音響特性測定装置、音響特性補正装置および音響特性測定方法
【課題】各人の外耳道の構造に応じて共鳴をキャンセルすることができる外耳道特性補正装置を提供すること。
【解決手段】外耳道特性補正装置40は測定用基準信号を生成する測定信号生成部74と、測定用基準信号を音響信号に変換して外耳道62内に出力するとともに測定用基準信号に対する外耳道からの応答信号を電気信号に変換する電気/音響変換部44と、応答信号の電気信号から外耳道の共鳴周波数特性を取得する外耳道特性取得部82と、取得された共鳴周波数の利得が下がるように補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部84とを具備する。
【解決手段】外耳道特性補正装置40は測定用基準信号を生成する測定信号生成部74と、測定用基準信号を音響信号に変換して外耳道62内に出力するとともに測定用基準信号に対する外耳道からの応答信号を電気信号に変換する電気/音響変換部44と、応答信号の電気信号から外耳道の共鳴周波数特性を取得する外耳道特性取得部82と、取得された共鳴周波数の利得が下がるように補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部84とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音源信号が供給される被測定対象、例えば受聴者の外耳道の共鳴特性を測定・補正する音響特性測定装置、音響特性補正装置、音響特性測定方法および音響特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンまたはヘッドホン(以下、両者をイヤホンと総称する)で音楽を聴取する際、外耳道がイヤホンで塞がれることにより鼓膜とイヤホンとの間で共鳴現象が生じ、共鳴周波数の音が強調され、不自然な音が受聴されることがある。そこで、外耳道内の共鳴特性を測定し、音源信号受聴時に外耳道共鳴特性を補正することが望ましい。
【0003】
外耳道の形状や音響伝達特性、鼓膜の物性や音響伝達特性には個人差がある。さらに、イヤホンの種類やイヤホンの装着状態によって外耳道内の共鳴は人によって様々である。そのため、外耳道内の共鳴を正確に補正するには外耳道特性の個人別補正が必要となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には両耳ヘッドホンや両耳イヤホンといった両耳に接する音響機器を用いて、音源として知覚する位置(音像)を頭の外に知覚させる頭外音像定位装置が開示されている。音源信号がディジタルフィルタを介してイヤホンに供給される。ディジタルフィルタの伝達関数(頭外音像定位伝達関数)SLTFを計算機によって求めることができるが、外耳道伝達関数ECTFと頭部音響伝達関数HRTF(なお、SLTFはHRTF/ECTFに略等しい)は、受聴者の外耳道の大きさ、耳の大きさ、更に顔の大きさによってそれぞれ異なる。すなわち、個人の顔の形状に合致した伝達関数でないと、頭の外に正確な音像が定位せず、音像の前後判定ができなくなったり、頭外定位しなくなる。
【0005】
このため、伝達関数の個人差によって頭外定位しないのでは不特定多数の受聴者に対して汎用的に利用できないので、前もって測定した数種の伝達関数を選択させるようなハード的な解決手法、または個人毎に伝達関数を測定できるシステムが必要となる。しかし、前述したハード的な解決手法ではハード量の増加を生み、また個人毎に伝達関数を測定できるシステムを用いる手法では、このような測定システムが非常に高価であるという問題があった。
【0006】
そのため、特許文献1ではイヤホンからマイク出力までの伝達関数である外耳道伝達関数の逆関数を求めるための適応フィルタを設け、音源信号をディジタルフィルタを介して音源信号を適応フィルタに与える。一方、外耳道伝達関数と適応フィルタの逆伝達関数との積がフィルタ特性となるよう構成された帯域フィルタがディジタルフィルタの出力に接続される。適応フィルタの出力がイヤホンに与えられる。イヤホンの出力を収音するマイクの出力と、帯域フィルタの出力とは減算器で減算され、この結果が収束演算回路に供給され、減算結果に基づき適応フィルタの逆伝達関数が収束される。
【0007】
特許文献1に記載の装置は、受聴者の外耳道の音響特性を測定するためにイヤホン以外にマイクを必要とし、イヤホンにマイクが取り付けられている。このため、イヤホンが大型化したり、構造が複雑になってしまう。
【特許文献1】特開2001−285998号公報(段落0012、段落0013、段落0014)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の外耳道共鳴特性の測定にはマイクをイヤホンに装着する必要があるため、イヤホン自体が大型化・複雑化し、簡単には受聴者の外耳道の正確な音響特性を測定することができず、正確な音響特性を取得し、正確な補正を行うことが出来なかった。
【0009】
本発明の目的は、被測定対象毎の音響特性を正確に、かつ簡単な構造で測定できる音響特性測定装置、音響特性測定方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、被測定対象毎の音響特性を正確に、かつ簡単な構造で補正することができる音響特性補正装置、および音響特性補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による音響特性補正装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記補正部から出力された前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
外耳道特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記補正部と前記補正量算出部とを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様による音響特性補正装置は、
音響信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時は前記補正部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記補正量算出部に出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を前記電気/音響変換部に出力する選択部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記選択部の切替えを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様による音響特性補正方法は、音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得し、前記音響特性から補正フィルタの補正係数を算出し、
前記音源信号の供給時には、音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を被測定対象に出力することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様による音響特性測定装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記測定信号生成部からの前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様による音響特性測定装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
前記測定信号生成部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記音響特性取得部に出力する選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様による音響特性補正方法は、音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の態様によれば、音源信号を音響信号に変換する電気/音響変換部を用いて測定用基準信号に対する被測定対象からの応答音響信号を応答電気信号に変換して、該電気信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得結果に応じて音源信号の補正フィルタの補正係数を算出することにより、電気/音響変換部が大型化・複雑化することなく、被測定対象の音響特性を簡単な構造で正確に測定、補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明による音響特性測定装置、音響特性補正装置、音響特性測定方法および音響特性補正方法の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における音響伝達特性としての外耳道共鳴特性の補正の概念を示す図である。受聴者の外耳道の端部がイヤホン20で塞がれ、外耳道の外部に外耳道特性補正装置40が配置され、両者が電気的に接続される。外耳道は左右夫々特性が異なるので、図示していないが、左右夫々のイヤホンに外耳道特性補正装置40が接続され、特性は左右夫々補正される。
【0020】
図2は外耳道特性補正装置40の構成例を示す図である。外耳道特性補正装置40は補正部70、補正量算出部80、選択部42、制御部46、電気/音響変換部44からなる。受聴者60は外耳道62と鼓膜64からなる。
【0021】
