説明

音響トランスデューサアレー信号処理

スピーカーのアレーは、入力信号が第1周波数及び第2周波数の間にあるときに、入力信号に対応するアレーパターンを生成するように、少なくとも第1及び第2トランスデューサを具備するスピーカーの物理的に離間された第1及び第2アレーに対して、単一の知覚軸を表す入力信号を分配するように、フィルタの組が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、音響トランスデューサアレー信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーシステムの(時折、ドライバと呼ばれる)音響トランスデューサは、トランスデューサからの放射の出力を増加するために、又は、振幅及び位相を、指向性をもって制御するために、(例えば、音響双極子、又は音響単極子の組のような)アレー内にグループ化されうる。アレーは、例えば、音響双極子、又は音響単極子の組の形式を取っても良い。
【0003】
図7内に示されているように、音響双極子702(例えば、その振動板の前面及び後面から、音声を均等に放射する背面開放型スピーカー)は、θ=0で双極子702の中央平面708に沿って、前面及び後方からの波を相殺して、グラフ700上のθ=±90での軸707に沿って中心を有する2つの極大部分704a及び706a内で効果的にエネルギーを放射する。ヌル(null)といわれる相殺領域は、音声が発生すると知覚される方向を変化させるような、心理音響的効果を生成するのに使用しても良い。図7B及び7C内で示されているように、極大部分は、非対称(図7B内の704b,706b;図7C内の704c,706c)であるとともに、1つの平面上のみ(例えば、図7B内のヌル軸710)又は、複数の平面上(例えば、図7C内のヌル軸712,714に沿って)にヌルがあっても良い。図7Bは、また、理想的な放射パターン716と、実在のトランスデューサ(図示せず)によって生成された実際の放射パターンとの間にずれがありうることを説明している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概して、一構成では、第1アレーの複数のトランスデューサが、第1周波数範囲内で相殺的干渉を生成し、第1アレーのトランスデューサは、第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成せず、第1アレーの第1トランスデューサ及び第2アレーの第1トランスデューサは、第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成するように、第1及び第2アレーのトランスデューサに、出力信号及びクロスフィード信号を提供するように、フィルタが入力信号上で動作する。
【0005】
実施は、次の特徴の1つ又は複数を具備しても良い。
【0006】
第1周波数範囲は、対応する波長が第1アレー内のトランスデューサの間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備する。周波数範囲は、対応する波長が、第1及び第2アレーの間の間隔の2倍より小さい1つである。第2周波数範囲は、対応する波長が第1及び第2アレーの間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備する。第1周波数範囲は、概ね1kHzから概ね3kHzの間の周波数を具備する。第2周波数範囲は、概ね1kHzの下の周波数を具備する。
【0007】
第1周波数範囲は、高域周波数及び低域周波数の間の周波数を具備するとともに、フィルタは、直列接続された、高域周波数にコーナー周波数を具備する反転ローパスフィルタと、低域周波数にコーナー周波数を具備するハイパスフィルタと、ハイパスフィルタと同位相にされるとともに、第1アレーの第2トランスデューサに出力信号を提供するオールパスフィルタと、を具備し、ローパスフィルタとハイパスフィルタとは、第1アレーの第1トランスデューサに出力信号を提供している。フィルタは、第1アレーの第1トランスデューサへの出力信号を、第1アレーの第2トランスデューサへの出力信号に相対的に遅延するように構成される。フィルタは、入力信号が、第1周波数範囲内にあるときに、第2アレーのトランスデューサへのクロスフィード信号を減衰する。第1周波数範囲は、高域周波数及び低域周波数の間の周波数を具備するとともに、フィルタは、低域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、クロスフィード信号を第2アレーに提供するローパスフィルタと、ローパスフィルタと同位相にされるとともに、第1アレーに出力信号を提供するオールパスフィルタ周波数を具備する。
【0008】
第2周波数範囲は、第1高域周波数より下の周波数を具備するとともに、フィルタは、高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、第2アレーにクロスフィード信号を提供する反転ローパスフィルタと、反転ローパスフィルタと同位相にされるとともに、出力信号を第1アレーに提供するオールパスフィルタフィルタと、を具備する。フィルタは、入力信号が第2周波数範囲内にあるときに、第1アレーの第2トランスデューサへの出力信号を減衰する。第2周波数範囲は、第1高域周波数より下の周波数を具備するとともに、フィルタは、第1高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、第1アレーの第2トランスデューサに出力信号を提供する第1ハイパスフィルタと、ハイパスフィルタと同位相にされるとともに、第1アレーの第1トランスデューサに出力信号を提供する第1オールパスフィルタと、第1オールパスフィルタと同位相にされるとともに、第2アレーの第1トランスデューサにクロスフィード信号を提供する第2オールパスフィルタを具備する。フィルタは、第1高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、第2アレーの第2トランスデューサにクロスフィード信号を提供するとともに、第2オールパスフィルタと位相が一致している第2ハイパスフィルタをさらに具備する。フィルタは、第1高域周波数より低い第2高域周波数より下の周波数を具備する第3周波数範囲内で、第1及び第2アレーの第2トランスデューサに出力信号及びクロスフィード信号を提供する。フィルタは、第2高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、第1及び第2アレーの各々の第2トランスデューサに、それぞれ出力信号及びクロスフィード信号を提供する第1及び第2ローパスフィルタと、第1及び第2ローパスフィルタに、それぞれ、及び互いに同位相にされるとともに、第1及び第2アレーの各々の第1トランスデューサに、それぞれ出力信号及びクロスフィード信号を提供する第1及び第2オールパスフィルタと、を具備する。
【0009】
