説明

音響再生装置

【課題】建築材料の機能を併用した振動体による音響再生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】建築材料の機能を併用した振動体に、ボイスコイル28を結合して、このボイスコイル28に作用する範囲に、磁束発生手段を設けて構成することで、装置の小型薄型化を実現することができ、室内でのスペースファクターの向上と、室内レイアウトの自由度向上ができ、部品点数削減によるコスト低減化と生産性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間に使用される音響再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図19は、従来の居住空間と、この居住空間に使用される音響再生装置の構成を示した斜視図である。
【0003】
図19において、100は居住空間、101は壁、102は天井、103は床、104は柱、105は扉、106は窓である。
【0004】
そして、この居住空間100には、最近各家庭で普及しつつあるリアルな音場再生可能な5.1チャンネルのサラウンドシステムを搭載したオーディオシステム200が設置されている。
【0005】
このオーディオシステム200は、その操作手段や信号入力手段や増幅手段等からなるプレーヤ部やアンプ部を含む本体部201と、右フロントスピーカ202と左フロントスピーカ203および右リアスピーカ204と左リアスピーカ205ならびにセンタースピーカ206およびサブウーファ207の合計6つのスピーカにより構成している。
【0006】
そして、これらのスピーカは居住空間100を少しでも広く確保できるよう部屋の隅に置いたり、壁101に埋め込んで使用できるようにしたものが考案されていた。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】実開平3−86688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の音響再生装置であるオーディオシステム200は、特に前述のような5.1チャンネルのサラウンドシステムを搭載した場合、合計6つのスピーカが必要となり、そのそれぞれのスピーカにエンクロージャが必要となるため、体積的に非常に大きなものとなる。
【0009】
さらに、再生帯域を広くして、大きな音量で再生可能なリアルな音響再生が実現できるスピーカとするには、このエンクロージャの体積を大きく確保することが重要となる。
【0010】
一方、住宅事情は、都心のマンションに代表されるように、狭い居住空間を有効利用することで、生活環境を改善したり、コストパフォーマンスを高めることが最近の住環境の主流となりつつある。
【0011】
よって、前述のリアルな音響再生や音場再生可能な5.1チャンネルのサラウンドシステムを搭載したオーディオシステム200の設置は、大きな面積が必要となることから、昨今の住宅事情面からは敬遠されているという問題を有するものであった。
【0012】
この対策案として、スピーカを小型化したり、壁に埋め込んだりした構成のものも存在はしたが、設置に必要な体積の減少は可能であるが、いずれも音響再生面で不利になり、リアルで良好な音響再生が実現できるものではなかった。
【0013】
本発明はこのような従来の課題を解決し、狭い居住空間を有効利用することができる音響再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも磁束発生手段と、この磁束発生手段の磁束の作用する範囲に前記磁束発生手段と非接触状態で配置されるボイスコイルを結合した振動体とから構成し、前記振動体を建築材料の一部で構成して音響再生装置を構成したものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明による音響再生装置は、建築材料の一部で構成した振動体により音響再生装置を構成することで、装置の小型薄型化を実現することができる。
【0016】
よって、スピーカシステムである音響再生装置を設置するスペースが不要であるため、室内でのスペースファクターを向上できるとともに、室内レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0017】
さらに、振動体は建築材料の機能を併用しているため、本来のスピーカの振動板が不要となり、部品点数削減によるコスト低減化と生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、請求項2、請求項4、請求項6、請求項10、請求項25、請求項26、請求項27および請求項28に記載の発明について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の居住空間と、この居住空間に使用される音響再生装置の構成を示した斜視図である。
【0020】
図1において、300は居住空間、301は正面壁、302は天井、303は床、304は柱、305は扉、306は窓である。
【0021】
そして、この居住空間300には、最近各家庭で普及しつつあるリアルな音場再生可能な5.1チャンネルのサラウンドシステムを搭載したオーディオシステム400が設置されている。
