説明

頻尿改善組成物、健康食品、及び血流改善組成物

【課題】安全な頻尿改善組成物及び血流改善組成物を提供する。
【解決手段】担子菌類の菌糸体培養物又は子実体から抽出された担子菌類のエキスを含むことを特徴とする頻尿改善組成物及び血流改善組成物である。この担子菌類としては、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)からなる群から選ばれる1種である。この担子菌の子実体/類菌糸体を50〜80度熱水抽出か40〜60度エタノール抽出し、乳酸菌発酵させたエキスを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頻尿改善剤、健康食品、及び血流改善組成物に係り、特に担子菌類の子実体及び/又は菌糸体のエキスを含有する頻尿改善剤、健康食品、及び血流改善組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
頻尿は、排尿回数が増加した状態を意味する。排尿回数には個人差があるが、健康な成人の尿量は24時間で1500mL前後、排尿するときの膀胱の容量は、250〜300mL程度である。このため、一般的に正常な排尿回数は、昼間は4〜5回、夜間は0〜2回前後になる。すなわち、1日5〜6回程度の排尿回数になる。
このため、昼間に8回以上、夜間睡眠時に3回以上、すなわち1日に10回以上も排尿をするようならば、頻尿と定義できる。
【0003】
頻尿は多様な原因で起こり、多くの人がこれに悩まされている。
頻尿の原因として、まず挙げられるのは尿量が増える病気(多尿)である。多尿は、尿崩症、糖尿病、ある時期の腎不全、そのほか薬剤によって起きることがある。
また、膀胱に近いところに疾患があり、膀胱に慢性的な刺激が加わると頻尿が起こる。
このような膀胱の刺激による頻尿の原因になる疾患としては、がん性腹膜炎、直腸がん、子宮筋腫等がある。また、腰痛などの痛みが膀胱を刺激して頻尿になることもある。
これ以外の頻尿は、多くの場合、泌尿器系の疾患によるものである。このような疾患としては、腎下垂、尿路感染症、萎縮膀胱、膀胱に近いところにある尿管結石等等がある。
尿路感染症に随伴する頻尿は、例えば病原菌増殖に伴う急性膀胱炎が排尿を刺激するために起こり、膀胱炎では必ず排尿痛も伴う頻尿が起こる。さらに、心因性の頻尿も存在している。
【0004】
また、治療上問題になるのは、高齢者の頻尿である。この高齢者の頻尿として、もっとも多いのは、前立腺肥大症に伴う頻尿である。
前立腺肥大症は、尿道を取り囲む前立腺が大きくなるために尿道が圧迫される疾病である。前立腺肥大症は加齢とともに起こり、特に、高齢の男性には、ありふれた症状であり、60歳以上の男性の四人に一人が、この疾病に悩まされる。
前立腺肥大症では、主に尿が膀胱から出にくくなる排尿障害および頻尿の症状が起こる。具体的には、尿道が圧迫される度合いによって異なるものの、尿が出にくい、残尿感がある等の症状が現れ、夜中に何度もトイレに起きることになる。
前立腺肥大症の症状は、どちらかというと排尿障害が主で、頻尿は排尿困難に付随してあらわれる。
【0005】
前立腺肥大症が起こる原因は明確でないが、男性ホルモンと女性ホルモンとのバランスの崩れが一因と考えられる。また、40代後半から男性一般に見られる加齢現象の一つである前立腺肥大結節もホルモンバランスが崩れる要因とされている。
さらに、前立腺がんの初期段階でも、前立腺肥大症と同様に排尿障害が現われる。前立腺がんがある程度以上まで増殖すると、尿道が圧迫されるため、排尿困難、頻尿、残尿感など、前立腺肥大症と同様の症状が起こる。
前立腺がんは、米国では男性のがんによる死亡のトップを占めるほど多発するがんである。我が国でも、生活習慣の変化により近年急激に患者数が増えて、医療上で大きな問題になってきた。
前立腺がんの発症は、動物性脂肪の過剰摂取と相関しており、生活習慣が影響しているといわれている。
なお、前立腺肥大が進行すると前立腺がんに移行する、と一般的に認識されている。しかしながら、前立腺肥大と前立腺がんとの間に、相関関係は、あまりないことが分かってきている。
【0006】
