説明

頭部電気刺激電極ユニット

頭部電気刺激用の電極ユニット(11)が提供されており、電流伝達電極(15,31)が患者の耳領域に電気エネルギィを操作可能に伝達する。電極ユニットは、患者の耳管の入口にあるいは耳管の中への係合に適したタイプの音響イヤホン(12)の外側周囲に配置した電極を有する。この電極は、電極と、当該電極ユニットに一致した患者の皮膚との間で電気エネルギィを操作可能に伝達する電気接触領域を有する。この電極は、使用時に患者の皮膚に直接接触するように露出した接触面層を有するか、あるいは、電極自体の導電カバー(16)であっても良い。通常は、この電極ユニットは、音響イヤホンが従来型のステレオイヤホン対である場合に、電極対の一方を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部電気刺激に関し、限定する必要はないが、特に、頭部電気−生物学的刺激として知られている形式の電気刺激の実施に使用する電極ユニットに関する。これは、通常は治療を受ける患者の耳たぶに挟んだ電極間に与える刺激である。このような手順は、しばしば、多くのアプリケーションで電気療法と呼ばれている。
【0002】
本明細書で使用されている「患者」の用語は、このような電気刺激を適用する理由に治療の意図があるか否かにかかわらず、電気刺激を受ける総ての人を意味すると広く解釈するべきである。この点に関して、電気刺激は、患者の気分、感情、姿勢あるいは認識能力を改善することなどで、単に患者の生活の質を向上させる目的で使用されることがある。
【背景技術】
【0003】
頭部電気−生物学的刺激(以下、CESという)は、耳たぶに取り付けるイヤークリップ型電極対を用いて、弱い微電流パルスを脳(視床下部内の)に当てる。CESが脳を刺激して、エンドルフィンなどの神経伝達物質を作り、気分、感情、及び認識能力を改善することは広く認められている。頭部電気刺激は、発作、脳腫瘍、ある種の心臓欠陥、高血圧、時差、乗り物酔い、痴呆の治療用にも提供されている。
【0004】
この信号は、明らかに、脳の電気的出力を正常化する。従って、CESは、不眠症、物質依存、うつ病及び不安症の治療に使用/試験されてきた。少なくともいくつかの場合において、CESは、抗うつ剤に比べて、うつ病の治療に、より少ない副作用で、同等あるいはより良い効果があることが指摘されている。
【0005】
CESがその効果を出すメカニズムはまだ完全に解明されていない。脳組織の刺激は、放出される神経伝達物質、特にセロトニン、ベータエンドルフィン、及びノルアドレナリンの量を増加させることが考えられている。これらの神経伝達物質は、ストレス関連疾患によってバランスを失った脳の辺縁系の生化学的恒常性を正常な状態に戻すことができると考えられている。
【0006】
治療は、電流構成によっては最大1.5時間まで延長することがあるが、通常は10分間から30分間連続して行われている。通常使用する電流は、パルス幅が約1乃至約500ミリ秒の範囲のパルス形で適用され、周波数は約0.1ヘルツ(Hz)乃至約500Hzであり、電流は最大で2.5ミリアンペアであるが、通常は1ミリアンペア(mA)より少なく、より典型的には300乃至700マイクロアンペア(μA)である。
【0007】
人体への音楽の有益な効果は高く評価されており、治療、特に、精神的混乱の治療に使用されてきた。
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、従来技術である耳たぶクリップを超える利点がある、頭部電気刺激用電極ユニットを提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、頭部電気刺激用電極ユニットが提供されており、この電極ユニットは、電気エネルギィを患者の耳領域に動作可能に伝達する電流伝達電極を具え、この電極ユニットは、患者の耳の耳管入口又は耳管内に適宜係合する音響イヤホンの外側周辺に配置され、この電極が電極と患者の皮膚との間に電気エネルギィを動作可能に伝達する電極ユニットに一致する電気接点を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる特徴は、この電気接点が使用時に患者の皮膚に直接接触するように露出した接触面層であること、あるいは代替的に電気接点が電極自体を覆う導電性カバーの形状をしていること;電極が音響イヤホンを囲む電気絶縁体の上に配置されていること;電極が電気絶縁体の囲いを取り囲むリングの形状をしていること;電極ユニットが対で設けられており、音響イヤホンが実質的に従来型のステレオイヤホン対であっても良いこと;である。
【0011】
