説明

音響再生システム、音響再生方法および映像音響再生方法

【課題】左右のスピーカを有するCDプレーヤなどの音響再生装置を、聴取者の後ろ側に設置して、音響を再生する場合にも、正常かつ適切な音響再生が実現されるようにする。
【解決手段】音響再生装置10は、CDプレーヤであり、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを有する。音響再生装置10を聴取者1の正面に設置して音楽を聴く場合には、左チャンネルの音声信号が左スピーカ11Lに供給され、右チャンネルの音声信号が右スピーカ11Rに供給されるようにし、音響再生装置10を聴取者1の真後ろに設置して音楽を聴く場合には、左チャンネルの音声信号が右スピーカ11Rに供給され、右チャンネルの音声信号が左スピーカ11Lに供給されるようにする。左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rへの音声信号の供給を切り替える代わりに、左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号に対する音像定位処理を切り替えるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響再生システム、音響再生方法および映像音響再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
左右のスピーカを備えるCD(Compact Disc)プレーヤ、FMラジオ受信機、カセットプレーヤなどでは、2チャンネルステレオの左チャンネルの音声が左スピーカから出力され、右チャンネルの音声が右スピーカから出力される。
【0003】
液晶ディスプレイなどのディスプレイの左右にスピーカが設けられた薄型テレビ受信機などでも、同じである。
【0004】
一方、スピーカによって音声を再生する場合に、音声信号を実際にスピーカが設置される位置とは異なる位置に音像を定位させるように処理して、音声を再生することが考えられている。
【0005】
例えば、特許文献1(特開平10−224900号公報)には、聴取者の真後ろ方向に近い位置に設置される左右のリアスピーカに供給される音声信号を、聴取者の真横より若干後ろ側の位置に音像を定位させるように処理して、左右のリアスピーカに供給することが示されている。
【0006】
上に挙げた先行技術文献は、以下の通りである。
【特許文献1】特開平10−224900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、左右のスピーカを備えるCDプレーヤなどは、聴取者の正面側に設置されることを前提に、左チャンネルの音声が左スピーカ、すなわち聴取者から見て前方左のスピーカによって再生され、右チャンネルの音声が右スピーカ、すなわち聴取者から見て前方右のスピーカによって再生される。
【0008】
しかし、このような左右のスピーカを備える音響再生装置を、聴取者の後ろ側に設置して、音響を再生したい場合がある。
【0009】
例えば、左右のスピーカを備える音響再生装置を聴取者の真後ろに設置して、5.1チャンネルサラウンド音声中のリアチャンネルの音声を再生する場合である。
【0010】
この場合、音響再生装置の左スピーカは、聴取者の後方右に位置して前方に向き、音響再生装置の右スピーカは、聴取者の後方左に位置して前方に向く。
【0011】
そのため、左チャンネルの音声信号は左スピーカに、右チャンネルの音声信号は右スピーカに、というように、後方左チャンネルの音声信号が左スピーカに供給され、後方右チャンネルの音声信号が右スピーカに供給されると、聴取者の後方右から後方左チャンネルの音声が出力され、聴取者の後方左から後方右チャンネルの音声が出力されてしまう結果となる。
【0012】
設置場所の都合などから、上記のCDプレーヤを聴取者の後ろ側に設置して、CDの音楽を聴くような場合も、同じである。
【0013】
そこで、この発明は、左右のスピーカを有する音響再生装置を、聴取者の後ろ側などに設置して、音響を再生する場合にも、正常かつ適切な音響再生が実現されるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の音響再生システムは、
左スピーカおよび右スピーカを有する音響再生装置によって左チャンネルおよび右チャンネルの音声を再生する音響再生システムであって、
上記音響再生装置が聴取者の正面側に設置される場合の第1の音響再生モードと、上記音響再生装置が聴取者の後ろ側に設置される場合の第2の音響再生モードとでは、上記左スピーカおよび上記右スピーカへの音声信号の供給、または左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号に対する音像定位処理が、切り替えられることを特徴とする。