このように、頻尿の起こる原因としては、膀胱、前立腺等、泌尿器系の臓器の病気に由来するものがある一方、原因がはっきりせずに起こる頻尿も存在する。女性に関しても、加齢とともに頻尿が起きる頻度が増えることが分かっている。
いずれの原因にしても、頻尿は病苦の一つであり、生活の質(QOL)を低下させるので治療が必須である。
ここで、従来から、原因のはっきりしない頻尿については、天然の植物由来成分を用いた頻尿改善剤が用いられている。
【0007】
これら従来の植物由来の成分としては、以下のようなものが知られている:
・ノコギリヤシ(SAWPALMETTO、ソーパルメット)
アメリカ南部からメキシコにかけて分布するヤシ科シュロ属の植物で、学名ではセレノアレペンス(Serenoa repens)と呼ばれている。フランスやドイツ等で、ノコギリヤシ製剤は60年以上も前から医薬品として流通されており、前立腺の肥大や痛み、排原困難が改善しているという報告がある。
・ペポカボチャ
ペポカボチャ(C.pepo種のカボチャ)は尿失禁等の症状、前立腺肥大症や女性に多い勝脱過敏症、尿失禁予防の医薬品となり、ヨーロッパで広く用いられている。ペポカボチャの種の中には、排尿障害の改善に役立つ成分が含まれているという報告がある。
・イチョウ葉エキス
イチョウの葉を乾燥させ、エタノール抽出したエキスである。イチョウ葉を最初にヒトの頻尿の治療に用いたのは、16世紀初頭の中国であった。20世紀半ば(1965年)には、イチョウ薬エキスはドイツにおいて医薬品として登録された。イチョウ葉エキスは、現在,我が国において食品衛生法により、一般食品(健康食品)として取り扱われている。しかしながら、ドイツをはじめ世界55カ国では医薬品として流通している。
【0008】
また、従来の植物由来成分を用いた頻尿改善剤として、特許文献1を参照すると、主成分として、韮子(きゅうし)、補骨脂(ホコツシ)及びシソ葉を含有することを特徴とする健康食品が記載されている(以下、従来技術1とする。)。
従来技術1における韮子は、ユリ科の多年草、いわゆるニラ(Allium tuberosum Rottler)の種子である。補骨脂は、マメ科オランダヒユ(Psoralea corylifolia L.)の成熟果実を乾燥させたものである。シソは、シソ科に属するPerillafrutescens Britton var.acuta Kudoの茎葉を乾燥させたものである。
従来技術1の健康食品は、人体に対して無害な成分の混合物であるので、日常的に常用することが可能であり、頻尿の症状を緩和することができる。また、従来技術1の健康食品は、頻尿のみでなく冷え性の緩和にも効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−160356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術1の健康食品は、従来からある頻尿改善のための植物を組み合わせただけであり、頻尿改善におけるこれらの成分の組み合わせ以上の効果はなかった。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の頻尿改善組成物は、担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物から抽出された該担子菌類のエキスを含むことを特徴とする。
本発明の頻尿改善組成物は、前記担子菌類は、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする。
本発明の頻尿改善組成物は、前記エキスは、前記担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物を乳酸菌発酵したものであることを特徴とする。
本発明の頻尿改善組成物は、前記エキスは、前記担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物を50〜80℃で熱水抽出、又は40〜60℃でエタノール抽出されたエキスであることを特徴とする。
本発明の健康食品は、前記頻尿改善組成物を含むことを特徴とする。
本発明の健康食品は、更にマンネンダケ(Ganoderma lucidum (Leyss. ex. Fr.) Karst)のエキスを加えたことを特徴とする。