本発明によって提供される電極ユニットは、一般的には、CESを行うアプリケーションに最も適していると考えられるが、あらゆる形の電気刺激に使用できる。更に、本発明はどのような方法も限定するものではないが、本発明の電極ユニットは、とりわけ、英国特許出願第0817089.6号のパリ条約による優先権を主張する“CRANIAL ELECTROSTIMULATION METHOD AND EQUIPMENT”の名称で同時に出願した継続中の特許出願の実施例に特に有用であると考えられる。この場合、電気刺激パルスは、患者がイヤホンを通して聴くことができる音楽のリズム、ビート又はテンポに従って変化する周波数で生成される。
【0012】
本発明の上述した特徴及びその他の特徴をより完全に理解するために、以下に本発明の様々な実施例を図面を参照して述べる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明による電極ユニットによってCESパルスを適用する一方法および装置を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すブロック図に基づいて動作する装置のポータブルバージョンを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係るイヤホンの一実施例を示す斜視図であり、このイヤホンは図2に示す装置に好適に使用できる。
【図4】図4は、このイヤホンの分解図である。
【図5】図5は、図5aに耳に取り付けるイヤホンを示し、図5bに取り付けたイヤホンを示し、図5cに耳と電極の接触領域を示す。
【図6】図6は、本発明に係る電極ユニットの代替の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び2に示す装置では、持ち運び可能な、電池を電源とするユニット(1)を用いてCESパルスを生成し、上述した我々の継続中の特許出願に記載した態様でCES治療を行う。この装置は、図2に示すように、ポケットサイズの治療ユニットの形状及び構成とするか、あるいは治療センターまたはスタジオで使用するような多くのマルチコンポーネント構成であっても良い。
【0015】
この治療ユニットは、患者が聴くことができる音楽の演奏と同時に、耳に適宜の電気パルスを提供して患者にCESを行うように構成されている。この装置は、従って、頭部電気刺激パルス発生器(2)と、このパルス発生器で生成したパルスを患者の耳に適用する関連電極(3)と、音信号発生器(4)と、この音信号発生器からの出力を可聴音に変換するイヤホン対(5)とを具える。音信号発生器は、ユーザが選択できる又は予め処理したプログラム又はセッションを選択することによって、様々な曲の選択を含むデータベースと関連させても良い。このデータベースは、図1において符号(4a)で示されている。
【0016】
電気刺激パルス発生器及び音信号発生器からの出力は、ユーザーボタンインターフェース(7)によってユーザが動作させるマイクロプロセッサ(6)の形のコントローラによって制御される。このユニットは、従来の方法でプログラムの選択に役立つディスプレイスクリーン(8)を有する。ディスプレイスクリーンは、発光ダイオードアレイなどその他の好適な表示手段によって置き換えることができることは自明である。充電回路(9)も設けられている。
【0017】
上記構成は、電気刺激パルス発生器が使用時に必要な微少電流を頭部に提供するように選択された周波数とパルス幅を有する電気パルスを生成するようになっており、このような微少電流は、通常、500乃至700μAであり、いずれにせよ、1mAより低い。周波数は0.5Hz乃至3Hzの間であり、パルス幅は0.5Hzの周波数で約125ms乃至3Hzの周波数で約75msの範囲である。頭に流れる微少電流は、いずれにせよ、一般的に、ほぼ一定の平均電流に維持される。
【0018】
この場合、パルス(または、別のパルスのあらかじめ決められたシーケンスが選択的に使用される場合は、パルスシーケンスでも良い)は、どの時点でも演奏されており、患者がイヤホンを介して聴くことができる音楽のテンポに合った周波数で生成される。もちろん、ほぼ一定の平均電流にするためには、このパルスのパルス幅も周波数の変化に合わせて変化する。マイクロプロセッサは、音楽のテンポをモニタして、これに基づいて電気信号の生成を制御する。
【0019】
本発明の範囲を限定するものではないが、以下のことが有効に機能するよう提案されている:
【0020】
1分当たり30ビートの音響テンポでは、パルス幅を125msとして0.5Hzの周波数を使用することができる;
1分当たり60ビートの音響テンポでは、パルス幅を115msとして1.0Hzの周波数を使用することができる;
1分当たり90ビートの音響テンポでは、パルス幅を105msとして1.5Hzの周波数を使用することができる;
1分当たり120ビートの音響テンポでは、パルス幅を95msとして2.0Hzの周波数を使用することができる;
1分当たり150ビートの音響テンポでは、パルス幅を85msとして2.5Hzの周波数を使用することができる;
1分当たり180ビートの音響テンポでは、パルス幅を75msとして3.0Hzの周波数を使用することができる。
【0021】