【0022】
このオーディオシステム400は、その操作手段や信号入力手段や増幅手段等からなるプレーヤ部やアンプ部を含む本体部401と、正面壁の右側壁面材を右フロントスピーカ402の振動体27として使用し、正面壁の左側壁面材を左フロントスピーカ403の振動体27として使用する。
【0023】
そして、図1下方に示す背面壁の右側壁面材を右リアスピーカ404の振動体27として使用し、背面壁の左側壁面材を左リアスピーカ405の振動体27として使用する。
【0024】
さらに、正面壁の中央壁面材をセンタースピーカ406の振動体27として使用し、側面壁の左壁面材をサブウーファ407の振動体27として使用することで、合計6つのスピーカにより構成している。
【0025】
尚、図中の破線部分は壁面に内蔵されたボイスコイル28を示している。
【0026】
図2は、図1に示した振動体27として使用されている建築材料である壁面材のみを示した外観図であり、振動体27としての壁面材は略平面状に形成されている。
【0027】
尚、図中の破線部分は壁面の裏側に配置されたボイスコイル28を示している。
【0028】
図3は、図2の壁面材の使用状態を示す断面図であり、2つの柱材304の間に形成された壁面心材410に、磁束発生手段であるマグネット21を含む磁気回路24を結合し、この磁気回路24のマグネット21とヨーク23にて形成された磁気ギャップ25にボイスコイル28を挿入配置させるとともに、このボイスコイル28の反対側を振動体27に結合して構成している。
【0029】
そして、この振動体27が壁の表面となり、壁としての機能を有するとともに、振動板として音を発生する機能も有するものとなる。
【0030】
すなわち、磁束発生手段である磁気回路24と、この磁束発生手段の磁束の作用する範囲に磁束発生手段と非接触状態で配置されるボイスコイル28を結合した振動体27とから構成されるとともに、振動体27は建築材料の一部で音響再生装置を構成したものである。
【0031】
この構成により、音響再生装置は、建築材料の一部で構成した振動体27を用いて構成することで、装置の小型薄型化を実現することができる。
【0032】
また、従来の音響再生装置に使用されることの多かった円錐型の振動板、いわゆるコーン紙を、壁面材として略平面状に形成させることで、大幅な薄型化を実現することができる。
【0033】
さらに、振動体27は建築材料の機能を併用しているため、本来のスピーカの振動板が不要となり、部品点数削減によるコスト低減化と生産性の向上を図ることができる。
【0034】
上述した音響再生装置は、リアルな音場再生可能な5.1チャンネルのサラウンドシステムに適用したものであり、このオーディオシステム400は、合計6つのスピーカにより構成しているため、この6つのスピーカの振動板を全て壁面に代替させることで、住宅の居住空間を大幅に拡大させることができる。
【0035】
図4は、表面と裏面の両面に振動体27の機能を有する壁面材を使用した状態を示す断面図であり、音響再生装置を磁束発生手段側を内側にして、2体以上の音響再生装置を一体化結合して構成したものである。すなわち、磁束発生手段である磁気回路24の一部であるヨーク23を共用化して構成したものである。
【0036】
この構成は、連続した2つの部屋の中心壁を共用して、各々の部屋の壁に音を再生するスピーカの機能を持たせるときに有効であり、部品の共用化を図ることができ省スペース化と低コスト化を実現することができる。
【0037】
尚、当構成は磁気回路24の一部であるヨーク23を共用化して構成したものについて説明したが、これに限定されることなく、マグネット21を共用化しても良く、またこれら以外の部品を共用化しても良い。
【0038】
図5は、磁束発生手段である磁気回路24と、振動体27を被装着体に結合して構成した音響再生装置である。前述した音響再生装置に、被装着体としての枠体であるフレーム26を設けた構成であり、これ以外の構成は図3に示す構成と同様であるため説明は省略するが、この構成とすることにより、壁の心材や柱材が存在しなくとも、音響再生装置としての壁面モジュールを構成させることができ、建築材料として単独で管理、運用が可能となる。
【0039】
よって、建築現場で組立て構成する必要がなく、建築材料工場内部で音響再生装置としての壁面モジュールとして完成させることができ、管理、運用面の容易性と低コスト化を図ることができる。
【0040】
図6は、図4に示す磁束発生手段である磁気回路24の一部であるヨーク23を共用化して構成し、加えて被装着体としての枠体であるフレーム26についても共用化して構成したものである。
【0041】
この構成とすることにより、連続した2つの部屋の中心壁を共用して、各々の部屋の壁に音を再生するスピーカの機能を持たせる壁面モジュールを構成させることができ、建築材料として単独で管理、運用が可能となる。
【0042】
さらに、部品の共用化を図ることができ省スペース化と低コスト化を実現することができる。
【0043】
以上の構成とすることにより、スピーカシステムである音響再生装置を設置するスペースが不要となり、室内でのスペースファクターを向上できるとともに、室内レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0044】
