説明

音発生摩耗表示器付きのタイヤ

本発明は、トレッド(12)を有するタイヤ(10)であって、トレッド(12)を有し、トレッド(12)は、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、トレッド(12)が音発生キャビティと呼ばれている少なくとも1対の第1及び第2の音発生キャビティ(20A,20B)を有するように構成されているようなタイヤ(10)に関する。第1及び第2のキャビティ(20A,20B)はそれぞれ、トレッド(12)の第1及び第2の周方向溝(16A,16B)の各々の中に配置されている。対をなす音発生キャビティ(20A,20B)は各々、トレッド(12)中に形成された音発生チャネル(21)によって対の他方の音発生キャビティ(20A,20B)に連結されている。対をなすキャビティ(20A,20B)の各々及び関連のチャネル(21)は、タイヤ(10)の半径方向外部に開口すると共に対をなすキャビティ(20A,20B)の各々及び関連のチャネル(21)がタイヤ(10)と路面(11)の接領域を通過する際に対をなすキャビティ(20A,20B)の各々及び関連のチャネル(21)が路面によって実質的に密封的に閉じられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用タイヤの分野及びタイヤの摩耗レベルをどのように検出するかの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤが路面上を走行しているとき、路面と接触状態にあるそのトレッドストリップは、摩擦により摩耗状態になる。
【0003】
明白な安全上の理由で、タイヤのトレッドストリップの摩耗がひどくなり過ぎて濡れた路面に対するグリップの問題を生じさせる恐れを引き起こす前に、タイヤを交換することが重要である。
【0004】
摩耗の程度をチェックし、過度に目立った摩耗を検出するのを容易にするため、タイヤは、トレッド摩耗表示器を備えているのが通例である。
【0005】
一般的に用いられるトレッド摩耗表示器の一例は、タイヤのトレッドパターンの溝の底部に作られたリブであり、このリブの高さは、タイヤが正確且つ確実に働くようにするのに必要なタイヤ溝の最小深さに対応している。かくして、タイヤトレッドストリップが摩耗状態になり、リブの頂部がトレッドストリップの外面と面一をなすと、このことは、溝深さに許容される最小深さに達したこと又は実際にはこれを過ぎていることを意味している。したがって、タイヤを安全上の理由で交換することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のトレッド摩耗表示器と関連した1つの欠点は、このトレッド摩耗表示器では、自動車の運転手の側に注意深さが必要であると共に自分のタイヤの条件を定期的に目視検査をする必要があるということにある。今日、大抵の運転手は、かかる点検の実施を省き、例えば、ガレージでの義務付けられた車両試験の際、タイヤの摩耗状態を点検したときに、大抵の運転手の行なうタイヤの交換が遅すぎている。
【0007】
本発明の特定の目的は、効果的であり且つ当てになる新規形式の摩耗表示器を備えたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の要旨は、車両用タイヤにおいて、トレッドストリップを有し、トレッドストリップは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、トレッドストリップが音発生キャビティと呼ばれている少なくとも1対の第1及び第2のキャビティを有するように構成され、第1及び第2のキャビティは各々、トレッドストリップの第1及び第2の周方向溝の各々の中にそれぞれ配置され、対の各音発生キャビティは、トレッドストリップ中に形成された音発生チャネルと呼ばれているチャネルによって対の他方の音発生キャビティに連結されており、対の各キャビティ及び関連のチャネルは、
‐タイヤの半径方向外部に開口しており、
‐対の各キャビティ及び関連のチャネルがタイヤと路面の接触場所としての接触パッチを通過する際に対の各キャビティ及び関連のチャネルが路面によって実質的に気密状態に閉じられるように構成されていることを特徴とするタイヤにある。
【0009】
本発明により、タイヤが危険であると考えられている摩耗しきい値を超えて摩耗すると、1つ又は2つ以上の対をなす音発生キャビティ及び1つ又は2つ以上の関連の音発生チャネルがトレッドストリップ上に現われる。
【0010】
これらキャビティ及び関連のチャネルは、これらに音発生又は音響特性を与える特定の形状を有し、即ち、これらキャビティ及び関連のチャネルは、摩耗タイヤで運転しているときに特徴的な騒音又はノイズを生じさせる。