本発明の血流改善組成物は、担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物から抽出されたエキスを含むことを特徴とする。
本発明の血流改善組成物は、前記担子菌類は、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)からなる群から選ばれる1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物から抽出された菌糸体エキスを含ませることで、頻尿の改善効果の高い頻尿改善組成物と血流改善組成物とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るヤマブシタケ子実体及び/又は菌糸体の乳酸菌発酵エキス粉末の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る頻尿改善組成物の投与試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態>
古来より、担子菌類の子実体(茸)は食用されており、また漢方薬として重用されているものが存在する。さらに、このような担子菌類から有効成分を抽出する健康食品の製造方法がいろいろ開示されている。
このような漢方薬や健康食品として用いられている担子菌の1つとして、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、例えば、ヤマブシタケが存在する。
ヤマブシタケは、学名を(Hericium erinaceum (Fr.)Pers.)、和名を山伏茸といい、サンゴハリタケ科に属するキノコである。この菌は広葉樹の立ち木、腐木等に発生する木材腐朽菌の一種である。
また、ヤマブシタケは、日本、中国、アメリカ、ヨーロッパなどの北半球に広く分布し、古くより各地で食用されてきた。中国においては、その形状をテナガザルにたとえて猿頭措(蕗は茸を意味する)と呼び、日本では、山伏が身につける結袈裟についた丸い飾りにたとえ、ヤマブシタケと呼ばれている。
【0016】
このヤマブシタケのエキス(抽出物)には、従来から、制ガン作用、便秘予防、肥満、糖尿病、動脈硬化の予防、食品中の毒性物質の排除促進、自己防御能の向上など、健康維持、増進に有効な種々の作用があると報告されている。
具体的には、通常の担子菌類には、1もしくは2種類の生理活性を持つ多糖類しか含まれていないところ、ヤマブシタケには、5種類の抗腫場活性をもつ、ヘテロβ−D−グルカンが含まれており、そのすべてが高い抗題療活性を示している。
その中でも「マンノグロコキシラン」「ガラクトキシログルカン」の2種は、ヤマブシタケにしか含まれない特有の多糖体で、腫癒抑制率も他の担子菌と比較しても高いことが分かってきている。
そして、このヤマブシタケ菌の抽出物を用いた健康食品においても、血圧降下作用、利尿作用、疲労回復作用、抗癌作用、抗糖尿病作用、便秘予防、抗アレルギー作用等があるといわれている。
【0017】
また、ヤマブシタケは、中国では脳の活性化に効果があるとされており、現在でも受験生などの聞では受験対策としてヤマブシタケが愛用されているといわれている。これは、ヤマブシタケ特有成分、ヘリセノン、エリナシンが脳内のニューロンに作用し情報伝達が活発になるためと考えられている。
また、後述するように、ヤマブシタケには、脳神経の機能回復を促し、老化を防止する作用等がある重要なタンパク質であるNGF(nerve growth factor、神経成長因子)の分泌を促進する作用があることが、本発明者により示されている。NGFは、他にも、神経伝達物質の合成促進、神経軸索の伸長、軸索損傷時の修復、神経細胞の維持等にも用いられることが分かっている。
【0018】
しかしながら、ヤマブシタケを含む担子菌の抽出物には、上記のような効果に加えて、他にどのような効果があるかという点については、未だ、知られていないことが多い。
【0019】
そこで、本発明の発明者らは、従来より食用され漢方に利用されている担子菌類の菌糸体エキスの薬理作用について鋭意研究を重ねた。
すると、ハリタケ科の菌、ヤマブシタケを含むいくつかの担子菌の菌糸体又は子実体の抽出物には、驚くべきことに、著しい排尿トラブル(頻尿・尿漏れなど)改善と血流改善効果などが認められることを見出して、本発明を完成するに至った。