フィルタは、また、相殺的干渉が第3周波数範囲内で生成されないように、第1及び第2アレーのトランスデューサに、出力信号及びクロスフィード信号を提供する。第3周波数範囲は、対応する波長が、第1アレー内のトランスデューサの間の間隔の2倍より小さい周波数範囲を具備する。第3周波数範囲は、概ね3kHzより高い周波数を具備する。第3周波数範囲は、低域周波数より高い周波数を具備するとともに、フィルタは、入力信号が低域周波数より上であるときに、第1アレーの第1トランスデューサを動作させるとともに、第1アレーの第2トランスデューサへの出力信号を減衰するように構成されている。フィルタは、低域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、第1アレーの第2トランスデューサに出力信号を提供するローパスフィルタを具備する。フィルタは、また、入力信号が、第3周波数範囲内にあるときに、第2アレーのトランスデューサへのクロスフィード信号を減衰するように構成されている。フィルタは、低域周波数にコーナー周波数を具備するとともに、第1アレーの第2トランスデューサに出力信号を提供する第1ローパスフィルタと、低域周波数に、又はそれより下にコーナー周波数を具備するとともに、第2アレーにクロスフィード信号を提供する第2ローパスフィルタと、第2ローパスフィルタと同位相にされるとともに、第1アレーに出力信号を提供するオールパスフィルタと、を具備する。
【0010】
フィルタは、第1アレーの第1合計入力に出力信号を提供する第1オールパスフィルタと、第1アレーの第1トランスデューサへの入力に出力信号を提供する第2オールパスフィルタと、第1アレーの第2トランスデューサへの第1合計入力に出力信号を提供するとともに直列接続された第1ローパスフィルタ及び第1ハイパスフィルタと、第1アレーの第2トランスデューサへの第2合計入力に出力信号を提供する第2ローパスフィルタと、第2アレーの第1合計入力にクロスフィード信号を提供する第3ローパスフィルタと、第2アレーの第1トランスデューサへの入力にクロスフィード信号を提供する第3オールパスフィルタと、第2アレーの第2トランスデューサへの第1合計入力にクロスフィード信号を提供するとともに直列接続された第4ローパスフィルタ及び第2ハイパスフィルタと、第2アレーの第2トランスデューサへの第2合計入力にクロスフィード信号を提供する第5ローパスフィルタと、を具備する。第2及び第5ローパスフィルタは、低域周波数にコーナー周波数を具備し、第3ローパスフィルタ及び第1及び第2ハイパスフィルタは、中間域周波数にコーナー周波数を具備し、かつ、第1及び第4ローパスフィルタは、高域周波数にコーナー周波数を具備する。フィルタは、第1アレーの第2合計入力にクロスフィード信号を提供する第6ローパスフィルタと、第2アレーの第2合計入力に出力信号を提供する第4オールパスフィルタと、をさらに具備し、第1信号入力は、第1オールパスフィルタ及び第3ローパスフィルタに接続されるとともに、第2信号入力は、第4オールパスフィルタ及び第6ローパスフィルタに接続される。
【0011】
フィルタは、また、第1アレーのトランスデューサが、追加周波数範囲内の相殺的干渉を生成しないように、第1及び第2アレーのトランスデューサに出力信号及びクロスフィード信号を提供するとともに、第1アレーの複数のトランスデューサ及び第2アレーの複数のトランスデューサは、追加周波数範囲内で相殺的干渉を生成する。追加周波数範囲は、概ね550Hzより下の周波数を具備する。
【0012】
フィルタは、また、第2アレーの複数のトランスデューサが第1周波数範囲内で相殺的干渉を生成するために、第2及び第1アレーのトランスデューサに出力信号及びクロスフィード信号を提供するように第2入力信号上で動作し、第2アレーのトランスデューサは、第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成せず、かつ第1アレーの第1トランスデューサ及び第2アレーの第1トランスデューサは、第2周波数範囲内で、第1入力信号及び第2入力信号の両方をベースとして、相殺的干渉を生成する。第1入力信号は左信号であるとともに第2入力信号は、右信号である。
【0013】
概して、一構成では、第1アレーのトランスデューサが、第1及び第2周波数範囲のそれぞれで実質的に異なる角度の相殺的干渉を生成するように第1及び第2アレーのトランスデューサを駆動する出力信号及びクロスフィード信号を提供するように、フィルタは入力信号上で動作し、かつ第1アレーのトランスデューサ及び第2アレーのトランスデューサは、第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成し、第1アレーを駆動する第1信号及び第2アレーを駆動する第2信号は同一ではない。
【0014】
利点は、各々アレーが高域周波数の音響放射でヌルを生成するように独立に動作するとともにアレーが低域周波数でヌルを生成するように共に動作するようなスピーカーアレーを具備するスピーカーシステムの低域周波数出力効率を強化することを具備する。各アレー内部の間隔を狭めたトランスデューサと、アレーの間のより大きな間隔との組み合わせによって、高域周波数及び低域周波数信号の両方の出力の効率的な放射を可能にする。知覚軸は、アレーの物理的範囲を超えて位置しても良い。
【0015】
他の特徴及び利点は、明細書及び特許請求の範囲から明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
アレーを形成するように音響ソースを組み合わせるとともに、ソース及びアレーに供給された音響信号を処理することによって、アレーを具備するスピーカーシステムの放射パターンは、スピーカーシステムによってリスナに放射される音響エネルギーについて、種々の目的を達成するように制御可能であり、個々のソースの放射パターンよりもより複雑でありうる種々のタイプの放射パターンを生成することを具備する。音響信号処理は、他のトランスデューサに適用される信号に相対的に、各トランスデューサに適用される信号を遅延する、反転する、フィルタする、位相シフトする、又はレベルシフトすることを具備しても良い。システム付近内の空間内の所与の点で、トランスデューサからの音響出力は、例えば、構成的に(音圧を増加するように)又は相殺的に(音圧を減少するように)干渉しうる。所望の形を取るとともに、所望の角度に案内するようにヌルが生成可能である。理解の簡潔さのために、我々は、水平面のような、説明上有用である平面内で指向性を検討する。水平面内で、「ヌル軸」を所望の角度に案内することを検討する。しかしながら、3次元空間では、ヌルは、シェル壁面の角度が変化する円錐形のような3次元形を具備しうることを理解すべきである。双極子タイプソースの場合、円錐角は、180度であるとともに、ヌルの形は、単純平面に退化する。カーディオイド形では、円錐角は0度であるとともに、ヌルの形は、単純直線に退化する。
【0017】
音響トランスデューサを駆動するいくつかの構成は、2006年8月4日に出願された「Reducing Resonant Motion in Undriven Loudspeaker Drivers」という発明の名称が付された同時係属出願内で議論されているとともに、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0018】
放射された音響エネルギー上の信号処理の効果が、信号(及び従って音響波)の周波数に、及びトランスデューサの相対的な位置に依存するために、トランスデューサの信号処理及びグループ化の種々の組み合わせが、種々の周波数範囲内の所望の音響効果を生成するのに使用されても良い。
【0019】
