説明

音響機器周辺部品

【課題】高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性、寸法安定性、S/N比を有する音響機器周辺部品、およびそれを用いたスピーカーを提供すること。
【解決手段】 本発明の音響機器周辺部品は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と;ポリスチレン系樹脂(B)と;ポリオレフィン系樹脂(C)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器周辺部品およびそれを用いたスピーカーに関する。より詳細には、本発明は、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有する音響機器周辺部品、およびそれを用いたスピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にスピーカー部分がそれぞれ独立してスピーカーボックスに収容されているオーディオシステムにおいて、ツィーター部をスピーカーボックスに取り付ける際、ホーン形状した周辺部品を介してユニットをボックスに取り付けるタイプがある。その周辺部品の材質として、パーティクルボード、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂などの合成樹脂が用いられている。パーティクルボードの場合、吸湿による変形や強度不足を防止するためエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の比較的硬度の高い熱硬化性樹脂を含有しているので、内部損失が低下してしまいツィーターからの振動がそのまま伝達され、不要な音として放射されることが多い。また、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂の合成樹脂の場合、内部損失が適度に備わり制振性は優れているが、耐熱性や強度が充分でない場合が多い。これを改善するためにガラス繊維、酸化チタン、タルク、マイカ等の無機系フィラーを添加しているが、重量増加となると共に内部損失が低下して、不要な音が放射されてしまうことが多い。
【0003】
上記問題を解決するために、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリアミド樹脂をアロイ化したものにマイカを添加したスピーカー用フレーム(特許文献1参照)が提案されている。ポリフェニレンエーテル樹脂とポリアミド樹脂は相溶性が悪いので、相溶化剤の併用が必要となる。しかし、相溶化剤の使用量が増えると共に、耐熱安定性の低下や分解などによる著しい強度低下が引き起こされてしまうことが多い。また、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリアミド樹脂をアロイ化したものは、流動性が悪く、成形性が不十分である場合が多い。
【0004】
また、非晶質のポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン樹脂の混合物や、ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン樹脂のグラフト重合体とポリアミド樹脂をアロイ化したものに、ゴム状物質や無機充填材を添加すること(特許文献2参照)が提案されている。ゴム状物質を添加すると内部損失は向上するが強度低下を伴い、無機充填材を添加すると、強度は向上するが、重量増加や内部損失が小さくなり、S/N比が悪くなるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3409579号公報
【特許文献2】特許第3317052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有する音響機器周辺部品、およびそれを用いたスピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音響機器周辺部品は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と;ポリスチレン系樹脂(B)と;ポリオレフィン系樹脂(C)とを含有する。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)の重量比は、(A)/(B)=90/10〜70/30である。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、上記ポリオレフィン系樹脂(C)を、5〜20重量部含有する。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)は、アロイ化されている。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記音響機器周辺部品は、ホーン、フィールドカバー、イコライザー、フレームおよびイコライザー支持体から選択される少なくとも1つとして用いられる。
【0013】
本発明の別の局面によれば、スピーカーが提供される。このスピーカーは、上記音響機器周辺部品を含む。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、音響機器周辺部品は、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含有することで、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有することができる。より詳細には、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とが特定の比率で含有されることにより、格段に高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、かつ、これらの樹脂が本来有する優れた耐熱性、耐湿性、成形性、寸法安定性、軽量性を損なわずに音響機器周辺部品を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、音響機器周辺部品を形成する樹脂組成物が相溶化剤を用いることなく優れた流動性を有し得るので、成形性に優れた音響機器周辺部品を得ることができる。また、相溶化剤を必要としないので、熱安定性の低下や分解などによる著しい強度低下を防ぐことができる。これらの結果、本発明の音響機器周辺部品は、例えば、ホーンやイコライザーなどの複雑な形状を有し、かつ、高い内部損失と強度のバランスが求められる部材にも好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の音響機器周辺部品は、ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と;ポリスチレン系樹脂(B)と;ポリオレフィン系樹脂(C)とを含有する樹脂組成物を有する。これらの樹脂を含有することで、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有する音響機器周辺部品が得られる。また、相溶化剤を併用する必要が無いので、熱安定性の低下や分解などによる著しい強度低下を防ぐことができる。
