説明

頭部装着型表示装置

【課題】 非同軸光学系を用いた頭部装着型表示装置において、その非同軸光学系の構造を簡単にしつつ、それでいて、バイザに歪みのない特殊画像を投影することができる頭部装着型表示装置を提供する。
【解決手段】 ヘルメット11に支持され眼前に配置されるバイザ12と、バイザ12を通して前方を観察した直視像とは異なる感度で前方を撮影する特殊カメラ13aと、特殊カメラ13aで撮影した映像信号から特殊画像を作成する画像作成部14aと、画像を画面表示する画面表示部17aと、画面表示された画像を斜め方向からバイザ12に投影し投影した画像と直視像とを視認できるようにする非同軸光学系18aとを備えた頭部装着型表示装置1であって、画像作成部14は、バイザと非同軸光学系とにより生じる歪曲に合わせて予め特殊画像を歪曲させた歪曲特殊画像を作成する歪曲画像形成部21aを有し、画面表示部17aに歪曲特殊画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼前に配置したバイザに対して画像を投影することにより、バイザ前方の風景とともに投影した画像を視認できるようにした頭部装着型表示装置に関し、さらに詳細には、暗視カメラや赤外線カメラなどの特殊カメラによって取得した映像情報を画像としてバイザに投影する頭部装着型表示装置に関する。
本発明にかかる頭部装着型表示装置は、航空機やヘリコプタの搭乗者が夜間飛行する場合や、消防士やレスキュー隊等の救助活動者が災害現場で使用する場合等、様々な状況で利用される。
【背景技術】
【0002】
肉眼視では得られない視覚情報を、特殊カメラを使用して取得し、肉眼視による視覚情報ととともに利用することは有用である。例えば、航空機やヘリコプタのパイロットは、夜間飛行を行う場合に暗視装置を使用することがある。一般に、暗視装置はイメージインテンシファイアの出力を、接眼レンズで直視する単眼型のものや双眼鏡型のものが使用されている。
【0003】
パイロットは、飛行中はヘルメットを装着していることから、ヘルメットに暗視装置を取り付けた暗視装置付きヘルメットが提案されている。(特許文献1、特許文献2)。
また、暗視ビデオの情報を、ヘルメットに取り付けたバイザの一部に映写するシステムが提案されている(特許文献3)。
【0004】
また、熱線や赤外線像を可視できる表示装置をヘルメットに組み込んだ消防士用やレスキュー隊用の頭部装着型表示装置が開示されている(特許文献4)。
このようにヘルメットに取り付けた表示装置により、暗視画像や赤外線画像を眼前に表示するようにした頭部装着型表示装置が提案されている。
【特許文献1】特開平9−188911号公報
【特許文献2】特開2003−533614号公報
【特許文献3】特開2001−515150号公報
【特許文献4】特開平8−54282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
双眼鏡形状の暗視装置をヘルメットに取り付けたものは、左右両眼で同時に接眼レンズを覗くことになるので、一時的に暗視画像だけを見る状態が生じることとなり、視野障害や安全上の問題がある。また、眼前においてヘルメットの前方に突出した状態で使用されることになるので、誤って暗視装置に衝撃を与えてしまうことによる破損が生じやすい。
【0006】
単眼の暗視装置をヘルメットに取り付けたものは、左右の眼で異なる視覚情報を見ることになるので、慣れるまでは不便であるが、片側の眼は外界を見ているので、視野障害や安全上の問題はない。しかしながら、双眼鏡形状の場合と同様に、眼前においてヘルメットの前方に突出した状態で使用されることになるので、誤って暗視装置に衝撃を与えてしまうことによる破損が生じやすい点は同様である。
【0007】
これに対し、ヘルメットに支持されたバイザに暗視画像を投影するバイザ投影方式の暗視装置では、バイザ前方の風景も同時に視認でき、しかも、ヘルメット前方まで突出するように取り付けられる部材がないので、破損も生じにくい点で優れている。
【0008】
しかしながら、バイザに向けて暗視画像を投影するには、複雑な光学系が必要となる。すなわち、ヘルメットに取り付けるバイザは、通常は曲面形状をしており、また、バイザの正面には顔面が対向することになるため、光学系は顔面および頭部を避けて、バイザの斜め方向から投影する必要があり、いわゆる非同軸光学系を構成することになる。
【0009】
非同軸光学系を通して画像を表示させると、光学素子を用いて光学補正しない限り、非対称な歪みが加わった歪み画像を形成することになる。この歪み画像を光学素子で補正しようとすると、補正のためのレンズやミラーからなる光学素子の枚数を大幅に増加させる必要がある。また、枚数の増加に伴い、光学系全体が占める容積が増大することになる。