【0011】
具体的に説明すると、1対のキャビティ及びこれらキャビティを互いに結合するチャネルは、これらが路面により実質的に気密状態に閉じられるように構成されているので、空気は、1対のキャビティ及びチャネルがタイヤと路面の接触場所としての接触パッチを通過する際に一時的に取り込まれる。いまや、接触パッチにおけるタイヤの変形の影響を受けて、1対のキャビティ及び関連のチャネル内に取り込まれたこの空気は、圧縮状態になり、次に、トレッドストリップがタイヤの後部で路面との接触関係を絶つときに接触パッチを出る際に、突然膨張し、したがって、1対のキャビティ及び関連のチャネルは、開き状態になる。
【0012】
空気のこの膨張は、数ミリ秒のオーダーで続き、特に1対のキャビティ及び関連のチャネルの形状及び容積で決まる特定の騒音を生じさせ、かかる騒音は、ヒッシング(擦音)又は空気圧送ノイズと呼ばれる場合がある。
【0013】
タイヤが或る特定のしきい値を超えて摩耗した場合にのみ現われるこの特徴的な騒音は、かくして、可聴摩耗表示器となる。かくして、運転手が自分のタイヤの表面条件を定期検査及び目視検査を行なわない場合であっても、運転手には、運転中、自分がこの特徴的な擦音を聞くと、自分のタイヤが過度に摩耗していることが知らされることになる。
【0014】
溝内における配置場所に鑑みて、キャビティ及び関連のチャネルにより放出される騒音は、可聴摩耗表示器がトレッドストリップ中のどこか他の場所に配置されていた場合に聞こえる騒音と比較して増幅される。放出された騒音は又、キャビティ及び関連のチャネルがいったん接触場所を通過すると、タイヤ及び路面により形成されるホーンによっても増幅される。ホーン効果によるこの増幅は、音発生キャビティが好ましくはタイヤの接触パッチの中央部分に軸方向に配置されている場合にその最大状態にある。
【0015】
接触パッチの中央部分という表現は、公称圧力及び負荷条件下においてこの接触パッチの幅の実質的に半分にわたり軸方向に延び、タイヤの中央子午面に対して心出しされた接触パッチの領域を意味している。
【0016】
さらに、音発生キャビティは、かかる音発生キャビティを備えていないタイヤと比較して、特に溝が水を排出する性能の面で、タイヤの性能を劣化させる場合がある。各対のキャビティを互いに結合するチャネルは、この性能低下を補償することができると同時に、タイヤの摩耗度を検出することができるようにする。
【0017】
好ましくは、音発生キャビティ及び関連のチャネルの形状及び容積は、1対のキャビティ及び関連のチャネルが接触パッチを通過することにより生じる騒音の周波数及び強度がこの騒音を車両の運転室から運転手に聞こえるようにするよう定められる。
【0018】
また、この擦音を検出するため、コンピュータに接続されていて、ロードノイズのうちで擦音を識別することができると共に運転手にタイヤの摩耗状態を知らせることができる1つ又は2つ以上のロードノイズ検出マイクロホンを用いることが可能である。
【0019】
このヒッシング現象は、空気が1対のキャビティ及び関連のチャネル内で圧縮され、次にこれらから出る際に膨張する場合にのみ生じると仮定すると、1対のキャビティ及び関連のチャネルをこれらが接触パッチを通過する際に路面によって実質的に気密状態に閉じるということが重要である。具体的に説明すると、キャビティ又は頂部が路面によって覆われるが、更に、外部空気と流体連通状態にある横方向チャネルを有する場合のあるチャネルは、複数の音発生キャビティ又は1つの音発生チャネルを形成しない。というのは、これらキャビティ又はチャネルが収容している空気は、圧縮可能ではないからである。これは、一般にチャネル網で形成され、それにより種々のキャビティが互いに連通すると共に外部空気と連通している先行技術のタイヤのトレッドストリップのタイヤパターンに関して特にそうである。
【0020】
同様に、複数のキャビティ又は1つのチャネルが接触パッチを通過する際に路面が複数のキャビティ又は1つのチャネルを完全に覆うことができるようにするには大きすぎる寸法の複数のキャビティ又は1つのチャネル、例えば、接触パッチの長さよりも長い長さの複数のキャビティ又は1つのチャネルは、本発明の意味の範囲内における音発生キャビティ又はチャネルを形成することができないであろう。
【0021】
本発明のタイヤは、以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有することができる。
【0022】
‐対をなすキャビティは、互いに実質的に軸方向に位置合わせされている。
【0023】