また、部品の共用化、省スペース化、低コスト化を実現することができ、加えて建築材料工場内部で音響再生装置としての壁面モジュールとして完成させることができ、管理、運用面の容易性も図ることができ、その効果は絶大である。
【0045】
さらに、オーディオシステムと各々のスピーカとの配線についても、壁面内部にて実施することができるため、日常生活上、煩わしいコード類を居住空間からなくすことができ生活の快適性、生活環境の向上を図ることができる。
【0046】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項3、請求項5、請求項7、請求項8および請求項9に記載の発明について図面を用いて説明する。
【0047】
図7は、本発明のボイスコイル28の構成を示した振動体27の斜視図である。
【0048】
図7は、磁束発生手段と交差しない状態で振動体の面上に、巻線手法を用いずにプリント手法やメッキ手法、エッチング手法等により設けられたボイスコイルである。
【0049】
また、図8に示すようにボイスコイル28は、少なくとも振動体27の外周部近傍を含んで設けられていれば良い。
【0050】
これらの構成のように、ボイスコイル28は、少なくとも振動体27の面上に、その外周部近傍を含んで角型渦巻状に形成されている。
【0051】
図9および図10は、図7や図8に示すボイスコイル28が形成された振動体27を使用した音響再生装置の構成を示した断面図である。
【0052】
図9において、ボイスコイル28は磁束発生手段と交差しない状態で振動体27の面上に設けられ、その外周を被装着体としての枠体であるフレーム26に結合されている。
【0053】
そして、この振動体27を駆動するための磁束発生手段は複数のマグネット21を、これらを結合できる形状に形成したヨーク23に結合し、その磁気ギャップ25から発生する漏洩磁束をボイスコイル28に作用させて振動体27を駆動している。
【0054】
図10については、振動体27の両面上に、ボイスコイル28を形成したものであり、裏面には、図7に示すように振動体27の面上全体にボイスコイル28を形成し、前面には、図8に示すようにボイスコイル28は、少なくとも振動体27の外周部近傍にのみ形成している。
【0055】
そして、これら振動体27の表裏面の両面上に形成されたボイスコイル28には、それぞれ両面側に磁束発生手段である磁気回路24を、振動体27を介して、少なくともその一部を対向配置して設け、この磁気回路24の磁気ギャップ25から発生する漏洩磁束をボイスコイル28に作用させて振動体27を駆動している。
【0056】
以上の構成とすることで、ボイスコイル28は磁束発生手段である磁気回路24と交差しない状態で振動体27の面上に形成することで、音響再生装置の薄型化を図ることができる。
【0057】
さらに、図10に示すようにボイスコイル28が、振動体27の両面側に形成されたものについては、その駆動力を大きくすることができ、音響再生装置の音圧レベルを向上させることができる。
【0058】
図11は、本発明の磁束発生手段を、電流による誘導磁界により構成したものである。
【0059】
図11に示すように、ボイスコイル28を形成した振動体27の外周部を、被装着体としての枠体であるフレーム26に結合し、このフレーム26には磁束発生手段である電流による誘導磁界を発生させるためのコイル28Aを設けて構成したものである。
【0060】
そして、このコイル28Aに電流を流し、発生した磁束をボイスコイル28に作用させ、振動体27を駆動する構成としている。
【0061】
この構成とすることで、マグネットを含む磁気回路が不要となり、さらなる装置の小型薄型化を実現することができる。
【0062】
図12は、図11の磁束発生手段である誘導磁界を発生させるためのコイル28Aを、被装着体としての枠体であるフレーム26を共用化して、その両側に設け、さらにボイスコイル28を形成した振動体27も、このフレーム26に形成されたコイル28Aの両側にその外周部を、フレーム26に結合して表裏両面に構成したものである。
【0063】
この構成とすることにより、部品の共用化、省スペース化、低コスト化を実現することができる音響再生装置の薄型化を図ることができ、その効果は絶大である。
【0064】
以上の構成では、振動体27とフレーム26の結合については、振動体27の振幅を十分に確保できる点から、柔軟性に富む接着剤や粘着剤により結合させることが望ましい。
【0065】
但し、必要な場合は、高硬度の接着剤でも使用可能であり、さらに振動体27とフレーム26を結合せずに使用することも可能である。
【0066】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項11、請求項12、請求項13、請求項14、請求項15、請求項16および請求項17に記載の発明について図面を用いて説明する。
【0067】
図13は、本発明の居住空間と、この居住空間に使用される音響再生装置の構成を示した斜視図である。
【0068】
本発明の居住空間については、実施の形態1にて説明したため、その詳細説明は省略するが、実施の形態1にて説明した振動体27は、建築材料の壁面材を使用した例について説明したが、ここでは壁面材以外の建築材料や建築関連材料への適用について説明する。
