説明

音響機能付き様式便器

【課題】音響機能を付与する際の製造面や施工面での対応が簡単で、着座しての便器使用時における使用者への音の伝達効率も向上される音響機能付き様式便器を提供する。
【解決手段】便器本体1にその外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体2を着脱自在に装着し、このカバー体2の前面に音響装置3のスピーカー部4を設けてなる音響機能付き洋式便器であり、同カバー体2は全体として略袴形状で水平断面が略U字形状となるように後方へ開口しており、この開口部分から便器本体1の外周壁に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、音響装置のスピーカー部を備えた音響機能付き様式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図5に示すように、スピーカー部4を備えた音響機能付き様式便器は知られている(特許文献1:特開2004−113388号公報)。この場合、便器本体1の後端部上に便座装置8が設置され、この便座装置8に音響装置が内蔵されてそのスピーカー部4が後方へ向けて二つ配設されている。なお、便座装置8は局部洗浄機能を有し、暖房便座本体9及びその上に開閉自在な便蓋10を回動自在に軸支して備えている。
【0003】
したがって、この音響機能付き様式便器においては、スピーカー部4からの音をトイレ後ろ壁で反射させて、効率良く且つ左右のバランス良く使用者に伝達することができるとされている。
【特許文献1】特開2004−113388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来例となる音響機能付き様式便器においては、局部洗浄や暖房便座等の多種機能を備えた便座装置8に音響装置及びそのスピーカー部4が設けられるため、音響機能が要望される場合に、大掛かりで大型化する便座装置8を新たに製造し品揃えする必要があって製品管理面やコスト面で問題を生じ、また、取替えが大層となって施工面での問題も発生するものである。しかも、比較的長時間となる着座しての便器使用時には、背方から音が聞こえることになり、使用者への音の伝達効率が充分とは言えないものである。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、音響機能を付与する際の製造面や施工面での対応が簡単で、着座しての便器使用時における使用者への音の伝達効率も向上される音響機能付き様式便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の音響機能付き様式便器は、便器本体にその外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体を着脱自在に装着し、このカバー体の前面に音響装置のスピーカー部を設けてなる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の音響機能付き様式便器においては、便器本体の外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体の前面に音響装置のスピーカー部を設けているので、比較的長時間となる着座しての便器使用時に、前方から音が反射して聞こえることになり、使用者へは音が正面から包み込むように伝わって音の伝達効率は向上される。また、スピーカー部が設けられるカバー体は、便器本体の外周壁の少なくとも前面部分を覆うよう着脱自在に装着されるので、既存の便器本体に対しても、コンパクトに体裁良く且つ簡単に装着することができて音響機能を付与し易いものであり、施工やその取替え作業も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1、2は、本願の請求項1〜4全てに対応した一実施形態である音響機能付き様式便器を示している。この実施形態の音響機能付き様式便器は、便器本体1にその外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体2を着脱自在に装着し、このカバー体2の前面に音響装置3のスピーカー部4を設けてなる。
【0009】
この実施形態の音響機能付き様式便器において、カバー体2は全体として略袴形状で水平断面が略U字形状となるように後方へ開口しており、この開口部分5から便器本体1の外周壁に装着されるものであって、同開口部分5にはカバー体2を便器本体1に対して着脱自在に固定する止め具6が備えられている。
【0010】
また、この実施形態の音響機能付き様式便器では、カバー体2の前面が斜め下後方へ傾斜しており、この前面にスピーカー部4を斜め下前方へ向けて設けている。更に、カバー体2に人体検知センサ7を設け、この人体検知センサ7の検知によりスピーカー部4が動作されるようになっている。
