説明

音響性瞳孔反応検査システム

【課題】被験者に過度なストレスを与えずに音響性瞳孔反応検査を効率的に行うことが可能な音響性瞳孔反応検査システムを提供する。
【解決手段】所定の音響刺激に伴う瞳孔反応を検査する音響性瞳孔反応検査システムであって、所定の音響刺激を生成する音響刺激生成手段1と、この音響刺激を被験者Mの耳に伝達する音響刺激伝達手段2と、被験者Mの眼球の動きを撮像する眼球撮像手段3と、この眼球撮像手段3からの眼球画像に基づいて眼球の瞳孔変化を解析する瞳孔変化解析手段4と、この瞳孔変化解析手段4にて解析される瞳孔変化情報及び前記音響刺激生成手段1にて生成される音響刺激情報を関連付けて記録する記録手段5と、この記録手段5にて記録された音響刺激情報に関連付けられた瞳孔変化情報に基づいて音響性瞳孔反応の検査結果を表示する表示手段6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響刺激を伴う瞳孔反応を検査する音響性瞳孔反応検査システムに係り、特に、基礎医学や臨床医学において適用可能な自立神経機能検査に際して有効な音響性瞳孔反応検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、臨床医学において、めまい検査なかでも自律神経機能検査は起立動作時の血圧検査や心電図変化など循環器系検査が主体であり、この種の自立神経機能検査には音響刺激に伴う瞳孔反応(音響性瞳孔反応)はほとんど臨床応用されていない。
この種の音響性瞳孔反応については、眼科用の赤外線電子瞳孔計(イリスコーダー:Iriscorder)を利用して音響刺激に伴う瞳孔反応が存在することは既に確認されている(例えば非特許文献1参照)。
また、被験者の頭部に装着可能なゴーグル内に撮像カメラを設け、この撮像カメラにて被験者の眼球の動きを撮像すると共に、撮像された眼球画像に基づいて眼球運動データを表示可能とした技術も既に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】耳鼻と臨床24巻2号1978年3月「他覚的聴力検査としての音響性瞳孔反応の基礎的問題について」171頁〜181頁
【特許文献1】特開2003−319907号公報(発明の実施の形態,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した起立負荷による自律神経機能検査は症状の強い被験者に対し施行すると意識消失やそれに伴う転倒事故を時に生じる虞れがあり、全ての被験者に対して施行することは難しかった。また、検査時間も一人20分から30分程度を必要とし、多くの被験者への対応が適わなかった。
更に、この種の自立神経機能検査に前述した音響性瞳孔反応を利用する場合、非特許文献1のイリスコーダーや特許文献1の撮像カメラ付きゴーグルを使用するようにすれば、音響性瞳孔反応がどのように生じているかをリアルタイムで測定することは可能かも知れない。
しかしながら、音響刺激と関連付けて音響性瞳孔反応変化を測定・解析することはできず、自立神経機能検査としての検査結果として十分な情報を収集することができない。
【0005】
本発明の技術的課題は、被験者に過度なストレスを与えずに音響性瞳孔反応検査を効率的に行うことが可能な音響性瞳孔反応検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、図1に示すように、所定の音響刺激に伴う瞳孔反応を検査する音響性瞳孔反応検査システムであって、所定の音響刺激を生成する音響刺激生成手段1と、この音響刺激を被験者Mの耳に伝達する音響刺激伝達手段2と、被験者Mの眼球の動きを撮像する眼球撮像手段3と、この眼球撮像手段3からの眼球画像に基づいて眼球の瞳孔変化を解析する瞳孔変化解析手段4と、この瞳孔変化解析手段4にて解析される瞳孔変化情報及び前記音響刺激生成手段1にて生成される音響刺激情報を関連付けて記録する記録手段5と、この記録手段5にて記録された音響刺激情報に関連付けられた瞳孔変化情報に基づいて音響性瞳孔反応の検査結果を表示する表示手段6と、を備えた音響性瞳孔反応検査システムである。
【0007】