このような状況は、暗視カメラによる暗視画像をバイザに投影させる場合に限らず、赤外線カメラ等のその他の特殊カメラで撮影した画像をバイザに投影する場合も同様である。
【0010】
そこで、本発明は、非同軸光学系を用いてバイザに暗視画像等の特殊画像を投影することにより、バイザ前方の直視像と特殊画像とを視認することができるようにした頭部装着型表示装置において、その非同軸光学系の構造を簡単にしつつ、それでいて、バイザに歪みのない特殊画像を投影することができる頭部装着型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の頭部装着型表示装置は、ヘルメットに支持され眼前に配置されるバイザと、バイザを通して前方を観察した直視像とは異なる感度で前方を撮影する特殊カメラと、特殊カメラで撮影した映像信号から特殊画像を作成する画像作成部と、画像を画面表示する画面表示部と、画面表示された画像を斜め方向からバイザに投影し投影した画像と直視像とを視認できるようにする非同軸光学系とを備えた頭部装着型表示装置であって、画像作成部は、バイザと非同軸光学系とにより生じる歪曲に合わせて予め特殊画像を歪曲させた歪曲特殊画像を作成する歪曲画像形成部を有し、画面表示部に歪曲特殊画像を出力するようにしている。
【0012】
ここで、ヘルメットとは、頭部に装着することができる形状のものであれば形状は限定されないが、少なくとも眼前にバイザを取り付けることが可能な構造のものをいう。また、バイザとは、ヘルメットに支持され使用時に眼前に配置される透明または半透明の部材をいう。バイザの形状についても特に限定されないが、非同軸光学系を介して画像が投影されるものであることを要する。例えば、左右眼前に独立して、あるいは片眼単独で配置されるいわゆるコンバイナのような形状のバイザであってもよいが、その場合でも非同軸光学系を介して画像が投影されることを要する。
【0013】
また、特殊カメラとは、バイザを通しての肉眼視による直視観察では得ることができない視覚情報を得るためのカメラであり、例えば明るさに対する感度や波長に対する感度がバイザを通して行う肉眼視の感度とは大きく異なるカメラをいう。具体的には、明るさに対する感度が異なる特殊カメラとしては、イメージインテンシファイアを用いた暗視カメラ、暗視カメラを使用するほどの暗さではない状況(例えば夕闇程度の暗さ)において使用するためのCCD等を用いた低照度対応カメラが該当する。また、波長に対する感度が異なる特殊カメラとしては、赤外線カメラが該当する。
【0014】
また、特殊画像とは、特殊カメラの映像信号に基づいて作成される画像(画像データ)をいい、暗視カメラの場合は暗視画像、低照度対応カメラの場合は低照度画像、赤外線カメラの場合は赤外線画像(熱線画像)となる。
【0015】
本発明によれば、バイザを眼前に配置した状態にし、特殊カメラにより眼前の風景を撮影する。特殊カメラの映像信号は、画像作成部に出力されて特殊画像を作成するが、画像作成部に含まれる歪曲画像形成部は、予め特殊画像を歪曲させた歪曲特殊画像を作成する。すなわち、特殊画像を、そのまま非同軸光学系を介してバイザに投影すると、バイザの形状、バイザと非同軸光学系との位置関係、非同軸光学系の光学素子の配置により生じる歪曲が発生することになるが、予め、この歪曲を予定して、初めから特殊画像を歪曲させた歪曲特殊画像を、画像作成部にて電子画像処理手法を用いて作成しておき、これを、非同軸光学系を通してバイザに投影させることにより、歪曲を打ち消すようにし、歪曲のない正常な特殊画像をバイザに投影させるようにする。バイザへの投影は、直視像と投影像とを重ね合わせて表示するのが好ましいが、バイザの一部に小さく特殊画像を表示するようにしてもよい。
これにより、バイザの前方において、直視像と、歪曲のない特殊画像(虚像)とを視認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非同軸光学系を用いてバイザに暗視画像等の特殊画像を投影する場合でも、最小限の光学系要素で構成される簡単な構造の非同軸光学系を用いることができ、しかも、バイザには歪みのない特殊画像を投影することができる。
【0017】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、特殊カメラは暗視カメラまたは低照度対応カメラまたは赤外線カメラのいずれかであってもよい。暗視カメラや低照度対応カメラを特殊カメラとして用いることにより、暗闇、夕闇においても前方の風景を鮮明に視認することができる。また、赤外線カメラを使用することにより熱源(例えば、火元、高温物体、動物等)を視認することができる。