信号処理は、アナログ又はディジタルのいずれかの信号処理技術を使用して実施しても良い。アナログ信号処理システムは、具体的には、所望のフィルタ機能を達成するように配置されたオペアンプ及び種々の受動的構成要素を使用するように形成されたアナログフィルタを使用する。ディジタル信号処理は、ソフトウェア又はファームウェアによって制御される汎用コンピュータ、又は、ディジタル信号処理(DSP)プロセッサのような専用装置のような、種々のタイプのディジタルシステム内で達成されうる。離散的構成要素及びアナログ及びディジタルシステムは、組み合わせで使用しても良い。これらの信号処理構成要素及びシステムは、スピーカーアレー、個々のトランスデューサ、又は、受信器、増幅器、及び等化器のような、他のシステム構成要素の間に、中心に設置される、又は分散されても(又は、それら2つの組み合わせであっても)良い。
【0020】
相殺的干渉を使用するときは、効率、周波数範囲、及び指向性の制御のトレードオフが要求される。いくつかの実施例では、所望の角度に指向されたヌル軸にそったヌルを伴う所定の放射パターンは、2つのトランスデューサの間の間隔が音響出力の波長の半分であるような周波数まで達成されうる。そのような周波数より上では、複数の極大部分及びヌルが出現開始し、それによって意図する効果との衝突が発生しうる。システムの効率(固定入力量に対する、リスニング環境に供給されうる音響エネルギー又は出力の量)は、スピーカーの間の間隔に直接に依存する。より大きな間隔はより高い効率を与えるが、(説明されたように)指向性が制御されうる最大周波数を低減する。いくつかの実施例では、高域周波数での制御を維持するために、アレーはその具備するトランスデューサの間に狭い間隔を具備しても良く、かつ、低域周波数で充分な出力を提供するために、異なるアレーからのトランスデューサの間で大きな間隔を具備しても良い。
【0021】
いくつかの実施例では、図1に示されているように、2つのスピーカーアレー、左アレー100L及び右アレー100Rを具備するオーディオシステムが、リスニング環境103の対応する側に位置されているとともに、例えば、ステレオソースのような、対応する左及び右信号を再生するものとする。一方又は他方の側に向けられた信号は、システムの効率を強化する一方で、例えば、リスナに(又は、他の所望の方向に)向けてヌルを案内することが可能な放射パターンを達成するように、操作されるとともに反対側に対してクロスフィードされうる。
【0022】
各アレー100L、100Rは、我々が、左外部トランスデューサ104、左内部トランスデューサ106、右内部トランスデューサ108、及び右外部トランスデューサ110と呼ぶ2つのトランスデューサを具備する。トランスデューサは、同一であってもなくても良い。1つの周波数範囲、例えば、より高い周波数範囲(各アレー内部の個々のトランスデューサの間の離間の2倍より小さい波長を伴う周波数)では、各アレーは、独立に動作するとともに、1つのトランスデューサだけが、各アレー内で使用されるので、ヌルは生成されない。中間周波数(例えば、離間されたアレーの間の間隔の2倍より小さい波長を伴う周波数)では、各アレーは、その対応する左及び右信号を再生するとともに、ヌルを生成するためにそれらの信号を当該アレーのトランスデューサの組み合わせを使用して案内するように再度独立に動作する。低域周波数では、アレーは、各々のアレー内の1つ又は両方のトランスデューサを使用して共に動作する。
【0023】
左チャネル信号に対して、左アレー100Lは、所定の放射パターンを達成するためにその2つのトランスデューサ104,106を、適切な信号処理とともに使用することによって、ヌル軸112で示されている所望の方向内にヌルを案内する。適切な信号処理の実施例では、左チャネル信号が外部トランスデューサ104に、かつ同一であるが異相の左チャネル信号が内部トランスデューサ106に対して供給される。(このことは、2つのトランスデューサ104及び106が同一であることを仮定する。もし、それらが同一でなければ、2つの信号は同一でないかもしれない。)所望のヌル軸方向は、2つ同一であるが異相である左チャネル信号の間に遅延を導入することによって、又は、一方のトランスデューサに供給される信号を、他方のトランスデューサに供給される信号とは異なるようにフィルタすることによって制御しても良い。もし所望するならば、アレー100Lの効率は、トランスデューサ104に対して適用される信号に相対的にトランスデューサ106に対して適用される信号を減衰することによって(又は、トランスデューサ106に適用された信号に相対的にトランスデューサ104に対して適用される信号を減衰することによって)増加することが可能である。類似の振る舞いは、ヌルがヌル軸116に沿って右アレー100Rから発生している右チャネル信号に関して発生する。
【0024】
各々の2つのアレーの2つのトランスデューサは、例えば、中心上の5cmから7cmの範囲内である比較的狭い間隔107,109を具備する一方で、2つのアレーの間の間隔111は、より広く、例えば、50cmから70cmの範囲内にある。これによって、アレーが、通常のコンピュータ又はテレビモニタのいずれかの側に便利であるように配置することが可能になる。いくつかの実施例では、各アレー内部のトランスデューサは、中心上で6.5cm離れている。
【0025】
低域周波数では、2つのより広く間隔を広げたアレーは、それらが単一スピーカーアレーであるかのように、共に使用されても良い。1つの低域周波数範囲、例えば550Hz−1kHzでは、各アレーからの1つのトランスデューサ、例えば、外部トランスデューサ104及び110は、それらの間でヌル軸114に沿ったヌルによって特徴付けられる所望の放射パターンを生成するようにそれらの音響出力が相殺的に干渉するように駆動されるアレーの2つの構成要素として共に使用される。この周波数範囲内のより広い構成要素の間隔は、組み合わされたアレーによる放射音の効率を増加する結果となる。他の低域周波数範囲、例えば、550Hzより下では、左アレー100Lからのトランスデューサ104及び106は、同一の信号を供給されるとともに、第1音響ソースを形成するのに使用される。右アレー100Rからのトランスデューサ108及び110は、また、同一の信号を供給されるとともに、第2ソースを形成するのに使用され、2つのソースは、単一アレーを形成するように組み合わせる。意図されたのとは反対の側から送信された信号(即ち、右アレー100Rから供給された左信号)は、時折本明細書内でクロスフィード信号といわれる。第1ソース及び第2ソースに送信された信号は、より高い周波数に対して上記で説明された同一のヌル軸114に沿って、ヌルを生成するように、上述のように処理される。即ち、トランスデューサ104及び106に供給された信号は、この低域周波数範囲では、同一であるが、トランスデューサ108及び110に供給された信号に対して反対の極性を有する。また、1つの信号が他に関して遅延されても良く、他に関してフィルタされても良く、及び/又は他に関して減衰されても良い。例えば、トランスデューサ108及び110に供給された信号は、トランスデューサ104及び106に対して供給された信号に相対的に遅延されても良く、いくらかの量(例えば2dB)だけ減衰されても良く、及び/又は、(例えば、ローパスフィルタをもって)フィルタされても良い。この配置による恩恵は、システムは、この周波数範囲内に(即ち、全部4つのトランスデューサからの)より多くの放射域を具備し、それによってシステムの最大出力性能を増加することである。このことは、所望の放射パターンを達成することと、システムの全出力性能を増加することとの両方に役立つ。全般的に、複数のトランスデューサを伴うアレーは、システム効率及び最大出力性能を改善する一方で、より広い周波数範囲に亘って所望の放射パターンを達成するために、種々の周波数範囲で動作しているトランスデューサの数の選択的な更新が使用可能である。
