説明

音声調整装置の操作サポートシステム及びサポートプログラム

【課題】オペレータの熟練度や操作部の目視を必要とせず、フェードインやフェードアウトなどの操作部の操作を正確に行なうことのできる音声調整装置の操作サポートシステム及びサポートプログラムを提供する。
【解決手段】音声調整装置の操作サポートシステムは、スライド式のモータフェーダ1を備え、このモータフェーダ1の操作ツマミ2に対してトルクを与える制御回路3と、駆動部となるモータ制御部4と、操作ツマミ2の把持部分である操作面に設けられたタッチセンサ5と、制御回路3に予め制御プログラムの設定を行なう設定操作部6と、を備える。操作ツマミ2のポジションと、このポジションにおける操作トルクの制御パターンとして、操作ツマミ2にかかる操作トルクを軽重2段階に分けて制御するパターンと、操作ツマミ2にかかる操作トルクを、操作ツマミ2のポジションに応じて可変にする制御パターンとがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力する音声信号の音量及び音質調整を行い出力する音声調整装置の操作の利便性を向上させる音声調整装置の操作サポートシステム及びサポートプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力する音声信号の音量及び音質調整を行い出力する音声調整装置が知られている。一般的に、放送局向けの音声調整装置の場合、リハーサル時に入力音声に合わせた調整を事前に行った上で本番に臨む。
【0003】
放送の本番では、音声調整装置の本格的な調整は行わないが、例えば、BGMをフェードインさせたり、シーン切り替えで音量をクロスフェードさせたりするフェードイン、フェードアウトの操作が行なわれている。このフェードイン、フェードアウトの操作は、大抵の場合、音量を急激に変えるものではなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせる。また、入力する音声がリハーサル時と微妙に異なる場合は、音声調整装置において、補正目的の微調整を行うことがあるが、この場合も急激な操作によって音量や音質を変えてしまうと、放送音声にその音声変化具合が出力されてしまうため、ゆっくりと調整することが多い。
【0004】
このような調整は、音声調整装置の操作部により行なうものであり、この操作部には、スライドフェーダやロータリエンコーダが多く使用されており、専任オペレータがマニュアル操作で各種調整を行っている。
【0005】
従来の音声調整装置では、即座に調整や設定が行えるように、調整操作部の操作トルクは軽めに設定されたものが多い。リハーサル時に多くの調整を短時間で行う場合には操作トルクは軽い方が適しているが、本番中のゆっくりとした操作に適していない。フェードイン、フェードアウトが自然に聴こえるように操作する場合は安定(一定)した操作速度でスライドフェーダやロータリエンコーダを操作する必要もあり、この操作も重いトルクの方が操作は行い易い。
【0006】
この課題に対応して、例えば、操作部を構成する回転操作ツマミを、ユーザが手動で操作した場合に、駆動手段によって、その操作方向と反対方向に本体部を回転させるようにし、ユーザに操作抵抗感を与えるようにしたものがある(特許文献1参照)。この技術では、駆動手段が発生するトルクが調整されることで、ユーザの好みに応じた操作抵抗感に容易に調整することができるように構成される。
【0007】
また、フェードイン・アウト操作は、最終到達レベルに近づく程に操作速度を遅くする場合や、逆に到達レベルに近づく程に操作速度を早める場合もある。これらは放送番組の演出効果として使われる操作であり、番組途中にBGMを差し込む場合等に、この様な操作が良く使われる。この場合、オペレータが操作スピードを変えながらフェードイン、フェードアウトの操作を行なうものであり、放送中の緊迫した状況の中で番組演出に適した操作を正確に行うことは非常に難しい作業である。さらに、放送中に同様のフェードイン、フェードアウトの操作を行う場面(例えばBGM挿入)が多数あり、常時同じ効果に相当する操作を行うことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−80501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
放送現場で用いられる音声調整装置における操作に関する課題は、番組進行が事前に予定されていた通りに進むことを前提とすれば、番組の時間軸に従い操作を自動化することで解決する。ただし、現実の生放送現場では、生放送であるがために予定されていない操作を要求されることがある。例えば、予定と異なる音楽が流れてしまい到達レベルに達する前に音声を絞る操作を行う必要がある場合等である。従来、この様な操作は番組専任で熟練したオペレータが専門的に行う必要があった。
【0010】
