説明

頚部カラー

【課題】患者の体型や患部の状態に併せて形状を自在に変えることができる頚部カラーを提供する。
【解決手段】カラー本体2の内部に所定の弾力性を有するクッション材3を備え、クッション材3を頚部の体幹軸に沿った両端3a,3bを同一面側に折り曲げてC字状に形成して、両端3a,3bの位置をずらして高さや硬さを調節可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頚部を損傷した際に用いられる頚部カラーに関し、さらに詳しく言えば、患者の体型や患部の状態に合わせて形状や硬さを変えることができる頚部カラーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、頚部カラーは、頚部を損傷した際に頚部を保護するために頚部に巻かれる帯状のカラー本体と、同カラー本体を首に巻いた状態で固定する固定ベルトとを備えている。カラー本体は、プラスチック板などからなる芯材を備え、その周囲をスポンジなどのクッション材で覆ったものからなる。
【0003】
この種の頚部カラーは、強度を持続させるため樹脂材を支持体にしたり、軟性素材を用いた場合は板厚を厚くしてボリュームを増やすなどしていた。とりわけ、小児患者などに大人用の頚部カラーを用いた場合には、サイズが異なるばかりでなく、硬すぎてしまい、痛みを伴う場合が多かった。
【0004】
そこで、従来では、小児用などサイズを小さくするために、現場でカラーを分解して、芯材を柔軟なものに変えたり、頚部とカラーとの間にクッション材をさらに介在させるなどして対応していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−25480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、患者の体型や患部の状態に併せて形状を自在に変えることができる頚部カラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、頚部に沿って巻回されるカラー本体と、上記カラー本体を頚部に巻いた状態で固定する固定手段とを有する頚部カラーにおいて、上記カラー本体は、所定の弾力性を有する帯状のクッション材と、上記クッション材を覆うカバー部材とを有し、上記クッション材は、上記頚部の体幹軸に沿った少なくとも一端が、上記体幹軸に沿って折り返されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、互いに同一面側に折り返されるC字状に形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1において、上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、互いに反対面側に折り返されるS字状に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1において、上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、同方向に折り返されるU字状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1ないし4のいずれか1項において、上記クッション材は、その内部が中空であることを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、上記請求項5において、上記クッション材の中空部には、芯材がさらに充填されていることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、上記請求項1ないし6のいずれか1項において、上記カバー部材の一部には、上記クッション材の形状を変えたり、上記芯材を着脱するための開口部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、上記請求項1ないし7のいずれか1項において、上記クッション材は、電熱線加工またはレーザー加工によって上記クッション材のバルク材から所定の形状に切り出したものからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、クッション材の一部を折り重なるようにして配置したことにより、折り重ね部分の長さを変えることができ、首の形状に合わせてカラーの高さおよび硬さを自在に変えることができる。
【0016】
請求項2〜4に記載の発明によれば、クッション材の断面をC字状、U字状ないしS字状のいずれかとしたことにより、クッション材の重なる部分を動かすことで、その高さを微調節することができ、患部や体型に合わせて自在にフィットさせることができる。
【0017】
請求項5および6に記載の発明によれば、クッション材の内部を中空とし、その中空部内に芯材を充填したことにより、軽量かつ柔軟化したい場合は、クッション材を中空のまま用いればよいし、中空部内に芯材を入れることで、カラー本体をより強固にすることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、カバー部材の一部に開口部を設けたことにより、開口部からクッション材を手で直接触れることができ、より簡単に調節することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、電熱線加工またはレーザー加工を用いてクッション材のバルク材から所定の形状に切り出すことにより、より複雑な形状を簡単に作ることができるばかりでなく、1枚のクッション材を折り曲げて形成した場合に比べて、物理的な特性も良好となる。また、あらかじめ歪みを与えながら切り出すことにより、3次元の曲線で構成された意匠も製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る頚部カラーの(a)正面図および(b)背面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】クッション材の斜視図。
【図4】(a)クッション材の通常状態の模式図、(b)クッション材を変形させた状態の模式図。
【図5】(a)クッション材をU字状に形成した場合の模式図,(b)クッション材をS字状に形成した場合の模式図。
【図6】(a)〜(d)充填材の使用形態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこの限りではない。
【0022】
図1(a),(b)に示すように、この頚部カラー1は、図示しない頚部(首)を中心に巻回される帯状のカラー本体2を備えている。カラー本体2は、内部にクッション材3を有し、その外表面にはカバー部材4が取り付けられている。
【0023】
図2および図3を参照して、クッション材3は、例えばウレタンなどの発泡体からなり、頚部の体幹軸方向(図2では上下方向)の両端の一部が互いに折り重なるように配置されている。
【0024】
この例において、クッション材3は、ウレタン発泡体からなるが、例えば低反発ポリウレタンなどであってもよいし、高反発ポリウレタンフォームなどであってもよい。クッション材3は、適度な弾力性とクッション性を備えていれば、その材質は仕様に応じて適宜選択されてよい。
【0025】
