説明

音声通話装置

【課題】通話相手のいる場所の臨場感伝達と通話相手の音声の明瞭性向上を両立させる音声通話装置を提供することを目的とする。
【解決手段】音声通信モジュールから出力された受話信号を背景音分離器101は音声と背景音に分離し、背景音分離器101から出力された音声と背景音を再生するための音声再生用スピーカ102と背景音再生用スピーカ103を備える。これにより、通話相手のいる場所の背景音を再生し、臨場感を伝達することができる。また、通話相手の音声と背景音を異なる方向から再生することで、同じ方向から再生する場合に比べて、通話相手の音声の明瞭性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信回線を通じて通話する際に、通信相手の音声をスピーカから再生する音声通話装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音声通話装置として、通話中に所定の背景音を出力するための背景音出力手段を備えていることを特徴とする、通信装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、ノイズ抑圧処理方法として、ノイズが重畳された音声信号から、非音声区間に推定されたノイズのスペクトルを減算することで定常ノイズを抑圧する手法が知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−191796号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.F.Boll、「Suppression of Acoustic Noise in Speech Using Spectral Subtraction」、IEEE Transactions Acoustics、Speechand Signal Processing、vol.27、pp.113−120、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の音声通話装置では、あらかじめ用意してある特定の背景音を出力するのみで、実際の通話相手の音声に重畳されている背景音を通話者へ伝えることができないという問題があった。また、従来のノイズ抑圧処理を行うことで、音声の明瞭性は向上するが、音声に重畳されたノイズに含まれる通話相手側の臨場感を損なってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、通話相手の音声の明瞭性向上と臨場感の伝達を両立する音声通話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、通話相手から送られてくる信号を通話相手の音声と背景音に分離する背景音分離器と、前記背景音分離器によって分離された通話相手の音声と背景音を再生する異なる位置に設置された複数のスピーカとを備える構成を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通話相手の音声と背景音を異なる位置に設置されたスピーカから再生することが可能であるために、通話相手の音声の明瞭性向上と臨場感の伝達の2つの効果を有する音声通話装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における音声通話装置のブロック図
【図2】本発明の音声通話装置における背景音分離器の一例を示すブロック図
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるエコーキャンセラの一例を示すブロック図
【図4】本発明の第2の実施の形態における音声通話装置のブロック図
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるエコーキャンセラの一例を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態における背景音サプレッサの一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態の音声通話装置について、図面を用いて説明する。
【0012】
本発明の第1の実施の形態の音声通話装置を図1に示す。図1において、音声通話装置100は、通話相手から送られてくる信号を図示していない音声通信モジュールから入力し、通話相手へ送る信号を前記音声通信モジュールへと出力するように構成されている。なお以降、通話相手から送られてくる信号、通話相手へ送る信号のことをそれぞれ受話信号、送話信号と呼ぶ。
【0013】
音声通話装置100は、前記音声通信モジュールから入力された受話信号を音声と背景音に分離する背景音分離器101と、背景音分離器101によって分離された音声と背景音をそれぞれ再生するための音声再生用スピーカ102と背景音再生用スピーカ103と、通話者の音声を収音するためのマイクロホン104と、音声再生用スピーカ102と背景音再生用スピーカ103で再生された音がマイクロホン104を通して回り込む音(エコー)を除去するためのエコーキャンセラ105とで構成されている。