【0015】
上記の音響再生システムでは、音響再生装置が聴取者の正面側に設置されて、第1の音響再生モードで音響が再生される場合は勿論のこと、音響再生装置が聴取者の後ろ側に設置されて、第2の音響再生モードで音響が再生される場合にも、正常かつ適切な音響再生が実現される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、左右のスピーカを有する音響再生装置を、聴取者の後ろ側などに設置して、音響を再生する場合にも、正常かつ適切な音響再生が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[1.第1の実施形態:図1および図2]
図1(A)(B)に、この発明の音響再生システムおよびそれによる音響再生方法の一例を示す。
【0018】
この例の音響再生システムは、音響再生装置10によって構成される。音響再生装置10は、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを有するものであり、かつ、後述するCDプレーヤなどである。
【0019】
ただし、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rは、図1(A)に示すように、音響再生装置10を聴取者1の正面側に設置して音声を聴取する場合に、聴取者1の前方左に位置する方が左スピーカ11Lであり、聴取者1の前方右に位置する方が右スピーカ11Rである。
【0020】
左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rは、独立したものとし、かつ、エンクロージャ(スピーカボックス)を持たないものとする。
【0021】
音響再生装置10の前面には、例えば、右スピーカ11Rの近傍に、後述のように音響再生モードを示すためのLED(発光ダイオード)12を設ける。
【0022】
図2に、音響再生装置10の一例の構成を示す。この例は、音響再生装置10がCDプレーヤである場合である。
【0023】
具体的に、音響再生装置10では、光ピックアップ14によって、CD13からデータが読み取られ、再生復調回路15で、データが再生復調され、ステレオ復調回路16で、データがステレオ復調されて、ステレオ復調回路16から、左チャンネルの音声信号SLおよび右チャンネルの音声信号SRが出力される。
【0024】
さらに、その左チャンネルの音声信号SLは、音声増幅回路17Lで増幅されて、スイッチ回路18Lおよび18Rに供給され、右チャンネルの音声信号SRも、音声増幅回路17Rで増幅されて、スイッチ回路18Lおよび18Rに供給される。
【0025】
そして、スイッチ回路18Lの出力の音声信号が、左スピーカ11Lに供給され、スイッチ回路18Rの出力の音声信号が、右スピーカ11Rに供給される。
【0026】
操作部21は、再生や再生停止などを指示するとともに、後述のように音響再生モードを切り替えるものである。
【0027】
コントローラ22は、再生復調回路15、ステレオ復調回路16およびLED点灯回路19などを制御し、スイッチ回路18Lおよび18Rを切り替えるものである。
【0028】
聴取者1は、図1(A)に示すように、音響再生装置10を正面に設置した状態で、CD13に記録されている音楽を聴く場合には、操作部21での操作によって、以下のような音響再生モードを選択する。
【0029】
すなわち、このとき、コントローラ22は、スイッチ回路18Lおよび18Rを、図2に示す状態とは逆に、左チャンネルの音声信号SLが左スピーカ11Lに供給され、右チャンネルの音声信号SRが右スピーカ11Rに供給される状態に切り替えるとともに、LED点灯回路19によってLED12を点灯させる。
【0030】
したがって、このとき、左チャンネルの音声信号SLが左スピーカ11Lに供給され、右チャンネルの音声信号SRが右スピーカ11Rに供給されて、図1(A)に示すように、聴取者1の前方左に位置する左スピーカ11Lからは、左チャンネルの音声ALが出力され、聴取者1の前方右に位置する右スピーカ11Rからは、右チャンネルの音声ARが出力される。また、このとき、LED12が点灯する。
【0031】
一方、図1(B)に示すように、音響再生装置10を真後ろに設置した状態で、CD13に記録されている音楽を聴く場合には、聴取者1は、操作部21での操作によって、以下のような音響再生モードを選択する。
【0032】