クッション材3は、その体幹軸に沿った両端3a,3bが同一面側に折り曲げられるC字状に形成されており、その内部には、中空部3cが形成されている。この例において、クッション材3は、1枚の板状に形成された原板をワイヤー加工によって、角を面取りし、さらに中空部3cとをくり抜くことでC字状に形成されている。
【0026】
この例において、クッション材3は、電熱線加工によって成形されているが、例えばモールド成形などによって成形されてもよいし、三次元加工(プロファイル加工)によって、例えば波形やコイル形などより複雑な形状に形成されてもよい。さらには、1枚のシート状のクッション材3の両端を折り曲げて形成してもよい。
【0027】
従来の型抜き加工では裁断された角が残存し、頚部の接触面を配慮するために、パフ加工や面取り加工の必要性があった。この例においては、電熱線加工またはレーザー加工によって二次加工が不要となる。
【0028】
これによれば、図4(a)に示すように、通常状態では、カラー本体2は、その高さがh1であるが、図4(b)に示すように、クッション材3の端部3aをさらに内側に折り重なるように変形させることで、高さをh2と低くすることができる。すなわち、クッション材折り畳み量を変えるだけで、簡単に高さを調節することができる。
【0029】
この例において、クッション材3は、体幹軸に沿った両端が互いに同一面側に折り畳まれるC字状に形成されている。これ以外の形状として、例えば図5(a)に示すように、体幹軸に沿った両端を同方向に折り曲げるU字状(またはJ字状)に形成されてもよい。
【0030】
また、図5(b)に示すように、体幹軸に沿った両端を反対面側に折り曲げるS字状に形成されてもよい。これによっても、両端をさらに折り曲げたり、位置をずらすことで、クッション特性や、カラーの高さを変えることができる。このような態様も本発明に含まれる。
【0031】
この例において、クッション材3の内部は中空に形成されているが、中空部3c内にさらに充填材を充填してもよい。すなわち、図6(a)に示すように、このクッション材3には、中空部3c内に充填材5aが充填されている。
【0032】
充填材5aとして、クッション材3よりも硬質な発泡部材などが用いられる。これ以外に、プラスチックなどの板体などであってもよいし、水やジェルなどが入ったバックを入れてもよい。充填材5aの具体的な材質などは仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0033】
別の態様として、図6(b)に示すように、中空部3cの半分だけ充填材5bを充填する用にしてもよい。さらには、図6(c)に示すように、特性の異なる2種類の充填材5b,5cを上下に分割するように充填してもよい。図6(c)の変形例として、図6(d)に示すように、前後に2種類の充填材5b,5cを配置するようにしてもよい。
【0034】
カバー部材4は、綿メリヤスからなる布製で、適度な伸縮性、吸湿性および通気性を備えている。カバー部材4の具体的な構成は、本発明では任意であり、肌に優しく、蒸れたりしないものであれば、仕様に応じて任意に変更されてよい。
【0035】
カバー本体4には、クッション材3を変形させたり、充填材5を充填したりする際に、手を内部に差し込むための開口部41が設けられている。開口部41は、カバー本体4の長手方向(図1では左右方向)に沿って設けられたスリットからなり、そこから内部に手を挿入することができるようになっている。開口部41は、ファスナーなどで開閉可能であってもよい。
【0036】
カラー本体2には、カラー本体2を首に巻いた状態で固定するための固定手段としての、面ファスナー6a,6bが設けられている。一方の面ファスナー6aは、ループパイルからなるメス型面ファスナーであって、カラー本体2の一端側(図1では右端)からベルト状に形成されている。
【0037】
他方の面ファスナー6bは、一方の面ファスナー6aに対するフックパイルを有するオス型面ファスナーであって、カラー本体2の他端側(図1では左端)に一体的に縫い付けられている。これによれば、カラー本体2を首に巻いた状態で、各面ファスナー6a,6b同士を互いに係着することで、カラー本体2を固定することができる。
【0038】
この例において、固定手段は面ファスナーが用いられているが、カラー本体2を首に巻いた状態で固定することができる構造であれば、仕様に応じて任意に選択されてよい。この実施形態において、頚部カラー1は、小児用を例に取って説明したが、成人用の頚部カラーに本発明を適用してもよく、さらには、動物用の頚部カラーとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 頚部カラー
2 カラー本体
3 クッション材
4 カバー部材
5a〜5d 充填材
6a,6b 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頚部に沿って巻回されるカラー本体と、上記カラー本体を頚部に巻いた状態で固定する固定手段とを有する頚部カラーにおいて、
上記カラー本体は、所定の弾力性を有する帯状のクッション材と、上記クッション材を覆うカバー部材とを有し、上記クッション材は、上記頚部の体幹軸に沿った少なくとも一端が、上記体幹軸に沿って折り曲げられていることを特徴とする頚部カラー。
【請求項2】
上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、互いに同一面側に折り返されるC字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の頚部カラー。
【請求項3】
上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、互いに反対面側に折り返されるS字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の頚部カラー。
【請求項4】
上記クッション材は、上記体幹軸に沿った両端が、同方向に折り返されるU字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の頚部カラー。
【請求項5】
上記クッション材は、その内部が中空であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の頚部カラー。
【請求項6】
上記クッション材の中空部には、芯材がさらに充填されていることを特徴とする請求項5に記載の頚部カラー。
【請求項7】
上記カバー部材の一部には、上記クッション材の形状を変えたり、上記芯材を着脱するための開口部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の頚部カラー。
【請求項8】
上記クッション材は、電熱線加工またはレーザー加工によって上記クッション材のバルク材から所定の形状に切り出したものからなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の頚部カラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−205790(P2012−205790A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73990(P2011−73990)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000150084)株式会社竹虎 (12)
【Fターム(参考)】