【0018】
上記発明において、画像作成部は歪曲画像形成部で作成された歪曲特殊画像の表示倍率を調整するスケーリング部を有し、歪曲特殊画像の表示倍率を調整することにより直視画像とバイザに投影される特殊画像とを重ね合わせて表示するようにしてもよい。
これによれば、直視像と特殊画像との双方の画像の特徴を重ねた像を視認することができる。また、直視像に対する特殊画像の大きさを調整することができるので、異なる特殊カメラの装着が可能となり、例えば状況(天候、明るさ等)に応じて、特殊カメラを付け替えて用いることも可能となる。
【0019】
上記発明において、互いに異なる感度で前方を撮影する複数種類の特殊カメラを備え、画像作成部は少なくとも2種類の特殊カメラからの映像信号を合成処理した合成画像を特殊画像として作成する画像合成部を有するようにしてもよい。
これによれば、少なくとも2種類の特殊カメラによる映像信号を合成処理することで、それぞれの最適検出範囲を融合した合成画像を作成することができ、この合成画像を特殊画像とすることで、特徴を引き立たせた画像を視認することができる。なお、特殊カメラの種類数は3つ以上であっても構わないが、装置が複雑になりコストも上昇するので実用的には2つ程度が好ましい。
【0020】
上記発明において、画像作成部は外部信号を入力するための外部信号入力部と、特殊カメラで撮影した映像信号と外部信号とを合成処理した合成画像を特殊画像として作成する画像合成部とを有するようにしてもよい。
これによれば、特殊カメラからの映像信号に外部信号を合成処理することで、外部の付加情報を加えた画像を特殊画像として表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を模式的に示すブロック図であり、図1(a)はその全体ブロック図、図1(b)はその一部である画像作成部の機能ブロック図である。
【0023】
頭部装着型表示装置1は、主として、ヘルメット11、バイザ12、低照度対応カメラ13a,13b、画像作成部14a,14b、画面表示部17a,17b、非同軸光学系18a,18bとを備えている。以下、特に説明しない限り、右眼用には符号aを付し、左眼用には符号bを付すこととする。
【0024】
ヘルメット11は、装着者(使用者)の頭部を被うととともに、顔面前方が開放された形状にしてある。バイザ12は、上下にスライド可能な状態でヘルメット11に支持されており、バイザ12を下げると眼前に配置されるようにしてある。
【0025】
低照度対応カメラ13a,13bは、左右眼の近傍のヘルメット11側面に固定してあり、肉眼で観察できる前方風景と同じ風景が撮影できるように取り付けられている。この低照度対応カメラ13a,13bは、低照度状態、すなわち夕闇程度の明るさの状態でも前方の風景を鮮明に映し出すことができるように高感度CCDカメラを用いている。低照度対応カメラ13a,13bで撮影された映像信号は、バイザ12を介して前方を直視した肉眼視による直視像とは異なる画像である特殊画像を形成するために利用されるものである。
【0026】
画像作成部14a,14bは、低照度対応カメラ13a,13bから入力される映像信号に基づいて、画像データを形成するとともに、画像処理を行う電子画像処理回路で構成される。本実施形態では低照度対応カメラ13a、13bからの映像信号に基づいて特殊画像データを作成し、作成した特殊画像データを加工するための各種の画像処理を行う。画像作成部14a、14bが実行する画像処理を機能ブロックに分けて説明すると、図1(b)に示すように、原画像作成部20a,20b、歪曲画像形成部21a,21b、スケーリング部22a,22bとが含まれる。
【0027】
原画像作成部20a,20bは、低照度対応カメラ13a,13bからの映像信号に基づいて、特殊画像データ(原画像データ)を作成する画像処理を行う。低照度対応カメラの視野内に紛れ込んだスポット光等が影響して一部にハレーションを生じている特殊画像データの場合は、ハレーション発生領域を修正する画像処理も行う。すなわち、特殊画像データに含まれる各画素データのうちで、輝度が予め設定した閾値を超える領域を修正し、ハレーションを除去する画像処理を行う。
歪曲画像形成部21a,21bは、作成した特殊画像データに対し、バイザ12や非同軸光学系18a,18bを、光が通過するときに受ける歪曲を予定し、その歪曲方向とは反対の方向に同等の歪曲を加えることで特殊画像データを予め歪曲させた歪曲特殊画像データを作成する画像処理を行う。