【0069】
図13において、301は壁、302は天井、303は床、304は柱、305は扉、306は窓である。
【0070】
この図13の破線で示したボイスコイルが内蔵された建築材料、すなわち302の天井材、303の床材、304の柱材、305の扉材、306の窓材についても、実施の形態1と同様にボイスコイルと磁束発生手段とを設けることにより音響再生装置の振動体として構成することができる。
【0071】
尚、304の柱材については、図14に拡大斜視図を示す。
【0072】
その他、図15や図16に示す衝立材320やパーテーション321、屏風等の建築関連材料への適用も可能である。
【0073】
さらに、図示していないが、建築関連材料として表札や外壁や門柱といったエクステリアへの適用も可能である。
【0074】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて、本発明の特に請求項18、請求項19、請求項20、請求項21、請求項22、請求項23、請求項24、請求項29、請求項30および請求項31に記載の発明について図面を用いて説明する。
【0075】
図17は、本発明の居住空間と、この居住空間に使用される音響再生装置の構成を示した斜視図である。
【0076】
本発明の居住空間については、実施の形態1にて説明したため、その詳細説明は省略するが、実施の形態1にて説明した建築材料へのボイスコイルや振動体の使用手段について説明する。
【0077】
図17において、301は正面壁、330は背面壁である。
【0078】
この図17の破線で示したボイスコイルが内蔵された建築材料、すなわち301の正面壁、330の背面壁についても、実施の形態1と同様のボイスコイルと磁束発生手段とを設けることにより音響再生装置の振動体として構成している。
【0079】
ここで、1つの振動体に、2つ以上の独立したボイスコイルを結合し、各々のボイスコイルに異なった電気信号を入力して音響再生装置を構成することで、その性能を向上させることができる。
【0080】
例えば、正面壁301の右側には、実施の形態1では右側のボイスコイルを1つ形成する構成を説明したが、当実施の形態では、これを3つに分割して3つのボイスコイルを形成し、このそれぞれのボイスコイルに、周波数帯域の異なる信号を入力して使用できる音響再生装置とする。
【0081】
すなわち、3つのボイスコイルのうち、上側の小型のボイスコイル28Bには、通常ツィータに入力する高音域専用の信号を入力し、中間の中型のボイスコイル28Cには、通常スコーカに入力する中音域専用の信号を入力し、下側の大型のボイスコイル28Dには、通常ウーファに入力する低音域専用の信号を入力して、マルチウエイスピーカを構成する。
【0082】
この構成とすることで、各々のボイスコイルと、このボイスコイルが結合された各々の振動体の質量により、それぞれ高音域、中音域、低音域に最適な周波数特性を再生することができる。
【0083】
すなわち、より軽量で面積の小さいボイスコイルと振動体には高音域を、より質量が大きく面積の大きいボイスコイルと振動体には低音域をそれぞれ受持たせるように、信号入力制御することにより良好な周波数特性を実現することができる。
【0084】
また、当実施の形態のように細かく分割しないまでも、実施の形態1の図1に示すように、正面壁301に、ステレオ信号を右側と左側に分割して入力したり、5.1チャンネル対応のサラウンド信号を、その再生周波数帯域に適した部位に入力したりして音響再生装置を構成することもできる。
【0085】
以上、1つの振動体に、2つ以上の独立したボイスコイルを結合し、各々のボイスコイルに異なった電気信号を入力して音響再生装置を構成する方法について説明したが、1つの振動体である限り、振動伝達が少ないにしても、1つのボイスコイルが結合された振動体に、別のボイスコイルからの振動が伝達されて、悪影響を及ぼす可能性がある。
【0086】
この場合には、図17の下方に示す背面壁330のように、壁面材にスリット331を設けて振動伝達を防止する方法が有効である。
【0087】
当実施の形態では、左右間のスリットと上下間に2つのスリットを設けているため、ステレオ対応で、かつ3ウエイのマルチウエイ対応を高性能で実現可能となる。
【0088】
この構成とすることで、各々のボイスコイルと、このボイスコイルが結合された各々の振動体の各チャンネル間のセパレーションが向上し、クロストークを低減させることができ、より性能の良好な音響再生装置を実現することができる。
【0089】
また図示していないが、振動体27は、その外周部に、柔軟性に富むエッジ部を含んで構成することもできる。
【0090】
この構成とすることで、柔軟性に富むエッジ部の効果で、振動体27の振幅量を拡大させ、リニアリティも向上させることができることから、音響特性等その性能を向上させることができる。
【0091】
また前記のように、柔軟性に富むエッジ部を設けないまでも、振動体27の外周部を、外周部以外の部位より柔らかく構成することでも、前記に近い効果を得ることも可能である。
【0092】
この構成とすることで、エッジ部を設けることなく、その外周部が柔軟性に富む振動体を構成することの効果で、振動体の振幅量を拡大させ、リニアリティも向上させることができることから、性能向上と低コスト化を両立させることができる。