電気/音響変換部44は図1に示すように外耳道62の端部を塞ぐイヤホン20、あるいはヘッドホンであり、選択部42から出力された電気信号を音響信号に変換して受聴者の外耳道62内に出力するとともに、外耳道62に出力され、鼓膜64で反射され戻ってきた音響信号を電気信号に変換して、選択部42に出力する。
【0022】
外耳道62はイヤホン(電気/音響変換部44)で塞がれているので、電気/音響変換部44から外耳道62に出力された音響信号は共鳴して受聴される。外耳道特性補正装置40はこの共鳴周波数を検出して、イヤホンから外耳道60へ出力される音源信号に応じた音響信号の周波数特性を補正する(共鳴周波数の利得を下げる)ものである。
【0023】
選択部42は制御部46の制御の下、第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときは補正部70と電気/音響変換部44とを接続し、補正部70の出力である電気信号を電気/音響変換部42を介して音響信号として外耳道62へ出力し、第2状態のときは補正量算出部80と電気/音響変換部44とを接続し、電気/音響変換部44の出力である電気信号を補正量算出部80へ出力する。選択部42の選択動作を図4に示す。制御部46は図4(c)に示すような切替信号を選択部42に供給する。選択部42は切替信号がハイレベルのときは第1状態に設定され、切替信号がローレベルのときは第2状態に設定される。なお、図示していないが、音源信号の受聴時には選択部42は第1状態に設定される。
【0024】
補正部70は外耳道62の音響特性(共鳴周波数)を測定するための測定用基準信号である所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルス(Time Stretched Pulse:以下TSPと称する)を生成する測定信号生成部74と、受聴者60に受聴される音源信号を補正する補正フィルタ72とを備える。
【0025】
本補正装置40は音響特性測定モードと音源信号補正(音源信号受聴)モードとに切替えられ、音響特性測定モードの時には補正部70からは測定信号生成部74の出力が出力され、音源信号補正モード時には補正フィルタ72の出力が出力される。図4は音源信号補正モード時の選択部42の切替え動作を示す。音響特性測定モード時は、測定用基準信号である所定幅以内の単位パルスあるいはTSPが選択部42を介して電気/音響変換部44に供給され、そこで音響信号に変換され外耳道62に出力される。この後、図4(c)に示すように選択部42が補正量算出部80側に切替えられ、鼓膜64で反射された音響信号(応答信号)が電気/音響変換部44で再び電気信号に変換され、この電気信号(応答信号)が補正量算出部80に入力される。
【0026】
補正量算出部80はこの応答信号を受信し、外耳道62の音響特性(共鳴周波数)を取得する外耳道特性取得部82と、外耳道特性取得部82で取得した音響特性に基づき、補正フィルタ72の補正係数を算出する補正係数算出部84とを備える。
【0027】
制御部46は音響特性測定モードと音源信号補正モードとに応じて補正部70を制御すると共に、上述したように第1状態、第2状態に応じて選択部42を切替え制御する。
【0028】
図3は図2の外耳道特性補正装置40の制御部46の動作を示すフローチャートである。初期状態では、動作モードは音響特性測定モードに設定されている。ブロック102で受聴者60の外耳道特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されているか否か判定される。設定されている場合は、ブロック116で音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否か判定される。否の場合は終了する。
【0029】
ブロック102で受聴者60の外耳道特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されていない場合は、ブロック104で補正部70において測定信号生成部74の出力が選択される。そのため、測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック106で補正部70の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック108では、鼓膜64で反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0030】
ブロック110で外耳道特性取得部82は受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック112で補正係数算出部84は(1)取得した外耳道共鳴特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。ブロック114で補正係数が補正フィルタ72に設定される。その後、ブロック116が実施され、動作モードが音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否かを判定する。
【0031】
ブロック116で音源信号補正(音源信号受聴)モードであると判定されると、ブロック118で補正部70において補正フィルタ72の出力が選択される。そのため、補正フィルタ72によるフィルタリング処理が施された音源信号が選択部42に供給される。このとき選択部42は第1状態に設定されおり、共鳴特性補正後の音源信号が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。
【0032】
このように各人の外耳道において実際に測定した共鳴のピークを打ち消すようなフィルタを作成し、左右の音源信号をフィルタリング処理することにより、外耳道で共鳴が発生したとしても、図7に示した共鳴のピークが平滑化され、不自然な音が受聴されることが防止される。しかも、マイクをイヤホンに取り付けていないので、イヤホンが大型化したり、構造が複雑になってしまうこともない。
【0033】
上述の説明では測定用基準信号を1回出力し、その応答信号に基づいて外耳道特性を取得したが、イヤホンはマイクに比べると感度が低いので、応答信号のレベルが低下し雑音に埋もれてしまい、音響特性を測定できないことがある。その場合は、図5に示すように、選択部42を複数回切り換えて測定用基準信号を複数回出力し、音響特性の取得を複数回繰り返し、複数の応答信号の平均を求めることにより、雑音の影響を除いた正確な音響特性を測定することが出来る。
【0034】
鼓膜付近で収音した周波数特性と、鼓膜ではない位置(イヤホン付近)で収音した周波数特性の共鳴周波数は一致することを図6、図7を用いて説明する。図6は擬似外耳道を用いた実験概要を示した図である。擬似外耳道22は人間の外耳道を模擬した円筒形の筒である。実験は擬似外耳道22の両端に鼓膜マイク26とイヤホン20を装着して行った。イヤホン20から所定幅以内の単位パルスあるいはTSPを出力し、イヤホン20と鼓膜マイク26とで収音し、その周波数スペクトルを比較した。
【0035】
図7は本実験で取得した鼓膜マイクとイヤホンの周波数特性を示した図である。このようにイヤホンで取得した特性は定在波の節となるところで谷(dip)が生じるが、共鳴のピークが発生する周波数(7.5KHz付近と15KHz付近)は鼓膜マイクで取得した特性とほぼ一致する。そのため、イヤホン20で測定した周波数特性はイヤホン20の設置位置に応じて変化するので、取得した周波数特性の逆フィルタを作っても正しい逆フィルタを作ることができず、共鳴現象を正確にキャンセルすることが困難である。しかし、共鳴周波数は正しいので、これだけを使って補正すれば、共鳴現象を正しくキャンセルすることが可能である。
【0036】
図8は図12の補正装置40の実装例を示す。オーディオプレーヤ90に内蔵する場合、プレーヤ90本体に限らず、リモコン92、イヤホン94に内蔵してもよい。また、補正装置40を全体としてオーディオプレーヤ90に内蔵する代わりに、補正フィルタ72のみを内蔵してもよい。すなわち、測定用基準信号の生成から外耳道特定の測定、補正係数の算出までを別途のPC等で行い、オーディオプレーヤ90は求められた補正係数がセットされた補正フィルタ72を用いて図示せぬフラッシュメモリ、ハードディスク等から読み出された音源信号を補正するだけでもよい。あるいは、プレーヤ90に内蔵する場合は、音源信号をダウンロードする際に補正して、補正後の音源信号をメモリ等に記憶することも可能である。
【0037】
なお、上述の説明は左右両方のイヤホンにマイクを装着して、左耳及び右耳の特性を取得しそれぞれの補正フィルタを作成するものであったが、片耳だけの特性を取得し、その特性を用いて作成した補正フィルタを用いて両耳の音源信号をフィルタリングする構成でも良い。
【0038】
イヤホンの位置に応じて共鳴特性も変化することが考えられるので、補正装置40による音響特性測定、音響特性補正処理は、例えばオーディオプレーヤ90を起動するたびに行うものであっても良いし、ユーザが任意に操作することで行うものであっても良いし、ユーザが設定した期間を超えた後に起動したときに行われるものであっても良い。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、選択部42を介して測定用基準信号を電気/音響変換部44へ供給し音響信号を音声出力し、鼓膜で反射した音声信号を電気/音響変換部44で電気信号に変換し選択部42を介して補正量算出部80へ供給する。これにより、外耳道の共鳴周波数を取得し、共鳴周波数をキャンセルするような補正フィルタ72の補正係数を算出することにより、イヤホン付近にマイクを設置することなく簡単な構成で各人の外耳道音響特性の共鳴現象を正確に打ち消すことができる。さらに、個人別にイヤホンと鼓膜で生じる共鳴特性を取得し、その特性に合わせた補正フィルタを作成することにより、個人毎の外耳道特性や挿入状態によって異なる外耳道共鳴特性をキャンセルできる。左右両方の特性を取得して、それぞれの特性毎に補正フィルタを作成することにより、左右の耳で異なる外耳道共鳴特性をキャンセルできる。