【0026】
アレーの他の効果は、音像が左アレーの左まで好適に、又は右アレーの右まで好適に配置されうることである。これは、所望の方向内にヌル軸を指向させることによって達成される。これらの音像の位置(音声が発生するとリスナが解釈する位置)は、左及び右知覚軸118及び120として引用される。知覚軸の指向性は、ヌル軸の指向性を制御することによって制御しても良い。ヌル軸に沿ってヌルを生成するのに使用される信号処理の実施例は、最も基礎的であるアレー構築ブロックから開始するとともに、信号処理の各機能的特徴を順に追加して、以下でより詳細に説明される。簡潔を旨とするために、この説明は、左入力信号に焦点を当てる。以下で見るように、適切なトランスデューサに右入力信号を供給するのに、同一の処理が適用される。
【0027】
左ヌル軸112に沿ったヌルは、図2に示されるように、左入力信号204を2つの経路に分離するとともに、左内部トランスデューサ106に送信される信号にローパスフィルタ202を適用することによって生成される。完全スペクトル信号は、この信号204に対して主トランスデューサとして動作する左外部トランスデューサ104に送信される。ローパスフィルタ202は、3kHzより高い周波数を具備する信号の内部トランスデューサ106への到達を阻止する。外部トランスデューサ104は、また、左チャネル高域周波数コンテンツのリスナ102(図1)への到達を減少するために、外方向に角度をつけても良い(図1を参照せよ)。フィルタ202は、また、この信号204に対する相殺トランスデューサとして動作するように、内部トランスデューサ106とともに、ヌル軸112に沿って音響ヌルを生成するために、信号の位相を反転する。いくつかの実施例では、ヌル軸112をリスナ102に案内するために、21マイクロ秒の遅延がフィルタ202によって導入される。2dBのフィルタ202の減衰によって、心理音響的効果を大幅に劣化させることなく全システムの効率を増加する。
【0028】
図1及び2に示された信号分離及びトランスデューサジオメトリを伴って使用されるこの単一フィルタ202は、トランスデューサの物理的位置から移動されうる左知覚軸を説明しうるが、主及び相殺トランスデューサの近接近性のために、低域周波数出力限界がある。トランスデューサ104及び106を、さらに移動して離すことによってこれを解決に導きうるが、それは、より大きいアレー筐体を必要とするとともに、ヌル軸112の方向にシステムが制御しうる高域周波数を制限する虞がある。
【0029】
アレーの低域周波数効率を改善するために、右外部トランスデューサは、低域周波数の相殺トランスデューサとして使用しても良い。実際には、右アレー100Rは、右チャネル信号を意図した個別のスピーカーとしてというよりはむしろ、左アレー100Lの一部であるかのごとく使用される。図3の実施例内で、1kHzより下の周波数に対して、ローパスフィルタ306とともに左入力204をフィルタ及び反転するとともに、この信号を右アレー100Rに印加する(即ち信号をクロスフィードする)ことによってこの概念が実施されている。いくつかの実施例では、クロスフィード周波数の選択(この実施例では、1kHz)は、トランスデューサの性能と、それらの間隔と、知覚軸の配置に関する主観的な判断とに依存する。もしヌル軸114に沿ったヌルがスピーカーアレーの間の直線として所望されるならば、フィルタ306内で遅延は必要とされない。いくつかの実施例では、低域周波数ヌルは、知覚の劣化なしに相殺トランスデューサ上で3dBの減衰が許容されることが発見された。
【0030】
ここで、アレー100Rにクロスフィードされた1kHzより下の相殺信号とともに、左内部及び外部トランスデューサの間で既に確立された位相関係を破壊しないように、この周波数範囲に亘るトランスデューサ106及び108からの出力を削除することは有用である。これは、例えばハイパスフィルタ310及び312と、一致オールパスフィルタ302及び314との組を使用することによって達成しても良い。(破線矢印322及び324が同位相を指示する。)オールパスフィルタ302及び314は、また、破線矢印325によって示されているように、互いに同位相にされる。
【0031】
1kHzハイパスフィルタ310を一致オールパスフィルタなしで左内部トランスデューサ106に適用すると、ヌル軸112に沿って確立されたヌルを破壊しうる新規の位相シフトを導入する虞がある。ヌル軸112に沿ったヌルの攪乱を回避するために、オールパスフィルタの位相は、対象の帯域(この実施例では、<1kHz)に亘って、ハイパスフィルタの位相に、概ね+/−30度の許容範囲内で一致する必要がある。もし位相の一致が、より広い周波数範囲に亘って発生するとともに、位相が、概ね+/−15度のような、より狭い角度で一致するならば、パフォーマンスは改善されうる。他のオールパスフィルタ304は、左アレー入力に適用されるとともに、クロスフィード信号が主信号と位相を維持するように、右ローパスフィルタ306に(再度+/−30度内で)同位相にされる。左トランスデューサ104及び106の組み合わされた出力によって形成されたヌルは、フィルタ202及び310の動作のために、1kHzから3kHzの周波数範囲に制限される。換言すると、1kHz−3kHzの周波数範囲内部の左入力信号204に対して、左アレー1100Lは、ヌル軸112に沿って、ヌルを独立に達成する。1kHzより下の周波数範囲内の左入力信号204に対して、左外部トランスデューサ104及び右外部トランスデューサ110は、共に、ヌル軸114に沿ってヌルを形成するように組み合わせる。右信号は、類似の仕方で処理しても良い。
【0032】
このシステムの低域周波数パフォーマンスは、選択された周波数範囲、例えば、上述のように、外部トランスデューサだけが動作する(例えば、550Hzより下の)周波数範囲より低い周波数範囲で、対応する外部トランスデューサとの組み合わせで内部トランスデューサを使用することによって強化しうる。図4で示されているように、左及び右内部アレートランスデューサ106及び108への信号入力をフィルタするとともに、混合器410及び412によって並列な高域周波数信号と混合してそれらのトランスデューサに提供するように、既存のフィルタ310及び312と並列にローパスフィルタ402及び404の組が追加される。550Hzより下では、フィルタ402及び404は、位相が(+/−30度内で)、フィルタ302及び314に一致され、破線矢印406及び408によって示されている。オールパスフィルタ302及び314の間の同位相を示す破線矢印325は、明確性のために、図4及びそれ以降の図では除去されている。
【0033】