【0011】
以下、この実施形態の音響機能付き様式便器を、より具体的詳細に説明する。この実施形態の音響機能付き様式便器では、図1に示すように、便器本体1の後端部上に便座装置8が設置されており、この便座装置8は局部洗浄機能を有し、暖房便座本体9及びその上に開閉自在な便蓋10を回動自在に軸支して備えている。そして、便座装置8の局部洗浄や暖房便座等を操作するリモコン11が、トイレの側壁面に取り付けられている。この場合、便器本体1に着座した状態で楽にリモコン11を操作することができる。
【0012】
音響装置3はMD、CDプレイヤー或いはラジオ等の音楽を発する音響機器であり、トイレの内部、外部のいずれに設置されてもよいものである。この音響装置3は前記リモコン11において操作されるものであり、したがって、同リモコン11には便座装置8を操作する便座操作部12と音響装置3を操作する音響操作部13とが配設されている。便座操作部12では便座温度や局部洗浄水の温度、強さ等が設定操作され、音響操作部13では音響装置3の音量や選曲等が設定操作される。
【0013】
便器本体1の外周壁にはカバー体2が装着されており、このカバー体2に前記音響装置3のスピーカー部4が設けられている。カバー体2は合成樹脂製であり、図2に示すように、全体として略袴形状で水平断面が略U字形状となるように後方へ開口し、この開口部分5から便器本体1の外周壁に装着されるもので、便器本体1の外周壁の前面部分及び両側面部分に沿ってこの部分を覆うものである。ここで、カバー体2は便器本体1の外周壁の少なくとも前面部分を覆うものであればよく、便器本体1の外周壁の前面部分だけを覆うよう小さく形成されても、或いは、便器本体1の外周壁を全周にわたって覆うよう大きく形成されてもよいものである。
【0014】
また、前記カバー体2の後方へ開口した開口部分5には、カバー体2を便器本体1に対して着脱自在に固定する止め具6が備えられている。止め具6は可動押さえ部材6aと固定受け部材6bとでなり、カバー体2の一方の後端部内側に可動押さえ部材6aが枢着され、同カバー体2の他方の後端部内側に固定受け部材6bが固着されている。可動押さえ部材6aは弾性を有し便器本体1の後部外周壁に沿って湾曲した帯板状で、その一端に設けられた軸部61を介してカバー体2に対して回動自在に枢着され、その他端に折曲形成された止め部62がフック状の前記固定受け部材6bに対して着脱自在に係止される。ここで、止め具6の係止を着脱させて、カバー体2を便器本体1に対して取り付けたり取り外したりする作業を容易に行うことができる。
【0015】
カバー体2の前面には、ステレオ機能をなす対のスピーカー部4が配設されている。両スピーカー部4はいずれも斜め下前方へ向けて音を発するものであり、これは、カバー体2の前面が斜め下後方へ傾斜しており、この傾斜した前面に設けられることによる。スピーカー部4から発された音は、トイレの床面及び前壁面を反射して、着座した使用者に対して正面から包み込むように効率良く伝達される。なお、ステレオ機能をなす対のスピーカー部4は、カバー体2の両側面に配設されてもよい。
【0016】
カバー体2の前面中程には、前記両スピーカー部4の上側に人体検知センサ7が設けられている。この場合、便器本体1の前方にトイレの出入口があると、人体検知センサ7は使用者をトイレに入室した段階で正確に検知することができる。人体検知センサ7がトイレ使用者を検知すると、音響装置3がON操作されてスピーカー部4から自動的に音楽が流れ始める。また、使用者がトイレから退室して人体検知センサ7の無検知状態が所定時間を超えると、音響装置3がOFF操作されてスピーカー部4から流れる音楽が自動的に止む。
【0017】
したがって、この実施形態の音響機能付き様式便器においては、便器本体1の外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体2の前面に音響装置3のスピーカー部4を設けているので、比較的長時間となる着座しての便器使用時に、前方から音が反射して聞こえることになり、使用者へは音が正面から包み込むように伝わって音の伝達効率は向上される。また、スピーカー部4が設けられるカバー体2は、便器本体1の外周壁の少なくとも前面部分を覆うよう着脱自在に装着されるので、既存の便器本体1に対しても、コンパクトに体裁良く且つ簡単に装着することができて音響機能を付与し易いものであり、施工やその取替え作業も容易となる。
【0018】