‐所定の摩耗しきい値に達する前に、特に、タイヤが新品のとき、タイヤは、音発生キャビティの対を備えておらず、しかも、関連の音発生チャネルを備えていない。かくして、音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルが接触パッチを通過したときの特徴的なヒッシングは、タイヤ摩耗が所定のしきい値を超えた場合にのみ生じる。かくして、タイヤの通常の有効寿命中、可聴信号が聞こえることはない。最初のヒッシングは、タイヤ摩耗が、少なくとも1対の音発生キャビティ及び関連のチャネルがタイヤのトレッドストリップ上に現われるようになる程度まで、生じることはない。
【0024】
‐1対の音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルは、トレッドストリップに形成された輪郭によって定められた口を有し、輪郭は、1対のキャビティ及び関連のチャネルを平坦な路面によって実質的に気密状態に閉じることができるよう実質的に平らである。換言すると、1対のキャビティ及び関連のチャネルを路面により簡単な仕方で閉じることができる。というのは、1対のキャビティ及び関連のチャネルは、トレッドストリップの種々の表面上に、例えばトレッドストリップに形成されたトレッドストリップ中に形成されたトレッドブロックの内側上に開口しているチャネルを含まないからである。
【0025】
‐タイヤが新品のとき、第1及び第2の溝の各々が所定の幅を備えている状態で、トレッドストリップは、第1及び第2の溝の各々の底部に横方向に形成された少なくとも2つのリブを有し、リブは、タイヤが新品のとき、所定の高さのものであり、この高さは、第1及び第2の溝の各々の所定の深さと所定の摩耗しきい値の差に実質的に等しく、タイヤは、2つのリブを隔てる距離が、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、第1及び第2の溝の各々により形成されると共に2つのリブにより画定された各キャビティが音発生キャビティとなるよう所定の距離よりも小さいようなものである。先行技術では、可視摩耗表示器も又、タイヤの周方向溝の底部のところに形成したリブによって形成されている。しかしながら、これら可視摩耗表示器は、一般に、数が6〜8であり、したがって、リブは、互いに非常に広い間隔を置いて位置している。かくして、2つの隣り合うリブを隔てる距離は、タイヤが路面と接触する場所としての接触パッチの長さよりもはるかに長く、2つの隣り合うリブが、路面と同時に接触状態になる時期は全く存在しない。かくして、先行技術では、溝により定められると共に2つの隣り合うリブで画定された容積部は、明らかにキャビティを形成するが、このキャビティは、音発生キャビティではない。というのは、このキャビティを路面により実質的に気密状態に閉じることができないからである。
【0026】
‐2つのリブを隔てる距離は、15ミリメートルを超え且つ50ミリメートル未満である。この距離は、接触パッチの距離よりも非常に短いので、これら2つのリブ及び関連のチャネルにより画定されるキャビティを路面により気密状態に確実に閉じることができるようになることが可能である。
【0027】
‐所定の半径方向摩耗しきい値を超え1対の又は複数対の音発生キャビティ及び1つ又は複数の関連の音発生チャネルの全容積は、4cm3以上、好ましくは5cm3以上である。かかるキャビティ容積は、キャビティが接触パッチを通過する際に、ヒッシングの強度がこれをタイヤが路面に沿って出すロードノイズの残部並びにエンジンノイズ及びこれと関連したドライブトレインのノイズの中から区別することができるほど大きいようにするために必要である。さらに、この値は、従来型タイヤの性能をそれほど劣化させないでキャビティをかかる従来型タイヤ中に形成することができるほど小さい。
【0028】
‐タイヤが新品のとき、キャビティは、トレッドストリップの塊の中に閉じられると共に埋め込まれており、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、チャネルは、対のキャビティを互いに結合してキャビティ及び関連のチャネルが音発生キャビティ及びチャネルになるようになっている。したがって、これらキャビティは、新品のタイヤ上では見えず、タイヤが次第に摩耗状態になると現われるようになる。
【0029】
‐タイヤが新品のとき、チャネルは、トレッドストリップの塊の中に閉じられると共に埋め込まれており、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、チャネルは、対のキャビティを互いに結合してキャビティ及び関連のチャネルが音発生キャビティ及びチャネルになるようになっている。
【0030】