また、通常、音声調整装置の操作は、出演者の状態をテレビモニタやガラス越しに観察しながら行うために、フェーダ操作などを、操作ツマミ等の操作部を見ないで行うことが多い。この場合のフェードイン、フェードアウトの操作では、手元を見ないで又はモニタや出演者と手元とを交互に見ながら、到達レベルに正確に調整することが必要であり、操作部が実際には到達すべきレベルまで行かないか、行き過ぎてしまうなどの課題があった。
【0011】
フェーダ操作では予め決められた範囲内に操作を制限したい場合もある。例えば、番組中のBGMは流したままであるが、アナウンサーが話している間は音量を絞りたい場合等である。通常、このような操作もマニュアル操作であり、オペレータは、目盛を見ながら音量レベルを制限範囲に抑える操作を行っているが、これを正確に行なうには、やはりオペレータの熟練度や、注意が必要で、上述した番組進行の状況では、オペレータへの負担が大きかった。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、オペレータの熟練度や操作部の目視を必要とせず、フェードインやフェードアウトなどの操作部の操作を正確に行なうことのできる音声調整装置の操作サポートシステム及びサポートプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、スライド移動又は回転移動して音量レベルを変更させる操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートシステムにおいて、前記制御回路は、前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加手段を備え、前記トルク付加手段は、前記操作部の移動にかかるトルクとして、軽トルクと重トルクとを変更可能に設定されたことを特徴とする。
【0014】
以上の態様では、制御回路において予め設定される制御パターンとして、制御回路のトルクテーブルに、操作部に対して一定の高負荷なトルクがかかるようにするものと低負荷なトルクがかかるようにするものとの2つの制御パターンを設定し、これらを可変とする。
【0015】
これにより、例えば、テレビ番組やラジオ番組において、シーンを切り替える際に、次第に音を小さくしていくフェードアウトや、次第に大きくしていくフェードインを行なう場合、音量を急激に変えるものではなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせる必要があるため、操作部に対して、比較的重いトルクをかけ、操作部をゆっくり移動させることができるようになる。
【0016】
したがって、オペレータは、例えば、操作部を直接見ないで出演者の状態をテレビモニタやガラス越しに観察しながらツマミ操作を行なった場合でも、操作トルクが重いことにより、操作部をゆっくり動かせるから、操作部が必要なレベルより行き過ぎてしまうようなことを防止することができる。
【0017】
一方で、リハーサル時に多くの調整を短時間で行う場合等、即座に調整設定を行う必要がある場合には、操作部の操作トルクを軽めに設定することができる。
【0018】
請求項2の発明は、スライド移動又は回転移動する操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートシステムにおいて、前記制御回路は、前記操作部のスライド移動量又は回転移動量から現在の位置を読み取る位置読取手段と、前記操作部の移動方向を検知する移動検知手段と、前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加手段と、を備え、前記トルク付加手段は、前記操作部の位置に応じて前記操作部にかけるトルクを設定した複数の制御パターンを記憶したトルクテーブル記憶手段と、前記操作部の位置情報と前記トルクテーブルとに基づいて前記操作部の移動にトルクをかけるトルクレベル設定手段と、からなることを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記制御パターンには、前記操作部の位置に関わらずトルクを一定にするパターンと、前記操作部の位置が一定範囲外の場合に高トルクをかけるパターンと、前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させるパターンと、前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に上昇させるパターンと、前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に減衰させるパターンと、前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させつつ、一定範囲を超える場合に高トルクをかけるパターンと、のいずれか又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする。
【0020】
以上の態様では、制御回路において予め設定される制御パターンとして、制御回路のトルクテーブルに、複数のパターンを設定する。制御回路は、操作部の現在値ポジションを読み取り、モータを制御して操作部へ操作トルクを与えるモータを稼動させる。