すなわち、このとき、コントローラ22は、スイッチ回路18Lおよび18Rを、図2に示すように、左チャンネルの音声信号SLが右スピーカ11Rに供給され、右チャンネルの音声信号SRが左スピーカ11Lに供給される状態に切り替えるとともに、LED12を消灯させる。
【0033】
したがって、このとき、左チャンネルの音声信号SLが右スピーカ11Rに供給され、右チャンネルの音声信号SRが左スピーカ11Lに供給されて、図1(B)に示すように、聴取者1の後方左に位置する右スピーカ11Rからは、左チャンネルの音声ALが出力され、聴取者1の後方右に位置する左スピーカ11Lからは、右チャンネルの音声ARが出力される。
【0034】
以上のように、この例では、音響再生装置10が聴取者1の正面に設置される場合は勿論のこと、音響再生装置10が聴取者1の真後ろに設置される場合にも、左チャンネルおよび右チャンネルの音声が正常に再生される。
【0035】
さらに、図1(B)のように音響再生装置10を聴取者1の真後ろの聴取者1に近い位置に設置して音響を再生する場合には、周囲への音の漏れを低減することができる。特に、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを、エンクロージャを持たないものとすることによって、中高音に比べて音が響き易い低音の漏れをより低減することができる。
【0036】
図2の例は、スイッチ回路18Lおよび18Rによって、音声信号SLおよびSRの左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rへの供給を切り替える場合であるが、音像定位処理の切り替えによって、等価的に同様のことを行うように構成することもできる。
【0037】
具体的に、この場合、スイッチ回路18Lおよび18Rを設けることなく、ステレオ復調回路16からの左チャンネルの音声信号SLおよび右チャンネルの音声信号SRが、それぞれ音像定位処理回路を通じて左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rに供給されるようにする。
【0038】
そして、図1(A)に示すような音響再生モードが選択されたときには、上記の音像定位処理回路において、例えば、左チャンネルの音声信号SLおよび右チャンネルの音声信号SRに対して、特に音像定位処理を施さず、一方、図1(B)に示すような音響再生モードが選択されたときには、上記の音像定位処理回路において、左チャンネルの音声信号SLに対しては、聴取者1の左側の位置、例えば前方左の位置に音像を定位させる処理を施し、右チャンネルの音声信号SRに対しては、聴取者1の右側の位置、例えば前方右の位置に音像を定位させる処理を施す。
【0039】
なお、音響再生装置10は、図2の例のようなCDプレーヤに限らず、FMラジオ受信機やカセットプレーヤなどのステレオ再生装置でもよい。
【0040】
また、音響再生システムとしては、CDプレーヤなどのステレオ再生装置と、左スピーカおよび右スピーカを有する音響再生装置とを備え、ステレオ再生装置と音響再生装置との間の無線通信によって、ステレオ再生装置から音響再生装置に左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号が送信されるシステムでもよい。
【0041】
[2.第2の実施形態:図3〜図6]
図3に、この発明の映像音響再生方法を実行する映像音響再生システムの一例を示す。
【0042】
この例の映像音響再生システムは、薄型テレビ受信機30、音響再生装置10、DVDプレーヤ40、CDプレーヤ50、送信装置60および受信装置70によって構成される。
【0043】
薄型テレビ受信機30は、聴取者(視聴者)の正面に設置され、DVDプレーヤ40、CDプレーヤ50および送信装置60は、薄型テレビ受信機30の近くに設置され、音響再生装置10は、後述のように聴取者の真後ろ、または聴取者の正面の聴取者に近い位置に設置され、受信装置70は、音響再生装置10の近くに設置され、または音響再生装置10と一体的に構成される。
【0044】
薄型テレビ受信機30は、液晶ディスプレイなどのパネル状のディスプレイ33の左右に、またはディスプレイ33の下側左右に、左スピーカ31Lおよび右スピーカ31Rが設けられたものである。
【0045】
音響再生装置10は、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを有するものである。この場合も、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rは、独立したものとし、かつ、エンクロージャを持たないものとする。