図5で示されているように、これまで説明されたフィルタの殆どは、左及び右アレーが同一であると仮定して、左及び右側上で同一である。従って、右入力502に対して同一の効果を生成するために追加するものは殆どない。もし、左及び右アレーが同一でないならば、アレーの不一致を考慮するために、左及び右信号経路のフィルタパラメータを調節する必要があるかもしれない。(フィルタ202に一致する)ローパスフィルタ514は、トランスデューサ108及び110からの組み合わされた出力が、中間周波数範囲(この実施例では、1kHz−3kHz)に対して、ヌル軸116(図1)に沿ってヌルを生成するために、右内部トランスデューサ108に反転信号を提供する。ローパスフィルタ306の特徴に一致するローパス反転フィルタ506は、右信号入力502を受信するとともに、各アレーからの構成要素によって放射される右チャネル低域周波数信号が、左チャネルに対して達成したのと類似なヌル軸に沿って、いくつかの実施例では左チャネル信号と同一のヌル軸114に沿って、ヌルを生成するように、左アレー100Lに右クロスフィード信号を提供する。左のように、破線矢印512によって示されているように、オールパスフィルタ504が右入力に追加されるとともに、右クロスオーバーフィルタ506と同位相にされる(他の同位相の破線矢印は、明確性のために除去されている)。混合器510及び508は、両アレーに対して、主信号とクロスフィード信号とを組み合わせる。第1段階の後に(即ち、フィルタ304,306,504又は506の1つの後に)発生するフィルタの各々は、その自身の側に対する入力信号をベースとした出力信号と、反対側に対する入力信号をベースとしたクロスフィード信号との両方として扱われる信号とを生成する。例えば、ローパスフィルタ404からの信号出力は、左入力信号204をベースとした出力信号、及び既にローパスクロスフィードフィルタ506によってフィルタされている右入力信号502をベースとしたクロスフィード信号の両方として参照されている。両方の信号は、左内部トランスデューサ106に供給される。
【0034】
図6Aでは、表600は、各トランスデューサ内の減衰、遅延、及び位相シフトを具備する、図4で各トランスデューサが動作するような周波数範囲を要約する。図6B−6Eは、各範囲に対する動作フィルタ及び信号経路を示している。位相関係は、主トランスデューサに相対的に示されている。ここで、「+」は、各範囲に対する主トランスデューサを指示するとともに、「−」は、相殺トランスデューサを指示する。白色の背景を伴うトランスデューサ記号は、当該トランスデューサが、当該周波数範囲では非動作である(即ち、当該範囲内の信号は、当該トランスデューサへの入力外に実質的に減衰される)ことを指示している。表600及び図6B−6Eは、左入力204だけのフィルタを指示する。図示されていない対称表は、右入力502のフィルタを説明する。
【0035】
550Hzより下の左チャネル信号に対しては、ロー602及び図6Bによって示されているように、左アレー100L内の両方の左トランスデューサ(外部トランスデューサ104及び内部トランスデューサ106)は動作するとともに、左外部トランスデューサ104のフィルタ302と左内部トランスデューサ106のフィルタ402とのために、互いに相対的に同位相(表100内の記号604,606)である。右アレー100R内の、2つの右トランスデューサ(外部110及び内部108)は動作するとともに、互いに相対的に位相が一致しているが、全体として、記号608,610によって示されているように、全体として、それらは、左トランスデューサと位相が一致していない。また、クロスフィードローパスフィルタ306から3dBの減衰がある。ローパスフィルタ404は、(既にフィルタ306によって反転された)低域周波数信号を、右内部トランスデューサに提供する。2つのアレーからのトランスデューサの出力のこの組み合わせは、所望の放射パターンを提供するとともに、ヌル軸114に沿ったヌルに対して責任を持つ。各アレーの2つのトランスデューサは、単一の音響ソースとして振舞うとともに、ソースの間隔は(個々のアレー構成要素の間の間隔とは反対に)アレーの間の間隔であり、それによって、この周波数範囲内の放射効率が増加するとともに、システムの最大出力性能も増加する。この構成とともに、2つのアレーは、単一の大きなアレーのように振舞う。
【0036】
左チャネル信号の550Hzから1kHzの範囲内では、ロー612及び図6Cによって示されているように、外部トランスデューサ104,110は、低い範囲(614,620)内で同一である一方、内部トランスデューサ106,108は、ローパスフィルタ402及び404及びハイパスフィルタ310及び312の組み合わせのために、オフ(616,618)である。外部トランスデューサ104及び110からの出力は、ヌル軸に沿ってヌルを形式し、それはヌル軸114であっても良い。この範囲では、2つのアレー100L,100Rは、また、低域周波数出力効率を増加する単一の大きいアレーとして振舞う。しかしながら、各アレーから1つのトランスデューサだけが、ハイパスフィルタ310及び312からの反転信号(実施例では、おおよそ1kHz)の干渉を回避するように動作する。ヌル軸に沿った音響ヌルは、もし所望するならば、種々のトランスデューサに適用される信号の間に遅延を導入することによって案内しても良い。
【0037】
左チャネル信号に対する1−3kHzの範囲内のヌル軸112に沿ったヌルは、ロー622及び図6D内で示されているように、左トランスデューサだけから生成される。左外部トランスデューサ104は、通常通りオンである(624)一方で、左内部トランスデューサ106は、ローパスフィルタ202によって、(システム最大出力を増加するために)減衰され、(ヌルを生成するために)位相反転される(626)とともに、(ヌル軸112を案内するために)遅延される。この周波数範囲では、ローパスフィルタ306のために、右トランスデューサ108,110の両方は、オフである(628,630)。この周波数範囲では、クロスフィードはない。
【0038】
ロー632及び図6E内で示されているような3kHzより上では、右トランスデューサ108、110は、オフに留まる(638,640)とともに、左内部トランスデューサ(106)も、フィルタ202によってターンオフされる(636)。左外部トランスデューサ104のみがオンに留まる(634)。
【0039】
概して、各々の個々のアレーのそれぞれの構成要素を、より高い周波数で当該アレーの放射パターンを独立に制御するように使用するとともに、両アレーを低域周波数で出力される組み合わされたアレーの放射パターンを制御する何らかの方式で共に使用することによって、低域周波数での効率が維持又は改善されうるとともに、指向性がより広い周波数範囲に亘って制御されうる。間隔が広げられたアレーは、システム全体の効率を改善するので、システムは、それ自身の側の信号を制御するために各アレーを使用するに過ぎないシステムと比較して、低域周波数でより多い出力を供給することが可能である。
【0040】
上記で留意したように、任意の数のトランスデューサを具備するアレーを配置するのに、類似の技術を使用しても良い。フィルタすべき周波数、どの信号を反転、シフト又は遅延するか、及びトランスデューサの位置をどこにするかの詳細は、トランスデューサの数、トランスデューサの特徴、所望の出力、アレーを使用すべき環境、及び各々トランスデューサの出力特性のような要素に依存する。
【0041】
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、オーディオシステムの構造図である。
【図2】図2は、オーディオシステムのブロック図である。
【図3】図3は、オーディオシステムのブロック図である。
【図4】図4は、オーディオシステムのブロック図である。