【0021】
制御回路は、設定された制御パターンに基づいて、フェードイン、フェードアウトの操作サポートとして、LOGカーブなどのフェードカーブ設定値及び目標ポジション設定値に対する操作中の現在ポジション位置を比較し、操作部へ与えるトルクを可変する。これにより、オペレータは、一定した操作力を加えるだけで正確で安定したフェード操作が可能になる。
【0022】
また、操作が目標ポジションへ到達した場合には、行き過ぎ操作の防止目的でストップトルク(トルク最大)を与えることもでき、オペレータが、操作部を直接見ないで出演者の状態をテレビモニタやガラス越しに観察しながらツマミ操作を行なった場合でも、操作部が必要なレベルより行き過ぎてしまうようなことを防止することができる。
【0023】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記操作部には、ユーザが操作部に触れたか否かを検出するタッチセンサが設けられ、前記制御回路は、前記タッチセンサによるユーザ操作の検出の入力を受け、前記モータ制御を開始し、前記タッチセンサにおけるユーザ操作の検出の入力がなくなった際に、前記モータ制御を停止することを特徴とする。
【0024】
以上の態様では、モータのトルク制御の終了後、モータ電源をオフにすることで、操作部が現在のポジションからモータ駆動により移動してしまうのを防ぐことができる。
【0025】
なお、以上のような本発明は、プログラムが、制御回路に各手段を実行させることにより、具体的な処理を実現する音声調整装置の操作サポートプログラムとして把握することも可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オペレータの熟練度や操作部の目視を必要とせず、フェードインやフェードアウトなどの操作部の操作を正確に行なうことのできる音声調整装置の操作サポートシステム及びサポートプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る音声調整装置の操作サポートシステムの構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る音声調整装置の操作サポートシステムの第1の制御パターンを示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る音声調整装置の操作サポートシステムの第2の制御パターンを示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る音声調整装置の操作サポートシステムの第1の制御パターンにおける処理の流れを示すフローチャート図。
【図5】本発明の実施形態に係る音声調整装置の操作サポートシステムの第2の制御パターンにおける処理の流れを示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態について、図1〜図5を参照して説明する。なお、以下では、本発明として音声調整装置の操作サポートシステムについて説明するが、上述のとおり、本発明は、プログラムが、制御回路に各手段を実行させることにより、具体的な処理を実現する音声調整装置の操作サポートプログラムとして把握することも可能である。
【0029】
[1.本実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態の音声調整装置の操作サポートシステムは、図1のシステム構成図に示すように、スライド式のモータフェーダ1を備え、このモータフェーダ1の操作ツマミ2に対してトルクを与える制御回路3と、駆動部となるモータ制御部4と、操作ツマミ2の把持部分である操作面に設けられたタッチセンサ5と、制御回路3に予め制御プログラムの設定を行なう設定操作部6と、を備える。
【0030】
モータフェーダ1は、スライド式の操作ツマミ2を備え、モータMの軸が、操作ツマミ2にベルトを使って機構的に接続されているモータMに与える電流を制御することにより、操作ツマミ2に操作トルクを与えるものである。なお、このモータフェーダ1自体の構成は従来と同様であり、本実施形態では制御に改良を施したものである。すなわち、モータフェーダ1の本来的用途は、モータ制御で操作ツマミ2位置を任意のポジションへ移動させることであるところ、本実施形態では、この従来より存在する用途に、操作トルクを与えるようにしたものである。
【0031】
タッチセンサ5は、操作ツマミ2のオペレータが把持する部分に配置されており、例えば、静電式によりオペレータの指などの導電体の近接によって生じる静電容量の変化を検出して、操作ツマミ2へのタッチを検知し、これを制御回路3に入力する手段である。なお、本実施形態においては、最適な実施例として、タッチセンサ5を操作ツマミ2の把持部分に配置したが、タッチセンサ5は、あくまでも操作ツマミ2に対するモータフェーダ1のオンオフの制御を行なうものであるから、その用途を発揮し得る限り、操作ツマミ2以外の音声調整装置のいずれかに配置しても良い。