‐トレッドストリップは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、トレッドストリップが複数の対をなす音発生キャビティ及び複数の関連の音発生チャネルを有し、キャビティ及びチャネルは、同一形状のものであり、各対の各音発生キャビティは、トレッドストリップ中に形成された関連のチャネルによって対の他方の音発生キャビティに結合されるように構成されている。
【0031】
‐所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、対をなす音発生キャビティ及び複数の関連の音発生チャネルは、タイヤの周囲に沿って均等に分布して配置されている。複数の対をなすキャビティ及び関連のチャネルの一様な周方向分布により、タイヤが一定速度で走行しているときに各対のキャビティにより放出される騒音の時間的に一様な分布状態を得ることができる。タイヤがちょうど1つの対をなすキャビティ及び1つの関連のチャネルを有する場合によっても、これにより、タイヤが一定速度で駆動されているときに放出される騒音の時間的に一様な分布状態を得ることができる。かかる均等に分布されたキャビティ及びチャネルにより放出される騒音は、独特であり、したがって、この騒音を適当な検出プロセスを用いて識別すると共に分析することができる。
【0032】
‐タイヤは、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、2つの対をなすキャビティ及び2つの関連のチャネル又は4つの対をなすキャビティ及び4つの関連のチャネルを有する。タイヤの製造上の理由及びトレッドストリップのトレッドパターンとの適合性の理由で、タイヤ摩耗検出機能を損なわないで、キャビティの対の数及び関連のチャネルの数をできるだけ減少させることが有利である。
【0033】
本発明の内容は、一例と示されているに過ぎず、図面を参照して行なわれる以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態としての新品タイヤのトレッドストリップの略図である。
【図2】図1に示されているタイヤのトレッドストリップを摩耗状態で示す略図である。
【図3】図2に示されているタイヤのトレッドストリップの半径方向断面図である。
【図4】フロントアクスルに図2のタイヤに類似した2本のタイヤを備えた車両が3通りの互いに異なる速度で滑らかな路面上を走行しているときに生じる音の周波数スペクトルを示す3つのグラフ図である。
【図5】図1及び図2に類似した図であるが、第2の実施形態としてのタイヤを示す図である。
【図6】図1及び図2に類似した図であるが、第2の実施形態としてのタイヤを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、全体が参照符号10で示された本発明の第1の実施形態としてのタイヤの一部を示している。
【0036】
タイヤ10は、実質的に円筒形のトレッドストリップ12を有し、その外面は、トレッドパターン14を備えている。具体的に説明すると、トレッドストリップ12は、タイヤの表面中に切り込まれていて、タイヤ10が新品の場合に所定深さの第1及び第2の周方向の且つ互いに平行な溝16A,16Bを有する。例えば、これら溝の深さは、乗用車の場合8ミリメートルのオーダーのものである。
【0037】
タイヤのトレッドストリップ12は、溝16A,16Bの底部のところに形成されていて、溝16A,16Bに対して横方向に延びる1組のリブ18を有し、これらリブ18の高さは、タイヤが新品の場合にあらかじめ定められている。例えば、これらリブの高さは、3ミリメートルのオーダーのものである。図1に示されている実施例では、リブ18は、タイヤ10の周囲全体に沿って一様に分布して配置されており、2つの隣り合うリブを隔てる距離は、20〜30ミリメートルのオーダーのものである。
【0038】
トレッドストリップ12は、第1及び第2の溝16A,16Bにそれぞれ配置された1対の第1及び第2のキャビティ20A,20B及び1対のキャビティ20A,20Bと関連した横方向チャネル21を更に有している。チャネル21は、ストリップ12中に形成されていて、キャビティ20A,20Bを互いに結合している。
【0039】
キャビティ20A,20Bは、軸方向に位置が合わされている。変形例として、これらキャビティは、互いに軸方向にオフセットしている。
【0040】
各溝16A,16B及び2つの隣り合うリブ18により構成された容積部は、それぞれ、タイヤ10の半径方向外側に開口した各キャビティ20A,20Bを形成する。チャネル21も又、タイヤ10の外側に開口している。
【0041】
