説明

頭部保護具

【課題】着用時の見栄えを低下させることがなく、転倒時の頭部に対する衝撃吸収性を高めることができ、しかも通気性に優れた頭部保護具を提供する。
【解決手段】着用者の頭部を覆う保護部材20の外側を帽子状部材10によって覆うようにしたので、外部から見て普通の帽子と変わらず、着用時の見栄えを低下させることがない。また、保護部材20の後部下端側に配置される第2の保護部22に、幅方向に帯状に延びる複数の外側保護部22a及び複数の内側保護部22bを設け、外側保護部22aの厚さ方向の弾性変形によって衝撃を吸収するようにしたので、後頭部に対する衝撃吸収性を高めることができる。この場合、外側保護部22aと内側保護部22bとの間に間隙部22cを設け、間隙部22cによって通気性を確保するようにしたので、汗をかき易い後頭部への通気性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば癲癇(てんかん)の発作時に頭部を保護するための頭部保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の頭部に着用して使用する頭部保護具としては、いわゆるヘッドギアのように頭部を覆う衝撃吸収性の部材からなり、通気性を確保するために一部を開口したものが知られている。この頭部保護具は、転倒等により頭部を損傷するおそれのあるスポーツ等に用いられるが、それ以外にも癲癇の患者にも使用される。例えば、癲癇の患者が発作を起こした場合、症状によっては意識を失って倒れることがあるため、その際に頭部を強打する危険性がある。そこで、前記頭部保護具を着用することにより、発作時における患者の頭部を保護するようにしている。しかしながら、日常生活においてヘッドギアのような構造の頭部保護具を着用していると、周囲から癲癇の患者であると見られ易いため、頭部保護具の着用をためらう患者も少なくない。
【0003】
そこで、帽子状に形成された頭部保護具が提案されており(例えば、特許文献1参照。)、このような頭部保護具であれば、一見して普通の帽子と変わらず、見栄えを気にする患者であってもためらうことなく着用することができる。
【特許文献1】特開2005−54298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記帽子状頭部保護具は、主に工場等の作業現場用に使用されるものであるため、上方からの落下物に対する衝撃吸収性は高い構造になっているが、前後左右に対する衝撃に対しては特に緩衝性の高い構造にはなっていない。しかしながら、癲癇の発作時は転倒して頭部を強打する場合が多いため、前述のような作業現場用の頭部保護具では後頭部や前頭部の保護が不十分であり、癲癇の患者用としては適正なものではなかった。また、頭部保護具の後部を緩衝性の高い部材で完全に覆うようにした場合は、通気性が低下して蒸れ易くなり、特に後頭部は汗をかき易いため、夏場等においては快適に使用することができないという問題点がある。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着用時の見栄えを低下させることがなく、転倒時の頭部に対する衝撃吸収性を高めることができ、しかも通気性に優れた頭部保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、帽子状に形成された帽子状部材と、帽子状部材によって外面側を覆われた保護部材とを備えた頭部保護具において、前記保護部材を、帽子状部材の後部下端側を除く部分に配置される第1の保護部と、帽子状部材の後部下端側に配置される第2の保護部とから形成し、第2の保護部にそれぞれ帯状に延びる外側保護部及び内側保護部を設けるとともに、外側保護部及び内側保護部を互いに厚さ方向に段差をなすように形成して外側保護部と内側保護部との間に間隙部を設けている。
【0007】
これにより、着用者の頭部を覆う保護部材の外側が帽子状部材によって覆われていることから、外部から見て普通の帽子と変わらず、見栄えを低下させることがない。また、帽子状部材の後部下端側に配置された外側保護部の厚さ方向の弾性変形によって衝撃が吸収されることから、後頭部に対する衝撃吸収性を高めることができるとともに、外側保護部と内側保護部との間の間隙部によって通気性を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の頭部保護具によれば、着用時に外部から見て普通の帽子と変わらないので、例えば癲癇の患者が日常生活において着用していても、周囲から癲癇の患者であると見られることがなく、見栄えを気にする患者であっても躊躇なく着用することができる。また、後頭部に対する衝撃吸収性を高めることができるので、転倒によって頭部への衝撃を受け易い癲癇の患者用として最適である。更に、汗をかき易い後頭部への通気性を高めることができるので、夏場においても快適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1乃至図5は本発明の一実施形態を示すもので、図1は頭部保護具の正面側斜視図、図2はその背面側斜視図、図3はその分解斜視図、図4はその側面断面図、図5はその底面図である。