【0014】
背景音分離器101と音声再生用スピーカ102、背景音再生用スピーカ103との間、およびマイクロホン104とエコーキャンセラ105との間に、信号を増幅するためのアンプが設けられていても良い。
【0015】
また、背景音分離器101と音声再生用スピーカ102、背景音再生用スピーカ103との間、およびエコーキャンセラ105と前記音声通信モジュールとの間にディジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換器が、前記音声通信モジュールと背景音分離器101との間、およびマイクロホン104とエコーキャンセラ105との間に、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器が設けられていても良い。
【0016】
なお、背景音分離器101とエコーキャンセラ105は、ディジタル演算処理が行える例えばディジタルシグナルプロセッサ(DSP)などの演算器によって実現しても良い。以上のように構成された音声処理装置について、図1を用いてその動作を説明する。
【0017】
まず、前記音声通信モジュールから出力された受話信号は、背景音分離器101に入力される。背景音分離器101は、入力信号である受話信号を音声と背景音に分離する。
【0018】
ここで、背景音とは音声以外の信号を指すが、音声以外の信号には通話相手がいる場所の周囲音が含まれる。
【0019】
例えば、通話相手が駅のホームにいる場合には、ホームにいる人のざわめきや、電車の音などである。
【0020】
この背景音を音声と共に再生すれば、通話相手のいる場所の臨場感を再生することができる。
【0021】
背景音分離器101によって、分離された音声と背景音は、それぞれ異なる位置に設置
された音声再生用スピーカ102、背景音再生用スピーカ103から再生される。
【0022】
音声を背景音と異なる位置に設置されたスピーカから再生するのは、音声と背景音が異なる方向から聞こえるてくることで、同じ方向から聞こえてくるよりも、音声の明瞭性が向上するからである。
【0023】
一方、通話者の音声は、マイクロホン104に入力され、送話信号として、通信モジュールから通信回線を通じて通話相手に送られる。
【0024】
マイクロホン104には、通話者の音声だけでなく、音声再生用スピーカ102から再生された音声と背景音再生用スピーカ103から再生された背景音も入力される。
【0025】
この音声再生用スピーカ102から再生された音声と背景音再生用スピーカ103から再生された背景音は、背景音分離器101によって分離された受話信号中に含まれる音声と背景音であるため、これらの信号が前記音声通信モジュールを通じて通話相手に送られると、通話相手からはエコーとして聞こえてしまう。
【0026】
そこで、このエコーを除去するために、エコーキャンセラ105を設けてある。エコーキャンセラ105には、マイクロホン104によって収音された信号と、背景音分離器101の出力信号である音声及び背景音とが入力される。
【0027】
エコーキャンセラ105は、マイクロホン104によって収音された信号から、背景音分離器101によって分離された音声及び背景音と相関の高い信号を除去し、通話者の音声だけを出力するように動作する。
【0028】
エコーキャンセラ105によってエコーを除去された信号は、送話信号として前記音声通信モジュールから通信回線を通じて通話相手に送られる。
【0029】
ここで、背景音分離器101の動作を、図2を用いて説明する。図2は、背景音分離器101の一例を示すブロック図である。
【0030】
図2において、200は背景音分離器、201、204は入力信号のゲインを変える乗算器、202は入力信号に含まれる背景音のレベルを推定する背景音レベル推定器、203は乗算器201、204の係数を更新するための係数更新器である。
【0031】
次に、このように構成された背景音分離器200の動作を説明する。背景音分離器200に入力された受話信号は、乗算器201、204によってそれぞれゲインが変えられ、それぞれ音声出力信号、背景音出力信号として出力される。
【0032】
背景音分離器200に入力された受話信号はまた、背景音レベル推定器202に入力され、背景音レベルが推定される。
【0033】
受話信号が音声に背景音が重畳されたような信号の場合、背景音レベル推定器202は、例えば最小値検出のような処理により背景音レベルを推定する。
【0034】
このような処理を行うことにより、音声が存在しない時間区間での定常的な背景音レベルを検出することができる。
【0035】
背景音レベル推定器202における背景音レベル推定方法は、音声区間以外の区間における背景音レベルの平均をとることで推定する方法としても良い。この場合にも、定常的
な背景音レベルを検出することができる。
【0036】
背景音レベル推定器202によって推定された背景音レベルは、係数更新器203の一方の入力となる。