タイヤが新品の場合、図1に示されているように、リブ18の高さは、溝16の深さよりも小さく、このことは、2つの隣り合うキャビティ20A,20Bがリブ18の上方に、即ち、リブ18の頂部上に位置した流体連通通路を構成することを意味している。かくして、トレッドストリップが平坦で且つ滑らかな路面11と接触状態にあるときでも、路面11は、キャビティ20A,20Bを完全に閉じることはない。というのは、リブの頂部は、路面11と接触状態にないからである。かかる場合、種々の隣り合うキャビティ20A,20Bは、リブの頂部及びキャビティを覆っている路面11により又は変形例として、チャネル21により画定された制限チャネルを介して互いに流体連通状態にある。
【0042】
図2は、図1のタイヤ10を摩耗状態で示している。換言すると、このタイヤは、極めて長い距離(キロメートル)を走り、トレッドストリップ12が数ミリメートルなくなって5ミリメートルオーダーのものになるまで次第に摩耗状態になったタイヤである。
【0043】
この特定の場合、図2に示されているタイヤ10のトレッド12の摩耗量は、6mmオーダーのものであり、即ち、タイヤが新品の場合、リブ18の頂部をトレッドストリップの表面から隔てた距離よりも長い。このように摩耗が進んだ場合、溝18の頂部は、トレッドストリップ12の頂部と同一高さ位置にある。かくして、各キャビティ20A,20B及びチャネル21の口は、トレッドストリップ上に形成された実質的に平らな輪郭によって画定される。各対をなすキャビティ20A,20B及びこれらと関連したチャネル21は、互いに別個独立であって隔てられている。
【0044】
各キャビティ20A,20Bは、リブ18の初期高さ以下の2ミリメートルのオーダーの深さのところで2つの隣り合うリブ18相互間の周方向距離に対応した20〜30ミリメートルのオーダーの距離を有する。タイヤ10は、2対の音発生キャビティ20A,20B及び2つの関連の横方向チャネル21を有し、これら横方向チャネルは、対をなすキャビティ20A,20B及び関連のチャネル21がタイヤ10の周囲に沿って等間隔を置いて分布して配置されるように直径方向反対側に位置している。対をなすキャビティ20A,20B及びチャネル21は、同一形状のものである。
【0045】
所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、対をなす発生キャビティ20A,20B及び関連の音発生チャネル21の全容積は、4cm3以上、好ましくは5cm3以上である。
【0046】
各キャビティ20A,20B及びチャネル21の口は、実質的に平らな輪郭によって画定されるので、この口は、走行中、滑らかで平坦な路面により完全に且つ気密封止可能である。換言すると、タイヤ10が摩耗すると、キャビティ20A,20B及びチャネル21は、タイヤ10が路面と接触状態にあるとき、これらキャビティ及びチャネルが接触パッチを通過する際にこれらを路面により実質的に気密状態に閉じることができるよう構成されている。
【0047】
タイヤのトレッドストリップ10の表面のところに形成されていて、一方において、タイヤの半径方向外側に開口し、他方において、接触パッチを通過する際に気密封止することができるよう構成されているかかるキャビティ20A,20B及びかかる関連のチャネル21を「音発生キャビティ」と称することができる。
【0048】
キャビティの種々のサイズ又はトレッドストリップに対するこれらキャビティ20A,20Bの種々の向きを想定することが可能である。
【0049】
本発明のタイヤでは、かかる音発生キャビティは、タイヤが所定の半径方向摩耗しきい値を超えて摩耗した場合にのみ現われ、このしきい値に達する前では、特に、タイヤが新品の状態では表に存在しない。
【0050】
タイヤが所定のしきい値を超えて摩耗した場合にのみ音発生キャビティが現われるようにする1つの手法について図1及び図2を参照して説明する。もう1つの手法は、タイヤが新品のとき、トレッドストリップの塊中に閉じられると共に埋め込まれており、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、音発生キャビティになる1対のキャビティ20A,20Bをタイヤ上に形成することである。
【0051】
図3は、路面上でこれに沿って走行している図2のタイヤに類似したタイヤの半径方向断面図である。寸法形状は、説明を明確にするよう恣意的に変更可能である。このタイヤ10は、摩耗状態にあり、したがって、1組の音発生キャビティ20A,20B及び1組の関連のチャネル21を有している。
【0052】
タイヤ10が路面上でこれに沿って走行しているときのタイヤ10の回転方向が矢印22で示されている。所与の時点では、タイヤ10のトレッドストリップ12の一部は、路面と接触状態にある。接触状態にあるこの部分は、接触パッチ24と呼ばれている。各対のキャビティ20A,20Bは、タイヤ10の周方向トレッドストリップの一部により形成されたタイヤの接触パッチ24の中央部分32に軸方向に位置決めされている。
【0053】