【0046】
音響再生装置10は、後述のように、図2に示したCDプレーヤなどのような内部で音声信号が得られるものでもよいが、図3の例では、内部で音声信号が得られず、外部から音声信号が送信されるものである。
【0047】
DVDプレーヤ40では、DVD(Digital Versatile Disc)から、映像信号および5.1チャンネルサラウンド音声信号が再生される。
【0048】
DVDプレーヤ40の映像出力は、薄型テレビ受信機30に送出され、薄型テレビ受信機30のディスプレイ33上に、DVDの映像が表示される。
【0049】
DVDプレーヤ40の音声出力は、例えば光信号として、全チャンネルの音声信号が送信装置60に送出されるが、後述のように、映像音響再生方法によっては、一部チャンネルの音声信号が薄型テレビ受信機30にも送出される。
【0050】
CDプレーヤ50の出力のステレオ音声信号は、送信装置60に送出される。テレビのステレオ音声信号またはモノラル音声信号も、薄型テレビ受信機30から送信装置60に送出される。
【0051】
送信装置60では、音声選択処理回路61で、DVDプレーヤ40の音声出力中の全チャンネルまたは一部チャンネルの音声信号が選択され、さらに、その選択された音声信号に対して音像定位処理などの処理が施される。
【0052】
また、送信装置60では、音声選択処理回路62で、CDプレーヤ50の音声出力またはテレビの音声出力が選択され、さらに、その選択された音声信号に対して音像定位処理などの処理が施される。
【0053】
さらに、送信装置60では、切り替え回路63で、音声選択処理回路61の出力と音声選択処理回路62の出力とが切り替えられて、その切り替え後の音声信号が、送受信回路64によって、アンテナ65から受信装置70に送信される。
【0054】
また、送信装置60では、後述のように受信装置70から送信されたコマンドが、アンテナ65を通じて送受信回路64で受信され、コントローラ66に取り込まれるとともに、操作部67での操作に基づいてコントローラ66から得られるコマンドが、送受信回路64によって、アンテナ65から受信装置70に送信される。
【0055】
受信装置70では、上記のように送信装置60から送信された音声信号が、アンテナ75を通じて送受信回路74で受信され、音声処理回路73で処理されて、後述のように音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rに供給される。
【0056】
また、受信装置70では、操作部77での操作に基づいてコントローラ76から得られるコマンドが、送受信回路74によって、アンテナ75から送信装置60に送信されるとともに、上記のように送信装置60から送信されたコマンドが、アンテナ75を通じて送受信回路74で受信され、コントローラ76に取り込まれる。
【0057】
この例の映像音響再生システムでは、受信装置70の操作部77または送信装置60の操作部67で映像音響再生方法を選択することによって、以下の各例に示すように、映像および音響を再生することができる。
【0058】
(2−1.映像音響再生方法の第1の例:図4)
第1の例では、図3の例の映像音響再生システムによってDVDの映像および音声を鑑賞する場合、図4に示すように、音響再生装置10を聴取者1の真後ろに設置して、リアチャンネルの音声を音響再生装置10の右スピーカ11Rおよび左スピーカ11Lによって再生する。
【0059】
具体的に、この場合、図3のDVDプレーヤ40からの5.1チャンネルサラウンド音声信号中の、前方左チャンネルの音声信号および前方右チャンネルの音声信号は、薄型テレビ受信機30の左スピーカ31Lおよび右スピーカ31Rに供給されて、図4に示すように、左スピーカ31Lからは、前方左チャンネルの音声FLが出力され、右スピーカ31Rからは、前方右チャンネルの音声FRが出力される。
【0060】
同時に、DVDプレーヤ40からの5.1チャンネルサラウンド音声信号中の、後方左チャンネルの音声信号および後方右チャンネルの音声信号は、送信装置60の音声選択処理回路61で選択されて、切り替え回路63を通じて送受信回路64に供給され、送信装置60から受信装置70に送信されて、受信装置70の送受信回路74で受信される。
【0061】
さらに、その後方左チャンネルの音声信号および後方右チャンネルの音声信号は、受信装置70の音声処理回路73によって、後方左チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の右スピーカ11Rに供給され、後方右チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の左スピーカ11Lに供給されて、図4に示すように、聴取者1の後方左に位置する右スピーカ11Rからは、後方左チャンネルの音声RLが出力され、聴取者1の後方右に位置する左スピーカ11Lからは、後方右チャンネルの音声RRが出力される。