【0032】
設定操作部6は、ユーザが、操作ツマミ2の位置とトルクレベルの関係を表したトルクテーブルの設定を行い、これを制御回路3に入力する手段である。
【0033】
制御回路3は、位置検出部31と、タッチ検出部32と、トルク付加部33としてトルクテーブル記憶部33aとトルクレベル設定部33bとを備える。
【0034】
位置検出部31は、操作ツマミ2のモータフェーダ1上におけるスライド位置を検出するものであり、この検出結果を、トルク付加部33に入力するものである。タッチ検出部32は、操作ツマミ2に設けられたタッチセンサ5において検出される操作ツマミ2へのタッチの結果の入力を受け、これをトルク付加部33に入力し、トルク付加部33の制御開始条件とするものである。
【0035】
トルク付加部33は、モータ制御部4にモータMの制御信号を出力するものであり、このうちトルクテーブル記憶部33aは、設定操作部6におけるオペレータの操作により入力される、操作ツマミの位置と当該位置におけるトルクの設定値を記憶する手段である。また、トルクレベル設定部33bは、位置検出部31から入力される操作ツマミ2の位置情報とトルクテーブル記憶部33aに記憶されたトルク設定値とから、操作ツマミ2にかけるべきトルク値を算出し、これに相当するモータ制御信号をモータ制御部4に出力する手段である。
【0036】
モータ制御部4は、制御回路3から入力される制御信号に応じて、モータフェーダ1のモータMを回転制御し、操作ツマミ2のトルク制御を実行する手段である。
【0037】
ここで、設定操作部6を介して、制御回路3のトルクテーブル記憶部33aにおいて予め設定される制御パターンの具体例について説明する。操作ツマミ2のポジションと、このポジションにおける操作トルクの制御パターンは、(イ)操作ツマミ2にかかる操作トルクを軽重2段階に分けて制御するパターン(第1の制御パターン)と、(ロ)操作ツマミ2にかかる操作トルクを、操作ツマミ2のポジションに応じて可変にするパターン(第2の制御パターン)の2つ考えられる。
【0038】
[(イ)第1の制御パターン]
この制御パターンでは、例えば、テレビ番組やラジオ番組において、シーンを切り替える際に、次第に音を小さくしていくフェードアウトや、次第に大きくしていくフェードインを行なう場合、音量を急激に変えるものではなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせる必要があるため、操作ツマミ2に対して、比較的重いトルクをかけ、操作ツマミ2をゆっくり移動させることができるようにする。この場合、制御回路3のトルクテーブルには、図2(a)に示すように、操作ツマミ2のポジションに関わらず、一定の高負荷なトルクがかかるように設定される。
【0039】
一方、リハーサル時に多くの調整を短時間で行う場合等、即座に調整設定を行う必要がある場合には、操作ツマミ2の操作トルクを軽めに設定する。この場合、制御回路3のトルクテーブルにおいて、図2(b)に示すように、操作ツマミ2のポジションに関わらず、一定の低負荷なトルクがかかるように設定される。
【0040】
[(ロ)第2の制御パターン]
上述のとおり、フェードイン・アウト操作は、最終到達レベルに近づく程に操作速度を遅くする場合や、逆に到達レベルに近づく程に操作速度を早める場合もある。そこで、この態様では、操作ツマミ2にかかる操作トルクを、用途に応じて可変とできるように、例えば、図3に示す以下の(a)〜(h)の8つの制御パターンを用意し、これらを制御回路3のトルクテーブルに設定する。
【0041】
(1)トルク一定パターン(図3(a))
操作方法があらかじめ決まっていないが、誤操作防止などで一定のトルクを与えておきたい場合であり、例えば、メインアナウンサーのマイク音量などを操作する場合の制御パターンである。
【0042】
(2)操作範囲制限パターン(図3(b))
操作レベルを、常に一定範囲内のポジションに収めたい場合であり、例えば、常時流し続けるBGMなどを操作する場合の制御パターンである。
【0043】
(3)フェードイン制御パターン(図3(c))
例えば、テレビ番組やラジオ番組において、シーンを切り替える際に、音を次第に大きくしていく操作に対する制御パターンであり、この制御パターンでは、図3(c)に示すように、操作ツマミ2のポジションが音量を増加させる位置に向かうにつれて、操作ツマミ2に掛かるトルクを増加させるようになっている。これにより、オペレータがフェードイン操作を行なう場合、音量を急激に変えることなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせることができる。
【0044】
(4)フェードアウト制御パターン(図3(d))