図3に示された実施形態では、接触パッチ24は、3つの対をなす音発生キャビティ26及び3つの関連の音発生チャネルを有し、これらの半径方向外側口は、路面11によって覆われている。かくして、これら3対の音発生キャビティ26及びこれらの関連の音発生チャネルは、気密封止される。
【0054】
タイヤの接触パッチ12は、複数の対をなす閉じられたキャビティ26及びこれらの関連のチャネルの前に配置された複数の対をなす音発生キャビティ28及びこれらの関連の音発生チャネルを更に有し、これら音発生キャビティ28及び関連の音発生チャネルは、これらの口が接触パッチ内に存在せず、したがって、路面によって覆われていないので、開口している。タイヤが矢印22により示された方向に走行しているとき、対をなす開口状態のキャビティ28及びこれらの関連のチャネルは、接触パッチ24のほうへ次第に進み、ついには、これらの口が路面11によって閉じられるようになる。
【0055】
最後に、タイヤ10のトレッドストリップ12は、タイヤの回転方向に関して、閉じられている対をなすキャビティキャビティ26及び関連のチャネルの後ろに位置した複数の対をなすキャビティ30及びこれらの関連のチャネルを更に有している。図4に示されている実施例では、図示の対をなすキャビティ30及び関連の下流側チャネルは、路面11がこれらの口と接触状態にはないので開口している。これに先立って、この対をなすキャビティ30及び関連のチャネルは、タイヤが路面11と接触状態にある場所としての接触パッチ24の付近にこれらが位置しているので、閉じられている。
【0056】
かくして、タイヤが駆動されているとき、所与の1つの対をなす音発生キャビティ20及び所与の関連の音発生チャネルは、これらが開口している上流側位置28、次に、接触パッチ24内に位置していて、これらは路面によって覆われているので閉鎖されている位置26、最後に、この場合も又、これらが路面によってもはや覆われていない開口位置30を次々に占める。
【0057】
換言すると、タイヤの回転により、所与の対をなすキャビティ及び所与の関連のチャネルの場合、空気が1対のキャビティ及び関連のチャネル内に取り込まれ、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入っている空気は、これらキャビティ及びこのチャネルが接触パッチ24で路面により閉じられると圧縮され、次に、トレッドストリップが路面から離れた結果として、これらが開口状態になると対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入っている空気の膨張が生じる。
【0058】
取り込み/圧縮/膨張ステップがこのように連続することは、対をなすキャビティ及び関連のチャネル内に入っている圧縮空気の膨張の結果として生じるヒッシング又は空気圧送ノイズと呼ばれる場合がある特徴的な騒音の原因である。この騒音の大きさ及び周波数サイン(波紋的形状)は、特に、対をなす音発生キャビティ及び用いられる関連の音発生チャネルの形状、容積及び数で決まる。好ましくは、対をなすキャビティ及び対をなす関連のチャネルは、この騒音を自動車のユーザ又は電子装置が検出することができるよう構成されている。
【0059】
対をなすキャビティ及び対をなす関連のチャネルのヒッシング層の周波数サインも又、図4に示されているように、タイヤの回転速度で決まる。
【0060】
フロントに図2のタイヤに類似した2つの試験用タイヤを装着すると共にリヤに2つの標準型ミシュラン・プライマシー(MICHELIN Primacy)HPタイヤを装着したBMW318dを用いて滑らかな走路上で行なって得た測定値を記録した。フロントタイヤのサイズは、205/55R16であった。この自動車の運転室内の騒音を記録した。試験用タイヤは、2つの列をなす75個の音発生キャビティを有していた。
【0061】
図4は、50キロメートル/時、90キロメートル/時及び130キロメートル/時で得た信号の周波数スペクトルを示す3つのグラフ図である。縦座標の目盛りは、恣意的である。
【0062】
これら3つの周波数スペクトルから理解できることとして、タイヤ速度が所与の場合、タイヤの表面のところに作られた対をなす音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルのヒッシング騒音の特徴を示す複数個のスパイク32が現われていることをはっきりと見て取れることができる。
【0063】
周波数の位置及びスパイク相互間の距離は、特に、車両の速度で決まる。
【0064】
