説明

音声通信システム

【課題】通信の前後での違和感を排除しスムーズな音声通信を可能とする音声通信システムを提供すること。
【解決手段】管制官の発した音声信号と管制官の操作に基づくPTT信号とを電気信号に変換したのち、音声信号と同じタイミングのPTT信号を一つの伝送データに同期多重するようにしている。これにより音声信号とPTT操作の同期タイミングとを保持した状態で宛て先まで伝送でき、通話開始時の頭切れ、通話開始前の不要な音声信号の伝送をなくし、かつ通話終了時の語尾切れ、通話後の不要な音声信号の伝送のない音声通信システムを提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空管制用の音声通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制の分野では、通常、管制官とパイロットとの間で1対多(または多対多)および半2重での通信がなされる。このためプレス・トゥ・トークスイッチ(PTT(press to talk)スイッチ)を備えた無線通信機が用いられる(例えば特許文献1を参照)。PTTスイッチを押すことにより通話回線が設定され、通話が開始される。
【0003】
ところで既存の技術では、PTTスイッチの押下を示すPTT信号と音声信号とは互いに別系統で処理される。よって両信号の処理タイミングにずれが生じると通話開始時の頭切れ、通話開始前の不要な音声信号の伝送、通話終了時の語尾切れ、通話後の不要な音声信号の伝送などが起こる。このことは使用者に違和感を与えたり、重要な情報を伝えきれないといった弊害を招き、航空機の運行に危険をもたらす虞があるので何らかの対策が望まれている。
【特許文献1】特開平11−163786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように既存の音声通信システムには、無線機へ入力される音声信号とPTT信号とのタイミングに差が生じることにより、通話開始時の頭切れ、通話開始前の不要な音声信号の伝送、通話終了時の語尾切れ、通話後の不要な音声信号の伝送などが起こる。管制官とのパイロットとの通話時にこのようなタイミングずれを許容することはできないので、何らかの対処が望まれる。
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、通信の前後での違和感を排除しスムーズな音声通信を可能とする音声通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様によれば、プレス・トゥ・トークスイッチを備える通話機を介して入力された音声信号を伝送データ化する入力インタフェース手段と、前記プレス・トゥ・トークスイッチの操作情報を前記伝送データに同期多重する多重手段と、前記操作情報の同期多重された伝送データを宛先に向け伝送する伝送処理手段と、前記伝送された伝送データを受信し、この伝送データから前記音声信号を前記操作情報と同期して再生する出力インタフェース手段とを具備することを特徴とする音声通信システムが提供される。
【0006】
このような手段を講じることにより、プレス・トゥ・トークスイッチの操作情報と音声信号とが互いに同期され、伝送データに多重化される。従って再生時においても音声信号と操作情報とを完全に同期させることができ、通話の前後での違和感を排除することが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、通信の前後での違和感を排除しスムーズな音声通信を可能とする音声通信システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明に係わる音声通信システムの実施の形態を示す機能ブロック図である。複数の管制官ごとに入力インタフェース(I/F)部11〜1nが設けられる。入力インタフェース(I/F)部11〜1nは管制官から発せられた音声信号と管制官の操作に基づくPTT信号とを電気信号に変換し、音声信号と同じタイミングのPTT信号を一つの伝送データ(音声信号+PTT信号)に同期多重する。
【0009】
この伝送データは各入力I/F部11〜1nから音声信号処理部2に入力される。音声信号処理部2は、伝送データの検出、レベル制御、分配、合成、および切換などの処理を行い、伝送データを宛先に向け伝送する。ここで、入力I/F部11〜1nおよび音声信号処理部2に対する制御は制御部3により統括的に実行される。制御部3はシステム全体に対する制御を統括的に行う。制御部3は、管制官の操作により伝送データの宛先を選択指定する処理も併せて行う。宛先が指定された場合、音声信号処理部2は伝送データをその宛先に向け伝送する。
【0010】