また、この実施形態の音響機能付き様式便器においては、カバー体2が全体として略袴形状で水平断面が略U字形状となるように後方へ開口しており、この開口部分5から便器本体1の外周壁に装着されるので、カバー体2を便器本体1に対して取り付けたり取り外したりする作業を容易に行うことができる。しかも、前記開口部分5にはカバー体2を便器本体1に対して着脱自在に固定する止め具6が備えられているので、この止め具6によりカバー体2を便器本体1に対して確実に固定することができる。更には、止め具6による係止固定を解除してカバー体2を便器本体1から取り外し、この状態でカバー体2の清掃やスピーカー部4のメンテナンス等の作業を容易に行うこともできる。
【0019】
また、この実施形態の音響機能付き様式便器においては、カバー体2の前面が斜め下後方へ傾斜しており、この前面にスピーカー部4を斜め下前方へ向けて設けているので、スピーカー部4から発された音は、トイレの床面及び前壁面を反射して、着座した使用者に対して正面から包み込むようにより効率良く伝達される。しかも、カバー体2に設けられる人体検知センサ7が人体を検知することによりスピーカー部4が動作されるようになっているので、人体検知センサ7によりトイレ使用者が検知されると、操作することなくスピーカー部4から自動的に音が発せられて使い勝手は良好なものである。
【0020】
図3は、本願の請求項1〜4全てに対応した別の実施形態である音響機能付き様式便器を示している。この実施形態の音響機能付き様式便器においては、便器本体1の両側に肘掛14が配設され、一方の肘掛14に便座装置8を操作する便座操作部12と音響装置3を操作する音響操作部13とが配設されている。この場合、肘掛14上に腕を載せた楽な状態で便座操作部12或いは音響操作部13を操作することができる。また、肘掛14は便器本体1の側部に枢支軸部15、アーム部16を介して取り付けられており、枢支軸部15を中心に前後に回動させることができる。なお、それ以外は上記実施形態と同様に構成され、上記実施形態におけると同様の作用効果が奏される。
【0021】
本願発明にあっては、図4(a)に示すように、スピーカー部4がモノラルでカバー体2の前面に唯一設けられたものであってもよい。また、図4(b)に示すように、カバー体2の外側面に複数のスピーカー取付部17が配設され(ここでは、多数のスピーカー取付部17がマトリクス状に配設されている)、いずれか一つ或いは複数のスピーカー取付部17にスピーカー部4が選択されて取り付けられてもよい。この場合、所望の数のスピーカー部4を所望の配置にしてカバー体2に設けることができる。ここで、スピーカー取付部17は、ユニット状のスピーカー部4が嵌め込まれる凹形状であっても、或いは、スピーカー部4が引っ掛け係止されるフック形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の一実施形態である音響機能付き様式便器を示す斜視図。
【図2】同音響機能付き様式便器におけるカバー体を示す斜視図。
【図3】本願発明の別の実施形態である音響機能付き様式便器を示す斜視図。
【図4】本願発明における(a)(b)各別のカバー体を例示する斜視図。
【図5】従来例である音響機能付き様式便器を示す斜視図。
【符号の説明】
【0023】
1 便器本体
2 カバー体
3 音響装置
4 スピーカー部
5 開口部分
6 止め具
7 人体検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体にその外周壁の少なくとも前面部分を覆うカバー体を着脱自在に装着し、このカバー体の前面に音響装置のスピーカー部を設けてなる音響機能付き洋式便器。
【請求項2】
カバー体は全体として略袴形状で水平断面が略U字形状となるように後方へ開口しており、この開口部分から便器本体の外周壁に装着されるものであって、同開口部分にはカバー体を便器本体に対して着脱自在に固定する止め具が備えられていることを特徴とする請求項1記載の音響機能付き洋式便器。
【請求項3】
カバー体の前面が斜め下後方へ傾斜しており、この前面にスピーカー部を斜め下前方へ向けて設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の音響機能付き洋式便器。
【請求項4】
カバー体に人体検知センサを設け、この人体検知センサの検知によりスピーカー部が動作されるようになしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の音響機能付き洋式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−169934(P2007−169934A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365970(P2005−365970)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】