このような技術的手段において、音響性瞳孔反応検査は、音響刺激に伴う瞳孔反応を検査するものを広く含み、代表的には自律神経機能検査(めまい検査)を始めとして、他覚的聴力検査、脳幹機能の評価検査などが挙げられる。
また、音響刺激生成手段1としては所定の音響刺激を生成するものであれば適宜選定してもよく、予め固定設定しておいてもよいし、あるいは、刺激強度や、回数などを可変設定するようにしてもよい。
更に、音響刺激伝達手段2はヘッドホンやイヤーホンなどが挙げられる。
更にまた、眼球撮像手段3としてはCCDなどの撮像素子が使用される。また、眼球撮像手段3の設置場所としては被験者Mの眼球前の位置調整可能な可動台に設置してもよいし、被験者Mに装着可能なゴーグル8内に設置してもよい。
【0008】
また、瞳孔変化解析手段4は、瞳孔変化(瞳孔径変化や瞳孔面積など)を所定のアルゴリズムにて解析するものであればよい。
更に、記録手段5しては、所定の音響刺激情報に対する瞳孔変化情報が何であるかが関連付けられていればよく、両者をまとめて格納するようにしてもよいし、あるいは、夫々の情報を別々に格納しておき、両者の格納場所を相互に関連付けるようにしてもよい。
更にまた、表示手段6としては、音響刺激情報に関連付けられた瞳孔変化情報を連続的にグラフ表示したり、間欠的にグラフ表示するなど適宜選定して差し支えない。この場合、検査結果についての評価自体は、表示手段6の表示結果を見て医師が行うようにすればよい。
【0009】
また、眼球撮像手段3の好ましい態様としては、少なくとも被験者Mの眼球に対して非対向配置されると共にハーフミラーを介して被験者Mの眼球を撮像可能である態様が挙げられる。本態様によれば、眼球撮像手段3が被験者Mの眼球と非対向配置されているため、眼球撮像手段3が被験者Mの視界を遮り、被験者Mに検査期間中に過剰なストレスを与えない。
更に、本システムにおいては、被験者Mの頭部が定位置に位置決め保持される位置決めホルダ7を備えている態様が好ましい。本態様によれば、被験者Mの頭部が不必要に動く事態を回避することができ、頭部の不必要な振れに起因する音響性瞳孔反応への悪影響を低減することができる。
更にまた、被験者Mの眼球前に装着可能なゴーグル8に眼球撮像手段3を設けた態様にあっては、被験者Mの眼球と眼球撮像手段3との位置合わせを容易に行うことができる点で好ましい。
【0010】
また、本システムにおいては、被験者Mの眼球位置の照度が調整可能な照度調整手段9を備える態様が好ましい。本態様によれば、検査環境照度を所定の照度(例えば100〜1000lux)に調整し、瞳孔反応を安定させることができる。
更に、本システムにおいては、眼球撮像手段3で撮像した眼球画像が表示可能な眼球画像表示手段10を備える態様が好ましい。本態様によれば、眼球画像を表示可能とすることで、眼球の瞳孔変化を医師が目視して直接確認することができ、音響性瞳孔反応検査をより正確に評価することができる。
更にまた、本システムにおいては、表示手段6に表示される音響性瞳孔反応の検査結果が評価可能な評価手段11を備える態様が好ましい。ここで、評価手段11としては、音響性瞳孔反応検査に対する評価判断アルゴリズムを有し、この評価判断アルゴリズムに基づいて表示手段6の表示結果を評価するものであればよい。本態様によれば、評価手段11による評価を参照することができるため、医師による評価作業をより簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定の音響刺激を与えながら被験者の眼球の動きを撮像し、この撮像画像に基づいて眼球の瞳孔変化を解析し、音響刺激情報に関連付けて瞳孔変化情報を記録すると共に、音響刺激情報に関連付けられた瞳孔変化情報を表示するようにしたので、被験者に過度なストレスを与えずに、音響性瞳孔反応検査を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は本発明が適用された音響性瞳孔反応検査システムの実施の形態1の全体構成を示す。
本実施の形態において、音響刺激による瞳孔変化は音響性瞳孔反応という自律神経反応であり、本システムは例えばメニエル病などめまい患者の自律神経機能検査として有用とされる。
−本システムの全体構成−