【0040】
以下、本発明の他の実施の形態を説明する。他の実施の形態の説明において第1の実施の形態と同一部分は同一参照数字を付してその詳細な説明は省略する。
【0041】
図9は第2実施形態の外耳道特性補正装置40Aのブロック図である。第2実施形態の外耳道特性補正装置40Aは第1実施形態の外耳道特性補正装置40から選択部42を取り除いたものである。このため、補正部70の出力が電気/音響変換部44に供給されると共に、補正量算出部80にも供給される。しかし、動作タイミングを制御する制御部46は図4に示す切替え信号がハイレベル相当の期間(補正部70から測定用基準信号が出力される期間)であるか、ローレベル相当の期間(外耳道62からの応答信号の受信期間)であるかを認識しているので、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号ではなく、電気/音響変換部44から出力された応答信号に正しく基づき外耳道特性を取得することができる。
【0042】
このように第2実施形態によれば、選択部42を必要とせずに、測定用基準信号に対する応答信号を正しいタイミングで外耳道特性取得部82に入力することができ、外耳道特性を正しく取得することができる。
【0043】
図10は第3実施形態の外耳道特性測定装置41のブロック図である。第3実施形態の外耳道特性測定装置41は第1実施形態の外耳道特性補正装置40から補正フィルタ72を取り除いたものである。
【0044】
図11は図10の外耳道特性測定装置41の制御部46の動作を示すフローチャートである。ブロック122で測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック124で測定信号生成部74の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック126では、鼓膜64で反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0045】
ブロック128で外耳道特性取得部82は受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック130で補正係数算出部84は(1)取得した外耳道共鳴特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。
【0046】
算出された補正係数は別途設けられた補正装置の補正フィルタにセットされる。
【0047】
これにより、共鳴特性を測定し補正フィルタの補正係数を算出するまでの測定装置と、算出された補正係数がセットされ音源信号をフィルタリングする補正装置とを別体として構成することもできる。
【0048】
なお、測定装置41は補正係数算出部84を含まなくても良い。この場合、図11のフローチャートはブロック128の外耳道共鳴特性の取得までを行い、ブロック130の補正係数の算出は他の装置に含まれる補正係数算出部で行う。
【0049】
図12は第4実施形態の外耳道特性測定装置41Aのブロック図である。第4実施形態の外耳道特性測定装置41Aは第3実施形態の外耳道特性測定装置41から選択部42を取り除いたものである。第2実施形態と同様に第4実施形態でも、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は測定信号生成部74から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は電気/音響変換部44からの応答信号を正しく受信して、外耳道共鳴特性を正しく取得することができる。
【0050】
第3実施形態と同様に測定装置41Aは補正係数算出部84を含まなくても良い。
【0051】
上述の実施形態は被測定対象を受聴者の外耳道共鳴特性としたが、以下、これに限らない実施形態を説明する。
【0052】
図13は受聴者60に代わり被測定対象61に関する第5実施形態の音響伝達特性補正装置39の構成例を示す図である。音響伝達関数補正装置39は第1実施形態の外耳道特性補正装置40と略同じであるが、外耳道特性取得部82の代わりに音響伝達特性取得部82Aが設けられている。 図14は図13の音響伝達特性補正装置39の制御部46の動作を示すフローチャートである。初期状態では、動作モードは音響特性測定モードに設定されている。ブロック142で被測定対象61の音響伝達特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されているか否か判定される。設定されている場合は、ブロック156で音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否か判定される。否の場合は終了する。
【0053】
ブロック142で被測定対象61の音響伝達特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されていない場合は、ブロック144で補正部70において測定信号生成部74の出力が選択される。そのため、測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック146で補正部70の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として被測定対象61内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック148では、被測定対象61のいずれかで反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0054】
ブロック150で音響伝達特性取得部82Aは受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック152で補正係数算出部84は(1)取得した音響伝達特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。ブロック154で補正係数が補正フィルタ72に設定される。その後、ブロック156が実施され、動作モードが音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否かを判定する。
【0055】
ブロック156で音源信号補正(音源信号受聴)モードであると判定されると、ブロック158で補正部70において補正フィルタ72の出力が選択される。そのため、補正フィルタ72によるフィルタリング処理が施された音源信号が選択部42に供給される。このとき選択部42は第1状態に設定されおり、音響伝達特性補正後の音源信号が電気/音響変換部44を介して音響信号として被測定対象61に出力される。
【0056】
図15は第6実施形態の音響伝達特性補正装置39Aのブロック図である。第6実施形態の補正装置39Aは第5実施形態の補正装置39から選択部42を取り除いたものである。このため、補正部70の出力が電気/音響変換部44に供給されると共に、補正量算出部80にも供給される。しかし、第2実施形態と同様に、動作タイミングを制御する制御部46は図4に示す切替え信号がハイレベル相当の期間(補正部70から測定用基準信号が出力される期間)であるか、ローレベル相当の期間(外耳道62からの応答信号の受信期間)であるかを認識しているので、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号ではなく、電気/音響変換部44から出力された応答信号に正しく基づき音響伝達特性を取得することができる。
【0057】
図16は第7実施形態の音響伝達特性測定装置38のブロック図である。第7実施形態の測定装置38は第5実施形態の補正装置39から補正フィルタ72を取り除いたものである。
【0058】
図17は図16の音響伝達特性測定装置38の制御部46の動作を示すフローチャートである。ブロック172で測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック174で測定信号生成部74の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック176では、被測定対象60Aのいずれかで反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0059】
ブロック178で音響伝達特性取得部82Aは受信した応答信号に応じて音響伝達特性を取得する。ブロック180で補正係数算出部84は(1)取得した音響伝達特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。
【0060】
算出された補正係数は別途設けられた補正装置の補正フィルタにセットされる。
【0061】
これにより、共鳴特性を測定し補正フィルタの補正係数を算出するまでの測定装置と、算出された補正係数がセットされ音源信号をフィルタリングする補正装置とを別体として構成することもできる。
【0062】
なお、測定装置38Aは補正係数算出部84を含まなくても良い。この場合、図17のフローチャートはブロック178の外耳道共鳴特性の取得までを行い、ブロック180の補正係数の算出は他の装置に含まれる補正係数算出部で行う。
【0063】