この排尿トラブル改善と血流改善とは、男性女性を問わず、年齢も若年層から高齢者まで効果がある。
【0020】
本発明の実施の形態に係る担子菌類のエキスは、頻尿を改善でき、さらには血流等も改善できる。
加えて、ヤマブシタケは元々、食品として安全性が確立されており、毒性等もない。このため、副作用の恐れがなく安全性に優れ、頻尿と血流改善に効果がある組成物を提供することができる。
【0021】
〈本発明の実施の形態に係る頻尿改善組成物〉
ここで、具体的に、本発明の実施の形態に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物の組成と製造方法について詳しく説明する。
本実施形態に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物は、担子菌類の子実体/菌糸体培養物から抽出された担子菌類のエキスを含むことを特徴としている。
上記担子菌類としては、ハリタケ科の菌(以下では、ヤマブシタケを例として用いる)、椎茸(Lentinula edodes (Berk.) Sing.)、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)等が挙げられる。
本実施形態においては、この担子菌類の菌糸体エキスとして、子実体及び/又は菌糸体の50〜80℃の熱水抽出したエキス、又は40〜60℃のエタノールで抽出したエキスを用いることが望ましい。
また、本実施形態においては、この担子菌類の菌糸体エキスとして、乳酸菌発酵を行ったエキスであることが望ましい。
【0022】
このような頻尿改善組成物及び血流改善組成物を、例えば、経口摂取すれば、老若男女を問わず、様々な原因の頻尿や尿漏れ等の排尿トラブルを著しく改善できる。さらに血流異常なども改善でき、しかも副作用の恐れが全くなく安全性に優れている。
【0023】
〔ヤマブシタケを原料とする頻尿と血流改善組成物〕
以下、本発明に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物について、さらに具体的に説明する。
本発明に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物には、担子菌類の菌糸体エキスが含まれている。
【0024】
担子菌類(Basidiomycota)としては、古来より我が国で食用菌類として食用され、あるいは漢方で使用されている松茸目あるいはハラタケ目(Agaricales)の茸としては、松茸(Tricholoma Matsutake Ito et Imai.)、椎茸(Lentinula edodes (Berk.) Sing.)、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)、平茸(Pleurotus ostreatus (Jacq.Ex Fr)Kummer)、なめこ(Pholiota nameko(I.Ito)S.Ito et IMAI)、イグチ属(Boletus Dill.ex Fr.)、シメジ(Lyophyllum shimeji (Kawam.)Hongo)、チチタケ(Lactarius volemus(Fr.)Fr.)、エリンギ(pleurotus eryngii)等が挙げられる。
【0025】
また、サルノコシカケ目又はヒダナシタケ目(Aphyllophorales)の茸としては、コフキサルノコシカケ(Elfvingia applanatus(Pers.)Karst.)、ツガサルノコシカケ(Fomitopsis pinicola (Fr.)Karst.)、カワラ茸(Coriolus versicolor(Fr.)Quel.)、マンネン茸すなわち霊芝(Ganoderma lucidum(W.Curt.ex Fr.)Karst.)、舞茸(Grifola frondosa(Fr.)S.F.Gray)、メシマコブ(P.yucatensis(Murr.)Imaz.,)等が挙げられる。
【0026】