【0093】
また前述の内容は、ボイスコイル28を1層巻に形成した例について説明したが、さらなる音圧レベル向上等の性能向上に対する対応として、ボイスコイル28を2層巻き以上に形成して使用することで、その駆動力が向上し、音圧レベル向上等の効率向上を実現することができる。
【0094】
また、図18に示すように、操作手段と信号入力手段と増幅手段の一部または全部を建築材料に埋設構成して音響再生装置または建築材料を構成することもできる。
【0095】
この構成とすることにより、スピーカ等の音響再生装置のみならず、システム全体までも建築材料に埋設構成することで、室内でのスペースファクターを向上できるとともに、室内レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0096】
さらに前述の振動体の色彩を、白系色として構成することで、壁面材等の建築材料を音響放射以外の機能として、液晶プロジェクタ等の映像表示用パネルや映像表示用スクリーンとして使用することもできる。
【0097】
この構成とすることにより、映像表示用パネルや映像表示用スクリーンを設置するスペースが不要であるため、室内でのスペースファクターを向上できるとともに、室内レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0098】
さらに、部品の共用化、省スペース化、低コスト化を実現することができ、加えて建築材料工場内部で音響および映像再生装置としての壁面モジュールとして完成させることができ、管理、運用面の容易性も図ることができ、その効果は絶大である。
【0099】
さらに、上述の音響および映像再生装置や建築材料を搭載して住宅やマンション、オフィスビル等の居住空間や建築構造物を構成することで、無駄な空間を廃し、室内のスペースファクターを向上できるとともに、室内レイアウトの自由度を向上できる居住空間や建築構造物を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明による音響再生装置は、建築材料の機能を併用した振動体により音響再生装置を構成することができ、装置の小型薄型化や部品点数削減によるスペースファクター向上やコスト低減化と生産性の向上を実現することができ、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間に使用される音響再生装置や器物への応用展開も期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態による居住空間と音響再生装置の構成を示した斜視図
【図2】本発明の実施の形態による建築材料の一部である振動体の外観図
【図3】本発明の実施の形態による音響再生装置の使用状態を示す断面図
【図4】本発明の実施の形態による音響再生装置の使用状態を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図6】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図7】本発明の実施の形態による振動体の外観図
【図8】本発明の実施の形態による振動体の外観図
【図9】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図10】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図11】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図12】本発明の実施の形態による音響再生装置の断面図
【図13】本発明の実施の形態による居住空間と音響再生装置の構成を示した斜視図
【図14】本発明の実施の形態による建築材料である音響再生装置の外観図
【図15】本発明の実施の形態による建築関連材料である音響再生装置の外観図
【図16】本発明の実施の形態による建築関連材料である音響再生装置の外観図
【図17】本発明の実施の形態による居住空間と音響再生装置の構成を示した斜視図
【図18】本発明の実施の形態による居住空間と音響再生装置の構成を示した斜視図
【図19】従来の居住空間と音響再生装置の構成を示した斜視図
【符号の説明】
【0102】
21 マグネット
23 ヨーク
24 磁気回路
25 磁気ギャップ
26 フレーム
27 振動体
28 ボイスコイル
28A コイル
28B ボイスコイル
28C ボイスコイル
28D ボイスコイル
100 居住空間
101 壁
102 天井
103 床
104 柱
105 扉
106 窓
200 オーディオシステム
201 本体部
202 右フロントスピーカ
203 左フロントスピーカ
204 右リアスピーカ
205 左リアスピーカ
206 センタースピーカ
207 サブウーファ
300 居住空間
301 正面壁
302 天井材
303 床材
304 柱材
305 扉材
306 窓材
320 衝立材
321 パーテーション
330 背面壁
331 スリット
400 オーディオシステム
401 本体部
402 右フロントスピーカ
403 左フロントスピーカ
404 右リアスピーカ
405 左リアスピーカ
406 センタースピーカ
