説明

頭痛の予防および/または治療剤

【課題】本発明は、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対しても効果的に作用する新規な頭痛の予防および/または治療剤を提供することを課題とする。
【解決手段】甲状腺ホルモンを、甲状腺機能低下症に処方するよりも低い投与量で投与することによる。これにより、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対して、既存の薬剤の効果発現時間の短縮や頭痛発作の回数の軽減、消失等、効果的に頭痛が改善する。また、既存の頭痛の予防および/または治療剤と併用する場合に、既存の薬剤の投与量を軽減化することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として甲状腺ホルモンを含む、頭痛の予防および/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
頭痛とは頭部に感じる深部痛の総称をいい、頭痛はよくある身体的愁訴であり、多くの者が経験する。そのほとんどは片頭痛、群発頭痛および緊張型頭痛で、慢性頭痛の大半は機能性の頭痛で、緊張型頭痛、片頭痛および両者の混合性頭痛が挙げられる。その中には体質的素因に加えて心理・社会的要因が強く影響しているものもある。これら頭痛はストレスや精神的緊張あるいは筋緊張などによって発症する機能性頭痛であり、脳の血行の低下、脳血管の拡張およびその周囲で起こる炎症などが原因と考えられている。
【0003】
疫学調査によると、日本人の約800万人が片頭痛に悩まされているといわれ、男性よりも女性に多くみられる。片頭痛の場合、痛みは数時間から長い場合は数日間続く。片頭痛の正確な発症機序は未だ不明な点が多いが、従来から血管の収縮と拡張が生じて頭痛が起こるとする血管説が考えられてきた。その他にも大脳皮質の血管細胞の過剰興奮による神経説、さらに三叉神経と血管の関係を重視する三叉神経血管説が示されている。これまでの研究から、少なくとも片頭痛の発症には血小板の活性化、血管の収縮や拡張、そして三叉神経からの神経ペプチドの遊離などを介して局所の血管透過性亢進に依存する神経原性炎症が一つの原因になっていると考えられている。
【0004】
また、頭痛の原因として、脳や体の病気が原因となって発症する二次性頭痛が挙げられる。例えば、子供についても片頭痛が生じる場合があるが、二次性頭痛の原因疾患としては、例えば副鼻腔炎、甲状腺機能低下症、脳下垂体腫瘍(ラトケのう胞)、甲状腺機能亢進症などが挙げられる(非特許文献1)が、これらの疾患に認められる頭痛は真に片頭痛とはいえない。
【0005】
頭痛用治療薬は、数多く市販されており、例えばアスピリンやイブプロフェンなどが挙げられる。また片頭痛用治療薬として、軽症ではアスピリン・ナプロキセンなどの NSAIDsを服用し、中等症以上の頭痛や過去に NSAIDs の効果が認められなかった場合にはトリプタン系製剤(イミグラン(R)(グラクソ・スミスクライン株式会社))やエルゴタミン(カフェルゴット(R)(ノバルティスファーマ株式会社))を服用する。しかしながら、頭痛用治療薬については、服用後の効果が得られるレスポンダーと十分な効果が得られない無反応のノンレスポンダーが存在する事が問題となっている。
【0006】
甲状腺ホルモンは、甲状腺の濾胞細胞で産生される。甲状腺ホルモンには、チロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)と2種類が存在する。甲状腺ホルモンは、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺細胞膜のTSH受容体(TSHレセプター)に結合すると、その刺激により甲状腺ホルモン(T4、T3)の合成と分泌が行われる。血中に分泌されたT4およびT3は、脳下垂体に作用し、TSHの分泌を抑制するように作用する。濾胞細胞からはT4のほうがT3より多く血中に分泌され、肝臓や腎臓においてT4はT3へ変換される。血液中のT4とT3は、その殆どが甲状腺ホルモン結合タンパク質と結合した状態で血液中を流れるが、一部が遊離型ホルモン(FT4、FT3)として活性型甲状腺ホルモンとなり、全身で作用する。
【0007】
28000人以上について、甲状腺機能障害と頭痛の関係について分析した報告がある(非特許文献2)。ここでは、多方面から分析した結果、TSHの基準値が0.2〜4mU/Lであるのに対し、TSHが高値(10mU/L以上)の場合は、頭痛は問題にならない程度であったが、頭痛に耐えている者はTSHがやや低い傾向であった。しかし、血中の甲状腺ホルモン量と頭痛の関係については、全く報告されていない。
【0008】
甲状腺ホルモン製剤として、天然物由来の乾燥甲状腺(レチオイド(R)(第一三共株式会社)、乾燥甲状腺(メルク製薬株式会社))などが市販されている。また、合成チロキシンとして、レボチロキシンナトリウム(チラージン(R)(あすか製薬株式会社))も販売されている。これらの甲状腺ホルモン製剤は、甲状腺機能低下症、または甲状腺機能低下症に伴う疾患に適用されてきた。レボチロキシンを含む医薬製剤については報告があるが、頭痛との関係に言及しているものはない(特許文献1、2)。
【非特許文献1】http://kodomo.e-zyosei.com/
【非特許文献2】Eur J Neurol.;8(6), 693-9 (2001)