【0037】
係数更新器203のもう一方の入力は、音声通信モジュールから入力された受話信号である。係数更新器203は、乗算器201、204に設定する係数を更新する。
【0038】
係数は、例えば以下のようにすれば算出することができる。いま、入力信号の振幅値をX、背景音レベル推定器202で推定された背景音の振幅値をNとすると、出力信号の振幅値Yを、
Y = X − N
のようにすれば、入力信号の振幅値から背景音の振幅値を減算したものが出力信号の振幅値となるようにすることができる。
上式の両辺をXで割ると、
Y/X = (X − N)/X
したがって、
Y = H・X
のように表すことができる。ただし、Hは、
H = (X − N)/X
である。
このHを乗算器201の係数として入力信号に乗算すれば、出力信号として背景音が減算された音声信号が得られる。ただし、これらの式は、振幅値として表したものであるので、音声出力信号の位相成分は、入力信号の位相成分と同じものを用いるものとする。
【0039】
また、Y = H・Xに、Y = X − Nを代入すると、
X − N = H・X
N = X − H・X
= (1 − H)・X
である。
【0040】
この(1−H)を乗算器204の係数として入力信号に乗算すれば、出力信号として背景音が得られる。ただし、前述の音声信号の場合と同様に、これらの式は、振幅値として表したものであるので、背景音出力信号の位相成分は、入力信号の位相成分と同じものを用いるものとする。
【0041】
なお、以上の説明は、信号全体で1つの乗算を行うこととして説明したが、入力信号を複数の周波数バンドに分割し、各周波数バンドごと背景音レベルを推定し、乗算処理を行うようにしても良い。
【0042】
この場合には、より詳細な制御が可能になり、音声と背景音の分離効果が向上するという効果を有する。
【0043】
次に、エコーキャンセラ105の動作を、図3を用いて説明する。図3は、エコーキャンセラ105の一例を示すブロック図である。
【0044】
図3において、300はエコーキャンセラ、301は背景音キャンセラ用適応フィルタ、302は音声キャンセラ用適応フィルタ、303は背景音キャンセラ用適応フィルタ301の係数を更新するための背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器、304は音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数を更新するための音声キャンセラ用適応フィルタ更新
器、305はマイクロホン104により収音されたマイクロホン入力信号から背景音キャンセラ用適応フィルタ301の出力信号を減算する減算器、306は減算器305の出力信号から音声キャンセラ用適応フィルタ302の出力信号を減算する減算器である。
【0045】
このように構成されたエコーキャンセラ300の動作を説明する。前述のように、マイクロホン104には、通話者の音声に加えて、背景音分離器101によって分離された音声と背景音がそれぞれ音声再生用スピーカ102、背景音再生用スピーカ103から再生された信号も入力される。
【0046】
マイクロホン104により収音された信号はマイクロホン入力信号として、エコーキャンセラ300に入力され、減算器305の一方の入力となる。
【0047】
一方、背景音分離器101から出力された背景音が背景音入力信号として、背景音キャンセラ用適応フィルタ301に入力される。
【0048】
背景音キャンセラ用適応フィルタ301は例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成され、FIRフィルタの係数を背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303で更新することで、フィルタの特性を所望の振幅および位相特性とすることができる。
【0049】
背景音キャンセラ用適応フィルタ301は、入力信号の振幅特性と位相特性を変更して出力する。
【0050】
背景音キャンセラ用適応フィルタ301の出力信号は、減算器305のもう一方の入力となる。減算器305は、前記マイクロホン入力信号から背景音キャンセラ用適応フィルタ301の出力信号を減算して出力する。
【0051】
背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、背景音分離器101から出力された背景音入力信号と減算器305の出力信号とから、例えばLMS(Least Mean
Square)アルゴリズムを用いて背景音キャンセラ用適応フィルタ301の係数を更新する。
【0052】
LMSアルゴリズムは、FIRフィルタの係数を誤差の2乗和が最小になるように逐次更新するアルゴリズムである。誤差を前記マイクロホン入力信号から背景音キャンセラ用適応フィルタ301の出力信号を減算する減算器305の出力信号として、背景音キャンセラ用適応フィルタ301の係数を更新すれば、前記マイクロホン入力信号から背景音入力信号と相関の高い信号だけを除去するように背景音キャンセラ用適応フィルタ301の係数を設定することができる。
