説明

音響再生装置

【課題】本発明は、住宅設備機器としての平板状の音響再生装置に関するものであり、施工作業のバラつきを吸収して再生音のバラつきを抑えた高品質の音響再生装置を提供するものである。
【解決手段】音響振動板205面に設けられた中空構造の桟201内部に、振動吸収材204を収納し、音響再生装置200と住宅設備機器壁面104とをネジ102で前記振動吸収材204を介して、前記ネジ102にて装着する構成とすることで、施工作業のバラつきを吸収して再生音のバラつきを抑制するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間に使用される音響装置の一種である平板状の音響再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の音響再生装置を住宅設備機器に装着した状態を示す図5の側断面図により、その構成を動作と共に説明する。
【0003】
同図によると、104は住宅設備機器を構成している壁面部の一部である。105は電気入力信号に応じた振動を発生する振動発生器であり、音響振動板101に接合され、これを前記振動発生器105にて振動させることで音を発生する。前記住宅設備機器壁面104と、前記音響再生装置100とはネジ102とナット106にて完全に締結されている。103は防振材であり、前記音響振動板101の振動を前記住宅設備機器壁面104に伝達防止する目的で用いられている。
【0004】
このように、住宅設備機器を構成する面部に、平板状の音響再生装置を取り付けることで、これまで箱型の音響再生装置で占められていた住空間の有効活用が可能となると共に、配線等も設備の裏側で完結できるため、音響再生装置の存在を意識することなく音楽を楽しむことが可能となる。
【0005】
以上のような先行例として特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006−101961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の音響再生装置では、ネジ102とナット106とを用いて音響再生装置100と、住宅設備機器壁面104とを完全に固定していたため、施工時における前記ネジ102の状態や、施工作業の締め付けトルク等のバラつきがあった場合に、音響振動板101の分布振動モードに変化が生じ、結果として再生音自体にもバラつきが発生するという課題があった。
【0007】
また、前記ネジ102頭部が、前記音響振動板101面外側へ突出する形となるため、前記住宅設備機器の外観を損ねるという課題も有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、施工作業による再生音のバラつきを無くすと共に、住宅設備機器の外観を損なうことなく、取り付け可能とした音響再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の音響再生装置は、音響振動板面に接合された中空構造を有する桟内部に振動吸収材を収納し、前記音響再生装置を前記住宅設備機器壁面に取り付ける際に、前記振動吸収材を介して、前記音響再生装置をネジにて締結する構成として、前記住宅設備機器壁面に取り付けるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の音響再生装置によれば、前記構成によって、音響再生装置と住宅設備機器壁面とを完全に締結することなく、前記振動吸収材を介して前記音響再生装置を前記住宅設備機器壁面に設置することで、前記音響再生装置の施工作業による前記音響再生装置の音響振動板の分布振動モードのバラつきを抑制し、再生音を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
なお、説明にあたって、従来技術と同一部分は同一番号を付与し、説明を省略して説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の一実施の形態の音響再生装置を居住空間内の住宅設備機器壁面に取り付けた際の正面図、図1(b)は、同図1(a)のA−A’を基準とした構造断面図である。
【0014】
同図によると、205は音響振動板であり、硬質なパネル状のもので、特に木や樹脂といったものを材料に用いている。105は振動発生器であり、磁束発生手段である磁気回路(図示せず)と、磁気ギャップ内に収められた駆動用のボイスコイル(図示せず)から構成された動電型の振動発生器であり、前記ボイスコイルが前記音響振動板205に接合されている。201は前記音響振動板205の、前記振動発生器105とは異なる場所に接合されている桟であり、前記音響振動板205を住宅設備機器壁面104に取り付けるのに必要なネジ102を挿通する円筒状にくり抜いた中空構造となっている。
【0015】
204は前記桟201の中空に嵌めこまれる中空円筒状のゴム材料からなる振動吸収材であり、ネジ102を中空部分に挿通してナット106とで音響振動板205と住宅設備機器壁面104を締結した時、前記振動発生器105による振動を遮断するものである。