加うるに、これらスパイクのSN(信号/雑音)比は、タイヤが駆動されている表面の周囲に応じて様々である。具体的に言えば、路面が粗ければ粗いほど、ロードノイズがそれだけ一層大きくなると共にSN比がそれだけ一層小さくなる。さらに、路面が粗い場合、タイヤが路面と接触している場所としての接触パッチ24に含まれる対をなすキャビティ及び関連のチャネルは、気密封止されることはなく、このことは、ヒッシングの音響強度が低いことを意味している。
【0065】
その結果、通常の運転条件下において、対をなす音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルがタイヤのトレッドストリップ上に存在していることに起因して生じる周波数スパイクを適切なディジタル処理を用いて検出すること容易である。
【0066】
かくして、タイヤロードノイズを定期的にチェックすることにより、これら周波数スパイクの開始を検出することが可能であり、このことは、1つ又は2つ以上の対をなす音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルがタイヤの表面のところに現われたことを意味する。いまや、対をなす音発生キャビティ及び関連の音発生チャネルがタイヤの表面上に存在することにより、タイヤのトレッドストリップが摩耗状態になっていることが分かる。したがって、本発明のタイヤは、音響又は可聴摩耗表示器を備えている。
【0067】
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態としてのタイヤを示している。先行する図に示された第1の実施形態の要素と類似した要素は、同一の参照符号で示されている。
【0068】
第1の実施形態の場合とは異なり、タイヤが新品であるとき、チャネル21は、タイヤストリップ12の塊内に閉じられると共に埋め込まれており、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、チャネル21は、対をなすキャビティ20A,20Bを互いに結合し、その結果、キャビティ20A,20B及び関連のチャネル21は、音発生キャビティ及び音発生チャネルになる。この特定の場合、チャネル21は、溝16A,16B相互間に介在して位置した状態で接触パッチ24の軸方向中央部分を形成するゴムの周方向ストリップ32の一部中に埋め込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用タイヤ(10)において、トレッドストリップ(12)を有し、前記トレッドストリップ(12)は、所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、トレッドストリップ(12)が音発生キャビティと呼ばれている少なくとも1対の第1及び第2のキャビティ(20A,20B)を有するように構成され、前記第1及び第2のキャビティ(20A,20B)は各々、前記トレッドストリップ(12)の第1及び第2の周方向溝(16A,16B)の各々の中にそれぞれ配置され、前記対の各音発生キャビティ(20A,20B)は、前記トレッドストリップ(12)中に形成された音発生チャネルと呼ばれているチャネル(21)によって前記対の他方の音発生キャビティ(20A,20B)に連結されており、前記対の各キャビティ(20A,20B)及び関連の前記チャネル(21)は、
‐前記タイヤ(10)の半径方向外部に開口しており、
‐前記対の各キャビティ(20A,20B)及び関連の前記チャネル(21)が前記タイヤ(10)と路面(11)の接触場所としての接触パッチ(24)を通過する際に前記対の各キャビティ(20A,20B)及び関連の前記チャネル(21)が前記路面(11)によって実質的に気密状態に閉じられるように構成されている、タイヤ(10)。
【請求項2】
前記対の前記キャビティ(20A,20B)は、互いに実質的に軸方向に位置合わせされている、請求項1記載のタイヤ(10)。
【請求項3】
前記対の前記キャビティ(20A,20B)は、前記接触パッチ(24)の中央部分に軸方向に配置されている、請求項1又は2記載のタイヤ(10)。
【請求項4】
所定の摩耗しきい値に達する前に、特に、前記タイヤ(10)が新品のとき、前記タイヤ(10)は、音発生キャビティ(20A,20B)の対を備えておらず、しかも、関連の音発生チャネル(21)を備えていない、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項5】
前記1対の音発生キャビティ(20A,20B)及び前記関連の音発生チャネル(21)は、前記トレッドストリップ(12)に形成された輪郭によって定められた口を有し、前記輪郭は、前記1対のキャビティ(20A,20B)及び前記関連のチャネル(21)を平坦な路面(11)によって実質的に気密状態に閉じることができるよう実質的に平らである、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項6】