キクラゲ目(Auriculariales)又はシロキクラゲ目(Tremellales)の茸としては、キクラゲ(Auricularia auricula(Hook.)Underw.)、シロキクラゲ(Tremellinea fuciformis Berk.)等が挙げられる。アンズタケ目(cantharellales)の茸としては、ハリタケ科のヤマブシタケ、すなわちハリタケ(hydnum)等が挙げられる。
【0027】
本発明の実施の形態に係る頻尿と血流改善組成物では、これら担子菌類のうちでも、ハリタケ科(Hydnaceae)のヤマブシタケ属(Hericium)の菌、特にヤマブシタケ(H.erinaceus)を用いるのが特に好適である。
この他にも、予備的な実験結果から、椎茸、エノキ茸についても、好ましく用いられる。
本実施形態の組成物は、これらの担子菌類を、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、これらの担子菌類の多くは、「キノコの事典」(中村克哉編、朝倉書店、1989年)、「キノコ類の培養法」(岩出亥之助著、地球社、昭和60年再訂5版)あるいは「原色日本菌類図鑑」(今関等共著、保育社、昭和58年、27刷)などに詳説されている。
【0028】
本実施形態に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物の製造に際して、ヤマブシタケ菌糸体エキス等の担子菌類菌糸体エキスの製造方法には特に制限はない。
たとえば、ヤマブシタケ菌糸体エキスでは、ヤマブシタケ菌糸体培養物を乳酸菌発酵して、凍結乾燥した粉末を用いるのがよい。また、ヤマブシタケの子実体を粉末化して乳酸菌発酵することもできる。
【0029】
本実施形態の頻尿改善組成物及び血流改善組成物において、頻尿と血流改善効果の点で特に好ましくは、該ヤマブシタケ菌エキスでは、50〜80℃熱水抽出、又は40〜60℃エタノール抽出のエキスを用いることが望ましい。また、乳酸菌発酵したエキスであることが望ましい。
また、ヤマブシタケ菌エキス以外の上記したような他の担子菌類菌糸体エキスの場合も、ヤマブシタケ菌エキスと同様の製造方法にて調製することができる。
【0030】
〔ヤマブシタケ子実体及び/又は菌糸体の乳酸菌発酵エキス粉末の製造方法〕
ここで、図1を参照して、ヤマブシタケ子実体又は菌糸体を乳酸菌発酵して抽出した抽出物(ヤマブシダケ菌エキス)を調製する例について説明する。
【0031】
(ステップS101)
本実施形態のヤマブシタケ菌エキスを調製するには、具体的には、まず、子実体/菌糸体粉砕処理を行う。
具体的には、乾燥したハリタケ科の菌の子実体及び/又は菌糸体を粉砕機で粉末にして、重量で10〜50倍の水、好ましくは純水、又はエタノールによく混ぜる。この上で、水の場合は、50〜80℃に加熱し、エキスを抽出する。また、エタノールの場合は、40〜60℃で抽出する。抽出後に、凍結乾燥を行い、粉末を得る。
なお、この粉砕の工程においては、例えば、同体粉砕機のような、薬理的な活性を落とさないで微細粉末にできる粉砕機を用いることができる。
また、抽出を行わずに、粉砕した子実体/菌糸体をそのまま用いることもできる。
【0032】
(ステップS102)
次に、乳酸菌液調整処理を行う。具体的には、乳酸菌発酵に使用する真正細菌である例えば、ラクトバシラス属(Lactobacillus)の乳酸菌、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus casei等や、バチルス属(Bacillus)の真正細菌であるbacillus Loterie等を、例えば、凍結等にて保存された状態から発酵に用いる状態に調製する。
【0033】
(ステップS103)
次に、具体的な発酵処理を行い、ヤマブシダケ菌エキス原液を得る。
ここでは、上述のステップS101で得られた、例えば、粉砕したヤマブシタケの子実体/菌糸体であるヤマブシタケ粉末と、ステップS102で得られた乳酸菌液とを、水に対して例えば以下のような重量%になるよう調製して、発酵を行う。

ヤマブシダケ粉末 10%〜70%
グルコース 1%
酵母粉砕物 1%
乳酸菌液 0.2%

これらを、35℃〜37℃にて、2日〜72時間程度乳酸菌発酵させて、ヤマブシダケ菌エキス原液を得る。
【0034】
(ステップS104)
次に、凍結粉砕処理を行う。