【0016】
前記振動吸収材204の材料としては、内部損失の大きいSBR(スチレン・ブタジエンゴム)やIIR(ブチルゴム)などが用いられる。202は前記住宅設備機器壁面104に設けられ、前記桟201の中空部と前記振動吸収材204の中空部とを貫く同軸の貫通孔である。
【0017】
203は前記音響振動板205に設けられ、前記貫通孔202と同軸の貫通孔である。また、この貫通孔203の面積は前記貫通孔202、前記ネジ102の頭部断面積のそれぞれより大きい。
【0018】
前記ネジ102は前記貫通孔203から前記貫通孔202に向かって挿入され、前記ナット106を用いることで、前記音響再生装置200を前記住宅設備機器壁面104へ取り付けている。その際、前記音響再生装置200は、前記振動吸収材204を介して、前記ネジ102にて重量を支持する形で前記住宅設備機器壁面104と装着されている。
【0019】
以上の構成によれば、従来、音響再生装置200を、住宅設備機器壁面104に取り付ける際、ネジ102とナット106とを用いて、前記音響再生装置200と、前記住宅設備機器壁面104とを完全に締結し、音響再生装置200の重量を支持していたものを、桟201内部に装着されたゴム材料からなる振動吸収材204をネジ102とナット106により締め付けて径方向に膨れ、前記桟201の中空内壁と強固に圧接することで、前記音響再生装置200の住宅設備機器壁面104への装着を行なうことで、音響再生装置200の取り付け施工作業のバラつきを前記振動吸収材204による弾性材料による圧接による装着・支持により吸収して、前記音響振動板205の分布振動モードのバラつきを抑制し、前記音響再生装置200による再生音も一定に保つことができる。
【0020】
また、更に、前記ネジ102頭部よりも貫通孔203の径を大きくしたことで前記音響振動板205の内側に埋設することができ、前記住宅設備機器壁面104の外側から前記ネジ102を目立たなくさせることができる。
【0021】
なお、本実施の形態において、前記音響振動板205の材料として木、樹脂としているが、金属、紙、ガラス、石膏、発泡体などの材料を用いてもよい。その場合は、材料毎に違った音質を楽しめるという別の効果も得られる。
【0022】
また、前記ナット106は必ずしも必要では無く、無い場合でも前記住宅設備機器壁面104にタップ加工を施すことで本発明の効果が得られる。
【0023】
また、前記ネジ102を締めた後で、キャップやパテ等の手段を用い、前記貫通孔203を埋めることで、更に前記ネジ102の存在を目立たなくすることができる。
【0024】
更に、本実施の形態において、前記振動発生器105としては動電型の他に、磁界中で伸縮する超磁歪材料を用いた超磁歪アクチュエータや、電圧を加えると伸縮する圧電素子を用いた電歪アクチュエータなどでも応用が可能である。
【0025】
なお、前記超磁歪アクチュエータを前記振動発生器105として用いた場合には、動電型振動発生器よりも発生応力が高いというメリットを活かして、より重畳のある物体を前記音響振動板205に用いることができるという別の効果も発揮できる。
【0026】
以上の実施の形態においては、前記音響再生装置200が装着される住宅用建材を住宅設備機器壁面104として説明してきたが、壁面材のみに限定されるものでなく、天井材でも床材でも柱材でも窓材でも衝立材でも扉材でもパーテーション材でも屏風材でもよく、その他住宅用建材として、前記音響再生装置200が装着されるものであれば用途に合わせて適宜選択可能であると共に、これらの選択された住宅用建材が前記音響振動板205として選択可能な場合は、音響再生装置200を外観上住宅用建材と同じとして、聴取者に対して、音響再生装置の存在を意識させない音響空間の提供を可能とするものである。
【0027】
なお、これは以下の各実施の形態においても同様である。
【0028】
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態を図2の音響再生装置の構造断面図により説明する。
【0029】
なお、説明にあたっては主として実施の形態1との相違点のみ説明する。
【0030】
同図によると、301は桟201の中空内部に設けられた段差であり、前記振動吸収材204を前記段差で抜けないように当接支持している。
【0031】
この構成によれば、前記ネジ102を締めたときに、前記振動吸収材204が前記桟201から抜け落ちる現象を防止することができる。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態2とは異なる本発明の他の実施の形態を図3の音響再生装置の構造断面図により説明する。
【0033】
同図により、実施の形態1との相違点について説明すると、401は桟201の上面に装着された伸縮性を有するクッション材であり、このクッション材401が住宅設備機器壁面104に当接・圧縮された状態で、音響再生装置200を前記住宅設備機器壁面104に取り付ける構成としたものである。