図18は第8実施形態の音響伝達特性測定装置38Aのブロック図である。第8実施形態の測定装置38Aは第7実施形態の測定装置38から選択部42を取り除いたものである。第4実施形態と同様に第8実施形態でも、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は測定信号生成部74から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する被測定対象60Aからの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は電気/音響変換部44からの応答信号を正しく受信して、音響伝達特性を正しく取得することができる。
【0064】
この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。例えば、図5に示した測定用基準信号の複数回の送信による複数の応答信号を平均して被測定対象の音響特性を取得する処理は全ての実施形態に適用可能である。また、本発明は、コンピュータに所定の手段を実行させるため、コンピュータを所定の手段として機能させるため、あるいはコンピュータに所定の機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体としても実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る外耳道特性補正の概念を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る外耳道特性補正装置40の一構成例を示すブロック図。
【図3】図2に示した外耳道特性補正装置40の動作の一例を示すフローチャート。
【図4】図2に示した外耳道特性補正装置40の選択部42の切替え動作の一例を示す図。
【図5】図2に示した外耳道特性補正装置40の選択部42の切替え動作の変形例を示す図。
【図6】鼓膜付近とイヤホン付近で収音した外耳道の周波数特性が一致することを示す実験に用いられる擬似外耳道を示す図。
【図7】実験結果を示す周波数特性を示す図。
【図8】本実施形態の実装例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図11】図10に示した第3の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図16】本発明の第7の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図18】本発明の第8の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0066】
20…イヤホン、40…外耳道特性補正装置、42…選択部、44…電気/音響変換部、46…制御部、70…補正部、72…補正フィルタ、74…測定信号生成部、80…補正量算出部、82…外耳道特性取得部、84…補正係数算出部。
【技術分野】
【0001】
本発明は音源信号が供給される被測定対象、例えば受聴者の外耳道の共鳴特性を測定・補正する音響特性測定装置、音響特性補正装置、音響特性測定方法および音響特性補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンまたはヘッドホン(以下、両者をイヤホンと総称する)で音楽を聴取する際、外耳道がイヤホンで塞がれることにより鼓膜とイヤホンとの間で共鳴現象が生じ、共鳴周波数の音が強調され、不自然な音が受聴されることがある。そこで、外耳道内の共鳴特性を測定し、音源信号受聴時に外耳道共鳴特性を補正することが望ましい。
【0003】
外耳道の形状や音響伝達特性、鼓膜の物性や音響伝達特性には個人差がある。さらに、イヤホンの種類やイヤホンの装着状態によって外耳道内の共鳴は人によって様々である。そのため、外耳道内の共鳴を正確に補正するには外耳道特性の個人別補正が必要となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には両耳ヘッドホンや両耳イヤホンといった両耳に接する音響機器を用いて、音源として知覚する位置(音像)を頭の外に知覚させる頭外音像定位装置が開示されている。音源信号がディジタルフィルタを介してイヤホンに供給される。ディジタルフィルタの伝達関数(頭外音像定位伝達関数)SLTFを計算機によって求めることができるが、外耳道伝達関数ECTFと頭部音響伝達関数HRTF(なお、SLTFはHRTF/ECTFに略等しい)は、受聴者の外耳道の大きさ、耳の大きさ、更に顔の大きさによってそれぞれ異なる。すなわち、個人の顔の形状に合致した伝達関数でないと、頭の外に正確な音像が定位せず、音像の前後判定ができなくなったり、頭外定位しなくなる。
【0005】
このため、伝達関数の個人差によって頭外定位しないのでは不特定多数の受聴者に対して汎用的に利用できないので、前もって測定した数種の伝達関数を選択させるようなハード的な解決手法、または個人毎に伝達関数を測定できるシステムが必要となる。しかし、前述したハード的な解決手法ではハード量の増加を生み、また個人毎に伝達関数を測定できるシステムを用いる手法では、このような測定システムが非常に高価であるという問題があった。
【0006】
そのため、特許文献1ではイヤホンからマイク出力までの伝達関数である外耳道伝達関数の逆関数を求めるための適応フィルタを設け、音源信号をディジタルフィルタを介して音源信号を適応フィルタに与える。一方、外耳道伝達関数と適応フィルタの逆伝達関数との積がフィルタ特性となるよう構成された帯域フィルタがディジタルフィルタの出力に接続される。適応フィルタの出力がイヤホンに与えられる。イヤホンの出力を収音するマイクの出力と、帯域フィルタの出力とは減算器で減算され、この結果が収束演算回路に供給され、減算結果に基づき適応フィルタの逆伝達関数が収束される。
【0007】
特許文献1に記載の装置は、受聴者の外耳道の音響特性を測定するためにイヤホン以外にマイクを必要とし、イヤホンにマイクが取り付けられている。このため、イヤホンが大型化したり、構造が複雑になってしまう。
【特許文献1】特開2001−285998号公報(段落0012、段落0013、段落0014)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の外耳道共鳴特性の測定にはマイクをイヤホンに装着する必要があるため、イヤホン自体が大型化・複雑化し、簡単には受聴者の外耳道の正確な音響特性を測定することができず、正確な音響特性を取得し、正確な補正を行うことが出来なかった。
【0009】
本発明の目的は、被測定対象毎の音響特性を正確に、かつ簡単な構造で測定できる音響特性測定装置、音響特性測定方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、被測定対象毎の音響特性を正確に、かつ簡単な構造で補正することができる音響特性補正装置、および音響特性補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による音響特性補正装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記補正部から出力された前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
外耳道特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記補正部と前記補正量算出部とを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様による音響特性補正装置は、
音響信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時は前記補正部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記補正量算出部に出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を前記電気/音響変換部に出力する選択部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記選択部の切替えを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様による音響特性補正方法は、音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得し、前記音響特性から補正フィルタの補正係数を算出し、
前記音源信号の供給時には、音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を被測定対象に出力することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様による音響特性測定装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記測定信号生成部からの前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様による音響特性測定装置は、
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