【0028】
スケーリング部22a,22bは、作成した歪曲特殊画像データに対し、画像拡大処理・画像縮小処理を行うことにより、歪曲特殊画像データの表示倍率を調整する画像処理を行う。この調整により、バイザ12に投影される投影像の大きさを調整することができるので、バイザ12を通した肉眼視による直視像の大きさと同じ大きさのバイザ投影像が得られるようにする。
なお、スケーリング部22a、22bを設けないことも可能であるが、その場合は、特殊画像と直視像とが重なるように低照度対応カメラ13a,13bの画角調整を行うか、非同軸光学系18a,18bおよび画面表示部17a,17bの調整を行っておくか、非同軸光学系18a,18bに光学的な調整機構を備えることが好ましい。
【0029】
画面表示部17a、17bは、表示素子からなる表示画面15a,15bと、ドライブ回路16a,16bとからなり、画像作成部14a,14bから出力される歪曲特殊画像データに基づいて、表示画面15a,15bに歪曲した特殊画像を画面表示する。
【0030】
非同軸光学系18a,18bは、表示画面15a,15bから出射される歪曲した特殊画像の光線をバイザ12の斜め後方から投影する。すなわち、バイザ12の正面には装着者(使用者)の頭部があるので、頭部とヘルメット11の壁面との間からバイザ12に向けて投影する。表示画面15a,15bからの光線は、非同軸光学系18a,18bを通る際に歪曲するが、予め、歪曲させた特殊画像の光線を、非同軸光学系18a,18bに出射しているので、歪曲が打ち消されてバイザ12には正常な特殊画像が投影されることになる。
【0031】
バイザ12に投影された特殊画像は、バイザ12を通して前方を観察した直視像(肉眼視像)と結合された状態で視認される。
【0032】
次に、本発明の頭部装着型表示装置1により表示される画像について説明する。図2は、図1の頭部装着型表示装置1の動作を説明する図である。
バイザ12および低照度対応カメラ13a,13bの前方には、正方格子状の被写体Dがあるものとし、これを低照度対応カメラ13a,13bで撮影するものとする。
画像作成部14a,14bでは、低照度対応カメラ13a,13bからの映像信号に基づいて、まず、原画像作成部20a,20bにより、被写体Dをそのまま画像データ化した特殊画像データD(原画像データ)が作成される。特殊画像データDは、正方格子の特徴をそのまま反映したデータである。
【0033】
続いて、歪曲画像形成部21a,21bでは、特殊画像データDを、歪曲させた歪曲特殊画像データDが作成される。この歪曲は、予め、標準試料(例えばDのような正方格子模様)を用いて非同軸光学系18a,18bとバイザ12とによる歪曲率を計測し、特殊画像データDにその歪曲率に対応する歪曲を反対方向に与えることで作成される。
【0034】
続いて、スケーリング部22a,22bでは、歪曲特殊画像データDの倍率を調整した歪曲特殊画像データDを作成する。倍率についても、予め、標準試料を用いて非同軸光学系18a,18bを通してバイザ12に表示させ、バイザ12を通して前方を観察した直視像と画像が一致する倍率に調整することにより求めておく。
【0035】
続いて、画像表示部17a,17bでは、歪曲特殊画像データDに基づいて、これを表示画面15a,15bに画面表示した歪曲特殊画像Dを形成する。
【0036】
続いて、画面表示された歪曲特殊画像Dを、非同軸光学系18a,18bを介してバイザ12に投影する。非同軸光学系18a,18bを通過することにより、歪曲特殊画像Dは歪曲が打ち消され、歪曲のない正常な特殊画像Dがバイザ12に投影される。
【0037】
装着者(使用者)は、被写体Dの直視像と、歪曲のない正常な特殊画像Dとを重ね合わせた像を視認することができる。
これにより、例えば、前方の明るさが急激に変化する場合に、明るい状態のときは直視像Dのみで視認し、暗い状態に変化したときに歪曲のない正常な特殊画像Dを重畳した像を視認することで、連続して鮮明な像を視認できるようになる。この場合に、前方の明るさをモニタするための照度センサを取り付けておき、明るさに応じて自動的に切り替えを行うようにすることもできる。
また、ハレーション発生領域を除去した特殊画像を重ね合わせることで、直視像と投影像とからそれぞれの鮮明に映し出された部分どうしを組み合わせた像を視認することができる。
【0038】