407 サブウーファ
410 壁面心材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも磁束発生手段と、この磁束発生手段の磁束の作用する範囲に前記磁束発生手段と非接触状態で配置されるボイスコイルを結合した振動体とから構成されるとともに、前記振動体は建築材料の一部である音響再生装置。
【請求項2】
磁束発生手段と、振動体を被装着体に結合した請求項1記載の音響再生装置。
【請求項3】
ボイスコイルは磁束発生手段と交差しない状態で振動体の面上に設けられた請求項1または請求項2記載の音響再生装置。
【請求項4】
振動体は略平面状に形成された請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項5】
ボイスコイルは、少なくとも振動体の外周部近傍を含んで設けられた請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項6】
磁束発生手段は、マグネットを含む磁気回路である請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項7】
磁束発生手段は、電流による誘導磁界である請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項8】
磁束発生手段を、振動体を介して、少なくともその一部を対向配置した請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項9】
振動体の表裏面にボイスコイルを結合した請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項10】
振動体として、壁面材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項11】
振動体として、扉材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項12】
振動体として、柱材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項13】
振動体として、天井材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項14】
振動体として、床材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項15】
振動体として、窓材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項16】
振動体として、衝立材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項17】
振動体として、パーテーション材または屏風材を用いた請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項18】
振動体の外周部は、外周部以外の部位より柔らかく構成した請求項1から請求項17のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項19】
振動体は、その外周部に、柔軟性に富むエッジ部を含んで構成した請求項1から請求項17のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項20】
ボイスコイルは、2層巻き以上に構成した請求項1から請求項19のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項21】
1つの振動体に、2つ以上の独立したボイスコイルを結合し、各々のボイスコイルに異なった電気信号を入力した請求項1から請求項20のいずれか一つに記載の音響再生装置。
【請求項22】
周波数帯域の異なる信号を入力した請求項21に記載の音響再生装置。
【請求項23】
ステレオ信号を入力した請求項21に記載の音響再生装置。
【請求項24】
5.1チャンネル対応のサラウンド信号を入力した請求項21に記載の音響再生装置。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか一つに記載の音響再生装置を磁束発生手段側を内側にして、2体以上の音響再生装置を一体化結合した音響再生装置。
【請求項26】
磁束発生手段の一部を共用化した請求項25記載の音響再生装置。
【請求項27】
被装着体を共用化した請求項25または請求項26記載の音響再生装置。
【請求項28】
請求項1から請求項27のいずれか一つに記載の音響再生装置を搭載した建築材料。
【請求項29】
色彩を白系色とした請求項28記載の建築材料。
【請求項30】
操作手段と信号入力手段と増幅手段の一部または全部を建築材料に埋設構成した請求項1から請求項29のいずれか一つに記載の音響再生装置または建築材料。
【請求項31】
請求項28から請求項30のいずれか一つに記載の建築材料を搭載した建築構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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