前記測定信号生成部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記音響特性取得部に出力する選択部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様による音響特性補正方法は、音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の態様によれば、音源信号を音響信号に変換する電気/音響変換部を用いて測定用基準信号に対する被測定対象からの応答音響信号を応答電気信号に変換して、該電気信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得結果に応じて音源信号の補正フィルタの補正係数を算出することにより、電気/音響変換部が大型化・複雑化することなく、被測定対象の音響特性を簡単な構造で正確に測定、補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明による音響特性測定装置、音響特性補正装置、音響特性測定方法および音響特性補正方法の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における音響伝達特性としての外耳道共鳴特性の補正の概念を示す図である。受聴者の外耳道の端部がイヤホン20で塞がれ、外耳道の外部に外耳道特性補正装置40が配置され、両者が電気的に接続される。外耳道は左右夫々特性が異なるので、図示していないが、左右夫々のイヤホンに外耳道特性補正装置40が接続され、特性は左右夫々補正される。
【0020】
図2は外耳道特性補正装置40の構成例を示す図である。外耳道特性補正装置40は補正部70、補正量算出部80、選択部42、制御部46、電気/音響変換部44からなる。受聴者60は外耳道62と鼓膜64からなる。
【0021】
電気/音響変換部44は図1に示すように外耳道62の端部を塞ぐイヤホン20、あるいはヘッドホンであり、選択部42から出力された電気信号を音響信号に変換して受聴者の外耳道62内に出力するとともに、外耳道62に出力され、鼓膜64で反射され戻ってきた音響信号を電気信号に変換して、選択部42に出力する。
【0022】
外耳道62はイヤホン(電気/音響変換部44)で塞がれているので、電気/音響変換部44から外耳道62に出力された音響信号は共鳴して受聴される。外耳道特性補正装置40はこの共鳴周波数を検出して、イヤホンから外耳道60へ出力される音源信号に応じた音響信号の周波数特性を補正する(共鳴周波数の利得を下げる)ものである。
【0023】
選択部42は制御部46の制御の下、第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときは補正部70と電気/音響変換部44とを接続し、補正部70の出力である電気信号を電気/音響変換部42を介して音響信号として外耳道62へ出力し、第2状態のときは補正量算出部80と電気/音響変換部44とを接続し、電気/音響変換部44の出力である電気信号を補正量算出部80へ出力する。選択部42の選択動作を図4に示す。制御部46は図4(c)に示すような切替信号を選択部42に供給する。選択部42は切替信号がハイレベルのときは第1状態に設定され、切替信号がローレベルのときは第2状態に設定される。なお、図示していないが、音源信号の受聴時には選択部42は第1状態に設定される。
【0024】
補正部70は外耳道62の音響特性(共鳴周波数)を測定するための測定用基準信号である所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルス(Time Stretched Pulse:以下TSPと称する)を生成する測定信号生成部74と、受聴者60に受聴される音源信号を補正する補正フィルタ72とを備える。
【0025】
本補正装置40は音響特性測定モードと音源信号補正(音源信号受聴)モードとに切替えられ、音響特性測定モードの時には補正部70からは測定信号生成部74の出力が出力され、音源信号補正モード時には補正フィルタ72の出力が出力される。図4は音源信号補正モード時の選択部42の切替え動作を示す。音響特性測定モード時は、測定用基準信号である所定幅以内の単位パルスあるいはTSPが選択部42を介して電気/音響変換部44に供給され、そこで音響信号に変換され外耳道62に出力される。この後、図4(c)に示すように選択部42が補正量算出部80側に切替えられ、鼓膜64で反射された音響信号(応答信号)が電気/音響変換部44で再び電気信号に変換され、この電気信号(応答信号)が補正量算出部80に入力される。
【0026】
補正量算出部80はこの応答信号を受信し、外耳道62の音響特性(共鳴周波数)を取得する外耳道特性取得部82と、外耳道特性取得部82で取得した音響特性に基づき、補正フィルタ72の補正係数を算出する補正係数算出部84とを備える。
【0027】
制御部46は音響特性測定モードと音源信号補正モードとに応じて補正部70を制御すると共に、上述したように第1状態、第2状態に応じて選択部42を切替え制御する。
【0028】
図3は図2の外耳道特性補正装置40の制御部46の動作を示すフローチャートである。初期状態では、動作モードは音響特性測定モードに設定されている。ブロック102で受聴者60の外耳道特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されているか否か判定される。設定されている場合は、ブロック116で音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否か判定される。否の場合は終了する。
【0029】
ブロック102で受聴者60の外耳道特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されていない場合は、ブロック104で補正部70において測定信号生成部74の出力が選択される。そのため、測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック106で補正部70の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック108では、鼓膜64で反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0030】
ブロック110で外耳道特性取得部82は受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック112で補正係数算出部84は(1)取得した外耳道共鳴特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。ブロック114で補正係数が補正フィルタ72に設定される。その後、ブロック116が実施され、動作モードが音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否かを判定する。
【0031】
ブロック116で音源信号補正(音源信号受聴)モードであると判定されると、ブロック118で補正部70において補正フィルタ72の出力が選択される。そのため、補正フィルタ72によるフィルタリング処理が施された音源信号が選択部42に供給される。このとき選択部42は第1状態に設定されおり、共鳴特性補正後の音源信号が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。
【0032】
このように各人の外耳道において実際に測定した共鳴のピークを打ち消すようなフィルタを作成し、左右の音源信号をフィルタリング処理することにより、外耳道で共鳴が発生したとしても、図7に示した共鳴のピークが平滑化され、不自然な音が受聴されることが防止される。しかも、マイクをイヤホンに取り付けていないので、イヤホンが大型化したり、構造が複雑になってしまうこともない。
【0033】
上述の説明では測定用基準信号を1回出力し、その応答信号に基づいて外耳道特性を取得したが、イヤホンはマイクに比べると感度が低いので、応答信号のレベルが低下し雑音に埋もれてしまい、音響特性を測定できないことがある。その場合は、図5に示すように、選択部42を複数回切り換えて測定用基準信号を複数回出力し、音響特性の取得を複数回繰り返し、複数の応答信号の平均を求めることにより、雑音の影響を除いた正確な音響特性を測定することが出来る。
【0034】
鼓膜付近で収音した周波数特性と、鼓膜ではない位置(イヤホン付近)で収音した周波数特性の共鳴周波数は一致することを図6、図7を用いて説明する。図6は擬似外耳道を用いた実験概要を示した図である。擬似外耳道22は人間の外耳道を模擬した円筒形の筒である。実験は擬似外耳道22の両端に鼓膜マイク26とイヤホン20を装着して行った。イヤホン20から所定幅以内の単位パルスあるいはTSPを出力し、イヤホン20と鼓膜マイク26とで収音し、その周波数スペクトルを比較した。
【0035】
図7は本実験で取得した鼓膜マイクとイヤホンの周波数特性を示した図である。このようにイヤホンで取得した特性は定在波の節となるところで谷(dip)が生じるが、共鳴のピークが発生する周波数(7.5KHz付近と15KHz付近)は鼓膜マイクで取得した特性とほぼ一致する。そのため、イヤホン20で測定した周波数特性はイヤホン20の設置位置に応じて変化するので、取得した周波数特性の逆フィルタを作っても正しい逆フィルタを作ることができず、共鳴現象を正確にキャンセルすることが困難である。しかし、共鳴周波数は正しいので、これだけを使って補正すれば、共鳴現象を正しくキャンセルすることが可能である。
【0036】
図8は図12の補正装置40の実装例を示す。オーディオプレーヤ90に内蔵する場合、プレーヤ90本体に限らず、リモコン92、イヤホン94に内蔵してもよい。また、補正装置40を全体としてオーディオプレーヤ90に内蔵する代わりに、補正フィルタ72のみを内蔵してもよい。すなわち、測定用基準信号の生成から外耳道特定の測定、補正係数の算出までを別途のPC等で行い、オーディオプレーヤ90は求められた補正係数がセットされた補正フィルタ72を用いて図示せぬフラッシュメモリ、ハードディスク等から読み出された音源信号を補正するだけでもよい。あるいは、プレーヤ90に内蔵する場合は、音源信号をダウンロードする際に補正して、補正後の音源信号をメモリ等に記憶することも可能である。
【0037】