なお、上述した実施形態では、左右一対の特殊カメラを取り付けて、左右の眼にそれぞれ別々の特殊画像を投影するようにしたが、これに代えて、特殊カメラを1つにしてそこからの映像信号を分岐するようにし、左右の眼に対し、同じ特殊画像をそれぞれの非同軸光学系を介して投影するようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、バイザ12への投影は、直視像と投影像とを重ね合わせて表示するようにしたが、バイザ12の一部に小さく特殊画像を表示するようにすることにより、直視像と別々に表示させることもできる。すなわち、スケーリング部22により歪曲特殊画像データの倍率を小さくすることにより(必要に応じてバイザ12上での表示位置も移動する)、バイザ12の一部に特殊画像を表示し、直視像と投影画像との2つの像を並べて視認することもできる。
【0040】
(実施形態2)
図3は、本発明の他の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を示すブロック図であり、図3(a)はその全体ブロック図、図3(b)はその一部である画像作成部の機能ブロック図である。
本実施形態は、種類が異なる(感度が異なる)2種類の特殊カメラを使用して、各カメラで撮影した画像の合成画像を、直視像と重ね合わせて視認させるものである。図3において、図1と同じものについては、同符号を付すことにより説明の一部を省略する。
【0041】
頭部装着型表示装置2は右眼側に赤外線カメラ19a、左眼側に暗視カメラ19bが取り付けられ、それぞれの映像信号が画像作成部24に出力される。
画像作成部24は、図1と同様の機能を実行する原画像作成部20、歪曲画像作成部21、スケーリング部22に加えて、画像合成部25を有している。
画像合成部25は、暗視カメラ19aと赤外線カメラ19bとから、それぞれ出力された2つの異なる映像信号を受けて、これら信号を任意の強度比率で合成した合成画像データを作成する処理を行う。作成された合成画像データは、原画像作成部20、歪曲画像作成部21、スケーリング部22に順次送られ、上述した実施形態と同様の処理が行われる。その後、画像作成部24(スケーリング部22)からの出力が、左右の画像表示部17a,17bに同時並列に送られ、以後、非同軸光学系18a,18b、バイザ12を介して、左右眼に同じ特殊画像が投影されるようになる。
【0042】
次に、本発明の頭部装着型表示装置により表示される像について説明する。図4は、図3の頭部装着型表示装置2の動作を説明する図である。
バイザ12および赤外線カメラ19a、暗視カメラ19bの前方に、被写体Eがあるものとする。被写体Eには、正方格子状の模様が存在するとともに、対角線および外周に沿って発熱領域が存在するものとする。そして、これを赤外線カメラ19a、暗視カメラ19bで撮影するものとする。
【0043】
赤外線カメラ19aで撮影した映像信号には、発熱領域に対応する形状の画像情報Eが含まれている。また、暗視カメラ19bで撮影した映像信号には、正方格子状の模様に対応した画像情報Eが含まれている。これら2つの映像信号は画像作成部24に送られる。画像作成部24では、画像合成部25が2つの映像信号に基づいて、これらを合成した合成画像データEを作成する。合成画像データEを作成する際に、一方の正方形の大きさを他方の正方形の大きさに合わせるように調整したり、映像信号の強度比を任意に設定し所望の比率で合成画像データEを作成したりするようにすることが好ましい。
【0044】
続いて、合成画像データEが原画像作成部20に送られ、特殊画像データEが作成される。特殊画像データEは、合成画像データEを元に、ハレーション発生領域を削除する修正等の画像処理が行われることにより作成される。
【0045】
続いて、上述した実施形態と同様に、歪曲画像形成部21にて、特殊画像データEを歪曲させた歪曲特殊画像データEが作成され、スケーリング部22にて、歪曲特殊画像データEを拡大・縮小した歪曲特殊画像データEが作成される。
【0046】
続いて、スケーリング部22から歪曲特殊画像データEが出力され、これが2つに分岐され、左右の画面表示部17a,17bに同時に送られる。画面表示部17a,17bでは、歪曲特殊画像データEに基づいて、表示画面15a,15b上に、歪曲特殊画像Eが表示される。
【0047】
続いて、画面表示された歪曲特殊画像Eを、非同軸光学系18a,18bを介してバイザ12に投影する。非同軸光学系18a,18bを通過することにより、歪曲特殊画像Eは歪曲が打ち消され、歪曲のない正常な特殊画像Eがバイザ12に投影される。
【0048】
