傍領域での上記クライアントのマウスカーソルの滞在時間が、リンク先の読み上げ時間又は予め定めた滞在時間を超えている場合、自動的にリンク先のページを開くステップをさらに含む、上記(1)に記載のインターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、該クライアントによるアクセスを提供する方法。
(3)インターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、クライアントによるアクセスを提供するプログラムであって、該クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップと、を実行する命令を含むプログラム。
(4)上記近傍領域での上記クライアントのマウスカーソルの滞在時間が、リンク先の読み上げ時間又は予め定めた滞在時間を超えている場合、自動的にリンク先のページを開くステップを実行する命令をさらに含む、上記(3)に記載のプログラム。
(5)上記(3)又は(4)に記載のプログラムを格納したサーバシステム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)読み上げ箇所を早期に読み上げることができるため、クライアントに読み上げ箇所の情報を早めに伝達するとともに内容を理解する時期的な余裕を与えるなどの利便性が高くなる。
(2)どのリンク先にクライアントのマウスカーソルが向かっているかを推測して、そのリンクに関した読み上げを早期に開始し、かつ早期にホップアップを表示することにより、リンク先の理解を深めさせるとともに興味をクライアントに増長させる手助けになる。
(3)リンク箇所にクライアントのマウスカーソルが滞在中にリンク先に行きたいか否かを、判断して自動的に表示する利便性が付加される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るマウスカーソルの進行方向の予測並びに読み上げ箇所又はリンク箇所の予測原理を説明する図面である。
【図2】従来のホームページの音声読み上げシステムのシステム処理概要を例示する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の概要)
本発明は、図2に例示する従来のホームページの音声読み上げシステムにおけるステップに加えて、次のような各ステップを付加するものである。
クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップ。
【0012】
そして、上記各ステップは、各ステップを実行する命令を含むプログラムにより実行され、このプログラムによりサーバシステムが制御される。
以下、本発明に係るマウスカーソルの進行方向の予測並びに読み上げ箇所又はリンク箇所の予測原理を詳細に説明する。
【0013】
(マウスカーソルの進行方向の予測)
マウスカーソルの進行方向の予測は、次の式(1)によって表される未知パラメータa、bを推定することである。
ax+by+ε=1・・・(1)
ここで、式(1)における座標(x、y)は、HP画面上のマウスカーソル位置であり、εは、白色雑音(White Noise)(平均値0,分散σ)である。
さらに式(1)は次の[数1]のように表すことができる。
【0014】
【数1】

【0015】
そうすると、マウスカーソルの進行方向の予測は、上記システム方程式(2)(3)式において、観測信号Xを用いて未知パラメータθを推定する問題に帰着する。
これは、例えば次の[数2]の定理に示されるように、最小二乗推定問題やカルマンフィルタ理論で容易に求めることができる。
システム方程式(2)(3)式において、0割防止のためにrank(Ω)=2とすると、未知パラメータθは、次のように表すことができ、マウスカーソルの予測された進行方向を求めることができる。
【0016】
【数2】

【0017】
(読み上げ箇所又はリンク箇所の予測)
図1は、本発明に係るマウスカーソルの進行方向の予測並びに読み上げ箇所又はリンク箇所の予測原理を説明する図面である。
図1の矢印が、マウスカーソルの予測された進行方向である。
灰色の領域は読み上げ箇所の近傍領域δ(j=A,B)である。予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と対象A、B(読み上げ箇所やリンク箇所)との予測される最短距離をそれぞれ、δ、δとする。
いま、δ<δ、δ>δを満足するならば、マウスカーソルは対象Aに向かっていると定義する。
【0018】
この定義を満足するようにマウスカーソルが移動するならば、近傍δに近づいたら対象Aに設定してある読み上げを開始する。
すなわち、予測される最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始する。
【0019】
(自動的にリンク先のページを開くステップ)
マウスカーソルがリンク上にある場合、クライアントはリンク先に飛びたいのかそうでないかを推測して、そうであるならば、リンク先を自動的に表示する。
本発明では、上記クライアントのマウスカーソルの上記近傍領域での滞在時間が、リンク先の読み上げ時間又は予め定めた滞在時間を超えている場合、自動的にリンク先のページを開くステップをさらに含むことができる。
以下詳細に説明する。
【0020】
マウスカーソルが近傍領域δにいる滞在時間又はリンク先の読み上げ時間を評価関数として判断する。
いま、
(1) リンク先の読み上げ時間:t>0
(2) 予め定めた滞在時間:t>0
(3) Mt(δ):マウスが近傍領域δにいる滞在時間
とするとき、一例として Mt(δ)>min(t,t)を満足するならば、クライアントはリンク先に飛びたいと判断して、自動的にリンク先のページを開く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップと、を含む、インターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、該クライアントによるアクセスを提供する方法。
【請求項2】
上記近傍領域での上記クライアントのマウスカーソルの滞在時間が、リンク先の読み上げ時間又は予め定めた滞在時間を超えている場合、自動的にリンク先のページを開くステップをさらに含む、請求項1に記載のインターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、該クライアントによるアクセスを提供する方法。
【請求項3】
インターネットよりなるコンピュータネットワークを介した、音声読み上げシステムを有する情報ページに対する、クライアントによるアクセスを提供するプログラムであって、該クライアントのマウスカーソルの進行方向を予測するステップと、予測されたマウスカーソルの進行方向を延長する直線と読み上げ箇所又はリンク箇所との最短距離を予測するステップと、該最短距離と、予め定められた読み上げ箇所又はリンク箇所を中心とする同心円内であって読み上げ箇所又はリンク箇所の近傍領域を構成する該同心円の半径とを比較し、該最短距離が該近傍領域の半径より小さい場合、該読み上げ箇所又はリンク箇所の内容の読み上げを開始するステップと、を実行する命令を含むプログラム。
【請求項4】
上記近傍領域での上記クライアントのマウスカーソルの滞在時間が、リンク先の読み上げ時間又は予め定めた滞在時間を超えている場合、自動的にリンク先のページを開くステップを実行する命令をさらに含む、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
上記請求項3又は4に記載のプログラムを格納したサーバシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−247822(P2012−247822A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116542(P2011−116542)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FLASH
【出願人】(511127014)みらい教育研究所株式会社 (1)
【Fターム(参考)】