例えば、テレビ番組やラジオ番組において、シーンを切り替える際に、音を次第に小さくしていく操作に対する制御パターンであり、この制御パターンでは、図3(d)に示すように、操作ツマミ2のポジションが音量を減少させる位置に向かうにつれて、操作ツマミ2に掛かるトルクを増加させるようになっている。これにより、オペレータがフェードアウト操作を行なう場合、音量を急激に変えることなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせることができる。
【0045】
(5)フェードインLog制御パターン(図3(e))
例えば、テレビ番組内におけるVTRのスタートや、ラジオ番組におけるCDスタートなど、番組内で一時的に挿入されるコンテンツなどの開始時に用いる制御パターンである。操作レベルをフェードインのLogカーブにすることで、入りは早く、到達近くで遅くする操作などが、トルク制御により一定量の操作力で可能になる。
【0046】
(6)フェードアウトLog制御パターン(図3(f))
例えば、テレビ番組におけるVTRのストップや、ラジオ番組におけるCDストップなど、番組内で一時的に挿入されるコンテンツなどの終了時に用いる制御パターンである。操作レベルをフェードアウトのLogカーブにすることで、入りは早く、到達近くで遅くする操作などが、トルク制御により一定量の操作力で可能になる。
【0047】
(7)フェードイン+ストップ制御パターン(図3(g))
例えば、テレビ番組におけるVTRスタートや、ラジオ番組におけるCDスタートなどの場面において、誤操作を防止するものであり、番組内で一時的に挿入されるコンテンツなどの開始時においてあらかじめ到達ポジションを設定したい場合の制御パターンである。この制御パターンでは、操作ツマミ2が、到達すべきポジションまで操作されると、一気にトルクが増してストップ感が得られる。したがって、オペレータが、出演者の様子をTVモニター等で監視しながら、操作ツマミ2を操作する場合などに有効である。
【0048】
(8)フェードアウト+ストップ制御パターン(図3(h))
例えば、テレビ番組におけるVTRのフェードアウトや、ラジオ番組におけるCDフェードアウトなどで、余韻を残すために一定ポジションに留めたいときの制御パターンであり、番組内で一時的に挿入されるコンテンツなどの終了時で、あらかじめ到達ポジションを設定したい場合の制御パターンである。この制御パターンでは、操作ツマミ2が、到達すべきポジションまで操作されると、一気にトルクが増してストップ感が得られる。したがって、オペレータが、出演者の様子をTVモニター等で監視しながら、操作ツマミ2を操作する場合などに有効である。
【0049】
[1−2.作用]
以上のような構成からなる本実施形態の音声調整装置のフェード操作サポートシステムにおける作用について説明する。
【0050】
(イ)第1の制御パターンにおける処理
図4のフローチャートに示すように、制御回路3のタッチ検出手段32は、まず、タッチセンサ5において、オペレータが操作ツマミ2の把持部分をタッチしたか否かを検出し(S401)、タッチを検出した場合には(YES)、操作開始と判断し、その旨をトルク付加手段33に入力する(S402)。
【0051】
これに基づき、トルク付加手段33のトルクレベル設定部33bは、モータ制御部4にトルクテーブル記憶部33aからモータ制御部4に入力すべきトルクレベル読み出して所定のトルクレベルを入力し、モータ制御により操作ツマミのトルク制御を開始する(S403)。このトルク制御のトルクレベルは、オペレータが設定操作部6を介してトルクテーブル記憶部33aにあらかじめ任意に設定するものであり、本態様においては、上述のように、重トルクと、軽トルクとの2段階で設定される(図2参照)。
【0052】
すなわち、トルクレベル設定手段33bは、設定トルクレベルに応じて操作トルク制御を行い、モータM電流を増加させる。オペレータは、この間にツマミ操作を行なうと、モータ制御部4によるモータM電流の設定により、操作ツマミ2の操作トルクが重く感じられることとなる。
【0053】
このトルク制御は、タッチセンサ5から、オペレータの指が離れることにより、タッチセンサ5がタッチオフを検出し、これがタッチ検出手段32に入力されるまで継続して行なう(S404)。タッチセンサ5により、タッチオフが検出され、これがタッチ検出手段32に入力されると、トルク付加手段33がモータ制御部4に対して、トルク制御を終了した後(S405)、モータM電源をオフとし(S406)、処理を終了する(END)。なお、ここで、モータM電源をオフにしないと、操作ツマミ2が現在のポジションからモータM駆動により移動してしまうため、モータM電源をオフにする必要が生じる。
【0054】
(ロ)第2の制御パターンにおける処理
本態様においては、上記「操作トルクを軽重2段階に変更する作用」における図4に示したフローチャートの処理のうち、S403に当たる「設定トルクレベルに応じた操作トルク制御」の部分において、トルク付加手段33がさらに細かい処理を行なうものであり、S403以外の処理については、図4と同様であるので省略する。
【0055】
図5に示すように、制御回路3のトルクレベル設定部33bは、トルクテーブル記憶部33aにおいて、予め設定されたトルクテーブルを、図3に示す(a)〜(h)のパターンから選択し、トルクテーブルを読み込む(S501)。