【0053】
つまり、減算器305の出力は、前記マイクロホン入力信号から背景音分離器101によって分離された背景音と相関の高い信号だけが除去され、通話者の音声と音声再生用スピーカ102から再生された音声とから成る信号となる。
【0054】
減算器305の出力は、減算器306の一方の入力となる。一方、背景音分離器101から出力された音声が音声入力信号として、音声キャンセラ用適応フィルタ302に入力される。
【0055】
音声キャンセラ用適応フィルタ302は背景音キャンセラ用適応フィルタ301と同様に、例えばFIRフィルタで構成され、FIRフィルタの係数を音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304で更新することで、フィルタの特性を所望の振幅および位相特性とす
ることができる。音声キャンセラ用適応フィルタ302は、入力信号の振幅特性と位相特性を変更して出力する。音声キャンセラ用適応フィルタ302の出力信号は、減算器306のもう一方の入力となる。減算器306は、前記マイクロホン入力信号から音声キャンセラ用適応フィルタ302の出力信号を減算して出力する。
【0056】
音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304は、背景音分離器101から出力された音声入力信号と減算器306の出力信号とから、例えばLMSアルゴリズムを用いて音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数を更新する。
【0057】
背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303の係数更新と同様に、LMSアルゴリズムにおける誤差を減算器305の出力信号から音声キャンセラ用適応フィルタ302の出力信号を減算する減算器306の出力信号として、音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数を更新すれば、減算器305の出力信号から背景音分離器101から出力される音声信号と相関の高い信号だけを除去するように音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数を設定することができる。
【0058】
つまり、減算器306の出力は、減算器305の出力信号から背景音分離器101によって分離された音声と相関の高い信号だけが除去され、通話者の音声のみとなる。
【0059】
減算器306の出力は、エコーキャンセラ300の出力信号として、送話出力信号となる。全体として、エコーキャンセラ300は、前記マイクロホン入力信号から、背景音分離器101が出力する音声と背景音と相関の高い信号を除去して、通話者の音声のみを出力するように動作する。
【0060】
ただし、背景音キャンセラ用適応フィルタ301と音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数更新を行う期間には、制約が存在する。
【0061】
背景音キャンセラ用適応フィルタ301の係数更新を行う場合、背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、減算器305に入力される前記マイクロホン入力信号に背景音再生用スピーカ103から再生された背景音のみが存在するときに、更新処理を行う必要がある。
【0062】
これは、他の信号の存在によって、係数更新の精度が劣化するのを防ぐためである。そのため、背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、背景音分離器101から出力される背景音入力信号の信号検出を行う。
【0063】
さらに、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304は、背景音分離器101から出力される音声入力信号の信号検出を行い、その検出結果を背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303へ通知する。
【0064】
2つの信号検出結果から、背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、背景音のみが存在している期間を検出し、背景音のみが存在している期間において、更新処理を行う。
【0065】
同様に、音声キャンセラ用適応フィルタ302の係数更新を行う場合、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304は、減算器306に入力される減算器305の出力信号に音声再生用スピーカ102から再生された音声のみが存在する場合に、更新処理を行う必要がある。
【0066】
そのため、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304は、背景音分離器101から出