【特許文献1】特開2002−284679号公報
【特許文献2】特表2006−525234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対しても効果的に作用する新規な頭痛の予防および/または治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために血清遊離型甲状腺ホルモン量と既存の頭痛薬の有効性の関係に着目し、鋭意検討を重ねた結果、遊離型T4がやや低値の場合に、頭痛薬の効果が十分でない場合が認められた。そこで、甲状腺ホルモンを、甲状腺機能低下症に処方するよりも低い投与量で投与した場合に、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対しても効果的に頭痛が改善することが確認された。
【0011】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.有効成分として甲状腺ホルモンを含む、頭痛の予防および/または治療剤。
2.甲状腺ホルモンが、チロキシンである、前項1に記載の予防および/または治療剤。
3.チロキシンが、レボチロキシンナトリウムである、前項2に記載の予防および/または治療剤。
4.有効成分としての甲状腺ホルモンの投与量が、0.5〜5μg/kg/日である、前項1〜3のいずれかに記載の予防および/または治療剤。
5.有効成分としての甲状腺ホルモンの投与量が1〜3μg/kg/日である、前項4に記載の予防および/または治療剤。
6.既存の頭痛用予防および/または治療剤と併用して使用される前項1〜5のいずれか1に記載の予防および/または治療剤。
7.頭痛が、偏頭痛、群発頭痛および/または緊張型頭痛である、前項1〜6のいずれか1に記載の予防および/または治療剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の頭痛の予防および/または治療剤によると、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対して、効果発現時間の短縮や頭痛発作の回数の軽減、消失等、効果的に頭痛が改善される。本発明の頭痛の予防および/または治療剤は、甲状腺ホルモンを有効成分として含むが、頭痛の改善に用いられる予防および/または治療剤は、甲状腺機能低下症に処方する投与量に比べて少ない甲状腺ホルモンの投与量で頭痛の効果が得られる。また、既存の頭痛の予防および/または治療剤と併用する場合に、既存の薬剤の投与量を軽減化することが可能である。甲状腺機能低下症用薬剤として、既に市販されているレボチロキシンナトリウム剤は、乳幼児にも投与可能であることから、乳幼児に対しても安全性の高い頭痛の予防および/または治療剤として利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、有効成分として含有される甲状腺ホルモンは、例えばレボチロキシンおよびそのナトリウム塩、リオチロニンおよびそのナトリウム塩、乾燥甲状腺等が挙げられ、この中でも特にレボチロキシンナトリウムが好適に用いられる。甲状腺ホルモンとしては天然物由来であっても良いし、合成により得られたものであっても良い。例えば、市販されている甲状腺ホルモン剤、具体的には天然物由来の乾燥甲状腺(レチオイド(R)(第一三共株式会社)、乾燥甲状腺(メルク製薬株式会社))や、合成チロキシンであるレボチロキシンナトリウム(チラージン(R)(あすか製薬株式会社))などが挙げられる。これらのうち、天然物由来甲状腺に比べて合成チロキシンの場合は、不純物が少ないことからより効果的に利用可能と考えられる。更に好適には、レボチロキシンナトリウムが乳幼児にも用いられている点で安全性も高く、有効である。
【0014】
本発明の甲状腺ホルモンを有効成分として含む頭痛の予防および/または治療剤は、薬学的に許容されうる無機化合物とともに製剤化することができる。薬学的に許容されうる無機化合物とは、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。本発明においては、これらの無機安定化剤のうち特に、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムまたは合成ケイ酸アルミニウムが挙げられる。これらの化合物は、甲状腺ホルモンの安定化剤として使用することができ、単独または2種類以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の頭痛の予防および/または治療剤には、一般に、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、坐剤等が包含されるが、特に、錠剤、カプセル剤、散剤または顆粒剤が好ましい。これらの製剤において用いることのできる添加剤として、前記の無機安定化剤以外に、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、コーティング剤、矯味剤等が挙げられ、製剤化に際してこれらの添加剤を適宜選択して用いることができる。
【0016】
ここで、賦形剤として、例えば、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、無水リン酸水素カルシウム、デンプン、ショ糖等が挙げられる。