【図5】図5は、オーディオシステムのブロック図である。
【図6A】図6Aは表である。
【図6B】図6Bは、オーディオシステムのブロック図である。
【図6C】図6Cは、オーディオシステムのブロック図である。
【図6D】図6Dは、オーディオシステムのブロック図である。
【図6E】図6Eは、オーディオシステムのブロック図である。
【図7A】図7Aは、グラフである。
【図7B】図7Bは、グラフである。
【図7C】図7Cは、グラフである。
【符号の説明】
【0043】
100L 左アレー
100R 右アレー
102 リスナ
103 リスニング環境
104 左外側
106 左内側
108 右内側
110 右外側
112 ヌル軸
114 ヌル軸
116 ヌル軸
118 左知覚軸
120 右知覚軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサ(104,106;108,110)の第1及び第2アレー(100L,100R)と、
前記第1及び第2アレー(100L,100R)の前記トランスデューサ(104,106;108,110)に出力信号及びクロスフィード信号を提供するために入力信号(204,502)上で動作するフィルタ(202,304,306,310,312,314,402,404,504,506,514)と、
を具備し、
(a)前記第1アレー(100L)の複数のトランスデューサ(104,106)は、第1周波数範囲内で相殺的干渉を生成し、
(b)前記第1アレー(100L)の前記トランスデューサ(104,106)は、第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成せず、かつ
(c)前記第1アレー(100L)の第1トランスデューサ(104,106)、及び前記第2アレー(100R)の第1トランスデューサ(108,110)は、前記第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1周波数範囲は、対応する波長が前記第1アレー(100L)内の前記トランスデューサ(104,106)の間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数範囲はまた、対応する波長が前記第1及び第2アレー(100L,100R)の間の間隔の2倍より小さい1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2周波数範囲は、対応する波長が前記第1及び第2アレー(100L,100R)の間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項1−3の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項5】
前記第1周波数範囲は、概ね1kHz及び概ね3kHzの間の周波数を具備することを特徴とする請求項1−4の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項6】
前記第2周波数範囲は、概ね1kHzより下の周波数を具備することを特徴とする請求項1−5の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項7】
前記第1周波数範囲は、高域周波数及び低域周波数の間の周波数を具備するとともに、前記フィルタは、
直列接続され、前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供する、前記高域周波数にコーナー周波数を具備する反転ローパスフィルタ(202)及び前記低域周波数にコーナー周波数を具備するハイパスフィルタ(310)と、
ハイパスフィルタ(310)と同位相にされるとともに、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供するオールパスフィルタ(302)と、
を具備することを特徴とする請求項1−6の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項8】
前記フィルタは、前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)への出力信号を、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)への出力信号に相対的に遅延するように構成されていることを特徴とする請求項1−7の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項9】
前記フィルタは、前記入力信号が前記第1周波数範囲内にあるときに、前記第2アレー(100R)の前記トランスデューサ(108,110)への前記クロスフィード信号を減衰することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第1周波数範囲は、高域周波数及び低域周波数の間の周波数を具備するとともに、前記フィルタは、
前記低域周波数でコーナー周波数を具備するとともに前記第2アレー(100R)にクロスフィード信号を提供するローパスフィルタ(306)と、
前記ローパスフィルタ(306)と同位相にされるとともに、前記第1アレー(100L)に出力信号を提供するオールパスフィルタ(304)と、
を具備することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2周波数範囲は、第1高域周波数より下の周波数を具備するとともに、前記フィルタは、
前記高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、前記第2アレー(100R)にクロスフィード信号を提供する反転ローパスフィルタ(306)と、
前記反転ローパスフィルタ(306)と同位相にされるとともに、前記第1アレー(100L)に出力信号を提供するオールパスフィルタ(304)と、
を具備することを特徴とする請求項1−8の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタは、前記入力信号が、前記第2周波数範囲内にあるときに、前記第1アレー(100L)の第2トランスデューサ(104,106)への出力信号を減衰する
ことを特徴とする請求項1−6の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項13】
前記第2周波数範囲は、第1高域周波数より下の周波数を具備するとともに、前記フィルタは、
前記第1高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供する第1ハイパスフィルタ(310)と、
前記ハイパスフィルタ(310)と同位相にされるとともに、前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供する第1オールパスフィルタ(302)と、
前記第1オールパスフィルタ(302)と同位相にされるとともに、前記第2アレー(100R)の前記第1トランスデューサ(108,110)にクロスフィード信号を提供する第2オールパスフィルタ(314)と、
を具備することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記フィルタは、