バイザ12に投影される正常な特殊画像Eと被写体Eとを比較すると、被写体Eを直視した像ではなく、その内部の発熱領域の形状(対角線)が加わった像を見ることができている。
【0049】
そして、装着者(使用者)は、被写体Eの直視像と、正常な特殊画像Eとを重ね合わせた像を視認することになる。
この場合も、ハレーション発生領域等を除去した2種類の特殊画像を重ね合わせ、さらに直視像と投影像とを重ね合わせているので、それぞれの鮮明に映し出された部分どうしを引き立たせた像を視認することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、赤外線カメラ19aと暗視カメラ19bとの映像信号により作成された合成画像を左右の眼で同時に利用しているが、左右それぞれに赤外線カメラと暗視カメラとを取り付けて、合計4つの特殊カメラを使用してもよい。この場合は、左眼と右眼とにおいて独立に、合成画像を作成することになる。
【0051】
(実施形態3)
図5は、本発明の他の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を示すブロック図であり、図5(a)はその全体ブロック図、図5(b)はその一部である画像作成部の機能ブロック図である。
本実施形態は、1つの特殊カメラで撮影した画像と付加情報との合成画像を、直視像と重ね合わせて視認させるものである。図5において、図1、図3と同じものについては、同符号を付すことにより説明の一部を省略する。
【0052】
頭部装着型表示装置3では、右眼側に赤外線カメラ19aが取り付けられ、映像信号が画像作成部31に出力される。
画像作成部31は、図1あるいは図3と同様の機能を実行する原画像作成部20、歪曲画像作成部21、スケーリング部22、画像合成部25に加えて、外部信号入力部32を有している。
【0053】
外部信号入力部32は、装着者(使用者)に有用な外部信号41が入力できるようにしてある。有用な外部信号41とは、例えば航空機・ヘリコプタのパイロットであれば、図示しない速度計、高度計、燃料計からの飛行速度情報、高度情報、燃料情報等、レスキュー隊であれば、地図情報、天候情報、時刻情報等である。また、過去に撮影したビデオ情報等であってもよい。これら情報は文字情報あるいは画像情報として送られてくる。
【0054】
画像合成部25は赤外線カメラ19aからの映像信号と、外部信号入力部32から入力された外部信号41とに基づいて、合成画像データを作成する処理を行う。
作成された合成画像データは、原画像作成部20、歪曲画像作成部21、スケーリング部22に順次送られ、上述した実施形態と同様の処理が行われる。その後、画像作成部31(スケーリング部22)からの出力が、左右の画像表示部17a,17bに同時並列に送られ、以後、非同軸光学系18a,18b、バイザ12を介して、左右眼に同じ特殊画像が投影されるようになる。
【0055】
次に、本発明の頭部装着型表示装置3により表示される像について説明する。図6は、図5の頭部装着型表示装置3の動作を説明する図である。
バイザ12および赤外線カメラ19aの前方に、正方格子状の模様が付された被写体Fがあるものとする。そして、これを赤外線カメラ19aで撮影するものとする。
【0056】
赤外線カメラ19aで撮影した映像信号には、被写体Fの正方格子状の模様に対応した画像情報が含まれている。この映像信号は画像作成部31に送られる。画像作成部31の画像合成部25は、外部信号41(文字情報「○○」を含むものとする)と、赤外線カメラ19aからの映像信号とに基づいて、これらを合成した合成画像データFを作成する。
【0057】
続いて、合成画像データFが原画像作成部20に送られ、特殊画像データF(原画像データ)作成される。特殊画像データFは、合成画像データFを元に、ハレーション発生領域を削除する修正等の画像処理が行われることにより作成される。
【0058】
続いて、上述した実施形態と同様に、歪曲画像形成部21にて、特殊画像データFを歪曲させた歪曲特殊画像データFが作成され、スケーリング部22にて、歪曲特殊画像データFを拡大・縮小した歪曲特殊画像データFが作成される。
【0059】
続いて、スケーリング部22から歪曲特殊画像データFが出力され、これが2つに分岐され、左右の画面表示部17a,17bに同時に送られる。画面表示部17a,17bでは、歪曲特殊画像データFに基づいて、表示画面15a,15b上に、歪曲特殊画像Fが表示される。
【0060】
続いて、画面表示された歪曲特殊画像Fを、非同軸光学系18a,18bを介してバイザ12に投影する。非同軸光学系18a,18bを通過することにより、歪曲特殊画像Fは歪曲が打ち消され、歪曲のない正常な特殊画像Fがバイザ12に投影される。