【0062】
また、DVDプレーヤ40からの5.1チャンネルサラウンド音声信号中の、センターチャンネルの音声信号は、図3および図4では省略したセンタースピーカに供給され、LFE(Low Frequency Effect)チャンネルの音声信号は、図3および図4では省略したサブウーハスピーカに供給されて、センタースピーカから、センターチャンネルの音声が出力され、サブウーハスピーカから、LFEチャンネルの音声が出力される。
【0063】
したがって、この例では、音響再生装置10によってリアチャンネルの音声を正常に再生することができる。
【0064】
この例でも、後方左チャンネルの音声信号が、送信装置60の音声選択処理回路61で、聴取者1の後方左の位置に音像が定位されるように処理されて、音響再生装置10の左スピーカ11Lに供給され、後方右チャンネルの音声信号が、送信装置60の音声選択処理回路61で、聴取者1の後方右の位置に音像が定位されるように処理されて、音響再生装置10の右スピーカ11Rに供給されるようにしてもよい。
【0065】
音響再生装置10を、図2に示したCDプレーヤのようなステレオ音声信号の信号源を含むものとする場合には、図1(A)に示したように、音響再生装置10を聴取者1の正面に設置した状態で、ステレオの音声を再生する音響再生モードと、図4に示すように、音響再生装置10を聴取者1の真後ろに設置した状態で、5.1チャンネルサラウンド音声中のリアチャンネルの音声を再生する音響再生モードとを切り替えて、音響を再生することができる。
【0066】
また、図4のように音響再生装置10を聴取者1の真後ろに設置する場合、上記の5.1チャンネルサラウンド音声信号中のLFEチャンネルの音声信号を、上記のサブウーハスピーカではなく、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rによって再生するようにしてもよい。このようにLFEチャンネルの音声信号のような低域音声信号を、音響再生装置10の上記のようにエンクロージャを持たないスピーカにより再生することによって、音響再生装置10の近傍に居る聴取者1は、低域の音声を十分な低音感をもって聴取することができるとともに、音響再生装置10の近傍に居ない人に対しては、低音の漏れをあまり意識させないようにすることができる。
【0067】
(2−2.映像音響再生方法の第2の例:図5)
第2の例では、図3の例の映像音響再生システムによってDVDの映像および音声を鑑賞する場合、図5に示すように、音響再生装置10を聴取者1の正面の聴取者1に近い位置に設置して、全チャンネルの音声を音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rによって再生する。
【0068】
すなわち、この場合、薄型テレビ受信機30では、ディスプレイ33上にDVDの映像を表示するだけで、左スピーカ31Lおよび右スピーカ31Rからは音声を出力させない。
【0069】
同時に、図3のDVDプレーヤ40からの5.1チャンネルサラウンド音声信号は、送信装置60の音声選択処理回路61で、全チャンネルの音声信号が選択されて、切り替え回路63を通じて送受信回路64に供給され、送信装置60から受信装置70に送信されて、受信装置70の送受信回路74で受信される。
【0070】
さらに、その5.1チャンネルサラウンド音声信号は、受信装置70の音声処理回路73で、全チャンネルの音声信号が合成され、その合成後の音声信号が、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rに供給されて、図5に示すように、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rから、合成後の音声MAが出力される。
【0071】
この例では、DVDの映像および音声を鑑賞する場合、映像は聴取者1から離れた薄型テレビ受信機30の大画面で鑑賞し、音声は聴取者1の身近で音響再生装置10によって聴取することができる。
【0072】
したがって、聴取者1は耳が遠くても音声を聴き取ることができるとともに、周囲への音の漏れを低減することができる。特に、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを、エンクロージャを持たないものとすることによって、中高音に比べて音が響き易い低音の漏れをより低減することができる。