前記第1高域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、前記第2アレー(100R)の第2トランスデューサ(108,110)にクロスフィード信号を提供するとともに、前記第2オールパスフィルタ(314)と同位相にされた第2ハイパスフィルタ(312)をさらに具備することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記フィルタは、前記第1高域周波数より低い第2高域周波数より下の周波数を具備する第3周波数範囲内で、前記第1及び第2アレー(100L,100R)の前記第2トランスデューサ(104,106;108,110)に出力信号及びクロスフィード信号を提供することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記フィルタは、
前記第2高域周波数にコーナー周波数を具備するとともに、前記第1及び第2アレー(100L,100R)の各々の前記第2トランスデューサ(104,106;108,110)に、それぞれ、出力信号及びクロスフィード信号を提供する第1及び第2ローパスフィルタ(402,404)と、
前記第1及び第2ローパスフィルタ(402,404)にそれぞれ、及び互いに、位相が一致するとともに、それぞれ、第1及び第2アレー(100L,100R)の各々の
前記第1トランスデューサ(104,106;108,110)に、それぞれ出力信号及びクロスフィード信号を提供する第1及び第2オールパスフィルタ(302,314)と、
を具備することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記フィルタは、また、第1及び第2アレー(100L,100R)の前記トランスデューサ(104,106;108,110)に、
(d)相殺的干渉が、第3周波数範囲内で生成されない
ように出力信号及びクロスフィード信号を提供することを特徴とする請求項1−6の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項18】
前記第3周波数範囲は、対応する波長が前記第1アレー(100L)内の前記トランスデューサ(104,106)の間の間隔の2倍より小さい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記第3周波数範囲は、概ね3kHzより高い周波数を具備することを特徴とする請求項17又は18に記載の装置。
【請求項20】
前記第3周波数範囲は、低域周波数より上の周波数を具備するとともに、前記フィルタは、入力信号が前記低域周波数より高いときに、前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)を動作させるとともに、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)への出力信号を減衰するように構成されていることを特徴とする請求項17−19の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項21】
前記フィルタは、
前記低域周波数でコーナー周波数を具備するとともに、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供するローパスフィルタ(202)
を具備することを特徴とする請求項17−20の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項22】
前記フィルタは、前記入力信号が前記第3周波数範囲内にあるときに、前記第2アレー(100R)の前記トランスデューサ(108,110)へのクロスフィード信号を減衰するようにさらに構成されていることを特徴とする請求項17−20の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項23】
前記フィルタは、
前記低域周波数にコーナー周波数を具備するとともに、前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)に出力信号を提供する第1ローパスフィルタ(202)と、
前記低域周波数に又はそれより下にコーナー周波数を具備するとともに、前記第2アレー(100R)にクロスフィード信号を提供する第2ローパスフィルタ(306)と、
前記第2ローパスフィルタ(306)と同位相にされるとともに、前記第1アレー(100L)に出力信号を提供するオールパスフィルタ(304)と、

を具備することを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記フィルタは、
前記第1アレー(100L)の第1合計入力に出力信号を提供する第1オールパスフィルタ(304)と、
前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)への入力に、出力信号を提供する第2オールパスフィルタ(302)と、
前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)への第1合計入力に出力信号を提供する、直列接続された第1ローパスフィルタ(202)及び第1ハイパスフィルタ(310)と、
前記第1アレー(100L)の前記第2トランスデューサ(104,106)への第2合計入力に出力信号を提供する第2ローパスフィルタ(404)と、
クロスフィード信号を、前記第2アレー(100R)の第1合計入力に提供する第3ローパスフィルタ(306)と、
前記第2アレー(100R)の前記第1トランスデューサ(108,110)への入力に、クロスフィード信号を提供する第3オールパスフィルタ(314)と、
前記第2アレー(100R)の前記第2トランスデューサ(108,110)への第1合計入力にクロスフィード信号を提供するとともに直列接続された第4ローパスフィルタ(514)及び第2ハイパスフィルタ(312)と、
前記第2アレー(100R)の前記第2トランスデューサ(108,110)への第2合計入力にクロスフィード信号を提供する第5ローパスフィルタ(402)と、
を具備する請求項17−20の1つ又は複数に記載の装置。
【請求項25】
前記第2及び第5ローパスフィルタ(404,402)は低域周波数でコーナー周波数を具備し、
前記第3ローパスフィルタ(306)及び前記第1及び第2ハイパスフィルタ(310,312)は、中間域周波数にコーナー周波数を具備し、かつ、
第1及び第4ローパスフィルタ(202,514)は、高域周波数にコーナー周波数を具備することを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記フィルタは、
前記第1アレー(100L)の第2合計入力にクロスフィード信号を提供する第6ローパスフィルタ(506)と、
前記第2アレー(100R)の第2合計入力に出力信号を提供する第4オールパスフィルタ(504)と、
をさらに具備するとともに、
第1信号入力は、前記第1オールパスフィルタ(304)及び前記第3ローパスフィルタ(306)に接続されるとともに、
第2信号入力は、前記第4オールパスフィルタ(504)及び前記第6ローパスフィルタ(506)に接続されることを特徴とする請求項24又は25に記載の装置。
【請求項27】