なお、上述の説明は左右両方のイヤホンにマイクを装着して、左耳及び右耳の特性を取得しそれぞれの補正フィルタを作成するものであったが、片耳だけの特性を取得し、その特性を用いて作成した補正フィルタを用いて両耳の音源信号をフィルタリングする構成でも良い。
【0038】
イヤホンの位置に応じて共鳴特性も変化することが考えられるので、補正装置40による音響特性測定、音響特性補正処理は、例えばオーディオプレーヤ90を起動するたびに行うものであっても良いし、ユーザが任意に操作することで行うものであっても良いし、ユーザが設定した期間を超えた後に起動したときに行われるものであっても良い。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、選択部42を介して測定用基準信号を電気/音響変換部44へ供給し音響信号を音声出力し、鼓膜で反射した音声信号を電気/音響変換部44で電気信号に変換し選択部42を介して補正量算出部80へ供給する。これにより、外耳道の共鳴周波数を取得し、共鳴周波数をキャンセルするような補正フィルタ72の補正係数を算出することにより、イヤホン付近にマイクを設置することなく簡単な構成で各人の外耳道音響特性の共鳴現象を正確に打ち消すことができる。さらに、個人別にイヤホンと鼓膜で生じる共鳴特性を取得し、その特性に合わせた補正フィルタを作成することにより、個人毎の外耳道特性や挿入状態によって異なる外耳道共鳴特性をキャンセルできる。左右両方の特性を取得して、それぞれの特性毎に補正フィルタを作成することにより、左右の耳で異なる外耳道共鳴特性をキャンセルできる。
【0040】
以下、本発明の他の実施の形態を説明する。他の実施の形態の説明において第1の実施の形態と同一部分は同一参照数字を付してその詳細な説明は省略する。
【0041】
図9は第2実施形態の外耳道特性補正装置40Aのブロック図である。第2実施形態の外耳道特性補正装置40Aは第1実施形態の外耳道特性補正装置40から選択部42を取り除いたものである。このため、補正部70の出力が電気/音響変換部44に供給されると共に、補正量算出部80にも供給される。しかし、動作タイミングを制御する制御部46は図4に示す切替え信号がハイレベル相当の期間(補正部70から測定用基準信号が出力される期間)であるか、ローレベル相当の期間(外耳道62からの応答信号の受信期間)であるかを認識しているので、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号ではなく、電気/音響変換部44から出力された応答信号に正しく基づき外耳道特性を取得することができる。
【0042】
このように第2実施形態によれば、選択部42を必要とせずに、測定用基準信号に対する応答信号を正しいタイミングで外耳道特性取得部82に入力することができ、外耳道特性を正しく取得することができる。
【0043】
図10は第3実施形態の外耳道特性測定装置41のブロック図である。第3実施形態の外耳道特性測定装置41は第1実施形態の外耳道特性補正装置40から補正フィルタ72を取り除いたものである。
【0044】
図11は図10の外耳道特性測定装置41の制御部46の動作を示すフローチャートである。ブロック122で測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック124で測定信号生成部74の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック126では、鼓膜64で反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0045】
ブロック128で外耳道特性取得部82は受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック130で補正係数算出部84は(1)取得した外耳道共鳴特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。
【0046】
算出された補正係数は別途設けられた補正装置の補正フィルタにセットされる。
【0047】
これにより、共鳴特性を測定し補正フィルタの補正係数を算出するまでの測定装置と、算出された補正係数がセットされ音源信号をフィルタリングする補正装置とを別体として構成することもできる。
【0048】
なお、測定装置41は補正係数算出部84を含まなくても良い。この場合、図11のフローチャートはブロック128の外耳道共鳴特性の取得までを行い、ブロック130の補正係数の算出は他の装置に含まれる補正係数算出部で行う。
【0049】
図12は第4実施形態の外耳道特性測定装置41Aのブロック図である。第4実施形態の外耳道特性測定装置41Aは第3実施形態の外耳道特性測定装置41から選択部42を取り除いたものである。第2実施形態と同様に第4実施形態でも、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は測定信号生成部74から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は電気/音響変換部44からの応答信号を正しく受信して、外耳道共鳴特性を正しく取得することができる。
【0050】
第3実施形態と同様に測定装置41Aは補正係数算出部84を含まなくても良い。
【0051】
上述の実施形態は被測定対象を受聴者の外耳道共鳴特性としたが、以下、これに限らない実施形態を説明する。
【0052】
図13は受聴者60に代わり被測定対象61に関する第5実施形態の音響伝達特性補正装置39の構成例を示す図である。音響伝達関数補正装置39は第1実施形態の外耳道特性補正装置40と略同じであるが、外耳道特性取得部82の代わりに音響伝達特性取得部82Aが設けられている。 図14は図13の音響伝達特性補正装置39の制御部46の動作を示すフローチャートである。初期状態では、動作モードは音響特性測定モードに設定されている。ブロック142で被測定対象61の音響伝達特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されているか否か判定される。設定されている場合は、ブロック156で音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否か判定される。否の場合は終了する。
【0053】
ブロック142で被測定対象61の音響伝達特性に応じた補正係数が補正フィルタ72に設定されていない場合は、ブロック144で補正部70において測定信号生成部74の出力が選択される。そのため、測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック146で補正部70の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として被測定対象61内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック148では、被測定対象61のいずれかで反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0054】
ブロック150で音響伝達特性取得部82Aは受信した応答信号に応じて外耳道共鳴特性を取得する。ブロック152で補正係数算出部84は(1)取得した音響伝達特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。ブロック154で補正係数が補正フィルタ72に設定される。その後、ブロック156が実施され、動作モードが音源信号補正(音源信号受聴)モードであるか否かを判定する。
【0055】
ブロック156で音源信号補正(音源信号受聴)モードであると判定されると、ブロック158で補正部70において補正フィルタ72の出力が選択される。そのため、補正フィルタ72によるフィルタリング処理が施された音源信号が選択部42に供給される。このとき選択部42は第1状態に設定されおり、音響伝達特性補正後の音源信号が電気/音響変換部44を介して音響信号として被測定対象61に出力される。
【0056】
図15は第6実施形態の音響伝達特性補正装置39Aのブロック図である。第6実施形態の補正装置39Aは第5実施形態の補正装置39から選択部42を取り除いたものである。このため、補正部70の出力が電気/音響変換部44に供給されると共に、補正量算出部80にも供給される。しかし、第2実施形態と同様に、動作タイミングを制御する制御部46は図4に示す切替え信号がハイレベル相当の期間(補正部70から測定用基準信号が出力される期間)であるか、ローレベル相当の期間(外耳道62からの応答信号の受信期間)であるかを認識しているので、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する鼓膜64からの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は補正部70から出力された測定用基準信号ではなく、電気/音響変換部44から出力された応答信号に正しく基づき音響伝達特性を取得することができる。
【0057】
図16は第7実施形態の音響伝達特性測定装置38のブロック図である。第7実施形態の測定装置38は第5実施形態の補正装置39から補正フィルタ72を取り除いたものである。
【0058】
図17は図16の音響伝達特性測定装置38の制御部46の動作を示すフローチャートである。ブロック172で測定信号生成部74から測定用基準信号が発生され、選択部42に供給される。このとき選択部42は図4(c)に示すように第1状態に設定されおり、ブロック174で測定信号生成部74の出力(測定用基準信号)(図4(a))が電気/音響変換部44を介して音響信号として外耳道62内に出力される。図4(c)に示すように選択部42はこの後第2状態に切り替えられ、ブロック176では、被測定対象60Aのいずれかで反射された測定用基準信号に対する音響信号の反射信号である応答信号(図4(b))が電気/音響変換部44で電気信号に変換され、補正量算出部80に入力される。