【0061】
バイザ12に投影される正常な特殊画像Fと被写体Fとを比較すると、被写体Fを直視した像と同じ正方格子の像に、文字「○○」が加わった像を見ることになる。
【0062】
そして、装着者(使用者)は、被写体Fの直視像と、正常な特殊画像Fとを重ね合わせた像を視認することになる。
この場合も、ハレーション発生領域等を除去した特殊画像と直視像とを重ね合わることで、それぞれの鮮明に映し出された部分どうしを引き立たせた像を視認することができる。加えて、有用な外部情報も同時に表示させることができている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、暗視カメラや赤外線カメラなどの特殊カメラによって取得した映像情報を、画像としてバイザに投影する頭部装着型表示装置の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の頭部装着型表示装置の動作を説明する図。
【図3】本発明の他の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を示すブロック図。
【図4】図3の頭部装着型表示装置の動作を説明する図。
【図5】本発明の他の一実施形態である頭部装着型表示装置の構成を示すブロック図。
【図6】図5の頭部装着型表示装置の動作を説明する図。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3: 頭部装着型表示装置
11: ヘルメット
12: バイザ
13a,13b: 低照度対応カメラ(特殊カメラ)
14a,14b: 画像作成部
15a,15b: 表示画面
17a,17b: 画面表示部
18a,18b: 非同軸光学系
19a: 暗視カメラ(特殊カメラ)
19b: 赤外線カメラ(特殊カメラ)
20a,20b: 原画像作成部
21a,21b: 歪曲画像形成部
22a,22b: スケーリング部
24: 画像作成部
25: 画像合成部
31: 画像作成部
32: 外部信号入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに支持され眼前に配置されるバイザと、バイザを通して前方を観察した直視像とは異なる感度で前方を撮影する特殊カメラと、特殊カメラで撮影した映像信号から特殊画像を作成する画像作成部と、画像を画面表示する画面表示部と、画面表示された画像を斜め方向からバイザに投影し投影画像と直視像とを視認できるようにする非同軸光学系とを備えた頭部装着型表示装置であって、
画像作成部は、バイザと非同軸光学系とにより生じる歪曲に合わせて予め特殊画像を歪曲させた歪曲特殊画像を作成する歪曲画像形成部を有し、画面表示部に歪曲特殊画像を出力することを特徴とする頭部装着型表示装置。
【請求項2】
特殊カメラは暗視カメラまたは低照度対応カメラまたは赤外線カメラであることを特徴とする請求項1に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項3】
画像作成部は歪曲画像形成部で作成された歪曲特殊画像の表示倍率を調整するスケーリング部を有し、歪曲特殊画像の表示倍率を調整することにより直視像とバイザに投影される特殊画像とを重ね合わせて表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の頭部装着型表示装置。
【請求項4】
互いに異なる感度で前方を撮影する複数種類の特殊カメラを備え、画像作成部は少なくとも2種類の特殊カメラからの映像信号を合成処理した合成画像を特殊画像として作成する画像合成部を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の頭部装着型表示装置。
【請求項5】
画像作成部は外部信号を入力するための外部信号入力部と、特殊カメラで撮影した映像信号と外部信号とを合成処理した合成画像を特殊画像として作成する画像合成部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の頭部装着型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−212577(P2007−212577A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30195(P2006−30195)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】