前記第1入力信号は左チャネル入力であるとともに、前記第2入力信号は右チャネル入力であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記フィルタは、また、前記第1及び第2アレー(100L,100R)の前記トランスデューサ(104,106;108,110)に、
(d)前記第1アレー(100L)の前記トランスデューサ(104,106)は、追加周波数範囲内で相殺的干渉を生成せず、
(e)前記第1アレー(100L)の複数のトランスデューサ(104,106)、及び前記第2アレー(100R)の複数のトランスデューサ(108,110)は、前記追加周波数範囲内で相殺的干渉を生成する
ように、出力信号及びクロスフィード信号を提供することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記追加周波数範囲は、概ね550Hzより下の周波数を具備することを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記フィルタは、また、前記第2及び第1アレー(100R,100L)の前記トランスデューサ(108,110;104,106)に、
(d)前記第2アレー(100R)の複数のトランスデューサ(108,110)は、前記第1周波数範囲内で相殺的干渉を生成し、
(e)前記第2アレー(100R)の前記トランスデューサ(104,106)は、前記第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成せず、かつ
(c)で、前記第1アレー(100L)の前記第1トランスデューサ(104,106)、及び前記第2アレー(100R)の前記第1トランスデューサ(108,110)は、前記第2周波数範囲内の前記第1入力信号及び前記第2入力信号の両方をベースとして、相殺的干渉を生成するように、出力信号及びクロスフィード信号を提供するように第2入力信号上で動作することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記第1入力信号は左信号であるとともに、前記第2入力信号は右信号であることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記フィルタ(202,304,306,310,312,314,402,404,504,506,514)は、
(d)前記第1アレー(100L)の前記トランスデューサ(104,106)は、前記第1及び第2周波数範囲内で、それぞれ、実質的に異なる角度の相殺的干渉を生成する
ように、前記第1及び第2アレー(100L,100R)の前記トランスデューサ(104,106;108,110)に出力信号及びクロスフィード信号を提供するように、入力信号(204,502)上で動作し、
前記第1アレーを駆動する第1信号と前記第2アレーを駆動する第2信号とは同一でないことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項33】
(a)前記第1アレー(100L)のトランスデューサ(104,106)は、第1周波数範囲内で相殺的干渉を生成し、
(b)前記第1アレー(100L)のトランスデューサ(104,106)は、第2周波数範囲で相殺的干渉を生成せず、かつ
(c)前記第1アレー(100L)の第1トランスデューサ(104,106)及び前記第2アレー(100R)の第1トランスデューサ(108,110)が、前記第2周波数範囲内で相殺的干渉を生成する
ように入力信号をフィルタするとともに、前記第1及び第2アレー(100L,100R)のトランスデューサ(104,106;108,110)を駆動するために、フィルタされた前記信号を、出力信号及びクロスフィード信号として、物理的に離間されたトランスデューサの第1及び第2アレー(100L,100R)に分配する段階と、
を具備することを特徴とする方法。
【請求項34】
前記第1周波数範囲は、対応する波長が前記第1アレー(100L)内の前記トランスデューサ(104,106)の間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記周波数範囲は、また、対応する波長が前記第1及び第2アレー(100L,100R)の間の間隔の2倍より小さい1つであることを特徴とする請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2周波数範囲は、対応する波長が前記第1及び第2アレー(100L,100R)の間の間隔の2倍より大きい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項33−34の1つ又は複数に記載の方法。
【請求項37】
前記第1周波数範囲は、概ね1kHz及び概ね3kHzの間の周波数を具備することを特徴とする請求項33−36の1つ又は複数に記載の方法。
【請求項38】
前記第2周波数範囲は、概ね1kHzより下の周波数を具備することを特徴とする請求項33−37の1つ又は複数に記載の方法。
【請求項39】
出力信号及びクロスフィード信号は、また、
(d)第3周波数範囲では、相殺的干渉は生成されない
ように、前記第1及び第2アレー(100L,100R)のトランスデューサ(104,106;108,110)を駆動することを特徴とする請求項33−38の1つ又は複数に記載の方法。
【請求項40】
前記第3周波数範囲は、対応する波長が前記第1アレー(100L)内の前記トランスデューサ(104,106)の間の間隔の2倍より小さい周波数範囲を具備することを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第3周波数範囲は、概ね3kHzより高い周波数を具備することを特徴とする請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
出力信号及びクロスフィード信号は、また、
(d)前記第1アレー(100L)のトランスデューサ(104,106)は、追加周波数範囲で相殺的干渉を生成せず、かつ
(e)前記第1アレー(100L)のトランスデューサ(104,106)、及び前記第2アレー(100R)のトランスデューサ(108,110)は、前記追加周波数範囲内で相殺的干渉を生成する
ように、前記第1及び第2アレー(100L,100R)のトランスデューサ(104,106;108,110)を駆動することを特徴とする請求項33−38の1つ又は複数に記載の方法。
【請求項43】
前記追加周波数範囲は、概ね550Hzより下の周波数を具備することを特徴とする請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2009−545928(P2009−545928A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522977(P2009−522977)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/074618
【国際公開番号】WO2008/019231
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(591009509)ボーズ・コーポレーション (121)
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
【Fターム(参考)】