前記タイヤ(10)が新品のとき、前記第1及び前記第2の溝(16A,16B)の各々が所定の幅を備えている状態で、前記トレッドストリップ(12)は、前記第1及び前記第2の溝(16A,16B)の各々の底部に横方向に形成された少なくとも2つのリブ(18)を有し、前記リブは、前記タイヤ(10)が新品のとき、所定の高さのものであり、この高さは、前記第1及び前記第2の溝(16A,16B)の各々の前記所定の深さと前記所定の摩耗しきい値の差に実質的に等しく、
前記2つのリブ(18)を隔てる距離は、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記第1及び前記第2の溝(16A,16B)の各々により形成されると共に前記2つのリブ(18)により画定された各キャビティ(20A,20B)が音発生キャビティとなるよう所定の距離よりも小さい、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項7】
前記2つのリブ(18)を隔てる距離は、15ミリメートルを超え且つ50ミリメートル未満である、請求項6記載のタイヤ(10)。
【請求項8】
前記所定の半径方向摩耗しきい値を超え前記1対の又は複数対の音発生キャビティ(20A,20B)及び1つ又は複数の前記関連の音発生チャネル(21)の全容積は、4cm3以上、好ましくは5cm3以上である、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
前記タイヤ(10)が新品のとき、前記キャビティ(20A,20B)は、前記トレッドストリップ(12)の塊の中に閉じられると共に埋め込まれており、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記チャネル(21)は、前記対の前記キャビティ(20A,20B)を互いに結合して前記キャビティ(20A,20B)及び前記関連のチャネル(21)が音発生キャビティ及びチャネルになるようになっている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項10】
前記タイヤ(10)が新品のとき、前記チャネル(21)は、前記トレッドストリップ(12)の塊の中に閉じられると共に埋め込まれており、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記チャネル(21)は、前記対の前記キャビティ(20A,20B)を互いに結合して前記キャビティ(20A,20B)及び前記関連のチャネル(21)が音発生キャビティ及びチャネルになるようになっている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項11】
前記トレッドストリップ(12)は、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記トレッドストリップが複数の対をなす音発生キャビティ(20)及び複数の関連の音発生チャネル(21)を有し、前記キャビティ(20)及び前記チャネル(21)は、同一形状のものであり、各対の各音発生キャビティ(20A,20B)は、前記トレッドストリップ(12)中に形成された関連のチャネル(21)によって前記対の他方の音発生キャビティ(20A,20B)に結合されるように構成されている、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項12】
前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、前記対をなす音発生キャビティ(20)及び前記複数の関連の音発生チャネルは、前記タイヤ(10)の周囲に沿って均等に分布して配置されている、請求項11記載のタイヤ(10)。
【請求項13】
前記タイヤ(10)は、前記所定の半径方向摩耗しきい値を超えると、2つの対をなすキャビティ(20A,20B)及び2つの関連のチャネル(21)又は4つの対をなすキャビティ(20A,20B)及び4つの関連のチャネル(21)を有する、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−507444(P2012−507444A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535150(P2011−535150)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052071
【国際公開番号】WO2010/052409
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)