【0034】
以上の構成によれば、前記音響再生装置200と前記住宅設備機器壁面104との間の空間を前記クッション材401で塞ぐことで、前記音響振動板205背面からの音漏れを防止することができるものである。なお、前記クッション材401を圧縮した状態で前記音響再生装置200を前記住宅設備機器壁面104に取り付けることで、使用状態における安定度が増す効果も得られるものである。
【0035】
なお、前記クッション材401の材料としては発泡体などが用いられるが、前記振動吸収材204と同じゴム材料を用いても同様の効果を示す。
【0036】
(実施の形態4)
前述の各実施の形態とは異なる本発明の他の実施の形態を図4の天井に本発明の音響再生装置を取り付けたときの構造断面図により説明する。
【0037】
同図により主として実施の形態1との相違点について説明すると、相違点は天井材にあり、天井材501は前記音響再生装置200の外形と略同等以上の貫通孔505を有する点である。
【0038】
503はL字型のブラケットであり、一端側をネジ502によって天井材501に固定すると共に、他端側に設けた貫通孔504により、ネジ102と、ナット106で音響再生装置200(桟201)に固定されている。
【0039】
なお、前記貫通孔504にタップ加工を施すことによって、前記音響再生装置200を前記天井材501に取り付け可能としている。この時、前記音響再生装置200と前記ブラケット503とは、実施の形態1と同様に振動吸収材204を介して、前記ネジ102にて固定されている。
【0040】
以上の構成によれば、前記天井材501の厚みと、前記桟201との高さを補正する前記ブラケット503を介して、前記音響再生装置200を前記天井材501に取り付けることで、前記音響振動板205の下面を、前記天井材501の下面と同一の高さに合わせることが可能となり、天井の外観を損なわずに前記音響再生装置200を配することができるものである。
【0041】
なお、前記ブラケット503の形状は図4にあるような断面がL字のものである必要はなく、十分な強度が保証でき、かつ前記音響再生装置200と前記天井材501の高さを調節できれば、他の形状でも可能である。また、前記ブラケット503の材料としては金属が適している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる音響再生装置は、施工時における再生音のバラつきを抑制することができ、取り付け用のネジ頭部が音響振動板面の外側へ突出することなく、住宅設備機器への取り付けが可能となるので、住宅やマンション、オフィスビル等の建築材料で構成された居住空間内の音響空間の演出や警報装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における音響再生装置の、壁面に取り付けた時の使用状態を示した正面図、(b)同断面図
【図2】本発明の他の実施の形態の音響再生装置の断面図
【図3】同異なる他の実施の形態の音響再生装置の断面図
【図4】同異なる他の実施の形態の音響再生装置の断面図
【図5】従来の音響再生装置の断面図
【符号の説明】
【0044】
102 ネジ
104 住宅設備機器壁面
105 振動発生器
106 ナット
200 音響再生装置
201 桟
202 貫通孔
203 貫通孔
204 振動吸収材
205 音響振動板
301 段差部
401 クッション材
501 天井材
502 ネジ
503 ブラケット
504 貫通孔
505 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅用建材に装着される音響振動板と、この音響振動板面に接合された音発生用の振動発生器からなる音響再生装置であって、前記音響振動板に接合された中空の桟と、この桟の前記中空部分に装着された中空の弾性材料からなる振動吸収材と、前記中空の弾性材料からなる振動吸収材に挿通し、締結によって振動吸収材を径方向に膨れさせて前記中空の桟内壁と圧接させて前記住宅用建材に前記音響再生装置を装着するネジとで構成された音響再生装置。
【請求項2】
前記中空の桟に段差部を設け、振動吸収材をこの振動吸収材の挿入方向でこの段差部に当接させた請求項1に記載の音響再生装置。
【請求項3】
桟とこの桟と当接する住宅用建材間に伸縮性を有するクッション材を配置した請求項1または請求項2に記載の音響再生装置。
【請求項4】
音響振動板として、音響再生装置が装着される住宅建材と同一材料を用いた請求項1または請求項2または請求項3に記載の音響再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147776(P2009−147776A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324344(P2007−324344)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】