同図において、本システムは、音響刺激発生装置20からの音響刺激をヘッドホーン21にて被験者Mに伝達する一方、被験者Mの眼球前にはゴーグル30を装着すると共に、このゴーグル30内にはCCDなどの撮像素子40(本例では40a,40b)を配置し、この撮像素子40にて被験者Mの眼球の動きを撮像するものである。
そして、撮像素子40(40a,40b)からの眼球画像信号は画像変換器50を介してデジタル信号に変換された後に液晶表示装置などのモニタ装置51に送信され、一方、中継制御装置52を介してパーソナルコンピュータ等のコンピュータ100に送信される。
ここで、音響刺激発生装置20は中継制御装置52を介してコンピュータ100に接続されており、コンピュータ100からの音響刺激制御信号に基づいて所定の音響刺激を発生させるものである。
また、画像変換器50は撮像素子40(40a,40b)からの二つの眼球画像信号は合成されて一画面となり、モニタ装置51及び中継制御装置52へと送信される。
【0013】
−検査環境設備−
図3は本実施の形態で用いられる被験者Mの検査環境設備の一例を示す。
同図において、検査環境設備は、被験者Mの頭部を位置決め保持するための保持テーブル70と、この保持テーブル70の前に置かれて被験者Mを着座させる椅子80とを備えている。
ここで、保持テーブル70は、4本の脚にて支えられる固定台71を有し、この固定台71の椅子80側に位置する両側に一対の支柱72,73を設けると共に、この支柱72,73間には被験者Mの頭部が位置決め保持可能な位置決めホルダを設けたものである。
本例では、位置決めホルダは、支柱72,73間にて上下方向に移動可能なガイドバー74,76を所定位置にて位置決め自在に設け、下側ガイドバー74の略中央には被験者Mの顎が載置可能な顎パッド75を配置すると共に、上側ガイドバー76の略中央には被験者Mの前頭部が押し付け可能な前頭部パッド77を配置するようにしたものである。
尚、符号78は両支柱72,73間にて顎パッド75、前頭部パッド77の前方側を湾曲状に覆う白色板であり、被験者Mが非注視状態を得るように配慮されている。
更に、本実施の形態では、保持テーブル70は、被験者Mの眼球位置の照度が調整可能な照度調整機構90が設けられている。この照度調整機構90は、一方の支柱72に設けられて被験者Mの眼球位置付近を照明する光源91と、この光源91の照度を調整する調整器92とを備えている。尚、保持テーブル70の固定台71には照度計95が置かれており、この照度計95を使いながら、例えば被験者Mの眼球位置付近の照度を適正照度(例えば400lux)に予め調整するようにすればよい。
【0014】
−被験者の検査時の状態−
図4(a)は被験者Mの検査時の状態を模式的に示す。
同図において、被験者Mは、位置決めホルダの顎パッド75に顎を載せ、前頭部パッド77に前頭部を押し付けることにより、所定の姿勢に位置決め保持される。
更に、被験者Mは、音響刺激伝達用のヘッドホーン21を装着すると共に、撮像素子40が組み込まれたゴーグル30をヘッドバンド31にて眼球前に装着する。
特に、本実施の形態では、ゴーグル30は、図4(a)(b)に示すように、ゴーグル本体32の前方に開口33を形成したものであり、このゴーグル本体32の内壁のうち被験者Mの眼球に対して非対向の位置、例えばゴーグル本体32の上内壁にCCDなどの撮像素子40(40a,40b)を固定すると共に、眼球の前方への視線位置にはハーフミラー41を配設し、このハーフミラー41を介して両眼球の画像を夫々の撮像素子40(40a,40b)に導くようにしたものである。
よって、本実施の形態では、位置決めホルダにて位置決め保持される被験者Mは、ハーフミラー41、ゴーグル本体32の開口33を通じて前方の白色板78を常時見ることになり、撮像素子40などの障害物により目の前の視界が遮られる事態は有効に回避される。
【0015】
−コンピュータ構成−
図5は本実施の形態で用いられるコンピュータ100の構成例を示す。
同図において、コンピュータ100は、演算処理実行用のCPU101、被験者Mの眼球画像から瞳孔径変化を解析し且つ表示するための画像解析プログラムや各種の音響刺激を設定するための音響刺激設定プログラムなどが予め格納されるROM102、被験者Mの眼球画像データや瞳孔径変化データ、音響刺激データなどがその都度格納されるRAM103、及び、CPU101へ入力信号が入力されると共にCPU101からの出力信号が出力されるI/Oポート104を備えている。