【0056】
次に、トルクレベル設定部33bは、操作ツマミ2から入力される操作ツマミ2の現在の位置を確認し、当該ポジションにおけるトルクをトルクテーブル記憶部33aによって記憶されたトルクテーブルから算出する(S502)。トルクレベル設定部33bは、このトルクテーブルから読み出されるトルクに応じて、操作ツマミ2をトルク制御する(S503)。
【0057】
以降の処理は、図4に示した態様と同様であり、トルクレベル設定部33bがモータ制御部4に対するトルク制御を、タッチ検出部32においてタッチセンサ5からオペレータの指が離れるタッチオフを検出するまで継続して行ない(S404)、タッチオフが検出されると、トルクレベル設定部33bはトルク制御を終了し(S405)、モータM電源をオフし(S406)、処理を終了する(END)。
【0058】
[1−3.効果]
以上のような本実施形態における音声調整装置のフェード操作サポートシステムにおける効果について説明する。
【0059】
(イ)第1の制御パターンにおける効果
設定操作部6を介して、制御回路3において予め設定される制御パターンとして、制御回路3のトルクテーブルに、図2(a)に示すように、操作ツマミ2のポジションに関わらず、一定の高負荷なトルクがかかるようにするものと、図2(b)に示すように、操作ツマミ2のポジションに関わらず、一定の低負荷なトルクがかかるようにするものとの2つの制御パターンを設定し、これらを設定操作部6の操作により、可変とする。
【0060】
これにより、例えば、テレビ番組やラジオ番組において、シーンを切り替える際に、次第に音を小さくしていくフェードアウトや、次第に大きくしていくフェードインを行なう場合、音量を急激に変えるものではなく、ゆっくりとした操作でスローフェードさせる必要があるため、操作ツマミ2に対して、比較的重いトルクをかけ、操作ツマミ2をゆっくり移動させることができるようになる。
【0061】
したがって、オペレータは、例えば、操作ツマミ2を直接見ないで出演者の状態をテレビモニタやガラス越しに観察しながらツマミ操作を行なった場合でも、操作トルクが重いことにより、操作ツマミ2をゆっくり動かせるから、操作ツマミ2が必要なレベルより行き過ぎてしまうようなことを防止することができる。
【0062】
一方で、リハーサル時に多くの調整を短時間で行う場合等、即座に調整設定を行う必要がある場合には、操作ツマミ2の操作トルクを軽めに設定することができる。
【0063】
(ロ)第2の制御パターンにおける処理
設定操作部6を介して、制御回路3において予め設定される制御パターンとして、制御回路3のトルクテーブルに、図3に示す以下の(a)〜(h)の8つを設定する。制御回路3は、操作ツマミ2の現在値ポジションを読み取り、モータ制御部4を制御して操作ツマミ2へ操作トルクを与えるモータMを稼動させる。
【0064】
制御回路3は、設定された制御パターンに基づいて、フェードイン、フェードアウトの操作サポートとして、LOGカーブなどのフェードカーブ設定値及び目標ポジション設定値に対する操作中の現在ポジション位置を比較し、操作ツマミ2へ与えるトルクを可変する。これにより、オペレータは、一定した操作力を加えるだけで正確で安定したフェード操作が可能になる。
【0065】
また、操作が目標ポジションへ到達した場合には、行き過ぎ操作の防止目的でストップトルク(トルク最大)を与えることもでき、オペレータが、操作ツマミ2を直接見ないで出演者の状態をテレビモニタやガラス越しに観察しながらツマミ操作を行なった場合でも、操作ツマミ2が必要なレベルより行き過ぎてしまうようなことを防止することができる。
【0066】
[2.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に示すような態様も包含するものである。例えば、上記の実施形態では、スライドフェーダを取り上げて説明したが、本発明は、スライド式に限らず、ロータリエンコーダにおいても、上述したのと同様の制御により、実現可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…モータフェーダ
2…操作ツマミ
3…制御回路
31…位置検出部
32…タッチ検出部
33…トルク付加部
33a…トルクテーブル記憶部
33b…トルクレベル設定部
4…モータ制御部
5…タッチセンサ
6…設定操作部
M…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド移動又は回転移動して音量レベルを変更させる操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートシステムにおいて、
前記制御回路は、前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加手段を備え、
前記トルク付加手段は、前記操作部の移動にかかるトルクとして、軽トルクと重トルクとを変更可能に設定されたことを特徴とする音声調整装置の操作サポートシステム。