【0017】
崩壊剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、デンプン、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0018】
結合剤として、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン、部分アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0019】
滑沢剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、硬化油等が挙げられる。
【0020】
着色剤として、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タール色素等が挙げられる。
【0021】
コーティング剤としては、例えば、精製白糖,ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0022】
矯味剤として、例えば、クエン酸、アスパルテーム、アスコルビン酸、メントール等が挙げられる。
【0023】
本発明において、有効成分としての甲状腺ホルモンの投与量は、一日あたりの投与量が0.5〜5μg/kgであり、好適には1〜3μg/kgである。例えば乳幼児甲状腺機能低下症の薬剤としてレボチロキシンナトリウムが既に市販されているが、その投与量は乳幼児には10μg/kg/日であり、未熟児には5μg/kg/日である。本発明の頭痛の予防および/または治療剤として用いられる場合は、それらの使用量に比べて、低投与量で使用することができるため、安全である。
【0024】
本発明の頭痛の予防および/または治療剤における頭痛は、特に限定されるものではないが、例えば偏頭痛、群発頭痛および/または緊張型頭痛が挙げられ、特に好適には片頭痛が挙げられる。本発明の頭痛の予防および/または治療剤における頭痛は、特に既存の頭痛用治療薬で服用後に十分な効果が得られない患者の頭痛に好適に用いられる。例えば片頭痛治療薬としてエルゴタミン配合剤が処方されているが、この薬剤は片頭痛が軽いときに内服しないと効果が得られない場合がある。近年では、トリプタン製剤が激しい頭痛に対しても改善効果が認められるようになったもののエレトリプタンとスマトリプタンでは効果が異なっていたり、さらにはこれらの薬剤を処方すると、心疾患様症状が稀に見られるなどの副作用が生じる場合もある。また、効果が認められていた症例でも、効果がなくなったりする現象が認められており、臨床上問題となっている。
【0025】
本発明の頭痛の予防および/または治療剤は、遊離型T4が低く既存の頭痛用治療薬で服用後に十分な効果が得られない患者の頭痛に対して有効である。既存の頭痛用治療薬で効果が認められていた症例でも、効果がなくなったりする現象が認められており、臨床上問題となっている例にも有効である。さらに、TSH値の基準値は0.2〜4mU/Lと認定されているが、これらのうち2mU/L以下の患者に対しても有効であると考えられる。また、遊離型T4やTSHの測定値にかかわらず、既存の頭痛用治療薬で服用後に十分な効果が得られない患者の頭痛に対して有効に使用することができる。
【0026】
後述の実施例でも述べるように、遊離型T4と遊離型T3の値と既存の頭痛用治療薬の有効性との関係について、頭痛用治療薬投与後60分以内に効果が得られるか否かで評価した結果、血清中の遊離型T4が1.08±0.10ng/dlの場合に比べて0.87±0.07ng/dlの場合は有効性が乏しい例が多いことが確認された。遊離型T4の基準値は施設によっても異なるが、本発明者の施設では0.97〜1.7ng/dlと認定されている。上記で確認された有効性が乏しい患者に対して、本発明の甲状腺ホルモンを含む薬剤を投与したところ、頭痛発作の減少または消失が認められた。例えば塩酸ロメリジンで効果が全く認められなかった例では、片頭痛回数が12〜16回/月であったが、本発明の甲状腺ホルモンを含む薬剤を投与したところ、4〜1回/月に軽減した例もある。また、本発明の甲状腺ホルモンを含む薬剤投与後に既存の頭痛用治療薬を処方したところ、既存の頭痛用治療薬の効果が認められるまでに時間が、4分の1以下に短縮される例もある。
【0027】
本発明において、既存の頭痛用予防および/または治療剤とは、既に市販されている頭痛用薬剤または市販を予定している薬剤であればよく、特に限定されないが、例えば片頭痛用薬剤であるトリプタン系製剤、エルゴタミン製剤や塩酸ロメリジン製剤などが挙げられる。また、アスピリンやイブプロフェン等であってもよい。
【0028】
既存の頭痛用予防および/または治療剤のうち、片頭痛予防薬の塩酸ロメリジンは、セロトニン受容体の5−HT2Aに作用し、トリプタン剤は5−HT1B/1Dに作用するといわれている。既存の頭痛用予防および/または治療剤で服用後に十分な効果が得られない原因は十分に解明されていないが、その原因のひとつとして、ストレスや、既存の薬剤の濫用により、これらのセロトニン受容体への感受性が低下していることが挙げられるかもしれない。一方、T3(トリヨードサイロニン)はセロトニンの作用を増強させて、抗うつ薬の作用を増強する事が報告されている(Life Sci.; 58, 1551-9 (1996))。また、T3はセトロニン受容体の5−HT1Bや5−HT2Aに作用することが報告されている(J Neurosci Methods; 140, 133-9 (2004), Neuroendocrinology; 69, 453-9 (1999))。甲状腺ホルモン製剤のうち、例えばレボチロキシンナトリウムは合成T4であり、生体内でT3に変換されることから、変換されたT3がセロトニン受容体に作用し、セロトニン受容体を刺激することで、頭痛の改善をきたしていることも考えられる。しかしながら、甲状腺ホルモンを有効成分として頭痛の予防および/または治療剤として作用する機序については今後の研究が待たれるところである。