【0017】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)の重量比は、目的に応じて適宜設定される。好ましくは(A)/(B)=90/10〜70/30であり、さらに好ましくは(A)/(B)=85/15〜75/25であり、最も好ましくは約80/20である。ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合が高すぎると、樹脂組成物の流動性が不十分となり、成形不良を生じる恐れがある。ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合が低すぎると、得られる音響機器周辺部品の耐熱性が不十分である恐れがある。このような特定の割合でポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂とを用いることで、優れた成形性、耐熱性、耐湿性、機械的特性、寸法安定性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。
【0018】
上記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、目的に応じて適宜設定される。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量は、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して5〜20重量部であり、さらに好ましくは、8〜20重量部である。該ポリオレフィン系樹脂(C)をこれらの範囲で有することで、軽量で、かつ、成形性に優れた音響機器周辺部品を得ることができる。
【0019】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)は任意の適切な状態で存在する。具体例としては、混合およびアロイ化された状態が挙げられる。本明細書においては、「混合」とは2種以上の樹脂を巨視的スケールで均一に混ぜ合わせることを意味し、「アロイ化」とは、2種以上の樹脂を微視的スケールで均一に分散させることを意味する。アロイ化は、共重合(例えば、ブロック共重合、グラフト共重合)をも包含する。好ましくは、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)は、アロイ化されている。アロイ化を行うことで、単一の樹脂材料では得ることのできない機械的特性や化学的特性などを得ることができる。さらに、アロイ化を行うことにより、混合に比べてそれぞれの樹脂の利点をより良好に得ることができる。このため、上記樹脂をアロイ化すると、例えば、耐熱性、成形性、機械的特性がより効果的に発現され得る。さらに、優れた耐湿性、寸法安定性、軽量性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。本発明においては、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と上記ポリスチレン系樹脂(B)をアロイ化する場合、相溶化剤を必要としないので、得られる音響機器周辺部品における耐熱安定性の低下や分解などによる著しい強度低下を防止することができる。相溶化剤を用いることなく特定の樹脂のアロイ化を達成し、高い内部損失や軽量化と優れた機械的・熱的特性とを両立させたことが本発明の成果の1つである。アロイ化の方法は、目的に応じて適宜選択される。例えば、溶融混練、グラフト共重合、溶媒キャストブレンドによるアロイ化が挙げられる。好ましくは、溶融混練である。該溶融混練は、効率よく、かつ、これらの樹脂の特性を著しく低下させること無くアロイ化を行うことができる。また、混練温度および時間等の条件は、必要とする成形性などに応じて適宜設定され得る。
【0020】
上記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)としては、任意の適切なポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることで、優れた耐熱性、耐湿性、機械的特性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。該ポリフェニレンエーテル系樹脂は、例えば下記一般式(1)を繰り返し単位とする重合体が挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
なお、式中、R1、R2、はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、ハロゲン又は水素である。好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン又は水素であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、水素である。
【0023】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1、4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1、4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。なお、これらの樹脂は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量は目的に応じて適宜設定される。例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000〜1000000であり、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは30000〜300000である。これらの範囲を有することで、所望の耐熱性および機械的特性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。
【0025】
上記ポリスチレン系樹脂は、任意の適切なポリスチレン系樹脂が採用される。ポリスチレン系樹脂を含有することで、優れた成形性、機械的特性および耐熱性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。ポリスチレン系樹脂は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルスチレン−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン,トリクロルスチレン、トリブロモスチレンなどの核ハロゲン化スチレンなどが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いられてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて変性処理を行ってもよい。