具体的には、ステップS103で得たヤマブシダケ菌エキス原液を、真空中で凍結乾燥させて、粉末を得ることができる。この粉末を粉砕機にて粉砕することで、本実施形態の乳酸菌発酵エキス粉末が得られる。
この乳酸菌発酵エキス粉末は、200〜250mg程度ずつ、経口摂取可能なカプセルに封入される。
【0035】
なお、粉砕されない状態の粉末/粉砕後の乳酸菌発酵エキス粉末は、賦形剤を用いてペースト状にしたり、打錠機にて打錠したり、直接、健康食品等に入れ込むことも可能である。
さらに、上述のヤマブシダケ菌エキス原液そのものを、加熱殺菌等して、糖分や香料や保存料等を加えて、健康ドリンクとして調製することもできる。さらに、このようにして得られるヤマブシタケ菌エキスを、濃縮して用いることもでき、またさらに凍結乾燥して粉末状にして用いることもできる。
また、熱水又はアルコール抽出したハリタケ科の菌のエキスの粉末を、乳酸菌で発酵しないそのまま用いることもできる。
【0036】
以上、ヤマブシタケ菌エキスの好ましい調製法の例を詳説したが、本発明で用いられる前記したその他の担子菌類菌糸体エキスも、上述のヤマブシタケに代えて、霊芝、エノキ茸、メシマコブ、ヤマブシタケ、マイタケ、エリンギなどの担子菌類を用いる点以外は、上述の調製方法と同様にして、調製することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、これらの担子菌類のエキスを、頻尿改善組成物及び血流改善組成物として用いることができる。
本発明の実施の形態に係る頻尿改善組成物及び血流改善組成物には、ヤマブシタケ菌エキス等の担子菌類菌糸体エキスが、どのような量で含まれていてもよい。
このような頻尿改善組成物及び血流改善組成物は、顆粒状、液状、錠剤、カプセル状など各種剤形にて経口投与してもよい。また、頻尿と血流異常改善異常者に使用する注射液に添加して用いることも可能である。
また、当該ヤマブシダケ菌エキス原液を、希釈せずにそのまま頻尿者および血流異常者に投与することもできる。これに加えて、例えば精製水、生理食塩水、アルコール等で適宜希釈して投与することもできる。
【0038】
ここで、ヤマブシダケ菌エキスが頻尿を改善する理由としては、以下の理由が仮説として考えられる。
従来から、加齢によると主に脳の機能低下により、睡眠能力が衰えることが知られている。前立腺の刺激や泌尿器系の疾病以外の頻尿に関しても、加齢による何らかの脳機能の低下により起こ得ることが考えられる。
従来から、脳内にNGF(神経成長因子)を投与すると痴呆が改画されることが発見されている。
上述したように、ヤマブシタケに多量に含まれるヘリセノンDとエリナシンCには、NGFの合成促進活性が確認されており、脳内のニューロンに作用して、痴呆症の抑制効果や記憶能力の増強効果が期待されている。
しかしながら、従来、NGFによる頻尿の改善効果は知られていなかった。
また、ヤマブシタケ菌エキスには、神経を賦活する未知の成分が含まれており、脳における、なんらかの頻尿に係る部位を修復、調整する著しい効果がある可能性が考えられる。また、自律神経系の働きを調整して、頻尿を起こしにくくなるという可能性も考えられる。
このため、本発明の実施の形態の頻尿改善組成物及び血流改善組成物は、前立腺肥大による高齢の男性のみならず、女性や若年層の頻尿や尿漏れ等の排尿トラブルの患者、冷え性等の患者にも効果があると推測できる。
なお、予備的な実験から、子供のいわゆる「おねしょ」や、出産等が原因の女性の尿漏れにも本実施形態のヤマブシタケ菌エキスが効果的であることが分かっている。
【0039】
さらに、ヤマブシダケ菌エキス原液が含まれる頻尿改善組成物及び血流改善組成物は、頻尿の改善効果に加えて、血流異常改善効果もあることが予備的な実験から分かっている。
このヤマブシタケ菌エキス等の担子菌類のエキスを含む頻尿改善組成物及び血流改善組成物には、本発明者らの研究によれば、ヤマブシタケ等の担子菌の子実体/菌糸体から抽出される有効成分と、ヤマブシタケなどの担子菌が培養された固体培地とから抽出される有効成分とが多数混在する。そして、未同定であるこれらの成分が総合的に作用し、頻尿改善のみならず血流異常も改善するのであろうと考えられる。これに加えて、代謝改善により、生存期間を延長させることができると思われる。