そして、コンピュータ100は、中継制御装置52からの眼球画像信号や操作部106からの入力情報をI/Oポート104を通じてCPU101に取り込み、CPU101にてROM102に格納されている画像解析プログラムや音響刺激設定プログラムを実行し、RAM103に眼球画像データや瞳孔径変化データを格納すると共に、I/Oポート104を介して表示画面105に必要情報を表示し、更に、中継制御装置52を介して音響刺激発生装置20に設定された音響刺激制御信号を送出するものである。
【0016】
−自律神経機能検査−
次に、本システムを用いた自律神経機能検査について説明する。
図6は自律神経機能検査の処理過程を示すフローチャートである。
<被験者特定>
先ず、被験者Mを特定するために、検査者(医師)は、コンピュータ100の操作部106にて被験者MのID番号、及び、氏名その他必要な情報を入力する。
<音響刺激設定>
次いで、検査者は、コンピュータ100の表示画面105に音響刺激設定画面(例えば図8参照)を表示し、音響刺激発生装置20から出したい音の周波数を設定し、その周波数での刺激時間(a)、全体の測定時間(b)及び休息時間(c)を決定する。
図8では、音の周波数が10Hz、(a)音を出す時間が1.0秒、(b)測定時間が5.0秒、(c)休息時間が5.0秒になっている。
ここで、音響刺激のための音は、自律神経機能検査を行う上で瞳孔変化に顕著に影響するものが選定される。
更に、検査者は、音響刺激のために設定した音の繰り返し回数を適宜選択すると共に、設定したデータについては番号を指定して保存する。尚、保存したデータについては番号を指定して呼び出すことが可能である。
【0017】
<キャリブレーション(calibration)>
次いで、図4(a)に示すように、被験者Mにヘッドホーン21及びゴーグル30を装着した後、保持テーブル70の位置決めホルダ(顎パッド75,前頭部パッド77)にて被験者Mの胴部を位置決めする。
この状態において、モニタ装置51のモニタ画面の中央に眼球の瞳孔がくるように位置調整する。
尚、本実施の形態では、モニタ装置51のモニタ画面はコンピュータ100の表示画面105の一部にも表示される。
<位置合わせ>
この後、図示外の「位置合わせ」ボタンを押すと、音響刺激のない条件下で被験者Mの眼球画像に基づく瞳孔径変化を解析し、表示画面105に瞳孔径変化のグラフを表示する。
このような位置合わせにおいては、音響刺激のない無刺激化の状態にある瞳孔の基本径を把握することが可能である。
【0018】
<測定>
この測定は例えば図7に示すステップに沿って処理される。
つまり、検査者は、図示外の「測定開始」ボタンを押すと、コンピュータ100は、設定された音響刺激No.(保存番号)を選択し、これに基づいて音響刺激発生装置20から設定通りに音響刺激のための音を発生させる。
すると、音響刺激発生装置20からの音響刺激はヘッドホーン21を介して被験者Mに伝達される。
このときの被験者Mの眼球の動きは撮像素子40(40a,40b)にて撮像され、眼球画像として画像変換器50、中継制御装置52を介してコンピュータ100のCPU101に入力される。
この状態において、CPU101は眼球画像に基づいて眼球の瞳孔径解析を行い、RAM103に瞳孔径変化を音響刺激No.と関連付けて記録する。つまり、音響刺激情報と瞳孔径変化情報とを同期させて記録する。
【0019】
ここで、瞳孔径解析は、例えば瞳孔径の最長径を複数回計測し、その平均瞳孔径を瞳孔径として決定する。尚、瞳孔径解析としては、これに限られるものではなく、瞳孔径を特定する解析法であれば適宜選定して差し支えない。
この瞳孔径解析がなされている間、これと並行して、表示画面105には音響刺激及び瞳孔径変化がリアルタイムにて表示される。
このときの表示画面105は、例えば図9に示すように、下側にグラフ表示欄、上側左欄にモニタ装置51に対応するモニタ小画面、その上側右欄に、検査日、被験者MのID番号、氏名、左目、右目の瞳孔径変化の特性数値になっている。