【0010】
この頭部保護具は、キャップ状に形成された帽子状部材10と、帽子状部材10の内側に設けられた保護部材20とを備えている。
【0011】
帽子状部材10は、一般の帽子と同様の布地からなり、その前端には鍔部11が一体に設けられている。帽子状部材10の後部下端側には略半円状の開口部12が設けられ、帽子状部材10の頂部には複数の通気孔13が設けられている。また、帽子状部材10には左右一対の耳掛紐14と顎掛紐15が設けられている。各耳掛紐14は両端を帽子状部材10に前後方向に間隔をおいて連結され、その略中央に顎掛紐15の一端が連結されている。各顎掛紐15の他端には互いに着脱可能な周知の連結具15aが取付けられており、各連結具15aによって各顎紐15の他端同士が連結されるようになっている。
【0012】
保護部材20は、帽子状部材10の後部下端側を除く部分に配置される第1の保護部21と、帽子状部材10の後部下端側に配置される第2の保護部22とから形成されている。第1の保護部21は合成樹脂によって形成されたヘルメット状の部材からなり、その外面側を帽子状部材10によって覆われている。第1の保護部21の後部下端側には帽子状部材10の開口部12に対応する切り欠き部21aが設けられ、第1の保護部21の頂部には帽子状部材10の各通気孔13に対応する複数の通気孔21bが設けられている。第2の保護部22は合成樹脂によって形成された略扇状の部材からなり、第1の保護部21の後部下端側に切り欠き部21aを覆うように接合されている。第2の保護部22にはそれぞれ幅方向に帯状に延びる複数の外側保護部22a及び複数の内側保護部22bが設けられ、外側保護部22a及び内側保護部22bは一つずつ交互に上下方向に配置されている。この場合、外側保護部22a及び内側保護部22bは互いに厚さ方向に段差をなすように形成され、各外側保護部22aと各内側保護部22bとの間には複数の間隙部22cが形成されている。
【0013】
保護部材20の前部下端側には第1のクッション材23が設けられ、第1のクッション材23は保護部材20の前端側の周縁に沿って延びる断面略三角形状の緩衝性部材からなる。第1のクッション材23は布地によって被覆され、被覆の一部を延出してなる接合部23aを介して鍔部11の下面に接合されている。この場合、第1のクッション材23は、接合部23aを折り曲げることにより、図4に示すように鍔部11の下面側から保護部材20の内側へ移動可能に設けられている。
【0014】
また、第1の保護部21の内面における左右側面下部には、それぞれ前後方向に延びる帯状の第2のクッション材24が設けられている。更に、第1の保護部21の頂部内面側には前後方向に延びる帯状の第3のクッション材25が設けられ、第3のクッション材25には第1の保護部21の各通気孔21bに対応する複数の通気孔25aが設けられている。
【0015】
以上のように構成された頭部保護具は、例えば癲癇の患者の頭部に着用して使用される。即ち、頭部保護具を着用すると、着用者の頭部全体が保護部材20によって覆われる。この場合、第1のクッション材23は、図4の実線に示すように鍔部11の下面に位置させて使用されるが、頭部の小さい子供等が着用する場合は、図4の一点鎖線に示すように第1のクッション材23を帽子状部材10の内側へ位置させることにより、サイズを調整することができる。また、保護部材20は帽子状部材10によって覆われているので、一見して普通の帽子と変わらない。着用者の後頭部は保護部材20の第2の保護部22によって覆われるが、第2の保護部22の各間隙部22cによって通気性が確保される。
【0016】
ここで、前記着用者が癲癇の発作時に転倒して頭部を強打した場合には、保護部材20によって着用者の頭部が保護される。例えば、後方に転倒した場合には、第2の保護部22の各外側保護部22aが内側に弾性変形して頭部への衝撃が吸収される。また、前方に転倒した場合には、第1の保護部21及び第1のクッション材23によって頭部への衝撃が吸収され、横向きに転倒した場合には第1の保護部21及び第2のクッション材24によって頭部への衝撃が吸収される。更に、階段等から逆さまに転落した場合は、保護部材20の第1の保護部21及び第3のクッション材25によって頭部が保護される。
【0017】
このように、本実施形態の頭部保護具によれば、着用者の頭部を覆う保護部材20の外側を帽子状部材10によって覆うようにしたので、外部から見て普通の帽子と変わらず、例えば癲癇の患者が日常生活において着用していても、周囲から癲癇の患者であると見られることがなく、見栄えを気にする患者であってもためらうことなく着用することができる。
【0018】