【0040】
上記のように、本発明の実施の形態に係る組成物は、頻尿を改善することができ、さらに血流異常も改善でき、しかも、副作用の虞がなく安全性に優れた健康食品(保健食品)、あるいは医薬である頻尿と血流異常改善剤を提供することができる。
【0041】
ここでさらに付言すると、現在、厚生省の調査によれば、我が国内の頻尿患者数は、60歳以上の男性の四人に一人がこの病気に悩まされる。頻尿は病苦の一つであり、生活の質(QOL)を低下させるので治療が必須である。また、女性にとっても頻尿は大変大きな問題となっている。
また、血中を流れる余分な糖質や脂質は血管壁に沈着し、炎症性リンパ球や血小板の浸潤により、炎症を誘発し、虚血性疾患の原因である動脈硬化を発症することになる。
虚血性疾患である心疾患と脳卒中(血流異常)は、日本人の3大死亡原因に数えられている。これらの疾患を治療・予防するには、血流を治改善し、予防することが重要と考えられている、血流改善剤の開発の意義は大きい。
【0042】
また、上述のようにヤマブシタケ菌には、抗腫瘍効果があるものも存在するため、例えば、前立腺癌のような疾病に掛かっている患者のQOLを改善すると同時に、長期間生存させることができるという効果が得られる。さらに、ヤマブシタケ菌エキスには、免疫改善の効果もあることが予備実験から分かっている。
従来技術1においては、抗癌効果も知られているプロポリスを加えていたが、本実施形態のヤマブシタケ菌エキスにはその必要がないため、コストを抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態の乳酸菌発酵エキス粉末は、ヤマブシタケの子実体/菌体の粉末を乳酸菌により発酵処理することで、乳酸菌の産生する乳酸にβ−グルカン等の多糖体をはじめヘリセノン、エリナシンなどヤマブシタケ独自の成分が溶解し、吸収性が向上するという効果が得られる。
この乳酸菌発酵エキス粉末は、乳酸菌の代謝物も摂取でき、腸内環境の改善にも役立つアンチエイジング組成物となる。
【0044】
なお、本実施形態のヤマブシタケ菌エキスには、その他の担子菌類のエキスを加えることも可能である。たとえば、マンネンダケ(Ganoderma lucidum (Leyss. ex. Fr.) Karst)のエキスを加えることで、抗癌効果や代謝改善効果をさらに高めることもできる。
さらに、椎茸(Lentinula edodes (Berk.) Sing.)、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)のエキスを用いると、糖質脂質代謝異常改善剤として用いることができる。さらに、これにより、椎茸菌糸体エキス等の担子菌類のエキスを含有する糖質脂質代謝異常改善組成物として用いることもできる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0046】
〔実施例1〕
1kgヤマブシ茸の子実体を粉末にし、水10Lを入れ、Lactobacillus reuteriを重量%にて1%接種して、37℃で2日間を培養した。その後、凍結乾燥して粉末状にして、ヤマブシダケ菌エキスの乳酸菌発酵エキス粉末を得た。この乳酸菌発酵エキス粉末を200mgづつカプセルに詰めた。
【0047】
〔乳酸菌発酵エキス粉末の投与試験〕
図2を参照して、実施例1の乳酸菌発酵エキス粉末のカプセルを用いて、頻尿の改善効果を調べた投与試験の結果を説明する。
まず、コントロールとして、頻尿傾向の自覚症状がある被験者A〜Mの13名(年齢46歳〜72歳)を対象に、上述のカプセルを使用する前に2日間尿の回数を観察した。ここでは、まずは、飲用開始前2日間、午前、午後、晩、就寝後の時間帯に分け、排尿回数をカウントしてもらった。
その後、被験者A〜Mそれぞれに、実施例1の乳酸菌発酵エキス粉末のカプセルを、1日5カプセル(1000mg)を昼、晩、就寝前に飲用してもらった。その後、飲用開始から10日目〜12日目の3日間の排尿回数をカウントしてもらった。
【0048】
図2に、被験者A〜Mそれぞれについての結果を示す。
各被験者について、コントロールである乳酸菌発酵エキス粉末を飲用する前2日の尿の頻度は、平均値を記載した(図2、「前」参照)。