【0026】
ポリスチレン系樹脂の分子量は、目的に応じて適宜設定される。例えば、ポリスチレン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは400〜500000であり、さらに好ましくは5000〜100000であり、特に好ましくは10000〜30000である。ポリスチレン系樹脂がこれらの範囲の分子量を有することで、優れた成形性、機械的特性および耐熱性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。
【0027】
上記ポリオレフィン系樹脂(C)としては、任意の適切なポリオレフィン系樹脂が採用される。ポリオレフィン系樹脂を加えることで、軽量で、かつ、優れた成形性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。ポリオレフィン系樹脂(C)の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン;2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン等のオレフィン類の単独重合または共重合体である。好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を含む単独重合体または共重合体である。さらに好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―プロピレン共重合体である。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR:流動性の指標)は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、温度230℃および荷重21.2Nの条件で測定したメルトフローレート(MFR:流動性の指標)は、好ましくは0.01〜400g/10分であり、さらに好ましくは0.15〜60g/10分であり、特に好ましくは0.3〜40g/10分である。また、ポリオレフィン系樹脂の分子量は、目的に応じて適宜設定され得る。例えば、ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量は、好ましくは500〜100000であり、さらに好ましくは1000〜50000であり、特に好ましくは5000〜30000である。ポリオレフィン系樹脂がこれらの範囲の分子量を有することで、軽量で、かつ、優れた成形性を有する音響機器周辺部品を得ることができる。
【0029】
上記樹脂組成物は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有してもよい。添加剤の具体例としては、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤が挙げられる。添加剤の種類および添加量などは、目的に応じて適宜選択される。
【0030】
上記音響機器周辺部品は、任意の適切な方法で形成される。以下に一例を示すが、この方法に限定されるものではない。所定量のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)とポリスチレン系樹脂(B)を所定の温度(例えば230〜320℃)にてヘンシェルミキサー、ユニバーサルミキサー等の混合機を用いて充分撹拌しながら溶融混練を行いアロイ化する。このアロイ化を行った樹脂に、所定量のポリオレフィン系樹脂(C)を例えば150〜270℃で溶融混練し、ペレットを作製する。得られたペレットは、任意の適切な方法で音響機器周辺部品に形成される。例えば、射出成形機を用いて形成してもよい。射出成形を行う場合、射出(樹脂)温度は、使用する樹脂の性質(含有量や分子量等)に応じて適宜設定される。好ましくは、200℃〜300℃の範囲である。これらの範囲を有することで、樹脂組成物が非常に優れた流動性を有し得るので、容易に成形を行うことができる。さらに、音響機器周辺部品は、熱劣化による、機械的特性の低下等を防ぐことができる。なお、金型温度や樹脂の押出し速度等は使用する樹脂の性質(含有量や分子量等)および目的に応じて適宜設定される。
【0031】
本発明の音響機器周辺部品は、好ましくは、ホーン、フィールドカバー、イコライザー、フレームおよびイコライザー支持体に用いられる。さらに、上記ホーン等は、好ましくはスピーカーに用いられる。図1は、本発明の好ましい実施形態による音響機器周辺部品が用いられているスピーカーの構成を説明する概略断面図である。このスピーカー10は、フレーム20を介してスピーカーボックスに取り付けられる。このフレーム20は、好ましくは本発明の音響機器周辺部品が用いられる。また、用いられるスピーカーの形式は限定されない。イコライザー30は、例えば内周側振動板と外周側振動板が一体形成されている振動板の終端部に固定されている。このイコライザー30は、好ましくは本発明の音響機器周辺部品が用いられる。また、フィールドカバー40は、好ましくは本発明の音響機器周辺部品が用いられる。このように、本発明の音響機器周辺部品が用いられることで、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性およびS/N比を有するスピーカーが提供される。
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
下記の化学式(2)に示す基本構造式を有する非晶質のポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と、ポリスチレン系樹脂(B)を重量比で80/20の割合でヘンシェルミキサーを用いて充分撹拌しながら溶融混練(混練温度300℃)を行い、アロイ化を行った。さらに、該アロイ化したポリフェニレンエーテル樹脂(A)/ポリスチレン樹脂(B)100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂(C)10重量部を加え溶融混練(混練温度250℃)したものをペレット化した。
【0034】
【化2】

【0035】
得られたペレットを、スピーカー前面取付板の金型を用いて射出成形を行い、音響機器周辺部品を形成した。成形条件は、射出圧力50MPa、射出(樹脂)温度280℃、金型温度80〜120℃であった。得られた音響機器周辺部品の密度、曲げ強度、加重たわみ温度、損失係数を測定した。得られた結果を表1に示す。なお、損失係数は、上記音響機器周辺部品と同様の条件で短冊状の試料(幅15mm、長さ100mm)を作製し、試料の一端を固定して非接触ランダム加振による片持ち梁法により高速フーリエ変換装置を用いて測定した。