ここで、左目、右目の瞳孔径変化の特性数値について簡単に説明すると以下の通りである。
・立ち上がりI:2相性の波形のうち1つ目の起始点の時間
・立ち上がりII:2相性の波形のうち2つ目の起始点の時間
・ピークI :2相性の波形のうち1つ目のピーク点の時間
・ピークII :2相性の波形のうち2つ目のピーク点の時間
・立ち上がり速度I:2相性の波形のうち1つ目の起始点における変化速度
・立ち上がり速度II:2相性の波形のうち2つ目の起始点における変化速度
尚、上記6項目を決定するのに操作部106の一つである位置指定器(所謂マウス)を操作し、任意の点に合わせる測定バーKがグラフ表示欄に設けられている。
また、図9において、表示画面105のグラフ表示欄には、単数回の音響刺激S(図中一点鎖線で示す)が与えられた際の左目、右目の瞳孔径変化がグラフ表示されているが、これに限られるものではなく、複数回の音響刺激に対するデータを全てグラフ表示したり、あるいは、複数回の音響刺激に対するデータを平均化して表示したり、あるいは、音響刺激の時間変化も合わせて表示するなど、各種表示モードに応じてグラフ表示可能である。
尚、表示画面105のグラフ表示欄の縦軸は瞳孔径寸法(単位:mm)を示すものであるが、例えば前述した位置合わせにて瞳孔の基本径がグラフ表示欄の表示領域に収まるように表示領域の縦軸表示範囲を変更することは可能である。
【0020】
この後、最終の音響刺激No.か否かをチェックした後、最終でない場合には、次の音響刺激No.を選択して同様な測定処理を行い、最終の音響刺激No.についての測定処理が終了するまで継続する。
<グラフ表示>
測定処理が終了すると、被験者Mの眼球画像、瞳孔径変化情報が音響刺激No.と関連付けた形でRAM103内に記録されているため、コンピュータ100において図示外の「グラフ表示」ボタンを押すと、所定の被験者Mについての各種の音響刺激に伴う瞳孔径変化パターンがグラフ表示される。
【0021】
<検査評価>
検査者は、このグラフ表示を見て、音響刺激と瞳孔径変化との関連性を見極め、自律神経機能検査の結果について評価する。
ここで、被験者Mの瞳孔径変化についての測定データは既定のRAM103内に記録されているが、例えば既存の表計算ソフトウエア(例えばMicrosoft Excel(マイクロソフト株式会社の商標)等)のファイル形式に変換してデータ保存するようにしてもよい。このようにすれば、既存の表計算ソフトウエア等を利用して被験者Mの自律神経機能検査の結果をより簡単に解析することが可能である。
また、本実施の形態では、検査者は、図6に示すグラフ表示を見て自律神経機能検査の結果を評価しているが、これに限られるものではなく、例えば音響刺激と瞳孔径変化との関連性につき多数の臨床例が得られた場合にあっては、これらの臨床例の結果に基づいて、自律神経機能検査に対する評価判断アルゴリズムが含まれる評価プログラムを作成し、この評価プログラムをROM102内に予め格納しておき、CPU101にて評価プログラムを実行することにより、評価判断アルゴリズムに基づいて音響刺激に伴う瞳孔径変化パターンの表示結果を評価するようにすることが好ましい。
この場合、検査者は、評価判断アルゴリズムによる評価を参照しながら、音響刺激に伴う瞳孔径変化パターンを評価することができる。
【0022】
<変形形態>
また、本実施の形態では、測定処理の中で瞳孔径解析を行っているが、これに限られるものではなく、例えば瞳孔面積解析に置換し、これに基づいて音響性瞳孔反応検査を実現するようにしてもよい。
更に、本実施の形態では、検査者がコンピュータ100を操作しながら、音響性瞳孔反応検査を行うようにしているが、これに限られるものではなく、例えば図10に示すように、ネットワーク150経由で検査管理センタに集中管理用コンピュータ200を設置しておき、各医院のコンピュータ100(具体的には100(1),100(2),100(3)…100(n))にて集中管理用コンピュータ200からダウンロードした検査プログラムを実行するようにし、そこで得られた音響刺激を伴う瞳孔変化(瞳孔径変化、瞳孔面積変化)の結果データを集中管理用コンピュータ200にネットワーク150経由にてアップロードするようにしてもよい。尚、図10中、210は集中管理用コンピュータ200に付設される記憶装置で、被験者Mの各種データが格納されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る音響性瞳孔反応検査システムの概要を示す説明図である。