実施例1の乳酸菌発酵エキス粉末の飲用後については、最大値、最小値の平均値を記載した(図2、「後」参照)。
【0049】
被験者A〜Mについて、実施例1のヤマブシタケの乳酸菌発酵エキス粉末を飲用後、10日目からの排尿回数をカウン卜した結果、すべての被験者で回数が少なくなる結果を得た。
この試験群の使用前後の比較から明かなように、ヤマブシタケの乳酸菌発酵エキス粉末を投与すると、頻尿の改善傾向が認められる。
これは、従来技術1の頻尿改善剤の効果を上回るものである。すなわち、実施例1の乳酸菌発酵エキスは、安全性の高い食品を用いた頻尿改善組成物であるにかかわらず、著しい頻尿抑制効果が得られる。
【0050】
以上のように、本実施形態においては、ヤマブシタケ菌を含む担子菌の子実体/菌糸体を50〜80度熱水抽出と40〜60度エタノール抽出のエキスを用いた乳酸菌発酵エキスにより、効果が高い頻尿改善組成物と血流改善組成物を提供できる。
すなわち、本実施形態の担子菌の乳酸菌発酵エキスは、老若男女を問わず、頻尿や尿漏れ等の排尿トラブルに悩む疾病者に安全で有効性の高い頻尿改善組成物を提供する。これにより、個人レベルにおけるQOL向上および社会的レベルにおける医療費の軽減をもたらす。
また、本実施形態の担子菌の乳酸菌発酵エキスは、血流改善効果、血管異常による疾病の予防手段となる血流改善組成物を提供する。
加えて、本実施形態の担子菌の乳酸菌発酵エキスは、健康食品あるいは医薬として用いることができる。
【0051】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、担子菌類のエキスを用いることで、頻尿や尿漏れ等の排尿トラブルに悩む疾病者に安全で有効性の高い頻尿改善組成物と、血流改善組成物とを提供することができる。これらの組成物は、健康食品として製造、販売可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物から抽出されたエキスを含む
ことを特徴とする頻尿改善組成物。
【請求項2】
前記担子菌類は、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)からなる群から選ばれる1種である
ことを特徴とする請求項1に記載の頻尿改善組成物。
【請求項3】
前記エキスは、前記担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物を乳酸菌発酵したものである
ことを特徴とする請求項2に記載の頻尿改善組成物。
【請求項4】
前記エキスは、前記担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物を50〜80℃で熱水抽出、又は40〜60℃でエタノール抽出されたエキスである
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の頻尿改善組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の頻尿改善組成物を含む
ことを特徴とする健康食品。
【請求項6】
更にマンネンダケ(Ganoderma lucidum (Leyss. ex. Fr.) Karst)のエキスを加えた
ことを特徴とする請求項5に記載の健康食品。
【請求項7】
担子菌類の子実体及び/又は菌糸体培養物から抽出されたエキスを含む
ことを特徴とする血流改善組成物。
【請求項8】
前記担子菌類は、ハリタケ科(Hydnaceae)の菌、エノキ茸(Flammulina Velutipes (Fr.)Sing.)からなる群から選ばれる1種である
ことを特徴とする請求項7に記載の血流改善組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−184349(P2011−184349A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50601(P2010−50601)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(391060627)
【出願人】(510063720)
【出願人】(510063742)
【Fターム(参考)】