【0029】
本発明の頭痛の予防および/または治療剤は、単独で用いても良いし、場合により既存の頭痛用予防および/または治療薬とともに併用して用いても良い。また、本発明は、既存の頭痛用予防および/または治療薬とともに併用する頭痛の予防および/または治療剤も包含される。併用した場合は、既存の頭痛用予防および/または治療薬に対して優れた効果を示すことが期待される他、既存の頭痛用予防および/または治療薬の投与量を軽減化させることも期待できる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0031】
(実施例1)
片頭痛患者77例について、トリプタン系片頭痛治療剤の有効性を、60分以内に効果が現れるか否かで評価し、検討したところ有効例(高反応例)が37例であり、有効性が乏しい例(低・無反応例)が40例であった。これらの患者について、遊離型T4を測定した結果、高反応例の平均値が1.08±0.10ng/dlであったのに対し、低・無反応例の平均値は0.87±0.07ng/dlであり、有意に差が認められた(図1)。一方、遊離型T3についても同様に測定した結果、高反応例の平均値が2.52±0.37pg/mlであったのに対し、低・無反応例の平均値は2.37±0.33pg/mlであり、有意な差は認められなかった(図1)。
【0032】
上記のうち低・無反応例で遊離型T4が低値であった患者29例に対してレボチロキシンナトリウム錠剤のチラージン(R)S25(あすか製薬株式会社製)を0.2〜0.25錠投与したところ、片頭痛発作の減少または消失が認められた。
また、トリプタン系片頭痛治療薬であるイミグラン(R)錠50を通常の処方に従い投与し、有効と認めるまでの時間(効果発現時間)を測定した。その結果、チラージン(R)S25投与前では78.3±17.7分であったのに対し、投与後では61.2±10.7分に有意に減少した(図2)。
【0033】
(実施例2)
片頭痛患者のうち、片頭痛予防薬である塩酸ロメリジン剤に対して効果が全く認められなかった症例(29例)で、片頭痛発作回数が12〜16回/月であったが、チラージン(R)S25(あすか製薬株式会社製)を0.2〜0.25錠投与したところ、片頭痛発作回数は4〜1回/月に減少した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上詳述したように、本発明の頭痛の予防および/または治療剤は、既存の頭痛用治療薬では十分な効果が得られない患者に対しても効果的に頭痛が改善されるので、新規な薬剤として使用可能である。また、既存の頭痛の予防および/または治療剤と併用する場合に、既存の薬剤の投与量を軽減化することが可能である。さらに、甲状腺機能低下症用薬剤として、既に市販されているレボチロキシンナトリウム剤は、乳幼児にも投与可能であることから、乳幼児・妊産婦に対しても安全性の高い頭痛の予防および/または治療剤として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】トリプタン系頭痛治療薬剤の有効性と遊離型甲状腺ホルモン(T3、T4)との関係を示す図である。(実施例1)
【図2】低・無反応例に対して甲状腺ホルモン投与前後のトリプタン系頭痛治療薬剤の効果発現時間を示す図である。(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として甲状腺ホルモンを含む、頭痛の予防および/または治療剤。
【請求項2】
甲状腺ホルモンが、チロキシンである、請求項1に記載の予防および/または治療剤。
【請求項3】
チロキシンが、レボチロキシンナトリウムである、請求項2に記載の予防および/または治療剤。
【請求項4】
有効成分としての甲状腺ホルモンの投与量が、0.5〜5μg/kg/日である、請求項1〜3のいずれかに記載の予防および/または治療剤。
【請求項5】
有効成分としての甲状腺ホルモンの投与量が1〜3μg/kg/日である、請求項4に記載の予防および/または治療剤。
【請求項6】
既存の頭痛用予防および/または治療剤と併用して使用される請求項1〜5のいずれか1に記載の予防および/または治療剤。
【請求項7】
頭痛が、偏頭痛、群発頭痛および/または緊張型頭痛である、請求項1〜6のいずれか1に記載の予防および/または治療剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−84253(P2009−84253A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259398(P2007−259398)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】