【図2】本発明が適用された音響性瞳孔反応検査システムの実施の形態1を示す説明図である。
【図3】本実施の形態で用いられる被験者の検査環境設備の一例を示す説明図である。
【図4】(a)は本実施の形態における被験者の検査時の状態を示す説明図、(b)はゴーグル内の構造例を示す説明図である。
【図5】図2のコンピュータの構成例を示す説明図である。
【図6】本実施の形態で行われる自立神経機能検査の処理過程を示すフローチャートである。
【図7】図6の測定過程の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図6の「音響刺激設定」を行うための操作画面例を示す説明図である。
【図9】図6の「測定」時の表示画面例を示す説明図である。
【図10】実施の形態1に係る音響性瞳孔反応検査システムをネットワーク経由で実現する変形形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1…音響刺激生成手段,2…音響刺激伝達手段,3…眼球撮像手段,4…瞳孔変化解析手段,5…記録手段,6…表示手段,7…位置決めホルダ,8…ゴーグル,9…照度調整手段,10…眼球画像表示手段,11…評価手段,M…被験者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の音響刺激に伴う瞳孔反応を検査する音響性瞳孔反応検査システムであって、
所定の音響刺激を生成する音響刺激生成手段と、
この音響刺激を被験者の耳に伝達する音響刺激伝達手段と、
被験者の眼球の動きを撮像する眼球撮像手段と、
この眼球撮像手段からの眼球画像に基づいて眼球の瞳孔変化を解析する瞳孔変化解析手段と、
この瞳孔変化解析手段にて解析される瞳孔変化情報及び前記音響刺激生成手段にて生成される音響刺激情報を関連付けて記録する記録手段と、
この記録手段にて記録された音響刺激情報に関連付けられた瞳孔変化情報に基づいて音響性瞳孔反応の検査結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項2】
請求項1記載の音響性瞳孔変化検査システムにおいて、
眼球撮像手段は少なくとも被験者の眼球に対して非対向配置されると共にハーフミラーを介して被験者の眼球を撮像可能であることを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項3】
請求項1記載の音響性瞳孔反応検査システムにおいて、
被験者の頭部が定位置に位置決め保持される位置決めホルダを備えていることを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項4】
請求項1記載の音響性瞳孔反応検査システムにおいて、
眼球撮像手段は被験者の眼球前に装着可能なゴーグルに設けられていることを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項5】
請求項1記載の音響性瞳孔反応検査システムにおいて、
被験者の眼球位置の照度が調整可能な照度調整手段を備えていることを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項6】
請求項1記載の音響性瞳孔反応検査システムにおいて、
眼球撮像手段で撮像した眼球画像が表示可能な眼球画像表示手段を備えていることを特徴とする音響性瞳孔反応検査システム。
【請求項7】
請求項1記載の音響性瞳孔反応検査システムにおいて、
表示手段に表示される音響性瞳孔反応の検査結果が評価可能な評価手段を備えていることを特徴とする音響性瞳孔反応システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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