【0059】
ブロック178で音響伝達特性取得部82Aは受信した応答信号に応じて音響伝達特性を取得する。ブロック180で補正係数算出部84は(1)取得した音響伝達特性を時間領域から周波数領域へ変換し、(2)周波数軸上で共鳴のピークを検出し、(3)検出したピークを打ち消すためにピークが生じている周波数で谷ができるような補正フィルタの係数を演算する。補正係数の演算は、パラメトリックイコライザやグラフィックイコライザを用いて行うことができる。
【0060】
算出された補正係数は別途設けられた補正装置の補正フィルタにセットされる。
【0061】
これにより、共鳴特性を測定し補正フィルタの補正係数を算出するまでの測定装置と、算出された補正係数がセットされ音源信号をフィルタリングする補正装置とを別体として構成することもできる。
【0062】
なお、測定装置38Aは補正係数算出部84を含まなくても良い。この場合、図17のフローチャートはブロック178の外耳道共鳴特性の取得までを行い、ブロック180の補正係数の算出は他の装置に含まれる補正係数算出部で行う。
【0063】
図18は第8実施形態の音響伝達特性測定装置38Aのブロック図である。第8実施形態の測定装置38Aは第7実施形態の測定装置38から選択部42を取り除いたものである。第4実施形態と同様に第8実施形態でも、制御部46からの信号に基づき補正量算出部80は測定信号生成部74から出力された測定用基準信号と、該基準信号に対する被測定対象60Aからの反射信号である応答信号とを時系列で分離し、補正量算出部80は電気/音響変換部44からの応答信号を正しく受信して、音響伝達特性を正しく取得することができる。
【0064】
この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。例えば、図5に示した測定用基準信号の複数回の送信による複数の応答信号を平均して被測定対象の音響特性を取得する処理は全ての実施形態に適用可能である。また、本発明は、コンピュータに所定の手段を実行させるため、コンピュータを所定の手段として機能させるため、あるいはコンピュータに所定の機能を実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体としても実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る外耳道特性補正の概念を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る外耳道特性補正装置40の一構成例を示すブロック図。
【図3】図2に示した外耳道特性補正装置40の動作の一例を示すフローチャート。
【図4】図2に示した外耳道特性補正装置40の選択部42の切替え動作の一例を示す図。
【図5】図2に示した外耳道特性補正装置40の選択部42の切替え動作の変形例を示す図。
【図6】鼓膜付近とイヤホン付近で収音した外耳道の周波数特性が一致することを示す実験に用いられる擬似外耳道を示す図。
【図7】実験結果を示す周波数特性を示す図。
【図8】本実施形態の実装例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図11】図10に示した第3の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図16】本発明の第7の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る外耳道特性補正装置の動作例を示すフローチャート。
【図18】本発明の第8の実施形態に係る外耳道特性補正装置の構成例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0066】
20…イヤホン、40…外耳道特性補正装置、42…選択部、44…電気/音響変換部、46…制御部、70…補正部、72…補正フィルタ、74…測定信号生成部、80…補正量算出部、82…外耳道特性取得部、84…補正係数算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記補正部から出力された前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記補正部と前記補正量算出部とを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする音響特性補正装置。
【請求項2】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の音響特性補正装置。
【請求項3】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項2記載の音響特性補正装置。
【請求項4】
前記補正部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記補正量算出部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得した前記音響特性に基づいて前記補正フィルタの補正係数を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項5】
音響信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時は前記補正部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記補正量算出部に出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を前記電気/音響変換部に出力する選択部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記選択部の切替えを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする音響特性補正装置。
【請求項6】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項5記載の音響特性補正装置。
【請求項7】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項6記載の音響特性補正装置。
【請求項8】
前記補正部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記補正量算出部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得した前記音響特性に基づいて前記補正フィルタの補正係数を算出することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項9】
前記選択部は第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときに前記補正部と前記電気/音響変換部とを接続し、第2状態のときに前記補正量算出部入力と前記電気/音響変換部とを接続するスイッチであることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項10】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得し、前記音響特性から補正フィルタの補正係数を算出し、
前記音源信号の供給時には、音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を被測定対象に出力することを特徴とする音響特性補正方法。
【請求項11】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記測定信号生成部からの前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
を備えたことを特徴とする音響特性測定装置。
【請求項12】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項11記載の音響特性測定装置。
【請求項13】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項12記載の音響特性測定装置。
【請求項14】
前記測定信号生成部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記音響特性取得部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一項記載の音響特性測定装置。
【請求項15】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
前記測定信号生成部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記音響特性取得部に出力する選択部と、
を備えたことを特徴とする音響特性測定装置。
【請求項16】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項15記載の音響特性測定装置。
【請求項17】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項16記載の音響特性測定装置。
【請求項18】