力される音声入力信号の信号検出を行う。
【0067】
さらに、背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、背景音分離器101から出力される背景音入力信号の信号検出と減算器305の出力信号の信号検出を行い、その検出結果を音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304に通知する。
【0068】
背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303は、減算器305の出力から信号が検出されない場合、背景音入力信号の信号検出の結果に関わらず、背景音キャンセラ用適応フィルタ301により、背景音が除去されていると判断し、背景音検出無しという結果を出力する。
【0069】
背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器303はまた、減算器305の出力から信号が検出される場合、通常通り、背景音分離器101から出力される背景音入力信号の信号検出結果を出力する。
【0070】
これら背景音分離器101から出力される音声および背景音の信号検出結果から、音声のみが存在する期間を検出し、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304は、更新処理を行う。
【0071】
このような本発明の第1の実施形態の音声通話装置によれば、受話信号に含まれる音声と背景音を分離するための背景音分離器と、前記背景音分離器によって分離された音声と背景音をそれぞれ異なる位置から再生するための音声再生用スピーカ、背景音再生用スピーカとを備えることにより、受話信号の音声と背景音を異なる位置から再生することができるため、通話相手のいる場所の臨場感を再生しながら、音声の明瞭性を向上させることができるものである。
【0072】
また、通話者の音声を収音するマイクロホンと、前記マイクロホンの入力信号に含まれる前記音声再生用スピーカおよび前記背景音再生用スピーカから再生される信号を除去するエコーキャンセラとを備えることにより、前記マイクロホンの入力信号に含まれるエコー成分を除去することができ、通話相手にエコーの無い通話者の音声を送ることができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態の音声通話装置を図4に示す。図4において、音声通話装置400は、前記実施の形態1と同様に、図示していない音声通信モジュールから受話信号を入力し、送話信号を前記音声通信モジュールへと出力するように構成されている。
【0073】
音声通話装置400は、前記音声通信モジュールから入力された受話信号を音声と背景音に分離する背景音分離器401と、背景音分離器401によって分離された音声と背景音をそれぞれ再生するための音声再生用スピーカ402と背景音再生用スピーカ403と、通話者の音声を収音するためのマイクロホン404と、音声再生用スピーカ402で再生された音がマイクロホン404を通して回り込む音(エコー)を除去するためのエコーキャンセラ405と、マイクロホン404に入力された音から、背景音再生用スピーカ403から再生された背景音を抑圧するための背景音サプレッサ406とで構成されている。
【0074】
以上のように構成された音声通話装置について、図4を用いてその動作を説明する。図4において、背景音分離器401、音声再生用スピーカ402、背景音再生用スピーカ403、マイクロホン404の動作は、前記実施の形態1と同様である。
【0075】
前記実施の形態1では、エコーキャンセラ105は、音声再生用スピーカ102から再生された音声と背景音再生用スピーカ103から再生された背景音を除去するように動作していたが、実施の形態2では、エコーキャンセラ405において、音声再生用スピーカ402から再生された音声を除去し、背景音サプレッサ406において、背景音再生用スピーカ403から再生された背景音を抑圧するように動作する。
【0076】
まず、エコーキャンセラ405の動作を図5を用いて説明する。図5において、エコーキャンセラ500は、音声キャンセラ用適応フィルタ501、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器502、減算器503を備える。
【0077】
音声キャンセラ用適応フィルタ501、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器502、減算器503の動作は、それぞれ前記実施の形態1における音声キャンセラ用適応フィルタ302、音声キャンセラ用適応フィルタ更新器304、減算器306の動作と同様である。
【0078】
適応フィルタとして音声キャンセラ用適応フィルタ501のみを有する構成としたため、マイクロホン404に入力された信号から、エコーキャンセラ405は、背景音分離器401により分離された音声と相関の高い信号のみを除去し、通話者の音声と背景音再生用スピーカ403から再生された背景音の信号を出力する動作をする。