また、マイクロプロセッサは従来知られているように、所定の期間、治療プログラムまたはセッションを提供するようにプログラムされており、この期間は一般的に10分乃至30分であるが、1時間あるいは1時間半まで延長することができる。選択された特別な治療セッション、音楽ナンバー、などに関する情報を、治療ユニットに設けたスクリーン(8)に表示することもできる。
【0022】
本発明によるイヤホンの特徴に戻ると、電極とイヤホンを組み合わせて、耳管の入り口にはまる電極ユニットとしている。
【0023】
添付図面の図3乃至5に示すように、各イヤホンユニット(11)は、ベース(13)に装填されており、絶縁リング(14)で囲った標準音響イヤホン(12)を具える。リング状電極(15)が、絶縁リングを囲んでおり、導電性ゴムシース(16)形状をした導電性カバーで覆われている。もちろん、電極は適当な導電体(17)で電気刺激パルス発生器(2)に電気的に接続されており、使用時に患者の耳に接触する二つのイヤホン電極間に電流が発生するようになっている。
【0024】
図5に示すように、イヤホンは耳管への入口で受けられるように構成されているので、導電性ゴムシースによって、例えば図5cに符号(18)で示す領域において、リングと皮膚とが接続される。もちろん、当業者には自明であるように、イヤホンはカナルホン又はイヤホンと呼ばれる態様で耳管内で受けるようにしても良い。
【0025】
図6は、代替の電極ユニットを示す図であり、このユニットでは、電極(31)自体が単一の「スポット」電極の形であり、耳管の入口で受けるように構成されたイヤホンの筒状絶縁表面(32)上に設けられている。
【0026】
もちろん、本発明で提供されている電極ユニットは、その他のタイプのCES治療装置と共に使用することができ、上述の装置と共に使用するといった制限はない。
【0027】
患者の耳へ電気パルスを送ることと、及び患者へ音楽を同時に提供することの両方に単一の電極ユニットを使用することは、この音楽がパルスに何らかの形で関連していても、いなくても、非常に便利であり、費用対効果が高い。このような電極ユニットは、音楽を伴う電気刺激の処理を非常に簡単にして、患者が治療を行いながら音楽を楽しむことができるとともに、患者への装置の設定が簡単にする。
【0028】
上述した本発明の実施例に対して、その範囲から離れることなく様々な変形例が考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部電気刺激用電極ユニット(11)において、患者の耳領域に電気エネルギィを操作可能に伝達する電流伝達電極(15,31)を具え、当該電極ユニットは、患者の耳管へ入口で又は耳管内での係合に適したタイプの音響イヤホン(12)の外側周辺に電極が配置されており、当該電極が、電極と、前記電極ユニットと一致する患者の皮膚との間で電気エネルギィを操作可能に伝達する電気的接触領域を有する、ことを特徴とする電極ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電極ユニットにおいて、前記電気接触領域が使用時に患者の皮膚と直接接触するように露出された接触面層であることを特徴とする電極ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の電極ユニットにおいて、前記電気接触領域が電極自体の導電性カバー(16)であることを特徴とする電極ユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電極ユニットにおいて、前記電極が、前記音響イヤホンへの電気絶縁囲い(14)に配置されていることを特徴とする電極ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の電極ユニットにおいて、前記電極が前記電気絶縁囲いを取り囲むリング(15)形状をしていることを特徴とする電極ユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電極ユニットにおいて、前記電極ユニットが、前記音響イヤホンが通常のステレオイヤホン対である場合に当該対の一方を形成していることを特徴とする電極ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−502719(P2012−502719A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527417(P2011−527417)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006864
【国際公開番号】WO2010/032112
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511063284)トゥ ビー ファースト アーゲー (2)
【氏名又は名称原語表記】TO BE FIRST AG
【Fターム(参考)】