【0073】
また、音響再生装置10は、聴取者1の近くで使用するため、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rの出力パワーを減らすことができ、音響再生装置10を電池で駆動することができるとともに、図3の例に示すように信号源側と音響再生装置10側との間で音声信号およびコマンドを無線で送受することができる。
【0074】
なお、図5のように音響再生装置10を聴取者1の正面の聴取者1に近い位置に設置する場合にも、上記の5.1チャンネルサラウンド音声信号中のLFEチャンネルの音声信号を、サブウーハスピーカではなく、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rによって再生するようにしてもよい。このようにLFEチャンネルの音声信号のような低域音声信号を、音響再生装置10の上記のようにエンクロージャを持たないスピーカにより再生することによって、音響再生装置10の近傍に居る聴取者1は、低域の音声を十分な低音感をもって聴取することができるとともに、音響再生装置10の近傍に居ない人に対しては、低音の漏れをあまり意識させないようにすることができる。
【0075】
(2−3.映像音響再生方法の第3の例:図6)
第3の例では、図3の例の映像音響再生システムによってテレビの映像および音声を視聴する場合、図6に示すように、音響再生装置10を聴取者1の正面の聴取者1に近い位置に設置して、テレビの音声を音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rによって再生する。
【0076】
すなわち、この場合、薄型テレビ受信機30では、ディスプレイ33上にテレビの映像を表示するだけで、左スピーカ31Lおよび右スピーカ31Rからは音声を出力させない。
【0077】
同時に、図3の送信装置60では、テレビの音声信号が、音声選択処理回路62で選択されて、切り替え回路63を通じて送受信回路64に供給され、送信装置60から受信装置70に送信されて、受信装置70の送受信回路74で受信される。
【0078】
さらに、テレビの音声信号がステレオ音声信号の場合には、受信装置70の音声処理回路73によって、左チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の左スピーカ11Lに供給され、右チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の右スピーカ11Rに供給されて、左スピーカ11Lからは、左チャンネルの音声が出力され、右スピーカ11Rからは、右チャンネルの音声が出力される。
【0079】
また、テレビの音声信号がモノラル音声信号の場合には、受信装置70の音声処理回路73によって、そのモノラル音声信号が、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rに供給されて、左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rから、モノラルの音声が出力される。
【0080】
この例では、テレビの映像および音声を視聴する場合、映像は聴取者1から離れた薄型テレビ受信機30の大画面で鑑賞し、音声は聴取者1の身近で音響再生装置10によって聴取することができる。
【0081】
したがって、聴取者1は耳が遠くても音声を聴き取ることができるとともに、周囲への音の漏れを低減することができる。特に、音響再生装置10の左スピーカ11Lおよび右スピーカ11Rを、エンクロージャを持たないものとすることによって、中高音に比べて音が響き易い低音の漏れをより低減することができる。
【0082】
この第3の例のような映像音響再生方法は、例えば、テレビの映像を見ながら、音声としては、テレビの音声ではなく、CDの音楽を聴く場合にも、行うことができる。
【0083】
具体的に、この場合、上記のように、薄型テレビ受信機30では、ディスプレイ33上にテレビの映像を表示するだけで、左スピーカ31Lおよび右スピーカ31Rからは音声を出力させない。
【0084】
同時に、図3の送信装置60では、CDプレーヤ50の出力のステレオ音声信号が、音声選択処理回路62で選択されて、切り替え回路63を通じて送受信回路64に供給され、送信装置60から受信装置70に送信されて、受信装置70の送受信回路74で受信される。
【0085】