【0079】
次に、背景音サプレッサ406の動作を図6を用いて説明する。図6において、背景音サプレッサ600は、乗算器601、背景音レベル推定器602、係数更新器603を備えた構成である。
【0080】
乗算器601、背景音レベル推定器602、係数更新器603の動作は、それぞれ前記実施の形態1における乗算器201、背景音レベル推定器202、係数更新器203の動作と同様である。
【0081】
ただし、背景音レベル推定器602には、背景音分離器401が分離した背景音も入力されている。背景音レベル推定器602の入力信号として、マイクロホン404に入力された信号からエコーキャンセラ405によってエコーが除去された信号だけでなく、背景音分離器401によって分離された背景音も入力することで、背景音レベルをより高い精度で推定することができる。
【0082】
このような本発明の第2の実施の形態の音声通話装置によれば、受話信号に含まれる音声と背景音を分離するための背景音分離器と、前記背景音分離器によって分離された音声と背景音をそれぞれ異なる位置から再生するための音声再生用スピーカ、背景音再生用スピーカとを備えることにより、受話信号の音声と背景音を異なる位置から再生することができるため、通話相手のいる場所の臨場感を再生しながら、音声の明瞭性を向上させることができるものである。
【0083】
また、通話者の音声を収音するマイクロホンと、前記マイクロホンの入力信号に含まれる前記音声再生用スピーカから再生される信号を除去するエコーキャンセラと、前記マイクロホンの入力信号に含まれる前記背景音再生用スピーカから再生される信号を抑圧する背景音サプレッサとを備えることにより、前記マイクロホンの入力信号に含まれるエコー成分を除去または抑圧することができ、通話相手にエコーのない通話者の音声を送ることができる。背景音の抑圧を前記背景音サプレッサを用いて行うことで、エコーキャンセラを用いるときよりも演算量が少なくすることができ、システム構成を簡単にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の音声通話装置は、通話相手の音声をスピーカから再生する際に、背景音分離器から分離された通話相手の音声と背景音をそれぞれ異なる位置に設置されたスピーカから再生するため、通話相手のいる場所の臨場感を伝達するという効果と通話相手の音声の明瞭性を向上させるという効果を有し、通信回線を通じて通話する際に、通話相手の音声をスピーカから再生する音声通話装置として有用である。
【符号の説明】
【0085】
100、400 音声通話装置
101、401 背景音分離器
102、402 音声再生用スピーカ
103、403 背景音再生用スピーカ
104、404 マイクロホン
105、300、405、500 エコーキャンセラ
200 背景音分離器
201、204、601 乗算器
202、602 背景音レベル推定器
203、603 係数更新器
301 背景音キャンセラ用適応フィルタ
302、501 音声キャンセラ用適応フィルタ
303 背景音キャンセラ用適応フィルタ更新器
304、502 音声キャンセラ用適応フィルタ更新器
305、306、503 減算器
406、600 背景音サプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話相手の音声を音声と背景音に分離する背景音分離器と、前記背景音分離器にて分離された音声を再生する音声再生用スピーカと、前記音声再生用スピーカと異なる位置に設置された前記背景音分離器にて分離された背景音を再生する背景音再生用スピーカとを備え、前記背景音分離器から出力される音声と背景音とを異なる位置に設置された前記音声再生用スピーカおよび前記背景音再生用スピーカからそれぞれ再生することを特徴とする音声通話装置。
【請求項2】
通話者の音声を収音するマイクロホンと、前記マイクロホンに入力されるエコーを除去するエコーキャンセラとを備え、前記エコーキャンセラは、前記背景音分離器で分離された音声と背景音が前記音声再生用スピーカおよび前記背景音再生用スピーカによって再生される信号を除去することを特徴とする請求項1記載の音声通話装置。
【請求項3】
通話者の音声を収音するマイクロホンと、前記マイクロホンに入力されるエコーを除去するエコーキャンセラと、前記マイクロホンに入力される前記背景音を抑圧する背景音サプレッサとを備え、前記エコーキャンセラは、前記背景音分離器で分離された音声が前記音声再生用スピーカによって再生される信号を除去し、前記背景音サプレッサは、前記背景音分離器で分離された背景音が前記背景音再生用スピーカによって再生される信号を抑圧することを特徴とする請求項1記載の音声通話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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