また、保護部材20を、帽子状部材10の後部下端側を除く部分に配置される第1の保護部21と、帽子状部材10の後部下端側に配置される第2の保護部22とから形成し、第2の保護部22には、幅方向に帯状に延びる複数の外側保護部22a及び複数の内側保護部22bを設けるとともに、外側保護部22a及び内側保護部22bを一つずつ交互に上下方向に配置し、外側保護部22aの厚さ方向の弾性変形によって衝撃を吸収するようにしたので、後頭部に対する衝撃吸収性を高めることができ、転倒によって頭部への衝撃を受け易い癲癇の患者用として最適である。この場合、外側保護部22a及び内側保護部22bを互いに厚さ方向に段差をなすように形成して外側保護部22aと内側保護部22bとの間に間隙部22cを設け、間隙部22cによって通気性を確保するようにしたので、汗をかき易い後頭部への通気性を高めることができ、夏場においても快適に使用することができる。
【0019】
更に、保護部材20の前部下端側に第1のクッション材23を設けたので、例えば着用者が前方に転倒した場合、保護部材20の第1の保護部21のみならず、第1のクッション材23によっても衝撃を吸収することができ、頭部をより効果的に保護することができる。
【0020】
この場合、第1のクッション材23を鍔部11の下面側から保護部材20の内側へ位置を変えられるように設けたので、頭部の小さい子供等が着用する場合は、第1のクッション材23を帽子状部材10の内側へ位置させることによりサイズを調整することができ、汎用性の向上を図ることができる。
【0021】
また、保護部材20の左右側面下部側にそれぞれ第2のクッション材24を設けたので、例えば着用者が横向きに転倒した場合、保護部材20の第1の保護部21のみならず、第2のクッション材24によっても衝撃を吸収することができ、頭部をより効果的に保護することができる。
【0022】
更に、保護部材20の頂部側に第3のクッション材25を設けたので、例えば着用者が逆さまに転落した場合、保護部材20の第1の保護部21のみならず、第3のクッション材25によっても衝撃を吸収することができ、頭部をより効果的に保護することができる。
【0023】
尚、前記実施形態では、保護部材20の第1の保護部21と第2の保護部22とを互いに別体に形成して互いに接合したものを示したが、これらを一体に形成するようにしてもよい。また、第1の保護部21及び第2の保護部22を上下方向に延びるように形成し、互いに幅方向に配列するようにしてもよい。
【0024】
更に、前記実施形態では、癲癇の患者が着用する場合を示したが、他の疾患により転倒のおそれがある場合にも使用することができるとともに、スポーツ用、作業現場用等にも使用することができる。
【0025】
また、前記実施形態では、帽子状部材10をキャップ状に形成したものを示したが、ハット状など、他の種類の帽子状に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示す頭部保護具の正面側斜視図
【図2】頭部保護具の背面側斜視図
【図3】頭部保護具の分解斜視図
【図4】頭部保護具の側面断面図
【図5】頭部保護具の底面図
【符号の説明】
【0027】
10…帽子状部材、20…保護部材、21…第1の保護部、22…第2の保護部、22a…外側保護部、22b…内側保護部、22c…間隙部、23…第1のクッション部、24…第2のクッション部、25…第3のクッション部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子状に形成された帽子状部材と、帽子状部材によって外面側を覆われた保護部材とを備えた頭部保護具において、
前記保護部材を、帽子状部材の後部下端側を除く部分に配置される第1の保護部と、帽子状部材の後部下端側に配置される第2の保護部とから形成し、
第2の保護部にそれぞれ帯状に延びる外側保護部及び内側保護部を設けるとともに、外側保護部及び内側保護部を互いに厚さ方向に段差をなすように形成して外側保護部と内側保護部との間に間隙部を設けた
ことを特徴とする頭部保護具。
【請求項2】
前記保護部材の前部下端側にクッション材を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の頭部保護具。
【請求項3】
前記クッション材を帽子状部材の鍔部の下面側から保護部材の内側へ移動可能に設けた
ことを特徴とする請求項2記載の頭部保護具。
【請求項4】
前記保護部材の頂部側にクッション材を設けた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の頭部保護具。
【請求項5】
前記保護部材の左右側面下部側にクッション材を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の頭部保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−84983(P2007−84983A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278562(P2005−278562)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(591199741)株式会社プロップ (26)
【出願人】(504136993)独立行政法人国立病院機構 (37)
【Fターム(参考)】