さらに、受信装置70の音声処理回路73によって、左チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の左スピーカ11Lに供給され、右チャンネルの音声信号が、音響再生装置10の右スピーカ11Rに供給されて、左スピーカ11Lからは、左チャンネルの音声が出力され、右スピーカ11Rからは、右チャンネルの音声が出力される。
【0086】
したがって、テレビの映像は聴取者1から離れた薄型テレビ受信機30の大画面で鑑賞し、CDの音楽は聴取者1の身近で音響再生装置10によって聴取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明の音響再生システムの一例による音響再生方法を示す図である。
【図2】この発明の音響再生システムを構成する音響再生装置の一例を示す図である。
【図3】この発明の映像音響再生システムの一例を示す図である。
【図4】図3の例の映像音響再生システムによる映像音響再生方法の第1の例を示す図である。
【図5】図3の例の映像音響再生システムによる映像音響再生方法の第2の例を示す図である。
【図6】図3の例の映像音響再生システムによる映像音響再生方法の第3の例を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
主要部については図中に全て記述したので、ここでは省略する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左スピーカおよび右スピーカを有する音響再生装置によって左チャンネルおよび右チャンネルの音声を再生する音響再生システムであって、
上記音響再生装置が聴取者の正面側に設置される場合の第1の音響再生モードと、上記音響再生装置が聴取者の後ろ側に設置される場合の第2の音響再生モードとでは、上記左スピーカおよび上記右スピーカへの音声信号の供給、または左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号に対する音像定位処理が、切り替えられることを特徴とする音響再生システム。
【請求項2】
請求項1の音響再生システムにおいて、
上記第1の音響再生モードでの左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号は、ステレオ音声信号であり、上記第2の音響再生モードでの左チャンネルおよび右チャンネルの音声信号は、マルチチャンネルサラウンド音声信号中のリアチャンネルの音声信号であることを特徴とする音響再生システム。
【請求項3】
請求項1の音響再生システムにおいて、
上記左スピーカおよび上記右スピーカは、エンクロージャを持たないことを特徴とする音響再生システム。
【請求項4】
請求項1の音響再生システムにおいて、
上記音響再生装置に、当該システムが上記第1の音響再生モードで音響を再生しているか、上記第2の音響再生モードで音響を再生しているかを示す表示手段が設けられていることを特徴とする音響再生システム。
【請求項5】
左スピーカおよび右スピーカを有する音響再生装置を備える音響再生システムによってマルチチャンネルサラウンド音声を再生する音響再生方法であって、
後方左チャンネルの音声信号を、上記右スピーカに供給し、または聴取者の後方左の位置に音像が定位されるように処理して上記左スピーカに供給し、後方右チャンネルの音声信号を、上記左スピーカに供給し、または聴取者の後方右の位置に音像が定位されるように処理して上記右スピーカに供給して、上記左スピーカおよび上記右スピーカによってリアチャンネルの音声を再生することを特徴とする音響再生方法。
【請求項6】
請求項5の音響再生方法において、
上記左スピーカおよび上記右スピーカは、エンクロージャを持たないことを特徴とする音響再生方法。
【請求項7】
映像再生装置と、左スピーカおよび右スピーカを有する音響再生装置とを備える映像音響再生システムにおける映像音響再生方法であって、
上記音響再生装置が聴取者の正面側の、上記映像再生装置と聴取者との間に設置された状態で、上記左スピーカおよび上記右スピーカによって音声を再生することを特徴とする映像音響再生方法。
【請求項8】
請求項7の映像音響再生方法において、
上記左スピーカおよび上記右スピーカは、エンクロージャを持たないことを特徴とする映像音響再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−193393(P2008−193393A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25552(P2007−25552)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】