前記測定信号生成部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記音響特性取得部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする請求項15乃至請求項17記載の音響特性測定装置。
【請求項19】
前記選択部は第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときに前記補正部と前記電気/音響変換部とを接続し、第2状態のときに前記音響特性取得部入力と前記電気/音響変換部とを接続するスイッチであることを特徴とする請求項15乃至請求項18のいずれか一項記載の音響特性測定装置。
【請求項20】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする音響特性測定方法。
【請求項1】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記補正部から出力された前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記補正部と前記補正量算出部とを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする音響特性補正装置。
【請求項2】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の音響特性補正装置。
【請求項3】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項2記載の音響特性補正装置。
【請求項4】
前記補正部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記補正量算出部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得した前記音響特性に基づいて前記補正フィルタの補正係数を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項5】
音響信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、前記被測定対象に供給される音源信号を補正する補正フィルタとを備え、音響特性測定時には前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を出力する補正部と、
音響特性測定時に、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、前記音響特性取得部で取得した音響特性に基づき、前記補正フィルタの補正係数を算出する補正係数算出部とを備える補正量算出部と、
電気信号である前記補正部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記補正量算出部に出力する電気/音響変換部と、
音響特性測定時は前記補正部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記補正量算出部に出力し、音源信号供給時には音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を前記電気/音響変換部に出力する選択部と、
音響特性測定時、あるいは音源信号供給時に応じて前記選択部の切替えを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする音響特性補正装置。
【請求項6】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項5記載の音響特性補正装置。
【請求項7】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項6記載の音響特性補正装置。
【請求項8】
前記補正部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記補正量算出部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得し、取得した前記音響特性に基づいて前記補正フィルタの補正係数を算出することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項9】
前記選択部は第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときに前記補正部と前記電気/音響変換部とを接続し、第2状態のときに前記補正量算出部入力と前記電気/音響変換部とを接続するスイッチであることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項記載の音響特性補正装置。
【請求項10】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得し、前記音響特性から補正フィルタの補正係数を算出し、
前記音源信号の供給時には、音源信号に前記補正フィルタをフィルタリングした信号を被測定対象に出力することを特徴とする音響特性補正方法。
【請求項11】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記測定信号生成部からの前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスと、前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号とを時系列で分離し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
を備えたことを特徴とする音響特性測定装置。
【請求項12】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項11記載の音響特性測定装置。
【請求項13】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項12記載の音響特性測定装置。
【請求項14】
前記測定信号生成部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記音響特性取得部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一項記載の音響特性測定装置。
【請求項15】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性を測定するための所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを生成する測定信号生成部と、
前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスに対する被測定対象からの応答信号を受信し、前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得する音響特性取得部と、
電気信号である前記測定信号生成部の出力を音響信号に変換して被測定対象に出力するとともに、音響信号である被測定対象からの前記応答信号を電気信号に変換して前記音響特性取得部に出力する電気/音響変換部と、
前記測定信号生成部から出力される前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを前記電気/音響変換部に出力した後に、前記電気/音響変換部から出力される被測定対象からの前記応答信号を前記音響特性取得部に出力する選択部と、
を備えたことを特徴とする音響特性測定装置。
【請求項16】
前記電気/音響変換部はイヤホン、ヘッドホンのいずれかであることを特徴とする請求項15記載の音響特性測定装置。
【請求項17】
前記被測定対象は人の外耳道であり、前記音響特性はイヤホン、ヘッドホンのいずれかで塞がれた外耳道内の共鳴特性である請求項16記載の音響特性測定装置。
【請求項18】
前記測定信号生成部は前記所定幅以内の単位パルスあるいはタイムストレッチトパルスを複数回出力し、前記音響特性取得部は前記電気/音響変換部から出力される複数の前記応答信号から被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする請求項15乃至請求項17記載の音響特性測定装置。
【請求項19】
前記選択部は第1状態、第2状態の何れかに設定され、第1状態のときに前記補正部と前記電気/音響変換部とを接続し、第2状態のときに前記音響特性取得部入力と前記電気/音響変換部とを接続するスイッチであることを特徴とする請求項15乃至請求項18のいずれか一項記載の音響特性測定装置。
【請求項20】
音源信号が供給される被測定対象の音響特性測定時に、電気信号である測定用基準信号を生成し、前記測定用基準信号を電気/音響変換部で音響信号に変換して被測定対象に出力した後に、前記測定用基準信号に対する被測定対象からの応答信号を前記電気/音響変換部で音響信号に変換して受信し、受信した前記応答信号から前記被測定対象の音響特性を取得することを特徴とする音響特性測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−288555(P2009−288555A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141479(P2008−141479)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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