【請求項2】
スライド移動又は回転移動する操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートシステムにおいて、
前記制御回路は、
前記操作部のスライド移動量又は回転移動量から現在の位置を読み取る位置読取手段と、
前記操作部の移動方向を検知する移動検知手段と、
前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加手段と、を備え、
前記トルク付加手段は、前記操作部の位置に応じて前記操作部にかけるトルクを設定した複数の制御パターンを記憶したトルクテーブル記憶手段と、前記操作部の位置情報と前記トルクテーブルとに基づいて前記操作部の移動にトルクをかけるトルクレベル設定手段と、からなることを特徴とする音声調整装置の操作サポートシステム。
【請求項3】
前記制御パターンには、
前記操作部の位置に関わらずトルクを一定にするパターンと、
前記操作部の位置が一定範囲外の場合に高トルクをかけるパターンと、
前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させるパターンと、
前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に上昇させるパターンと、
前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に減衰させるパターンと、
前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させつつ、一定範囲を超える場合に高トルクをかけるパターンと、のいずれか又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の音声調整装置の操作サポートシステム。
【請求項4】
前記操作部には、ユーザが操作部に触れたか否かを検出するタッチセンサが設けられ、
前記制御回路は、
前記タッチセンサによるユーザ操作の検出の入力を受け、前記モータ制御を開始し、
前記タッチセンサにおけるユーザ操作の検出の入力がなくなった際に、前記モータ制御を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の音声調整装置の操作サポートシステム。
【請求項5】
スライド移動又は回転移動して音量レベルを変更させる操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートプログラムにおいて、
前記プログラムは、前記制御回路に、
前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加処理を実現させるものであり、
前記トルク付加処理は、前記操作部の移動にかかるトルクとして、軽トルクと重トルクとを変更可能に設定されたことを特徴とする音声調整装置の操作サポートプログラム。
【請求項6】
スライド移動又は回転移動する操作部と、前記操作部の移動を駆動するモータと、前記モータを制御する制御回路と、を備えた音声調整装置の操作サポートプログラムにおいて、
前記プログラムは、前記制御回路に、
前記操作部のスライド移動量又は回転移動量から現在の位置を読み取る位置読取処理と、
前記操作部の移動方向を検知する移動検知処理と、
前記モータの制御により前記操作部の移動にトルクをかけるトルク付加処理と、を実現させるものであり、
前記トルク付加処理は、前記操作部の位置に応じて前記操作部にかけるトルクを設定した複数の制御パターンを記憶したトルクテーブル記憶処理と、前記操作部の位置情報と前記トルクテーブルとに基づいて前記操作部の移動にトルクをかけるトルクレベル設定処理と、を含むことを特徴とする音声調整装置の操作サポートプログラム。
【請求項7】
前記制御パターンには、
前記操作部の位置に関わらずトルクを一定にするパターンと、
前記操作部の位置が一定範囲外の場合に高トルクをかけるパターンと、
前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させるパターンと、
前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に上昇させるパターンと、
前記操作部の位置に応じてトルクをLogカーブ状に減衰させるパターンと、
前記操作部の位置に比例してトルクを上昇又は減衰させつつ、一定範囲を超える場合に高トルクをかけるパターンと、のいずれか又は複数の組み合わせを含むことを特徴とする請求項5又は6記載の音声調整装置の操作サポートプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33767(P2012−33767A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172771(P2010−172771)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】