音声信号処理部2から出力された伝送データは出力I/F部41〜4mに伝送される。宛先が指定されている場合には、選択指定された宛先に対応する出力I/F部にのみ伝送データが伝送される。出力I/F部41〜4mは、受信した伝送データから音声信号をPTT信号と同期して再生し、図示しない無線機に送出する。一方、無線機から入力された音声信号は上記と逆の経路を辿り、入力I/F部11〜1nにおいて再生されて各管制官に向けた音声として出力される。
【0011】
図2は、図1のシステムにおける処理手順を示す概念図である。音声信号およびPTT信号はそれぞれ入力I/F部によりデータ化され(ステップS1)、同じ伝送データに同期多重される(ステップS2)。その後レベル制御、分配、合成、および切換などの処理を経て(ステップS3)宛先インタフェース部に達し、音声信号とPTT信号とが分離再生される(ステップS4)。このような手順により音声信号とPTT信号との処理時間が互いに同じになり、処理のタイミングのズレを完全に排除できる。
【0012】
図3は、既存の音声通信システムを示す機能ブロック図である。図3において入力インタフェース(I/F)部51〜5nは音声信号とPTT信号とを電気信号に変換し、このうち音声信号を音声信号処理部6に、PTT信号を制御部7にそれぞれ入力する。音声信号は音声信号処理部6によりレベル制御、分配、合成、および切換などの処理を経たのち宛先の出力I/F部81〜8mに伝送される。PTT信号は制御部7により宛先切り換えなどの処理を経たのち、音声信号と異なる処理ルートを介して宛先の出力I/F部81〜8mに伝送される。
【0013】
図4は、図3のシステムにおける処理手順を示す概念図である。音声信号およびPTT信号はそれぞれ入力I/F部から出力されたのち(ステップS6)、それぞれ別個の処理ルートによりレベル制御、分配、合成、および切換などの処理を実施される(ステップS7)。こののち両信号は出力I/F部に伝送されたのち(ステップS8)宛先の無線機に達する。このように別々の処理系統を辿ることから、音声信号の処理時間はX、PTT信号の処理時間はyというように、処理遅れ時間に差が生じる。これは通話時の違和感などの弊害を生じるため非常に好ましくない。
【0014】
これに対しこの実施形態では、管制官の発した音声信号と管制官の操作に基づくPTT信号とを電気信号に変換したのち、音声信号と同じタイミングのPTT信号を一つの伝送データに同期多重するようにしている。これにより音声信号とPTT操作の同期タイミングとを保持した状態で宛て先まで伝送でき、通話開始時の頭切れ、通話開始前の不要な音声信号の伝送をなくし、かつ通話終了時の語尾切れ、通話後の不要な音声信号の伝送のない音声通信システムを提供することが可能となる。
【0015】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係わる音声通信システムの実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1のシステムにおける処理手順を示す概念図。
【図3】既存の音声通信システムを示す機能ブロック図。
【図4】図3のシステムにおける処理手順を示す概念図。
【符号の説明】
【0017】
11〜1n…入力インタフェース(I/F)部、2…音声信号処理部、3…制御部、41〜4m…出力I/F部、51〜5n…入力インタフェース(I/F)部、6…音声信号処理部、7…制御部、81〜8m…出力I/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス・トゥ・トークスイッチを備える通話機を介して入力された音声信号を伝送データ化する入力インタフェース手段と、
前記プレス・トゥ・トークスイッチの操作情報を前記伝送データに同期多重する多重手段と、
前記操作情報の同期多重された伝送データを宛先に向け伝送する伝送処理手段と、
前記伝送された伝送データを受信し、この伝送データから前記音声信号を前記操作情報と同期して再生する出力インタフェース手段とを具備することを特徴とする音声通信システム。
【請求項2】
前記伝送データの宛先を選択指定する指定手段をさらに具備し、
前記伝送処理手段は、前記指定手段により指定された宛先に向け前記伝送データを伝送することを特徴とする請求項1に記載の音声通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−259284(P2007−259284A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83554(P2006−83554)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】