【0036】
さらに、得られた音響機器周辺部品をインパルスハンマーで加振し、その振動を加速度ピックアップにより測定したものをウィグナー分布で表した。得られた結果を、図2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例2)
ポリオレフィン系樹脂(C)を20重量部含有したこと以外は、実施例1と同様にして音響機器周辺部品を形成した。得られた音響機器周辺部品を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた音響機器周辺部品のウィグナー分布を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を図3に示す。
【0039】
(比較例1)
ポリオレフィン系樹脂(C)を含有しなかったこと以外は、実施例1と同様にして音響機器周辺部品を形成した。得られた音響機器周辺部品を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた音響機器周辺部品のウィグナー分布を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を図4に示す。
【0040】
(比較例2)
ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)とポリアミド系樹脂を重量比で50/50の割合で混合し、相溶化剤0.5重量部を加えたペレットを用い、実施例1と同様にして音響機器周辺部品を形成した。得られた音響機器周辺部品を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた音響機器周辺部品のウィグナー分布を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を図5に示す。
【0041】
(比較例3)
ABS樹脂100重量部から実施例1と同様にして音響機器周辺部品を形成した。得られた音響機器周辺部品を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、得られた音響機器周辺部品のウィグナー分布を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を図6に示す。
【0042】
(評価)
表1より明らかなように、実施例1および2は、比較例1および2に比べ低密度(約10〜15%)であるので軽量であり、かつ、非常に高い損失係数(内部損失)を有していることが判る。また、比較例3に比べ軽量で、優れた強度を有し、かつ、耐熱性が優れ、高い損失係数を有していることが判る。これらのことより、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含有することで、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、優れた耐熱性を有する音響機器周辺部品を得られることが判る。
【0043】
図2〜6で明らかなように、実施例1および2は、4kHz、6kHzおよび8kHz付近の帯域で減衰が遅れていないことが判る。また、高域レベルの振動が減衰しやすくなるので、本発明の音響機器
周辺部品(例えば、前面板部分やイコライザー部分)からの材料固有の不要音の発生が抑制されることが判る。これらの結果より、高い内部損失を有し、S/N比に優れる音響機器周辺部品を得ることができる。以上の結果より、本発明の音響機器周辺部品は、高い内部損失と優れた機械的特性をバランスよく有し、軽量で、かつ、優れた耐熱性、およびS/N比を有することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の音響機器周辺部品は、ホーン、フィールドカバー、イコライザー、フレーム、イコライザー支持体に用いられる。さらに、上記ホーン等はスピーカーに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、好ましい実施形態におけるスピーカーの構成を説明する概略断面図である。
【図2】図2は、実施例1で用いた音響機器周辺部品のウィグナー分布図である。
【図3】図3は、実施例2で用いた音響機器周辺部品のウィグナー分布図である。
【図4】図4は、比較例1で用いた音響機器周辺部品のウィグナー分布図である。
【図5】図5は、比較例2で用いた音響機器周辺部品のウィグナー分布図である。
【図6】図6は、比較例3で用いた音響機器周辺部品のウィグナー分布図である。
【符号の説明】
【0046】
10 スピーカー
20 フレーム
30 イコライザー
40 フィールドカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と;ポリスチレン系樹脂(B)と;ポリオレフィン系樹脂(C)とを含有する音響機器周辺部品。
【請求項2】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と前記ポリスチレン系樹脂(B)の重量比が、(A)/(B)=90/10〜70/30である、請求項1に記載の音響機器周辺部品。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と前記ポリスチレン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、前記ポリオレフィン系樹脂(C)を、5〜20重量部含有する、請求項1または2に記載の音響機器周辺部品。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂(A)と前記ポリスチレン系樹脂(B)が、アロイ化されている、請求項1から3のいずれかに記載の音響機器周辺部品。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から4のいずれかに記載の音響機器周辺部品。
【請求項6】
ホーン、フィールドカバー、イコライザー、フレームおよびイコライザー支持体から選択される少なくとも1つとして用いられる、請求項1から5のいずれかに記載の音響機器周辺部品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の音響機器周辺部品を含む、スピーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−88987(P2007−88987A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277389(P2005−277389)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】